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第187回都市経営フォーラム

ふたたび都市再生について

講師:伊藤 滋 氏

早稲田大学教授

日付:2003年7月24日(木)
場所:後楽国際ビルディング大ホール

 

草の根まちづくり

人口・業務機能の都心回帰(東京) 

(ふところのひろがった再開発)

(南進する都心機能)

都市再生施策の具体化 

フリーディスカッション




草の根まちづくり

 きょうのメインテーマは、「ふたたび都市再生」ということですが、1年前、去年の7月に都市再生の話をしていると思います。ですから、それから1年たって、その後、伊藤は都市再生にどういうかかわり方をしてきたかということをまず、きょうお話しします。
 去年の7月にここで皆様とお会いしたときの、都市再生の大きい話題は、ご存じだと思いますが、都市再生特別措置法が決まったということでした。これが去年の6月1日に施行されていますから、それから約1カ月後に、私はここで、都市再生特別措置法がどれくらいの効力があるかということをお話をしたと思います。
 それから1年たって、それでは都市再生本部は、都市再生特別措置法を伝家の宝刀のように振り上げて、それだけで戦ってきたかというと必ずしもそうではないということを申し上げたいんです。1年前のときもここで私、話したと思いますが、「草の根まちづくり」という言葉が同時に生きているんです。この「草の根」という言葉を私がいったのは、おととしの12月です。おととしの12月に総理の前で「草の根まちづくりが大事ですよ」ということを申し上げました。
  私が都市再生本部に正式にかかわったのはおととしの9月でした。9月の20日に都市再生本部に対して「伊藤メモ」というのを出しました。それが一番初めでした。その次、今いったように12月に総理に会い、そこで、「草の根というのが大事ですよ」と申し上げたわけです。このときの成果というか、何が具体化されたかというと、総理は、「稚内から石垣まで」という言葉だけ覚えました。
 その後の議会なんかの答弁のときに、総理は必ず、稚内から石垣まで都市づくりに邁進しているんだということをテープレコーダーのようにずっといっているんです。ただ、具体的に何をやっているかということは総理自身が全然わかってないと思うんですが。
 では、なぜ、「草の根まちづくり」ということをいったか、ここがきょう申し上げたいことです。これは何もこれは自民党にこびを売っているんじゃないんです。
  おととしの12月ごろ、今よりも株も下がりかげんで、あまり楽しい話なかったですね。特に雇用問題が大変深刻でした。ですから、おととしの暮れに雇用問題が新聞などで生々しく報道されて、去年の4月の予算措置で、厚生労働省が、雇用対策として、国民が新しく勉強するお金を、特に退職した方々に配るということをしました。例えば、建築の製図の勉強をしたいというおじさんには、講義が1週間あれば、1週間の講義のお金を厚生労働省が出して1週間製図をやって、ある程度製図がうまくなったら、もしかするとそれで、ほとんど絶望的ですけれども、設計事務所でアルバイトができるかもしれない。こういう雇用のサポートがいっぱい出てきたんですね。
 この雇用問題というのが、都市再生とか地域計画に実は物すごく重要なことなんです。例えば、OECDに地域問題を検討する専門部会が4つばかりあるんです。その4つのうちの3つは、雇用問題に真剣に取り組んでいます。どういうところといいますと、例えば、英国ですと、スコットランドです。スコットランドのグラスゴーからエジンバラ、あの辺。それから、イタリアですと、南部イタリアです。フランスはどこかというと、お酒で有名なボルドーの辺ですね。それから、ドイツはどこかといいますと、西ドイツと東ドイツの国境の付近なんです。こういうところに膨大な失業者が発生しました。失業者が、ドイツではご存じのように10%です。フランスでも7%か8%いっていると思います。イギリスはついこの間まで10%超えていた。そういう失業者の雇用問題をほったらかして、何でカッコいいことばっかりいうんだというのは、自民党じゃなくて、あらゆる政党の先生がまじめに取り上げてもらわなきゃいけない問題なんです。これはOECDのエキスパートメンバーの中では極めて当たり前のこと。地域計画は雇用である。これ、明快なんです。そのために農業を守らなきゃいけないということになる。
 ですから、「草の根まちづくり」と私が申しましたのは、こういうご年配の、お年が55〜56から上の、会社をまず一段落された方が、どういうふうにして稚内から石垣まで暮らしていけるかといったときに、あらゆる雇用の可能性をつけていくということをやらなきゃいけない。だから、「草の根まちづくり市民運動〜稚内から石垣まで〜」ということを申し上げたわけです。
 こういうことをいいましたが、総理の耳には都市再生は雇用問題だというアナウンスは全然入っていないと思います。つまり、小泉総理の頭の中には、都市再生とはかくかくしかじかで、何のためにやるんだ。日本が変わるよ。1つは国際化、1つは草の根まちづくり。草の根まちづくりのねらいは何か。年寄りの雇用である。国際化、これは海外の金の流れが潤沢になって証券市場が活性化するということ。この2つだよという組み立て方は、必ずしも頭の中にないんです。ただ、総理が、これはいいということをやると結果として雇用につながるということです。だから、個別的にこういう話をして、結果として雇用問題を表に出すということをやらなきゃいけない。これが1点です。
 それから、都市再生本部というのは、このままでいくと、国土交通省都市再生局になるでしょう。なぜならば、都市再生本部の事務局長は国交省の前の官房長。次長は2人いますが、1人は、現在は国交省の住宅局の課長だった人ですが、その前は都市局の事務屋だった。もう1人は東京都から来ています。その下に国交省都市局とか、道路局から来た人達がいます。全部で40人ぐらいですが、そのうち30人ぐらいは国交省出身じゃないでしょうか。
 そこでいうことは、羽田の第4滑走路をつくれとか、外郭環状自動車道路をつくれということですから、これはまあ公共事業費ですから、国交省の都市再生局が国交省の道路局にそういうネゴシエーションするというような位置づけになっちゃうわけですね。都市再生本部の事務局としてそれでいいのかというと、私は多分そうじゃないと思うんです。
 都市再生本部をつくったというのは、さっきいいましたように、2つの目的があります。1つは、外国の金がうまく東京を中心に流れ込んで株価を刺激する。いろんな外国のお金が日本の投資に向かう。あるいは土地の値段が底打ちする、そういうことが一番のねらいですね。
 それから、2番目は、さっきいったような雇用問題。
 そういうことを都市再生本部が考えるときに、その事務局が国交省でいいのかというと、そうじゃないですね。やっぱり都市再生本部の事務局というのは、国交省だけでなく、もっと広い目で各省を見渡して、各省の間で手を結ぶことで非常に効果がある、なるほどな、ということを、都市再生本部事務局は引っ張り上げなきゃいけない。
 ところが、私、おととしの9月から都市再生本部の人たちとつき合っていてわかるんですが、役人の世界では、例えば財務省と通産省が手を握ってなんて絶対起きないです。総務省と厚生労働省が手を握りましてなんて絶対ない。だから、何もいわなければ都市再生本部の事務局は国交省的になるんです。公共事業と住宅局と都市局の法律、これの運用を緩和する、これだけになっちゃう。
 繰り返しますけれども、都市再生というのは、公共事業を刺激して、これに刺激されて波及効果で民間資本が動いて建物をつくるということより、もっと大事なことがあるんじゃないのか、これはまさに都市再生本部として考えるべきことなんです。何かというと、国として日本を憂えるという根本的なところでこの都市にかかわることの問題をピックアップしよう、そういうことが必要になってくるわけです。
  多分去年の10月ぐらいだったと思いますが、関西の関経連から、津田さんというサントリーの相談役の人が都市再生本部に来てくれました。何で来てくれたか、大阪の犯罪を撲滅してくれというのです。大阪で今一番必要なのは、国際化した犯罪と青少年非行、これを何とかおさめなきゃいけないということです。これをやるには警察庁だけじゃできないんです。やっぱり犯罪をなくすためには国交省とか文科省とか警察庁が一緒になって、ソフト、ハード両方の対策をやっていかなきゃいけないということです。
 私は、各省、2つないし3つが一緒になって手を握って仕事をすることを省庁連携といいました。都市再生本部は、省庁連携をいつも念頭に置いて仕事をしてください、特に、草の根まちづくりの分野においてはということです。

 総理には何回か会っているんですが、去年の10月頃にも会いました。そのときは晩飯を食う会でしたが、牧野特別補佐官と、あと二人、それに僕とでした。そのとき、2つのことをいいました。
 そのときにいったことは、いろんなことをジャンピングアップしながら、でも、同じことを2回もいうと総理はあきますから、オーバーラッピングしながら常に新しいことをいわなきゃいけないというので、新しいことをいいました。それは、日本製の町をつくりましょうといったのです。どういうことかというと、東京でも大阪でも、外人の建築屋が来たり、日本の建築屋でも、何かわけのわからない講釈をしながら、超高層で、メタルとか何とかのキラキラした、上海でもニューヨークでもどこでもあってもいいようなオフィスやアパートばっかりつくっている。これでいいんですかねと。ちょっとナショナリズムもあったんです。このナショナリズムというのは日本を愛するということです。これをあんまりいうと、日教組に怒られるし、共産党にも怒られるし、公明党にも怒られるんです。彼らは国は愛してはいけないんだ。日本人を愛するのはいいけれども、国を愛しちゃいけないということのようです。
 ですが、昭和の一けたの、僕は昭和6年生まれです。あのころに生まれた子供、太平洋戦争のときには小学生なんです。負けたときが中学校の1年か2年です。小学校の3年か4年から中学の2年まで、人生の中で一番、あらゆる知能活動、体のメタボリズムがワァーッとなっているときに、戦争を始めて日本は負けた。そこで受けた教育は、やっぱりそう簡単に消えないですよ。
 だから、日本が好きだということを、これだけ300人いる中で、安藤先生はもっといっているかもしれないけれども、安藤先生を除くと、僕が一番いうかもしれません。日本が好きだと。
 そういうことで、東京の町、ニューヨークの町、これ、いま、同じじゃないですか。21世紀の東京を世界に訴えるためならば、日本製の町というのをつくりませんか。それは昔、ここでもお話ししたんですが、トヨタの自動車のデザインは、絶対にベンツでもないし、BMWでもない。どういうデザインといって、あれは日本のデザインなんです。日本人のデザインした日本のデザインなんです。
 自動車でやっているんだ、都市でもやっていいじゃないか。日本製の町って、どういうものか。それは、歴史とか習慣、それから町で暮らすときにいろいろの約束事があるわけです。その約束事をきちっと、自然に無理なく果たしながら生活していける、そういう町をつくりたいなといいました。
 そしたら、総理がそのとき、おもしろかったです。「そうだ、そうだ、伊藤さん、そうだ」といって、「姫路城の中に住宅公団の団地をつくったらどうだ、姫路城の中に住宅公団の団地つくったらおもしろいな」って、いいました。それには理由があるんです。ちょうど総理はそのときに、ブッシュ大統領が日本に来て、彼を焼き鳥屋に連れていったんです。西麻布の交差点の角に、3階建てぐらいの鉄骨で、日本風の白壁を塗ったくった焼き鳥レストランあるでしょう、ご存じですか。そこへ連れていったんです。そしたら、ブッシュが喜んだ。小泉総理は面目が立った。なるほど、あの焼き鳥屋は姫路城に似ているな。
 要するに、政治家の感覚というのははそんなもんなんですよ。(笑)そして、普通の人の感覚もそんなもんなんです。そういう普通の人の感覚に訴えて、何か少しずつ都市を変えようといったときに、「日本製の町」なんていう言葉を使ったわけです。僕はコピーライターみたいなもんです。この1年間、僕はコピーライターになっちゃいました。(笑)このコピーライターの言葉が結構受けているんです。そのスタートがこの「日本製の町」なんです。日本製の町の話は後で申し上げます。

 もう1つ、そのときにいったのが、「草の根まちづくりはこういうことをやってください」ということをまた繰り返し申し上げました。それは、建物をよくするのもいいけど、さっきいったように、安全で安心な町をつくってください。これをきちっといいました。 これは2つに分かれて防犯のまちづくりと防災のまちづくり。防災は、阪神・淡路大震災から当時6年目ぐらいで、これをやっぱり頭に入れておいた方がいい。関東大震災は忘れていいけれども、阪神・淡路を忘れちゃいけませんよといいました。これが1番目です。
  それから、2番目にいったのが、お年寄りが元気で歩いたり座れる町をつくってくださいといいました。それは具体的にいうと2つありまして、1つは、交差点とかバス停とか駅とか、そういうところで、あまり上がったり下がったりしないで、快適に車道を横断できるとか、こういうデザインをしてください。これが1つ。
  2番目は、お年寄りは、息子や娘がいなくなって、一軒家でおばあさん1人で暮らしている。お金がない。だけど、その暮らしている家を売ればお金が入る。それならば、その家を市役所が買って、それでそのお金をおばあさんに毎月払う。リバースモーゲージというんです。いま、あんまりはやらないんですが、3年ぐらい前にはよくいっていた。いまは、全然はやらないんです。しかし、息子や娘に年寄りの財産を渡しちゃだめですといったんです。年寄りが全部使い切りなさいと。この2つです。
  3番目は、歴史、文化を生かした美しいまちづくりをやろう。これは町並み、家並みです。これを残そう。いろいろあります。非常にきれいなのは、金沢なんかにありますね。金沢の川沿いの料亭街はすばらしくきれいです。あんなにきれいなものだけじゃなくていいんです。月島のもんじゃ焼きのあの店だって残した方がいいんですよ。あれを4メートル道路に拡幅して、両側にコンクリートの不燃の建物をつくったら全部、壊してしまうでしょう。だから、あの町の真ん中の通路は2メートル70ぐらいでいいんです。9尺道路。両側の表側にツーバイフォーか、耐火ボードか何か張った軽い3階建てぐらいの家をつくって、そこで商売をやればいい。路地空間ですね。こういうことを3番目にいいました。
  それから、4番目。環境まちづくりというのをいいました。環境とは何か。この話は、2カ月ほど前に総理と会ったときに決定的な発言をしました。それは京都議定書、COP3ですね。COP3を思い出せ。あれは日本が議長になって世界に宣言したものだ。アメリカは反対しているけれども、ロシアが反対をしなくなるかもしれない。新聞に出ましたね。ロシアがCOP3で反対しなくなる可能性があると新聞に出ていました。ロシアが入ると賛成が55%にいくんですよ。55に%いくと、COP3が発効するんです。このCOP3が発効するということは、実は物すごく重要なことですね。単に環境学者が喜ぶというより、もっと重要です。
  COP3でみずからの排出規制をやるということは、それに合う技術開発をやらなきゃいけないんです。その技術開発をやるのに競争が起きるんです。アメリカはCOP3には反対ですから、やらなくていいんです。環境規制そのまま。そうすると、技術開発に関与するのは、ロシアでしょう、韓国でしょう、日本でしょうドイツでしょう、それにフランス。すごい技術競争が起きる。  そうすると、その技術競争の結果が出たとき、アメリカは絶対追いつけないだけの新しい環境コントロール、 CO2をコントロールする技術が完成する。例えば燃料電池がそうですね。これが大事なんです。ですから、環境まちづくり、やりましょうと。COP3、京都議定書、これを守るということも、考えてみたら、都市再生のものすごく重要なことなんです。都市再生というのは、六本木ヒルズをつくったり、丸ビルをつくったり何とかガーデンをつくったり、そういう、超高層のカッコいいもの、ファッション雑誌に載るようなものをつくるだけが能じゃない。21世紀の都市をつくるというんだから、21世紀の都市が地球環境にも貢献し、それから、その都市の中の家庭の平和も、もう一回、昔のように回復し、お年寄りは権威を取り戻し、そして昔はよかったということを絶対いわない、歴史的な町を、レプリカでもいいから、つくればいい。
  話が余談になりますが、私は、工業倶楽部をどうするかというとき、工業倶楽部の会長さんだったか、平岩外四さんに頼まれて、「あれを残すことを考えてくれ」といわれました。それで、残すことを考えました。いろんなメンバーを入れて、その中にラジカルな建築の歴史の人達が2〜3人いまして、レプリカは絶対意味がない、つくるな。残すなら、現状で残すんだ。くたびれたものは、くたびれたまま残せ。木の柱に、例えば刀傷が残っていたらそのまま残せというんです。それこそが歴史を継承することだ。わかりますけれども、それなら東京駅を3階にするということは意味がないじゃないですか。東京駅を3階にすることに、日本の建築歴史学者はどうして反対しないんでしょうか。
  それで、いろいろ論争をやりまして、結局、工業倶楽部は西側の3分の1、公会堂のウイングだけ昔のままにして、あとレプリカをつくりました。だけど、レプリカと古い部分をくっつけてあそこに置きますと、これは絶対に銀行協会よりいいですよ。銀行協会のああいうぶざまなつくり方よりいいですよね。歴史、文化にかかわりますと、こういう話が次々と来るんです。

  この何々本部というようなものは、政府の中で今10個ぐらいあるんですね。1つ有名なのは知的財産ですね。この本部はすごいことやっています。要するに、日本人のつくったパテントを絶対にいいかげんなことで外国人に盗ませない。パテントは高く売るんだと、猛烈な勢いで頑張っています。パテントはソフトです。そのほかにも何々推進本部というようなものがあるんですが、その中に観光も入ったわけです。これは総理大臣が本部長で、あと並みいるメンバーは全部閣僚ですから、一応閣議決定型なんです。しかしそれなりに、ここで決まったというと、一応、例えば経産省とか金融庁とか農林省も敬意を表さなきゃいけないんです。 
 それで総理大臣のホームページを見ていたら、これが一番初めにやったのに、カリスマ100選というのがありました。観光のカリスマ100人を選んで、それを紹介する。そして、大分県の玉の湯とかが取り上げられたんです。だけど、その後出てくるのは温泉と、日本の自然風景とお湯を見に行こうということばっかりで、都市がないんです。  ところが、私たち1500万の人間が日本から外国に行って何を見ているかというと、ロマンチック街道も通りますけれども、大部分、都市を見ているんですよ。都市の中の美術館を見たり、都市の中の音楽会に行って音楽を聞いたり、都市の中でうまいものを食ったり、都市の中で、若い男が外国の女の子と仲良くなったり、いろいろやっている。
  要するに、観光というのは都市なんです。都市をよくしない限りは、絶対観光客は来ないんです。そういう目で日本の都市を見ますと、例えば岡山とか静岡とか新潟とかみんなつまらないです。それは韓国の大邱とか大田と同じなんです。中国も多分そうなる。中国の人口200万ぐらいの都市は全部つまらなくなります。インターナショナルスタイルの建築で都市を埋めていったら、全然つまらなくなる。だれも二度と行きたくない。そういう都市ばっかりどんどんふえていったら、お客さん来ないんじゃないか。
  だから、歴史、文化を生かした美しいまちづくりというのは、実は政府のいう観光立国に対して都市再生本部がきちっとサポートする、そういう位置づけがあるんだということです。これは考えてみますと、省庁連携を超えて、観光の本部と都市再生本部の両方が連携するわけですね。連携して、情報交換して仕事する。
  こういうことをやれる政府の仕組みが、結果として総理大臣官房とか内閣府につくった本部の新しい活動じゃないかと僕は思うんです。今までは内閣府とか総理大臣官房というのはあまり機能してなかった。総理大臣官房は、金も何もないですから、いいんですけれども、内閣府なんてのは存在感がなかったんです。ところが、今、内閣府は各省の上部機構として、横型につなげるという機能を持っているんですね。そこで何々本部、何々本部つくるでしょう。そして、政治家とエキスパート、専門家が、その本部の運営をきちっとやっていって、それで各省におりてきますと、これはやっぱり各省も、それに対してある程度こたえざるを得なくなる。政治が初めて行政を動かす。これは大変なことなんですね。
  小沢一郎自由党党首が、この間テレビで、「今までの日本は、行政が政治を動かしていた。役人が。それが、戦後50年、60年続いた。政治が行政を動かすべきだ。それをやるのが小沢自由党のねらいだ」と、1週間ほど前にいっていましたね。それは大変大事なことで、どういう意味かということを今、私、実感しつつあります。  こういう4つの検討テーマを、この「草の根まちづくり市民運動〜稚内から石垣まで〜」で、去年の12月ごろに総理にいいました。そうしたら、これを役人はつまらない言葉に変えまして「全国都市再生のための緊急措置」となっちゃった。「草の根まちづくり市民運動」というのと「全国都市再生のための緊急措置」のどっちがいいですかね。新聞記者だったら、絶対前者の方ですね。市役所の役人だったら後者をとるかな。(笑)



人口・業務機能の都心回帰(東京) 

  レジュメのAのところに戻ってください。Aは、去年の6月1日に施行された都市再生緊急整備地域に関係する項目が、ここに入っています。「人口・業務機能の都心回帰」とあります。これは「東京」とありますけれども、今前向きでおもしろい都市再生プロジェクト、ただ単に事務所ビルをつくるとか、ただ単にホテルをつくるんじゃなくて、いろんなコンビネーションをやって、そのソフトな運営をどうするかということまで入れた、ちょっとおもしろい一種の都市再開発のゲーム、そういう話があるのは東京だけです。これは皆さんご存じのとおりですね。
 大阪だって、名古屋だってあるじゃないかといいますけれども、それはかろうじて残った極めて少ない可能性のある場所を今つかみ込んでいるわけですね。例えば、大阪御堂筋のそごう、後ろの土地を一緒にして、どこか不動産屋さんが、そこに容積1300%の建物をつくりますね。だけど、あれが続々と御堂筋に続くかというと、続かないでしょう。中之島で関西電力がえらく苦労して、いろいろ再開発に努力していますけれども、なかなか立ち上がらない。大阪大学の医学部はどうなったでしょうか。もう10年ぐらいあのままですね。
 その中で、大阪駅北口の例の貨物跡地、全部で24ヘクタールぐらいの国際コンペが行われ、入賞者が決まりました。そして、ことしの10月ぐらいでしたか、大阪市が責任を持ってあそこに十字型に道路をつくる。十字型に道路をつくるから、1つのブロック5〜7ヘクタールになりますか。そのブロックについて再開発をやろうというんですね。ですが、東京だったら、例えば大手町の合同庁舎2号館、3号館、再開発するっていったら、いろんなゼネコンや企業がワァーッと集まってくる。うわさ話がもうすごいんですよ。
 ところが、大阪の梅田北の再開発、ここにどこが来るのというと、なかなか声が聞こえない。何か、うわさはあるらしいんですが。大手町の合同庁舎の2号館、3号館といったら、もうこれはあらゆるゼネコンがやりたくてしようがない。企業だってやりたくてしようがない。それだけ差があるのが実態です。
 あとは名古屋にも一件あります。名古屋の駅前、毎日ビルのところに、トヨタ本社も入るといわれている超高層ビルをつくります。あれがやっぱり容積1300%ですね。
 名古屋1つ、大阪1つ。これが例の都市再生緊急整備地域の中の都市再生特区なんです。ところが不思議なことに、東京にこの都市再生特区あるかというと、今はありません。ですが、東京の場合は、考えようによっては、都市再生特区を一生懸命考えなくても、いろんなところで、いろんなプロジェクトの仕込み段階がいっぱいあるんですね。
 おととい、I重工の本社ビルの着工式がありました。有楽町線の豊洲の駅から歩いて3分ぐらいのところです。あれは10万平米ぐらいあると思います。その後ろに10万平米ぐらいの建物を3〜4個、さらに幾らでも建てられる土地があるんです。ちょっと加工すると、もしかすると、「品川よりも豊洲の方がいいんじゃない?」というポテンシャルも持っている。この加工の仕方が難しいんですが。
 それから、東京の場合は、さっきいったように、大手町、これは大変ですよ。合同庁舎2号館、3号館、これはことしから来年にかけての新聞記者の一番好きな記事になるのではないでしょうか。汚職が起きないことを願いたいところです。
 それから、ちょっと先を見れば、築地の中央市場が移る。ちょっと長丁場ですけれども。築地の中央市場が移ったら、すごいことが起きるんです。あそこは冷凍倉庫の固まりです。あの巨大な冷凍倉庫群が豊洲の半島に移るんですね。そこで出した排熱どうするか。これだけでもう、結構楽しい仕事なんです。この排熱を東京ガスがどういうふうにコントロールするか。これも技術開発と結びつけて、築地あたりに超高層住宅を4〜5本建てて、排熱を、晴海と月島の下をパイプでくぐり抜けて、築地まで持っていって、非常に安い熱供給ができるなんていうそろばん勘定もないわけではない。ただ、企業ベースでいくと相当難しいですけれども。
 それから、品川の周りでもたくさんあります。これから起きるのは大崎でしょう。さらに、秋葉原があるでしょう。このように、東京は再開発の話題が幾らでもあるんです。これに対して、名古屋と大阪は再生特区1つずつで、なかなかパッとしないんですね。
 ところで、この間札幌に行きました。札幌では、例のJR北海道が駅前に大丸を誘致して割合大きいタワーをつくりましたね。あれはあれで、まあいいんですよ。いいんですけれども、札幌も、都心の中に国有地がガラガラ空いています。この一つをある生命保険会社がこの間買いました。北海道庁の赤レンガの前の立地条件のすごくいい国有地です。しかし、ここに建物を建てるとなると、あの生命保険会社も大変だと思いますよ。あの会社は札幌で5つや6つの貸しビルを持っているでしょう。そこに今度新しく建てると、古い貸しビルを借りている人たちは新しいビルに移って、5つや6つの古いビルが空いちゃうんです。東京だったら、そこへだれか他の人が入るんですが、多分札幌は入らないでしょう。札幌はビル供給過剰なんです。地方都市にはそういう話が幾らでも出てくる。

 都市再生には2つある。1つは先ほど言った草の根です。もう1つは、外国から、国際化した日本、国際化した都市、そこにお金が流れるようにすることです。しかし、そういうふうにできる都市は幾つあるのか、どこにあるのかというと、いろいろやってみますと、結局、東京しかないんです。
  この構造が一体いつまで続くかということです。日本の人口は、多分2007年に減少に転じます。今の想定では2050年に1億人ですか。今、1億2500万ぐらいですから、2500万〜2600万減るんです。その減り方がどういうふうに減るのかということです。  その中で、東京のポテンシャルがどうなるかということですが、この傾向がずっと続いていきますと、先ほど、人口問題の専門家の先生と話していたら、2017年、あと15年先に、南関東1都3県の人口は、今の3200万人から3500万人ぐらいになるというんです。300万ふえる。そして、茨城300万人、栃木200万人、群馬200万人、足して700万人。合計4200万人になります。今の首都圏人口は約4000万です。だから、今から15年ぐらいたつと、日本全体の人口は減るにもかかわらず、首都圏の人口は、もしかすると増えるかもしれない。
  そうすると、当然のことながら、札幌とか福岡、仙台、新潟は人口が減ります。地方都市と東京という、東京一極対全部の地方都市、大阪も含めて、その中での競争ですね。不動産屋の競争とか、外国のお金を持っている人の競争。あるいはパリのファッション屋の競争とか、こういうことが起きそうですね。
  これはこれまでの都市計画で一番やっちゃいけないことだったんです。東京をそんなにふやして、地方都市の人口を減らして、シャッター通りにしてしまうなんてとんでもない。これは都市計画で一番やっちゃいけないことなんですが、現実にそういうふうになりつつあるんです。



(ふところのひろがった再開発)

 そこで、「ふところのひろがった再開発」という話をします。東京はどんどん再開発の可能地がありますが、1つおもしろいことを申し上げたいんです。皆さんが、再開発で超高層のビルを建てていますけれども、都市計画的にいうところの再開発で超高層のオフィスビルが建ったというのは、以外に少ないんです。
 例えば、今、東京駅の右側で超高層ビルを建てているでしょう。あれは、簡単なんです。あれはJRがつぶれて、清算事業団が土地を売ったさら地ですよ。そこをN生命が買っただけなんですよ。それから、M生命のところ、あれはM生命とM地所が一緒になって、隣にあるビルをつぶして、あそこに建てただけなんです。みんな、それはM地所の財産であり、都市清算事業団の財産であって、生身の人間がいたところじゃないんです。それから、住宅でいうと、東雲というところがありますが、あれはM製鋼の跡地ですね。
 だから、再開発でカッコいいことやっているぞというのは、考えてみると、極めて当たり前で、空いた土地に建てているだけなんです。これが日本の大企業の構造だといえます。これはいろいろな解釈ができますけれども、要するに、仕事を始めて終わるまで、なるべく短い期間で仕上げたいといったら、空いた土地に建てるというのが一番いいわけです。
 その一つの例は、木場のF電線のところ、I堂が入りましたね。空いた土地にI堂と、マンションだったかな、アッという間にできました。
 このような形で空いてない、人の住んでいる土地で行う再開発。これは大学の都市計画の教科書で営々と学生に教えるわけです。都市再開発というのはどういうものか。都市再開発には3つある。古典的ですね。3つあって、1つはコンサベーション、いいものをなるべく保存しよう、悪くなるのを食いとめて質をよくしよう。文化財保護みたいなのものでしょうね。伝統的建造物何とかという法律があります。
 それから、リハビリテーション。トーマス・マンの「魔の山」は戦争中、岩波の文庫本で有名だった。あれは、肺病病みの青年の日記なんですよ。リハビリというのは肺病病みが療養所で3年くらいかけて元に戻ることをリハビリといっていたのです。それが都市計画の分野でも論じられるようになった。何かというと、これもできそうでできないことを学校の教師がいろいろいったわけですね。質の悪い住宅は壊して、中で質のいい住宅は残す。フェデラルブルドーザーのように、敷地を全部ブルドーザーでさら地にするんじゃなくて、いいものは残し、悪いものは壊して、手直し、修復をしながら、全体としておもしろいまちづくりをしましょうというのがリハビリテーションです。
 それから、リディベロップメント、これは、さら地にしてそこに新しい建物を建てる。ただ、その土地というのは全部、だれかが住んでいた土地なんですよ。学校で教えている都市再開発というのは。そこに、アメリカでいうと、黒人の低所得者層が住んでいたり、あるいはポーランド人の移民が住んでいたりした。そうすると、土地の値段がどんどん下がっているから、そこを地主が全部きれいにして新しい建物をつくって、そこに、中級のサラリーマンを入れて、家賃収入を大きくしよう、そういうのが再開発だったんです。今でもそうです。
 ところが、そういう再開発を本当にどこでやっているのか。東京でそういう再開発、例えば地権者50人の土地、そこへ事業者・ディベロッパーが入っていって、30億円のマンションをつくる、地権者みんなが話し合って、建てかえですね、そういうの、どこでやっているんだろう。極めて少ない。マンション建てかえですと、江戸川アパートがありますね。ですが、物すごく少ない。
 商業再開発だと、六本木ヒルズしかないんですよ。ほかにありますか。僕が今覚えているのは、六本木ヒルズ11ヘクタールは地権者300人を相手にして、17年かけてやった。ただ、金かけ過ぎたから、ディベロッパーは今大変ですよ。だから、あれはばかみたいなもんです。普通のビル会社の経営者じゃ絶対やらないのを、あの会社、Mビルの社長は、ちょっと文学青年的なんですね。やっちゃったんですよ。だけど、300軒相手にしました。
 そういうばかみたいなことをほかの企業がやっているかというと、やっていない。みんなそんなばかなことやらないんですよ。(笑)
 工場跡地とか、今まである建物を壊して、それに容積を乗っけて、M生命のように背中にちょっと高いのを建てるとか、それで変わっていると称している。これは、少しいじわるな学校の教師に言わせれば、日本の企業の社会的意識というのはゼロに近いですね。何ら社会に貢献してない。
 明治以来、日本の土地の中で変わったというのは、全部空き地をつぶしている。その象徴がNHKです。NHKのところは、昭和39年、丹下さんの設計した体育館の隣は公園だった。それがある日突然どういうことか、NHKが来るように色が塗り変わった。本当は大スキャンダルです。ただ、39年のことだから、今は時効になっちゃいましたね。
 ですから、そう考えると、もっと別な再開発があるんじゃないのって、考えなきゃいけない。それは何かというと、ここからがまた教師的なんですが、古くて、店子に逃げられて空いたビル、これをつくり直してもう一回、お兄ちゃんやおばあちゃんに来てもらって住んでもらおうという、要するにコンバージョン。これをやらなきゃいけない。これはかなり社会正義的ですね。
 どういうところかというと、神田の司町、多町、それから新宿区の東五軒町。中央区の横山町、千代田区の岩本町。あの辺に幾らでもあります。鉛筆ビルです。こういうところ、これらは老朽化した建物ですが、これがコンバージョンができるかどうか。これがまた大変難しいんです。学校の先生はコンバージョンの絵を書いたりしています。建築デザインの先生とか都市計画の先生ですね。スタジオタイプで、仕事場と寝るところが一緒ですから、完全な寝室じゃないから、採光が少し楽なんです。そんなスタジオタイプの図面を書いていますけれども、実際にそういう仕事を経験した現場のまじめな小さいゼネコンによると、残した建物を手直しをすると、坪60万かかる。全部さら地にしてつくり直したら坪45万でできるというんです。しっかりした建物。スピードが速い。手直しするのに2年かかるけど、つくり直すのは1年でできちゃいますよという。どっちがいいかというマーケットの判断が入ってくるんです。こういう話がこれから出てきますね。これが実は大変なんです。これはマーケットになるのかならないのか。
 僕は土建屋じゃないですから、今のような相場はよくわかりませんが、今いったような話は、町の心ある、小さいけれども、能力のある土建屋さんが何軒も同じことをいっていますね。「先生、手直しはやめなさい。さら地にしちゃった方が早いよ。そこに質のいい5階建ての、コンクリートだってよくなったんだから、新しいコンクリートを使って、それで建物を建てなさいよ、耐震性もいいよ」。コンバージョンはマーケットになるのか。それとも全部建て直すというのがマーケットになるのか。
 一方では、遊休地化する跡地というのは続々と出てきます。大田区がその典型ですよね。それから、北区もそうですね。墨田区もそうです。みんな小さい工場跡地です。これがある日突然遊休地化します。そこにとりあえずマンションが建つ。しかし、跡地に全部マンション建てられるかというと、建てられないです。だから、跡地は跡地のまま残ってしまう。土地の値段が下がるということがまた起きるんじゃないか。
 ですから、例えば千代田区の半分と、中央区の3分の1と、港区の3分の2のところの土地の値段は下支えで、これ以上下がらないけれども、新宿区とか、あるいは台東区の土地の値段は、遊休地をこれ以上買う人もいませんから、どんどん下がっていく。こういうデフレ、政府が一番嫌がっている地価下落の兆候というのはまだ残っているわけです。
 そこで、その使い方として1つ出てきたのが、テンポラリーユースという考え方です。コンクリートの6階をつくらないで、鉄骨3階。スーパー並みなら坪30万。すごいでしょう。鉄骨3階でバタバタとつくっちゃおう。それを食い物屋にしたり、ゲームセンターにしたり、温泉にしたりで、やろう。臨海部でMビルのやったヴィーナスフォートがそうですね。それから、M不動産も横浜あたりで随分やっています。こういうテンポラリーユースがどれくらいできるか。
 だけど、そういうところでは、大体が我々にますます買い物させたり、食事をさせたり、踊らせたりと、人間を狂わせることばっかりをやらないと、お金が儲からないわけです。
 こういう社会が本当にいいのか。踊り狂うような社会。それとさっきいった都市の安心と安全を確保するということが、どこでつながるのか。こういう話題がこれから我々にぶつかってきます。



(南進する都心機能)

 次に「南進する都心機能」の話です。品川のJR清算事業団の跡地再開発が、完成しましたね。私この間行ってきました。あの中庭はいいですね。なかなかのものですよ。外側から見て馬鹿にするもんじゃないと思いました。(笑)中へ入って実体験しないと。中庭に面して、東側と西側で、オープンカフェにして、食事やお茶を飲んでいると、これは絵になりますね。ただ、花木がまだ少ない。でも、あれ、入れかえれば華やかになります。
  それに比べて、汐留シオサイトって、何かおもしろいことがあるのでしょうか。町ができて、そこの中にいると安心で、そこの中にいて楽しい会話ができてという場所としては、結構、品川はいいかなと思うんです。  先ほどいったように、大崎で動きがあるでしょう。それから、周辺でもまたいろいろ動きがあるようです。
  要するに、「南進する都市機能 品川駅中心に高くなった再開発の可能性」。このことを僕はいっているんです。東京都の埠頭というのは、竹芝、芝浦、日の出、次が品川ですね。品川というのは内陸の小さい貨物をあそこでおろしたり載っけたりするところです。
  ところが、多摩川の向こう、川崎市のコンテナ埠頭が破産しました。川崎市の埠頭は物すごく性能がいいんですが、問題はそこの流通業者のノウハウが川崎には全然ない。品川にはあるんです。そうすると、川崎市と東京都港湾局が手を握れば、品川の機能を川崎に持っていった方が多分、交通の便からも、東扇島は物すごい冷凍倉庫地帯ですから、ストレージの問題からも、川崎に国内の貨物船を持ってきた方が足が短いんです。もし川崎市と東京都港湾局が手を握って、どうしようもない川崎のコンテナ埠頭の岸壁を品川埠頭と移しかえるということになると、品川が空くでしょう。空いた途端に、物すごくいいウォーターフロントの住宅地になります。天王洲があるでしょう。東京水産大学がある。東京水産大学は、バイオのメッカになります。魚の遺伝子の研究で抜群です。
  そう考えていくと、品川の南側についてはいろいろおもしろいことがありそうです。それから、僕はあの辺の地図を見ているんですが、いずれ、田町だって、東京ガスの丸い球形のタンクは必ず取っ払われると思いますよ。あんなタンク要らないんだから。あそこ、いいですよね。田町の駅から歩いて5分ぐらいでしょう。
  だから、丸の内、日本橋から、新しいオフィス機能をずっとサポートしているビジネスチャンスの多いかいわいというのは、南へ南へ下がっていっている。
  次に何が起きるか。僕が申し上げたいのは、都市再生で都市構造が変わるというのは、必ずしもみんなが得することじゃないんです。どこかが崖っぷちに立たされる。崖っぷちに立たされて、だめだと宣言されているのは、まず、中央区の横山町です。茅場町もだめです。だめだけど、ある程度努力しなきゃいけない。それから神田の多町、司町。ここもそうでしょう。 都心で問題なのは次にどこかというと、日本橋です。三越。あそこが冷たい風が吹きつける北側の一番の前線基地になるのではないでしょうか。あそこで、これ以上南に下がらないように戦わないと、あそこを根城にする不動産会社はきつい。そういう緊迫感というのは、もう不動産屋さん持っていると思います。
  秋葉原は、正直言って、僕はあんまりいいところじゃないと思っているんです。
  品川のことにちょっとつけ足しますと、品川に今度新幹線のこだまが発着しますが、もう一つ、もう死んだ話かも知れませんが、リニアモーターカーの話があるんです。リニアモーターカーはどこへ来るかというと、これはほとんど死んだ話でしょうから、そのつもりで聞いてください、大月から真っ直ぐ持ってきますと、中津川から京王電車の橋本に行く。あの辺に駅ができそうなんです。さらに真っ直ぐ行きますと、新百合ヶ丘に行く。それを真っ直ぐ行くと目黒通り、さらに真っ直ぐ行くと品川に行くんです。新橋でもないし、東京でもない。  だから、どうなるかわからないけれども、リニアモーターカーができたときには、品川というのは極めて重要な場所になる可能性がある。おまけに羽田に近いでしょう。これは日本橋にとっては大変なこと。それでどうするか。それで僕は今、あるところとと一緒になって、知恵を出しまして、「わかった。あそこに日本製の町をつくろう。日本橋って、昔からそうだった。東京でも、歴史に回帰しよう」。あそこに、にんべんだとか、いろいろありますね。ノリ屋とか、昔からの老舗があるでしょう。あれを京都風に磨き上げちゃう。1品1品が、そこに行くと丁寧なサービスを受けて、いい気持ちになって気がついたら10万円払っていたとか、京都はそれをやっているわけです。
  日本製の町を日本橋につくろう。これができたら、日本の誇りですよね。だから、日本橋の高速道路は地下に埋めなきゃいけないんです。このように、東京の都心構造がどう変わってきているかということをずっと読みながら、市街地の移動をどこの地域で食いとめ、どこの地域をこれ以上延ばさないようにするかとか、そういうことを考える物すごく重要な作戦が日本橋にかかわっているわけです。都市計画って、これからそういうことを考える技術になると思うんですよ。



都市再生施策の具体化 

 「都市再生施策の具体化」という話に行きましょう。これはどういうことかというと、ことしの1月から私の身の周りに変化が起きました。総理大臣のメールマガジンに、700字のコラムを一ヶ月ちょっとに1回ぐらい書いています。今度は7月の初めに僕の記事が載るんです。5回目です。 島田という慶応の教授が「一緒にやらない?」というので、乗ったんですが、一番初めに、何を書いたかというと、電線の地中化のことを書きました。プロから見れば、電線の地中化なんて、もう20年前から議論して、東京電力と国交省との間で、10年ぐらい前に決着ついて、電線地中化第1期5カ年計画とかつくっているわけです。何を今さら改めてということです。だけど、これを市民に問いかける。市民はあまり具体的にわかってなかったわけです。これが1回目。
  2回目は、緑陰道路のことを書きました。緑の陰の道路。これは皆さんご存じのとおり、9月になってごらんなさい、いろんな道路で残暑のときに枝を切り始めますよ。地方都市に行くと、徹底的にいじめますから、街路樹じゃなくて、がんの肉腫が棒の先に乗っかっているような街路樹がいっぱいあります。あれで、ちゃんと、地方都市の市役所の街路課の台帳には街路樹になっているんです。それで何とも思わない役人の神経が頭に来まして、緑陰道路をつくれと書きました。これが2番目の話題でした。
  3番目は、ブロック塀の話。ブロック塀は危ないよと書きました。これはもう一回書くつもりです。ブロック塀、いろんな意味で危ないんです。
  4番目は、野立て看板。自動車で走っていると町の不動産屋が路側に変な旗を差すでしょう。あと何メートルで住宅団地っていうのを、差しているでしょう。あれはひどいもんですよ。こういうことをほったらかしにしているというのは、本当に気が知れない。また、自分の建物よりでかい看板をつくっている洋服屋がありましたね。(笑)あれもひどい。日本人がこれだけ堕落したというのは、1つ1つの事象を挙げれば、今いったようなことなんです。  全部これは生活の型というものをはみ出している。生活の型を完璧に忘れちゃったんです。都市で暮らすというのはあるルールがあるんです。パリにはパリのルールがある。ニューヨークにはニューヨークのルールがある。ところが、日本の都市にはルールがない。京都とか奈良に少しありますけどね。何にもないのです。こんな看板はなくしたほうが良い。
  5回目はオープンカフェをどんどんつくれって、書きました。オープンカフェは警察と厚生省が何とかというけれども、知ったことではないですね。

 こんなことを書いて来て、何が起きたかというと、まず緑陰道路が最初にできたんです。緑陰道路に安倍官房副長官が目をつけて、「これはおもしろい。これ、取り上げよう」。道路局の道路特会をつかう、国道ならいい。彼はなかなか頭がいいですね。国道なら道路局の道路特会使える。緑陰道路の街路樹なんていうのは、道路特会で何兆円の中の100万分の1ぐらいで済むでしょうね。木の入れかえだけですから。政治的効果があります。それで、緑陰道路をつくるのに道路局の金使えとなった。これはまさに、最初にいったように、政治が行政に関与したんです。 そういうことで道路局は緑陰道路をやるようになりました。具体的にいうと、岐阜県がやって、下関市がやって、もっとおもしろいのは、小泉総理がこの間ライスカレー食いながら、「伊藤さん、あの緑陰道路を横須賀で、やりたいんだよ。」横須賀には10キロの1万メートルプロムナードというのがあります。そこはジョギングする人たちが物すごく多いんですけれど、木が全然ひどいんです。横須賀の方おられますか。本当にひどいでしょう。あの1万メートル、あれを緑陰道路にしなきゃいけない。総理も前から思っていた。「ちょうどいいからやるよ。おれ、市長に電話した。伊藤さんも市長に電話しろ」と。あれは総理の便宜供与ですね(笑)だけど、まあ緑陰道路だからいいでしょう。こうして緑陰道路が動きました。
  次は、電線の地中化です。電線の地中化の記事へのヒットがべらぼうに多かった。メールマガジン予約している人のヒットが何百と来た。これはほってはおけない。上野という官房副長官が担当になって、電線地中化計画見直し。来年から5カ年計画直すんだそうです。これで地中化のスピード、倍ぐらいにするとか、いっていました。ここでも政治が行政に介入した。黙っていたら絶対やらないことです。  それから、看板の話は、都市再生本部で部分的にやっています。美しい町並みをつくろうということで、看板規制の話がありますけれども、これはいいです。
  問題は、実はブロック塀です。皆さん、ブロック塀は物すごく深刻ですよ。仙台の宮城沖地震のときに、ブロック塀の横を通っていたおばあちゃんがブロック塀が倒れて下敷きになり、亡くなりました。ブロック塀というのは鉄筋がほとんどないんです。昔職人がやっているのを見たけれど、鉄筋をブロック塀に入れて、それをだんだん上を抜いていくんですよ。鉄筋入れるんじゃなくて、いつも先に10センチぐらい鉄筋あるんだけど、上ヘ上げていくんですよ。わかりますか。(笑)だから、無筋のブロック塀というのが、昭和の30年代幾らでもあったんです。皆さんのおうちのブロック塀をよく見てごらんなさい。無筋の方が多いですよ。ですから、ブロック塀は地震のときに危ない。
  それから、犯罪の問題があります。これははっきり申し上げます。昔の道路、3メートル60とか、2メートル70の道路、いっぱいありますね。その道路に面してブロック塀で自分の敷地を固めて、ブロック塀の後ろはせいぜい、昔の言い方で恐縮ですが3尺から4尺5寸ぐらいしかない。そこから窓が立つ。何が起きるかというと、2階から向こう側の家のブロック塀の下に、ひそんでいる人を発見できないんです。道路が狭いから。2階からだと見えない。だから、泥棒にとってはこたえられないんです。これで空き巣が、東京の阿佐ヶ谷、荻窪で幾らでも発生しています。
  だから、ブロック塀というのは防犯、防災、安心、安全、両方に危ないんですよ。ぜひこれは、むきになってでも、ブロック塀撲滅しなきゃいけない。そのかわり、金属の金網のフェンスでカラタチとかバラとかそこに植えなさい。空き巣は痛くて痛くてまたげないですよ。(笑)
  こういうことを書くでしょう。ところが、この記事、実はヒットしないんですよ。どうしてかというと、電線の地中化、これは東京電力と国交省とが費用を負担するんです。皆さんの懐は痛まない。見て文句いえばいいんです。それから、緑陰道路は市役所と道路局の特定財源から支出する。これも皆さんの懐痛まないんです。ところが、ブロック塀になると、皆さんの懐が痛むことになるんですね。5万円とか10万円。そうなると途端に興味もうすれ、ヒットが少なくなる。実はこれで日本人の嫌らしさというのを、本当に感じているんです。自分の金を使うとなった途端に、ヒット数が少なくなる。
  それから、オープンカフェの話。オープンカフェはかなりふえてきました。オープンカフェにすると、コーヒーショップの犯罪少なくなります。わかりますか? オープンカフェは密室じゃないでしょう。道路から奥まで見通しです。あそこで泥棒が変なことやったってすぐわかりますよ。だから、オープンカフェは防犯性能が極めて高いんです。  このように、結構動くんですよ。今僕がいった2つ半、電線地中化と緑陰道路と派手な広告。広告は、美しいまちづくりのところで広告を厳しくするということで、いま、2つ半が動いているわけです。

 この5月のことです。総理とライスカレーライスを食いました。(笑)そのときに3ついったんですが、総理はこれをうまく聞いてくれました。同席した上野官房副長官が僕を非常にうまくサポートしてくれたこともあるでしょう。「伊藤さんのいうのは、こういうことだ」と。
  1つは、さっきもいったコピーライター的な感覚で「総理、平成の小泉検地をやってください」といったわけです。「古くはナポレオン検地がある。太閤検地がある。大化の改新の班田収授がある。また現在の話として、韓国では500分の1の市街地地図がビシッと地籍図でできています。日本だけです。こんないいかげんな地籍図でやっているのは。これは国辱物ですよ」といいました。  そしたら意外なことに、国土交通大臣も、財務大臣もこれをやりたいというんですよ。それぞれ理由があるんです。財務大臣はきっと相続税対策です。これまで境界がはっきりしてなかったら、税金を取るのに何かと不都合だった。早く境界を画定して相続税を取りたい。国交大臣の方は、境界が画定しないと、再開発が全然動かないんです。意外とこの2大臣のサポートがありまして、来年みごとに平成の小泉検地が動き出すことになりました。
  これは土地家屋調査士が大部分の仕事をします。測量士じゃなくて。土地家屋調査士というのは法務省系列の測量屋ですね。そのときいったのは、「総理、例えば20億円の公共事業をどこかの町でやったとします。そうすると、20億円のうち、5億円が砂利で、3億円が鉄で、機械搬入費が2億円で、20億円のうち10億円ぐらいは全部材料と機械搬入費になりますよ。人件費というのは20億円のうち、せいぜい4割もありますかね」といったんです。
  「それに比べて、測量は100%人件費です」といいました。箱尺持って立っていればいいんですから、そんな高度なことしなくていいんです。昔の箱尺持って立って、両側に目をつり上げた地主さんが2人立っていて、そこを「まあまあ」となだめながら、「ここにしますか」って、金属の丸い十の字のくぎを打てばいい。これは全部人件費。「今必要なのは公共事業じゃなくて人件費。つまり雇用です。雇用にかかわる人件費100%のプロジェクト、これが国家のために役に立つなら、それをおやりなさい」といいました。そしたら、総理は乗ってくれました。
  ですから、多分来年から、土地家屋調査士を主体にして、調査費が倍増ぐらいするでしょう。これは新聞に出ました。15年かけて都市の中の地籍を、都市再生緊急整備地域の中は全部やる。国交省もこういう方針を出しました。これはすごいことなんです。これは雇用対策になります。
  2番目には、京都議定書のことをいいました。「京都議定書は、日本の総理大臣が世界に向けて宣言したものです。もうじきソ連が批准します。55%超えます。いよいよ仕事です。CO2削減というのは都市の問題です」といいました。
  それから3番目。「総理、10億円僕にくれませんか。10億円を僕と横に座っている牧野特別補佐官に5億円ずつください」。そうするとどうなるか。僕と牧野補佐官は、稚内から石垣まで、それぞれポケットに300万円ずつ、約150カ所、150の袋、4億5000万円を持って水戸黄門みたいに歩く。そして話を聞くんです。NPOとか協議会です。そして、この調査はNPOが一生懸命やっていて、市役所の若い人達もそれに乗ってくれるから、これを2年やれば、市長も、うん、そうかといって、場合によっては市の単費でも出して、もしかしたら、まちづくりの中で水路でもつくることにつながるか。そういうことなら300万円出そう、というわけです。
  あるいは私鉄の駅の踏切対策。私鉄の駅の踏切、物すごく危ない。あれを陸橋化して、駅の前に小さい50坪ぐらいの広場つくって、広場のところに交番と託老所と、区役所の出張所、そういうのを3〜4カ所置いていけば、結構おもしろい。そういうことのためには、地元の5人のおばあちゃんとおじいちゃんがオーケーしないとまずい。その5人のおじいちゃんとおばあちゃんを説得するのは、このNPOの活動が重要だ。ところがNPOは金がない。50万円でいいから出すと喜ばれそうだ、などというのもあるでしょう。
  ついでに申し上げますと、前に、防犯で僕はご婦人にお金を配った経験がございます。旦那にもお金を配った経験ございます。町の中の見回りのことで、ご婦人が10人集まって相談しているとき、「幾ら必要ですか」といったら、「50万」と答えました。50万で10人のご婦人が全部その地域社会の見回りをやってくれました。1年間。50万でどうやったかと聞いたら、「簡単だ」というんです。会議は奥さん同士、順繰りに仲間の家の台所に集まって、お茶飲んでしゃべればいい。それだけだと。台所に集まってお茶飲んでしゃべればいい。メモなんてのはないから、広告の裏に書けばいいというんです。
  ところが、旦那の方は300万かかりました。わかるでしょう。酒飲んで、どこかの部屋を借りちゃって、焼き肉でも食って、議事録もとらないで話だけにして、自然消滅ですよ。だから、男というのはしようがない。(笑) この場合も、そうした危険性があるかも知れない。それでも、やろうと思うんです。
  役人のだれかが、「その金を出した案件というのは、全部物事ができ上がらないという可能性もありますね」という。「そういう金は、今までの国費で出したことがない」というんです。出したことないけど、前例じゃなくて、総理と我々が議論して、新しいことやるためにつくるんだといったら、そのとき上野官房副長官がいいことをいった。「伊藤先生、そうだ。種というのは100粒まいたって、全部出るわけじゃない」というんです。「物によって、30しか出ない場合もある。だけど、まかなきゃ出ない」といった。結局、総理は「おい、上野さん、それやってくれよ」ということで実ったのです。現在、都市再生本部が案件を募集しています。
  この8月8日までに市役所を通して都市再生本部へ、皆さんのうち何人か300万円のプロジェクトでもいいし、50万円のプロジェクトでもいいです、NPOが主体になって、まちづくりにかかわって、2年ぐらいかけて努力しよう、市役所が気にして気にしてしようがない、そういうやつをぜひ応募してください。300万でも500万でも50万でもいいんです。ぜひ応募してください。
  なぜそれを僕が声を大にしていっているかというと、これも役人の世界での話ですが、10億円の予算に対して、300の応募があって、金額合計が9億5000万円でもだめなんですよ。10億円の応募のところに30億円分ぐらい来なきゃだめなんです。これだけ熱意が高いということです。それだけ応募があれば来年も予算はつきます。10億円のところに10億円だったら、これ、1年で終わっちゃうんですよ。前例がないですから。50万円でも100万円でも300万円でも、なるべくNPOとか協議会を使って、何でもいいです。防犯でもいいですし、水防でもいいですし、子供の保育所でもいいですし、通学路でもいいですし、駅広でもいいですし。そういうのをぜひやっていただきたいんです。
  ここに文書があります。「『全国都市再生モデル調査(仮称)について 平成15年6月19日』今度の通常国会の総理所信において、稚内、石垣、松山を例示し、地方独自の取り組みを国として支援することを総理は表明した。地方公共団体、NPOなどがみずから考え、みずから行動する取り組みを積極的に支援することについての強い要請があった。これらを踏まえて、都市再生プロジェクト事業推進費を活用し、全国都市再生のための緊急措置の一環として、全国都市再生モデル調査を実施する・・・・。」 提案を募集し、選定するわけです。新たな発想を含み、地方先の政策提言となり、全国の参考となる先導的な都市再生活動です。単なる計画、構想づくりではなく、実践的であること。ご婦人が毎晩青少年非行のために町を見回るというのは、酒飲んで議論しているんじゃなくて、まさに実践的なんです。
  締め切りは8月8日です。8月8日までにぜひ都市再生本部応募してくれ。そういうことでぜひお願いしたいと思います。  以上で、ちょっといろいろはしょりましたけれども、きょうの話を終わらせていただきます。(拍手)



フリーディスカッション

司会(里見)
 先生ありがとうございました。
 それでは、残りの時間を使いまして、質疑応答させていただきたいと思いますのでご質問のある方は挙手をお願いいたします。
吉村(埼玉県県土整備室住宅課) 
 今いろいろとお話をいただいた流れとちょっとずれますけれども、質問を1点だけさせていただきたいと思います。
 都市再生の主要な流れについては、いろいろとお話もいただいておりますけれども、都心再生ということだろうと思います。そうしますと、都心以外の話は一体どうするのかというところがありまして、埼玉でいいますと、業務核都市である熊谷とか深谷も大変な状態になっておりますし、埼玉新都心、これは先生が生みの親なんですけれども、これも行き詰まりがある。県南の都市は人口減が起こっているという大変な状態になっております。
 昔、展都という考え方が示されたことがあります。これは都市計画の理念として訴えられたものだと思います。首都圏の都市構造をどう再編していくかということを示す1つの方向性であったろうと思うんですね。これについて、都市計画家として純粋にどう評価していくのか。展都ということについて。仮に展都をさらに評価して進めていくべきだとすると、今現実に進んでいる都心回帰、都心再生について、都市計画は一体どう働くことがてきるのか。それについて、ご教示をいただきたいのですが。
伊藤
 展都。政治家が関与してえらく面倒臭いですね。僕は前からここで3回ぐらいしゃべっています。展都じゃなくて、要するに遷都、新しい都をつくればいいと思っているんです。それは名古屋です。これは僕の『提言都市創造』という10年前に書いた本に載っかっています。名古屋の駅裏、昔の中村遊廓のあったところ。名古屋の西側です。昔は田んぼでしたが、今はつまらない予備校がいっぱいあって、建物の質は悪いんです。
 そこを全部再開発して、JR東海の本社ビルがあるでしょう。あれを2本つくるんです。それは全部中央省庁が入ってしまいまうほどの大きさです。霞が関が入っちゃうはずです。JR東海のあの規模を2つつくる。新幹線の名古屋ですから、通うのに一番いいですよね。飛行機に乗らなくてもいい。それからもっといいのは、役人といえども家庭を持っている。そうすると奥さんのことも考えないといけないんです。奥さんに、例えば岐阜の山の中とか、福島の山の中に行ったら、子供の教育から私のデパート通いどうするんだといわれる。役人も、名古屋には松坂屋があるでしょう。(笑)それから、南山大学がある。カトリック系の大学です。金城がある。プロテスタント。やっぱりミッション系の女子大が必要なんです。それから、名古屋大学の後ろに行くと、物すごくいい1戸建て住宅地が区画整理でできています。地下鉄ですぐにいける。だから、国の役人が、安く1戸建てが手に入って、奥さんは松坂屋に買いに行けて、娘は南山大学に行く。東京でいうと、三越へ奥さんが買い物に行って、娘を聖心女子大に入れて、住んでいるところは成城、これと同じなんですよ。そういうところまで考えなきゃいけない。名古屋ではそれができるんですよ。
 再開発ですから、アッという間につくります。名古屋のJR東海クラスは。それこそディベロッパー4社で、森ビル、住友、三井、三菱。2社ずつJVでやれば、2年でできちゃいます。そこへどんどん入れればいいんです。
 ついでにいうと、笹島の鉄道ヤード跡地のところに国会議事堂をつくろうと僕は思った。これは先ほどの僕の本に書いてあります。その笹島の国会議事堂は、国会議事堂の前に堀があります。水が入っています。国会議事堂は堀の中。新吉原の大門から入ったら国会議事堂があると思えばいい。大門のところに堀がある。この国会議事堂は全部ガラス。軽量鉄骨2 階建て。そのガラスはやくざの乗るベンツの車のガラスを逆にしたと思ってください。どういうことか、やくざの車は外から中が見えなくて、中から外が見えるでしょう。それを逆にするというのは、中から外が見えなくて、外から中が見えるということ。それで、空堀のところにみんなで座って、望遠鏡で、それぞれの代議士が何をしているか、全部会話だって読める。それぐらいガラス張りにしちゃう。一件落着するまでは、その堀にかけた、はね橋はおろさない。(笑)こういうのを『提言都市創造』というので、僕、書きました。
 これが実は、一番安く上がるんです。それとリニアモーターカーです。リニアモーターカーをつくるというのはそういうことと一緒になら可能性があるだろうと思うんですね。僕は、展都じゃなくて、遷都を1つやりたい。
 2番目、シャッター商店街。シャッター商店街については、僕はきょうはいわなかったんだけど、「身の丈に合った再開発」というのをいっています。これもコピーライター的ですね。これは、再開発のときに、皆さんに、総事業費の4分の1ぐらいでもいいんですが、補助金を出す。それを全部土地の権利調整に使っちゃうんです。上物の設計費とかそういうものをいれません。土地の権利調整と測量費、そういうのに、20億円の金があったら、20億円の4分の1使う。土地をきれいにするということです。
どういうことかというと、民家が100軒ぐらいある土地を再開発する、その横っちょに工場跡地があると思ってください。ディベロッパーがショッピングセンターをつくるといったら、どっちを選ぶか。絶対工場跡地に行きます。明快ですね。さら地ですから。こっちの方は100軒あって、ごねる人達がいっぱいいるわけでしょう。その敷地とこちらの敷地を同じ条件にする。そのためには、こちらの敷地のオーナー全部に話をして印鑑をもらっちゃう。その費用、これを国費で補助しようということです。そうすると、工場跡地と、こちらの100軒の地主の土地とは同じ条件になる。そういう再開発をやる。
 そして、上の方は3階建てで長屋にしてくれといっているんです。3階建てというのはどういうことかというと、1階はコンビニとか司法書士とか、診療所とか、設計事務所とか、パン屋とか、いろいろあります。2階は自分が住む。おばあちゃん、おじいちゃんの家。3階は厚生省の介護施設の金を使って、あれは9割ぐらい貸してくれるから、それを借りてそこに託老所をつくっちゃう。デイケアセンターですね。それの上がりで暮らせばいいんです。おばあちゃんやおじいちゃん。3階と1階から上がりを取る。
 身軽で軽くて低層にする。デパート呼ぶとか、事務所をたてるとかをやめて、年寄り相手です。年寄りには金がつきます。その金で3階部分をつくって、1階は商売のチャンスがあるから。2階の自分のところぐらいは自分の金をはたいてつくって、家賃で暮らす。こういうやり方があるんじゃないかというので、これは都市再開発コーディネーター協会で、記者発表を3カ月ぐらい前にしました。結構いい線をいっています。もう一頑張り、国交省の市街地建築課にやれって、いおうかと思っているんですが、いかがでしょうか。シャッター通りなくせると思うんですよ。
岡田(都市整備公団) 
 このたび私どもの新法人設立の法案審議で参考人で意見陳述していただきまして、ありがとうございました。
 きょうのレジュメのCで、「都市再生機構はどう機能するか」ということで、今度で結構でございますので、ぜひご教示いただければと思います。
伊藤
 これは、次の会でしゃべります。(笑)これは物すごく大事で、身の周りで本当に日本人、特に企業というのはしようがない。特に大日本株式会社という企業は、こういう三セクのような組織の骨の髄までしゃぶり尽くして、自分のところが赤字なのに、赤字を全部押しつけるということをずっとやってきました。そうでしょう。ずばりいうと、都市再生機構がそういうふうになる危険性があるんです。皆さん方にうまくおだてに乗っけられて土地を買うでしょう。土地を買うのは金利のついた金ですから、その土地は対前年比5%ぐらいずつ上がらなきゃいけないんです。3%でもいいです。そうすると、10年で3割上がらなきゃいけない。そんな土地なんて今ないですよ。港区とか千代田区以外。それを買わされる宿命になっている。本当にそうなんです。そういうふうに民間の大日本株式会社は、経団連を初め全部そういう方向に行っているんですよ。それを早く国民に知らせなきゃいけない。知らないで実はこうだったというと、道路公団みたいになる。
 これは情報が物すごく重要なんです、と僕は物すごく心配しています。次は都市再生機構はどう生きていくべきかということをしゃべらせてもらいます。非常に生々しい話なんです。土地を買わなきゃいけない。金利のついた金で買う。これは民間はよくやっていましたね。民間はこれをずっと持たないで売り抜けていくんですよ。基盤整備公団まじめだから、持たされちゃうんです。20年ぐらい。金利が2.5%で5割でしょう。そんな土地だれも買わないてすよ。赤字になるんです。そういうことをだれもいわないんです。民活だ民活だとかいって。
伊藤(NPO1u自然農園の会)
 都市再生モデル調査募集については、今月の上旬ですか、10日前後に新聞にも発表されました。また、国交省のホームページでも、美しい日本をこれからつくっていく基本的な考え方が示されています。それのホームページを拝見しますと、伊藤先生がおっしゃった1.の身の周りの公共施設のところの大部分がオーバーラップしていまして、非常に参考になりました。
国交省の方でいろいろなリクエストといいますか、ホームページでいろんな意見があれば、投書しろとかいうのは、調査募集のこととオーバーラップするんでしょうか。また、市の方に云々ということがございましたが。
伊藤 僕はオーバーラップしていいと思うんですよ。むしろ重要なのは、オーバーラップしても、それをNPOとして責任を持っておやりいただく、そういうプログラムをきちっとおつくりになっていただければ、国交省がいっているのと同じことをやったっていいと僕は思うんです。
 僕がNPOさんに申し上げたいのは、今度の場合は専従の人件費は乗っけていいと思っているんです。専従の人件費が大変なんですよ。財団の専務理事とNPOの専従の月給3倍ぐらい違いますよ。NPOの専従は高くたって月給30万〜40万ぐらいですね。50万というのはなかなかない。財団の専務理事は100万以上ですよ。だから、専従の人件費乗っけていいと思っているんです。
 また、NPOの方が動きが早いです。
里見(司会)
 ありがとうございました。
 本日は、以上をもちまして、第187回都市経営フォーラムを終了させていただきます。ご清聴どうもありがとうございました。(拍手)
 


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