No.92 シリーズ "NSRIは何をしている会社?" 第4回

2015年02月03日

VIEW NSRIの組織体制と取り組み

本年1月より組織体制が再編され、以下の7つのグループ制となりました。

  • ZEB(低炭素建築) グループ
  • スマートシティ グループ
  • モビリティデザイン グループ
  • エネルギーマネジメント グループ
  • 都市政策 グループ
  • 都市開発 グループ
  • 海外・戦略 グループ

VIEWでは、88号から各グループの取り組み・サービスについてシリーズで紹介しています。
第4回は、モビリティデザイン グループの取り組み・サービスの紹介Vol.2です。

モビリティデザイングループのご紹介 Vol.2 


ー4つのピラー・プロジェクトー

モビリティデザイングループの携わるプロジェクトは、以下の4つの柱で表現されます。

① 交通まちづくりビジョン策定
② 鉄道沿線エリアの街づくり(TOD)
③ 交通需要マネジメント
④ 次世代型「Mobility + 1」の街づくり

前回は、1.交通まちづくりビジョン策定と国内外の 2.鉄道沿線エリアの街づくり(TOD)を題材として取り上げました。今回は、3.交通需要マネジメント、4.先端ICT技術を活用した次世代型「Mobility + 1」の街づくりをご紹介します。


図-1 モビリティデザインの4つの柱

ー交通需要マネジメントー
■ 駐車場デポジットシステム(PDS: Parking Deposit System)
 

爆発的に増加する都市の自動車需要を適正にコントロールするため、近年、海外ではロードプライシング(特定エリアへの自動車の乗入れ課金制度)が注目されています。しかし、この方法は市民の受容性が低いといった深刻な課題を有しています。モビリティデザイングループは、名古屋大学未来社会創造機構・森川高行教授が提唱するPDSの有効性を、市民受容性や交通需要面から実証的に検証しました。その結果、PDSは通過交通の排除にターゲットを置くことで、市民受容性を高める効果を有することが示されました。これからの有効な交通需要マネジメント施策のひとつとして、国内外の都市への実証的な展開を目指していきます。


図-2 駐車場デポジットシステムのイメージ

■ ベトナムにおけるJCMを活用した交通需要マネジメント

人口の爆発的な増加が見込まれる新興国の主要都市においては、バイク・自動車等の私的交通による慢性的な交通渋滞が起きており、公共交通へのモーダルシフトをいかに支援するかは重要な課題といえます。モビリティデザイングループでは、ベトナムのホーチミン市において、大型商業施設を活用した交通需要管理マネジメントの実証事業に参加、これを世界初のJCM(Joint Crediting Mechanism; 二国間排出権取引)として登録することで、持続的な交通需要管理モデルの開発することを目指しています。

図-3 大型商業施設を活用した交通需要管理マネジメントのイメージ

 ■次世代型「Mobility + 1」の街づくり

激変する社会環境(例:高齢化、人口減少等)への対応として、交通インフラを活用することにより、都市空間の付加価値を高めるようなソリューションが生み出せないだろうか・・・。このような問題意識からモビリティデザイングループが取り組んでいるのが、従来の移動機関=モビリティの概念に別の要素を加えて新たな提案を行う、すなわち「Mobility + 1」の街づくりです。


高齢化社会における医療・交通統合型ICTまちづくり

超高齢化社会の進展は、特に中山間地域などの地方部で深刻となります。このような地域では、公共交通網が十分でないため、高齢者の病院等への通院環境が不便なケースが多く見受けられます。このような現状を踏まえ、総務省の研究資金を得て、名古屋大学(森川高行教授)、岐阜大学(小倉真治教授)との共同研究として、愛知県豊田市足助地域(足助病院)をフィールドした医療・交通統合型のICTまちづくりの実証研究を行いました。具体的には、高齢者にICカード(あすけあいカード)を配布し、このカードをコミュニティバスの交通決済と医療情報カードとして活用できようにすることで、高齢者の生活改善を目指しました。

図-4 医療・交通統合型ICTまちづくりのイメージ


低炭素交通システムを実現するモビリティデザインの方向性


今後、電気自動車(EV)が普及するに際して、どのようなライフスタイルが実現されるのか?
NSRIは、電気自動車(EV)の普及とあわせて、交通分野の低炭素化を実現するため、都市インフラと社会制度のあり方について検討を行いました。具体的には、有識者との意見交換を経てEV社会における低炭素モビリティ社会のデザイン像を提案するとともに、それらの効果を検証するため、パーソントリップ調査を活用した定量的なCO2削減効果や3D都市空間温熱シミュレーションによる評価を実施しました(環境省地球環境研究総合推進費の助成を受けて実施)。

図-5 EV社会における低炭素モビリティ社会のイメージ

「Mobility+1」のうち「1」については、高齢化、少子化、安全安心、産業創造等、今後解決すべき様々な都市問題が考えられます。モビリティデザイングループは、モビリティの多様化・活用・先鋭化などの可能性を通じて、これらの問題に対する新たなソリューションを提案していきたいと考えています。