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第163回都市経営フォーラム

都市再生について

講師:伊藤 滋 氏
早稲田大学教授・慶応義塾大学客員教授


日付:2001年7月13日(金)
場所:後楽国際ビルディング大ホール

 

構造改革と巨大都市圏東京・大阪/国際経済の波にのみこまれる東京・大阪

経済活性化に貢献する公共投資/スピードが要求される都市再生事業

規制緩和と国際ビジネス特区/限定される再開発対象地域

フリーディスカッション



 今年の1月にも都市再生について、「都市再生推進懇談会」報告を中心にお話しましたが、用意したメモした項目の半分ぐらいしかしゃべってなかったと思いますので、もう一回おさらいになるかもしれませんが、そもそも「都市再生について」ということで話をしてまいります。
 前回、私は大都市再生懇談会の報告を自分がまとめましたから、割合威張ってしゃべりました。今回の都市再生本部というのは役人の集団で、私たち学校の教師には関係なく動いています。ですから、彼らのやっていることを外側から見ながら話をする。1月はインサイダーで話をしましたけれども、今回はアウトサイダーで話をすることになると思います。
 メモのところに、「構造改革と巨大都市圏東京・大阪」「国際経済の波にのみこまれる東京・大阪」、(1)と(2)と書いてありますが、これは多分1つのグループです。
 「限定される再開発対象地域」と「規制緩和と国際ビジネス特区」、(4)と(5)も1つの項目になります。
 (3)と(7)、「経済活性化に貢献する公共投資」と「スピードが要求される都市再生事業」、これが多分1つになります。
 (6)は飾りですから、しゃべらないかもしれません。
 以上3つのグルーピングで話すことになると思います。

構造改革と巨大都市圏東京・大阪、国際経済の波にのみこまれる東京・大阪

 「構造改革」と大上段に振りかざしておりますが、とことん構造改革を突っ込んでまいりますと、最終的には銀行救済という話とつながってきます。担保にした土地の値段がどんどん下がっている。株価が下がれば担保価格も下がる。そういうことで、生命保険も同じですが、銀行が持っている資産が株価に連動し、地価に連動して目減りするというのが今でも続いているわけです。
 構造改革といって、聞こえはいいんですが、土地の値段を下げないためにどうするかというのが一番重要な政府のお役人の問題だと私は思うんです。きれい事はいろいろついていますけれども。ですから、つい10年ぐらいまでは土地の値段は上がり過ぎたから下がれ下がれといったんですが、21世紀は土地の値段が下がり続けると困るから上げろ上げろという。問題は、土地の値段が下がるといっても、皆様の持っている土地の値段が下がるのは関係なくて、先ほどいったように、不良債権化している土地の値段が下がる。そういうところをどこかに買ってもらわなきゃいけないということです。
 ところが、不良債権化した土地が一体どこにあるかというのが、客観的に全部わかっているかというとわからない。しかし、いろいろ調査をした地図みたいなのがありまして、例えば、民間都市開発推進機構がおととしぐらいから、不良債権化した土地をとりあえずお金を貸し付けて、そこでゼネコンさんが仕事をして、でき上がったら金を返してもらうというのをやっています。
 東急日本橋店も、東急さんがその仕掛けを使っているはずです。民都機構の金を借りている。それから、ホテルニュージャパンも民都機構の金が入ってます。
 そういう民都機構の調査をパラパラと見ますと、不良債権がどこか特定の場所に固まっていればいいんですが、23区にくまなく、小さいがんの細胞が体内に散らばっているように、散っているんです。ですから、それを1つ1つ手当てしたってどうしようもない。だけど、現実として、それに銀行屋さんの抵当権を設定した価格を下回る状況になっているのを何とかとめなきゃいけない。これが基本的に構造改革のスタートだと思うわけです。
 ですから、公共事業をやれとか、規制改革をやれというのもいいんですけれども、まずはその土地をだれかに買ってくれという話になります。これは今の銀行の不良債権だけではなくて、目を全国規模に転じますと、ご存じの厚生年金。実は高山英華という私の先生が、昔、厚生年金を社会還元するのにどうしたらいいかということで、そのときはまじめに考えて、国民大衆、特にブルーカラーの工場で汗まみれになっている労働者が家庭を持ったときに、安い値段で自然に親しむ、そういう場所をつくるのが厚生年金の使い方としては筋が通ると、30年近く前にそういうことを頭に描いていまして、それが厚生年金の膨大なお金の積み上がりの中で、厚生省の役人もそういうことを考えて、高山さんの考えとがマッチして、大規模年金保養基地をつくったんです。1つの敷地規模が100万坪、そういうのを全国に十何カ所つくる。
 私が助教授だったときに、そこへアプローチしてきたのが、大蔵省の年格好が私ぐらいで、厚生省に出向していた人が来て、「こういうことを考えているんだけど、どうだろうか」というので、私は、「そういう天下国家を議論するのは助教授の分際では大変だから、我が師匠と相談したらどうですか」と、あっせんしちゃったんです。あっせんしてなかったら、私がこんなことをしゃべれた問題じゃないんです。
 それが大規模年金保養基地です。一等初めに着手したのはたしか大沼です。南紀、白浜の辺にもあります。指宿にもある。紀州とか指宿とか大沼というと格好がいいでしょう。しかし、それ以外にもあるんです。例えば、恵那、二本松、兵庫県に三木というところがあります。
 これが、実際に用地取得したのは20年ぐらい前で、建物を建てたのは古いのは15年ぐらい前です。まだ耐用年限はある。しかし、全然人が入らない。とうとう構造改革のやり玉に挙がって、厚生年金のプロジェクトで一番悪いやつはこの大規模年金保養基地だというので、処分しなきゃいけない。これも不良資産です。不良資産だけど、銀行の不良資産じゃない。厚生年金の不良資産。これも多分処分するはずです。厚生年金事業団が年金何とか基金となった。そこの傘の中に入れていちゃだめだ。とにかく外へ出してしまえ。相手は県庁であろうと、外資であろうと、企業であれ、何でもいい、とにかく出してしまえという話になってきているようです。これも一種の不良債権です。銀行にはかかわりない。
 銀行資産の23区に散らばっている担保価格を集めると、銀行が何兆不良資産持っているか知りませんけれども、仮に10兆ぐらいあったとしますと、東京の不良資産の担保価格が半分以上じゃないかと思います。それに目をつけて、中央政府、小泉内閣も考えざるを得ない。とすると、都市再生本部が今やっていることとはちょっとずれるんですけれども、これをどういうふうにして、担保価格が下がっている銀行の抱えていた不良資産を肩がわりさせるか。肩がわりさせる相手を探さなきゃいけない。
 企業は買わないでしょうね。外資もやけどを随分負っていますから、昔のように、ロット買いはしない。企業が買わなくて、外資が買わなかったら、残りは公の金です。ですから、私の読みは、その後始末をやる組織として民都機構というのは、もう一度いい受け皿となるのではないか。
 公団もありますが、公団は事業をしていますから、いいもの、悪いものの目がきくんですね。私は民都の研究所長をやっていますし、公団の方も運営委員会のキャップをやっているから、両方につき合っているんですけれども、公団というのは事業屋ですから、とにかく事業をして完成品を皆さんにお売りするのが最終目的。そうすると、完成品は皆さんが買ってくれる値段でなくちゃ受け取れないということで判断すると、公団の方が慎重で、民都は、泣く泣くまた不良資産を引き受けざるを得ないというところに追い込まれるかなというのが、客観的アウトサイダーの意見です。
 どうしようもない不良資産に、ゼネコンやディベロッパーがそういうところを、「いいですね、そこをお引き受けしましょう」とはいかない。富久町の例をごらんになってみればわかります。2年ほど前に、変なとんでもない不動産屋が、土地を食い荒らして逃げちゃった後、債権回収機構がそれを回収して、どうにかしろというので、公団に押しつけた。公団は泥沼に入っています。
 早稲田大学の先生、私の親友ですが、その研究室でもっともらしい模型をつくったら、新聞屋というのは無責任ですから、写真を載せて「こういう町にできるぞ。これは民間の大学の先生がやったから、悪いことはしてないだろう」というので、やったんですけれども、そんなのできるわけがない。
 人のいい顔をしていると、次々と公団は泥沼に引きずり込まされる危険性があります。ですから、それを避けている。ジョーカーをどこに回していくか、不良債権をだれが引き受けるかということでグルグル回っているんです。それが根本に1つある。
 具体的に、「おまえ、答えあるのか」というと、23区全部ということには答えはない。23区全部の不良債権化した土地をどうにかするという答えはないと思うんですが、例えば、都心4区、千代田区にはあまりないですから、中央区と港区と品川区と渋谷区ぐらいに散らばっている不良資産、そういうところの土地については、規制緩和とそれなりの公的補助をすれば、今の4区の不良資産はかなり回収できるのではないか。公的な組織、例えば、公団が土地を買うのではなくて、その土地を取得して地形をならして、補助金をどこかからもらって、全部やるという代理人、土地を完成品にして、フィーだけは公団がもらうという形で民間に売り出すということならば、民間でも買い手がつくかもしれないということです。
 なぜか。そこで国際経済という話と構造改革と結びつけていいますと、東京でビジネスされている方はおわかりのように、仕事をする場所は今いったようなところしかないんです。あと江東区。江東区は埋立地ですから。中央区はマンションなんかどんどん建っています。中央区は割合仕事ができそうな場所です。それから、港区もやっていますね。有名な不動産屋さんが代表。品川区もそうです。品川区のビジネスチャンスは何かというと、臨海線が今度グルッと回って、大崎から大井町を通って、1つ駅があって、天王洲へ行って、それから臨海に行く。天王洲と大井町の間の1つの駅というのは、この間入札があったJTの工場の前です。あれは品川区。このように品川区、港区、中央区、それに渋谷区でしょうか。
 例えば、外資系の土地を買いに来る人たちが、どこか支社をつくりたいんだけれども、いいビルないかといったときに選ぶのは、大体これぐらいのところです。
 そういうふうに考えていくと、これらの区の中で、外資も日本の国内資本も入れて、ここにとにかく土地を買っておけば、急激な土地の値下がりはない。それから、土地のブランドというのが非常に大事になってきた。ブランドとして今いった中央区、港区、渋谷区、品川区、江東区、大体この5つの区をいえば、外資系の人たちも、そこならオフィスを借りてもいいとか、土地を買ってもいい。あるいは大阪から東京に移ってくる元気のいいベンチャーでも、最終的にはその5つぐらいなら移ってもいいというブランドがだんだん確立されてきた。ブランドが確立された区の中の不良資産ならば、都市公団がフィービジネスで土地をきちっと整理して売りに出すというのなら、銀行の不良資産を民都機構が引き受けて、それを公団が手直しして民間に売るとか、民都機構ですから、10年間たつと買い戻し、そういうところとしておかしくはないというのが、私のアウトサイダーとしての見方です。
 じゃ、秋葉原はどうか。きょうは、まるで不動産屋の話みたいですけれども。(笑)秋葉原というのは非常におもしろい地域です。ですが、東京駅から神田を通って秋葉原といいますと、関西系の資本は、東京から向こうは蕃族が住んでいるというふうにしか見ないんです。(笑)どういう企業ならおもしろいかといいますと、東北には、製造業系でまとも企業はないんですが、北陸とか新潟には幾つかあるんです。新潟や北陸に本社を立地するとか、第1工場をつくった企業、そういう企業は浮気商売の商社とか不動産屋とかじゃくなくて、非常に着実な、私の大好きなメーカーですから、メーカーとすれば、風土というのが物すごく大事です。北陸の風土の風が一番近づくところは上野駅から秋葉原が終点。秋葉原はカッコいい。こういう企業が、秋葉原に触指が動く1つです。
 それから、もう1つは、ブランドとか旧体制に無関係、そんなのは眼中にないという新興勢力。新興勢力が秋葉原はおもしろいというかもしれません。
 ですから、秋葉原の問題は、ブランドという形で来る企業には、要するに品がよくない場所なんです。だけど、バイタリティーのある若者を主体にした、一丁やってやろうという企業と、北陸と北の風土、メーカーとしての風土のつながりから北から押し寄せてきたのの終点という意味で、そういう企業にはいいかもしれない。それ以外の区は、ほとんど皆様のビジネスチャンスの対象になる区ではないといっていい。
 犯罪が多いところは、ビジネスチャンスがあるから犯罪が多いんです。ただ、犯罪にもいろんな犯罪がありまして、外国人が銀行泥棒とか、そういうのをやるのは2種類の場所がある。1つは、新宿とか渋谷のような、若者がうごめいている中で、若い外国人の男の子、日本人とわからないです。ワァーッといって、2〜3階に駆け上がっていって、ピストルをバンバンとぶっぱなしておりてくるというのは、確率的に儲かるところです。
 もう1つは、家庭へ入り込むという新種の犯罪がある。家庭は景気悪いから共稼ぎで家に奥さんもいない。人がいないと思って安心して入っていく。そういう犯罪。2通りあるんです。
 今注目されている犯罪危険地帯は江戸川区や葛飾区です。江戸川区、葛飾区の新しくできた戸建て住宅地に、外国人を主体にした、建物に入り込んで現金を盗んでくる犯罪が物すごくふえています。
 もちろん、渋谷、新宿、池袋、こういうところはよくある犯罪で、日本人も入れて、あらゆる物取り、風俗もありますし、いろんな犯罪がある。
 いいたいのは、ビジネスチャンスがないところには犯罪は起きないということが正しいとすれば、23区で犯罪の起きている点をいっぱいつけますと、何らかの点がつくんですが、ほとんど点がつかない区が1つあるんです。私はいい加減なことをいっているんじゃなくて、警察庁の科学警察研究所の都市と犯罪の担当の専門家が警察署のデータをもとにして調べている。私は今その調査をずっと継続している。それはどこか。文京区です。文京区はほとんど犯罪の履歴がない。「文京区って、本当に静かですか」といったら、「谷根千」に住む森まゆみさんは「そうだ」というんです。
 子供の遊び場に子供を連れていって、他の奥様方から白い目で見られたので、自分の娘とつき合っている子供を殺したという、心臓が氷つくような女性の犯罪がありましたが、これは特殊な事例です。これはとてもお品のいい固い社会、それに適合しない若夫婦が入った悲劇でしょう。このように、文京区というのは物すごくガードが固い。だれも入れない。入っているのは大学の先生だけという感じ。(笑)文京区って、ビジネスチャンスがないということです。(笑)
 構造改革からちょっとずれましたが、いいたいのは、23区の中のさっきの4つか5つぐらいの区では、構造改革というのはビジネスチャンスであって、その中で不良債権も、ある程度の補助金とか、規制改革の流れの中での手直しを少しすれば、商品になるものができるという話です。



経済活性化に貢献する公共投資、スピードが要求される都市再生事業

 もう1つおもしろい話。「経済活性化に貢献する公共投資」と「スピードが要求される都市再生事業」。ここでやっと公共投資です。実は都市再生本部は何をやっているかといいますと、南関東で役人の掛け声だけじゃなくて、具体的に仕事が順調に進むプロジェクトは一体何かということを基調にして、防災と環境と経済活性化という三つの目的に合わせて、そういうプロジェクトがどれに向くかを分類整理するということをやっている。だから、今プロジェクトを一生懸命洗っているわけです。
 皆さん、ご存じだと思いますが、最近の新聞を見ていると、おもしろいんですが、都市再生本部がとりあえず3つだけ、南関東で選ぼうというので出したのがあります。1つが、東京湾臨海部の基幹的広域防災拠点の整備、要するに防災拠点。これが1つ。2番目、東京湾臨海部における廃棄物リサイクル施設の複合的整備。3番目、文部科学省、会計検査院庁舎等のPFIによる整備。
 これは東京都や千葉県や埼玉県や横浜市から出てきたいろんなプロジェクトを、役人ですから、きれいに整理して、最終的には東京湾臨海部の基幹的広域防災拠点の整備というのは、都市再生本部がうたう幾つかの高邁な目標、災害に強い都市構造の形成に、リサイクル施設の複合的整備というのは、持続発展可能な社会の構造というところにつながる。文部科学省、会計検査院庁舎のPFIによる整備というのは、民間主導による事業展開と、こうつがっているわけです。
 僕は役人のやっていることを批判しているわけじゃないですよ。ですが、片っ方で、さっきの不良債権の処理問題という緊急の課題を抱えて東京の土地をどう動かそうかということと、今いった公共的プロジェクトというのは、いかにも後の方が間延びがしているというか、できそうなんだけれども、できない。もしかすると、これは10年かかるかもしれない。特に廃棄物リサイクル施設の複合的整備というところにかかってくると、すぐそう思いますね。何をねらっているかというと、見え見えで、川崎製鉄の蘇我と川崎のNKKの南あたりなんです。東京湾臨海部における廃棄物リサイクル施設の複合的整備をする廃棄物コンビナートをどこにつくるか。確かに土地は空いています。貨物列車をそこに引き込むことは、昔の製鉄所ですから、引き込み線があるからできますし、道路もある。土建屋的にはいい場所だ。特に蘇我は非常に恵まれた、大型の船が入る水深17メートルの岸壁を持っています。
 ところが、問題は、廃棄物をそこに集めてリサイクルした製品をマーケットとして南関東の人たちに売れるか。川鉄が「100万坪、買ってくれて、どうぞお使いください」。政府は政府で、「わかりました」。そこへ厚生省が乗り込んでいって、そこにプラントをつくって、リサイクルした品物を製品化する。それを通産省が「はい、引き受けました」といって、引き受けて市場に出して黒字になる。こういうことが本当にできるなら、総合的整備は意味があるわけですが、絶対できないですね。
 なぜなら、仮に自動車を集めてスクラップ化して、マーケットに出すといったって、まず自動車メーカーと相談しないとだめかもしれないし、もしかすると、そんなところでスクラップ化するより、自動車を適当につぶしたやつを船に入れて、中国に持っていって、中国の山東省あたりの工場で廃棄物処理した方が、マーケットに出す製品としてはずっと安くなる。そういう市場の中での国際競争価格を意識して、廃棄物リサイクル施設の複合的整備と考えると、そうすぐにはいかない。
 汚染土壌を調べて、汚染土壌はきれいにしました。それから、道路もアクセスランクに入れました。鉄道も入ります。蘇我の100万坪のうち30万坪はきれいになりました。それで済むかというとそうじゃない。投資はしたけれども、投資が動かないということは、民間の資金を使うことでこのプロジェクトは本当に意味があるのかどうかというのが次の段階なんですが、それがない。
 都市再生で一番重要なのは、民間の金がどう動くかということなんです。民間の金が動き出せば都市再生の目的は100%達した。公共事業を入れなくたって、民間の金が動けば、小泉さん、涙を流して喜ぶでしょうね。
 あることをちょっと変えただけで、この日中友好会館の前のこの通りに、民間が公共事業を何も入れないでもビルをつくったとか、あるいはショッピングセンターを開いたというのが国にとっては一番いいことなんです。だけど、そういかないから、公共事業を使って、例えば、日中友好会館を建てかえるとすれば、前にきれいな公園でも政府の金を使ってつくって、ここは夏でも涼しい日影になって、パリの街角みたいに、コーヒー屋、スターバックスが来てとか、そうすると、民間の金が入る。そうするためには、公共事業の何がしかを入れなきゃならない。
 ですから、最終的には民間の金が東京や大阪の中でどういうふうに動くかということを、いつも念頭に入れながら公共事業の執行をやるのが、あくまでも経済から見た東京のつくり直しの筋道なんです。
 いろいろあります。僕なんかもいろいろしゃべりました。東京の環7周辺の木造密集地域、何回もしゃべりました。荒川から例の豊島区から中野から、木造密集地域に住んでいる人口を勘定すれば、100万は軽く上回って、200万ぐらい住んでいて、地震があればすぐに火が燃えて死ぬ危険性がある。東京都はこれに対しても何らかのことを答えなきゃならない。いま、もう本当に公共事業の金がない。借金でしかやれないというところに今追い込まれている。その公共事業の金を使って木造密集市街地の手直しをするのか。あるいは、再開発に公共の金を使うのか、というとそうではない。最終的にはどこでもいいから、公共事業を1億円入れたら、民間事業は10億の仕事をしてくれということが、東京のあらゆるところで広がるのが一番いいんです。
 これは僕の考えです。そういうふうに見ると、廃棄物リサイクル施設の複合的整備ってなかなか難しい。魅力はあります。地球環境を守る南関東地域なんていうことを宣言するのも確かにおもしろいと思う。
 それから、広域防災拠点の整備。これはよくわからないんです。これは非常にうがった、朝日新聞のいじわるな新聞記者のように見れば、土地を買うということをいっているだけじゃないか。東京都の港湾会計が赤字だから、そこのところの土地を買います。だって、広域防災拠点の整備。買えば、そこに船が着けられる。資材も置ける。そこに道路を引っ張れば、その道路が地震で壊れなければ埼玉県の方にもその資材を送りますとか。これはもっともらしいけれども、最終的に上に建物は建てなくて、公の第3セクター、港湾局とか企業局会計が持っている土地を買うという名目で広域防災拠点を整備するのか。
 なぜならば、広域防災拠点の中身は何でしょうかというと、よくわからないんですが、普通に考えると、阪神・淡路のときは完全にそうでしたが、自衛隊が来て、避難民が密集している場所を避けてテントを張って、そこにお医者さんの医療器械とかそういうのを持ち込んで、お医者さんも来て、それがヘリコプターに乗って、後ろの方に行くのが広域防災拠点でしょう。その防災拠点に100億とか200億をかけた高度な何とかセンターというビルをつくる必要はない。木でも適当に植えておけばいい。うがったことをいうと、ただ土地を買うだけじゃないか。

 それに比べて、私が思うのは、地道なんですけれども、皆さん困っている交通渋滞の道路をよくすれば、どれぐらいきれいな小ぶりなビルが建つかというのはあちこちでごらんになっています。慶応大学の前なんて、本当にいい建物が建ちました。慶応大学の慶応通りが広がって。小さいですけれども、前よりはいい建物が建ったということは、1軒当たり、洋服屋さんが昭和の30年ぐらいに500万でつくったクリーニング屋と住居を一緒にした木造2階の建物を、あの通りが広がったからというので、6〜7階の貸しオフィスのあるビルにする。3000万円ぐらいの民間のお金を動かしてつくるわけです。
 そういうのは、僕がしょっちゅう通っている井の頭通りだってあります。大山からNHKのところまで道路が非常によくなった。何が起きたかというと、イッセー・ミヤケのオフィスが角っこにできたり、例の回教の教会、あれは復元です。昭和の初めに全く同じ建物が東北沢にあった。それは戦争中になくなっちゃっていたのをようやっと復元した。そのほかにブティックなんかが広がってきました。民間があの通りを評価して、そこにそれぞれ自腹でビルを建てて、そこで商売をする、そういうのは非常に即効性がある。
 だから、都市計画決定されている道路をとにかく早くつくってくれれば、周りは即効性がある形できれいになる。こういう公共事業はあっていいんじゃないでしょうか。何もきれいなことをいわなくても。
 だから、経済活性化に貢献する公共投資というのは、今ある都市計画道路を直すことと、京浜電車とか小田急の連続立体を早くするということ。電線を地中化する。この3つを東京と大阪でとにかく必死になってやるだけで、町の品がよくなります。
 そうすると、コーヒー屋も高い値段のコーヒーが売れるんです。電線が地中化されて、刈り込みの少ない並木ができ上がって、周りに小ぎれいな小ぶりなビルがずっと建つというところでクリーニング屋をすれば、白洋舎級の値段を取ったってそこに洗濯物を出すでしょう。要するにブランド。東京というのはブランド、何もシャネルとかルイ・ヴィトンじゃなくて、町のブランドとか通りのブランド、そういうものが商売になる。それをつくっていく公共事業がいっぱいあるんです。
 そういうことの方が、非常に重要な仕事かなと思うんです。そのときに重要なことがスピードです。お役所のスピード感覚は、何回いっても変わってないようです。結局、最後にある判断をするときに、技術基準という手引き書、マニュアルが出てくる。都市計画のガイドラインをこの間つくりました。これは通達ではなく、ガイドラインですから、あくまでも参考にしてくださいというのでつくったんです。だけど、区役所の担当課の課長補佐とか係長だと、何を根拠にして、総合設計のハンコを、課長に「押していいですよ」という進言をするかというと、ガイドラインを見るでしょう。そういう点で技術基準が必要なんですけれども、日本の役所の中にばっちりとしみ込んでいて、これを見なければ仕事にならない。これに抵触すると、ちょっと考えるから時間をくれとか。それが世の中で当たり前だと思っている。これをもう1つ踏み込んでいくと、専門家としての自信とか誇りというのがないということです。
 日本のもたれ合い社会の中の役人の構造はそうなっている。これを直すというのを何とかやる必要があるだろう。日本的にいうと時限を区切る。開発許可申請を出したら、3カ月たってイエスかノーかはっきりしろ、これをやり出しました。時間を区切ってイエスかノーをはっきり示す。行政に対して民間側から自分が不満だったら裁判を起こす。そういう社会になっていいんです。そういうことによって事業をする企業家と、民衆を代表する官僚とが裁判という形でぶつかっていい。そこで事の決着を明らかにする。そういうふうになる必要がある。
 とにかくスピードです。スピードを考えると、ちょっとやっても完成品になるような仕事の方が経済活性化には役に立ちます。街路事業なんて一番いいんです。あまり大きいプロジェクトをやって、例えば、外郭環状自動車道路を、全身全霊を挙げてやりますと石原知事がいったって、多分彼がが死ぬころにできるというのが今の実情でしょう。なぜなら、日本の社会は収用をしない、全部ネゴシエーションでやっていくんですから。
 スピードを速くするためにどうするか。スピードを速くするためには専門家をうんとふやさなきゃいけない。役人じゃない専門家をふやす。そういうことが非常に重要です。

それから、では、東京都ではどんなプロジェクトを都市再生本部に出してきたか。これは多分インターネットに出ていると思います。一番おもしろいのは、東京都は5年間を区切って10兆円の金を政府は出せといっている。前の再生推進懇談会の東京圏の報告書で、僕は「10年間で12兆円出せ」とやりました。あれ書いたから石原知事書いたんです。「どうだ。」ってところです。(笑)
 次に何をやるかというと、例の3環状の話とか、環2の話。あと、防災拠点の整備をどこやるかというと、これがくせもので、有明、六本木、防衛庁の跡地じゃないかと思います。これ、相当においます。有明は東京都港湾局の不良資産化した埋立地。また、朝霞の区画整理をやらなきゃならない、荒川のズブズブしたところ、これは前から国土庁がやっている。朝霞なんか、建物なんか建てなくたって、荒川に救援物資を積んだタグボートが荒川の朝霞のところに来て、川のところにちょっとした岸壁をつくってそこへつくればいい。河川港です。そんなのは河川局は200億円ぐらいでさっとつくっちゃう。
 1つおもしろいのは、その他というところで、在日外国人犯罪の抑止。これは都市再生本部に出した報告の中のその他にも入れました。「国際経済の波にのみこまれる東京」というところで、東京というのは水と安全がある。水道の水は飲める。夜、奥様が1人で歩いても、変な男になぐられたり脅されたりしない。こういう常識があったんです。これは戦後50年の間につくった日本の常識です。東京でも大阪でも日本の都市は、安心して夜遅く1人でも歩ける。高級住宅地だけじゃなくて、庶民の住んでいるスラムのようなところだってそうだという50年かけてつくった、東京を売る重要なソフトです。それから、水はいろいろなことをいわれるけれども、水道の水は飲める。そのうちに水はだめになって、皆さん、ペットボトルを持ってきているでしょう。僕は水道の水に氷を入れて飲むのが一番おいしい。何でそんなに水道の水飲まないんだろう、日本人の舌は随分変わっちゃったのか。
 外国人犯罪に象徴される犯罪の増加に対して、何らかの手だてを打たなきゃいけないとなると、どうしてもマンパワーが必要になってくる。マンパワーは警官だけじゃなくていいんです。いろんなマンパワーが必要になる。専門家と素人の間に、話をうまくまとめるとか、問題が起きる前に芽を摘み取るとか、2者が対決したときに、第三者がある判断をするモデレーターというか、ファシリテーターというか、コーディネーターという専門家がこれから必要になってくると思うんです。
 それに関連して外国人犯罪の話題にいきますと、海外の人によるゲットー化。いい意味のゲットーもありますけれども、悪い意味のゲットーもある。歌舞伎町なんか一番いい例ですけれども、ゲットー化が始まると、新宿西口のセキュリティーはどうかという話に及んできて、新宿西口のオフィスビルの立地について、もしかすると、外国の不動産の値づけ会社は、それは渋谷より低いとか、あるいは港区より低いということになるかもしれない。まさに犯罪がふえるということは、不動産価格の評価、そして他との比較において、企業の持っている財産価値に非常に影響を与える。これはアメリカなんか当たり前ですし、ドイツでもイギリスでも当たり前です。こういうことが起きてきているということです。
 そこで、何が必要かというと、大規模のプロジェクト、それを世の中に、なるほど筋がいいという理解を得ながら出していっても、10年、15年かかって、なおかつできないという危惧があれば、それだけに頼りかかって都市再生のプロジェクトを展開するのは非常に危険だというわけです。具体的にすぐやる、こういうプロジェクトを探していくということがこれからの東京の、まさに構造改革と結びついて大事かなと思うんです。



規制緩和と国際ビジネス特区/限定される再開発対象地域

 3番目の話にいきます。「規制緩和と国際ビジネス特区」と「限定される再開発対象地域」とあります。「限定される再開発対象地域」というのは、さっきいった4つか5つの区です。これについてはいいませんが、「規制緩和と国際ビジネス特区」。
 きょうの日経新聞で規制緩和委員会で相当おもしろいことが中間報告に出ていました。それは建築基準法の集団規定を性能規定によって考え直していくということだと思います。これはどういうふうになるかわかりませんけれども、要するに、斜線とか建ぺい率とか、総合設計制度の緑地の算定方式、そういうものが本当にいいのかどうか、こういう話が出てきました。
 総合設計の公開空地を算定する算術式がありますけれども、あれのおもしろいのは、技術者は算定式があると安心して、これは絶対正しいという形で、役人も民間の企業の人もそれをもとにして議論をするんです。技術基準ができて算定式ができてしばらく、10年か15年はそれでいい。しかし、それから後は世の中が変わっていくわけです。変わっていったときに、公開空地の算定式は本当にいいのかどうかというのを検討しなきゃいけない、そういうことが起きているんです。例えば、オフィスビルの付置義務駐車場は、控除面積が1000平米ぐらいあって、それを超えるオフィスビルの床面積100平米に対して1台か、何かそういうのがありましたね。あれも土地の値段が右肩上がりでキャピタルゲインを得られるところでオフィスビルをつくることになれば、駐車場に投入する金が、1台当たり仮に1000万円かかったとしても、キャピタルゲインを得られることになったら、最終的にどこか、だれかに売るときには、駐車場の1000万円というのは1200万円〜1300万円の値段で回収できるとか、そういうことがあったはずです。
 もう1つは、地下駐車場をつくるコストは、30年前、20年前、10年前、現在と比べると、同じ価値ということは絶対あり得ない。今になればなるほど高いはずです。それは社会的環境が地下駐車場に対していろんな設備上、環境上の要求を突きつけてくれば、それに対応して地下駐車場をつくらざるを得ない。
 もう1つは、発生交通量の話。これだって前からこのフォーラムで何回もいいました。発生交通量の議論をするのは必要だ。しかし、発生交通量の数字を使って、それでここの道路が目いっぱいになるから、このビルはこれだけの面積をつくっちゃいけないという議論は全くナンセンスだという話もしました。
 ついでにいうと、社会的な影響力はないんですが、駅前広場算定式。駅前広場算定式って、昭和の25年ごろにつくった式です。そのころの国鉄は蒸気機関車が走っていた。そういうときの駅前広場の実態を調査して、それに合うような面積を要求するという算定式が今でも生きているんです。その後、いろいろ何とか式、何とか式ってつきましたけれども、後につけた式も、駅前広場算定式に合わせるように、ある程度計数をうまく調節しながらやっていますから、大体同じような要求面積になるんです。都市人口が幾らとか、駅の乗降客とか。
 そういう技術基準ということ自体について、根本から今考え直さなきゃいけないというのを一体どこが声を出すか。役人はやらないんです。やらないのが役人の本来のやるべきことなんです。これを外側から、「おかしい」というのは、企業がいうと、色目がつきますから、やっぱり学校の教師あるいはその地域社会に住んでいて、まちづくりにきちっとかかわっているリーダー、あるいはそこで商売をなさっている、土建屋さんじゃなくて、その建物を利用して商売をしている人たちの声。そういうものを集めて、最終的には学校の教師がきちっとした意見を出さなきゃいけないんですけれども、技術基準とか手引き書がなくなるといったときに、それはあくまでも参考で、ここでこういう判断をするといったときに、初めてまちづくりのプロフェッショナルができてくるかなと思うんです。
 都市計画決定の街路というのは国民の財産に対してどれぐらい横暴な振る舞いをしてきたかということは、最近非常に声が高くなってきました。半世紀たってもできない道路をどうしてまだ都市計画決定で残しておくか。これはおかしいじゃないか。これも最近の規制緩和のところでは、都市計画決定の道路でできないものはこの際外してしまって、長いことご迷惑かけたから補償しろなんていうのを民主党あたりは、政治的キャンペーンで出しています。皆様にご迷惑をかけたから。そこまでしなくても、外すだけでも随分いいです。
 もう1つ、都市計画公園というのがある。公園というのは、世の中に通りやすくて、環境派から見ると、公園をビタ一文も削るなんてとんでもないということですが、本当の公園と都市計画公園、これは違います。
 私は今早稲田の教員でこの問題に直面している。慶応にいたときは湘南藤沢ですから、周りが林に囲まれていて緑たっぷりなので、実感がなかったんですが、早稲田の理工学部に行きましたら、戸山の都市計画公園というのがある。そこに木造住宅が100戸ぐらい都市計画公園の中にまだあるんです。皆さん平和に暮らされている。だけど、都市計画公園の網がかかっている。「いつこの住宅を取り壊して公共事業として公園事業をするんですか。都市計画決定を事業決定にするんですか」というと、今のご時世だと、東京都庁の仕事ですけれども、「そうですね。まだ20年ぐらい先になるでしょうね」。仮に、役人が10年先でしょうというと、20年先なんですね。役人は慎重ですから。
 都市計画決定されたこの戸山公園は、もう30年前に決定されていると思うんです。公園屋の立場に立つと、涙ぐましい撤退作戦の中で、黙っていれば都市計画公園というのはどんどんつぶされていって、住宅公団の団地になったり、あるいは東京都や国とか公の図書館になったり、公会堂になったり、上野公園なんてまさにそうだったんです。何とかこれを手練手管で残していこうという努力をして残してきているんですけれども、そういう社会的な正義感として評価されるのは、今でも評価されるかというと、必ずしもそうじゃない。
 もっと端的なことをいいますと、この前、上祖師谷の一家4人殺しがありましたが、あの住宅は都市計画公園の中に入っているんです。早くあそこを買収してくれればよかった。買収できなくて、ポツポツやっているでしょう。都市計画公園の中で家は建てられない。
 ですから、市街地として非常に不完全な、通りがあっても人があまり通らない。袋小路のようなところに住宅が残ってしまう。こういうことが起きてしまう。買ってくれればいいけれども、「買う金は?」というと、「ない」といったときに、都市計画公園をお役所だけに任せておいていいかということです。
 もっといい例は、評判のよくない企業に加担するわけじゃないですけれども、国際興業と西武電車が持っている芝増上寺の芝公園、ゴルフの練習場のあるところ、あれなんか都市計画公園にやって、いつまでほっぽっておくんだ。そういう点で、役人のセンスが今になると根本的にずれている。
 もっと知っています。西新井の北側に相当大きな都市計画公園があるんです。西新井の駅の東側の住宅地です。これも多分都市計画決定を外してないはずです。
 割合うまくいった都市計画公園は、杉並の和田堀のところにある。大宮八幡の裏側。ところが、この都市計画公園は昭和の12年〜13年ごろに決定された都市計画です。今昭和76年ですから、60年たって完成してないんです。かなりよくなりましたけれども。
 そういう都市計画公園は、物すごくいい場所です。例えば、芝増上寺のあそこの一角に不動産会社が、ちょうど青山タワーと同じような40階ぐらいのタワーを建てたら、即売です。
 上祖師谷のところだって、あそこに7階〜8階のしゃれた小ぶりのマンションをつくった。即売に違いない。場所がいい。
 西新井の東側の住宅のあるところの都市計画公園、これも同じです。駅から近いんです。
 問題は、都市計画公園をつぶして、民間が持っている土地を勝手にさせろ、そういうことをいっているんではないんです。都市計画公園は何のためにあるか。今いったのは大規模公園です。大規模公園というのは、確かに運動場とか野球場とか水泳場とか、そういうものをつくる必要がありますけれども、もう1つ重要なことは、東京は砂漠だといいます。砂漠という都会の中に緑と水を持ち込む。カッコよくいえば、その公園ができ上がればヒートアイランドを阻止する。そういう機能を持っているわけです。明治神宮ほどではございませんけれども、大きい木がいっぱい並べば、きょうみたいな暑い夏の日は日影に入るだけで随分涼しいですよ。緑と水を供給する機能を持っている。持っているところをそのままにして、片っ方はゴルフの練習場にしている。もっといえば、明治神宮の中の野球場と陸上競技場も都市計画公園なんですが、あそこはコンクリートの固まりです。
 もっといじわるなことをいうと、国立競技場は観覧席の一番上が道路の歩道の上に乗っかっています。一番上は道路の歩道の上から、車道にちょっとかかる。いつもこれ見ると、ああ、これ、違反建築だ。(笑)何で文部省、建築基準法は道路法に抵触したものを昭和38年ごろにつくったのか。これについて何の反省もしないというのは一体どういうことなのか。
 だったら、例えば、どこでもいいんですけれども、芝のところをとにかく1ヘクタール再開発していいよ。容積600やったって、700やったっていいよ。そのかわり1ヘクタール都市計画公園から解除するんだから、例えば、地価が仮に1200万円〜1300万円とします。今まで都市計画公園で抑えられていたんだから、地価なんて収益還元でいくと、ゴルフ練習場だったら100万円とすると、差額1100万円地価が上がります。1100万円山分けしようじゃないか。550万円は不動産会社に渡す、550万円役所へよこせ。550万円の土地で借地権設定して、臨海の防災拠点のところに仮に木を生やしちゃったらどうなんでしょうか。有明とか晴海。
 1ヘクタールのところで550万円といったら、すごいですね。計算できないけれども、150億円〜160億円でしょう。150億円〜160億円の金を持って有明と晴海の東京都の土地を100年の定期借地権を設定して、有り金を全部そこに投入して、そこはただし森にしか使わない。つまり、芝公園のところで1ヘクタール、本来森になるべきところを東京都民が守っている。残念ながら都庁の連中が怠慢だから、宅地にして1ヘクタールつぶして、それを使って有明で10ヘクタールを森にした。これ、カッコいいでしょう。
 水に面したところに緑地ができれば、夏に一番重要なのは、東京湾で冷えた水が埋立地のところを通って、隅田川とか古川とか神田川をずっと上がって、江戸川とか渋谷の方へ本来冷たい空気が入ってくるんです。これは僕の専門じゃなくて、仲間の一人の専門家がいっているんですから間違いない。
 その東京湾の水が上がっているところに、いろんなコンクリートの固まりが建っているわけです。フジテレビとか、JALのホテルとかテレコムセンター、あれは夏は全部石焼きイモの石です。(笑)そこで東京湾の水は温められちゃうんです。石焼きイモの石が並んでいるのは認めてやるけど、その周りに少し緑でもくっつけて、そこのところは温度が低い。中に入るようにしろということの方が東京にとってずっといいことです。これを学者はもっともらしく英語でミティゲーションといいます。ミティゲーションをどこでやっているかというと、サンフランシスコ。ベイエリアの沼を保護するために、住宅地開発をやったやつらは、それに見合うだけの道路をひっかいて沼になるような場所をサンフランシスコ湾の中につくれという。
 そういう話、これは民活です。民間主導による事業展開をやって、結果として東京湾の人たちのヒートアイランド現象を守る。ついでにいいますと、都市再生本部の非常に重要な課題、環境問題で考えているところに、「持続発展可能な社会の構築の環境」で、「ヒートアイランド現象の緩和等のための水循環や緑の回復」と書いてある。そこの中にさっきのリサイクル施設がある。
 皮肉なことは、都市計画公園をつぶして宅地にして、その金で臨海の港湾局の赤字のところに定期借地権で緑をつくれというのが一番いいです。おかしいかなと思ったんですけれども、おかしくもなさそうです。筋が大体合うでしょう。できもしない都市計画公園で頑張っているところが、気がついたら一番いいマンション用地になった、オフィス用地になった。そこを全部とはいわなくたって、少し民間に売って、その金を山分けにして、ディベロッパー半分、役人半分。役人が半分取れるわけですけれども、役人は持っていかなくて、業者は有明とか晴海のどうしようもない売れない土地のところへ行って、100年の定期借地権をして、そこに森をつくる。多分それは1ヘクタールよりもっと買えるはずです。
 今臨海の土地の値段どれくらいでしょうか。今売りたい値段は平米せいぜい100万ぐらい、坪300万ぐらいでしょう。東京都港湾局なんか300万ぐらい以上で売りたいから民間のお客さんは入ってこない。売れないんです。土地は買わない、定期借地権でいく。こういう話は都市再生本部の環境問題に即している。
 何がいいたいかというと、私は技術屋です。技術屋であるがゆえに、技術基準とかマニュアルが本当に正しいかどうかということは、技術屋の良心で10年に1回ぐらい虚心坦懐に直さなきゃいけない。それの1つが駅前広場であり、附置義務駐車場であり、住宅地開発の3%の公園であり、3%の公園というのは一番売れないところにつくりますから、不良少年のシンナーを吸う場所とか、おやじが小便をするところ、もっとひどいのは、そこは細長いし暗いですから、そこに痴漢が待ち構えている。犯罪発生の現場を開発許可してつくっている。こういう話です。ホームレスが多くなって失業ということになると、我々のやっている仕事は何のためにお金を使っているかということがわからなくなってくる。
 都市計画決定の話は、街路もあるけれども、公園もある。都市計画決定というのは何かというのを根本的に考え直すのが21世紀のスタートでやらなきゃいけないことです。
 もう1つ、斜線の問題とか、壁面線の問題もあります。山手線から西側の戸建て住宅地のところでは斜線とか壁面線は重要ですけれども、この基準法の集団規定は、これだけ国際化したときにはもっと根本から使い方を考えなきゃいけないと思います。
 千代田区でも附置義務住宅をつくって、オフィスビルだけじゃなくて夜間人口も入れろといっています。ですが、千代田区では、この区や東京都の行政指導に従って本当に夜間人口がふえているのか。それとも、大きい社会の流れで土地の値段が下がって、人口が高齢化して、福祉の問題が大きくなったというので、自然に千代田区や中央区に人の流れが来ているのと、どっちが大きい流れかというと、後の方が大きいと思います。
 大きい流れに徹底してさお差すことも必要でありますが、すべてにさお差すということは、法律というのをあまりに乱用し過ぎです。法律に基づく施行基準がありますが、役人はそれぞれの専門家の判断を入れていかなきゃいけない。千代田区でも中央区でも、不思議なことで、区長さんの立場は、夜間がふえればどこでふえてもいいんです。逆にオフィスだけにしていい場所だってあるわけです。下がお店屋さんで、2階にはクリニックが入って、3階には本屋さんが入って、上はオフィスだ、そういう場所があったっていいんです。
 そういうものを全部夜の人口が入らなきゃおかしいというんじゃなくて、本当にビジネスとしてオフィスビルを建てるのがそろばん勘定からいって必要ならば、そういう人たちが集まった地域は、「どうぞ勝手にお建てください」。「斜線とか壁面線とか何にもいわない。容積率もいいません。困るとしたら、あなた方が手前勝手に困るんです。そこには警察も入りません。消防も入りません。みんなそれぞれ自前でおやりください」というのがあっていい。
 これはアメリカの住宅地でありますね。塀を囲って中に自前の消防と自前の警察をつくっているのがあります。同じことです。本当に民間がやりたいなら。だから、民間の方がいいときにはおれがやるが、何か困ると、警察を呼び、消防を呼ぶ。そういう相互もたれ合いじゃなくて、中央区や千代田区で本当にビジネスやってそこでひとつやってみようというなら、「ポリスも消防も清掃も全部自前でやります。そのかわり、容積とか斜線とかそういうことをいわないでくれ」。そういう場所があったっていいと思うのです。
 それが国際ビジネス特区という話題だと思います。これは前にもいいましたけれども、シカゴで昔そういうのをやりました。30年ぐらい前か、シカゴのループとレークショア・ドライブというミシガン湖に面したところ、そこにオフィスビルがずっと並んでいるんです。そこに対しては、シカゴ市役所は、「ここは都市計画を適用する場所ではない」と私にちゃんといっていました。なぜならば、「アメリカでは、人種問題で差別されているマイノリティーの人たちの住宅問題を解決するのが都市計画だ」というんです。
 ヨーロッパでも都市計画の主流は依然としてそうだと思います。いろいろなところ、オランダとかデンマークでいい都市計画をやっているというのを、とことん詰めていきますと、例えばデンマークですとコペンハーゲンとか、オランダですとアムステルダム、そこに必ずマイノリティーが入っていますから、マイノリティーの住環境を守るためには都市計画の若者がまさに専門家としてそこへ入って、役所と対決してでもマイノリティーの意見を聞いて、町をよくする。これが都市計画です。
 そういう点でシカゴの市役所のいったのは、「あそこは都市計画の範疇外。あそこはビジネスの連中が適当にやっているので、それから持ち込まれるいろんな尻ぬぐいは絶対いたしません。大雨が降って水があふれたとか、そういうことに全然関与しません。もちろん警察は入ります」。そういっていました。
 そういうところが東京に起きてきてもいい。それが特区。特区というのはすべてITの光ファイバーを入れろ、租税措置法を変えろなんてことをいうなら、それだけのことを要求するビジネスマンの集積地域なら、すべてあなた方やりなさいという話があっていいだろう。これは一種の契約の社会です。自分が約束したことは自分の責任で始末をつける。先進諸国、OECD加盟国は、韓国と日本以外は大体やっています。

 それから、最後の専門家の問題。これは難しいんです。非常に生臭いことをいいますと、昔ゼネコンさんが景気よかったときは、住民が組合を作って再開発でスーパーマーケットのでかいのとマンションとくっつけてやりたいが、対象とする地域の3人ぐらいの地主さんがいいといっていて、残り20人か30人小さい地主がいてなかなか進まない。何とかしてくれよと非常に善良な、一生懸命仕事をするコンサルタント事務所へ行く。そのとき、この事務所は貧乏で、ただ働きでは難しいというと、大体ゼネコンが金を出していたんです。それで半年200万円でもいい、やりましょうという話。
 そういう話がいっぱいあったんです。そういうとき、無知蒙昧な大衆は、「再開発の初めのときはそういうお金でもやっていただけるのか。有難い。」と思っていたんですが、今の住人は、「そんな専門家に来てもらっちゃ困る。後で、あなたに金出したゼネコンとディベロッパーが入ってきて、暴利をむさぼるに違いない。独占的だ。来てもらっちゃ困る。だけど、再開発はしたい。どうしたらいいんですか」。そういう話が今あるんです。
 金の工面をやるのは、善良な民間の企業者はいません。たまに篤志家といって、死ぬ間際に10億円ぐらい残っているんだけど、5000万円ぐらいそういうことに寄附したいとか、パチンコで儲け過ぎちゃったから、社会安全のために警察署に布団を贈りたいとか、そういう篤志家がいます。そういう篤志家がもしかすると、まちづくりにけなげに働いている1匹オオカミの若いコンサルタントに、「寄附をするんだが税金に取られちゃ困る。寄附する場所をどこか考えてくれ。考えればそこへ寄附するよ」という篤志家がいます。僕の周りにもあるんです。それは極めて例外。
 国の税金でやってもらおうじゃないか。実は、これが一番正しいんです。ただ、役人が大好きなのは、国の税金でやるのも、全国でそういう専門家を派遣してやる場所は、役人が10市ぐらい選んで、あの課長とあの地主を知っているからそういうところであれば間違いないでしょう。それで、手持ちの執行する予算が、例えば5000万円あるので、それを割り振りしましょうといって、県庁あたりに向かう。
 そうじゃなくて、税金を使うなら、毎年500カ所の町に金をつけよう。要するに、パチンコと同じで数打たなきゃ儲からない。パチンコだって、1000円では絶対儲からない。ところが、3万円ぐらいやると儲かります。(笑)何かの法則か何か知らないが。
 再開発だって、年間に10カ所ぐらい、金つけてやる、補助金つけてやるじゃなくて、人材派遣で1人年間1000万円としましょう。大したことないんです。100カ所1000万円で人件費10億円です。その事業を10年間続けると、1000カ所。10年間で100億円。土建の事業とか再開発事業に比べれば大したことないんです。
 それで喜ぶ人がいっぱいいます。それは、僕もそうなんですけれども、定年退職したおじさんたちですよ。ゼネコンやディベロッパーや市役所の都市計画課長や大学の教員。60過ぎてすることがない。どうしてくれる。文化教室に行く。山登りする。全然社会に貢献してない。そういうおじさんたちを集めてトレーニングして、「あなた、年間300万円でNPOでこれやらない?うまくいったら来年は500万円になるよ。再来年は700万円になるよ」。そういう誘惑も入れながら、60歳以上の定年退職したおじさん。これを使うということは、竹中平蔵のいうセーフティーネットの非常にいい職種でしょう。なぜなら、60歳以上のおじさんはコンピューターは恥ずかしくて商売になりません。ところが人の話を聞くのはうまいですよ。「そうですね。ごもっともですね」。まちづくりは人の話をよく聞くということがスタートです。自分一人でどんどんしゃべるような年寄りは排除しちゃうわけです。(笑)
 そういうプログラムが専門家をつくるということなんです。専門家といっても1級建築士や公認会計士という30、40の男を出したって、まちづくりは絶対できない。まさに雰囲気だけで商売できる60過ぎのおじさんたちが専門家になる資格がある。
 そういうプログラムを僕たちは今実践しようとしている。実はあるところから寄附をもらいましたので、本当にやってみよう。対象は60歳以上のおじさん。女性も入れません。本当に仕事ができる場所がどこにあるか。あと1年このおじさんに頑張ってもらえれば、少なくとも住民はまとまって、区役所に全員一致で要求を突きつけることができる。それだけでも大成功なんです。
 都市再生の、華々しい国際経済とか構造不況に関係なく、こういう話題が大変重要な本来の都市計画の分野であるんです。石原知事なども、防災についていろんなことをいっている。防災、防災と、とにかく木造密集市街地を何とか直せ。民間賃貸住宅を供給して職住近接の居住空間をつくれとか、PFI方式による木造住宅密集市街地の政府モデル事業をつくれとか、東京都がいっている。
 本当にこれでプログラムができるかというと、人なしにはできない。それは役人でもない、大組織でもない。住民運動でもない。そこにNPO的で、むしろ対立する両者をまとめられるような人格識見円満で専門家である。それは1人じゃなくてもいい、3人ぐらいのチームでもいいんです。たとえば、年寄り1人に40歳ぐらいのおじさん1人に若手の坊や1人の3人チーム。
 そういうことが我々の領域でも、セーフティーネットとして考えられるし、このセーフティーネットのシステムはまさに都市再生の一番重要な、日本の特徴的な密集木造市街地を直す手段になる。これを申し上げておきます。
 人材問題というのは、我が商売をちゃんと社会に位置づけるために重要なものであって、税金を使う大変いいこと。
 最後につけ加えますと、きのうの話です。私、変なことでいろんなところとつき合っていますが、消防庁ともつき合っている。消防庁では何を考えているか。消防団というのがあります。全国で95万〜96万人以上いるんだそうです。ひところは200万人以上いた。ところが、常備消防がうんと進みましたから、消防団はだんだん少なくなった。大都会では消防団なんて、入ることが恥ずかしい。田舎でも消防団というのは1つの組織でありますが、サラリーマンになっちゃった。消防団というのはお祭やったり、酒飲んだりだけじゃなくて、ちゃんと消防活動、訓練もやるわけです。そういうところに出てこいというと、サラリーマンだから、それに行くと欠勤扱いになって給料が下がるというので、なかなかなり手がないという話だった。
 ですが、いろいろ議論をしますと、大都会では自主防災組織みたいなのが意味あるけれども、田舎に行くと、消防団というのは一種の村社会の結を近代化した形で、非常に重要なことだ。消防団の団員であるという意識をプライドと実体、両方きちっと手当てしないと消防団というのはうまく動かないだろう。田舎では、例えば北海道の別海村なんて考えてください。あんなところに常備消防があったって何の役にも立たない。それぞれの集落に消防団があった方が動きが早いんです。そういうところはいっぱいあります。山形の櫛引とか、庄内の羽黒とか。
 消防団がいますと、何に役に立つかというと、まず徘徊老人を探す。指令を発すると、きのうもある町で200人消防団のおじさんが出て探した。それは市でした。それから、水防です。台風災害。「土のうを積むのは、本来河川局の仕事じゃないですか」といったら、「河川局にそんな人がいますか。あれは全部消防団だ」。消防がそんなところに出しゃばっていいのかなと思ったんですが、実際にそうやっているんです。徘徊老人から救急活動から、隣近所のクレームで、隣の家の犬のフンがこんなところに落ちているのをどうしてくれるんだ、なんてことまで、警察にもいきますけれども、消防団にもそういうクレームが来る。それから、身の回りの生活上の問題を消防団の人が田舎ではやっている。
 ところが、給料はというと、国家公務員の特別職員なので、給料払われているんですが、1回水防で出動すると、千何百円。給料が年に3万円か4万円なんです。そんなんじゃ、消防団になるインセンティブも何もありゃしない。といっているうちに、消防団は、考えてみたら自主防災組織よりは専門家だという話になってくる。確かに訓練を受けていますから。救急から火事のときに子供を引っ張り出すことから、常備消防の消防官とは似た訓練をしている。専門家なんです。
 そうであるならば、消防団をきちっと遇するというやり方も1つあるんじゃないかということです。例えば、月給が消防団員になれば毎月10万円出す。10万円という意味があるんです。それは消防団員になる田舎の人はきっと農家の長男であって、農協のどこかの支店に勤めていて、自作で米をつくって、畑をつくっていて、地主であって、もしかすると貸し家も経営している。月給は農協から30万円はもらっている。それに消防団の10万円が入れば40万円になる。こういうサポートの仕方で、地方のおじさんたちが失業の機会に恵まれないように、むしろ失業救済のセーフティーネットとして、消防団をプロフェッショナル化するというのは物すごく大事なことじゃないか。その方が、地方で構造改善事業の圃場整備をするよりも、農道をつくるよりも、あるいは農業貯水池用のダムをつくるよりも、よっぽどいいセーフティーネットになる。
 だから、農村でコンクリートを使わなくたって、セーフティーネットはつくれる。その事例として消防団の専門家化ということがあってもいいだろう。こういう話になった。これはさっきの僕のまちづくりの専門家と共通するところがあるんです。
 それとNPOです。NPOと専門家。税金で専門家をきちっとサポートして、まちづくりの対象件数をうんと多くする。そうすればビジネスが生まれてくるんです。
 こんな話が私のきょういいたいことの最後の話です。(拍手)




フリーディスカッション

谷口(司会)
 どうもありがとうございました。
 少々時間がありますので、皆さんからご意見、ご質問でも結構です。いただければと思います。

伊藤
 都市計画公園の僕のアイデアどうでしょうか。何で考えたかというと、山王パークビルってあるでしょう。あれ、日枝神社の上に載っかっている容積を薄くひっぱがして持ってきてつくったんでしょう。〔「そうです」と発言する者あり〕
 あれやっているのに、都市計画公園をそのままほっぽらかしにするなんてけしからぬ話だ。たまたま日枝神社は都市計画案に引っかかってなかったんですね。浅草浅草寺にも薄く容積が載っかっているんです。あれは都市計画公園じゃないかな。もし都市計画公園だったらおもしろい話です。出るところに出ようじゃないかという話がやれそうだ。

末(末商会)
  後楽2丁目に住んでいます末と申します。たまたま私どもの地域に有名な小石川後楽園がございます。ただ、南側に国有地が600坪あります。これを国が第三者に売却しようとして、私どもは請願を出して運動しています。今までは私が会で選ばれてやってきたんですが、文京区全体の運動に持っていこうということで動いた。どうしてそうなったかというと、南側に建ちまして、あれで10メートル下げてもらう運動をしました。これが1つの中間の成功でした。
 今度は全くの国有地で、それを私どもの民間が気がついて、今とめる運動をしている。国の文化財保護とか東京都は、気がついていても、どう動いていいかわからない。私がいろんなところに運動して、最後にきのうは財務局に行きました。「どうなんです?」っていったら、「初めて聞いた。これは大変なことだ。じゃ、待っているから、東京都からしっかりした結論を持っていらっしゃい。あなたは民間だけど、東京都がどう考えているか。それによってこの土地はちょっと待っているよ」、こういう話までいただきました。
 私がそれを何に利用するかということをまず考えました。まず南側に光が入るところは唯一1カ所しかない。あとは全部高層ビルになっちゃう。もし、そこのところに、どこかに売っちゃって建てられたらば、永久に光が入ってこない。冬至の時期に11時過ぎないと光が入ってこない。泉水、池には氷が張っちゃう。鳥は来なくなる。緑がおかしくなる。こういう動きになるものですから、まずそれをとめて、民間として小石川後楽園と一緒になってどういうふうにしたいか。まず今、観光バスの駐車場が全然ない。観光ルートをつくりたい。六義園にもありますし、もう1つ湯島の聖堂にもあります。こういったものの計画をやる。じゃ、駐車場ですから、ガイド施設、休憩所、各公園のパンフレット、いろんなことを考えますと、小石川後楽園の隣に東京ドームがございます。東京ドームの選手のホテルがあります。ここに外人が来てお庭を見たいといっても、今の門は東じゃなくて、西門ですから、かなり歩かなきゃ入れない。お庭が100メートル奥に入っていますから、「場所どこにあるの?」と聞く人が多いです。
 そういったものを全部、例えば、表通りからの幅10メートル以上の道路をつくっちゃう。バスはそこにとめて小石川後楽園だけじゃなくて、東京ドームも道路に駐車するものですから、文京区の方に非常に請願が出ていまして、東京ドームとして駐車場を確保していく。こういった一連の流れがあって、私どもはこの運動によって、まず売るのをとめる。我々と東京都が協力して、必要性を列記する。その上で将来、特別名勝、世界遺産に登録するほどの場所なんです。これを民間に認識していただく。役所も縦割りじゃなくやっていただきたい。この2つを私は請願をしています。先生のご意見を伺えれば幸いです。

伊藤
 今のような話、つまり、前向きにとにかくソリューションを出そうというわけですね。区役所はだめですね。東京都に持っていかないと。東京都にろうそくの火で尻あぶるぐらいのことをやらないと。その迫力をつけるのは、嘱託ででもいいから、年500万円で、出るときは必ずリーダーのところにくっつけという専門家がいたら随分違うと思います。
 もう1つ、僕はこんなことも考えたんです。オウムとはいいませんけれども、新興宗教も入れて、宗教団体ってべらぼうに金を持っているはずなんです。宗教法人の金って、一体都市再生にどう使うのか。多分そういう話題にかかわってくるんです。
 宗教法人とか、都市再生の金で避けて通っていることは幾つかあるんです。さっきの公園とか緑地。片っ方で、今のようなところは国有地を宗教法人に買わせて鎮守の森にしちゃうのは、宗教法人は何の痛みも感じないですね。そういうのを競売じゃなくて、随契でやらせちゃうとか、そういうことやったっていいんじゃないかと思うんです。
 もっというと、明治神宮の第2球場をつぶして、あそこに100階建て300メーターのマンションをつくって、その金で今の国有地を買って鎮守の森にした方がよっぽどいいですね。
 そういうミティゲーション、文京区と新宿区の話で、境界を越えてミティゲージョンやることになれば、おもしろい話が幾らでもできそうです。
 もう1つ、僕は国有地について不満がありまして、再開発で国有地を立川で民間に売却したんです。そのときは国有地を近傍類似というので、立川の駅前と同じ商業の700%、800%にして売っちゃったんです。高い値段で売った。あのとき物すごい義憤を感じました。大蔵省って、これほどまでにまちづくりに理解がないのか。あそこほど、みんなと相談して大事に使うところはない。ちょうど江戸川区で区画整理やるところは第1種の低層住居専用地域で30を50にして、区画整理をしてから上げていく。そういう用途地域を「国に対抗して、立川市、決めろ」といったんです。「裁判で争え」といった。そのときに都市計画は東京都市計画だったので、立川市は抵抗できなかったんです。今でもそれをやったからといって、青木市長がそれだけの肝っ玉はないと思うんです。
 国有地はただ単に売っていい場所ではないはずです。僕はそう思うんです。そういう使い方を国有地は見識を持って、まちづくりに貢献することをやる場所がある。もし、そこに容積があって売りたいなら、容積をどこか後楽園の方に持っていって使わせればいいんです。後楽園で高さ何百メートル、容積何百メートル以上にしちゃいけないという理屈はないわけですから。
 僕が容積の問題を杓子定規にやり過ぎているなと思うのは、この前もここで話しましたけれども、天現寺のところの高速道路があって古川があって、その前に割合広い明治通りがある。地区内道路と明治通りの端っこで、多分60メートルぐらいある。こっちの容積が古川の白金三光町、ここは準工地域で容積400%ぐらいある。あんなところ容積1000%やったって1500%やったっていいと思うんです。向こうに見えるのはきれいなところが見える。フランス大使館とか有栖川公園。こっちが高い容積のをつくったって、日影で何も問題は起きない。そういう場所は東京で探していくと、幾らでもあるんです。そこが1つのビジネスチャンスだと思うんです。
 そういうことを考え出すのが専門家だと思っているんです。専門家が常識的なことをいうことも必要ですけれども、専門家であるがゆえに、世の中の慣習と違う提案をするのは物すごく大事だし、それは役所と離れた専門家、企業と離れた専門家がそういうことをいえるだろう。それをきちっと政治が酌み取っていって、非常識に見えるけれども、多くの専門家がいろんなケースで指摘していることを集めていくと、かなりの重要な事実だとなったときに、その政治家が的確に判断して条例をつくるなり、法律を直すということをやる。そういうことが都市再生では重要なことかなと思います。

大村(主婦会館理事)
 元東京都の都市計画に勤めておりました。
 先ほどの公園なんですが、都市計画決定をしたものを変えるということは、それにかわるちゃんと説明がつくものならできるんです。先ほど、小田急線の話も出ましたけれども、地下化に変えるということで住民のそれなりの力があれば、それは変えれらるわけです。
 お役人が一番困るのは、裁判ざたになるのが一番困る。

伊藤
 裁判ざたにするのがこれからの世の中なんです。そこが根本的に違う。僕は裁判をやっているんです。地方の町を相手にして、高裁まで持ち上げて・・・・・。来週結審なんです。

大村
 要するに、裁判ざたになると、時間がかかるわけです。

伊藤
 これから裁判は短くなる。

大村
 そうなればいいと思うんですけれども。あの地下化が決まりました。ところが、昔の道路は小田急線が高架だったものだから、下を通るとか、上を通る計画だった。ですから、当然道路も変えるべきなんですけれども、道路幅はそのままでやる。なぜかというと、既得権というか、もう売るつもりの人がいるわけです。それの対応ができてくれば、全員がその地域で賛成してくれれば変えられるけれども、やはりそういった問題があるから困る。
 ですから、後楽園の野球場だって、あれは公園施設ですね。特許事業でやってできたわけです。新宿の駅前の広場、あれも特許事業で小田急さんがお金を出して地下駐車場をつくるということでできているわけです。ですから、ああいう形で、先生のおっしゃったように、民間のアイデアをどんどん出してやれば、僕はできると思うんです。ただ、役所はそういう面倒くさいことは喜びませんけれども。
 ですから、先生どんどんアイデアを出していただいてやっていただければ、私はできると思うんです。

伊藤
 きょうの日経を読んでいて規制緩和のところでおもしろかった。民間提案の都市計画を考えよと書いてあった。民間がまとまってきちっと、都市計画審議会にこれを都市計画決定しろということが多分可能になるということじゃないかと思うんです。規制緩和委員会ですから。あれはオリックスの宮内さんが委員長で、セコムの飯田さんが副委員長で、おもしろいのは八田達夫さんというひとがいて、阪大にいて東大に来た経済学者です。彼がそういうことをいっているんじゃないかと思うんです。おもしろい男です。
 きょうの日経の規制緩和、おもしろいですよ。皆さんの仕事がよくなりそうだなということが並んでいました。

谷口
 まだ他にもおありかと思いますが、時間が参りました。きょうはこれで終わります。どうもありがとうございました。(拍手)


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