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岡 ロシアは資源国であるが故に日本と異なり、住宅や都市での省エネ導入のモチベーションが働きにくいと聞いたことがありますが、その中で、都市のコンパクト化やスマート化に繋がるTODは、どのように受け入れられていったのでしょうか?石川 ロシアの大都市は深刻な交通渋滞を抱えており、我が国にはその対策の一助となるTODについて多くの実績があります。我々がロシアでアピールするには、政策導入のモチベーションがそれほど高くない省エネより、実績のある「TOD」を機軸にした提案に絞ることが有効ではないかと思い、取組んできました。私とロシアとの最初の関わりは、2012年に開催されたモスクワ市拡張計画のコンペで、露英日JVチームの一員として参加しました。日建グループは主として拡張エリア(約1500㎢)のコンセプトプランの作成を担当し、拡張エリアを徹底モスクワ市の中心部は深刻な交通渋滞を抱えていることから、拡張エリアについては最初から交通渋滞の抑制や、自然環境との共生というテーマを織り込み、公共交通を主体とする移動環境とコンパクトな市街地を実現するため、我が国のコンパクトシティ政策と鉄道沿線開発をトレースして提案しました。残念ながらコンペの最優秀案には採択されませんでしたが、このTODコンセプトは、コンペを計画していたモスクワ市の都市政策研究所(GENPLAN研究所)の所長から高い評価を受け、その後モスクワ市政府をはじめとする都市政策関係者とのお付き合いが始まりました。TODそのものは新しい考え方ではありませんが、モスクワは欧州の都市の中でも特殊で、1,000万人を超える巨大都市です。街並みは全くの「欧州」ですが、都市の規模や人口密度はど赤の広場に建つロシア正教会の聖ワシリイ大聖堂的なTOD型都市構造にすることを提案しました。インタビュー左 |石川上席研究員 右 |岡研究員2TOD政策のロシアへの提案ロシアで展開される日本型の街づくり−日建グループの取組み−モスクワを始めとするロシアの大都市においても、アジアの新興都市と同様、交通渋滞は深刻です。そうした中、地下鉄等の利用促進により交通渋滞の改善に寄与するTOD(Transit Oriented Development:公共交通指向型開発)への関心が高まり、その取組みが始まっています。TODをはじめとする我が国の都市課題解決のノウハウを、ロシアの都市再生・環境改善に活かすべく進めている、日露政府間での街づくりに関する協力の一端をご紹介します。Interview

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