不自由の仕組みを理解し、それを外在化させることで、新たなサービスや包括的なデザインを創出するガイドラインは、そうした蓄積やIDイベント開催等で得られた知見を踏まえて、当事者目線を持ちながら、都市や建築をつくる方が社会実装に導く一助になるものを目指したいと考えています。児玉 飯田さんにとってのバリアフリー建築設計標準の改正や、私や大嶋さんにとっての大阪・関西万博業務のように、きっかけとなる出来事があれば全ての人がUDやIDの重要性を理解することができると思います。「イベント等の開催による社内外との連携」をガイドラインの作成と並ぶ提案の柱の一つとしたのは、業界全体を巻き込んで、そうした経験のきっかけを増やし、将来IDが当たり前になるような世界を作る第一歩としたいとの考えからでした。飯田「NIKKENSocialInclusiveDesignism」には、NIKKENから業界全体を巻き込むムーブメント、「イズム」を作るというメッセージを込めているのです。4誰もが当事者になれる松田 最近多くの人々が話題にしたデザインを考えると、ジェンダーレストイレを巡る議論が思い出されます。それもIDと言えるのでしょうか?大嶋 多くの人々が様々な立場で考えて、デザインに関する議論を発信したという点ではIDの芽となる要素はあるかもしれません。IDとは、障がいをお持ちの方などの少数派と呼ばれる人だけのための言葉ではありません。建築を使う人、街に住んでいる人、誰もが当事者として、デザインに関わることができるのがIDの考え方です。飯田 IDは、答えのない問に、いかなる特性による隔てもなく、みんなで取り組むための方法です。失敗することもあるかもしれませんが、議論を尽くし、知見を積み重ねていくことが、よいデザインを生み出す土壌になると信じています。一般的なUDの理解・取り組み配慮はされているが、社会や環境とバリアフリー(BF)ユニバーサルデザイン(UD)一体にはなれていない状態インクルーシブデザイン(ID)個々の状態や経験、文化的価値を丁寧に理解を深める手法、社会や環境が人々の多様性を当たり前に包括する状態未来の環境デザイン目指す姿作図:西 勇社会的障壁や多様性等を「医学・工学モデル」ではなく「社会モデル」として理解を深める
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