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第201回都市経営フォーラム

都市と農村・農業の新しい可能性を考える

講師:坂本 多旦    氏

事業協同組合「みどりの風協同組合」理事長
船方農場グループ代表

日付:2004年9月16日(木)
場所:日中友好会館

T 船方農場グループの紹介

U はじめに

V 我が国の社会にとって「農業・農村」とは

W 我が国の農業・農村をとりまく構造変化への視点

X 現状の農業・農村が抱える課題

Y 我が国の農業・農村の「可能性」と目指すべき展開方向は

Z 都市と農業・農村を活用した新たな国づくり

フリーディスカッション



 

 

 

 

 


與謝野
 ただいまから第201回目の本日のフォーラムを始めさせていただきたいと思います。本日は、「日本の農業と農村のありよう」について、都市と農村とを相互に活性化するという視点などから皆さんと共に考えていきたいと思います。
 お招きしました講師は、遠い山口県阿東町からお越しいただきました尊農派の志士であられます坂本多旦さんでいらっしゃいます。(拍手) 坂本さんは、ご存じの方も多いかと存じますが、独特の経営感覚で日本の農業を内から改造するということで、長年ご尽力されて来られた方でして、お手元のプロフィールでもおわかりのように、現在内閣府の構造改革特区評価委員であり、また今日も午前中、農林水産省の食料・農業・農村政策審議会の会合に出ておられますこの分野の当代第一級の専門家でいらっしゃいます。今年の日経ビジネス6月24日号で、農業再興という特集号で「0円リゾート構想、船方農場」をご紹介されておられます。現在は、事業協同組合みどりの風協同組合理事長でいらっしゃいます。
 本日は、日本の農業を実業分野のナマの声で、現場感覚豊かにエネルギッシュにお話しいただけるものと期待しております。
 それでは、坂本さん、よろしくお願いいたします。



坂本
 
ただいまご紹介にあずかりました坂本でございます。今日は、都市経営フォーラムというすばらしい勉強会に私のような若輩者を呼んでいただいて、大変光栄に思うわけでございます。
 まず、冒頭に皆様にお断りを申しておかなきゃいけません。皆様方は世界の東京を企画、勉強なさっている方でございますが、私の場合はまさにその対角線上と言いますか、中山間と言うより山間、中国山脈の頂上のまさに秘境の里で農業一筋で参った男でございまして、農業者同士は結構相通ずる言葉を身につけておるわけですが、標準語で皆さんにお話をすることが非常に難しい男でございます。お聞き苦しい点が多々あるかと思いますが、よろしくおつき合いをいただきたいと思います。
 まず最初に、今回與謝野さんの方から、この会合に来てお話を頂きたいというお誘いを頂いた時に、私の言葉だけでは多分皆さんにご理解いただけないだろうという心配を抱きました。そこで非常に古くから親しくおつき合いを願っている博報堂の南部さんという方がいらっしゃいまして、彼に皆さんにわかりやすいように、プログラムをパワーポイントで作っていただきました。 南部さんをちょっと紹介しておきます。今回大変ご苦労をかけました。どうぞよろしくお願いします。(拍手)
 それでは、時間が貴重ですので、始めたいと思います。
 今日与えられた私のテーマは、都市と農業、農村との新しい可能性というものについて、私の現状の職場の紹介とその成り立ち等を披瀝させて頂くことから始めさせていただきます。
 先ず、現在の農業の状況からご報告するのがいいんじゃないかと思います。現在、我が国の農業は、生産を基本とした農業構造でございまして、経営を基本とした農業構造への大転換が求められております。先ほど與謝野さんからもご紹介がありましたように、今、食料・農業・農村基本計画の見直しで、1月から大臣諮問を受けまして、精力的に議論が進められております。皆さんも、ご関心があるかと思いますが、株式会社の農業参入も今議論のポイントになっている問題でもございまして、これをどう転換を果たしていくかということが大きな課題でございます。
 これからますます拡大する世界の人口、世界経済のグローバル化が進展する中、我が国の農業、農村がいかなる役割を果たすかということが、今国民から問われていると私は考えております。しかし、現在の農業、農村は構造改革が大変遅れておりますので、自給率の低迷、担い手不足、耕作放棄地の増大等、農業、農村の役割を十分果たしているとは到底言い難い状況にあると思っております。
 しかし、今後スピードをもって真剣に農業の構造改革を果たすなら、農業、農村の可能性は限りなく広がり、国民に期待され、信頼される農業、農村になると私は確信しております。
 そこで、現在の農業が抱える問題点と我が国農業の可能性について、40年間にわたる農業法人経営確立の体験から、私の考えを申し上げたいということで参ったわけでございます。



T 船方農場グループの紹介

 

 まず、自己紹介を兼ねまして、船方農場グループの現状とその歩みから話を始めたいと思います。



U はじめに

 

 (図1)
 まず、地域の概要でございますが、我が阿東町徳佐地区は山口県の北部に位置しておりまして、中国山脈に囲まれ、海抜が平均で310メートル、山口市と島根県の津和野町に隣接しております。国道9号線、JR山口線が縦断しておりまして、国道315号線が横断し、人口が今8600人、自然豊かな中山間の農村であります。
船方農場グループの現状を少し写真によって説明したいと思います。
(図2)
 これが農場の全景でございます。
(図3)
 左上は酪農場の牧草地で、牧草を刈り取りまして、ロールベーラーというシステムで収穫をしているところでございます。右下が、私たち総勢60名のスタッフです。
(図4)
 私たちはお米も作っておりますし、酪農もやっております。右上は30ヘクタールの米づくりをしております。その稚苗、機械で田植えをしますので、シクラメン等の生産をしたハウスの空きを見て、稚苗の生産をいたしております。左下が酪農でございまして、搾乳牛が100頭ぐらいおります。
(図5)
 今、農育と言いますか、食育と言いますか、が流行しておりまして、いろんな大学のお嬢さんとか、中学生とかが農場に、体験農業をしたいということで、やってまいりますので、農業の楽しさ、厳しさ、苦しさをひもといているところでございます。
 今、牛が大体親子300頭おりまして、そのふん尿を有効に使おうということで、堆肥として6カ月間発酵させます。そして貴重なコンポスト商品として流通をさせて、農家に供給しているということでございます。
(図6)
 右上が私どもの生産物でございます。まずお花がございます。牛乳がございます。乳製品でアイスクリームとかヨーグルト、チーズも、山口県では我が農場だけですが、製造許可を持っております。それから、肉製品では精肉とソーセージ類、お米、おもちなどの商品を製造しております。下のハウスは、11月ごろの写真で、出荷を待つシクラメンです。大体5万鉢ぐらい、山口県では一番大きい規模で生産をさせていただいております。左側が30ヘクタールで栽培いたしましたお米でございます。
(図7)
 これは流通なんですが、私どもは2つの大きな流通を持っております。上の方は大体5500戸の顧客を持っておりまして、牛乳を週配し、お米を日配しています。今日は東京から娘が帰ってきて、バーベキューやるので、お肉持ってこいとか、アイスクリームを持ってこいとか、ヨーグルトを持ってこいという流通が基本でございます。
 下は、農場に約8万人ぐらいの方が遊びに来られますので、直売所も開設しているところでございます。
(図8)
 その生産農場と加工場とを開放いたしまして、交流も行っているわけでございます。子供たちが遊びに来て、牛にさわり、お乳を絞りというような体験です。右下は日曜日とか土曜日の写真です。お休みの日なので、駐車場にたくさん車が来ております。ここはご覧になってもわかるように、舗装もしてございませんし、誘導のラインもありません。最初の3年間は大変苦労しました。これは私のアイデア、考え方でございまして、ラインを引いて、どこかでお金を払って、お帰りなさいと言うなら、これは東京の都市も一緒。農村というのはそうじゃなしに、自分で考えてくれ。だから、ラインも管理者も1人もおりません。従って駐車料が不要となるのです。
 最初は10台、20台の車が出られなくなるのです。車の後ろに詰めて駐車するからです。日本人というのは一歩でも歩くのを嫌がってしまう。出るとき無理をして接触してトラブルを起こし「さあ、弁償しろ」と言うから、「それは自分のことでしょう。なぜ、あなたは車と車の距離間というものを考えないのか」と諭して、学習してもらいました。現在は、田舎ですから土地代はただ同然ですし、こんなにきちっと自分で考えて並べてくれますので「負担が0円のリゾート」と銘打って考えをまとめました。
(図9)
 イベントも年4回ほど行っておりまして、これは花つりゲームです。後ろにたくさん並んでいるわけです。20秒の間に何匹釣ってもいいよということで、大変人気のあるイベントでございます。下は家畜小屋でございまして、ウサギとかヤギとかポニーがおります。小家畜に触れていただくということで、管理しております。
(図10)
 これは、新米のつかみ取りのイベントでございます。ペットボトルをきれいに洗いまして、乾かしておいて、20秒間でどれだけ入れられるかを競うゲームです。どうぞ勝手にお持ち帰りくださいというゲームで、大変おもしろくて、動画でないから、皆さん感じ取れないかもしませんが、お母さんの方が必死でやられまして、うまい人はボトルいっぱいとられる方もございますね。大したもんですね。(笑)大体3分の1をつめるのが精一杯でございます。
 右側は、リンゴも栽培しており、我が町は高冷地で、雪も降るところでございますので、暖地リンゴをつくって、リンゴのもぎ取りを観光のためにやってます。花が咲くころは、テーブルを置いておくと、皆さんが勝手に自分の好きなところに持っていって楽しんでいる、こういう状況です。
(図11)
 右上の写真は交流の1つですが、農場の自走式フォーレージハーベスターです。これは2000万円ぐらいする機械でございますが、もう引退してもらいまして、子供たちに勝手に触れていただこうということで置いています。ただ、危険なこともあり、お父さん、お母さんに、我々が管理するということはできませんので、怪我をしないようにお願いしております。ほとんど怪我がないのが不思議でございます。
 下は、短大生だと思いますけれども、3日間我が農場に来まして、体験農業をやりたいということでリンゴの袋がけをさせているところでございます。
(図12)
 今まで申し上げたように、私どもの農場は、まず「生命総合産業」という考え方で農業を考えるなら夢が出てくるんじゃないか。農業の生産で外国に負けた、勝った、自給率が下がったというだけではなしに、農業というのは今申し上げたように、非常に多くの多面的な機能を持っておる。その機能をどうこれから生かしていくかという物の考え方をすれば、農業は楽しくなるんじゃないかと考えています。生命総合産業というのは私たちのテーマであり、許される範囲で農場を開放することによって、「0円リゾート」を創出し、循環型農業と顧客創造を果たしたいというのが私どもの理念です。その理念の中で特に大事な軸にしている考えは、1次産業と2次産業、つまり農業の生産と、それを食品にしお届けすること、そして消費者と子供達との交流という3次産業を一括りすることで、1次、2次、3次産業という一つのグループをつくることにねらいがあり、この1.2.3は掛けても足しても6になるということから、「6次産業」と命名しました。これは東大の今村先生のお知恵もいただきながら、この方向でまとめました。
 足し算でも6になるのですが、足し算にいたしますと、1次産業の農業がなくなっても、5で残っちゃいますから、悔しいから掛け算という単純な思いでございます。
(図13)
 船方農場の構成を一覧にいたしますと、まず1次産業の船方農場がございます。先ほどご紹介したとおりでございます。酪農、肉牛、堆肥、水稲、園芸、果樹という複合的な農業をやっております。その原乳・玄米・肉牛を「みるくたうん」という会社で食品加工します。これは消費者と生産者で作った株式会社でございます。そして、乳製品、肉製品、宅配、直売、ギフトという仕事を分担しております。
 それから、農場に遊びに来られる消費者の皆さんをお世話するということで、株式会社グリーンヒルアトーがあります。この会社も消費者にも出資参加をいただいて作っております。みるくたうんもグリーンヒルも、5万円で出資されておりますので、発言権を与えていて、取締役の決定権に参加させてやろうというのが組織の特徴でございます。みるくたうんは約700人の方が株式会社に参加している。グリーンヒルは30名の農村と都市の方で会社を設立しております。
 そのほかに、グループには個別農家5戸にも参加いただいて、みどりの風協同組合という、中小企業等組合法に基づく事業協同組合があり、9法人を束ねておるのが我々船方農場グループでございます。
 この考え方のポイントは、ここに書いてありますけれども、競争と協調のシステムを作ろうじゃないかという点です。我が国の農業は、カリフォルニアとかオーストラリアのような環境ではございませんので、競争のみではなかなか勝ち得ない。従って、1次、2次、3次産業を連携しながら、競争もするけれども、どこかでは協調するシステムを作らないと、勝ち抜いていけないという考え方で、今の実験を試みておりまして、組織型経営・顧客志向経営・マーケティング展開・多角的な交渉・就農機会の創出・地域連携・法人間連携というテーマで活動しておるというのが私どもの農場の実態でございます。
(図14)
 グループの就業者数は全体で60名おります。男性が39、女性が21。生命産業というのは男性、女性両方要りまして、今クローンということで男性だけでも子供を作れるし、女性だけでも作れるといいますが、やはり生命産業をやる私とすれば男性と女性が仲よくして、生命が発生する。これが基本だと考えております。結果として農業という生命産業は男性だけでは守れない、女性だけでも守れないという経験をいたしております。
 グループの土地でございますが、総面積が86ヘクタールございまして、今農地を預かってほしいという方がたくさんありますけれども、ばらばらと点在し、面的集積が非常に苦しい状況にあります。所有が49ヘクタール、57%でありまして、借地が37ヘクタールで、どんどん増えているわけですが、飛び地になるものですから、面積を拡大すればするほどリスクがかかってくる。これからの日本の農業はいかに面的、団地的な農地集積を果たすかがポイントです。これから皆さんが企業として、株式会社として農村に出て農業を試みられる場合も、そこがポイントになるだろうと思っております。
 グループの生産規模はご覧のとおりでございます。加工部門、交流部門は年間8万人ぐらいの方々が土曜日、日曜日に三々五々遊びに来ていただいているというのが実態でございます。
(図15)
 それでは、グループの歩みについて少し触れてみたいと思います。昭和44年に5名で、有限会社船方総合農場を設立いたしました。この目的は農業基盤のない新規就農者が農業経営者になるためには、農業の法人化が必要であると考えたからでありまして、決して家族経営がだめだとか、兼業農家がだめだとか思っているわけではありません。ただし、新規就農者というのは、農地もなければ、家畜も、畜舎もないわけですから、農村に入る場合は土地をどう所有するかという大変な苦労があるわけで、農地を所有することがなかなかできません。
 今議論がされているのが、北海道を除いた全国平均では最低50アール持てば、個人であれ、法人であれ、農業者として農地を所有させましょうという制度でございます。私どもはそういう方向もいいんだけれども、町から来た青年が農業に入って経営者になるには、農業の法人化というのは大切だということで、スタートしたのが昭和44年でございます。
 そして、昭和49年から大規模酪農による生産基盤の確立を目指しました。これからは、コストダウンを図り世界の農業に対応するために、大規模化が必至であり、
 1000頭酪農を目指していこうじゃないかという試みを始めたわけです。地域のその当時の酪農の規模は10頭が大規模という時代に、1000頭というんですから、まさに気違い扱いをされたわけでございます。
 しかし、私もその方向に向けて500頭程度までの規模拡大を進めたんですけれども、農業はやはり地域の風土と一体的な産業だということを体験いたしました。一定規模を越えますと、環境対策に膨大なお金がかかってしまう。むしろ逆にコストがアップするということも体験したわけでございます。
 そこで、昭和54年から地域複合営農による資源循環型農業に転換を図ったわけでございます。地域の農家は兼業化が進んでいきましたので、無畜農家になってしまった。だから、化学肥料のみでお米を作っている。我々は牛を集めて地域環境に問題を起こした。じゃ、その堆肥と稲わらを交換するという、地域を1つの大きな営農フィールドと位置づけて、地域複合経営をやろうと考え、地域の農家との連携に力を注ぎました。しかし、210戸から300戸の農家とのおつき合いが始まりますと、1戸1戸とのおつき合いが大変なんです。この営農方式も地域とは非常に仲よくなれたんですけれども、逆にコストがかかるわけです。
 私どもはこの体験から、我が国の農業は多様な取り組みが必要で、いろんな担い手が必要なんだ、法人だけでもできない、家族経営だけでもできない、兼業農家だけでもできないという体験を得ました。この八方ふさがりの状態をどうして打開していくかということになると、付加価値の高い農業の推進を図るしか生きる道はない。私どもの山口県阿武郡徳佐地区というのは、1000頭酪農を実践するような風土ではなかったということでございます。
 そこで、先ほど写真等でご案内いたしましたように、昭和59年から都市と農村の交流、0円リゾートづくりに取り組むことになったわけでございます。きっかけは、農協さんとの共催で、小学校3年生と、その父兄を対象として、「わんぱく農場」を開催いたしました。これは山口県の小学校の3年生の副読本で農業という科目が出てくることから、小学校3年生とお母さんに体験をして頂くこととしました。
 私も、少し不安はあったんですけれども、開催してみますと、都会から来た子供は半年も土を踏んでないと言うんです。山口県にはそんなに大きい中核都市はないわけでございまして、20万、15万、10万クラスの都市が衛星的にあるのが山口県の都市でございますが、その都市ですら半年も土を踏んでない。乳絞りを体験しますと、牛乳というのは温かいのか、こういう話をしながら子供たちが目を輝かせながら草地を走り回る。こうした姿を目の当たりにした時に、考えさせられました。農業の持つ多面的機能というのは、環境保全やダムの価値とか、いろいろあるわけですけれども、たいへん奥の深いものである、ということを痛感させられたわけでございます。
 このすばらしいイベントを、イベントで終わらせては惜しいなということになりまして、消費者の皆さんにも呼びかけまして、「生産をする農村側の私どもと、都市の消費者の皆さんと一緒になって会社を作りませんか。農村だけで皆さんをお世話するのはしんどいのですが」ということから、株式会社グリーンヒルアトーを設立したわけであります。
そこで、私どもが取り組みます農業の多面的機能を生かした「0円リゾート」とはどういうことかという点について報告しておきます。1つは、小学校3年生以下の子供を対象とした場づくりです。おじいちゃん、おばあちゃん、お兄さん、お姉さん、お母さんが来ていけないというのではなしに、場を作る時に小学校3年生以下の子供たちを基本に置いた場づくりをしようということでございます。
 2つ目が、交流の範囲は片道車で2時間以内で行おうということで、東京、大阪から来ていただくということにはならないわけです。2時間となりますと、近隣の都市から遊びにおいでよ、ということでございます。
 3つ目、ここが大事なんですけれども、農業の生産活動で経済的自立をまず果たすことです。従って、入場料を取らない0円、こういうことになるわけでございます。しかしながら、消費者の来客者には、怪我とかいろんな問題については自己責任による交流であるということで、交流を推進しております。
 4つ目は、開放する場所を明確化しなきゃなりません。草地でも、刈り取る前に子供たちが入って収穫できなくなりますと、入り口でお金を取らなきゃなりません。入り口でお金を取りますと、弁護士を置かないといろんな問題が起こってくる。これは勇気の要る取り組みでありましたが、開放の場所を明確化してお互いに思いやりのある交流に努める。以上の4点が、私ども「0円リゾート」の基本に置いておるところでございます。
 改めてまとめますと、農業生産活動において経済的に自立した場所を限定して自己責任による交流の場として開放する、ということが私どもの「0円リゾート」の基本趣旨でございます。
 こういう活動をいたしまして、結果として、この活動が農産物のトレーサビリティーを体感させる結果となったわけです。最近皆さんがよくお耳になさる言葉、生産履歴でございます。これは文章にして、この商品はどこでどう肥料を入れて何月に種をまいて、どういう農薬を使って、どういう肥料を使って作りましたというものですが、これを文章だけでなしに、体感させることになったわけです。年に1回来るというのではなしに、2時間以内ですから、年に10回とか、見に来ている。リピーターの方がほとんどです。そうすると、牛乳を買って帰りたい、お肉を買いたい、お米も買いたいという話になってまいりました。それなら加工場というきちっとしたシステムが必要であるということから、消費者の皆さんの強い要望によりまして、生産者と消費者が出資し合って、加工、販売をつかさどる株式会社みるくたうんを設立した、こういう流れになっていったわけです。
 そして、平成2年に農業を分担する船方農場、1次産業、加工を分担するみるくたうん、2次産業、3次産業を分担するグリーンヒルアトーと、3つできました。それを何かの形でグループ化していく必要があるということで、みどりの風協同組合で連携して、農業の6次産業化を図り、生命総合産業の確立を果たすことができたということでございます。
今、日本には6500の農業生産法人がございます。農業法人は1万1000法人ぐらい日本にできているわけでございます。  平成11年からは、法人協会も設立されて、私が初代会長をお引き受けさせていただいて、一生懸命仲間づくりをしました。その仲間が助け合いながら、これから耕作放棄地がどんどん増えていくとするならば、それをどう再生していくかという問題に、今取り組んでいるわけでございます。
(図16)
 そこで、この40年間にわたる体験から、我が国の農業の課題と対応策、さらには農業の新たなる活用という3点について、私の考え方を申し上げたいと思います。



V 我が国の社会にとって「農業・農村」とは

 

 (図17)
 では、農業、農村の現状からご案内したいと思います。まず、食料の自給率ですが、40%がここ4〜5年続いておりまして、それを45%にしようという目標を立てているんですけれども、なかなか増えない。先進国では最低でございます。農家戸数も、少しずつは構造改革が進んでおりますが、現在、298万戸あって、専業が約60万戸ございます。この中には高齢者の専業農家もあるわけでございますので、30万戸、半分ぐらいが50代以下の専業農家、プロ農業といった方がいいかもしれません。そして、農業法人は約1万1000ぐらいあるんじゃないかと思います。
 そのうちでここに書いてある6500法人というのは農業生産法人と言います。農地法に要件がありまして、それをクリアした株式会社、有限会社、合資、合名、農協法に基づく農業組合法人で、そうした農地を所有する法人が6500戸あるとお考えいただいたら結構です。
 大多数が兼業農家でございまして、また兼業農家の支援が国策という現状になっていると思っていただいたらいいと思います。298万戸で、非常に票がございますから仕方がない。少しずつ構造改革が進んではいるものの、なかなか前に進まない原点であると思っております。
 3番目に平均耕作面積ですが、1.5ヘクタールでございます。戦後農地改革によって1ヘクタールを分配したんですが、戦後50数年経って、まだ1.5ヘクタール。北海道は少し多うございますので、北海道を除きますと1.2ヘクタール。これでコスト農業を戦うのは、いかに大変かということです。株式会社の農業参入がむずかしいということの原因も、このあたりの1.5ヘクタールの所有にすべて起因するわけです。見渡す限り農地で、500ヘクタール、1000ヘクタールの農地があるとしても、その中には500戸・1000戸の所有者がいる、こういうふうにお考えいただいたらいいと思います。 
 4番目は、国内の食品消費の最終消費額が84兆円と言われております。そのうちで農業生産額が8兆9000億。もう10兆を切っているというのが現実でございます。
(図18)
 農業、農村の状況ですが、米は兼業農家がほとんど生産、そのほかの作物は専業農家ということです。お米だけは自給率が高いわけですが、しかし、ほとんどが兼業農家で、主業農家がいないんです。プロ農業者がいない。しかし、他の作物は構造改革が進みまして、農家の80%はプロ農業者で占めている。従って、米が大変遅れているということでございます。
 それから、農地面積は今476.2万ヘクタールございまして、その土地の利用率は100%越えていたんですけれども、転作とか大変な問題があって、利用率が94.4%になっている。耕作放棄地がだんだん増えておりまして、今21万ヘクタールあるわけでございます。
 そして、農業の多面的機能を数字で出すなら、8兆2226億円の試算となりますが、私はお金で評価する以上に、これを「命の教育的機能」としての機能を高く評価しているというのは、先ほどから少し触れてまいったところでございます。



W 我が国の農業・農村をとりまく構造変化への視点

 (図19)
 次に、農業を取り巻く社会、経済環境として、私はどういうことを視点としているかということに触れたいと思います。 
 1つは、皆さんご存じのように、高速交通とIT化が大変進んでまいりました。従って、社会的なエリアは年々変化してまいりまして、私のような山の頂上でも、世界の情報が刻々と入ってくるというすごい日本の国ができております。ということは、言いかえれば地域社会は大変小さくなっている。逆に地域経済エリアは膨張を営々と続けているということでございます。
私どもがこれからの農業を考える時には、韓国、中国というのはもう外国ではなく、地域産地という視点で物を見なければならない時代が来ていると考えております。
 2番目は、中山間地域の人口は激減しておりまして、不在地主が急増しているわけです。皆さんの中にもそういう関係者がいらっしゃると思います。息子が東京で成功した、「じいちゃん、ばあちゃん、おれ、村へ、帰らないよ」。じいちゃんとばあちゃんが一生懸命頑張れる時はいいんですが、どちらかが病気なり何かあった時にはそれが不在地主化していく、という戦 後の新たなる地主社会がこれから到来するということも視点に置かなきゃいけない。
 3番目は、農村の若者の自己の確立願望は、都市も農村も一緒でございまして、これからは農村、農業も家という単位から個人を単位とした時代になってまいりました。農業の継承は家から組織というふうに考えなきゃならないし、相続から職業に変化していると考えていかなければならない。従って、これから「農業の法人化」が非常に重要な役割を果たす時代が来たと考えているわけです。
 それから4番目は、中国経済の膨張に伴う食料消費の拡大は、私も大変気になるところでございます。世界の食料市場の価格は大変上昇していく、と考えておかきゃならない。石油はどんどん上がっているようでございますし、これは1つの大きな波として押し寄せて来るとは思いますけれども、食料も同時に、そうした方向にあり、中国の動きは農業界でも非常に気になるところでございます。
 5番目は、私の持論ですが、これからの地球は定住・再生産を基本とする調整、合意の社会が来るのではないか。これから地球の人口が遠からず85億になります。それまでにアメリカのNASAは火星に酸素を作って、「それ、移民だ」という環境ができれば、これはうれしいことでございます。しかし、そう簡単にいかぬとするならば、今でも狭い地球でございますから、日本は人口が減るとはいうものの、これに85億ですから、私は、今のままで競争社会が続くとは考えておりません。どこかで競争社会の限界が来るであろう。それと同時に、その次に競争と協調という時代がこの地球にやってくるのではないだろうか。イランにしてもイラクにしてもパレスチナにしても、大変な話になっておりますけれども、私はその時には日本の先人たちが何千年という歴史によって作り上げた定住・再生産という文化が世界に役に立つのではないか。私が大変日本を好きな原点でもございます。



X 現状の農業・農村が抱える課題


 そこで、現状の農業、農村の抱える課題ということに入ってまいりたいと思います。
(図20)
 今、5つ提示しております。最大の課題は、先ほど少し触れましたけれども、消費構造と生産構造がミスマッチを起こしていることにあります。これをいかにして解消していくか、ということが非常に重要な課題であると考えております。農産物は生鮮物でございます。従って、皆様消費者が求めるものと、我々農業者が作るものがミスマッチを起こせば、これは大変な問題でございます。私は他に2、3、4、5番と課題を提起しておりますが、これらの基本的なキーワードが、消費構造と生産構造のミスマッチであります。これは後ほど少し突っ込んで皆さんにご提案し、ご意見を求めたいと思っております。
 次に、食料の自給率の向上をいかにして図るか。今日も午前中、会議で議論されたところでございます。兼業農家が進んだということもありまして、農業生産者が大規模低コスト農業の確立ということに非常に消極的なんですね。従って、規模拡大して、コスト農業にも挑戦できるような地域ですら、1.5ヘクタールという規模で経営している。
 一方、消費者の皆さんも、少し農業から遠ざかってしまったという我が国の環境から、農業がわからない。従って、自給の不安はある。けれども、自給の意識が非常に低いと私は考えておりまして、これは食育という課題にもつながっているわけでございます。大きな課題でございます。
 次に、農産物の流通でございます。さっきから触れておりますように、消費者のニーズが多様化しており、いろんなものを食べたいということでございます。それをちゃんと作るもの、それからそれを加工するもの、届けるもの、流通というもののシステム、つまり現在の消費者と農業の生産の現場から消費者に流れるシステムに矛盾が出ている。システムが確立されていないということに課題があると思っております。
 それから、4番目は、地域農業の担い手が極端に少ない。今、大課題でございまして、全国に行政集落なんですが、8万集落ございます。そのうちで約半分の4万集落には一切担い手がいない。不在地主になり始めている。日本の農地の半分をどうするかというくらい、大変な担い手不足を来しているということでございます。
 と同時に、ある程度私ども法人の仲間とか、家族経営でも一生懸命プロ農業を頑張ってきているんですが、まだ、プロ農業者が明確ではなく、従って、プロとしての生産活動を図るためのフィールドが確立していないというのが現状なんですね。従って、6500法人ありますけれども、本格的なプロ野球ができるようなフィールドが欲しい、球場が欲しいというのが現実でございます。現状が草野球場ですから一生懸命にバットを振っちゃうと、隣のガラスを割ったといって、怒られているような状況なんです。これでは寂しい限りでございます。
 それと、もう1つ、現在農業の担い手はたいへん多様化したわけです、その農業界において、いまだプロもアマも1リーグでやっているわけです。野球界は1リーグという話も出ますが、我々は1リーグでやっているので、プロもアマもごちゃごちゃになっているわけです。従って、私は、セリーグ、パリーグ、Jリーグ化という、農業界の組織再編を図っていかないと、政策も出せないし、農業の仲間もわかりにくいというのが、大きな課題だと考えているところでございます。
 5番目の農地利用の問題点でございます。先ほどから申し上げますように、農地が担い手に集約されておらず、農家の平均耕作規模が1.5ヘクタールと極端に少ないということと、不在地主が急速に進んでいるということでございます。
(図21)
 そこで、いちいちこの5点について解説する時間はないと思いますので、その中でこれからの農業の可能性を企画する上において、そのキーワードとなる「消費構造と生産構造のミスマッチ」をいかにして解消するか、それと、もう1つが農業の持つ多面的機能を、いかに高度に活用するかであると考えておりますので、ここから少し踏み込んでこの2点について、私の考えをご提案してみたいと思うわけでございます。



Y 我が国の農業・農村の「可能性」と目指すべき展開方向は

 

(図22)
 まず、なぜ消費構造と生産構造がミスマッチを起こしたかということでございますが、皆様のレジュメの8ページと9ページを参照していただきながら、この画面を見ていただきたいと思うわけであります。

 まず、終戦直後の昭和20年代、30年代の消費と生産の構造を見てみますと、画一的な消費であって、では、生産はどうかと申しますと、ぴったり重なるわけです。これは農地改革によって全国農家1ヘクタールという画一的な農地を与え、消費者もそれでおなかをいっぱいにしたいということです。「こしひかり」が食べたい、「きらら」を食べたい、「あきたこまち」を食べたいという時代じゃない。日本の米が欲しい、米、米、こういう時代でございました。我々生産の方もとにかく画一的に一生懸命米を作ればいいんだということで、生産構造と消費構造が一致していたわけです。しかし、我が国は、皆さんのご努力によって非常に豊かになってきました。
(図23)
 外貨も持ちまして、外国から農産物を買うこともできるし、豊かになって、いろんなものを食べてみたいと、消費構造が大きく変化していきました。
 私の考え方は、消費構造の体系をここで見ますと、特産品、高価格消費といってもいいんですが、それが15%ぐらいだと思っております。それから中価格消費といいますか、良質品として25%ぐらい消費しておりますし、低価格消費として60%ぐらいを消費しているということでございます。
 大事なのは、我が国のこの消費構造の特徴は、階級的消費構造ではないなということでございます。国民的消費構造であると思うわけです。これはこれから農業を考えていく上で、非常に重要なポイントと私は考えております。私の地域とか各都道府県であろうと、地域に貴族社会が15%あって、高級品しか食べない。それから良質、一般の方が25%、底辺の方が60%いるというような階級的消費構造ではなし、国民的消費。皆さんのご家庭で年間肉を10回消費するとします。盆と正月に、上司なり社長にプレゼントする時には松阪の肉という高級品を持っていく。親戚の集まりが年間3回ぐらいあるとすると、これは「母ちゃん、日本の和牛買うてこい」。日ごろは外国の肉でいい。こういう消費構造を使いこなしているというのが、日本人の消費の特徴ではないか。
 ルイ・ヴィトンも持つけれども、手さげ袋も持つ、これは非常におもしろい消費構造ではないか。これはこれからの農業を考える時の突破口になるというのが私の思いでございます。
 そこで、現状の農業はどうであるか。農業の段階では、いまだこの消費構造の変化に対応することができない状態が大きな問題なのです。
(図24)
 生産構造の現状は高価格消費、小規模農業、これは0.5ヘクタールから3ヘクタールぐらいの規模と思っていただきたい。それが70%を占めていると思います。それから10ヘクタールから20ヘクタールの規模が20%。私ども法人でも今500ヘクタールぐらいの規模を経営している法人があるわけですが、20ヘクタール以上が10%前後であるという生産構造でありますから、それを重ね合わせてみますと、こういう形になり、ミスマッチしていくわけです。
(図25)
 あえて、生産構造を逆にしました。というのは、小規模農業の70%は、どうしても高価格消費を期待する規模なんです。従って、日本の農地のほとんどが高価格生産をしているわけです。しかし、日本の生産物の2分の1は、消費構造の中に入っていますけれども、残りの2分の1の消費構造の中に入らない農地は農政なり財政で維持する。これは食糧安全保障という概念ですけれども、そうした農地になってしまった。従って、耕作放棄地が増えているというのが、私は、今の日本の最大の課題であるということではないかと思っておるわけでございます。
 そこで、ここで生産構造とのミスマッチをどう解消するかでございますが、なかなかしんどい話になるわけです。まずは、農業の構造を改革して、すべての農地を下の三角形に交ぜ合わせてしまえばという意見があります。私は、冒頭に申しましたように、1000頭酪農を目指した。しかし、日本の風土はそれを受けつけてくれなかったという経験からもわかるように、大規模農業、300ヘクタール、500ヘクタールの農場を作るというのは日本の風土では難しく、従って、すべてを下の三角形に混ぜ合わせるのも難しいわけでございます。
(図26)
 そこで、今、消費構造からはみ出し有効利用が可能な部分約半分を、農地の高度利用のためにプロ農業者なり、コスト農に挑戦する農業者へ農地を貸すなり、所有権を移転していこうではないかということでございます。
(図27)
 それと同時に、消費者の皆さんも、日本の風土等を考えていただかなくてはいけません。食育や我々のような都市と農村の交流とかを実施して、日本の農業とはこういうことなんだということを知ってもらい、少し高いものをたくさん食べていただくというふうにして、下の消費を上に流動させることはできないだろうか。私はそれを現場で、今日まで、実践しています。そうすれば、消費構造と生産構造が少しずつ歩み寄って一致するのではないか、というのが私の考え方でございます。
 これを果たすにはどうするかということで、2〜3、提案をさせていただきます。
 まず、農地の流動。先ほど申しましたが、私の提案は、農地が今477万ヘクタールあると申し上げました。これを経営農地、自給・交流農地、環境農地の3段階に利用形態を明確に区分する必要がある。これにはいろいろな難しさはあると思いますが、どこかで我々は決断しなきゃならない。そして、それを団地的な利用を前提として農地の流動化を図ったらどうだろうかということでございます。
 特に、経営農地として位置づけた農地については、プロ農業者がそれを活用して、高度な生産を図ることが必要でありまして、私は、現在の農地の80%といえばオーバーになるかもしれませんが、日本の農地の70%はプロ農業者によって生かしていける農業ができるんではないかと考えております。
 経営農地というのは原則では転用を禁止して、所有権と利用権という権利を分離することはできないだろうか。これは農地法を抜本的に変えなければできない課題ではありますけれども、分離すべきではないか。
 自給・交流農地というのは、皆さんのような都会の方々が、「いや、おれもひとつ自給農業やってみたいよ」ということで、50アールの農地を所有しますと、扱いが大変です。雑草も生えますし、管理が大変で、維持できません。従って、転用は規制をしなきゃいけませんが、5アールとか、3アールでも、皆さんに所有させたらどうかというのが私の意見なんです。そして、子供たちと、土曜日、日曜日に村に行って、自分たちが食べる農業を自給すれば、私は自給率が相当上がっていくのではないかという考え方です。
 そして、環境保全の直接支払いは、これからの大きな議論のテーマでございますが、棚田とか、いろいろありまして、これをすべて維持するのは無理だと思います。これは国民の皆さんが許してくれないと思います。自然環境、災害、すべてのものをよく分析して、ここはどうしても必要だという国民の合意がとれれば、これは税金で守った方がいいと思います。わかりやすいと思います。従って、私は明確な農地の使い方をすべきであると思います。
 先ほど、70%から80%の農地を経営として守るんだよと申しましたが、これについて私の考えを申し上げますと、私は、3つの農業構造の形態を確立する必要があると思います。
 1つは、付加価値化農業を確立する。「私の米」というような米づくり、都市近郊や低コスト農業に不利な地域、しかし環境としてそこでなきゃとれないような作物です。これは生命産業のおもしろしさでございまして、「私の米」として地産地消であるとか、付加価値の高い農業を推進すれば、相当可能性が出てくる。場合によっては中国へ向けて輸出をする。私たちの仲間にもリンゴ1個1000円で、上海なり台湾で売っているわけです。中国なんか、「日本人が食わんぐらい高いものを持ってこい」と言っているようでございます。今、中国では1000万円以上の年収の人が、それは皆さんの方がよくご存じと思いますが、1億人を超して2億人ぐらいいるだろう。年収1億を超すような所得者が1億人出るだろう。万元戸が。となると、ルイ・ヴィトンの世界が来るのではないかと、私は思っているわけです。
 従って、中国に対して我々の匠の技を生かす。これが日本の文化だろうと思う。技術にしても、技というものが日本人の力だろうとやっぱり思いますので、それを考えるなら、これから楽しみになる農業もできるんではないかということです。
 2番目が、計画生産農業を確立するということです。例えば、お米でいったら皆さんにわかりいいのは、一番上の付加価値の農業というのは魚沼の坂本の米とか、そういう位置づけ。そして、計画生産農業というのは新潟の米、何々町の米とかいうように、地域でやりながら、消費者というか、量販店、その他販売業者と直接契約して生産したらどうかということでございます。きちんと計画生産をしたらどうかという考え方でございます。
 しかし、それと同時に、3番目に、やはりこれは「無理だよ、坂本」とよくいわれるんですけれども、大規模農業にも挑戦をしたらどうか。日本の農地の10%と言うべきなのか、20〜30%は、大体500ヘクタールから300ヘクタールを一団地とした土地利用型農業でも可能だと私は思っております。不可能ではないと思っておりますので、大規模な平坦地域、特に北海道、東北等になるかもしれませんが、大規模な300ヘクタール以上の低コスト農業を確立する努力に挑戦する必要が、私はあると思います。
 日本の風土だから仕方がないのですが、全て高い特産を作るから、皆さん食ってくれと言っても、現実は自給率40%ということでございます。私は挑戦せねばならんと考えております。
 例えば株式会社によって500ヘクタールを単位とした農業生産法人を設立します。地主500戸から利用権を法人に提供してもらいながら、株式会社を作る。その権利関係を、経営を任された経営者が60%、土地を提出した株主が40%持てば、生命産業としてのバランスが非常にいいのではないかというのが、私の体験から出た数字でございます。
 それから土地の流動ということにもこれから努力しなきゃいけません、日本はまだまだ「おれの農地であって、財産じゃけの」。皆さんのふるさとにある農地も坪10万円で売れるんじゃないかと、東京におられると思われるかもしれませんけれども、その辺を売らずに、皆さんは村で農業をやりたいという若者にその土地の利用権を貸してもらいたい、というのが私の思いでございます。
 それと同時に、この消費構造を改善して、消費構造を生産構造に整合するためには、消費者の協力がなくてはなりません。先ほどから、くどく申し上げているかもしれませんけれども、食育や都市と農村の交流、農業の付加価値化、自給農業を推進することによって、先ほど説明申し上げましたが、消費者が、少し値段は高いかもしれませんが、そちらに移行していただけるなら、日本の農業には夢が出てくると思うのです。
 すなわち、消費構造と生産構造のミスマッチという我が国最大の課題を農業者と消費者、要は国民の努力によって解決し、消費構造と生産構造を合致させることができれば、安全で安定的な供給システムが確立されてくる。従って、食料の自給率は50%は不可能ではないと考えているわけでございます。
 先ほど日本の農業の現状でお話し申し上げましたけれども、日本の自給率が40%が低いと見るか、適当と見るかというのはなかなか議論がございます。カロリーベースで。金額ベースですと、70%、自給しているわけですが。
 ちなみにご報告申し上げますと、人口1人当たりの農地面積がどのくらいあるか。先進国で見ますと、我が国は人口1人当たり、山国で農地が少のうございますから、3.7アールしかないんですよ。英国が約28.6アールあるわけです。約3反。約30アールあるわけです。ドイツが20.6アールですから、ドイツは少し少ないですね。フランスは、1人当たり50アールもあるんです。
 従って、自給率というのはここに大きく影響はしておりますが、これから食糧安全保障という言葉をどこで使うのかという課題もあります。ただ、戦争という事態になりますと、これは大変なことでございまして、食料が止まるという問題以前に、人類がどうなるかという問題もあるわけでございます。ここではテロの問題とか、いろんな地球的気象災害が問題になってくると思うのです。今年は「台風よ少し東京見学に行けよ」と電話をかけたいぐらいでございまして、我が方へ、しつこく参りました。風速55メートルで、家の屋根は飛びますし、リンゴなんか70%落ちちゃいましたよ。1年かけて一生懸命に育てて、朝9時から3時まで6時間の間にです。これは我が農場だけではない、日本列島でございますので、北海道なんて大変な風が吹いたようでございます。
 異常気象となると、今アメリカでもハリケーンが70メートルとなりますと、大変でございまして、東京におらないと、皆吹っ飛んでしまいますね。これから地球の温暖化が進めば、多分台風の風速はどんどん上がってくるだろうという気がいたします。そうしたもろもろのこともあって、これからの食料に対して、人口も拡大する中で、我が国民も、「いや、外国から金さえあれば持ってこれるよ」という発想も大事だと思います。すべて自給はできないわけですから。けれども、できる努力はするというのが国民、また我々農業者の使命であると思っております。



Z 都市と農業・農村を活用した新たな国づくり

 

 次に移りたいと思います。
 農業の多面的機能を活用した新たな国づくりについての提案であります。私の40年にわたる農業経営の確立の体験は、農業の持つ多面的機能の限りない可能性を私に教えてくれました。
 私は、この農業が持つ可能性を農業生産のみにとどめるものではなく、これは皆さんの大きなテーマでございますけれども、この多面的機能を活用した新たな国づくり、都市づくりに、生かすことができたらという思いを持っておるものでございます。
 そこで、皆さんにお笑いいただくのは覚悟の上で、私の思いを提案させていただきたいと思います。
 1つは、「東京農場構想」でございます。東京の都心、例えば東京湾に中央防波堤埋立地がございます。400ヘクタールぐらい今埋め立てていらっしゃいますが、先ほど與謝野さんとお話しした時、今の技術を持てばどんなところにも100階建てのビルは建てられるよ、というお話があったんです。まだまだあそこの土地は安定したものではないとするならば、その一部に船方農場を作ってみたらどうだろうというのが東京農場構想でございます。
 今、日本列島、親も子供も荒れておりまして、目隠ししてカッターナイフで首を切る。どう親として、どう国民としてそれを受けとめるか。これは教壇で教えられるんでしょうか。命というのは、そんなんじゃないと思うんです。自然の中で、体が五感で感じる体験だと思うんです。私の農場へ神経質なお母さんが来られまして、ウサギにさわれば汚い。ティッシュを出されて、せっせと子供の手をふき、転んだら、さあ大変、救急車というお母さんもいらっしゃいます。私は、それに臆さず申し上げます。「お母さん、子供をペットで育てちゃいかんよ。」「もうこの子は嫌になったと言って、たたきつけ、踏みつけ、これは人間のなすわざじゃないよ。そして、無菌室で育てちゃいかんよ。1歳半でようやく歩き出したら、たまには船方農場へ来て、転んで土を食べさせなさい。免疫力をつけたらどうですか」と。これが正しいかどうかわかりませんが、私はあえてそれを申し上げます。非常に怒るお母さんもいらっしゃいますが、また来ていらっしゃるところを見ると、やはり心に思い当たるものがあるんではないか。
 そういうさまざまな経験から、東京農場というものをどこか一角に造る。確かにあそこの汐留のビルもいいでしょうし、今度東京の丸の内開発もすばらしいと思います。大いに開発してもらうけれども、少し余裕と遊びを持つ。世界の東京を皆さんが企画されなければ誰もできないわけでございますので、東京都民、そして国民、企業の皆さん、私ども農業者も含めて、東京農場という、大都市のオアシスづくりに挑戦する時代が来ているのではないでしょうか。
 私は、東京ディズニーランドに2回行きまして、感動いたしました。すばらしいですね。これはすばらしいソフトをお持ちになって、ロボットというすごいシステムで我々を楽しませ、都民を楽しませ、活性化させている。しかし、その対角線上にあるのが、命のテーマパーク東京農場というのが私の思いであります。
 この東京農場を思いついたのは、私が、平成8年から東京へ月に3回から4回出てまいります。日比谷公園をよく歩いたものでございます。現在はそんなことないかもしれませんが、当時は一生懸命20人ぐらいのおばちゃんが落ち葉を集めていました。それが生ごみなので困っているという話を聞きました。6億か7億ぐらいの管理経費がかかるとおっしゃっていました。それを農業者である私から見ると、貴重なるコンポストなんです。貴重品ですよ。日比谷公園の一角にお花畑がありますけれども、生産がないと意味がないと思います。少しでも自立するということです。それがPFIという考え方にもつながっていくのかどうかわかりませんけれども、私はそうした1つの実態を見たとき、東京も大変だなと思いました。一方ではすばらしいビルや施設が建つが、一方では、これを維持なさるのは大変だろうな、日本全国からお金を集め、いや世界中からお金を集めなければ守れないだろうと。
 又、ちょうど私どもの法人協会の事務局が汐留の新橋駅の烏森から入ったところにございまして、先般、東京39.5度という時に、あの新橋駅を降り外に出た途端に熱風でしたね。皆さんよくこれで生きているなと。部屋に入れば、すごく立派な環境ですけれども、ヒートアイランドは皆さんの課題ですね。これから大変な問題を起こしてくると思いますよ。だから、これは皆さんが真剣に考えていかれることが必要じゃないかな、ということです。
 次が、今ヒートアイランドの話を出しましたけれども、東京ではビルの屋上緑化というのが法的に義務づけられていらっしゃるようでございます。私は、確かにお花畑もいいと思います。それもすばらしいことですが、「天空のファーム」を皆さん作ってみられてはどうでしょう。ビルの屋上で枝豆と、ビール麦を作って、ビルビールを作ったらどうかと提案したことがあるんです。「おまえ、ばかか」と言われましたけれども。天空のビルの屋上の麦畑で枝豆を食べながら、地ビールを飲んだらさぞ楽しいんじゃないか。
 食べ物から環境に入るなら一番わかりいいと思います。毎日ビルの地下でカンペイ、カンペイとビールを飲んでいらっしゃるけれども、1杯その10倍ぐらい値段がしても楽しいじゃないですか。東京の環境をビールで考えるということも必要でしょう。お花畑もいいんだけれども、食べ物にも挑戦してみてほしいな、ロマンチックな大変楽しい東京ができるんじゃないかと思っているわけです。
 ある人にご相談したら、「坂本さん、冗談じゃありませんよ。この東京の空気でビルの屋上で作ったような麦や大豆は食べられませんよ」とおっしゃいますから、「あなたはその空気を毎日吸っていらっしゃいますよ」と申し上げたことを懐かしく思い出しているところでございます。(笑)
 3点目は、これは農村の問題なんですが、都市の皆さんの協力なしじゃできないんです。先ほどから不在地主という言葉を出してきました。農村はこれから空き家が大変出てくるわけです。皆さん、おじいちゃんとおばあちゃんをふるさとに置いておられる方は、しっかり面倒見てあげないと大変なことです。台風の50メートルでも来たら大変ですよ。瓦が飛び、家の窓が飛んでいくと、70、80のばあちゃんとじいちゃんだけでは対応できなくなります。3世代同居用の大きな家ですからね。これは田舎のことじゃなしに、皆さんのふるさとのことでございますから、これを放置することは許せないと思うわけでございます。
 そこで、国民みんなで、「農地つき賃貸セカンドハウス」を作ったらいかがかということです。都市の皆さんは村に賃貸のセカンドハウスを持つ。今年は1年間は北海道だよ。そして、自給農業やるよ。来年は沖縄だよ。これは楽しい。
我々農村も、都市に少し安い賃貸マンションを作っていただいて、東京にセカンドハウスを借りて、国民の大多数が2つのハウスを持って、都市と農村を行ったり来たりしたらいかがでしょうか。
 1時間半あれば北海道−東京間。1時間半あれば沖縄まで行くのですからね。こういうすばらしい高速交通網とITの時代ができた以上は、これを国づくりにぜひ生かしてほしい。これから経済大国日本はセカンドハウス1つ確保する。それも所有ではだめだと思います。農村の別荘を持って所有しますと、地域の管理、台風の管理、水の管理が、大変でございますから、賃貸にして、それは我々農村側で守って差し上げます。そうして我々も都市へ行くということでね。これも我々これから取り組む時代が来ているのじゃないか。
 というのも、私は平成8年から月に3回なり4回、東京に行ったり来たりする中で、私は東京に3日間おると、疲れて疲れて、なかなか慣れないんですね。人にぶつからないように歩くというだけでも、疲れちゃうんです。ふるさとがものすごく恋しくなります。そして帰って10日もしますと、我々が会えるのはイノシシかキツネかタヌキという秘境の里ですから、体がすぐにリフレッシュしてしまいます。と、今度は銀座のチカチカとするネオンが恋しくなるんです。そうすると、また東京へ3日ぐらい来て、また農村へ20日ぐらいおる。これは、最高の生活なんです。(笑) だから、私は東京が、大好きになりました。それ以上に我が秘境の里ふるさとが好きになっちゃったんです。これは私の体験なんです。そうしたことから、農村も人口の減少で困っていますし、流動的町民といいますか、村民というのも、これから必要ではないかというのが私の思いでございます。
 ボチボチ時間が参りました。大変好き勝手でまとまりのない話になったと思いますが、皆様のご清聴に心から感謝を申し上げますと同時に、最後に、農場に遊びに来た子供とお母さんのメッセージをお伝えして、話を終えたいと思います。


[動画上映]

 きょう、船方総合農場に家族で行きました。シクラメンや緑がいっぱい、牛もたくさんいました。おじさんが乳絞りをしないかと言うので、初めて乳絞りをしました。牛のおっぱいは大きくて、絞った牛乳が温かいのにはびっくりしました。私の知っている牛乳はいつも冷たいからです。
 おじさんが、「どうして牛がいつも牛乳を出すのか知っている?」と質問しました。私にはわかりませんでした。おじさんは、「牛は毎年子牛を産むからおっぱいが出るんだよ」と教えてくれました。ママが「本当ですか」と驚いていました。そして、「牛乳は大切に飲まないといけないね」と言いました。

 車いすに乗った特殊学級の男の子が農場に遊びに来ていました。彼は農場の牧草地に着くなり、みずから車いすから飛びおり、自分の肌を草にこすりつけ、奇声を発していました。それは男の子の喜びだったのです。自然は本当にいろんな人たちを喜ばせてくれる力がありますね。

 男の子がぬいぐるみを抱き締めるように、ウサギをギュッと抱いたら、ウサギが抵抗し、男の子が引っかかれている。突然、その男の子は頭に来たらしく、ウサギの耳をつかんでコンクリートの道にたたきつけ、殺してしまいました。そばにいたその子の母親は、その光景を見ながらも子供をしかりません。信じられないことですが、事実です。
 今の日本人に命の大切さ、尊さを教えるのは一体誰なのでしょうか。改めて教育しなければならないと痛感しました。


 これで報告を終わりたいと思います。ご清聴大変ありがとうございました。(拍手)



フリーディスカッション

 

與謝野
 坂本さん、現場感覚溢れるご講演を頂きどうもありがとうございました。
 それでは、お時間が30分ほどございますので、今日のご講演に対しての、何でも結構でございます、ご質問をいただければと思います。
傍士(日本政策投資銀行)
 今日は大変有意義なお話をありがとうございます。
 質問なんですが、今日いただいた紙の中のX−8番で、私、聞き漏らしたかどうかわからないんですが、こうした坂本さんのような取り組みに対して、支援する、応援する農業政策というものが、多様な政策ルートの確立を図るとありますけれども、その確立に対して、スピード感がなかったり、あるいは多様化を阻むというようなことが書かれていますが、それは一体何が阻んでいるのか。あるいは地方分権の時代であるがゆえに、という意味は一体何であるのかをお聞きしたいと思います。
坂本
 これは、いい悪いということは私には言えませんが、「農村」という分野では、特に政治面、行政面でとらえ判断します。従って、そして経営面としての物のとらえ方が非常に遅れています。冒頭にそれをお話しして入ったわけでございますが、生産政策という政策で農業を守っていくんだという、食料自給、国民の食料供給という概念がどうしてもまだ続いているわけです。
 しかしながら、日本はグローバル化して、FTAとか、WTOという国際社会の中で生きなきゃ生きられないという現実との狭間で揺れているわけです。これは政治家も行政も農業団体も全部揺れているわけです。そこに最後の矛盾が出ていると言い切れるかどうか、これは今後もしばらく続くと思います。今までは、国から都道府県に行って、都道府県は市町村に行って、市町村から団体に行って、物事が動いていくというシステムになりますから、「私はこういう農業をやりたいんですよ、こうしたいんですよ」と言った時、多数決がまず先行して地域が動き始めるんです。
 こういう言い方をしていつも嫌われているんですが、あえて勇気を持って誰かが言わなきゃいけないと思っていっているんですが、市町村の議員が絡みます、首長が絡みますね、票になるかならないか。悪いことでないんですけれども、その現実が今度は県に行き、農業団体も自分の利益になるかならないかという前提で動いていくわけです。そこには長い歴史の中で、食料政策ということで日本の農業を作ってきたという前提があるわけです。
だから、いい悪いは別としても、国際社会の中で、これほどグローバル化し、経済においてはもう国境はないわけです。これが正しいかどうかわかりませんけれども、いろんなルート、要するに地方分権だから、首長、市町村長に任せればいいという考え方、当然正しいと思います。都道府県の県知事に任せればいいじゃないかという意見もあります。それもいいけれども、いろんな選択肢がないと、この突破口は抜けられぬのじゃないかというのが私の意見です。これは首長さんには随分怒られて、「おまえ、何考えているのか」と言われますけれども、地方分権であるがゆえに、これからいろんなルートがないと、農業界は次になかなか行けないんじゃないでしょうか。
 的確な答えになってないかもしれませんが、いろんな政策ルートを持つことによって、個々の新しい経営構造という農業構造に切りかえるためには、国が直接絡む、そして県知事が絡む、市町村が絡む。またちゃんと下から市町村、県、国と絡むといういろんなルートが必要ではないかということでございます。これは現実には難しい、重い政策になるかもしれません。
水谷(日本上下水道設計梶j
 先ほど輸入農作物50%という数字が出されましたけれども、輸入も50%認めようというんだったら、それが80だとか、90だっていいじゃないかとならないかと思うんです。食料安定保障ということはもうなくなるということですね。だとすれば、確かに輸入すれば値段も安くなるだろうし、だから、80とか90でも、その辺のところはいかがですか。
坂本
 自給率90、80という意味ですね。
水谷(日本上下水道設計梶j
 反対です、輸入率が80、90という見方です。
坂本
 それは国民の経済的豊かさを追求していけば、シンガポールみたいに、100%輸入というのも悪くはないんですが、これからは考え方によっていろいろあるだろうと思います。そういう考え方でも私は大丈夫だよという考え方も当然あるでしょうが、私は農業者ですから、農業をやめましょうということは死んでも言えませんので、(笑)私はせめて50は理解してほしいと申し上げているのです。少し高くても協力してくれぬか、こういうことです。
 私の考えは、これからいろんな気象変動とか、それが本当かどうか皆さんの方が情報をよくご存じと思いますが、中国がブラジルに何千ヘクタールという土地を押さえているという噂を聞く時に、長期的に見ていく場合は、元が自由化されて、元が上がっていけば、価格は日本の農産物と変わらなくなる。一方日本の農産物が努力して価格を下げ、外国の輸入農産物が上がっていけば、どこかでは並ぶ可能性だってある。そうした時に、次はロシアに行くよ、今度はどこ行くよというように、安く農産物を持ってくることができれば別ですけれども、中国の13億の人口が日本のように飽食をし出すと、これは半端じゃないですね。誰が中国の胃袋を満たすのかという問題も、国際社会には出てきて、輸入には頼れなくなる時もくるかもしれません。これからは思いであって、私はあなたの思いを否定しません。それが国民のためになるのならそれでいいでしょうし、しかし私どもはある程度、50%ぐらいは確保しておいた方がいいんじゃないかという前提で、現在農業に取り組んでいるということで、決して、90%、100%や、シンガポールを否定しているわけじゃありません。
水谷(日本上下水道設計梶j
 50%という数字を出したのは、思想としてよくわからぬということです。だから、どちらにすべきなんでしょうね。だとすれば、本来日本で自給率を80とか90にする方法はあるのかということです。
坂本
 難しいというのが僕の考えですね。食生活の環境を変えれば自給率は80でも持っていける可能性があると思いますが、今ほど豊かな食生活をしますと、日本で自給50%が限界かなと思っています。そのかわり、何かあって外国から入らなくなれば、イモを食べたり、戦後のようなことはないと思いますが、なんとかしなければなりません。今日も農林省でそれを示したんですが、昔はご飯を1日に1人茶碗で5杯食べていた。今は3杯になっちゃった。カロリーベースですから。
 私は、思想はありませんけれども、50%ぐらいはせめて自給するという考え方で、我々も努力しなきゃいけないと思っているということです。
奥村(株式会社イリア)
 先程来、大規模農地が日本でとれないということだったんですが、土地利用政策というのが日本で非常によくないと私は考えているんです。その辺に対して、都市計画とか国土計画とか、そういうところに文句を言っていこうというか、それを変えていこうという動きは、されようというご意思はございますかというのが1点。 
 それから、もう1つ、先ほど土地の所有と利用を分けたいとおっしゃられたので、これが都市においても都市経営的に考えると、同じような問題があるんじゃないかと考えるんです。いい土地利用というか、有効利用するためには、今みたいな細かい所有をしていてはどうしようもないというところがありまして、同じような問題、同じような考え方ができるのかなと思って、興味深く伺いました。その辺、土地の所有と利用をどういうふうに分けていったらいいか、私もちょっと具体的な方策として苦悩しているんですが、そこら辺のお考えをもう少し聞かせていただくといいのですが。
坂本
 土地政策でございますけれども、日本は島国で、平地が非常に少ない我が国ですし、何千年という定住民ですから、土地に対する怨念に近い執着があるわけです。これはいいことです。私のおやじがいつも「おまえの百姓は間違っている。法人で農業やるなんてとんでもない。百姓というのは息子のため、孫のためにやれ。山林でも境に行けば、足で境の石を隣に蹴って、人の土地を取れ。そして、次につなげ」。(笑)それは犯罪ですけれども、そういうことは、東京でも一緒でしょう。東京なんか1センチ、2センチで、「この野郎」ってことになるんじゃないでしょうかね。これは日本の文化ですから、本当に難しいと思います。
 今まで政治をなさる方が随分挑戦なさってきているわけで、農業は特に農地問題については議論されてきたんですが、国としても、これからは土地政策を抜本的にきちっとしていかないと、どうにもならぬというお考えはあるようです。まだ抵抗勢力というのがあるのかどうか知りませんけれども、これからの大きな課題と考えています。
 何とかしなきゃ次に行けない。バブルの時代は終わりましたし、日本は新しい国づくりをしなきゃならないんじゃないですか。土地を買っておけば5年たてば10倍にはね上がるという時代ではないということから、いよいよ本格的に日本の土地政策を組み立てる時代が来ているのではないか。これを農業者として農地問題からも少し感じ始めているという程度でございます。一農業者ですから、お許しを。
 土地の利用と所有の分離ということは簡単に言うんですが、これは現農地法では絶対できない実態でございまして、憲法も含めて、29条等がいつも引っかかってくるんですが、ボチボチ農地法を抜本的に見直さないと、どうにもならなくなってしまっています。自作農という言葉で所有者が物を作りなさいと言いながら、今の農地法は全部バイパスで運営しているんですよ。農地法本体じゃないんですよ。バイパス、バイパス、その上にバイパスを作っちゃって、我々農業者でもよくわからないようなことになってしまっておりますので、私は農地法というものを一度国民で議論する必要があると考えています。
その中で、所有というのは、私の考え方では、国民の多数が所有するということが正しいんではないか。昔のように地主がいて、字が書けないような百姓がいて、そして小作、地主の関係という時代は日本はとっくに過ぎておりまして、字が書けないような者もいないし、きちっとした物の分別がつく国民であります。ですから、私は、所有は多く、利用を小さくという考え方でございまして、基本的には農地については利用と所有を分離するということは、農地法の抜本的改革というところにつながっていると思っております。
 今日午前中の調査会で、今回は自給率と食育という議論をさせていただいて、10月は農地法の議論に入っていきますので、相当いろんな議論が出ると思います。株式会社になぜ農地を持たせないのか。これは随分前からの大議論でございまして、この辺も含めて議論が進んでいくのではないかと思っています。勉強不足で的確な答えになっておりませんが、ボチボチそういう、所有と利用を分けて、所有は多くの国民が農地だって所有していいんじゃないか。その利用は、どこか農地バンクみたいな調整する機能があれば、次にいけるんじゃないかと思っているんです。
山口(鹿島建設株式会社)
 本日は興味深い話、ありがとうございました。
 1点、後段で出てきました天空農場のお話、私も非常に興味がありまして、調布市長と話をした時に同じようなことを言われたんです。「排気ガスが迫っているところで、農業ですか。だれが食べるの」みたいな話が出まして、そのとき私は回答に窮したということがありました。ちょっとアイデアをいただければと思うのが、排気ガスまみれの東京で、ダイオキシンの問題なども取り上げられている中で、安全性がある農作物、それと一般の方も参加して、簡単にできる農作物、そしてでき上がったものを食べて非常においしい。安全で簡単でおいしい東京向けの農作物というのは一体どういうものがあるのか。何かいいアイデアがあれば、教えていただけますでしょうか。
坂本
 南部君もそこへ来ていらっしゃるんですが、いろいろ議論したことがあるんです。私はやはり夏は枝豆が作り易いんじゃないかと思うんです。冬は麦。一番いいのはブドウとか果樹ですが、建築に経費がかかると思うんです。高いところに膨大な土を上げなくても、水耕栽培もあるのはあるんです。それはいろんな方法があります。水耕栽培も水ということで、建築のコストでバランスがあるでしょうが、果樹なんかございますね。それから、麦にしても、大豆にしても、落ち葉が風で飛んだ時、周囲の問題等をどうするのかを考えなければいけません。それは路地のケヤキの落ち葉も一緒でしょうから、それをまた集めて堆肥にして使えばいいじゃないかと思います。それは、ひとつのビルがやったんでは可能性がない。難しいと思いますので、一番いいのはお花でしょうけれども、小じんまりして、これでは主張にならないと思うんです。食べ物で胃に入れなきゃ。今あなたが上司に言ったら、「おまえ、そんなもの食えるか」と言われた、そこが大事と思ったんです。ここが大事。だけど、皆さん、本当に吸っているんですからね。我々は、普段、山の秘境の里ですからきれいな空気を吸っています。だけど、東京の空気を吸って、帰って胃が悪くなるということはないから、東京の空気は立派な空気ですよ。(笑)
 それと、生命産業の恐ろしさは、価格じゃないわけですよ。宮崎駿さんですか、「風の谷のナウシカ」、樹海を生命で再生していくんだというメッセージですね。なぜ中央防波堤埋立地と言ったかというと、あれは東京の樹海ですよ。東京都民の欲望の捨て場ですよ。好きなことをして、全国から物を集めちゃって、そのぜいたく品を廃棄物として捨てておるわけですから。この死の地をコンクリートで固めるのは誰でもできる仕事だと思うんです。知恵も何も要りゃせんと思うんですよ。
 これを命で再生して、そこの中にビルが建っていくという、こんなこと言って、「おまえ、何を生意気なことを言うか。主催は日建設計だぞ」(笑)と怒られるかもしれませんけれども、私みたいな農業者だから言えるんですよ。だから、私はそうした遊び心というものをぜひ東京の人に持ってほしいのです。やってくださいよ。ビールを作って飲んでみてくださいよ。アサヒビールに言ったことがあるんです。一緒にやらぬかと言ったら、笑われましたけどね。だけど、楽しいと思うよ。そのかわり、環境ビール、ビルビール限定で高く売ればいいじゃないですか。
 決して僕は不可能ではないと思うんです。今の技術を駆使すれば。それに新しい技術が生まれてくるんですよ。ビルの上で麦を作るということ、命を作るということが人間以外の植物と大東京がどうかかわっていくかという新しい技術研究テーマもできるじゃないですか。よりおいしいものをどう作るかということが楽しい発想になるんじゃないかということです。
だから、僕は何でも作れると思います。東京の丸の内に100階建てのビルを建てて、その中で1階は豚小屋、2階はニワトリ、3階は酪農、4階は米と。光ファイバーを使えば全く密閉でできるんですよ。その技術というのはNASAへ売ればいいじゃないですか。それは慶応大学の先生が何か研究していらっしゃっているみたいで、宇宙に行くということは、それはそういう問題でしょう。だから、大東京のど真ん中でそういうビルを建ててみられてもおもしろいんじゃないかと思うわけです。それが食えるとか食えぬ、それじゃ、食えるようにするところに技術開発がある。すみません、要らぬこと言って。
與謝野
 ちょっと本筋に戻しまして、1つだけ最後に質問させていただきたいんです。最近テレビのドラマでもいろいろやっていますが、夢と情熱を持った若者が農村入って農業に就きたいと思っている方々が現実でも結構いると思うんです。それは都市と農村の交流という別の意味もあります。それができる仕組みというのが、農村の「改革特区」で大分現実化したようです。その辺の現状と将来の問題は、それなりにかなりあると思いますが、この点についてのお考えをお聞きしたいと思います、よろしく。
坂本 今、與謝野さんが非常にいいポイントを指摘なさっていますが、私が船方農場を作ったのは、まさに與謝野さんの指摘を実現しなければいけないということから、法人化ということを始めたんです。当時は農業イコール家業イコール相続ありきなんですよ。物すごい抵抗で、断腸の思いもしました。日本の農村というのは裁判に勝って村の生活に負けるという体験もしました。
 というのは多数決で負けちゃうんです。ここでこういうことをやったら感情論になって、650の反対署名まで私に示されて「村から出て行け」と。私は村で生まれたんですよ。船方農場は新規就農者を受け入れる農場にしようということから創ったのですが、今60名のうちで地区外から来ているメンバーで、43人は全く非農家の青年です。この間の盆も、「社長、ちょっとふるさとへ帰ってきます」「おー、君は東京な、大阪な、広島な、名古屋な」ですよ。船方農場のふるさとは東京なんです。大阪なんですよ。名古屋なんですよ。そういう時代が来ているという現実もあるわけです。楽しいことなんです。
 だから、ふるさとと言えば、皆さん、大抵、阿東町のような山の中をふるさとと言いますが、私のところの農場は東京がふるさとなんですよ。そういうふうに就業の場としても、農業というのは非常におもしろい時代が来た。これは大事な仕事だと私たち法人協会は思っているわけですよ。
 実情は、面接に毎年60〜70人ぐらい来ます。問い合わせ、会社訪問を含めて。しかし、今の若い人は勉強ばかりなさっていまして頭でっかちで、頭の脳みそが重くなっているでしょう。牛がポーンと蹴るとパタッとこけちゃうんです。(笑)そうして、「牛というものは蹴るとは思わなかった」と。「それはおっぱいのさわり方が悪ければ蹴るよ」こういうことです。それで、びっくりして辞表を持ってくるんです。それは私たちももう計算済みです。沢山体験してきましたから。でも、それを嫌って、街の人を受け入れなかったら、日本の農業はつぶれていくというのが私の考え方です。
 DNAを常に組み換えることによって新しい時代に生きていくというのが人類の強さ、生命体の強さでしょう。それを「農村はわしらのものだ。農業団体のものだ。よそ者は入るな」とやったら、それはトキになっちゃいますよ。台風とか戦争で生命が傷つくのは再生が早いんですけれども、生殖機能を失って子供が生まれなくなると、これは自滅していくんです。農業というのはまさに生命産業なんだから、私は「そんなこと言うな」と、町長や議会に随分言いました。ようやくここ4年、5年ぐらいからは「法人もこれからは必要」と、国も言ってくれるようになりましたが、最初は大変でございました。
 怒られるかもしれませんが、株式会社が今特区で入っていこうとなさって、それはいいことです。しかし、これはリースだけで株式会社が100ヘクタールを持ったって、皆さん、経営できますか。卵みたいなお米を作られるか──土地利用型農業ですよ、施設型農業は別です──それは我々よりも10倍の反収が穫れるとか、コストが10分の1になるんならできますが、命ですから。近くにあるようですが、東京ドームを作って、ガラスハウスにして、米作る。それは相当コストがかかって、年5作作るとしても、ちょっと苦しいわけです。
 私は株式会社が農業に入るのは、そう抵抗はないんです。ただし、1つだけ懸念を申し上げておきます。皆さんが軽率に農業をやられますといけないのは、株式会社の本筋は、資本と経営と労働が分離しているから株式会社であるわけです。しかし、生き物の中で本当に労働闘争、今、野球界やっているじゃないですか、ストやるぞ、2日やるぞとなると、農業界は経営者も資本家も参っちゃいますよ。牛舎の前にピケ張って、3日間乳を絞らないよ、餌をやらないよ、水飲ませないよと言ったら、暴動が起こりますよ。親が死のうと台風が来ようと、この間の台風がビュンビュン吹く中で乳を絞るんですよ。止められない、親が死んだって。今日は雨が降るから、台風だから、スイッチ切っておけというわけにはいかないんですよ。水もそうですよ。花を作っても、米を作ってもみんなそう。夜中でも出て行って管理しないといけない。つまり「命」そのものが業種なんですよ。
 この中で本当に資本と経営と労働の分離した、そして労働権という労働基準法のもとで農業に取り組む、本当にできるかな。私のような有限会社でさえ、一度に7人の首を切ったことがあるんですよ。都会から帰ってきて、船方農場に入りたい、すごく学歴がありました。よく向こうの企業が手放したなと思いました。ところが半年経たないうちに私のところにペーパーが来ました。「1つ・・・、1つ・・・、1つ・・・、以上何名はこの要求を呑まなければ明日から休ませていただく」とまぁ、こういう経験があるのです。大変なんです。60人おる中で7人だから、何とかせねば。私は、「じゃ、辞めてください」と。それを牛の前に行って言えと言ったんです。「牛がわかったら、おれも理解してやる」(笑)。結局、辞めてもらいました。
 これがもう少し大規模になってくると、経営者の負けですよ。資本家の負けですよ。だから、この3つの人格をせめて連携したのが農業生産法人という要件で、人格を重ねたんですよ。経営者と労働者と資本家の三者を、そう思ってください。
 だから、私は農業に株式会社を取り入れることに反対じゃない。それは特区で労働基準法適用除外とか、そうしなきゃ、私が資本家で、村を3つぐらい買ったとしたら、1000億ぐらい出せば村は3つぐらい買えますから。農地は安いから。その中で経営するんだったら、戦前の地主、小作の世界を作るしかないんですよ。「おまえ、この土地を貸すから、下請になれ」。下請ならまだいい。「小作人になれ。もし台風が来て収量がなかったら、娘を売れ」。これはちょっと極端な言い方ですが、そういう経営しかないか、中国から労働力を入れてやるしかないでしょう。私はまさに株式会社に、法律ぎりぎりのところの船方農場を経験している。ご覧になったらわかったでしょう。私は一番近いと思います。法人でもみんな同族会社だったりしますから。私は全く他人が集まって船方農場をスタートしました。農業がしたいなら、だれでも来いよ。そのかわりルールを守れよ。こういう経験をしてきましたので、その辺は慎重にしてください。
 資本家に配当しないような株式会社、経営者は役員報酬もらえませんからね。ここをよく理解なさって、ぎりぎりのところは農業生産法人の資格を持たせた株式会社ということに成っているわけです。しかし、これから技術や、すべてのものが改善されていくならば、株式会社で日本の農業を支えていただくというのは私は非常に期待するところなんです。その辺をどうクリアしていくかという皆さんのお知恵もいただきたい。農業というのは本当に生き物ですよ。台風で、土地利用型なんかわずか6時間のうちに何千万円という農産物や施設が風とともに飛んでいくんです。1年、ずっと大事に大事に育てたのが全滅となるんですから、つらい話でございます。
 その辺の新しい仕組み、皆さんのような株式会社が我々とどうジョイントできるのか、そして、どう助け合って、双方にメリットがあるシステムを作るのか。先ほどご質問があったように、じゃ、中国に出て農場をやるのか、その辺を含めていろいろ議論されるべきであって、これがよくてこれが正しいということは、今の段階で決めたらいけないと思います。
 だから、本日私は1つの提案として、こういう考え方も持っていますが、いかがでしょうかというご提案をしたわけでありまして、それも1つの考え方。いろんな考え方で、これからは、皆さんのような農村、農業には日ごろ全く関係がないような方々にぜひ農業について、先ほどからのように議論していただきたいというのが私の熱き思いでございます。
與謝野
 ありがとうございました。
 大変エネルギッシュに日本の「農」のありようについて、ご自身の40年の経験を踏まえての独特の構想、ご提案を披瀝いただいたわけでございます。キーワードはやはり「生命産業としての農業」ということに尽きると思います。日本の農業が抱える根本的な課題をバッサリと切っていただいて、非常にわかりやすいダイアグラムで、ある方向性を持たせたご識見として披瀝していただきました。ぜひご参考にしていただいて、皆さんの日ごろのお仕事にも役立てていただければと存じます。
 最後に盛大な拍手でもって、坂本さんにお礼の気持ちをお伝え頂きたいと思います。坂本さん、誠にありがとうございました。(拍手)

 

 


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