No.105

2016年07月28日

VIEW 主任研究員 河野 匡志(かわの まさし)
全面自由化によりエネルギー分野も選択の時代へ

2016年4月、電気事業の小売り全面自由化、熱供給事業の自由化がスタートし、来年2017年からは残されたガス事業についても小売り全面自由化となります。いよいよ、電気、ガス、熱といったエネルギーの事業者をユーザー自らが自由に選択できるようになります。

通信分野における自由化

自由化といえば、今から15年ほど前の2001年5月、「マイライン」サービスの開始、は記憶に新しいことと思います。「マイライン」サービスは、①市内通話、②同一県内の市外通話、③県外への通話、④国際電話の各区分で電話会社を登録しておくことで、識別番号なしにユーザーが選定した電話会社を利用できるサービスで、通信自由化の歴史のなかで公正競争及び利用者利便の観点から導入されたものでした。そんな、通信自由化を少し調べてみると、日本電信電話がNTTとして民営化された1985年(今から約30年前)にまで遡るようです。改めてその自由化後を振り返ってみると、通信事業者間の活発な競争を経て、通信産業が成長産業に進展し、通信サービスの低廉化、通信ネットワークの高度化、インターネット関連サービスの多様化など様々な形で我々の生活利便性が飛躍的に向上したことをまさに実感できると思います。

エネルギー分野における自由化

通信自由化の歴史は30年ですが、電気やガスの自由化も実は約20年前からスタートしています(図)。今年(2016年)や来年(2017年)は、「規制分野」と呼ばれる「自由化されていない分野」がなくなり、電気、ガス、熱のエネルギー事業者を、全てのユーザーが自由に選択できるようになる節目の年といえます。またエネルギー事業者にとっては、これまで以上に、新たな競争が始まるスタートの年となっています。

先陣をきって、多種多様な「ICT産業」を創出した通信自由化に学ぶところは多いと思いますが、エネルギーには、どうやって作られたのか見えない部分があります。

電気であれば、環境負荷の小さな太陽光発電などから創られた電気、石炭を燃やしてつくられた環境負荷の大きな電気、またガスであれば、輸入した天然ガスから製造されたガス、バイオ原料から創出したガスといった具合に、ユーザーが興味を持たないと見過ごしてしまうことが多々あります。

「供給サイド」に立つ“エネルギー事業者”は、環境負荷の小さなエネルギーを低廉化する努力、「需要サイド」に立つ“エネルギーユーザー”は、自らのエネルギー使用実態をしっかりと把握し、最適なエネルギーを選択していく努力が双方で必要になると考えます。

これからは、電気、ガス、通信をワンセットにしたサービス、電気とガスの両方を提供する統合サービス、再生可能エネルギーを活用した付加価値の高いエネルギー供給サービスなど様々なサービスが次々と登場してきます。

エネルギーの自由化によって、省エネルギー技術や創エネルギー技術の更なる進展、エネルギーユーザー利便性の更なる向上を実現しながら、輸入依存であるわが国のエネルギー自給率の向上、地球環境負荷の低減につながっていくことにも期待したいと思います。

約15年先の2030年は、エネルギーの自由化スタートから約30年となり、通信自由化が刻んできた現在の年数と同じ年数を迎えます。自由化後の未来は、果たしてどんな姿になっているでしょうか?より良い方向を向いた未来を、将来、改めて確かめてみたいと思います。
 

電気事業並びにガス事業の自由化部門拡大の変遷

電気事業並びにガス事業の自由化部門拡大の変遷

八ヶ岳-硫黄岳にて

八ヶ岳-硫黄岳にて

筆者の紹介

主任研究員 河野 匡志(かわの まさし)

 
[ 専門分野 ]
  • 建物のライフサイクルエネルギーマネジメント評価
  • 環境・エネルギーの総合計画・施策策定支援

昨年から山登りを始めました。今年はどの山に登ろうかな?とテレビ番組をみたり、雑誌で調べたり、山グッズを買ったりしながら“探す楽しみ”、また良い景色を眺めたり、写真を撮ったり、下山後に温泉に寄ったりと“登る楽しみ”など、いろんな楽しみを満喫しています。