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日建設計総合研究所が日建グループ向けに開催する勉強会をご紹介します果となりました。最近の日本の発電実績で、再生可能エネルギーの占める割合は10%強ですが、再エネ先進国であるドイツでは30%を超えています。しかも日本の再生可能エネルギーの大半は水力発電によるものであり、これを除くと3%程度となるため、ほとんど水力発電のないドイツと比べると実に10倍近くの差があります。従って、ドイツの電力供給状態を見ることは、今後の日本のエネルギー供給の在り方を考える上で参考になります。ドイツでは、FIT*を導入した2000年頃から再生可能エネルギー比率が急速に高まっていきました。原発を停止させ始めた後も、総発電量の15%程度を輸出しており、脱原発でもエネルギー輸出国であることを評価する声をしばしば聞きます。ドイツの電力供給の実態を調べてみると、主に太陽光発電の出力発生のある昼間に、在来発電の出力を落として需給バランスを取ろうとしていることが分かります。しかし、太陽光発電の2018年10月13日、九州電力では全国初となる太陽光発電の一時停止を求める出力制御を実施しました。これは、ZEBなど再生可能エネルギーによるエネルギー自立を目指す動きに対して、課題を投げかける結*FIT(固定価格買い取り制度)再生可能エネルギーで発電した電力を、国が定める価格で一定期間、電気事業者が買い取ることを義務づける制度。ピーク時は、発電された電力を使い切れず、かなりの部分をオランダ等の周辺諸国に輸出して余剰電力を処理しています。このように、ヨーロッパ全体をカバーする相互に融通可能な電力系統があることから、電力料金の損失分を経済力で埋め合わせる半ば強引な手法で政策を推進しているといえなくもありません。同様のインフラのない日本では、コントロールの難しい再生可能エネルギーを如何に有効に活用するかが今後の課題です。そのため、揚水発電、蓄電池、水素利用等、必要な技術開発に注力すべきであろうと考えます。勉強会企画者丹羽 英治|にわ ひではる主席研究員気候変動適応法の公布、エネルギー基本計画の見直し等、日本をとりまく環境・エネルギー動向が大きく変化する昨今、倉渕先生には非常にタイムリーな内容をご講演いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。勉強会倉渕 氏倉渕 氏6ドイツに見る再生可能エネルギーの課題[講師]東京理科大学工学部建築学科 教授 倉渕 隆 氏近年、再生可能エネルギーによるエネルギー自立の必要性が高まる一方で、余剰電力の処理という新たな課題も見えてきました。そこで、再エネ先進国であるドイツの電力供給の実態と課題についてご講演いただきました。Study Session

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