view126 Apr 2020
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名古屋大学では、6年毎にキャンパスマスタープランを策定しており、CO2削減目標を2024年度までに2005年度比30%削減としています。この実現のため、教職協働体制によるエネルギーマネジメントを展開しており、20年にわたって包括的・持続的な省エネルギー対策を実践してきました。この対策の推進においては、エビデンス・ベースド・アプローチが強く意識されています。例えば、空調温度1℃緩和の省エネルギー効果については、建物一棟貸し切り実験によって、大学の主要な建物・空調設備の仕様では冷房時に効果は高く、暖房時には低いことを検証し、これを夏のみの対策としました。また、省エネ・節電に対する様々な協力要請を行い、空調温度の設定状況をモニタリングして効果とその持続性を観察しました。様々な協力要請のうち「メール配信」、「チラシ配布」は効果が薄く、「学生の巡回」は効果的であったため、キャンペーン手法に採用しました。ビル用マルチ空調の省エネ制御として、消し忘れ防止を目的に定時空調停止を行っていますが、ユーザーから真夏の昼間の空調停止は“ピーク電力増”や“増エネ”につながると指摘がありました。実態として、空調停止後に一斉に空調を再起動することはなく、寧ろピーク電力の抑制や電力消費量の削減に貢献することを検証して示し、ユーザー理解を求めました。エネルギー消費の見える化は、情報系教員や技術員により独自に開発しています。主要3キャンパスの30分ごとの使用電力の推移や契約電力値に対する割合が確認できます。また、東山キャンパスでは、主要建物別に電力とガスの消費量、そしてエネルギーコストを“見える化”して公開しています。また、学内の膨大なエネルギー消費データをデータ統合システムに蓄積し、これを活用したデータ駆動型AIエネルギーマネジメント方策を考案中です。2018年度のCO2排出量は、2005年度に比べ25.7%削減しました。勉強会企画者湯澤 秀樹|ゆざわ ひでき理事大学施設部、教員、学生の要の立場にある田中先生のご講演は、エビデンスを重要と考える弊社のコンサルティングと共感する部分が多く、また新鮮なものでした。大学が抱える脱炭素化・BCP対策などの重要課題解決に弊社も貢献できるという想いを強くいたしました。勉強会日建設計総合研究所が日建グループ向けに開催する勉強会をご紹介します6エビデンスに基づいたキャンパス・エネルギーマネジメント− 教職協働による名古屋大学の実践 −[講師] 名古屋大学 施設・環境計画推進室 教授 田中 英紀(たなか ひでき)氏氏名古屋大学は9 学部13 研究科を擁する総合大学で、430 棟、延べ床面積79 万㎡の建物があります。教職員と学生が協働した先導的な省エネルギー対策は、平成29 年度省エネ大賞(省エネ事例部門)資資源エネルギー庁長官賞を受賞しました。本プロジェクトをご担当された田中先生にお話を伺いました。Study Session

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