No.89 シリーズ "NSRIは何をしている会社?" 第2回

2014年08月20日

VIEW NSRIの組織体制と取り組み

本年1月より組織体制が再編され、以下の5つのグループ制となりました。

  • ZEB(低炭素建築) グループ
  • スマートシティ グループ
  • モビリティデザイン グループ
  • エネルギーマネジメント グループ
  • 都市開発 グループ

VIEWでは、88号から各グループの取り組み・サービスについてシリーズで紹介しています。
第2回は、エネルギーマネジメントグループの取り組み・サービスの紹介Vol.2です。

エネルギーマネジメントグループのご紹介 Vol.2 


ーインテリジェントBEMSー

エネルギーマネジメントグループの第2弾として、IT技術を利用したより高度なBEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)について紹介します。

多くのビルオーナーにとって、エネルギー費の削減は関心の高い問題ですが、これまでは現場のビル管理者の経験と勘を頼りに省エネを行っているというのがほとんどでした。もちろんこれでもある程度の省エネ効果は期待できますが、例えば、冷凍機の冷水温度を何度にすると最も省エネか?といった問いに対する答えを見出すことはできません。こうした、より高度できめ細かい省エネをめざすために開発されたのが、インテリジェントBEMSです。

インテリジェントBEMSは、①計測計量(メーター、センサーなど)→②データ伝送→③データ保存→④データ分析→⑤最適運転アドバイス→①計測計量、というサイクルを繰り返すことによって成り立っています。従来のBEMSは、すべての装置をビル内に設置し、ビルオーナーやビル管理者が自ら操作をする、というものがほとんどでした。また、高度な分析機能や最適運転アドバイス機能を持ったものはほとんどありません。インテリジェントBEMSでは、このうちビル内に必要なのは①と②だけです。ビル内で集めたエネルギーデータはビル外でも閲覧・分析できるように、インターネットを利用して外部サーバー等に保存されます(③)。更に、集めたデータを、エネルギーシミュレーターを用いて分析し(④)、最適な運転状態を探り出して実際の運転に反映させます(⑤)。これを図で表したのが、図-1です。

図-1 インテリジェントBEMSの概要

エネルギーシミュレーターには、国土交通省のLCEMツール※1を用いています。LCEMツール、建物の空調エネルギーの計算値(理論値)と実績値とを比較することによって、運転上のフォールトを発見したり、より効率的な運転方法を見出すためのツールです。このツールを用いて、エキスパートが遠隔でエネルギー分析・アドバイスを行うところに、インテリジェントBEMSの大きな特徴があります(図-2)。

図-2 LCEMツールを用いた空調エネルギー分析

インテリジェントBEMSを省エネに活用している事例として、東京スカイツリータウン を紹介します。ここでは地域冷暖房(DHC)を採用し、DHCと需要家が協力して街区全体のエネルギーマネジメントを行っています。すなわち、インターネットを利用して街区およびDHCのエネルギーデータを外部サーバーに保管し、外部でのデータ分析を行ったり、テナントがパソコンで自分たちのエネルギー消費量を確認できるようにしています。また、徹底したエネルギー管理を行うために、すべてのテナントの電力量と熱量の計量を行っています。

また、街区とDHC全体でLCEMツールを導入し、空調シミュレーションを行っています。DHCでは、ターボ冷凍機の冷却水の最適温度分析など、詳細なエネルギー分析を行い、その結果、全国DHCの中でもトップクラスの一次エネルギー効率(COP※2)を達成しています(図-3)。

図-3 DHC一次エネルギー効率(COP)

ーコミッショニングー

お客さまの建物に期待する性能を確実に実現することを支援する手法の一つがコミッショニングです。具体的には、計画・設計段階において目標性能、目標値及びその実現条件を明確化し、これに基づいて設計・施工・運用の状況をレビューします。

建物の設計段階から省エネのコミッショニングを行っている事例を紹介します。韓国ソウルに建設中の第二ロッテワールドは、地上123階、延床面積約78万㎡の大規模複合施設です。ここでは、他社の設計に対し、NSRIがコミッショニングオーソリティ(CA:Commissioning Authority)としてビルオーナーに省エネコンサルティングを行っています。

具体的には、CO2排出量30%削減を目標に掲げ、設計・施工の各フェーズで、省エネに関するさまざまな提案と、設計・施工図書のレビューを行いました。2016年の竣工(予定)後も、引き続き運用段階の省エネコミッショニングを目指しています。

図-4 第二ロッテワールド全景と省エネ手法の提案

こうしたコミッショニングを実施することによって、建物のライフサイクルによって多くの関係者が入れ替わっていく中で、設計意図や省エネ目標を確実に伝達し、目標を達成することが可能になります。

図-5 建物のライフサイクルコミッショニング

※1 :Life-Cycle Energy Management
    国土交通省官庁営繕LCEMホームページ
※2 :COP(Co-efficiency of Performance)=供給熱量/エネルギー消費量
    冷凍機等のエネルギー効率を表す指標。数字が大きいほど、効率がよいことを表す。