VIEW124 Oct 2019
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6ウェルネスを目指した新しいオフィスモデル(スマートウェルネスオフィス:SWO)が求められるのには、3つの社会的背景があります。1つ目は不動産市場においてESG(Environment, Social, Governance)投資に注目が集まりつつあること、2つ目は従業員の健康を志向する健康経営を標榜する企業が増加していること、3つ目は知的生産性の向上のために働き方そのものを改革するCASBEE-WOでは、「健康」「知的生産性」「安全・安心」の3つの軸で評価を行います。室内空気や 光環境レベルのように執務者の健康や快適性に直接的に影響を与える要素だけでなく、オフィス空間のしつらえや什器配置のように知的生産必要があることです。 SWOでは、従来からある災害対応としてのレジリエンス性、省エネルギーや省資源の推進、室内環境の快適性のほかに、健康に資する環境の充実や知的生産性に貢献する創造的環境といった概念も考慮する必要があり、新たな評価ツールを開発することとなりました。現在、評価ツールとしてはCASBEE-ウェルネスオフィス(CASBEE-WO)とCASBEE-オフィス健康チェックリストが公開されており、SWO 認証に利用されています。また将来的には、SWO認証の普及とともに不動産鑑定評価基準に反映されることも目指しています。性向上に資する要因も健康の間接的要因ととらえ併せて評価します。また、災害対応や有害物質対策のような安全・安心性能についても欠かせない項目として評価します。最後に、知的生産性に関しては、 林研究室でも様々な研究を行っています。例えば、室内環境と知的生産性の関連では、知的生産性は環境における満足要因よりも不満要因と関係性が高いという知見が得られました。また作業性との関係では、作業の集中度はある程度劣悪な環境でも相応に維持できるが、室内環境が悪いと肉体的疲労や心理的な負荷の要因となり、気力の低下に影響を与え、最終的には病気による欠勤予備軍になる可能性が示されました。 勉強会企画者高橋 直樹|たかはし なおき上席研究員これまでは、室内環境の快適性や省エネの推進が注目されていましたが、これからは健康維持や生産性向上等が社会から求められることがわかりました。それらを幅広いステークホルダーに説得できるエビデンスの確立が今後のポイントとなりそうです。勉強会日建設計総合研究所が日建グループ向けに開催する勉強会をご紹介しますウェルネスオフィス評価の開発と知的生産性の研究[講師] 千葉大学大学院 工学研究院創成工学専攻建築学コース                     准教授 林 立也(はやし たつや)氏ウェルネスを目指した新しいオフィスモデルを実現するための評価手法の開発状況と、オフィスにおいて本来的に求められる知的生産性向上に関する最新研究成果について、ご講演いただきました。Study Session

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