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第193回都市経営フォーラム

環境調和都市の未来像

講師:伊藤 滋 氏

早稲田大学特命教授

日付:2004年1月22日(木)
場所:後楽国際ビルディング大ホール

世界ガス会議と計画コンペ

制約条件とは(エネルギー、水、そして人口)

ソフトの展望、ライフスタイル

カナダチーム

ドイツチーム

フリーディスカッション



 

 

世界ガス会議と計画コンペ

 去年の6月に世界ガス会議というのがありました。ここにご出席の方はだれもおいでになってなかったと思います。東京港の埋立地のホテルとか、例の大展示場を使ってやられました。随分集まりまして、7000人ぐらい集まったかと思います。大変な数です。これは3年に1回、世界じゅうのガス業者、エネルギーの先生方が集まってやる会議です。東京でやる3年前にはフランスのカンヌかニース、あの辺でやりました。
 ガス会社は、いわゆる「小金持ち」が多いですね。日本でも、東ガス、大ガスのほかに地方の名士がガス会社をやっていますが、そういう人たちは大金持ちではないが、資産が何十億というのが多いです。ですから、やることが少し派手です。それは世界じゅう同じです。今回、ヨーロッパからも、小さいガス業者の人達が来ました。
 東京が去年やって、この次はオランダです。2年後にオランダのアムステルダムでやります。それぞれ非常に立派な会議です。
 それで、日本でやるというので、特別プログラムというのを、東京ガスや大阪ガスの人たちが考えました。2つありまして、とにかく22世紀、100年後世界じゅうは、どういうふうに石油や天然ガスを使うようになっているか。天然ガスの埋蔵量は一体どれぐらいあるのかとか、石炭はどれぐらいあるのか、こういうことを中心にして、工学部の鉱山とか、電気とか、応用化学の先生方が集まって大議論をやる。世界的に議論したのです。

 もう1つのプログラムが今日お話するもので、100年後の都市像は一体どうなるのか。それをテーマにしようということです。そして、ニースの会議の1年ぐらい前、つまり、4年ぐらい前から、日本で委員会ができました。日本の委員会には100年後の都市像を提案したいという人たちが随分集まりまして、委員会はそこから2チームを選びました。倍率が大体5〜6倍だったと思います。それから、残り7チームを、世界のガス会社、小さいガス会社、大きいガス会社、ガス協会、そこに頼んで7チームに来てもらいました。合計9チームです。
 それで、競技設計のように、コンペティションをしました。それで9チームのうち1等賞1つと、優秀賞3つ。残念賞が5つ。そういう結果になりました。
 9チームがどういうチームかといいますと、日本は清水建設のチームが1つと、千葉大の宇野教授という建築のチーム、これは日立さんがサポートしました。この2つのチームが、10何チームの日本の応募の中から選ばれました。
 それから、あと7つは、中国、ロシア、アルゼンチン、インド、ドイツ、アメリカ、カナダ。こういう7つを選びました。 
 今いったように、日本の2チームは別として、南米のアルゼンチンとかインドのチーム、ロシアとかというと、国の成熟度合いも、民族性も違いますので、最終的なリポート、ここに現物がありますが、ここの中でいっていることには、考え方に非常に差がありました。ありましたけど、共通していることもある。いずれにしろ、この9チームの議論は、私にとっては久しぶりに役に立つものでした。
 これを審査するジュリーボードというのがありまして、僕が委員長で、日本人は1人。それから韓国の品のいい大学の先生、この方は東洋文化、西洋文化、美術、音楽、そういうことに非常に造詣の深い、アメリカの大学を出た韓国の女性です。それから、有名なブラジルのクリチバのタニグチさんという市長。それから、1億円の武田賞をおととしでしたか、もらったドイツのワイゼッカーさん。ご存じでしょう。それから、ITでは、イギリスのニューキャッスル・アポン・タインの若くて非常に有能な情報科学者。それから、もう1人は専門業で、アメリカのガス協会の専務理事。もう1人は、エジプトの学者、非常に優秀なすばらしい学者で、世界銀行の副総裁をやったりした、水の専門家です。この7人で審査しました。国際審査というのはおもしろいんですね。いろんなおもしろみがありました。
 日本の2つ。それに中国、インド、アルゼンチン、ロシア、ドイツ、米国、カナダの9つのそれぞれが、対象とした都市を持っています。日本の清水建設チームは静岡県の三島です。千葉大の宇野さんのチームは、東京の中央区。中国は、上海から西に200キロぐらい行ったところの常熟市。インドはボンベイの南のゴア。ポルトガルが昔コロニア時代にインドを占領していた15世紀、ゴア(オールドゴア)というのをつくりましたが、その近くにあるゴア。アルゼンチンはブエノスアイレス。ロシアはモスクワの北、約400キロのボログダ。ドイツはベルリンです。米国はサンディエゴ、プラス、メキシコのティハナです。カナダはバンクーバー。こういう都市が対象です。
 そこで、1等賞になったのはどこかといいますと、カナダです。優秀賞は3つ選びまして、アメリカ、インド、日本の宇野さんのところでした。



制約条件とは(エネルギー、水、そして人口)

 それでは、こういうふうに選んだ理由は何か。そこから僕の話が始まるわけです。まず、9チームが100年後ということをどれぐらい予想できたかということです。100年後という議論が本当に成立するのか。そこからの話です。
 率直にいいますと、プロシェッショナルがやっているんですが、ぎりぎり予想できたのは2040年から50年までです。100年後といいましたけど、努力しても結果として50年先ぐらいまでしか予測できない。一番議論しやすいのは、いろんな意見がありますけど、30年先ぐらいまでです。
 じゃ、どうして、50年ぐらい先をぎりぎり予想できるかといいますと、これは都市計画のデザインとは全く別な領域ですが、京都議定書、COP3で、2010年に現在のCO2 排出量を6%削減するというのを約束しましたね。これはまだ、ロシアとアメリカが批准していません。しかし、情報によると、ロシアは批准しそうなんです。ロシアが批准すると、COP3は、世界に強制力を発効します。そうなると何ができるかというと、技術開発が必ずこれに伴ってきます。ちょうど日本が環境でCO2 排出量を自動車エンジンで成功したと同じように、日本の技術開発には必ずこの6%削減をいろんな領域で克服するという可能性があるんです。だから、日本の企業も役所も、ロシアは早く批准してくれよと思っている。
 このCO2 とか、熱汚染、こういう話題というのは大体40年先ぐらいまで見通しをしているわけです。これは気象学者が主体になってやっています。都市計画の連中はスタートするときに、大きい枠組みとして、何年先までいろんな技術領域のほかの専門家が予想していることについてまず見当をつけるということをやります。それを40年先か50年先がかなりの確度で、非常にマクロスコピックにある条件、数値が出てきたら、それを所与の条件として、都市に落としていく、こういうやり方をする。これは非常におもしろいことに、この9つのチームに全部共通でした。
 その1つの例を申し上げますと、カナダのチームは、こういうことを条件にしています。次の50年の間に、カナダ、北半球で平均温度が冬のシーズンに3度から4度上がるというんです。それから、年間降雨量は、冬に5%から20%、今よりふえる。そのかわり夏には降雨量が20%ぐらい減るというんです。これは非常にいろいろなことを想像させてくれます。
 例えば、温度が上がるというのは、まさにCO2 の地球温暖化ですから、海水面が大体40センチから50センチ上がるんです。50年先に。正確に50年先かというと、人間が怠けていれば40年先かもしれない。ただ、下げるということはない。海水面が30センチから50センチ上がる。
 それから、冬に降雨量が20%ぐらいふえるというのは、なだれ、ランド・スライド、これがべらぼうに起きやすくなるということです。そうすると、エロージョン、土壌の侵食。なだれによって表土が全部削り取られますから、カナダなんかでは、冬の雪が積もって、それが大きいなだれになっていくと、小麦の収穫量が減ってくる。
 それから、夏は、冬よりは温度の上がり方が少なくて、冬が4度ぐらい上がると、夏は3度ぐらいかもしれない。でも、夏も温度は上がる。そうすると、何が起きるかというと、エアポリューション、都市の中のエアポリューションが非常に大きくなるとか、サンフランシスコなんかだと、都市の中がエアポリューションで見えにくくなる。スモッグで見えにくくなるわけです。このように、いろんな条件が予測できるわけです。

 次に、はっきりわかるのは人口です。人口は大体共通しているんですが、2050年には地球人口が大体90億になるんです。今は大体55億ぐらいです。人口だけは100年先まで予測を伸ばしています。地球人口が100年先にどれぐらいになるかというと、60億に戻るんです。その原因はいろいろあると思いますけど、中国なんかは1人っ子の政策をやっていますから、それで結果として人口の再生産力が2億を切るとか、そういうのがありますし、90億というのは極めて危険な数字で、いろんな感染症が猛烈な勢いで、例えば発展途上国で起きる、そういうことがあるわけです。
 それの最たるものが、このチームのリポートで出てきますが、90億から60億へ下がる。下がるときに、予想としてはかなり深刻な予想をするわけです。上がっていくときも深刻だけど、下がるときも深刻だという話です。
 ですから、人口と、先にいった温度上昇、降水量、この2つぐらいを所与の条件として考えているのは共通です。
これが共通要素ですが、では、この9つのチームで違う要素は何か。意外と、大きく分けて、水に物すごく関心のある国と、水について、関心はあるけれども、報告書の中でそれほど言及していない国とがある。例えば、水について関心のあるのは、たっぷりあるということで、清水建設のチームが対象にした三島。それから、中国チームの常熟市、これはもともと長江デルタのところにできている市ですから、日本でいえば濃尾平野、木曽三川の輪中のようなところ。それから、インド。米国。バンクーバー。こういう町が水について非常に関心を持っております。
 一例を挙げると、サンディエゴ、ティハナの水はどこから取られているかというと、コロラド川ですね。コロラド川から95%水をもらっているわけです。水をもらっているんですが、50年先になると、サンディエゴ、ティハナの人口というのは非常にふえるんです。ところが、コロラド川の水をもらうことができなくなる。なぜならば、アメリカの人口がふえる。コロラド川の水というのは、カリフォルニアの北と南での奪い合いです。あるいはアリゾナも欲しいとか、ニューメキシコも欲しいとか、いろんな州の取り合いになる。そうしますと、コロラド川の水はいつまでも大丈夫だといっていられない。じゃ、水をどういうふうに確保するか。これは深刻な話です。
 それから、バンクーバーも、天変地異、さっきいったような降雨量が多くなるとか、降雨量が今の予想と変わってきます。そうすると何が起きるかといいますと、河川の人たちはおわかりだと思いますが、ダムへ蓄える水の量というのは、現在の降雨量の変動を予想しながら、どれぐらいためてどれぐらい外へ出すと、コントロールしています。それがカナダ全体で変わるわけです。そうすると、ダムに水をいっぱいためようとしてもためられないという事態が起きます。あれだけ水が多そうなところで。水がためられないダムが一斉に出てくると、ダムに頼って、農業用水とするなんていうことは「待てよ」となる。ダムに水がためられないんだと。別な仕掛けをしなきゃだめだ。こういう深刻な話になる。
 中国は水があり過ぎる中で、どういうふうにしてここに新しい都市社会をつくるかということです。ゴアも、ご存じのように完璧に水はあります。
 このように、9つの都市チームでいろいろ考えたのは、単にCO2 削減が成功するかしないかということだけではなくて、温度がどれくらい上昇するかということだけじゃなくて、水という極めて限られた資源、これをどういうふうに90億に向かって上昇しているそれぞれの国が、これを賄うことができるか、ということで、これは大問題なわけです。
 それから、もう1つ水についての言及です。計画の組み立て方で、どちらかというと、先進諸国は極めてマイクロスコピックな分析、検討でした。特にカナダ、それから日本の清水建設チーム。この2つは先進諸国の今までの変化について、計量的に1つの仮説を立てながら、起承転結できちっと組み立てていって、最後に結論を出す。こういうことについて大変すぐれた作業をしています。
 その結果、どういうような都市のイメージができるかというと、もうちょっとオーガニックな、有機的な特徴があります。
 もう1つ、これと極端に違ったチームがありました。ロシアです。これが実は大変なんです。ここで取り上げているボログダという町。人口が28万ぐらいの町です。かつての帝政時代、今から200年ぐらい前、非常に美しい王様の城だったわけです。ですから、文化財的に見ると、補強して磨けば、町の中に美しいロシア正教のお寺さんが次々と出てくるわけです。ところが、そのままに放り出されて、共産主義の真っただ中では、東ヨーロッパに特徴のある14〜15階建ての板状のプレハブの高層住宅をいっぱい建てました。これは東ドイツからロシアまで全部共通です。皆さんご存じのとおり、プレハブ高層住宅です。全部ガタが来ている。そういうのを抱えているんです。これを何とかしなきゃいけない。美しい都市、文化財がだめになった。戦後40年ぐらいの間にロシア共産党がつくった郊外化した高層住宅を何とかしなきゃいけない。
 また、10年前に共産党政権が終わって、自由主義社会へ入ったのですが、全く土地利用規制がコントロールされていませんから、田舎の隅々まで自動車が入り、隅々でこそ、小さい農耕作業が行われるのですが、それが無数の人がやることによって、小さいながら結果として膨大な森林を切り崩す。要するに、我々都市計画でスプロールといっていますけど、ロシア規模のスプロールがロシア国土全土に起きているわけです。これを何とかしなきゃいけない。その発想というのは、我々は考えられない。どうするか。ロシアでこのまま50年放置すれば、国土の隅々までロシア人の手によって中途半端な荒らしづくり、スプロールで自然資源が破壊される。
 これを何とか救うためにはどうしたらいいかというと、大量の、多分何千万という人間をシベリア鉄道の周りに集めようというすごい計画を提案しました。英語でいうと、サイベリア・ストリーム。シベリアの風、シベリアの流れ。これを「シブ・ストリーム」と、ロシアのチームは言っています。壮大な計画です。一番メカニカルなんです。しかし、ロシアの現状を考えると、こういう発想が出てくるのはうなずける。
 それから、自然をすべて受け入れて、なるべく自然に対して抵抗しないで、少しずつ少しずつ自然になじみながら、町をよくしていこうという一種の東洋的思想、これをちゃんと発表したのが中国の常熟市なんです。ここは東洋的思想です。基本的には輪中を使っています。
メカニカルか、オーガニックか。そういう対比と、水をどうするか。水に対して関心を持っている場合と持ってない場合。そういう違いが9つの提案の中に見られました。これが9チームに共通で何か所与の条件はないかと考えた部分です。



ソフトの展望、ライフスタイル

 今まではハードの面です。ソフトの面では、非常に深刻にいろんな領域から考えているのが3つありました。それはアルゼンチンとドイツと米国です。この問題を一言でいうと、ドイツ人がいっているんですが、ソーシャル・コヒージョン。社会的共存性とでもいっていいでしょう。
 この3つで一番おもしろいのはアルゼンチンです。アルゼンチンはこのリポートをつくるとき、国が破産しました。我々はそれなりのお金をポンと出したんです。9チームに相当の金を出して仕事してもらっているんですが、国が破産したので、アルゼンチンはどうもチームでみんな食っちゃったんですね。最後に報告書を出してきまして、図面があるんですが、昔の建設省の都市局の役人がつくった土地利用計画の構想図みたいなもんなんですよ。そういって、わかりますか。わかる人はわかるでしょう。
 道路網が環状、放射でこうあって、公園計画がこういうところにあって、土地利用では、住宅地や既成市街地の再開発やって、開発許可すべき住宅団地がこういうところにあってと、そういう図面を、30年オフピッチぐらいで出してきた。だから、あんまりおもしろくないんです。
 だけど、その報告書の中で1つだけおもしろいことをいっているのは、現在地球上では経済活動、人口の集積も北半球が9割とっている。南半球は1割しかない。考えてみると、あれだけ膨大なアフリカとオーストラリアと南アメリカ、この3つの広大な資源と海洋資源を持っている南半球に1割の人間を住まわせているだけでいいのかという話。ここはもっと人口を収容できる可能性があるぞ。そういう発想なんです。
 南半球は、今まで9対1で北半球が威張っていたけど、100年後、もしかすると、例えば経済的活動で7対3ぐらいになって、人口は8対2、北が8で南が2、そういうふうになる可能性があるというんです。
 このごろ地図を逆にするというのがはやっていますね。日本海を中国の方から見たという地図が新聞にも最近出るようになった。地球儀を逆にすると、南極がありまして、南極の周りは丸いですから、南アメリカとタスマニアと南アフリカは近いんです。飛行機で横に行くと、5〜6時間で行っちゃう。5〜6時間というのはどういうことかというと、ロンドン−ニューヨークです。ですから、南半球のしっぽ、アルゼンチンとチリ、マゼラン海峡がありますが、あの辺すごく風が吹いているけど、片方はまだ十分な牧草地帯があって、食糧生産の可能性がある。タスマニアがすごいでしょう。非常に質のいい牛をつくっている。
 オーストラリア地帯もいろんな楽しみがある。南アフリカは考えようによっては、イスラエルと同じくらいに技術発展の可能性を持っています。だから、7時間ぐらいで飛行機を飛ばして、3つの国が連帯すれば、そして3つの国がその気になって意思統一すれば、相当おもしろいことが可能になる。
 そういうことで、南極に向かっている国々よ団結せよ、という宣言をして、100年後は、それをやるぞと、アルゼンチンが北の連中に向かってタンカ切っているんです。地球儀を見てください、本当にそうなんですね。6時間か7時間という、アメリカとヨーロッパを行ったり来たり、体にしみ込んでいます。ちょうどいいんです。ホームタスクでくたびれた頭を飛行機に乗って冷やして、新しいエネルギーを頭にぶち込んで、飛行機をおりるには6時間ぐらいがちょうどいい。そういう話です。
 これは我々北にいては想像できないことです。だけど、可能性としてはおもしろい。

 もう1つ、ドイツ。ドイツの報告書というのは非常に深刻なんです。ドイツは、実は唯一9チームの中で図面を書いてないというので、初めからペケにしちゃったんです。文章ばかり書いて。メンバーが65から70の人と年をとった女性ですから、図面をかく若い人がなかったんでしょう。けしからぬといって、初めから落っことしたんです。
 だけど、文章は非常に深刻なんです。いろんな点で。共通性はソーシャル・コヒージョンなんです。ドイツはトルコ人が1割入っています。東ドイツからどんどん人が入ってきています。ドイツ人の出生率、人口の再生産率は日本と同じで、2を切っているでしょう。1ポイント幾つでしょう。急速に、ヒットラーの大好きなゲルマン系固有の人間は減っていくわけです。
 そして、減ってもいいのか。減っちゃまずいというなら、イミグレーションしかない。移民は、所得が低くて、乱暴で、今、中国人が日本で騒がれているのと同じです、乱暴で文化もわきまえない連中も混じっている。それでも、それを入れないと、若返らない。こういう問題をドイツ人、例えばこのチームメンバーは全部昔からのドイツ人ですね、こういう連中がどう考えているか。ここで、かなりあきらめなきゃいけないということが起きるんです。それは、例えば2050年ごろになると、30代の男女、5組、10人、それが赤ん坊を6人しか持っていない。50代のお年寄りを20人抱える。70代のお年寄りを40人抱える。こんなことでドイツはやっていけるかと。日本でも同じことがいえます。やっていけないだろう。
 一番基礎的なのは、人口の純再生産率、これを限りなく2に持っていかなきゃいけない。この努力をするためには、トルコ人とか、ロシア人とか、こういうのを入れないとだめだ。そこでは必ず社会摩擦ができる。
 ここで、ドイツ人はおもしろいことをいう。社会摩擦を吸収するのは雇用だ。雇用で必要なのはロースキルの雇用をうんと確保しなきゃいけない。ハイスキルではない。だから、ドイツが生き延びていくためには移民を入れて、人口をふやしていく、そういう連中にちゃんと雇用を与えるためにはロースキルの職業機会をドイツがどれくらい供給できるか。こういう問題を解かなきゃいけない。そういうわけです。EUの中でのソーシャル・コヒージョンです。

 もう1つ。アメリカです。アメリカは非常にドライにいっていまして、現在サンディエゴの人口が250万。メキシコボーダーのティハナが150万ぐらい。所得格差が1対10です。しかし、ティハナの連中の人口の再生産率が非常に大きい。だから、50年後には逆転して、メキシコ人6割、アメリカ人が4割、こういう世界になる。はっきりしている。サンディエゴ側から見れば、6割になったメキシコ人はボーダーを越えてどんどん入ってくるわけです。それを排除するなんてことはできないから、ティハナとサンディエゴが国境を越えて新しい国際的自治圏をつくって、一緒に暮らそう。そのためにどうしたらいいかという絵姿をアメリカの連中は書いているんです。
 ここでも基本的には1対10の所得格差を、100年かけて直す。100年後には大体所得格差はなくなる。しかし、職業形式はどうしても、メキシコとアメリカは違うと書いています。アメリカはどういうところかというと、ナノテクとかバイオテクとか、あるいは映像産業、こういう常に先端をいく産業を開発していく。そういう連中がアメリカ人。所得は同じだけど、メキシコ人の方は、ちょうど東京では下町の中小企業の職工さん。とにかく細かいキーは幾らでも正確につくる。そういう連中、優秀な職工さんにメキシコ人はなる。そして、それがパートナーシップを結んで、サンディエゴ・ティハナ地域を新しい独立圏として育てていこう。100年後。そういう共同作業のスタートに、米国の報告書は使っているわけです。ここはアメリカ人らしい。ドイツ人は深刻に、必ずフリクションは起きる。それをどう解くか。解き方は難しいけど、努力はこれしかないという。アメリカ人は努力すればよくなる。あっけらかんとしていて、すべてうまくいくと書いてある。しかし、ルーツは同じです。

 こういうふうにソフトの中で幾つか非常に大きな違いがあります。もう1つ、この9つのチームで、3つぐらいのチーム、例えば清水建設のチームは非常にいい仕事をしています。実は優秀賞の選からは漏れたんですけれども。
 裏話をしますと、9つのチームを7人のメンバーが審査したとき、宿題を合議をしながら解いていったわけです。カナダがトップでした。すべてのジュリーメンバーがカナダをトップにしました。
 次に2等賞を3つ選んだんです。まずインド。インドを2番目をしたのは、率直にいって、理由が良くわからないんですよ。文章、図面。どう読んでもわからない。わからないとみんな不気味だから、割にいい点を置いておこうかということになる。私、3回読んだら、本当は評価は低いと思うようになった。今からだと、インドは考え直した方がいいとすら思うんですが、でも、特徴はあるんです。
 次に米国。これはアメリカ人特有の、あっけらかんとして、ブルドーザーのように、目標に向かって突っ走れと。努力すればすべて報われるというやり方。これは明快なんです。図面もあるし、エネルギーも投入し、これは2等賞でいいでしょう。
 もう1つが日本の宇野チーム。何でこのチームが選ばれたか。考えてください。三島でしょう。上海の常熟でしょう。ゴアでしょう。ブエノスアイレス。ボログダ。ベルリン。皆人口が30万から500万ぐらいの町なんです。ベルリンなんて300万でしょう。9つのチームは、ニューヨークをどう解くか、上海をどう解くか、あるいは東京をどう解くかという課題に取り組んでないんです。9つの世界じゅうのすごい専門家が集まっている。すごい専門家が集まりながら、何でこの巨大都市問題にチャレンジできなかったか。
 これは考えてみると、20世紀の我々の知識社会がつくり出した分析能力の限界だ。多分解析的分析では解けないです。何か別のアプローチをしなければいけない。それが見えなかったというところで、ドンキホーテ的に宇野チームは中央区をとらえた。報告書の中味は別として、9つのチームの中で、たった1チームだけ東京のど真ん中を取り上げたというので、2等賞をあげました。ドンキホーテだけど、価値はあります。
 コンセプトとして非常に明快で、中央区のコンセプトは、ライト・シティ、軽い都市。軽い都市というのも、ある意味で有機体的な共通性を持っている。

 もう1つおもしろいのは、都市の中での人間の生活について、3チームぐらい共通していっていることがあるんです。「むだな動きはするな、ゆっくり歩け、ゆっくり考えろ」。徳川家康は、「立てば半畳、寝て1畳」。鴨長明なんかも、「ゆっくり歩け、むだなことをするな。むだなエネルギーを使うな」。これをいっているのは、ドイツです。
 それから、三島、バンクーバーもある程度そうです。要するに、ライフスタイルです。ドイツチームは非常に極端で、今のように、ツーリスト・インダストリーがこのまま伸びていけば、CO2 、地球温暖化に対して悪い影響を与えるから、ドイツ人は外国に行くなといっている。それのコンペンセーションはバーチャルなスクリーン、立体的なスクリーンで絶対できる。これはドイツ人らしいですね。バーチャルな立体スクリーンで、臨場感からすべて、行かなくても現場に行ったようにわかるんだと。それをベルリン市民は、将来の重要なソフトの開発として努力しなきゃいけない。ドイツ人は論理的に徹底していますね。「動くな。旅行するな。しかし、楽しみは内にあり」、これが日本人的表現ですけど。これがドイツの話。
 それから、カナダも意外とそうです。これは当たり前の言葉でいうと、職住接近型をもっといっぱいやれということ。ウォーキング・ディスタンス30分。
 ドイツのリポートは甚だしくて、2030年にはすべての自動車産業を破壊する。トヨタはなくなる。フォードもなくなる。メルセデスベンツもなくなる。人間行動の70%以上は、歩くことと自転車に振り向ける。ドイツ人の物事を直視するときの深刻さというのは、それぐらいのことをいわないと、変わらないということです。
 これは、環境学者のドイツのワイゼッカーさん、彼がいみじくもいっていましたけど、100年後の化石燃料をどれぐらい使うようにするか、日本人はまじめに考えるというんです。例えば、ロシアにはまだ石炭があります。石炭があるから、石炭をむだにしないようにして使えば、100年後にロシアは石炭を使える。天然ガスが相当使えるぞというのがあるんです。天然ガスが使える、石炭が使える、石油だってまだある。これ、全部再生不可能な資源でしょう。それを100年後には、日本の学者は、例えば全世界の消費量のうちの3割ぐらいはまだそういうやつで維持できるということを、技術的視点からいうんです。
 ところが、ワイゼッカーは、「それじゃだめだ」。今の地球環境のCO2 の増加を阻止するためには、100年後には、再生不可能な化石燃料は、1割以下しか使えない。それぐらい極端にいえ。極端にいうことによって、初めて市民は「オッ!」といって、努力して3割にいくんだ。だから、日本人の技術者は極めてまじめ過ぎる。それに対して、ワイゼッカーのようなドイツの環境学者は、一種のマニフェステーションかもしれないけど、自分できちっと計算して3割というのがわかっていても、だけど、これは1割にするんだ、しなければならない。そういうことによって市民の関心を環境問題に集めていく。こういういい方です。
 だから、そういう点では、かなりのところが化石燃料を使うということをいっていました。特にロシアはそういうことをいっているんです。



カナダチーム

 それで、一番優等生だったカナダチームの報告書の内容をちょっと申し上げましょう。カナダのチームは、「次の50年間にブリティッシュコロンビアで起きること」というので、先ほど申し上げましたように、気温の上昇、降水量の上昇、降水量が夏は減る、海面温度がどれくらい上昇するか。それに人口変動に言及しています。そして、カナダの100年後に向けて、実際は2040年なんですが、8つの項目で都市空間を組み立てようということをいっています。
 1番目。徹底して緑と水の保全を頑張ろう。緑と水は徹底して減らさない。ふやしていくぐらいにしよう。緑と水というのは、9チーム共通ですが、カナダが一番徹底しています。
 2番目。すべての都市的な構成要素を多重に利用しようということ。例えば、駅前広場を駅前広場として使うんじゃなくて、駅前広場に住宅があってもいいし、駅前広場に病院があってもいいし、駅前広場に刑務所があってもいい。極論すると、そういうことです。
 これまですべて機能分離で20世紀は施設をつくってきた。しかし、カナダのように、木に依存しているところでは、木1本見てみろ。木1本の存在は、それだけでいろんな機能をつくり上げている。保水機能でしょう。生物多様性についても木はいい影響を持っている。それから、木が集合体になれば、温度を下げる能力がある。木というのは、自分が成長する結果として、ほかの外部環境に何らかのいい影響を与えている。それを見習おうということです。
 3番目。むだな動きはするな。これは職住接近です。

 この9つのチームの中で5チームぐらい共通用語を使っています。エコロジカル・フットプリントといいます。ご存じの方、説明してください。(「今の生活を維持するために必要な地球上の面積」と発言する参加者あり)そうです。そういうことです。今の生活を維持するというのは、小麦だけじゃなく、水だけじゃなく、石油も、建設資材も、全部入れてです。
 日本のエコロジカル・フットプリントが2000年で幾らかというと、1人当たり約4.8ヘクタール。どういうことかというと、5ヘクタールで1億2000万人掛けると、600万平方キロ。日本の国土が36万平方キロでしょう。大変なことなんです。
 日本の国土36万平方キロの約15倍の地球上の何らかの地表面、あるいは沿岸領域も入れて、それを日本人は使っているということ。アメリカになると、途方もなくけたが大きいんです。1人当たり7ヘクタールとか。それが発展途上国になればなるほど小さい。当然ですね。中国とかインドになると、例えば中国は1ヘクタールとか。いずれにしろ、このエコロジカル・フットプリントをなるべく小さくしようと頑張っているんです。これは新しい概念ですね。
 地球温暖化と、幾つか重要なものがありましたが、そこの中にもう1つ、エコロジカル・フットプリントという見方も都市を育てていくときに非常に重要です。都市では、エネルギーも少なく、食べ物も少なく、禅僧的な生活をしろということです。鴨長明です。禅僧的、日本人に向いているんですよ。早く動くと腹が減るから、ゆっくり動け、そこまでいくわけです。それが4番目です。
 5番目。これはピューリタニックな、キリスト教の国らしく、すべての失敗と成功を学び取って、すべての可能性を現実のものにするように挑戦しろ。これはキリスト教の精神そのものです。バンクーバーのイギリス人やドイツ人がいっているだけのことがあって、これが5番目です。
 むだな動きをするなというのは禅宗、東洋的思想ですね。一方、すべての可能性をというのははキリスト教的です。

 6番目。ソフトな問題です。バンクーバーも相当エスニックに違いがあります。バンクーバーの人口を100とすると、もともとのヨーロッパ人、オランダ人とかイギリス人、ドイツ人は、全体の3割ぐらい。アジア系が3割、残りの4割は、いろいろ混ざった連中らしいです。カナダは罪の意識があって、アボリジナルを大事にしようなんて書いてます。オーストラリアと同じに。第1世代。これは日本人には直接関係ないからいいませんけど、エスニックはカルチャーが違う。そのカルチャーの違いを同一のものにするのはやめようといっています。だから、モスレムはモスレムなりに、中国のお寺さんがありますが、それはそれなりに。日本の神道は神道なりに、すべてエスニックな生活は認めていく。なぜかというと、生物多様性に言及しながら、人間生活が多様でないと、必ず人間という種族は衰えるといっているんです。
 違いに意味があるという。相当強烈です。それをバンクーバーは目指すんだという。
 それから、もう1つは、ベルリンもそうなんですが、21世紀、50年ぐらいまでは、これからは4世代社会を常に頭に入れろという。これは考えてみれば当たり前です。80才ぐらいはまだピンピンですね。そこから25引くと55でしょう。さらに25引くと30でしょう。もう一つ25引くと5。だから、5才、30才、55才、80才と、1つの都市の中に、これだけの人間が共存しているはずなんです。4世代社会が何を求めるかというと、20世紀のように、ただ単純に、走ればいい、新しいものがいいという話にはならない。それをドイツ人は非常に苦くかみしめながらしゃべっています。
 一方、カナダの方は割合明るくしゃべっている。何をいっているかというと、近隣住区で家が100軒あったとすると、100軒のうちの25軒は必ず3世代、4世代世帯が長屋で住むようにしよう。残りの75は若夫婦だけとか、若夫婦と子供、いわゆる核家族。4分の1から、30%ぐらいまでは必ず3世代、4世代の世帯がそこに一緒に住む。そういう家をつくろうということです。これが選択の可能性ということで6番目です。
 7番目。これはおもしろい。ショックに強い社会をつくろう。これはレジリエンスという言葉です。弾力性。カナダは地震があります。それからランド・スライドがあります。場合によってはバンクーバー港の外側に行けば、高潮があります。自然災害に対してきちっと対応できるように都市構造をつくらないといけない。例えば、それぞれの地域社会、隣組が、1週間以上の水と食糧を常に持っている。こういうことは当たり前だという地域社会をつくらなきゃいけない。こういう話です。ここへ来ると、日本の最近の私たちがいっていることとかなり似てきます。
 8番目。どうってことないんですが、もう一回1番目に戻って、ネイチャー、自然の摂理をきちっと尊重して、自然に対してとんでもない悪影響を与えることはやめようじゃないかということ。
 こういう話が8つ、カナダの宣言にあるわけです。
 もう1つ、これは常識的なんですが、CO2 の削減、これは京都議定書なんかでもいっているんですが、2040年には1人当たり年間1トンを目指そうということなんですね。現在日本は2000年で11トン。アメリカが25トン。ドイツが13トン。バンクーバーは7.7トンなんです。再生可能なクリーンなエネルギーを使っているということです。意外と、1年間に20トンぐらいしかCO2 を出さない町がありまして、そこはどこかといいますと、スウェーデンのマルモ。デンマークのコペンハーゲンから橋ができました、橋ができた足元の町。昔は猛烈な化学産業、化学装置メーカーがいっぱいあったところです。ドイツと日本の工業にこてんぱんにやられちゃって、そういう装置がなくなって、気がついたら環境に強い町として名前が載っています。もう1つスウェーデンとどこかの土地があります。
 ですから、考えてみますと、北欧の人口が500万ぐらいで猛烈に大きいバイオマスと水があるところ。そこは結構CO2 削減量が少ない。とにかくカナダも7.7トンを2040年には1トンにしようという。1トンというのは環境学者はよく使っているようです。アメリカのサンディエゴも100年後には1トンにしたいという。それだけ環境調和型都市ということで、環境学者の中では京都議定書につながりながら、2050年にCO2 排出量を1人当たり1トンという話になっている。これは極めて重要な量です。
 それから、水です。水も、これはサンディエゴでもいっていますし、意外と、清水の三島もいっているんです。三島は富士のすそ野で水がコンコンと出ているんですけど、そこでも水は大事だと。スプリング・ウォーターを大事に使おうということです。今よりも2050年ぐらいには水の使い方を2割から3割減らすんだと三島もいっています。カナダでもそういうことをいっている。



ドイツチーム

 それから、もう1つ、ドイツの話を申し上げたい。ドイツは報告書の中で、この報告をする基本方針というのを10項目挙げています。バンクーバーが基本方針を7つ挙げたと同じように10項目挙げています。それを申し上げますと、カナダともかなり共通しています。
 基本方針の1番目は、混合し、多様な土地利用をコンパクトシティの中で実現しよう。都市はコンパクトであり、コンパクトであると同時に、混合している。混合している度合いが物すごく多様である。モザイク的にどんどんふえていく。
 2番目は、個人スペースはきちっと確保します。これは最小限必要だ。
 3番目。これはさっきいったエスニックです。多様な民族の同時居住をきちっと実現しよう。敬意を払って、モスレムの人たちが住めるようにしよう。これが3番目。
 4番目。先ほどいった4世代社会を円滑に動かす努力をいろいろやっていこう。
 5番目。これはドイツ特有の事情があります。すべての市民に適切な公共サービスをやる。この公共サービスの内容が、日本ですと、ガス、下水道、それから高齢者とかありますが、それだけじゃなくて、公共サービスの内容が相当変わっている。例えばどういうことかというと、ドイツではエンターテインメントは21世紀に物すごく重要だ。なぜならば、エンターテインメントに埋没する人間は病気にならない。病気にならないということは保険料が安くなる。だから、保険会社は先を読んだら、エンターテインメント産業に一生懸命投資をすべきだ。こういう組み立て方です。
 考えてみると、そうかもしれません。問題は、エンターテインメントの中心はどこにあるかといいますと、小学校だという。小学校はかた苦しい小学校教育をする場所ではない。そこで女の子と男の子がデートしてもいいし、歌を歌ってもいいし、グランドキャニオンのすごいバーチャルな映像を見せる場所であってもいい。だから、教育とエンターテインメントが一緒になって、それが円滑に動くように公共サービスがサポートする。この次元になると、日本の区役所は全く黙して語らずですけど、そういうことなんです。極めてエンターテインメントについて強い傾斜をしている。エンターテインメントの多様性が雇用を生み出すということです。これはかなりの確かさでいえそうです。
 この9チームに共通していることですが、雇用の問題についてはこういう話が出てきます。再生可能なエネルギーを我々が使うといったときには、常にそれをメンテナンスしなきゃいけない。多分、大量の雇用を必要とするだろう。再生可能なエネルギーを常にみんながすぐ使えるようにするいうことと、エンターテインメントの概念を変えていくと、そこに大変な雇用が出てくる。雇用の発生源はもはや工場とか公務員とか営業とか、そういう範疇で語るべきではない。こういうことです。
 それから、6番目。これもドイツ人的です。今の地域社会をどこかおかしいことがないかと、常に細やかに観察していく公共自治体をつくろう。公共サービスはそういうことである。何か変なことが起きないかと常に細かく観察していく。そういうことを公共自治体はやらなきゃいけないという。
 それから、7番目は、ドイツでは市町村合併じゃなくて、EUとドイツ政府と州と州の下の市町村と、市町村の下の自治区と、この5つをどういうふうに再現したらいいかということを猛烈な勢いで議論されているようです。ですから、そういう中で最末端の市町村をより強固に州政府や、区から独立させる。市町村は人口5万人ぐらいでやれ。5万人の市町村に徹底した権限を付して、課税権限も与える。そうすることによって21世紀のエスニックの多様性を保証する社会ができるといっています。
 8番目。ゼロエミッション。これは当たり前ですね。
 9番目は、前にいったことと重複しますが、これはバンクーバーとかなり共通しています。
 以上、カナダチームとドイツチームの考え方をご紹介しましたが、日本人としては、1等賞、2等賞に関係なく、よく読んで皆さんにお話ししたいなと思ったのはこの二つでした。



 これから、パワーポイントを使って、ちょっと絵姿をお見せしながら説明をしていきたいと思います。
(図1)
 千葉大、清水建設、バンクーバー、ボンベイ、サンディエゴ、ロシア、中国の各チームの案を紹介します。
(図2)
 これが、千葉大チームです。その主張は何かというと、非常にドンキホーテ的といいましたけど、中央区のウォーターフロントを全部緑にしてしまう。緑にするやり方は幾らでもある。超高層の上に木を生やしてもいいし、壁に木をつけてもいいし、下に樹木を植えてもいい。緑、緑で、浜離宮から上まで結びつける。隅田川の周りを全部緑地にしろ、こういう話です。これしか超高層市街地についての提案がなかったから、2等賞にしました。
(図3)
 これが浜離宮で、築地の魚河岸のところも緑。聖路加のところも緑。中の区役所なんかも空いたところは全部緑にする。緑のグリーンフロント、これをつくるということで巨大都市問題の一部は解決されるんだという話です。
(図4)
 あとは自転車を使う。ICカードを使いながら、自転車で中央区を走り回る。荷物は、携帯か何かでチカッとやれば自動的に来る。
(図5)

(図6)
 これは清水建設の案ですが、審査漏れしたのがかわいそうなぐらいです。よく読んだら、これは2等賞より上を上げたいぐらい。
 これは概念を示しているのですが、三島の町の中に、よく分析すると、近隣社会という細胞がある。それから緑の細胞がある。近隣社会には必ず緑の細胞をくっつけて、これをペアにしていこう。この近隣社会と緑の細胞は活発に動かさせなきゃいけない。活発に動かす刺激を与えるのは、ゲノムというものが緑の社会の中にも近隣社会にも入っている。これを活性化することで、それぞれの細胞が元気になって、そして、ペアになろうという努力が出てくるということです。人口は1万人ぐらい。リストレーション・オブ・ザ・エンバイロンメント、プレース・オブ・プラント・フォーメーション・アンド・リニューアル。ここはエンバイロンメント・プレースだけど、自然の生理だとか、自然の再生ということが活発に行われる、そういう緑の空間、それを近隣社会といつもペアにして考えている。
(図7)
 問題は、そのときにゲノムを活性化するというのは、これが都市計画なんですが、これをパッと見て、これが現在の三島の町でこっちに自然があります。だんだんこういうふうに細かく分けていってペアにしていく。これは都市の中で東洋医療のツボがあるというんです。ツボというのは、どこかを再開発するといったときに、そこを清水建設に再開発させるよりも、三島市役所がちょっと緑を林に買っておいてくれれば、隣の地主が自分の土地をだれかに売ろうといったときに、売らないで緑にしてくれる。そういうツボがある。そこに住んでいる人たちのビヘイビアをきちっと見きわめることで、ツボを発見していけば、それを刺激することで、だんだん緑がコミュニティーの近隣社会の中に入っていって、最後はペアになる。こういう考え方です。だから、これはインター・セル。セルがお互いにつながり合う町をつくろう。こういう話です。
(図8)
 これが最終的な形です。必ずこれは近隣社会、隣組と自然がペアになって、人の動きは、散歩もなるべくここの中でやる。勤めるときも近隣社会の中、住むところで勤めて、動きを少なく、ゆっくり。散歩もゆっくり。なるべく小さいところで完結して、ITによって地球とのつながりとか、日本全国とのつながりは全部ここでやっていく、こういう話です。大変自然型ですね。
(図9)
 インター・セル・トラスト。インター・セル・シティズンズ・コミッティーとか、サイバー・ガバメントとか、グリーン・コミュニティーとか、こういうのがインター・セルでつき合うことで、単に内側に囲まれて生活しているんじゃなくて、外側ともつき合っていく。そのときにNPOがすごく重要だ。企業も重要だ。全部リンクしている。こんな抽象的なアイデアです。
(図10)
 これがおもしろい。何かというと、エナージー・シナリオで、今までの三島の例で、100%のエネルギーがかかっているときに、LNGとか石炭とかオイル、これは化石系燃料です。これは約83%。こっちは水力とか風力とか、これが17%。これがずっと将来下がっていって40%までになるんだけど、エネルギー消費は100から60ぐらいまでしか下がらない。下がらないところに新しい再生可能なエネルギーがいろいろ出てくる。これが重要なんだと。この量が減った分だけ、再生可能な水素系電池とかありますね、何かそういうもので埋め合わせていくんだという話。これでエネルギーを40%まで下げよう。60%で2100年は頑張ろう。化石系は10%。こういう宣言をしている。これは余り当てになりませんけど。

(図11)
 これがバンクーバーチームです。2000年の人口。これが2040年になると、こういうことになっちゃう。これはたまったもんじゃない。真っ赤になる。真っ赤にならないようにするためにはどうしたらいいかという課題を与えて、このチームは、さっきいったようなリポートをつくったんです。
(図12)
 そして、このままでいくとどうなるかというと、これが2000年で、これが2100年。必要量はリサイクルするウエースト、ローカルに捨てていた廃棄物とかいろんな種類の廃棄物があります。それが100年で大体倍になる。それから、ウォーター・コンサンプション、これも倍になる。しかし、さっきいった地球温暖化とか、そういうことを考えると、ウォーター・コンサンプションはこうなるが、それを賄うキャパシティーはこういうふうに下がってくる。2000年のときはこれだけ余剰があるけれども、水使用量がどんどん上がっていくと、ダムで蓄えた水とか農業用水とか、そういうのの量がクロスして、これだけは供給できなくなる。こんな話です。
 これが電気、これが天然ガス、これが石油です。こういうふうに100年後は倍ぐらいにふえていくんですけど、こういうふうに量が決まっているから、当然自然傾向として、これだけの需要は賄い切れない、こういう話です。
(図13)
 で、どういうふうに問題を解くかというと、現状のままでいくと、再生可能なところからのエネルギーは、金がかかってしようがない、だれも使わなくなる。だけど、ここで一頑張りして、2040年までの理想像をつくっていくと、こういうふうになる。ところが、理想像まではすぐにいかないから、このゴールを60年ぐらい伸ばして、2100年まで持っていって、この間で実現性をいろいろ考えていこう。だから、ねらいとしては、このカーブに従って、都市を変えていくということで、学者がいっている2040年の理想像を2100年に完成させる。こういう話です。
(図14)
 これはちょっと面倒くさいので、省きます。
(図15)
 では、具体的な提案は何かというと、これはバンクーバーの中の住宅地域の提案なんですけど、これを1つ1つ見てもらいたいのは、上に書いてある英語なんです。ここに3階建て地下1階のビルがありますけど、これはマルチユース・ビル。多目的なビルディング。それからここを出ると道路からいろんな情報を手に入れることができるとか、ソーラーのエネルギーをちゃんと吸収できるような構造体をつくっておこう。その構造体が一度用途がだめになったら、例えば下宿屋をやっていたけど、だめになったといったら、これはアトリエに変えていくことができるような建築構造体にしていこうとか、これは小学校ですが、それを小学校だけじゃなくて、すべての年齢の人たちに昼夜24時間使えるような建物にしていこう。水タンクは水タンクだけじゃなくて、エンターテインメント施設とか、博物館とか、いろんな形で置いておこうという絵です。
(図16)
 これは一点集中型の通勤形態を、さっきいったように職住接近型に細かく分散させていって、バンクーバーで一番にぎやかな中心市街地が1つありますけど、1つはやめよう。1つじゃなくて3つぐらいに分けていこう。一番大きい中心商店街とか、業務街も1つじゃなくて、3つぐらい。そこからそれぞれ生活が完結し、仕事が完結する、自動車を使わなくても、仕事と生活が一緒にできるような小さい中心地を次々とネットワークで結んでいく。
(図17)
 これは、ダイバーシティー・オブ・チョイス。さっきいった多様性を保証するということで、これはダイバーシティー・オブ・カルチャー・エクスペリエンス、なるべく多様な文化的な体験をできるようにする。トランスポーテーション・オブ・チョイス。これは自転車、都電、モノレール、いろんな交通機関がある。そのスモーガスボード。スモーガスボードというのは、スウェーデンのビュッフェです。何でもある。交通便益は何でもあって、それを住民が自分の好みで使えばいい。これはアメリカもそうです。トランスポーテーションは人が乗ってない。だから、ベルトコンベアのように、非常に精巧なノーマン・オペレーション。運転手がいない。そういうやつを志しているんだから、人が乗ってなくたって、構わないじゃないか。こういうことをアメリカ人はいっています。
(図18)
 それから、これはバラエティー・オブ・アーバン・ライト。さっきった多様性。

(図19)
 これはインドチームの案です。インドはわからない。ここがボンベイです。ゴアというのはここにありまして、ここがオールドゴア。
(図20)
 インドのは本当に良くわからない。これは省略します。
(図21)
 これだけはわかる。BAUというのはビジネス・アズ・ユージュアルの略です。現在のままビジネスが発展していくとどうなるかというと、ゴアの町は人口が10万人ぐらいしかいないけど、それが2060年になると、40万になって、それから下がってくる。それに対して、サステーナビリティー・トランジション。これはさっきのカナダと同じで、理想的な地域の環境の持続性、理想的な状況でこうすべきというのをセットしていくと、人口の減り方が少し減るだけで、人口がどこかで下がっている。これをシティー、都市の政策として実際に使っていった場合には、少しずつ人口が上がっていって、落ちることはない。落ちるというのはなぜか。インドの非常に重要なところですね。
 インドは、ご存じのように、2階層、2つのグループに分かれまして、貧乏人と金持ち。この提案は金持ちの連中の提案なんです。貧乏人は知らないと。だけど、ビジネス・アズ・ユージュアルという、ここで人口がふえるというのは、使用人とかホームレスとか、そういうのがいっぱい、ゴアはおもしろくていいところだ、飯も食えると集まってきて、そこで全部資源を食いつぶしてしまうというんです。畑もだめになる、水は汚れてしまう。だから、貧乏人は、浄水器もないから生水を飲まなきゃいけない、それで伝染病で死んでしまう。徹底して環境を食いつぶしてしまって、こういうふうに減ってしまう。恐ろしい絵姿なんです。
 それに対して金持ちが自治体と協力しながらやると、コンスタントに人口をふやしていって、ここで30万ぐらいでおさまるいい町になる。そのいい町はどういうのかというのが次です。
(図22)
 これは割と平凡な絵です。ここに森があって、ここに川とちょっとした沼があって、田んぼがあって、集落があって、林があってと、非常に田園的。そこに牛のふんとか豚のふんを集めてバイオマスをやる。水をきれいにしている。雨水は全部貯留して、それをきれいにして、また便所に使ったりする、中水、こういう非常に簡単なシステム。これからインドでは2100年に向かって、中産階級たちはそういうふうにしていく。これ1つ1つがここに入ってくる。そういう中産階級の連中がやっている農耕地がこういう形であるというわけです。
(図23)
 それを都市の形にすると、こうなる。気持ち悪いでしょう。脊椎動物、恐竜がのたうっているような。ここで建築屋が今までの土地を引き受けて、どういう町がゴアでこれからつくられるかというのをかいたんでしょう。ここまでは全部環境学者とかシステムエンジニアとか、そういうのがずっと分析したんだと思います。それの結果としてどういう絵をかくかと建築屋に任せたら、こういう絵姿になった。
 絵姿を断面で見ると、4階建てぐらいの非常に軽い、屋根がフラットのブリキでできたような家がいっぱい並んでいるんです。そこの中で商業がどこだとか、役所がどことか、工場がどことか、一応書いてみた。
(図24)
 これ1つ1つが軽くて不規則な形をしている4階建てぐらいの建物が丘の上からずっと下がってきている。こういうような形で、周りは全部緑で囲まれている。これが中産階級エリートのゴアにおけるニュータウンだ。それはちょっと見方を変えると、物すごく気持ちの悪い生物体に見える。
(図25)
 これが古いもの。今の提案はここをやっている。ニュータウン。ここは何かわからないけど、心臓か何か。気持ち悪いでしょう。こういうことを建築屋ってやるから嫌なんですよ。(笑)こういう絵でごまかそうといったって、ごまかされやしないんですが、インドのは前半の分析がわからなかったので、逆に2等賞やっちゃったんだけど、ちょっと反省しています。

(図26) 
 これはアメリカチーム。アメリカはIBZ。IBZというのは、インターナショナル・ボーダーゾーン。ここに国境があって、南がメキシコ・ティハナ。上がサンディエゴ。ダウンタウン。ここの地域についての将来計画を立てようというのです。
(図27)
 このリポートのかなりの部分はIBZの将来をどうするかということなんですが、ここがティハナの歴史的な下町。ティハナの東側、工場地帯。これがアメリカ側ですか、再開発地域。こういう土地利用をやっています。これはIBZプライマリー・シティーセンター。これはニュータウン。このニュータウン人口が、実はIBZは人口が物すごくメキシコ系がふえますので、現在の人口は400万ですが、2100年には1800万人になる。1800万の人口を4つぐらいに分けている。450万のニュータウンをつくろう。中国と同じ発想ですね。中国と違うのはアメリカ人は非常にシステマティックに、ここは450万のニュータウンをつくって、ここにメキシコ人とアメリカ人が一緒に暮らすんだ。どういう暮らし方するのかというのをいろいろな写真で説明しています。
(図28)
 これはニュータウンのど真ん中で、無人のチンチン電車が次々と走っている。からでもいい。気楽に乗れば、目的地に着く。真ん中は緑でいっぱいで、自動車は1台も走っていない。これをアメリカ人が書いた。
(図29)
 これが450万人のニュータウンの交通網を展開するわけです。周りが農耕地です。
(図30)
 これがその姿です。

(図31)
 次がロシアチームです。これはすごいんです。シブ・ストリームという、対象にしたのはボログダという人口が28万の都市です。この町を非常に細やかにロシア人はサーベイして、2050年に30万になる。だけど、2100年にはもう一回28万人になる。物すごく歴史的な土地で、本当にホロリと泣かせるようなリポートをつくっているんです。
 問題は、ストリートがあるでしょう。これがシブ・ストリーム、サイベリア・ストリームというパイプラインと鉄道と高速道路と高圧電線と、その他もろもろの全部インフラストラクチャーが入っている施設帯なんです。ウラジオストックとムルマンスク。ムルマンスクはシブ・ストリームを使って、黒海に出る。物すごく壮大です。
 何をやっているかというと、都市計画をやっている人はおわかりだと思いますが、ロシアというのはバンドシュタット。帯状都市というので、昔から有名なんです。例のスターリングラードとか、1930年ごろにバンドシュタットのアイデアを展開している。帯状都市。それ以来ずっとロシア人は帯状都市、線形都市というのが大好きで、今いった大きいインフラストラクチャー、鉄道ともいえない、道路ともいえない、ガス、石油パイプラインともいえない、高圧電線ともいえない周りに都市をくっつけていきます。特に農土、東西軸と南北軸が挟まった農土のところには大きい人口集積がある。だから、そこのところにバラバラと住んでいた農民を全部ここへ集約してしまえ。ここは本当の自然に戻る。自然に戻って、そこを牧草地にしたり、林にすることによって地球環境を守るんだというすごい発想です。
(図32)
 このシブ・ストリームというのはこういうものだよという。物すごく20世紀的ですね。さっきのバンクーバーと全然違うでしょう。日本人が大好きなデザイン。我々はよくかきますね。ここのところに南北に行くシブ・ストリームのサブがあって、ここにニュータウンをつくる。そこに飛行機が飛んでくる。ここへ人口を全部集めてしまえ。
(図33)
 これは全部ニュータウンなんです。ここに人工的な森をつくる。シブ・ストリームはずっと落ちてくる。周りには人は全然住んでいない。こういうふうにしてしまいます。イメージ・オブ・ザ・シブ・ストリーム、ネットワーク・キャピタル・オブ・ザ・ロシア。ロシア国家のキャピタルをつくる。
(図34)
 それに比べてこのボルグダという美しいロシア正教の町をつくっていく。これはホロッとしますね。この2つの道具で我々に訴えたんですけど、僕たちホロッとしたのはこれだけで、シブ・ストリームは初めから6人のジュリーメンバー全部がペケ。全然だめです。余り悲しそうな顔のロシア人をなぐさめまして、昔日本人もこういうことやったんだよといったら、少しホッとした顔していました。
(図35) 
 これもボルグダの近く。ロシア人って、別荘が好きでしょう。別荘にいろんな熱を吸収したり、たい肥をつくったりする装置をつくって、風車もあるし、水タンクもある。こういう計画をシブ・ストリームを使ってつくるんだ。
(図36)
 ロシア人の発表の中でおもしろいのは、将来の職業の分布です。これが2000年で、2100年。上の方の機械系のエンジニアは3.3%が、将来はこのボルグダではいなくなる。機械系はもう要らないといっている。それから食品系も3.8から2だから、これも減る。林業、ウッド系、ロシアというのは森で結構食ってますから、2000年は相当のプロポーション、6.6ですから、林業がかなりはやっている。これがいずれ半分になる。それから、テキスタイル。これはまだ少し生き残る。3.3から4。それから、コンストラクション、これは変わらない。トランスポーションは減る。どこが上がるかというと、ロシアも21世紀に向かっての雇用創出というのは、貿易とサービスと文化であるとして、これが職業化して13から17にいく、これが非常に大きい要素。それから、もう1つは、サイエンス・リサーチ、これは学校の先生。4から5。だから、サイエンスとカルチャー、これが21世紀に非常に重要な職業形態になるよ、こういう話です。

(図37)
 これが中国の輪中です。同済大学の連中が一生懸命やりました。会議のときはSARSがはやっていたので、中国の人は来なかったんです。どうしようもなくて、テレビ会議をやりました。これは非常に東洋的でした。チャンシュウという常熟市です。上海から100キロにあります。
(図38)
 昔の1500年のときに、周りは全部水で、ここに島があって、ここで畑をしていた。これが1700年には島が少し大きくなって、2000年には川だったか、湖だったかが、全部疎水になってしまった。こういうところ。これが今までの常熟市の水と市街地の相互関係です。
(図39)
 これは人口です。これは2050年で下がるんです。50万から130万ぐらいに下がる。グロス・ドメスティック・プロダクトを示しています。これはインダストリーでサービスが上がって、農業が下がる。これは当たり前です。それから、エネルギー消費はどうなるかというと、グリーンエネルギー、これがべらぼうに大きくなって、ナチュラル・リソースこれはかなり残るというんです。それから、コール、中国は石炭が残ります。100年間。ロシアも残るんですが、さっきの話で、石炭に水を混ぜて、おもしろい、新しい材料をつくっている。それはCO2 を出さない。そういう手があるんだと威張っていましたけど、中国はそのままです。
 それから、それぞれのときにつくられるビルディングがどれぐらいあるか。それは時間を追うごとに少しずつ廃棄されて、残りが少なくなっていくから、こういうふうに右下がりになっています。そこでつくられたこれだけの量のビルディングがだんだん廃棄されて、100年ぐらいたつと非常に少なくなる、こういう傾向です。
(図40)
(図41)
 具体的絵姿というのは、次です。
(図42)
 こういうパターンです。水路があって、その中に新しく水路を別につくります。水を引き入れて、これが工業団地、これが住宅団地、農場、平地、これが湿地、これが湖です。こういうように常熟市の水辺のところに一種のイリゲーション、農業土木的な水路をつくって、オランダ型のまちづくりをしていこうということです。2100年ですから、考えてみると、日本だったら、つい20〜30年前にこういうパターンの工業団地をいっぱいつくりましたね。
(図53)
 これを通し図で見ると、こうなります。
(図54)
(図55)
 駆け足でしたが7つのチームの案をご紹介しました。

 このリポートは、あと1週間ぐらいたちますと、英語と日本語版が出されます。しかし、部数が少ないから、皆さんのところに届きません。いずれ、日本語と英語版が出たら、僕は3回ぐらい勉強しているんですが、もう2回ぐらい勉強して、もう一回まとめてお話しできればと思っています。



フリーディスカッション

司会(里見)
 ありがとうございました。
 引き続き質問に移らせていただきます。

小栗(千葉商科大学政策情報学部・大学院政策研究室)
 非常に多面的なお話なので、的確な質問ができるかどうか、ちょっと心配なんですが、共感が持てる未来像と余り持てないというのがありました。まず、最初に100年というスパンが非常に重要だなと。それを共感として申し上げたいんですが、100年前の世界の状態、特にアメリカの状態とか、その余熱でまだ我々生きているので、100年後というのを今どういうふうにイメージを持っているかということが圧倒的な影響を与えるということで、非常に興味深いお話でした。
 共感できないところは放っておいて、カナダとかドイツが出してきているプリンシプルというのが、これからの100年を決めていくプリンシプルになろうと思うんですが、そこらあたりについて、先生ご自身の100年後のそれを具体化していくために、例えば、日本の政府がやっていることは、広域行政、合併をやろうしていますね。人口5万、1万というのは無視するという考え方。アメリカは何やっているかというと、まだまだ巨大な車をつくっています。300馬力とか。北米のモーターショーはそういう車を出しています。
 それから、私はロシアの仕事をやったことがあるんですが、ある部分で今は大変な経済成長です。エネルギーを求めて動き回っているわけです。中国も同じです。そういう中で具体的に今のイメージをつくっていくために、ここを変えなくちゃいけない。変えるための方法論というのがなくてはいけない。ついでに追加すると、エスニック・コンフリクトというのは世界的に大変なことで、アメリカがいっているのは簡単に実現しないんじゃないか。
 ですから、こういうビジョンを実現していくための方法論を伊藤先生の視点でまとめていただければありがたいということです。

伊藤
 ドイツチームは、100年後になったって、そんなに町は変わるもんじゃないといっているんです。というのは、ベルリンは15世紀にできた道路パターンそのままだと。戦争で爆撃され、第1次大戦でも壊れたけれども、結構昔に戻しちゃった。だから、少なくとも都市の形態で見る限りは100年後だって変わらないといっているんです。
 それから、カナダもかなりそういう感じですね。

小栗
 日本は100年でしっかり変えちゃいましたね。

伊藤
 うん、変えた。それは石の文化と木の文化の違いで、それから燃やしちゃったから。レンガは壊れたけど、燃えなかった。日本は燃やしちゃった。ただ、これから100年というと、日本も、第2次大戦で負けたときのように簡単に燃えませんから、余り変わらないと思うんですよ。町の形は。

小栗
 ロシアやインドや中国は、どんどん変わる。

伊藤
 どんどん変わります。だから、そういう点では、ある意味でドイツというのは相当共感を持つし、バンクーバーも我々は学ばなきゃいけないことがあるけれども、ただ、そういう日本人好み、あるいはここへお集まりの皆さん好みの議論というのが本当に世界の中心になっていくかというと、違うかもしれない。意外と、石油はどんどんとれて、CO2 出したって、「いいじゃないか、40センチぐらい水面上がったって。何とかするさ」とか「津波対策やればいいじゃないか」とか、意外とそういうふうにいっちゃうかもしれないんです。だから、僕はやや皮肉的にいうと、世界の良心に訴えるようなことをしていて、気がついたら、「おまえだけ別だぞ」。ドイツも違っていた、カナダも違っていたということがあるかなという気も一方ではしますね。だから、そこは政府というのは相当クレバーでなきゃいけない。
 ドイツチームだって、これは6人の学者がつくっているわけです。正確にいうと、かつて国会議員だった男で、今コンサルタントの人。3人が大学の先生。平均年齢は65歳です。取りまとめのご婦人が50歳でしょう。ここの議論というのは、全部戦争体験の中で、ドイツはかなり反省する反省するという連中のリポートなんです。だから、これは僕たちにはよくわかる。
 それから、もう1つ、ジュリーメンバーも、平均年齢が55歳ぐらいでした。だから、そこの点では共感しますけど、これから20代、30代が育っていって、25年たったときには全然違っていくかもしれないという点は用心しておかなきゃいけないということです。
 大体そんなところです。僕は日本というのは、政府にしても全部、どんでん返しに会ったときに、サッと出すものを本当に用意しているかなと。国連決定があって、それでいこうといっても、役に立たないとか。アメリカがやっぱりきちっとイラクを動かしているじゃないかといったときに、国連、国連といっていたけど、本当はアメリカのポリシーをきちっとフォローアップした方がいいとか。そういうことがいっぱいあると思うんです。ヨーロッパの連中、キリスト教の連中というのは実は腹黒なんです。(笑)昔は日本人も、まじめで腹黒だったんだけど、まじめだけ残って、腹黒がなくなっちゃったんですよ。 個人的には、僕はドイツ、好きなんですよ。ドイツ人のように、悩み多い話を複雑に書くと小説として成り立つけれど、アメリカ人のように、やれ、行け行けドンドンというのは小説になりませんね。
 インドの提案はもう少し読み込んで、またしゃべりたいと思います。どうも失礼しました。(拍手)

司会
 どうもありがとうございました。
(了)


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