No.104 シリーズ "NSRIは何をしている会社?" 第14回

2016年06月28日

VIEW NSRIの組織体制と取り組み

NSRIは、以下の7つのグループ制でサービスを行っています。

  • ZEB(低炭素建築) グループ
  • スマートシティ グループ
  • モビリティデザイン グループ
  • エネルギーマネジメント グループ
  • 都市政策 グループ
  • 都市開発 グループ
  • 海外・戦略 グループ

VIEWでは、88号から各グループの取り組み・サービスについてシリーズで紹介してまいりました。
最終回となる第14回は、都市政策グループの取り組み・サービスのご紹介Vol.2です。

都市政策 グループのご紹介 Vol.2

これまでの取り組み紹介 その2

都市政策グループ紹介の第2回目は、公民連携による効果的な都市経営支援や地域の魅力づくり・活性化に関連した取り組みについて、いくつかご紹介します。 

①PPP/PFI事業に係るコンサルティング

NSRIでは、その設立母体となった日建グループ内の各部署で、PFI法が平成11年に施行される以前からPPP事業に関連するコンサルティングを実施してきました。図に示すように、順調に普及を続けたPFIは、民主党政権下で公共事業仕分けの影響もあり激減しましたが、その後PFI方式を導入する事業件数は減少前の年間約40件前後の水準を回復し、さらに増加する勢いです。

図1 PPP/PFI事業件数の動向

図1 PPP/PFI事業件数の動向

NSRIも、PFI事業方式の普及に少なからず貢献してきました。今回、あらためて整理してみましたが、人口減少の影響もあり、日本の小中学校に通う児童生徒の総計が約1千万人となっています。今年の秋にはその約1%、10万人の子供たちが、NSRIがPFI事業方式の導入をお手伝いした学校給食センターで調理された給食を食べるようになります。

しかし、前述の数字はPPPの中でもPFI法を適用する事業に限った数字であり、PPPの全体像を表すものではありません。社団法人日本PFI・PPP協会が収集公表する初期事業情報は、PFI方式のみならず幅広くPPP方式の事業に関する情報提供を行っていますが、その件数は飛躍的増加傾向を示しています。NSRIにおいても、昨年度は2件のDBO事業のアドバイザリー業務を受託するなど、PFI方式以外のPPP事業に取り組む事例が増えつつあります。

本稿執筆の1か月前5月18日、様々な分野の公共施設等の整備・運営に、多様なPPP/PFIを導入するための方策等を示した「PPP/PFI推進アクションプラン」が、民間資金等活用事業推進会議において決定されました。これによれば平成28年度末までに、人口20万人以上の全ての地方公共団体等181団体において民間活用のための「優先的検討規程」の策定と的確な運用を求めています。アクションプランの決定に先立ち公表されていた「優先的検討規程策定の手引き」(平成28年3月)によれば、PPP/PFI導入検討を実施する対象事業の事業費に係る基準として、公共施設整備事業の場合は総額が10億円以上とされています。こうした新しい政策が、本年度に入ってからのPPP/PFI関連の相談件数の急増につながっているのだろうと推察します。

さて、本稿でNSRIの取り組みを読者の方々に理解していただくためには、我々の関わったPPP/PFI事業施設の写真を並べて貼り付ければ簡単で効果的だろうと考えていました。しかしながら、それぞれについて著作権に係る許諾を得る必要があることに気づいたので、残念ながら写真掲載は次回とします。そこで代わりに我々の取り組み方針を一つ紹介します。

PPP/PFI事業に係るコンサルティングは定型的な内容も多いのですが、昨年度受託業務で『事業用地の公募』や『DBO方式における連帯保証導入』に取り組んだように、我々は事業の特徴を踏まえ、発注者の想いを汲み取って、新しい提案や工夫を心掛けた活動をしています。図は、サービス付き高齢者向け住宅の新しい事業手法としてプロパティマネジメント会社主導の事業方式を提案しているものです。

図2 サービス付き高齢者向け住宅の事業手法提案(出所:杉方、石原 2016)

図2 サービス付き高齢者向け住宅の事業手法提案(出所:杉方、石原 2016)

②まちなかの再生や魅力的な都市空間形成をテーマにしたまちづくり

都市政策グループでは、まちなかの再生や魅力的な都市空間形成をテーマにした、調査の実施や計画策定支援、コンサルティングを行うことによって自治体や地域のまちづくりをお手伝いしています。

ここでは、新しい都市空間形成のビジョン策定から、そのビジョンを具体化していく取組みまで、都市政策の立案策定と実践に関わっている愛媛県松山市の例をご紹介します。

【「松山の都市デザイン」の策定】

愛媛県の県庁所在地、松山市は四国で最大の都市です。これまでにNSRIでは、「松山市中心市街地活性化基本計画」の策定や、「松山市景観計画」の改定など、市中心部の活力向上や空間形成に関わる複数の計画等の策定に関わってきましたが、中でも特色のあるものが「松山の都市デザイン」の策定支援です。

「松山の都市デザイン」は、全国的にもあまり例のない、自治体が都市全体を対象として、都市デザインをテーマにした指針を策定しているものです。今後の松山市の景観づくりやまちづくりで、大切にすべき価値やめざす都市の姿、その実現に向けての方策等、「民」「学」「公」が連携しながら取り組んでいく上で、認識を共有すべき内容を示すものとして定められました。松山市が定めるそれぞれの法定計画や部門別計画に対して、「都市デザイン」という視点から分野横断的に位置付けられている点に、その特色があります。(図3)

図3 「松山の都市デザイン」の位置づけ 出典:「松山の都市デザイン」(平成27年3月 松山市)

図3 「松山の都市デザイン」の位置づけ 出典:「松山の都市デザイン」(平成27年3月 松山市)

■指針としての構成
都市デザインの目標を設定し、これに照らして、松山市の特色と個性を踏まえた「都市デザインのテーマ」を5つ設定しました。さらに、今後、重視していくべきことを鳥瞰的なスケールからアイレベルまで、3つのスケールに分けて「都市デザインの方向性」として整理しています。また、具体化するために取り組むべき内容を、構想の策定や公共施設の質のあり方、都市デザインの普及・啓発など、ハードのみならずソフトの部分も含めて取扱い、それを「都市デザインの手法」として整理しています。(図4)

図4 都市デザインの目標とテーマ 出典:「松山の都市デザイン」(平成27年3月 松山市)

図4 都市デザインの目標とテーマ 出典:「松山の都市デザイン」(平成27年3月 松山市)

【NSRI自主研究 PubL(パブル)】

「松山の都市デザイン」のような政策を現実のものとするためには、都市空間の魅力向上につながる具体的なプロジェクトやプログラムの実施が必要です。そこで、「松山の都市デザイン」において「都市デザインの手法」の1つとして位置付けた、「都市のアクティビティをデザインする」を具体化する取り組みとして、松山市の中心部において、公共空間の魅力的な利用を図ることにより、都市空間の質を高め、エリアの価値を高めるための実証実験を行うことにしました。NSRIの自主研究「PubL(パブル)」です。

平成27年8月~9月の2週間にわたって行った実験では、松山市の中心商店街である大街道商店街において、折り畳みのイスやテーブル、植栽や照明など、簡単に持ち運びのできるツールだけを使用して、市道空間に「市民のためのリビング」を設置しました。その結果、年代や人数、利用形態が異なる様々な人々に利用され、道路という公共空間が市民の心地よい居場所となりうることを検証することができました。(図5、図6)
 

図5 実証実験の様子

図5 実証実験の様子

図6 実証実験への利用者の評価

図6 実証実験への利用者の評価

PubLは、単に研究のための実験ではなく、市民が魅力的な空間を体験することにより、公共空間の新たな可能性を実感し、都市空間の質の向上に向けた、次の一歩へとつなげることを志向しています。このため、松山市とNSRIとが連携することにより、合計3回の実証実験を行うというユニークなアプローチを取り入れています。その成果を踏まえて、こうした場を常設的に設置し、管理運営していくための検討や仕組みづくりが続いています。

自主研究「PubL」の成果は、下記のようなリーフレットにとりまとめています。詳しくお知りになりたい方は、どうぞお気軽にお問合せ下さい。
また、PubLのことを紹介した記事についてもあわせてご参照ください。
http://www.realpublicestate.jp/estate/1671/

図7 自主研究PubLの成果をまとめたリーフレット

図7 自主研究PubLの成果をまとめたリーフレット