PPR the GEARs

PPR the GEARs 公共空間利活用のための道具考

『PPR the GEARs  公共空間利活用のための道具考』
 著 西尾 京介、小林 綾、他
 令和2年6月1日発行 800円+税

<目次>
 1 座る ー基本アイテムで空間を居場所にかえる
 2 潤いをつくる ー少しの工夫が空間の質と居心地を高める
 3 かこみ・まもる ー自然や社会との折り合いを賢くつける
 4 コンテンツと道具 ー空間を場に変える道具の数々
 5 インフラを考える ー使いやすさを直接左右する重要ファクター
 6 設営と撤収 ー日々続けていくための道具とオペレーション
 7 デザインの実践 ー環境にあわせて道具を選び空間を組み立てる技術

まちの魅力を高める、元気にする、地域の暮らしを豊かにするなど、さまざまな目的で、公共空間を積極的に活用しようとする動きが全国に広がり、盛んに議論され、実践されはじめています。
同時に、これまでのように一部の専門家だけが関わるのではなく、広く一般の市民が自ら公共空間の利活用に参加し、イス・テーブルやパラソル、人工芝など、いろんな道具を手にする機会も増えつつあります。

本書では、「PPR the GEARs」と題し、公共空間の利活用を実践する人なら、誰もが使うことになる「道具」とのつきあい方について考えてみました。ふだん何気なく扱っている道具について、一緒に考えてみませんか?
 

公共空間の利活用で、実践してみて初めてわかる知恵やノウハウは、皆それぞれに同じような苦労をしていても暗黙知になりやすく、意外に共有されにくいものです。一方で道具というのは、普遍性があり、社会に共通したものとして広まりやすい。道具についての知を共有することは、まちに対して愛着や関心をもつそれぞれの市民が、公共空間の利活用に関わることのハードルを下げることにつながるのではないかと考えました。本書には、一般的には「道具」とは言えないものも含めて、豊かな公共空間をつくるための様々な知恵が登場します。その一つひとつに目を向けると、人知れず、苦労や改善が重ねられてきたストーリーを窺い知ることができます。道具に興味をもつことからパブリックを考えることへ。本書の存在が、そんな始まりのお役に立つことがあれば幸いです。(西尾 京介)

公共空間の利活用が広がり、様々な場所で出会う機会が多くなりました。イベントやマルシェをやっている公園、路上につくられた滞留空間。道にさりげなく設置してあるベンチもその一つです。まちのなかには、まちを使う人のために設えられた仕掛けと空間がたくさんあります。それを生み出している“道具”に目を向けてみると、様々な種類があることが分かります。そこでどんな過ごし方をしてほしいか、によって選ぶ種類が変わってきます。たかがイス、されどイス、道具の選び方ひとつとっても、奥深さがあるのです。都市はそこに生きる人たちの舞台です。“道具”をうまくつかって、その舞台を自らの手で楽しく快適なものにしていければ、もっとお気に入りの場所になるはずです。本書を読み物として、気軽な手引書として、道具の奥深さと、まちを豊かに使うことの楽しさを知ってもらえたら嬉しいです。(小林 綾)