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1.メディアの会社で考えたこと

2. メディアは魔法の絨毯のようだ

3.メディアはプロジェクトを動かすドライバーにもなる

4.ささやかでもメディアと現実をつなぐ場の発見

5. メディアに流通/不動産をくっつけたことによるダイナミズム

6.リノベーションの一般化・社会化

7.公共住宅をいかに自由にするか

8.TOOL BOX 住み手に委ねるための空間とシステム

9.エリアコンバージョン 点から面へ/都市計画の方法論

10.イベント(非日常)が次第に日常に還元されていく

11.「新しい郊外」の発見

12.3.11で考えはじめたこと



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 押野見  小さなデザイン事務所の代表をしております。元大手ゼネコンにおりました。こういうメディアの時代でも直接に顔を見ながら話を聞くというのは非常に貴重なのではないかなと思いました。馬場さんの本は幾つか拝見したことがあります。お話を聞いてやっぱりプレゼンがうまいなと。これではみんな乗せられちゃうんじゃないかなと思いました。こういうふうな大変おもしろいお話を大変忙しい日常の業務の中でしていただく機会を設けていただいた山梨さんにも非常に感謝申し上げたいと思っております。
  まず、馬場さんにお伺いしたいのは、馬場さんは何をしたいのか、そこの1点です。つまり、ビジネスモデルとして儲けようという感じはアメリカのビジネスモデルの典型的なものです。そうではなくて、今社会学者が言っていますが、若い人たちは、車も買わないし、自分だけが成功すればいいというふうに思ってないのではないか。みんなが幸せになるようなものに参加したい、自分の持っているスキルを生かしたいと考えているのではないか。だから、あと5年とか10年すれば、政治家もかわるし、企業人もかわるから、日本の世の中もちょっと変わるだろうという見通しを冷めたみたいに言っている人が多いわけです。もしかしたら馬場さんもそういうジェネレーション、そういう意識をお持ちなのかなというあたり、イエス・オア・ノーでお答えいただければ。
馬場 大先輩の押野見さんにこんな質問をしていただいてありがとうございます。基本、イエスです。新しい幸せの風景というかイメージというか、それをつくりたいと思っています。象徴的なのは、最後に紹介した本『だから、この働き方を選んだ』に、「ときたま、すしを食いたい」という章があるんです。別に、特別豊かというわけではないんだけど、ときたまおすしを食べたいと思ったときに食べれるくらいのちょうどいい幸せ感みたいのがあるのではないかなと思っているとみんなで話したエピソードをそのまま書いています。
 あとは、健全に社会に役に立ちたいと思っています。そう思っているやつは多いんのではないかな。ちゃんとした幸せをイメージしたい。みんないろんなことがあって、ろくなことが起きないんですが、そこを素直にしっかりつくるのが仕事のベースなのではないかなとやっと最近整理でき始めましたという感じです。その先に適度な利益がついてくれるといいなと。先ほどのご指摘、答えはイエスでございます。
中島(東京大学大学院) 今日は貴重なお話ありがとうございました。
 馬場さんはいろいろなことをやっていらっしゃって、編集長、あるときは建築家、ジェネラルにいろいろやろうとすると、ある瞬間、線引きをずらしたり、超えたりすると思うんですけれども、一緒にやる人と、どういう役回りを変えているのかを伺いたいなと思います。例えばR不動産は10万円ずつ5人で出し合って立ち上げたときに、その5人でどういう役回りがあったのか。僕も似たようなことをやろうとたくらんでいるところがありまして、役割分担があれば教えていただきたいと思います。
馬場 僕はサッカーが好きで、ポジショニングを考えるんです。高校、大学とサッカーをやっていた。そのプロジェクトチームの中の自分の的確な役割を必死で考えようとしています。ある場合は、自分で思いっきり突っ走る。ボールを持ってドリブルをしなければいけない役回りのときもあれば、プロジェクトチームのメンバーによっては、僕は前線を走らずに、もっと足の速いやつがいるから、パスを出すほうに回ろうとか、そこは比較的冷静に自分の全体の中での的確な居場所を考えています。自分1人で走るよりも、バルセロナのパスサッカーが強いように、周りと連動しながら、いいフォーメーションを組めたときのほうが、いい成果ができるし、思いもよらなかったプレーができることもあるし、それで、きれいな点が入ったときは自分1人じゃなくてみんなで喜べたりするみたいな感覚があります。
 僕は比較的自分のポジションを考えながらということに注力しているほうだと思います。ただ、ここは俺が行かぬといかぬと思うときは一気に行きますが、そこはある意味冷静にという感覚があります。
 Open AもOpen Architectureという事務所の名前にしているぐらいなので、それに対して意識的で、東京R不動産も、まさにそのフォーメーションの中で自分の居場所を必死で見つけている。立ち上げた人間なんだけど、働きが悪かったら、あっという間にみんなに冷たくされそうなので必死でやっています。最初の5人がどうやって始まったかというと、言い出しっぺは僕です。そういうことは多いです。だけど、僕だけではなかなか何もできない。言い出しっぺは、フォワードの僕です。もう1人はマッキンゼー出身です。東大建築で、君の先輩です。そいつは突破口を見出すタイプではないんですが、冷静に状況を判断してビジネスモデルを構築してくれます。吉里というのも建築出身です。不動産に詳しくてデザインも大好き、最初ディベロッパーに勤めていました。そいつが不動産事業として成り立たせるための勢いをつけてくれます。雑誌の絵を手伝ってくれている安田君という編集者がいます。彼が編集面、文章、校正みたいなかたいところをやってくれました。三箇山君は雑誌の絵を手伝ってくれた。そのころは大学生です。焼鳥屋でバイトしていました。偶然そいつと会って、「おまえ、何やっているんだ」「見ればわかるじゃないですか。焼鳥屋でバイトですよ」「ちょっと待って。だまされたと思って俺を手伝わない?」と言って1人入れた。そいつは鉄砲玉です。「とりあえず、おまえ行ってこい、あらゆる不動産屋さんに、これ貸してくれ、あれ貸してくれと。おまえ、営業能力あるから大丈夫だ」「わかりました」。編集、建築、不動産、ビジネスモデル、鉄砲玉、その5人で、適材適所ということをある程度意識しながら、でも、状況によって臨機応変に進めています。自分はこれという核があると位置どりがしやすいです。
山梨 どうもありがとうございました。最後の質問が、馬場さんの企業秘密なのかもしれないです。チームワークが成り立たせていること。伺っていると、我々建築に携わる人間誰でもがわかっていることは、1人では何もできなくて、チームワークでなければできない。恐らくこのNSRIフォーラムの役割も、馬場さんの今日の言葉の中にありましたけれども、点がネットワークになって面となって世の中が変わっていく。まさにそういう場所にこの場所もしたいと思っていますので、最後の締めくくりにすばらしい質問とお答えをいただいたなと思って、僕の人選は最高だったなと自負をしています。
 今後もこのNSRIフォーラムは、続々とおもしろい方を呼んで、続々とおもしろい企画で皆さんにお声がけをし、ネットワークを広げていきたいと思っています。今後の情報もお見逃しなくということをお伝えします。今日は馬場先生、本当にありがとうございました。皆さんでもう一度拍手を送っていただきたいと思います。(拍手)
谷 以上をもちまして本日のフォーラムを終了させていただきます。
(了)

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