「ID」)」という言葉はあまり聞き慣れませんが、UDとはどのように違うのでしょうか?児玉 UDとIDにはそれぞれ、「全ての人が使いやすいデザイン」と、そうしたデザインを生み出すために「みんなで話し合いながら行うデザイン活動」、という意味があります。当事者が参加するという点がIDのポイントで、その過程で設計者は当事者の困りごとを深く理解し、よりよいデザインを生み出せるようになると考えます。飯田 設計者は設計基準―例えば車いすの回転のためには所定の寸法以上の空間を用意しなければならないといった基準―に適うよう建物を設計できますが、だからといって必ずしも当事者のことを理解できているわけではありません。私自身建築設計に長く関わってきましたが、国交省への出向を通じてバリアフリーの設計標準の改正に携わるまでは、私たちにとって当たり前の社会生活を送るのに、これほど困っている人がいるのだということを知りませんでした。移動時に困難を感じる人が2030年で3人に1人日建グループに眠るアイデアを新規事業開発・イノベーション創出に繋ぐために開催しているグループ内コンテスト。今年から、社会課題解決や新たな価値創出に向けた研究開発テーマの募集も始まりました。本コンテストで優秀賞を受賞した「Nikken Inclusive Designism」チームの筆頭提案者である飯田 和哉さん(日建設計)と、日建設計総合研究所の児玉シニアフェロー、大嶋研究員に話を聞きました。NIKKEN Social Inclusive Designismとは?松田 この度は、優秀賞の受賞おめでとうございます。早速ですが、皆さんのご提案内容についてお聞かせください。飯田 ありがとうございます。「NIKKENSocialInclusiveDesignism」は、「みんなのためのインクルーシブな未来をつくる」を目標に掲げ、社内外で連携可能な「インクルーシブデザインラボ」チームの設立、新たなユニバーサルデザインガイドラインの作成、イベント等の開催による社内外との協創の3つの活動を盛り込んだ提案です。提案メンバーは、この3名と日建設計の西勇さん、中川一晃さんの計5名でインクルーシブデザインについての今後の展開と展望を期待しながら考えました。松田 東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を経て、LGBT理解増進法の成立や障害者差別解消法の改正等、ユニバーサルデザイン(以下、「UD」)による多様性への配慮は、強い社会的な要請となっていますね。大嶋 仰る通り、UD等の環境整備はこれからのよりよい社会づくりに欠かせない視点です。「インクルーシブデザイン」の意味と 当事者理解松田 「インクルーシブデザイン(以下、2インタビュー65歳以上2022年30%2050年50%障がい者2022年8%LGBTQ+2020年9%出典:令和4年総務省統計局・障害者白書データ、電通LGBTQ+調査2020(対象:6万人)在留外国人2022年2%2050年5%みんなのためのインクルーシブな未来をつくるNIKKEN Social Inclusive DesignismInterview
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