back

第172回都市経営フォーラム

経済再生戦略としての大規模都市再開発
〜経済特区、都市開発特区の設定による急速かつ世界的スケールを持つ
都市開発プロジェクトの立ち上げとその効果〜

講師:梅澤 忠雄 氏
株式会社梅澤忠雄都市計画設計事務所社長


日付:2002年4月25日(木)
場所:後楽国際ビルディング大ホール

 

経済再生戦略としての大規模都市再開発

フリーディスカッション



 

経済再生戦略としての大規模都市再開発

 ご紹介いただきました梅澤でございます。今までいろいろ仕事でお世話になっている先輩の方々もいっぱいいらっしゃって恐縮でございます。
 タイトルに示したように、現在の日本は経済再生戦略を考えなければいけない事態になっていると思います。国の方とか政治の方でいろいろやっていただいておりますけれども、私どもからすると、もう少し都市というところが、経済にとって決定的に重要であるということをわかっていただかないといけないと思っています。割合、都市のことが苦手の先生が多くて、エコノミストの方々も、都市のところがわからない、ブラックボックスみたいにとらえられているということで、困ったことだなと思っております。いろいろな機会をとらえて、レクチャーをさせていただいております。
 そういうことで、都市再生本部というのをつくっていただいておりますし、総理直轄で都市再生等担当総理補佐官というポストをつくっていただいております。その辺の仕掛けをつくることをこの数年ずっとやってまいったわけでございます。その心とするところを今日お話し申し上げたいわけです。いろんな事例がございますから、後でスライドを見ていただきながらということになります。
 この資料は本当はカラーなんですが、皆さんのところでは白黒になっていて申しわけありません。スライドの大きな画面でカラーで見れると思います。その中で、ページをあけていただきますと書いてございますけれども、経済の再生は都市再生をやらないといけないということを申し上げております。
 既に、経済再生をやって大成功をしているところがあるわけでございます。ですから、やれるわけでございまして、日本の経済の再生というのは、不良債権処理という話でつまずいてしまったりしていますが、そういうことを含めて、何が決定的に足りないのかというと、都市というところでございます。都市が勝負なのであって、世界は、国というより世界都市という形が競争の単位になっている。都市というのは何かというと、都市間競争の時代だともいわれますけれども、国ということよりも都市ということが非常に重要になって、それが新しい時代の心臓に当たるわけです。古い心臓がだめになってきているから、これは取りかえなくてはいけない、古い心臓を取りかえて、新しい、人工心臓でも何でもいいんですけれども、新しい心臓をビルトインしなければいけないということでございます。それがわからなくて、どうも困るということです。
 先ほどいいましたように、世界では経済再生に大成功しているところがあるから、そういうところがどうやって成功したかということを勉強しないといけないと私などは単純に思うわけでございまして、現在の日本はあたかも手の施しようとか、治療法がないように思って、いたずらに時間を費やしているという感じが私にはします。答えは明快にわかっている、やり方は明快にわかっている、ただ、そういうことに関係している方々がちゃんと勉強をしていないし、理解ができないというお粗末な話であると思っております。
 きょう、短時間の間にそれをうまく伝えられるかどうかわからないんですけれども、そういうことをいいたいと思います。
 都市再生ということを何となく私どもいっていますし、直接都市再生本部をつくっていただいております。そして、今の国会で、緊急ということになっておりますけれども、都市開発をやるための特別区、特区というのをつくってもらう。そういう法律をつくっていただきまして、それを通していただきました。この資料はなぜ特区が必要かということのためにつくって、1年半とか、そのぐらいずっと使っている、関係方面にお願いをしてきた、そのための冊子です。

 

 いろんな国が経済の活性化に成功しているわけです。一番うまくいっているのはイギリスでございます。イギリスは経済再生大成功でございまして、戦勝記念なんてのもやっております。戦勝記念宣言とか、戦勝記念プロジェクトをやっているわけでございます。それはウォータールーの合戦で勝ったという感じのことをいっています。 日本は情報があるようでいて、つまらない情報ばっかりこねくり回していて、国会の中継とか、そういうことばっかりやってまして、本当はそんなことをやっていたって、景気がよくなるはずはなくて、そうじゃなくて、どうやったら勝つか、勝てるか、どうやったら経済が再生できるかという情報をもっと提供しなくてはいけないと私は思うんです。
 イギリスの経済が再生したんです。イギリスの上の方といいますか、アイルランドというところがあります。アイルランドはもっとおもしろくて、世界のお荷物とか言われていたんです。「西欧のお荷物国家、アイルランド」なんていわれていたんですが、これが今大成功でございまして、GDPが年率10%でガンガン上がっているという驚異的な成功をしているわけです。それも同じようなからくりを使っています。ですから、イギリスのお話をしたり、アイルランドの話をしたりしたいと思います。
 それよりも何よりも、中国が隣で大成功しているというか、非常に果敢にやっているわけです。日本の経済が非常に悪くなっているのは不良債権のせいだとか、いろいろいわれます。それから、都市についての理解が足りないということもいえると思いますけれども、もう1つの非常に大きい歴史的な条件は、中国がこんなに激しく台頭してくるとは思わなかったということだと思います。そして、これが我々が理解しなければいけない非常に大きい事態だと思います。
 中国沿岸部に5億人の方がいらっしゃって、この人たちが24時間体制で働いている。13億いるという話もありますし、実質は15億以上いるという話もありますから、沿岸部に5億人がいて、それは15億のうちの最精鋭部隊がいると考えていいわけで、そこがすごいわけです。
 この前もNHKテレビでやっておりましたけれども、深圳の特区で、東京の大田区にあった町工場が根こそぎ深圳に進出している話がやられていました。そして、彼らとか彼女たちはよく働く。すごく優秀であるという話をしていました。時給40円で、1日22時間働くといっていました。22時間働くわけですから、残り2時間しかない。ほとんど仮眠ですが、彼女たちの住んでいるところは2段ベッドで1部屋に12人いる。そうやって一生懸命稼いでお金を使うのかと思うと、ほとんど何も使わないで親元へ送金する。ICチップの部品を組み立てて、コンピューターの部品をつくっているんですけれども、日本の工場でいうと、虫眼鏡みたいなのを目に取りつけてやっているんですけれども、彼女たちは全然つけてなくて、視力が3.0だ。そんな視力3.0でも根を詰めて働いていたら、相当目が悪くなるんじゃないかと思うと、「まあ、そうです。だから、2年ですぐ取りかえるんです。次々ウェイティングしている人が何十倍もいるから、十分大丈夫です」といわれたりしております。
 それは1つの例で、中国の都市が大成長しています。これからスライドで上海とかも見ていただきますけれども、それはほんの序の口であります。
 北京が2008年にオリンピックの誘致に成功しましたから、それに向けて、打倒上海、打倒香港、打倒シンガポールとか、いろんなことをいっています。そこに、どうして打倒東京が出てこないかというと、東京なんか全然眼中にないというふうに、とっくのとうに決め込んでいるわけです。
 問題は、産業が、生産機能が中国に著しくシフトしているということで、大阪が壊滅的になっているわけです。大阪の方は「関西の復権」なんて、まだそんなおめでたいことをいっておられたり、「東京に一極集中してけしからぬ」とかいっておられるんですけれども、それは大きな事態の誤認であって、全然そんなことではございません。
 きょう名簿を見させていただきましたら、地方からお見えの方もいらっしゃると思います。私は決して悲観的な話をするわけではなくて、ただ事実をここで非常にしっかりと理解する、目の当たりに見ることが必要であると言っているのです。
 とにかく中国の沿岸部に5億人いて、5億人というのは日本の5倍近いということですから、その人たちが最精鋭部隊で、先ほどの深圳のNHKのテレビで、大田区の工場の大先輩がおっしゃっておられました。その大先輩は70歳ぐらいだと思いますけれども、「我々の若いときと同じだ。我々の若いときより、もっとまじめに働いている」。そこにエコノミストの高橋進さんがコメンテーターで出ていて、「東京、日本は、これから彼らに負けないその上の知恵を出さなきゃいけないよね、ソフトで勝負しなきゃいけないよね」といわれたんですけれども、その大田区の工場のオーナーの方にせせら笑われていたわけです。「それは全然、そんなことできるはずないじゃないですか。彼らの方が全然優秀ですよ。今の日本の若い人たちが、彼らに1人として太刀打ちできるやつがいますか」ということをいわれていた。それは事実であると私は思います。
 皆さんも、連休はちょっと混むかもわからないので、連休から後はちょっとすくと思いますので、中国に見に行っていただきたいと思います。飛行機代はそんなに高くないです。とにかく今起こっている事態、なだれを打って日本の中からすべてがそっちへ向けて行ってしまっているわけで、それをよく知る必要があります。
 「まだ」というふうによくいわれる方がいます。日本のGNPと比べて中国の方は、全体足したってまだ4分の1じゃないかといっているんだけれども、4分の1だと思っていることが、事実を誤認しているわけで、とにかく30分の1とかの労働力価格です。そういうところと比較して、グロスで向こうが4分の1だといったって、まだ10倍向こうの方がすごいと、そこは皆さんぜひ計算をしていただきたいということでございます。
 とにかく工業から、農業から、ソフトから、何もかもこの数年で根こそぎ抜かれるということでございます。非常に厳しいけれども、それが事実であるということを認識して、さて、それで我々はどう生きるんだろうかということを考えなきゃいけないと思います。
 ですから、日本列島の地図を見て、それで地方だ、東京だ、大阪だといっているのは、全くナンセンスになってきて、中国が入っていて、韓国もそうです、上海とか、シンガポールあたり、アジアも含めてということでしょう。そこと日本列島とが入っていて、その中でどういうネットワークを組み得るのか、どういう位置関係を持ち得るのかということを考えなければいけなくて、そして、極端にいえばこの5年ぐらいでなだれを打ったように起こっている事態ですから、10年前に見に行ったことがあるなんていっているのは、知っていることのうちに入らない。きょう、あしたということでありますから、ぜひ皆さん見に行っていただきたいと思います。恐るべき事態になっているのです。
 さて、そこで日本経済はどうやって生きるかということがあると思います。それはそういうことだといたしまして、中国の方々は、東京を向いていません。どういう作戦かというと、例えば、イギリスが成功しています。これから紹介しますけれども、イギリスが成功しているということをよく勉強している。そこから知恵を買っています。そして、もっと極端に短期で成果を上げる方法は何かということをやっています。当然アメリカからは知恵を買っています。
 驚くべきことは、中国の民間にしろ、お役所にしろ、それは市役所にしろ、国の政府にしろ、ほとんどの方々は、ちょっと話をして、コミュニケーションがよくできるなと思って、「ところで、どちらを卒業されたんですか」というと、「MITです」とか「スタンフォードです」とか、そんな感じです。これは、日本の、例えば大阪の市長さんが、いろいろお話しして、「スタンフォードの卒業生です」となると、僕は日本もどうにかなると思うんですけれども、そこから根本的にギャップがあるという感じがします。
 ですから、シリコンバレーがどうやって成功してきたかとか、その中でスタンフォード大学がどういう役割をしてきたかとか、産学協同でどうやってきたかということが体の血になっている。中国はそういう方たちに引っ張られているのです。ですから、侮ってはいけない。
 日本の一番の問題は、そういうことがあまりわかってなくて、東京一極集中はけしからぬのではないかという話に終始しているということが大変な問題だと私は思っています。
 この間釜山にちょっと呼ばれて行ってみましたら、釜山で都心の再開発をやっています。彼らは、ワールドカップがこの6月から行われますけれども、ワールドカップをどういうふうにとらえているかというと、昭和39年に日本で東京オリンピックをやったときに、いろいろなプロジェクトをやりました。それとほぼ同じ感じで韓国はとらえているんです。空港を拡張する、高速道路をつくる、新幹線をつくる、都市改造を進めるということをワールドカップと連動しながらやっているんです。
 日本では、ワールドカップをやるということは、フーリガンがどうだこうだといっているけれども、都市をつくるとか、そういうことと関係しているとほとんど思ってないです。これは地方に会場を持っていったということもちょっと失敗だったと私は思っています。東京オリンピックのときは我々は何をやったかというと、首都高速道路をつくりました。羽田のモノレールをつくりました。それから、東海道新幹線なんていうのもつくっちゃったわけです。青山通りとか、そういうところの開発を進めましたし、代々木公園や駒沢公園のオリンピックの施設もつくったということです。その気合いに比べて、今の日本はいかに堕落しているかということです。
 同じワールドカップをシェアする韓国は、東京オリンピックと同じことをやっています。何をいいたいかというと、釜山の都心の再開発をやっているんですけれども、40階建ての超高層の住宅をつくって、戸数は2000戸、即日完売。モデルルームを見に行ったら、スタンダードタイプは55坪です。
 僕は何で呼ばれて行ったかというと、その向かい側でまた、もっと大きな再開発をする、それで今度は5000戸を一気に立ち上げる、5000戸を即日完売にするにはどういう作戦があり得るかということを教えてくれということで行ったわけです。それで聞いていると、40階建ての超高層で、スタンダード55坪なんです。もうちょっと大きいやつは65坪です。つまり200平米です。ミニマム、一番小さい部屋が35坪です。ですから、「東京はもう完全に置いていかれている。2000戸即日完売なんて、そういう話、もっとあってもいいよね、大東京でしょう」と思います。
 それの販売単価を聞くと、坪40万円ですから、55坪だと2200万円。韓国の平均所得は日本の半分だといわれますから、日本価格に直せば4400万円とかです。だけど、日本で4400万円で55坪の都心のマンションが買えるかということです。建築単価は坪20万円なんです。韓国は地震(アースクェイク)はない。だけど、台風は釜山なんて日本以上に激しいのがやってきます。
 ですから、日本て、一体どうなっちゃっているんだろうか。きょうはそういうお話はあまりしないんですけれども、皆さん、建設関係の方が多いので、若干申し上げておきます。日本は、高価格体質になってしまって、それでにっちもさっちもいかなくなったということがあると思います。世の中では、隣の国じゃ、坪20万円で超高層のマンションを次々つくっているんです。その辺大いに反省しなくちゃいけないと思います。

 

 それはそれとして、何をいいたいかというと、もうちょっと迅速に、大規模に再開発をやらなくてはいけなくて、東京は特にそうなんですけれども、何か再開発をやる話をしますと、「いや、土地所有がどうの」とか、「権利関係がどうの」というわけです。それで「結局できない」というわけです。これも客観的に見ると、そういうことをお役所の人がいうのは僕はいいと思うんです。仕事をサボりたいために「いやー」というのはいいと思います。それで許されるんだったらそれでいい。だけど、そんなことを1945年の終戦のときからずっと57年もいい続けていると、「ばかじゃないの」という話だと思います。それで今のざまになってしまったということでございます。
 もう一度そこは考え直さなくてはいけなくて、僕は、それは10年とか15年、ちょっとだらけてサボっているというならそれでいいけれども、何と1世紀の半分以上そんなことをいい続けて何もやらなかったということは、非常に問題だろうと思います。
 もう2年ほど前になりますけれども、OECDのチームが日本にやってきて、建設省に乗り込んできて、「おまえら、都市再開発まじめにやれよ」ということを勧告しました。かなりしっかりしたレポートでございました。彼らの論調はどういうことかというと、「東京あるいは日本は、世界経済の15%のシェアを占めているんだよね。15%のシェアを占めていて、それの中枢が東京でしょう。東京というのは地震があるというじゃないの。巨大地震があるという話じゃないの。それで、仮に地震があったら、東京は壊滅する。東京が壊滅したら、世界経済の15%の部分がおかしくなってしまうわけだから、ちゃんと再開発を気合いを入れてやりなさいよ」と。
 彼らがおもしろいのは、世界じゅうの専門家を集めた提案書ですから、日本人の学者も入れているんです。日本の実情も全部つぶさに調査をしていっているわけです。そこで傑作なのは、すぐに土地の所有がどうだとか、ああだのこうだのいってやらないということも、彼らは知っているんです。だから、我々は教えてあげる。「大体、土地の所有がどうだ、こうだということは、要するにルールの問題でしょう。ちゃんと再開発にみんなが協力してくれるルールをつくる、そういうのがルールなんだよね。ごね得みたいなことを許しているのは、そんなのはルールじゃない。あなたたち、日本の政府も、市民も含めて、ルールということの本質がわからないんだったら、教えてあげようか。法律もつくってあげるよ。特別な機関をつくって、我々が教えてあげましょうか」というところまでいわれております。
 このときに、前の建設省なんて、「英語のやつらが大勢やってくる。だれか英語できるやついないのか」という感じです。「どの課長は留学していた、海外に行っていたから、あいつにしたらどうだ」という形で、とにかく勧告をまじめに聞くということになっていないです。ですから、そこはOECDサイドとしては大いなるすれ違いということがありました。今の日本というのはそういうことになっています。
 私、今東大で先生をやっていますが、東大でもこういう話をすると、「そうなんですよ」と、東大の地震研の教授がやってまいりまして、「実は地震研の方にも始終、ヨーロッパ、スイスとか、イギリス、アメリカの保険会社とか、証券会社とか、いろんなところが来る。「東京の地震のリスクはどうなんだ」という話を聞く。彼らは怪しげな数式で、東京のリスクを、先生から、そうかと聞いて、計算式を出して、何やら数字を出している。何をやっているかというと、ジャパンプレミアムということで、日本マターの、日本に関連するあらゆる経済行為に対してリスクチャージをかけているわけです。ですから、日本、東京が地震に対してちゃんとまじめに対応策を持っていないということが、あらゆる商行為、トヨタがお金を借りようが、ホンダが金を借りようが、ソニーが何をしようが、日本の企業だということによって、ジャパンプレミアムという形でチャージが全部載っかってくる。
 そして彼らが指摘するのは、「大変だということはわかる。対応策をしていても、対応策が全部完成しないうちに地震が来得る、そこもよくわかる。我々はちゃんと冷静にわかる。ただ、何もしてないというのはどういうことだ。何の対応策もしてない。対応策をしていて、順次やっているということであれば、それをまた彼らはきちんとリスクカウントから引く」というんです。「10年でシステムが完成する前の7年目に来たとしたら、それをリスクでカウントするということは、ちゃんとやる。我々はフェアにやるんだ。ただ、何もしてないというのはどういう精神構造なんだ。DNAに著しい欠陥があるんじゃないか」ということまでいっているわけです。僕は別に日本に対して自虐的にいっているわけじゃなくて、これが欧米勢の一致した見解でありますし、中国なんかも今そういうことをいっております。
 ひどい例は、鈴木宗男の専売特許じゃないんですけれども、ODAというのが途上国にやられる。途上国の方々は来て、「ODAは要らない。それよりも、うちから出稼ぎに東京へ行っている人間の安全を守ってくれ。財産を守ってくれ。だから、地震対策をやってくれ。東京の再開発をまじめにやってくれよ。ODAなんか要らない」。「ODAもらったって、どうせ大臣とかトップの人たちのポケットに入るだけだ」というのは、彼らはもうよく知っているんです。そういうことをちゃんとお役人がいいに来るんです。これも声にできない声ということ。
 申し上げたいことは、東京のまちをちゃんとまじめに再開発をしましょうねということです。それがやれるルールをつくりましょう。私は、エンジニアとか、これに加担していて、少なくとも都市関係に加担していて、やれないというのは根性が腐っていると思います。
 彼らはよく木造密集地帯の調査をやったりするんです。調査をやるのはいいんだけれども、それはかくかく、こういうように複雑になっているから結局再開発はできないというレポートを書く。そんなレポートしか書けないんだったら、エンジニアであることをやめなさい。専門家のふりをしていて、それでやれないという結論を出すんだったら、やめりゃいいじゃないか。そういう職能から足を洗ってくれ。だって、やる方法を考えるのがエンジニアの仕事ではないですか。
 そういうルールを提言すればいいじゃないですか。あるいは方法を提言しなきゃいけないと私は思います。私がやり始めていることはそういうことです。
 まず第1に、行政の方、公団の方もいらっしゃると思いますけれども、市民の人に再開発をなぜ我々はやらなければいけないかということを丁寧に説明するということを、今だかつて一回もやってないです。場当たりで、ここいらを再開発しようかと思いついたところへ行って、住民の人に「コンコン」とドアをノックして、再開発やりませんかといったって、そんなもの、再開発してどういう意味があるのかわけわからないんだから、とりあえず反対するということになるに決まっている。国全体を挙げて、再開発をしないといけない。東京を再開発しなきゃいけないということをきっちり、お金をかけて教育をする。戦後57年たっているわけです。その間一回もそういうことをやらないから、こんなになっちゃったということがあると思います。そろそろ気合を入れてきちっとやり始めたらいいと私は思うんです。

 

 森ビルの六本木六丁目の再開発がこの間上棟式がありました。16年かかったとか18年かかったとかよくいうんです。これもあまりよい話ではなくて、でも、そこまでやったから偉いわけですけれども、欧米の再開発とか中国の再開発を見ていると非常に速いんです。長くかかるということを自慢しちゃいけないし、速くやるということを真剣にやらなくちゃいけなくて、再開発はなぜみんなが反対するか、嫌だというかというと、ダラダラされるからです。2年でやってみろ。2年でやったら、仮設の住宅に行っている間我慢しようということになるはずです。それがいつになるかわからないみたいなことをお役所の人がいったりするから、そんなことにまともな人がつき合えるはずがないです。
 だから、できないんじゃなくて、大体まじめにやるような体制になってない。シナリオになってないから、だれだって相手にしないということで、それで57年が過ぎてしまった。その間に腐らせてしまった。とことん再開発というのはバツ。5つバツが出ちゃう、レッドカードが出ちゃうというようにしてしまった。人々の心をスポイルしてしまったということだと思います。
 それを非常に強く反省しなきゃいけないと私は思いますし、よく考えて「やろう」と心に決めて、それのためのルールとか、インセンティブ、要するにメリットがあればいいわけです。だけど、損するのか得するのか、わけわからない話をしたって、これはだれだって相手にされるわけないです。明快にしたら私はいいと思います。造作なくできるとみんなが思えば、ここにおられる方が、再開発なんて造作なくできると思えば造作なくできるんです。これが、こういう方々が「いや,難しいんだよね」といえば、それはできなくなるに決まっているんです。と私は思います。それで都市再生を真剣にやらなくゃいけない。
 イギリスはどうやったかといいますと、サッチャーは、それまでどうしようもない、できない、できないといわれていたドックランズとか、インナーシティとか、いろいろいわれていたところにこういうことをやったんです。ある範囲を決めてここにファイナンシャルセンターをつくりますよ。そこに進出してくれたら、10年間事業税無税ということをやった。世界企業を持ってきて、ニューヨークのウォール街と大西洋光ファイバー大幹線で直結させました。という形で、非常に強力なインセンティブを仕掛けています。いわゆるエンタープライズゾーンということです。
 これと同じようなことをイギリスは昔からやっているんです。例えば、香港とかシンガポールとか上海、昔からそういう場所を経営するときに、タックスヘイブンということをやってきています。
 先ほどのアイルランドが成功しているのも、そうなんです。物すごい決定的なタックスヘイブン。アイルランドは事業税が10%というのをやっています。これで世界じゅうの企業がそこに殺到してきたわけです。そうすると、日本みたいな国は、そういう税金が安いところをつくっちゃ、うちの国がつぶれるからやめてくれとかいう圧力をかけるわけですけれども、アイルランドはなかなかしたたかで、アメリカとかイギリスとか、先進各国と多国間協定を結んで、日本が変な圧力を加えても、けっぽるようなことをやっています。アイルランドは今12.5%の事業税ということになりました。ですから、世界各国がみんなそこに企業進出をしているということになるわけです。
 それに先駆けてサッチャーは、タックスヘイブンをロンドンの都市再開発のど真ん中に入れたわけです。大型のインテリジェントビルがたちどころに立ち上がります。10年間事業税無税ということをいえば、2年間で立ち上げてしまって会社経営をやれば、8年ただ食いができるということ。単純な原理です。これはなかなかのもので、仮に20年とかいうと、先にだれかいったらどうなるか様子を見ようかということになります。5年だとどうかというと、5年だと、2年でつくっても3年しかただ食いができないとなると、また考えます。だから、10年というのはなかなかなところを突いているわけです。そういうことをやりました。
 もう1つ、非常に決定的なことをやったのは、その周りに非常に膨大な量の住宅を供給しているわけです。ファイナンシャルセンターを立ち上げて、その周りにおよそ10万戸を瞬間芸のように、供給しているわけです。マンションの開発ラッシュです。これはロンドン市から都市計画の開発許認可の権限を全部サッチャーが取り上げてしまった。ロンドン市なんかは本当にうるさいです。都市計画、デザイン規制がどうだとか、ゾーニングがどうだとか、昔からよく進んでいるわけです。だから、ロンドン市の役人はうるさい。そんなうるさいことをいっていると何もできないからといってサッチャーが取り上げてしまいました。それで、「マンションつくりたいんです」といったら、書類を出せば翌日着工できるということにしました。それで驚くほどの量を一気に集積させたわけです。理論的なことをサポートするブレーン、戦略をつくってあげる非常に優秀な方がいて、そういうことをやったわけです。
 ファイナンシャルセンターの周りに物すごい量の住宅がある。これは徒歩圏です。新しい世界都市はどうあるべきかというと、徒歩圏の中に、あるいは、それはちょっと極端だとして、自転車とかスケートボードで動ける範囲にいかにたくさんの優秀な頭脳が集積しているかということ、当然、職、住、遊が集積しているわけです。人材が集積しているということは職、住、遊がそこにあるということです。
 それがロンドンのど真ん中で今目の当たりに見られます。これも絶対に見なければいけないことでございます。
 そして、先ほどいっていた中国は、このロンドンの成果を見て、もっとこれをドラスティックにやれないかということを考え、それを実践しているわけです。韓国もそういうことをやっています。
 そのときに、ロンドン市のお役人の人とか、まじめな建築家とかは、そんな乱開発をやっていいのかとか、インフラがちゃんとない、学校がない、幼稚園がないじゃないか。それに対してそんなもの儲かってからつくればいいだろうという荒っぽい話をしたんです。サッチャーはどういったかというと、「戦時だ」。戦争。「グローバリゼーションの戦争が起こっているのであって、この戦争には勝たなければいけない。2番とか3番とかはないですから、戦争は勝たなければいけない。戦時だから、私に全権を掌握させなさい」といったわけです。10年間事業税無税なんて場所をつくれば、財務省だってイギリスにはあるわけですから、反対するに決まっています。それは、だけど、「戦争だからなのだ」といいました。
 実際、どういうことが起こったかというと、そこにアメリカの企業を中心とした世界企業がどっと押し寄せましたから、イギリスの証券会社とか銀行とか全部つぶれました。それをまた、彼女はどういって説得したかというと、「これはウィンブルドン方式だ。ウィンブルドンのテニスのセンターコートをごらんなさい。あそこでイギリスの選手が1、2、3位をとったなんてことはないでしょう。だけど、世界選手権の舞台を張っている、そういうステージをつくっているのが我が大英帝国ではないか。その誇りを感ずればいいのであって、イギリスの人が優勝しなきゃいけないとか、そんなふうに考えちゃいけないんだ。そう考えたら、それはローカルな試合でしかないでしょう」といいました。
 実際、アメリカの企業がどっと出てきて、どうなのかというと、イギリスの会社はつぶれるんですけれども、より企業活動の規模や経済活動の規模は大きくなって、そこで再雇用されて、ずっと所得は高くなっています。そのすぐそばにマンションがあって、そこから歩いて通える。24時間都市って、こういうことだ。そして、レストランの開店ラッシュです。イギリスはグローバリゼーションの戦いに「勝った、勝った」と喜んでいるわけです。それでイギリスの唯一の欠点は何かというと、飯がまずいということ。それをこの世紀の曲がり目で返上してしまおうじゃないかということを、ブレア首相は「皆さん、サッチャーさんのおかげで、非常に所得は伸びたでしょう。お父さんがストライキで家でゴロゴロしているという風景もなくなったでしょう。だから、土日は都心に家族みんなで出かけて外食をしようよ。レストランで家族そろって食事するというのをイギリスの新しいライフスタイルに加えよう」とテレビで語りかけました。これを聞いてみんな街にどっと出るわけです。それがまた中心市街地の活性化につながるわけです。
 これはロンドンだけじゃなくて、イギリスの地方の、造船がだめになった、石炭がだめになった、そういう都市でも、中心市街地の活性化の非常に有力なトリガー(引き金)になっています。
 日本でも、大事なことは、そういうふうにただ声をかけただけじゃいかないわけです。まず、日本の経済がどうにか上向かないと、地方の都市にもそういうことがいかないわけです。
 あと若干補足的に紹介しておきますと、地方の中心市街地の活性化でお困りの方がいらっしゃると思いますけれども、サッチャーに導かれたイギリスでやっているやり方は、非常に明快でございまして、ギャップファンディングというのをやっています。ギャップは落差があるということです。ギャップをファンドする。これは、例えばイギリスの地方都市の中心市街地で「こういう古い建物がある。テナントがいなくなってしまった。だけど、これを修復して下にはやりのレストランを入れて、上を改装して住宅をつくって、各種学校なんか入れたら、結構いいプロジェクトになる。それが契機でだんだん周りも活性化してくる」というスキームが描けたら、そして設計ができて、事業収支をはじいてみる。これだけ金かけるとうまくいくんだけれども、これだけ金が足りない。成功するために、事業で予想される収益とギャップがあります。そのギャップを正確に出しなさい。そしたら、そのギャップ分だけ、つかみ金で国が上げますということをやっています。これはかなり明快なやり方です。
 日本だって、いろんな補助制度ではいろいろありますが、それを全部かき集めても、事業が確実に立ち上がるかわけわからないという状況とは大きく違うような気がします。つかみ金でギャップをドーンと出すというやり方をします。これは明快です。再開発でもそういうふうにやればいいと思うんですけれども、それはそれでおいておきます。

 

 最後に、ロンドンでサッチャーはどうしてそのようなことを考えやったか、もう一回復習しておきますと、シリコンバレーの成功しているということが念頭にあります。シリコンバレーの成功がアメリカ経済を成功させたというのは皆さんよく知っているわけです。だから、そこも、我々としてはつぶさに見に行く必要があるんです。耳学問でチラッと知っているんじゃいけない。
 シリコンバレーはなぜ成功したか。シリコンバレーが成功したことによってアメリカ経済は再生したわけです。これにはこういうジョークがあります。ICで成功した。集積回路のICではなくて、インド人とチャイナ。インド人と中国人の優秀な人たちを入れてきたのです。それをテクノ移民といいます。頭脳としての移民、頭脳労働移民です。ワークビザを出してきた。これが1年間に大体10万人という枠でやっていたわけです。5年間働ける。それを20〜30年間もやってきていたわけです。それがシリコンバレーの会社の4分の1とかを支えているといわれています。要するに会社をつくって上場してしまうという企業がいっぱいできているわけです。いわば第2、第3のビル・ゲイツをみんな夢見るという形で。
 イギリスはどうやったかというと、そういうことをつぶさに勉強して、アメリカでは東海岸にニューヨークがあって、西海岸のシリコンバレーでそういうことをやった。イギリスは狭い国だから、ロンドンのど真ん中でやってしまってはどうだろう。それを都市再開発でやったらどうだろうかと考えたわけです。これが物のみごとに当たったという感じです。万々歳という感じになりました。
 成功した勢いに乗ってついでにいろんなことをいっているんです。「ついにイギリスの母国語である英語が世界語になった」ということもいっているんです。どういうことかというと、インターネットがはやった。世界12億人も加入している。その基本は英語だというわけです。あとは任せておけばそれが20億人になって、しまいには60億になってしまうだろう。英語がついに世界語になった。もう21世紀は我々の世紀だ。今後100年の戦争に勝ったのだということをいっています。
 これは我々が聞くと結構きつくて、日本人だけがそういうことから取り残されています。ドイツに行くと、もうビジネスマンは全員といってよいほど夜学に行っています。みんな英語塾に行っている。現職のばりばりのビジネスマンたちが夜学に行って英語をやっています。英語ができない人はこれからは何にも仕事にならないという時代になってしまったんです。日本だって、隣の韓国は、中国はと見たら、同じ状況です。東京に進出しないで、上海にアメリカの企業が何で進出するんですかというと、「中国の方が母国語は英語ですよね」なんて、平気でいってます。日本だけ、1億2600万人が独特のランゲージのまま世界経済の中で取り残されていくという形になっています。
 今日本で「IT産業が意外とだめになってきた」「パソコンの需要がもうだめになってきている」というのも、本当のことをいうと、パソコンを買ってインターネットをかじってみたけれども、結局英語ができないと全然使い物にならないよねということがジワーッとわかってきたということなんです。これは我々日本人にとって結構しんどい話です。それはちょっと余談ということにしておきましょう。
 もう1つつけ加えていっておきますと、ナイロンという世界都市が今できたといわれています。ナイロンって何かというと、NYはニューヨーク、LONというロンは、ロンドンの頭です。つまりNYRON、それが今はやりの世界都市。ニューヨークとロンドンが対になって、本当に一体化し始めたということがいわれております。この間ブレア首相が、9・11のテロの後、すごく活躍しました。どっちがアメリカの大統領か首相かわからないぐらい活躍したというのは、実はロンドンはニューヨークという都市ともう一体なんです。大西洋光ファイバー大幹線で直結されています。ですから、ワールドトレードセンターがやられたということは、ロンドンのシティがやられたということと全く同じことを意味するということで、ブレア首相はそれをどうするかと、てきぱきと動いたわけです。カッコつけでやっていたわけではないんです。
 NYRONという新しい世界都市ができて、コンコルドが去年の秋から復航しました。考えると、危ないからよした方がいいといっても、NYRONという世界都市にとって、最も重要なインフラストラクチャーは、大西洋光ファイバー大幹線であるとともに、コンコルドなんです。今ロンドンで活躍している証券マンとか、銀行の人、ITエリートのような人たち、テクノ移民とか呼ばれる人たちは、ロンドンで仕事をセットすれば、翌日は今度はニューヨークに行って、ウォール街の方に友達と仕事を仕掛けをしてきて、またこっちに帰ってくる。そうすると、そこを1人2役で行ったり来たりすると、仕事が1つまとまるという感じになっています。
 ですから、ロンドンに仕事のある人はニューヨークにも仕事があるんです。両方に職場がある。ロンドンで当たるミュージカルはニューヨークでも当たる。ロンドンでオープンしたレストランと同じものが、同時にニューヨークでもオープンするという形で、全く対の1つの都市になったといわれております。ですから、片道3時間でコンコルドで往復するのは、日本でちょうど東京−大阪をのぞみで日帰りで往復しちゃうということをやっているのと、ほぼ同じようなことになってきました。これも我々は深刻に考えなければいけない事態で、ロンドンとニューヨークが結託して1つの都市になってしまっているということなのです。
 上海とか北京とかも、こういったことを横目に猛然とやっている。東京はどうするのかなという感じです。大阪の方が会場にきょういらっしゃるかどうかわからないですけれども、こう考えてくると、大阪は本当に深刻だと思います。もはや東京に対する一極集中が起こっているということではないんです。
 トリトンスクエアにいらっしゃる方もいると思います。晴海にトリトンスクエアという再開発ができました。住友グループが全部結集しました。ということは、住友グループ、前から東京にも出られていましたけれども、去年の5月にこの際すべて大阪から足抜けしたということです。住友に関係する企業は4400社だともいわれております。ちょうど日建さんも本社を東京に移されたというのはそういう意味かもしれません。住友グループが全部大阪から足抜けした。来年は松下さんが汐留に来られます。門真から全部来てしまうということです。松下の関連企業は、1900社だともいわれます。
 この2つが抜けてしまうと、残っているところも全部なだれを打って東京にいくということになります。それは東京一極集中ということではないんです。製造は中国に工場が展開している。ソフトもそっちに展開するということになったから、参謀本部が1個あるとすれば、しようがないけど、東京かなというだけの話です。それを東京一極集中を国が促していてけしからぬ、なんていったって始まらなくて、国なんか何のコントロールの力もないです。ただひたすら中国へ日本の産業のすべてが流れてしまうということになっていると思います。
 ですから、その中で日本を再構築しなければいけない。それで結論としていえることは、再開発をもっと気合いを入れてやらなければいけない。東京は、汐留もできて、六六(六本木六丁目再開発)もできて大した都市かというと、そうでもなくて、上海とか北京の方があっという間に追い抜きます。これからスライドで追い抜かれているさまをごらんいただきますが、結構日本にとってはまずい事態です。東京はでかいんだけれども、怠けているということはいえるから、本来の力を発揮しなくてはいけないと思います。
 結論的にいいたいことは、東京は、第2次大戦で焼かれました。焼かれた量というのはどれくらいかというと、後で写真でごらんいただきますけれども、東京大空襲というのは1945年の3月10日の晩にあった。夜12時から2時間20分の空襲を受けたわけです。広島とか長崎の原爆以上のことをやられて、4000ヘクタールの市街地が焼失し、1晩で10万人が焼かれて死んでいるんです。
 そういうことは、考えたくないから、頭の中から消去してしまいたいという心が働くことは確かです。もちろん大本営は、そのときに「軽微なダメージしか受けていない、若干の人が死んだが、東京市民の士気は衰えていない」とか発表しました。大本営発表ってそんなものです。今の小泉内閣の日本経済に対する発表と同じです。大本営発表というのはそういうものです。下手すると、4000ヘクタールが1晩で焼けたなんてことを我々何も知らなかったりすることになりかねない。第2次大戦の東京空襲でどれだけ焼けたかというと、1万2500ヘクタールが半年足らずの間に焼かれているわけです。焼かれた周りもひどくなっているわけです。それを包絡したとすれば、大体2万5000ヘクタールの市街地が焼けて使いものにならなくなったと見ていいわけです。
 我々が都市再開発をやります、駅前再開発をやります、5ヘクタールやりました、森ビルが六六をやりました、10ヘクタールですということが、このことを思うといかにスケールアウトかという気がします。
 2万5000ヘクタールがおおむね焼けたと思われるところ。そして、都市更新がやられるべきところなんですけれども、それについて一回もちゃんとまじめにやらなかったんです。関東大震災のときには、5000〜6000ヘクタールやられたんですけれども、後藤新平という偉い人がいて、内務省が今の自治省、建設省、運輸省に分かれていないで一体的だったから、結構やったんです。けれども、第2次大戦の後は事実上何もやらなかった。何もやらないまま、こうやってきたら、こんなになってしまった。だから、住民はぐれてしまった。再開発には協力する気がしなくなってしまった。これをどうにかしないといけないと私は思います。
 ドイツはもっと空襲でやられています。だけど、彼らは20年足らずの間に全部再建しています。石づくりで粉々になったのを全部きっかりとそれを再建して、なおかつその周りに郊外の住宅地区もつくっているわけです。いろいろ理屈はいいながら、何もやらなかった国がある。2万5000ヘクタール焼かれておいて、駅前再開発とか、10年、20年たって、4ヘクタールやったとか、それはやっぱりおかしいということに今気がつかないといけない。私も、東京のまちがどうしてこんなになってしまっているのかなとずっと考えやっと最近わかってきたのはそういうことでございます。
 それではスライドで見てもらいましょう。

 

(スライド−1)
 今の話の続きをいいますと、大川端で私ども再開発をやりました。これが13.4ヘクタールです。これを考えたのは25年前です。超高層住宅が現在の都市の再開発のプロトタイプになったということは、私どもとしてはありがたいことだと思っているんですけれども、このときを思い起こして、よく考えてみると、あらかた、すべての人が反対をしていただいております。
 大川端のリバーシティ。50階建ての超高層の住宅をつくるといったら、やっぱり反対をされました。東京って、再開発できないんですよねというのも、僕はあまり気にしてないんです。やれるんです。これだって、めちゃくちゃに反対されました。あの高山英華さんも、「おまえは東京をマンハッタンにする気か」とか、言われていました。川上秀光先生なんかには、もっともっときついことをいわれました。
(スライド−2)
 そのときに何を僕らはやっていたかというと、エリア戦略というのを展開していたんです。大川端のリバーシティと、聖路加病院と築地の卸売市場と三菱倉庫、住友倉庫、箱崎倉庫、晴海の展示場、それを大きな布石として使ってどういうふうに戦略的に攻めていくかということをやって、おおむねそういうふうにできたんです。ですから、戦略をつくって、ちゃんとやればできるんです。これは私どもが割合微力でやったわけですけれども、みんなでその気になれば、物すごいことができるということだろうと思います。戦略をつくってやって、これも新しい法律は幾つかつくりましたし、八重洲から来るこの橋をつくるといったら、まあ、これも大いに怒られました。東京の町のど真ん中に新しい都市計画で橋をつくるって、ばかじゃないのかといわれましたけれども、そんなことに全然めげちゃいけなくて、何とかやればいいんです。そうすると、便利になるんです。
 つまり、やれないとか、専門教育を受けながら、専門的知識を持ちながら、それをネガティブに使っているのがコンサルタントなのかと僕はいつも思ってしまうわけです。前向きにもっと知識を使わなければいけないです。コンサルタントが「できない」なんていわないでほしいと私はここで皆さんにお願い申し上げる次第です。
(スライド−3)
 幕張メッセもストラテジーをつくってやったら、これも民間投資が2兆円以上集積しました。どっと民間の投資家が行きました。きのうもよそでこのスライドをやったら、「幕張のそばに住んでいるんですけれども、オフィスがあいてます」という人がいて、痛いところを突かれたなとも思いました。それは10年たつと、世の中すっかり変わるから、オフィスも10年たってあいたら住宅に変えたりするということをやればいいんです。1個つくったらそれっきりずっと儲かると思っていてはいけない時代なんです。
(スライド−4)
 これはブセナリゾートです。実はリゾート法を手伝ったのも私でございますので、このごろはあちこちで、怒られていることもありますが、これは優等生で非常にうまくいったケースです。ブセナテラスビーチというホテルがあって、ここをベースにしながら新たにコンベンションセンターを増設して先進国サミットをやりました。こういうのも、作戦をつくっておくとそのようになるということの例です。今どうなっているかというと、常時満杯だから、もっと拡張して、もっとでかいコンベンションセンターとホテルをつくろうということになっているわけです。

(スライド−5)
 さて、それで、話は戻って、今ニューヨークに行くと、ワールドトレードセンターがなくなりましたから、エンパイアステートビルがニューヨーク、マンハッタンで一番の高さを誇るビルにまた返り咲きました。102階建てです。考えていただきたいのは、これができたのは1931年です。今から70年以上前にできているということです。そして、このクライスラービルは1930年にできています。1930年というのは何かというと、1929年が世界大恐慌です。その直前は好景気でした。だから、こういうでかいビルをつくろうということを一生懸命やって、雇用開発を計画したわけです。そして、好景気に計画したものが30年代前半に建ち上がりストックをつくったわけです。100年持つストックをつくったわけです。我々は何なんだ。非常に軟弱ではないか。景気が悪い。だから、何もしないということをやっていてはいけなくて、この精神に学ばなきゃいけない。
 ついでにいっておきますと、エンパイアステートビルは、工期19カ月でやっています。102階建てを工期19カ月でやる工法をもうこのときにつくっている。だから、我々の建設技術というのは大したもんだけれども、大したもんでもないということがいえるかもしれません。こういう力を発揮しなきゃいけない。
 じゃ、このときにテナントがいたか。必ずそういうことを皆さんはおっしゃるわけですけれども、このエンパイアステートビルが最初にオープンしたときに新聞でたたかれたのは、エンプティーステートビルといわれた。要するに、空の実。テナントがいないといわれたんですけれども、それは短期のことです。
 ですから、そういうことができるためには日本の税制が変わっていかないといけないですね。税制が変わって、ストックができる、こういうときにストックをつくっておく。ゼネコンの方に少し安く工事をしていただくとか、そういう知恵が必要です。
 マンハッタンの主だったビル、みんな30年代の頭でできています。それを学び考えなくてはいけない。その後20年間はほとんど何もやっていません。ですから、ストックをつくるということは、そういうことであるわけです。
(スライド−6)
 ロックフェラーセンターもそうなんです。
(スライド−7)
 マンハッタンのセントラルパークの西側を見ていただいて、アッパーウエストと呼ばれるところです。ここは世界のお金持ちが住んでいます。よく都心4区とマンハッタンと面積同じで、そこには東京は50万人住んでいて、ニューヨーク150万だといいますけれども、住んでいる人の所得帯が違うんです。世界の強豪、お金持ちの人たちが住んでいると、それが一大産業になります。日本と100万人のギャップです。東京も都心にマンションが今どんどんできてきているんですけれども、果敢にもう少しチャレンジしなければいけないのは、世界のお金持ちを大挙して集積させるということです。その方たちは死ぬまで思い切りお金を使ってくれます。成功された方ですから、死ぬまでとにかく思いっ切り楽しい思いをしなくちゃということでお金を使ってくれる。それが巨大な産業になることを我々は知らなきゃいけない。
 中国でいっぱいお金持ちができているんですね。中国では年俸1000万円以上の方が4000万人いるといわれていますから、その人たちに東京にセカンドハウスを持っていただいて、あるいは
(スライド−8)
 90年代にも42丁目のあたりは、めちゃくちゃビルが建ちました。ですから、奇妙きてれつなビルがいっぱいできています。彼らはいつも作戦を考えて、作戦どおりに行動していくことをやっています。東京は作戦がない。それだから、どんどん景気は悪くなりっぱなしになるだけです。神頼みだけじゃいけない。
 NYLONのインフラストラクチャーというのはコンコルドで、これが3時間でニューヨーク・ロンドン、ニューヨーク・パリを結んでいるわけです。もう次世代型のコンコルド330人乗りということの開発がどんどんやられているわけです。それを見ると、今NYLONという世界都市をもっと強化しようという意気込みが感じられます。2階建てになっていて、上はベッドなんかあります。それから、バーのラウンジなんていうのもある、こういうことです。彼らはまたこれで金集めしたりしているわけです。日本とちょっと違います。
(スライド−9)
 ロンドンは戦勝記念のシンボルが必要だということで、世界最大の観覧車をつくりました。これは国会議事堂の前です。テームズ川に張り出して、これをごらんください。ちょうど自転車のホイールみたいで、テンションでつるされて、スピンドルズで持たせている。後ろからケーブルでカンチレバーで支えています。テームズ川の上に張り出しています。1カプセル25人。1つ1つの箱にガイドが乗っていて、ブリティッシュエアがこれのスポンサーです。
 ニューヨークにはエンパイアステートビルがあって、パリにはエッフェル塔があって、ロンドンには何もない、だから、これをつくるなんてことを言っているんです。うらやましい限り。
(スライド−10)
 それで、こういう形にして、子供たちによく教育しています。東京にないのはこういうことです。子供たちにちゃんと、「都市再開発をするんだよ。今度はあそこのところをやるんだよ」という教育を課外授業でやっているということです。これはフランスもやっていますし、どこもやっているんです。日本にない知恵というのはこういうことです。ただ、お台場に観覧車があって、若いOLの方たちが乗っているというだけじゃだめなんです。何のためにそれをやるのかを学ばなくてはいけないのです。
(スライド−11)
 下を見ると、国会議事堂が見えて、チャリングクロスの駅も見えたり、あるいはシティが見えたりします。
(スライド−12)
 逆を見ると、今度はシティが見える。シティの先に、キャナリーワーフというサッチャーがつくった、10年間事業税無税だよということで、にわかにできたところがあります。そこのサイトをごらんいただきますと、こんなにグジャグジャにドックがあった。それを埋め立てないでつくったのです。MM21だと、これをわざわざはつって埋め立てて、護岸も直して、ここいらにあるのは全部ドックが埋まってとかやっていますから、土地が仕上がったときにはえらい高いものについているということと、タイミングがずれて不景気になってしまったということなんです。ですから、迅速に間髪を入れず再開発をやるということで、彼らはこの上に建ててしまった。そうすると、片足水で、片足埋まったりしますと、なかなか設計条件がおもしろいということで、余計おもしろいビルができるということです。なおかつ、こういうところ、例えばドックとドックの間は頑丈だ、何か取り柄があるか。発想論ですよということでここを空港にしてしまう。埋め立てなんかしない。護岸なんか直さない。金がなかったことが幸いするんだと思います。後にしてみれば、日本人って几帳面過ぎるんですね。こういうのを見ると、日本の区画整理を担当してきた方はとても見ちゃおれない。「あっ、水だ」と思っちゃうのが病気なんです。日本病だと思います。
(スライド−13)
 そこににわかに立ち上げたのは、こういうファイナンシャルセンター。これはシーザー・ペリーの設計、SOMの設計です。アメリカの日建設計みたいなところです。だから、何を言いたいかというと、ロンドンで、アメリカ勢がやっているということです。「アメリカの企業が入るんだから、当然よ」という感じです。
 埋め立てなんかしないで、細々とした橋で済ませるとかいう感じでございます。事業税無税ということをやるわけです。そしてその周りにワァーッと住宅を建てていくということをやります。ここに滑走路ができ上がっています。ロンドンシティエアポートといいます。
(スライド−14)
 テームズ川を行きましょう。これはフォーシーズンのホテルというか、フォーシーズンが面倒を見るコンドミニアムとかできています。ごらんいただきたいのは、ここの護岸が鋼矢板のままだということです。これが日本人にできるか。彼らは、金が集まった後でやればいいじゃないか。タイミングを逃したら戦争って負けるんだよね。こういうことをいっています。さすが大英帝国だと思います。
(スライド−15)
 それで、テームズ川沿いをずっと見ていきます。これは前の総裁の牧野さんが隣にいて写真を撮っているところです。多摩ニュータウンというのは総裁のいらっしゃった都市公団がおやりになって、僕らが学生のころからやっていた。それでまだ完成してない。40年たっているじゃないか。こっちでは10年足らずでこういう10万戸がバタバタバタッとできてしまうということです。
 このようにかなりの乱開発でございます。いろんなオンパレードです。
(スライド−16)
 これはイギリスの建築家のまじめな先生方は怒り狂っているんです。それを聞くから、日本の建築家はこれを見に行くと、乱開発で、こんなのは参考にならないというんですけれども、そうではなくて、経済開発戦略、国家経済戦略として見たときに、これが決定的に役立っているわけです。このマンションで1年間に年率十何%も価格が上がるということですから、超バブルです。
(スライド−17)
 三井不動産の田中会長も「うらやましいな」といってました。ドックを埋めないで住宅をつくっていけば、こういう風景ができ上がる。これがナイロンの居住者。ナイロンの人はロンドンにもマンションがあって、ニューヨークにもある。両方に仕事がある。両方に彼女がいる。だから、楽しいなといったりしています。
 MM21なんて、こういう可能性があったのを、丁寧にはつってしまって、今ごろになってマリーナが欲しい。それでは重複投資です。
(スライド−18)
 でも、それは結果論です。MMが悪いといっているわけではないんですけれども、日本人の几帳面さが、タイミングということからするといけない。
(スライド−19)
 ナイロンの居住者って、こんな感じです。レストランはリバーサイドあたりに開店ラッシュです。これがナイロンという、ニューヨーク、ロンドンをあっち行ったり、こっち行ったりしている人たちのはやりのレストランで、回転すしの原理がそのまま生かされています。我々も回転すしを発明したから偉いだろうといっているだけじゃいけなくて、ロンドンに出てっていって、どんどん稼がなくちゃいけないということだと思います。随分お皿が重なっています。食欲が出るわけです。ナイロンという非常にいいところにできた。
 ナイロンの居住者って、こんな感じだということをいっています。ロンドンのど真ん中にいて、こういう生活はどうだと言っているわけです。みんな本当に楽しそうですね。コマーシャルとしても。
(スライド−20)
 これはアークヒルズとか六本木六丁目の再開発と同じだと思っていただければいいわけですけれども、ドックを埋めないと、ただ配管すれば噴水ができるというものです。
(スライド−21)
 それで、こんなお姉さんなんかも闊歩していて、スーパーモデルですね。焦点を外しちゃいけないですよと言われているようです。それでスーパーカーとかスポーツカーがゴロゴロ売れるんですね。日本のバブルのときと同じ。タクシーも都市開発の絵をかいている。うらやましい限りです。
 これはキャナリーワーフの駅です。地下鉄駅。ジュビリーラインを4800億かけてつくった。それをロト、宝くじの上がりでつくっているのはなかなか名案です。カジノをやったらいいといっているのはそういうことです。
(スライド−22)
 これをごらんください。キャナリーワーフの駅。人間の大きさがこれです。我々は12号線をつくったけれども、こんないい駅をつくったか。これは発注のスペックが200年持つインフラストラクチャーだといっています。ですから、この金融情報センターは200年、我々は運営するといっています。日本ではそういうことを考えてないということです。経済で勝つ、勝ち残る、勝ち残れということをいっているわけです。からくりを申しますと、「これって、すごいよね」といったら、いや、そのはず、ドックを壊さないで、ドックを生かしている。ドックにふたをした。何だって几帳面にドックを壊して整地して、ただの四角い土地にしてしまうという区画整理病を治さないといけないです。
(スライド−23)
 すごい駅ですね。プレキャストのピースをうまく使っています。これが世界の金融の殿堂ということのようです。それの玄関という誇りがあります。
(スライド−24)
 ちょっとおもしろいところを見てみますと、豊洲の埠頭と同じ。キャナリーワーフのちょうど向かい側。ブリティッシュガス。東京ガスじゃなくて、ブリティッシュガスの埠頭というのがあります。BGの埠頭。都心型のニュータウン。エコロジーニュータウンというのをつくっている。ここでは、省エネ型のプロジェクトです。7階建てぐらいの建物しかつくられない。ビオトープとか透水性とか、いろんなことをやっています。今いわれているエコロジー、共生とか、そういうことは全部実現する。それを超都心でやっています。
 自家用車保有率はロンドンの平均が戸当たり2台、ここは戸当たり1台。あと、バスとか、地下鉄、電気バスとかでサービスするということをやっています。これはなかなかおもしろいプロジェクトで、都市再生というと、こういう実験プロジェクトをやるという手もあると思います。
(スライド−25)
 そこを景気づけするために、東京ドームが4個入るような大きいドームをつくったりしています。川をなかなかよく意識した設計です。
(スライド−26)
 中で博覧会をやったりしています。ロンドンの子供たちはこういう人たちです。この子たちがここに住むということになるんでしょうね。だから、子供に非常に夢を持たせるということをやりながら、子供から親を説得させるということをやっています。子供が「この辺はこういうふうに再開発されるんだってさ。きょう授業でそういうのをやってきたんだよ」と親にいわせるということで、親が絶対再開発に反対しないというからくりをストラテジックにやっているというところがすごいです。
(スライド−27)
 ロンドンのウォータールー駅です。ここからパリにユーロトレインで3時間で行けます。ブラッセルにも行けます。その駅を見てみると、やっぱりこういうカッコいい建築をやっています。その心は何かというと、若いビジネスマンが主なお客ですから、その人たちにやる気を起こさせる。若いビジネスエリートの連中が好きな建築家を起用していることです。JRだから、JRの設計部がやっちゃうとか、そういう愚かなことはやらない。
(スライド−28)
 それでこんなお姉さんなんかがいます。飛行機と全く互角のサービスをしようということを思っています。そしてユーロトレインの方が都心から都心へということができるでしょうといっています。サービスは飛行機と同じですよという形で、飛行機のスチュワーデスとコスチュームは全く似たようなものです。このワゴンも飛行機から持ってきた。物の考え方がちょっと違っているようです。こういうビジネスマンのお兄さんがパソコン使用の新幹線で行き来する。こういう人たちに思いっ切り働いてもらって、この人たちがベンチャーで優遇税制がやられていて、ミリオネアーになって、そういう人たちにみんなぶら下がっていくという考えです。それが地価社会の原点です。
(スライド−29)
 ベルリンを見ると、1989年に壁が壊されたと思ったら、もう首都ができてしまった。どこかの国では昭和30年代から首都移転、首都移転といって、まだできたためしがないということです。こういうのは熱が冷めないうちにすぐにやるということが大事ですが、ベルリンでは先進国の中で新首都をつくっているわけです。日本で首都移転がどうという人はちゃんと見に行ってくれよ、そのプログラムをちゃんと学んでくれよ、10年でできちゃうんだぜということです。公務員住宅のラッシュ。それにつれて民間住宅のラッシュ。企業進出のラッシュ。霞が関、国会議事堂、全部できているようなものです。世界188カ国の大使館もできているということです。こんなのは、東京だってスピーディーにやればいいと私は思います。
(スライド−30)
 これはこの間空撮をしてきたところです。ダイムラー・クライスラーの世界本社、ソニーの世界本社、こういうのは前のコール首相が三顧の礼で、トップセールスでやっています。ソニーの会長に「お願いです。世界本社をつくってください」。ダイムラー・クライスラーも、ドイツの沽券にかけて「つくってくれ」といっています。ここでおもしろいのは、オフィスの延べ床面積の全体の2割以上を住宅にするというルール。そうすると、業務都心にあっても無人化しないので、セキュリティーコストが下がります。新しいタイプの都市形態です。
(スライド−31)
 遊びもある、ショッピングもある、そして、働く場があって、住む場所がある。
(スライド−32)
 ダイムラー・クライスラーの本社。エレベーターをおりたら、こういう楽しい世界。クリスマスのときです。
(スライド−33)
 カジノもある。アイマックスシアターもある。ホテルもある。
(スライド−34)
 ソニーの世界本社です。ここもアイマックスシアターがあって、住宅があって、オフィスがある。中庭広場がある。屋根は富士山の格好をしています。地方都市の都心、こういう格好にすればいいと思います。ばらばらで区画整理のロットごとにつくっているから、どうしたって求心力はない。観光客、市民、働いている人、みんながたむろする場所をつくれば、ここでお店を開きたいということになると思います。地方都市の都心の活性化は、これがプロトタイプだと僕は思います。これに赤字が出るんだったら、それを自治体なり国が補助すればいい。こういう場をつくると、都心が活性化してくる。
(スライド−35)
 ついでに国会議事堂を見ておくと、古い建物を改修して、こういうドームをつくっている。自然環境を促して、光も取り込んでいるんですけれども、傑作なのは、鏡のシャフトが上からずっとおりてくる。どういうところかというと、議席、紫色であります、それが対応して全部鏡に1つ1つ映る。ここに国民が見学に来る。どの代議士は居眠りをしていたというのがすぐわかる。情報公開の時代の国会議事堂だといっています。やりたい放題やるということです。
(スライド−36)
 香港をごらんいただきたいと思います。なぜごらんいただくかというと、人口600万人の都市国家ですけれども、その住宅の全取っかえを20年足らずでやっているということです。全部新しく取りかえました。ですから、東京だってその気になれば、20年で千何百万戸なんかすぐできる。そういうプログラムをやろうと思わないで、再開発だ再開発だとか、そういうのが現実的だと思っているから、できないんです。全取っかえ運動です。すごいです。
(スライド−37)
 都心です。
(スライド−38)
 2000%なんか軽く超えています。何だって高度利用すればいいんです。
(スライド−39)
 これはニュータウン。彼らがいうニュータウン計画というのは、310万人。容量は410万人です。それを20年かからないでやるということです。我が国では多摩ニュータウンの30万人を40年かかったってできない。それはダラダラやっているからできないに決まっているわけです。木造密集ができないというのは権利が錯綜しているからだとか、よく言いますが、多摩ニュータウンというのは大地主。どっちだって、いいかげん、時間めちゃくちゃかかっているじゃないか。だから、うそついているだけだと私は思います。やらない理由を探しているだけだと。彼らはデベロッパーにおろすロットは、1万戸。ですから、5万人です。それが1ロット。3年でつくる、4年でつくるということでお役人はその尻を引っぱたくということが仕事となっています。地下鉄の駅をつくりながらやります。そのかわり4ロットやれば20万人です。それで地下鉄を進めていけばいいわけで、どういう精神構造で日本は赤字のものをつくるんですかと言われます。だって、儲かるようにやればいいじゃないか。そういうようにルールをつくればいいじゃないかといいます。
(スライド−40)
 日本の商社の駐在員の方もみんなこんなところに住んでいるんです。「快適ですね」といっています。私がこうやってヘリから見ると、ラジエーターみたいな気がしますけれども、すごいです。でも、ちゃんとプールがあったり、テニスコートがあったり、ショッピングセンター、学校、駐車場もあってということです。
(スライド−41)
 私はこのように東京をしようといっているわけじゃないんです。国土くまなくやっているんです。今750万人といわれますけれども、今度はこういうのが嫌だ、嫌だ、ちょっときつ過ぎるよねといったら、次の世代が街をつくっていきます。そうやってそれを基幹産業にしていくわけです。アメリカの人たちが、日本に内需主導型の経済を確立せよといっているのは、これを意味しているんです。物すごいマーケットあるじゃないか。だけど、何だかそれが理解できない。都市のことについてわかってない政治家がほとんどですから。
(スライド−42)
 国土行けども行けどもです。ウォーターフロントのニュータウンのまちづくり、見てみると、こうなる。36階建てです。ウォーターフロントサイドは価格が高いといっております。
(スライド−43)
 これをごらんください。こうやってかけ回しまでつくっています。「垂直は出ますか」「いや、当たり前でしょう。糸をたらせば自然と出ますよ」といっています。だから、日本は精度の高い技術をゼネコンは持っているんだけれども、それがちょっとスライスしているんです。何だか違う方向へ行っちゃっている。市民の幸せに還元できてないということだと思います。
(スライド−44)
 これが最近の民間の住宅の方です。香港島サイド。ごらんいただきますと、こういうマンションに香港のお金持ちの人たちが住んでいます。お金持ちの人はどういうふうに住んでいるかというと、ぶち抜きで3フロアぐらい持っているんです。2000平米で、3階分持っていて、下のフロアはメイドさんがいっぱい住んでいて、真ん中は自分が使っていて、上はゲストルームですという感じです。
 ですから、日本の人は都心のマンションで250平米だなんていうと、天地が引っくり返るみたいに、すぐ7億円とかいっちゃうわけですけれども、それはおかしいと思います。
(スライド−45)
 だから、それができない税制ということも当然あるわけです。これをよく見ると、道路の上に駐車場があります。40階建てなんて軽く建っています。彼らは敷地の概念が我々と違います。断崖絶壁みたいなところでも敷地だと思っちゃうんです。我々はやっぱり平らにしないと気が済まないという気持ちがあるわけです。
(スライド−46)
 道路の上は敷地でないと思ったりする。「将来のために、金を積もう」と書いてあります。だから、やっぱりこうやって掛け声をかけているんです。将来は金をためてこういうのを買おう。60階建てです。これが新しいスタイルで、世界の建築家を起用しています。大体200平米級がスタンダードです。
(スライド−47)
 これは何かというと、空港ができた。チェックラップコック空港とかいう舌をかみそうな空港ができた。空港の周りはニュータウンがある。ニュータウンといったら、平らな格好をしていなきゃいけないと思っちゃいけないんです。反面教師としてはなかなか考えさせられるということでございます。
(スライド−48)
 香港というと、我々はこういうふうなことを思いたいわけです。ところが、こんなのはやっと探して1戸あったという感じです。隣ではこういうのを壊して「港景峯」。港が見える。多分60階建てだと思います。
(スライド−49)
 世界最高の高密度都市といわれていますが、2007年の返還日記念のこのコンベンションセンターをつくる。設計はSOMであるということですけれども、返還が決まって式典があるまで、埋め立てをして、建築つくるのに2年間かかってないんです。都市開発というのはそういうふうにやるもんだと考えれば、反対も何もないんです。反対している暇もないということだと思います。だから、ダラダラとスポイルしてしまったのは、我々業界全体の責任かもしれません。
(スライド−50)
 我々が香港政庁から頼まれて、2008年の北京オリンピックに香港が負けないようにするにはどうするかというアイデアを請うということで、我々が一生懸命考えてあげた1兆円プロジェクトであります。世界のイベント企画展にするということで、コンペティションで残念ながらだめだったんですけれども、アイデアは随分取り入れられたと思います。600メートルの高さの超高層が着工している。みんなそういうことをやっているんです。東京は何なんだ。
(スライド−51)
 空港。羽田だって、今度継ぎはぎで空港滑走路を1本つくるといっていますけれども、香港のはこんなものです。いかようにも拡張できていく。21世紀のインフラストラクチャー。100年、200年のレンジを見ているという感じがすると思います。だてに国家100年の計といっているわけじゃない。ここにニュータウンのかけらがちょっと見えます。
(スライド−52)
 上海です。上海は結構ガスっているんです。そこにニョキニョキと超高層が建っていっております。この10年間で2000本の超高層が建つ。日本は数十年間かかって、日本列島全部集めて1000本です。10年で上海1つに軽くやられて、もうあとはただひたすら負けていくだけという勘定になります。
(スライド−53)
 これを北京が抜こうとしているわけです。そして、広州。みんなこういうのをライバルだと思って激しくやっています。マンションが多いわけですけれども、その大きさが東京を軽く追い抜いています。
(スライド−54)
 こんな浦東の経済特区という投資特区をつくっています。2免3減。2年間免税、3年間減税。またちょこっとアメリカの企業が「もうちょっと減税期間を長くしてくれよ」というと「わかりました。3免6減でどうでしょう」というんです。日本では1国2制度でけしからぬとか、大蔵省にいったらそんなことになるんです。相談しないでやってしまえばいいんです。(笑)
(スライド−55)
 5〜6年でやったのがこれです。この勢いでやられているわけです。汐留をパスして、66をパスしてこっちに行こうかななんていわれるから、2003年問題、2004年問題というのが起きるということでございます。彼らには免税措置というソフトの仕掛けも連動している。経済政策と連動しているから、ただ、オフィスビルがインテリジェントビルです。ついでにいうと、森さんのビルもあります。森ビルさんもヘッジしているわけです。
(スライド−56)
 ハイアットビルです。オフィスとホテル。これなんかも新宿のグランドハイアットと中身は同じ仕様なんですけれども、はるかに高いです。
(スライド−57)
 そこから見ると、こういう景色です。昔の上海の租界も見えます。こういうところも再開発。保全型の再開発がされています。
(スライド−58)
 ここにだれが金を出しているのかというと、華僑資本です。上海だって華僑じゃないかというわけですけれども、香港、台湾、シンガポールが出している。ですから、台湾なんて、コンペティターでやるんだけれども、ちゃんとしっかりヘッジしているんです。そこいらが我々が杓子定規に台湾と中国って、敵同士だなと思っていちゃいけないところです。
(スライド−59)
 すごいです。彼らは、3交代、24時間働きますから、工期は3分の1でいくんです。まいったなというところです。
(スライド−60)
 皆さん、うそかと思うといけないので、彼らのパンフレットです。1994年にはこういう木造の密集市街地があった。ところが、こうなっていますよ、2000年ですよ。6年間ですよ。だから、我々もこういうことをやりましょうよということなんです。
(スライド−61)
 みんなでその気になればいいということです。ということで、私も東葛の豊洲埠頭とか、石播のところは特区にしていこうといっております。やっと特区の法律ができました。都市開発特区という再開発特区ができたら、経済産業省も免税特区にしよう、あるいは医療の特区にしよう、教育の特区にしよう、カジノの特区にしようということになってきました。ですから、1国2制度があるからいけないと僕もボコボコいわれたんですけれども、絶対くじけてはいけないんです。タイミングをうまくねらっていけばいいと思います。外国人が来るように、インターナショナルスクールとか、紀ノ国屋さんとか、彼らが好きな有栖川公園とか、そういうのはインフラとして先につくれば、一等地になります。容積なんか無制限でいいじゃないですか、周り海ですよ。日影も何もないじゃないですかといっているんですが、やっとそれが法律ができ上がって、東京都はもろ手を挙げてやりましょうということになりました。
(スライド−62)
 カジノ、どうでしょうかということで、カジノホテルの絵をかいていたら、お台場のマンションからそうしましょう。これからどうやって食っていくかというと、中国の方でどんどんお金持ちがいっぱい出てきます。半端なお金持ちじゃございませんから、羽田を国際空港化して、上海から1時間半か2時間で来られると、「ウィークエンドは東京に飯でも食いに行くか」といってもらって、料亭は、そういうことになるまでつぶさないで、持ちこたえていただいて、彼らにパトロンになってもらうことを考えたり、そのときに億ションの青山パークタワーの7億円みたいなものも1万戸とかつくったらどうだろうか。それが彼らのステータスだという伝説をうまくつくっていったらどうだろうか。そしたら、ここにルイ・ヴィトンもエルメスもグッチも何でもかんでも来るだろう。すると、新表参道というのができるでしょう。そうすると、ここに1万室のカジノホテルというのも造作なくできるよね、世界のホテル資本が黙っちゃいないよねということになるでしょう。
(スライド−63)
 そして、こんなおしゃれな、夕方からはタキシードに変えようかということで、彼女にせがまれるからねということになったらいかがでしょうか。そうすると、東京もちょっと景気よくなってくるんじゃないでしょうか。
(スライド−64)
 これはためしに冗談で描いた話ですけれども、これは何かというと、霞が関です。首都移転やらないで、霞が関を再開発すると、3兆円もあったら、すごいことができる。六本木6丁目で建っているオフィスビルを3棟建てて、4万人のオフィスにすると、今4万人の人を減らさないで、4倍の面積をあげて、3棟で済みます。125平米1個というのを2万人の公務員住宅をここでつくって、ホテル並みのサービスにして、下はショッピングモールで、この地下はデータサイロにしたらいいじゃないか。3兆もあったらすぐできちゃう。5年くらいでこういうのをやるとか、東京はこういうプロジェクトをメジロ押しにすると考えれば、景気はよくなってきそうだし、ゼネコンもがぜん元気になってきそうだ。大体ゼネコンをいじめるなんていけない。この間まで随分恩になっていたんだからと思います。
(スライド−65)
 これはちょっと高密なので、こういうふうにすると、早速鋭い人がいて、これはテポドンの絶好の標的になるっていわれて、「ごめんなさい」ということです。もっとまじめな方は、隣の日比谷公園をうまく一体でもう一回絵を描き直せば、もうちょっとリアリティー出てくるよねといってくれました。首都移転すると、14兆円かかったって、不便きわまりないものができますよね。だれも行かないですよね。
(スライド−66)
 祝田橋の冬の景色のときに写真を撮ってきて合成しています。東京の夕焼けです。東京都庁舎だけが247メートルであって、霞が関がそれより低いってだれが決めたのよ。ちょっと右翼の人に怒られるかもしれませんけれども、いろんなことをシミュレーションして考えてみたらいいんじゃないですか。それが合理的だったら大いにやったらいいんですよ。24時間働いてもらえばいいんじゃないですか。
(スライド−67)
 品川駅の再開発なんかありますけれども、ちょぼちょぼオフィスつくってないで、もっとでかいことやりましょうよ。東京ドームはもういっぱいですから、アリーナをつくって、ここでドジャースとか、野茂とか、イチローとか、東京でやってもらおうよという仕掛けにします。人工土地をかけてコンベンションセンターもつくって。ビッグサイト満杯ですから。それでベンチャーのオフィスをいっぱいつくって、ロンドンでやっているようなことをここでもやりましょうよという絵です。
(スライド−68)
 最後にちょっと見ておいていただきます。東京の地震の話をちょっとします。ご存じのように、23区の東側は軟弱地盤なんです。そこは液状化いたします。関東大震災のときもここで火災がいっぱい起こってしまったということです。私は環7の両サイド500メートルずつ、都合1キロ幅、57キロ1周、それを重点再開発地区にして、木造密集がいっぱいありますから、そこを10年で全部再開発し切りましょう。57キロで1キロ幅ですから、5700ヘクタールです。木造密集で5800ヘクタールですから、そういうところをみんな再開発したらと私は思います。部分部分でいえば3年でできちゃうということをやっていけば、景気よくなると思います。20兆円ぐらいかかります。でも、民間主導でできます。
(スライド−69)
 関東大震災で焼けたところはここです。ここに「梅澤」と書いてあるんですけれども、ちょうど僕のおやじがここで小学生のころ震災に遭った。竹やぶに逃げ込んで生き残ったということです。原体験です。とにかく僕が都市計画をやっていると、「地震に対してちゃんとしたことをやれ」いうことをしきりにいいました。それでこういう資料を送ってくれました。ここのところを後藤新平はちゃんと再開発したんです。
(スライド−70)
 関東大震災で焼けたところはこれだ。東京空襲で焼けたのはこれだけです。ですから、これと合わせてもらうと、木造密集市街地、赤と黄色に塗っています。危険地帯。それはみんなこういう形で空襲に遭ったところを、ただ再開発しなかったから、そうなった、木造密集になったというだけの話です。これはやっぱり公共サイドに責任があります。ですから、ここに再開発するとしたら、万全の優遇措置をとって、「ごめんなさい」と総ざんげしてやればいいと思います。
(スライド−71)
 どうしてそういうかというと、こうなるんです。被服厰跡がこうなったということですけれども、東京の木造密集はこうなります。これは雑誌の『ニュートン』がかいてくれた絵なんですが、東京の西の市街地、こうなって、1週間は焼けどまらないといわれております。
(スライド−72)
 ですから、世界がおびえるわけです。なぜかというと、関東大震災の街の広がりはこれだけです。そのうち3分の1焼けたわけですが、今の市街地はこれだけ連檐しているわけです。そして、木造密集というのはこのあたりにあるんです。当然ここの下町はやっぱり焼けます。こちらから来るのと、西の東京、環7あたりから出るやつとで1週間焼けどまらない。前代未聞、歴史上空前、200万人が焼け死ぬのは下らないという数字を出していますけれども、発表するときは大本営発表ですから、必ず1けたか2けた粉飾しています。事実は200万人から500万人といわれます。
 もう1個怖い話が、荒川が決壊する、間もなく決壊するという話になっています。この間もここまで来ました。ですから、これで堤防が持ったのはよく持ったなということでございます。東京に雨が降らなくても、埼玉の奥、東松山とかあの辺に集中豪雨があったとしても、荒川はジワーッとふえてきます。それで決壊いたします。決壊するとどうなるか。ここで決壊すると、大体7メートル冠水するといわれています。7メールというのはマンションでも3階です。大変なことです。それで終わればまだいいということですが、最近は地下鉄網が発達しておりますから、地下鉄の管を伝わってどんどんサイホンのように水が押し寄せまして、何と20時間たつと、この丸ノ内線とか都心のラインに全部入ってきます。ここから噴水がドーッと起こります。そうすると、東京の都心のインテリジェントビルと三菱地所が誇っているビルにも流れ込みますし、汐留にも流れ込みます。そうすると収拾がつかなくなるということがいわれております。これは建設省とNHKがつくったシミュレーションなんですけれども、地元の区長さんが陳情して「やめてくれ」ということで、発禁みたいになってしまったんですが、なかなかおもしろいビデオがあります。
(スライド−73)
 最後の最後。東京空襲はどうやられたかというと、焼けたのはこの範囲でございます。それを正確に彼らは予測していたわけで、作戦としてどうやったかというと、B29が来て、まず450メートルの幅でずっと、3マイルと4マイルの矩形に先に焼夷弾を落として、まず逃げられなようにして、そこからくまなく丹念に超低空で有視界で爆撃をしていきましたから、10万人が死んだ。こういう作戦を組んでいるわけです。
 私がなぜ、環7の周りに帯状にというかというと、どこかでこれを巻き返してやろうじゃないか。1晩で4000ヘクタールやられているわけです。やられておいて、それを忘れちゃうという手はないので、やっぱり逆襲しよう。そこで同じ論理でやったらどうかというのが、環7のセーフティーコリドーと私がいっている理由なんです。
(スライド−74)
 それをやった人の顔をよく覚えておきましょう。ル・メイ将軍です。何と日本はこういうところで彼にやられた。広島の原爆も、長崎も、全部この人です。それはいわないといたしまして、これが3月10日グアム島の北部の空港から出撃するB29。その晩は334機が来ております。2000トンの爆弾を1晩で落としているわけです。これは18とか19のお兄ちゃんのパイロットです。それにやられたわけですが、その作戦をつくったのがこの人でございます。日本はこの人に勲一等瑞宝章を渡しております。佐藤栄作さんです。なぜそんなことをしたんだということですけれども、それはおまけの話で、航空自衛隊を指導してくれたんです。ということでやっているんですけれども、何か皮肉な話でございます。
 東京は、ロンドンよりも、北京よりも、上海よりも、どこよりも、世界の都市の中でちゃんとした大胆な再開発を大まじめでやる必要性がある。そして、我々がなぜ再開発に失敗してきたかというと、小さく考えた過ぎたからである。ボツボツ、ボツボツということだったから、市民がすっかりぐれてしまった。再開発と聞いた途端に反対するものだ。NPOが、みんな反対するものだと。賛成する、再開発がうまくいくようにするNPOができないと本当はいけない。それが世界のNPOなんですけれども、すっかりスポイルしてしまった。だから、これはちょっと考えなければいけない。
 それをやること以外に、日本の経済の再生はあり得ません。都市がこれから経済の主力を担っていくわけであります。ということが本日のお話でございます。ご清聴いただきまして、ありがとうございます。(拍手)




フリーディスカッション

藤山
 梅澤先生ありがとうございます。
 残りわずかですが、最後に幾つか質問を受けたいと思います。

角家(コンピュータ パソコン IT講師)
 貴重な講演をありがとうございました。
 建設会社OBです。私も青山再開発を今から二十何年前、現役のときにやったことを思い出しまして、現在の日本の再開発が進まないというのは、梅澤先生以上に悩んでおる者の1人です。
 せっかく新内閣が出まして、いろいろ再開発をやろう。日本再生のために、自民党も小泉さんも頑張っておるんですが、それがなぜうまく……。小泉さんもこの月末でほぼ1年になりますが、前がなかなか見えてこないんです。この間新法が成立したのは非常にいいことですが、それにしても歩みがのろいのは何なんでしょうか。
 もう1つ。新首都移転の話がありますが、今の約2時間のお話を聞きまして、梅澤講師は、これはやらない方がいいよ、それだけの金、例えば那須・塩原に持っていくなり、ほかに持っていったり、数十兆のお金がかかると思いますが、そんなのよりも、首都東京に重点的に投資した方がいいよという論法だと思いますが、その2点をよろしくお願いします。

梅澤
 なかなかうまくいかないということなんですけれども、お役所の方もいらっしゃるかと思うので、私のおやじも役人ですから、別にお役人をやり玉に上げるわけじゃないんですけれども、何となく官民の間で協働していかなきゃいけない。都市再開発について真剣に考えたことがなかったことは事実だと思います。それから、都市開発について、シンガポールとか香港のように、これが主力産業だ、みんなうそかと思われるかもわからないですけれども、アメリカに行っても、都市開発産業は主力産業なんです。宇宙開発産業とか、それに匹敵する以上の主力産業なんです。日本では、建設業が主力産業であったということなんですけれども、僕はちょっとスライスしていたという感じがします。真っ向から戦災復興をちゃんとやるべきです。
 ついでにいっておきますと、マッカーサーが足を引っ張ったんです。愚民政策です。戦災復興計画というのは、2万5000ヘクタール分絵がかかれました。昭和46年、47年。それが46年から47年に半分になり半分になり半分になりという感じで、実際に確定して1950年ぐらいから東京都も区画整理や戦災復興区画整理をやっているんですけれども、20分の1になっている。
 それをやったのは、ドッジラインで金融引き締め政策がやられたとかいうこともあるんですけれども、一番の元凶はマッカーサーの愚民政策で、東京を復興させるといけないということでやらせなかった。皆さん、環2というのがありますね。環状2号線は、マッカーサー道路だという話がございます。マッカーサーのその当時の力だったら1年足らずでできているわけです。環2ができてないというのは、あれをマッカーサー道路というのは真っ赤なうそだというのは、識者がよくいわれるところです。彼は、再開発について、都市について、一番よく知っていたんですね。都市を再生したら、やられちゃうと思ったんですね。愚民政策のもとに57年ものたうち回っていることはないじゃないですかということです。
 経済の再生は都市の再生なんです。それを一番よく知っていて、逆手にとられたというところが大きいんです。ただ、それに営々として従っていて、何年目か、終戦後20年目とか、いろんなときに、戦後はもう終わったとか、いろいろありました。そういうことをいわれた首相もあったけれども、だから、都市再開発をちゃんとやろうということをいえばよかった。ドイツはきっちり、1950何年か60年代にはもう復興は終わった。日本は何で復興しないんだっていいに来ました。
 ですから、やればいいということです。それでちょぼちょぼやるとイメージするから、長くかかるというイメージをするから、そんなもの途端に景気がよくなるという話にならないでしょうとなっちゃうんです。その常識を捨ててしまえばいいと私は思います。
 首都移転。私は決して首都移転に反対しているんじゃないんです。ただ、昭和30何年から、1960年ごろから景気が悪くなると首都移転しよう、景気がよくなると、過密だから、首都移転しよう、ちょっと情勢が変わると忘れてしまうとか、このメンタリティーでやっているわけです。今なんか首都移転ていったって、だれから出すのという感じになっちゃっている。
 こういう話をしましょうか。ニューヨークの都市計画があります。私はびっくりしたんですけれども、最初のところに景気曲線が出てくるんです。経済はうねる。景気曲線があって、要するにバブルがあって、どん底があって、バブルがあって、どん底があって、それを繰り返すものであるということが書いてある。ストックはバブルのときにつくるものだ。
 ニューヨークのような国際都市は、1950年代はイギリスが経済が戦災復興でよかった。それが投資してくれた。シカゴとニューヨークにいっぱい投資してくれて、いっぱいビルができた。60年代から70年代になると、アラブのオイルダラー、あれは石油代がバーレル当たり10倍になったわけですから、ドーッと世界のお金がアラブに行く。それをうまくニューヨークに還流して、都市再開発に投資してもらうように彼らは考えるわけです。そのために投資優遇措置をとって、それから投資優遇措置だけやっていちゃいけないから、プレゼンテーションに行くわけです。「おたく、金余って困るでしょう。それで、こっちにやるとすごいいい利回りになるんですよね。ストックできるし、名誉はできるし」というわけです。
 80年代は何だったかというと、日本がバブルの国だということで日本目当てにわなが仕掛けられたわけです。熊谷さんもやりました。秀和さんもやりました。地所さんもやりました。三井不動産さんもやりました。だけど、みんな高く買って安く売ってしまったり、高くつくって安く売ってしまったり。彼らはそれが作戦なんです。ですから、首都移転の関係でいえば、バブルのときにやるために、バブルのどん底で仕掛けをつくってなきゃいけないんです。それでバブルのときの、頭の5年か何かでドッとつくってしまうということです。
 日本のバブルということだけじゃなくて、世界のどこがバブルになるか。今中国がやっています。今日本には金がない。だから首都移転なんか論外だっていわれます。だから、それは知恵を1ひねり2ひねりして、中国のお金持ちが、ジャブジャブ金が余って投資先に困るというのに、もしかして、ちょっとご関心がおありでしたら、ここに投資してみませんかという、そしてそれが非常に高い利回りで、中国の中で再投資するより、もっと高い利回りになるようなシナリオを組めたらいけますよね。何十兆だっていけます。だけど、日本の中だけで考えていて、財政が少ないから、こんなときに何事いっているんだという話に今なっちゃっているわけです。それはまずいです。
 だから、首都なんか何個あったっていいですよね。夏の首都、冬の首都、沖縄と北海道とかあっていいですよね。那須とか、どこに行ったって、そんな変りばえしないところにやるから、それは賛否両輪グジャグジャなっちゃうということがありますよね。ドラスチックに経済対策をやるんだったら、沖縄に冬の首都なんかつくったらいいじゃないですか。夏の首都は旭川とかやったらいいじゃないですか。北海道もどうにかしきゃいけないし、沖縄もどうにかしなきゃいけない。
 だから、ちょっと説得力のあるシナリオと、それをエコノミストとして考えたときといいますか、投資家の立場になったときに、投資対象になるような話をやらないといけないんですね。だから、東京のリスクがあるから、ここにというのはあるけれども、今の首都移転論っておかしい。東京が地震になったら危ないから、那須につくるといったら、じゃ、東京にいる一千何百万人見捨てるということですか、我が国は。論理が全然破綻しているでしょう。東京を救うためになきゃいけない首都、参謀本部が東京を見捨ててどうするんだ。全然矛盾しているから、やっぱり論外です。程度が低くて論外。だから、違う話をつくればいい。沖縄の経済対策をやるのに、ボコボコお金を使っているとか、普天間基地跡地どうするんですかといったら、そこにキャピタルをつくって、日本の気候が南と北とこれだけ違うということをうまく世界にプレゼンテーションしたらいいじゃないですか。サミットは僕はそういう意図でやってみたんです。
 サミットで沖縄に連れてくると、こんないい場所があるのかとみんなたまげますよ。今まで歴代サミットで一番すばらしいといっていただきました。だから、そういうことを考えたらいいと思うんです。だけど、浜松だ、岐阜だ、那須だ、阿武隈だ、ばか言っているんじゃないよという感じです。何なんですか、それは。ただの知事のエゴでしょう。それが知事のエゴでいっているだけだから、世界的な説得力は全然ないですよ。みんなあきれてますよ、世界の人は。我々の大使館の人とか企業で駐在している家族はどうしてくれるんだ。霞が関の人だけ逃げるって、どういう精神構造でそういうことをいうかということです。やっぱりそんなことをいってはいけないんです。
 だから、霞が関はちゃんと、きっちりどんな地震があっても大丈夫なようにして、司令塔をつくらなければいけないんです。今のままじゃだめです。だから、それはつくる。でも、幾らやったっていいんです。東京なんか全取っかえしなきゃいけない街なんですから。大阪もそうですけれども。
 それですばらしい街にして、首都も東京なんか、日本は建設王国なんだから、いっぱいやればいいじゃないですか。お金は、説得力のある、利回りのあるシナリオにしさえすれば、世界から幾らだって集まるということです。
 ですから、今のは愚にもつかない。相当低いです。困ったことです。

  藤山
 それでは、お時間の方も過ぎてまいりましたので、きょうはこの辺で質問を終わらせていただきます。
 本日は梅澤忠雄先生に、都市再生戦略としての大規模都市再開発というテーマでご講演いただきました。先生、どうもありがとうございました。(拍手)


back