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第209回都市経営フォーラム

 

講師:岡田 隆臣  氏

独立行政法人 都市再生機構 理事

日付:2005年5月19日(木)
場所:日中友好会館

1.都市再生機構の主な業務

2.都市再生機構が取り組む都市再生の主な業務分野

3.具体事例紹介「川口並木元町地区」(サッポロビール埼玉工場跡地開発)

フリーディスカッション



 

 

 

 

 

與謝野
 時間となりましたので、ただ今から本日の第209回目の都市経営フォーラムを開催させていただきます。皆さん、ご高承のとおり、昨年の7月に独立行政法人都市再生機構が誕生いたしました。都市再生機構は、お配り致しましたパンフレットにもご説明がありますが、都市基盤整備公団と地域振興整備公団、これが昨年7月1日に一つになりました。本日は、その都市再生機構から岡田理事をお招きいたしまして、都市再生機構がこれから取り組む業務と役割について、具体的なプロジェクト事例を交えながらご紹介いただき、併せて都市再生事業にかかわる様々な課題について、皆さんとともに考えていくことと致しました。岡田理事のプロフィールについては、皆さんお手元のとおりでございまして、昭和46年京都大学大学院修了後、当時の住宅公団に入社され、以来公団に長年勤められ、昨年の都市再生機構発足と同時に理事に就任されて、 今日に至っておられます。
 本日の演題は、「都市再生機構の都市再生への取り組み----プロジェクトプロデューサーとして」であります。それでは、岡田理事よろしくお願いいたします。

岡田
 岡田でございます。今ご案内にありましたように、都市再生機構は昨年の7月1日に発足し、早や1年近く経つわけですが、直近に私共の広報でアンケート調査をしたところ、都市再生機構という組織そのものについて、まだほとんど知られてないという実態が明らかになりました。今日は、この貴重な場を提供頂きまして、都市再生機構、縮めて「都市機構」と申しますが、都市機構のPRを先ず最初にさせて頂きたいと思います。
 お手元にカラーのパンフレットと、後ほど事例について紹介するのに使うパワーポイントをカラー刷りしたものを用意しておりますので、基本的には、それに従ってご説明したいと思います。





1.都市再生機構の主な業務


(図1)
 まず、前段、パワーポイントに入る前に、少し、私共の都市機構がどういう業務を行う組織かということについて、一般的な説明をするためにパンフレットをお持ちしたので、まずそのパンフレットから見てください。
 「人が輝く都市を目指して、美しく安全で快適なまちをプロデュースします。」、これが私共都市機構が発足する時に定めました、私共の企業理念でございます。旧都市公団の時は、「美しく安全で快適なまちをつくります」という企業理念であったわけですが、新たに、前段に「人が輝く都市をめざして」というフレーズと、後段に「プロデュースします」というふうに、少しおこがましいのですが、そういうフレーズを入れて企業理念として定めたところでございます。
 主な業務はと言いますと、大きく3つあります。私共は内部的あるいは対外的にも、3本柱の業務と説明しております。まずその1つ目の柱が、これは組織のネーミングそのものでございますが、「都市再生の推進」。それから2つ目の柱が、「賃貸住宅の管理等の業務」。それから「国家的プロジェクトへの対応」とありますが、これはあくまでも都市機構法上の本来業務になっていますが、ウエイト的にも、量的にも少しプライオリティーが落ちますので、そういう意味では都市機構としては、都市再生の推進と賃貸住宅の管理等の業務、これが2本柱になっております。
 もう1つの3本目。これは物量的に多いものですから、3本柱の3本目に位置づけておりますけれども、「計画的に事業を完了すべき業務」。これは都市再生機構法上は、本文ではなくて附則の中で記述されている業務で、附則業務と呼んでいます。
 これまでこれは、旧都市公団あるいは旧地域公団が実施してきて、なおかつ新たにそういう事業は今後はやらないと定められた事業、具体的には郊外の区画整理事業で、いわゆるニュータウン整備というものです。それから分譲住宅業務。これは既に住都公団から都市公団になる時に、分譲住宅業務については、完全に全面撤退するという、当時の亀井大臣の国会答弁がありましたが、それも1つです。もう一つは、公園業務の中で、特定公園施設整備と書いてありますが、これらが新しい都市機構としてはやらない。過去から既に経過的に実施している事業というもの、これはできるだけ早く事業の見直しも含めて終了し、店じまいする。ただ、それが非常に量的に多いものですから、3本柱の3本目の柱ということになっているわけです。



2.都市再生機構が取り組む都市再生の主な業務分野


 今日は、都市再生機構がどのような仕事をするのかということで、本当はこの2本柱に据えています「都市再生の推進」と「賃貸住宅の管理等の業務」についてお話ししたかった訳でございますが、このフォーラムの趣旨もございますので、組織のネーミングにもなっております1つ目の柱の都市再生の推進、その領域について、私共がどんな仕事をするのか、しようとしているのか、ということをご説明いたします。
 「都市再生の推進」という領域の中で、さらに業務分野として、どういう業務分野を据えているか、主たる業務分野が5つあります。
 順を追っていきますと、1つ目が「産業構造の転換に伴う大規模な土地利用再編」。
 少し読ませて頂きますと、「産業構造の転換に伴い発生する大規模な工場跡地等について、様々な事業手法を総合的、横断的に活用した整備を行うことで土地利用転換を促進し、民間による都市再生の推進を支援します。」、最後のフレーズに「民間による都市再生の推進を支援します」と書いています。これがキーワードでございまして、従来の都市公団、地域公団は、ある意味でパッケージで事業全体を自ら行うというスタンスだったのですが、今後は出来るだけ民間の都市再生を推進する、あるいは民間のビジネスチャンスを創出する、あるいは都市再生に民間投資を誘導する、という方向に軸足が移っていることの表れが、この結びのフレーズです。
 最初の業務分野であります「産業構造の転換に伴う大規模な都市利用再編」という業務分野では、現在、ingで既に私共が取り組んでいるプロジェクトが2つ紹介されております。一つは蘇我臨海地区です。ご存知の方も多いと思いますが、旧川鉄の蘇我工場の再編に伴って生み出される広大な土地を土地利用転換していこう、ということでございまして、私共はこのプロジェクトにおいて、「都市機構の役割」にありますように、まずコーディネート業務の実施、それからトリガー事業としての土地区画整理事業、これもいわゆる郊外型ではなくて、都市機能更新型と呼んでおりますが、それに加えて街路事業、都市公園事業ということで、この大きな3つの事業を一体的に防災街区整備事業という形で、現在実施中です。
 それから、もう一つ川口並木元町地区とありますが、これについては、後でパワーポイントでご説明したいと思いますので、ここでは省略いたします。
 
 2つ目の主な業務分野は、「都市における生活・交流・経済の拠点の形成」ということでございます。これも少し読ませて頂きます。「既成市街地における生活・交流・経済の拠点の形成。地方における中心市街地の活性化を図るため、民間事業者、地方公共団体等のパートナーとして、再開発事業や建設投資の促進のための条件整備を行い、民間による都市再生の推進を支援します」。こうなっておりまして、その業務分野のプロジェクトが紹介されています。
 まずは、大崎駅周辺地域。JR山手線大崎駅周辺の拠点形成事業で、私共の役割が幾つか書かれております。現在、まさに進行中のプロジェクトでございます。
 次に、川崎駅西口地区ですが、これについては、基本的におおむね終了しております。JR東海道線の川崎駅の西口サイドに位置します。ここでも同様に、コーディネート業務を実施しております。1つは、駅前の再開発事業の実施。それから駅至近に、昭和30年代に管理開始しました私共の賃貸住宅がございまして、それを建替えるという建替え事業、これらを一体的に実施してきているプロジェクトでございます。
 九州に飛びますと、渡辺通駅北地区ですが、これもコーディネート業務です。これは初動期から事業実施段階まで、コーディネート業務をやりながら、基盤整備として土地区画整理事業を実施するとともに、今後可能性がある組合施行の市街地再開発事業のお手伝いをしていく、というプロジェクトでございます。
 沖縄のプロジェクト、山口県のプロジェクトは、旧地域公団が地域公団時代に手がけていた、拠点形成型プロジェクトでございます。地域公団でございますから、場所的には4大都市圏を少し外れています。
 以上が、2つ目の「都市における生活・交流・経済の拠点の形成」という業務分野でございます。

 3つ目は、「都市の防災性の向上と密集市街地の改善」。これは業務分野としては一番難しい業務分野でございます。「都市再生のための喫緊の課題である災害に強い都市構造の形成に向けて、密集市街地の整備改善を図るため、さまざまな制度を活用し、民と官の協力による整備を促進します」。非常に事業推進が困難でありますので、さすがに、ここの結びは「民間による都市再生の推進を支援します」とはなってなくて、どちらかと言うと、密集市街地の整備改善は、一に公共団体の取り組みが基本的にないと、民だけの領域ではなかなか実施しづらいものですから、こういう結びのフレーズになっております。
 事例としては、まだ余り実績がありません。ここで例に出ておりますのは、大阪府寝屋川市の東大利地区、東京都の世田谷区にあります三軒茶屋地区、そして、これが一番古いわけでございますが、東京都北区の神谷地区です。事例としては少ないわけですが、こういうものも今後新たに都市機構になっても取り組んでいこうという業務領域でございます。

 4つ目、「民間賃貸住宅の供給支援等を通じた良好な住宅市街地の形成」というのがございます。「大都市において不足しているファミリー向け賃貸住宅の供給を促進し、職住近接の魅力ある住宅市街地を形成するため、民間供給支援型賃貸住宅制度により、民間事業者による良質な賃貸住宅の供給を支援します」。
 ここでは、最近新聞紙上でも少し話題になりました、芝浦アイランド地区を例として載せてあります。この土地は、東京都の都電の車両基地だった所でございます。それを東京都から取得しまして、基盤整備した上で、それぞれ分譲住宅用地、賃貸住宅用地あるいは公益施設用地ということで、民間事業者さんの事業参画の受け皿を作って、左下の絵にあるような超高層が3〜4本建つようなプロジェクトとして、現在取り組んでいるものでございます。

 5つ目、最後の業務領域は、「既存賃貸ストックを活用した地域生活拠点の整備」ということでございまして、居住者──居住者というのは私共の賃貸住宅にお住まいの方々を指しますが──、居住者の居住の安定を図りつつ、賃貸住宅の建替えを実施し、居住水準の向上を図るとともに、福祉施設や子育て施設等の併設建替えによって集約しますので、その分余剰地ができますから、その敷地を整備した上で、それを活用することによって地域全体の生活拠点を整備していく、そういう業務分野でございます。
 事例としては、役割を特に書いていますが、できるだけ周辺市街地との一体的なまちづくりをする、あるいは住宅そのものの居住水準を向上する、あるいは公共団体や民間事業者さんと連携して、いろいろな生活支援施設を導入するなり、あるいは多様な住宅供給を実現していこう、そういう趣旨の業務分野でございます。これは私共の建物、土地を種地として行うものでございますので、一番やり易いと言えばやり易い業務分野でございます。

 以上、5つの業務分野でございますが、都市再生本部が、フレーズとしては「稚内から石垣まで」ということで、「全国都市再生」という言い方をされていまして、昨年度に公共団体がかなり自由裁量で使えるまちづくり交付金という制度もできました。それについて、4大都市圏に限定することなく、「全国都市再生」の推進に主にコーディネートという形でお手伝いしていこう、という趣旨の分野でございましす。さっきの5つの業務分野に加えまして、こういうことも都市機構としてやっていこうと考えているところでございます。
 今、幾つか事例をご説明しましたが、その中で、実際にそれぞれのプロジェクトについて、どんなことをするのかということを、概括的に書かせて頂いています。
 いろいろなニーズに対して対応していこう、という事でございますが、その1つのニーズが、「所有している大規模な工場を閉鎖したいけれども、跡地の活用方法が分からない」、「広域的な交通基盤が整備されていないため、開発に着手できない」、あるいは「虫食い土地が散在していて土地の使い勝手が悪い」、「複雑な権利関係の調整や関係機関との調整をどう進めたらよいか分からない」、「一度断念した再開発事業を再度立ち上げたい」、「阪神・淡路大震災の教訓から、災害に強いまちづくりを進めたい」、「賑わいが失われた中心市街地を何とかしたい」等々でございます。こうしたニーズに、私共としては、まずはコーディネートからお手伝いし、必要に応じて、民間事業者のパートナーとして、適切な役割分担のもとに事業にも一部参画していこう。その結果として、民間の新たな事業機会を創出していこう、ということが書かれております。それをもう少し具体的にどうするのかというのが次に書かれています。
 これは後の事例のところでも出てきますが、簡単に触れておきますと、構想・計画づくり段階と事業実施段階と、大きく2つの段階がございますが、初動期の、いわゆる構想・計画づくり段階から、私共が関わってゆくということでございます。この中にどんなことをやるかの例が書いてあります。1つ目が、開発構想の策定。開発コンセプトを立てて、それに基づく開発構想を策定する。あるいは、それに基づいた土地利用計画の案を作る。関係者の間での合意形成を図っていく。あるいは公共団体との調整をする。あるいは一方、民間事業者のニーズはどこにあるのか。あるいは具体的に事業を推進していく体制を、どういうふうに組んでいくか。それから、新たに都市計画の提案権能が、都市機構にも付与されましたので、都市計画の必要な場合は都市計画の素案を作っていく。あるいは適した事業手法なり事業計画を検討していくということが、初動期、あるいは計画段階の私共の関わり方でございます。
 いよいよ事業化になり、事業実施段階になったら、今度は事業実施段階でも必要なコーディネートをやっていこう。その一例が、ここに書いてあるようなことでございまして、具体の都市計画の提案をしたり、あるいは公共団体さんとの開発協議をしたり、民間事業者さんの参加誘導を行ったり、ハードになりますが、工事工程の調整とか云々と書いてございます。
 コーディネートに留まらず、そのプロジェクトが最後まで完遂するための支援措置として、1つ目に、必要な場合にあっては土地の先行取得をする、ということが書いてございます。この事例としましては、東で言えば大手町地区、西で言えば大阪駅北ヤード地区があり、経済界も含めて非常に期待が集中している東西のビッグプロジェクトが動きつつあるわけです。この大手町においては1.3ha、大阪駅北ヤードにつきましては3ha。それを今年3月に、私共で先行取得したということでございます。
 2つ目に、基盤整備。この基盤整備は基本的に都市機構でやれることになっておりまして、1つは法定事業による基盤整備の実施であります。土地区画整理事業を都市機構で自ら施行するということ、あるいは公共施設の直接施行または受託、私共が先行取得した土地の敷地を整備し、民間事業者さんが上物事業に出られる舞台づくりをする、ということでございます。
 それから3つ目は、民間事業者さんの上物整備をサポートしますということで、3つ程書いてございます。1つ目がいわゆる再開発事業で、組合施行の再開発事業を完遂するように、私共が一部床取得等で参画するようなこと、あるいは逆に、私共が施行する再開発事業において、特定事業者参加制度でありますとか、特定業務代行制度、特定建築者制度を活用して、いろんな段階で民間事業者さんが事業参加できるような仕掛けをしていく。あるいは、私共が取得した土地を譲渡または賃貸して上物事業をして頂く。3つ目は、民間支援型賃貸住宅制度の活用ということで、これは後の事例で出てきますので、そちらで述べますが、上物の建設及び賃貸住宅の管理経営は民間事業者さんにやって頂くという制度で、サポートするために一部事業参画もする、ということでございます。

 以上、概括的な説明になりまして、これではちょっと解りづらいと思いますので、埼玉の事例でございますが、私が現職に着く前の2年間、埼玉で支社長をしておりました時に、私自身が関わったプロジェクトで、具体的にご説明した方がよりイメージして頂けると思います。
 それでは、早速パワーポイントに入りたいと思います。



3.具体事例紹介「川口並木元町地区」(サッポロビール埼玉工場跡地開発)


(図1)
 それでは、都市再生機構の都市再生モデル事業として位置づけて実施しております「川口並木元町地区」の概要及び都市機構が果たす役割について紹介したいと思います。
 当プロジェクトは、サッポロビールが埼玉県川口市において、川口市になる前から当地にビール工場を開設されて、80年間操業されて来たわけでございますが、千葉の船橋に工場が集約され、そちらに機能を移転して、当工場用地については閉鎖して土地利用転換を図るというプロジェクトです。サッポロビールさんとは、私共、旧公団時代から非常に縁がございまして、古くは恵比寿ガーデンプレイスという恵比寿の駅の線路沿いのプロジェクトでございました。あそこではむしろサッポロビールさんの自社開発を、私共としてはまさにコーディネート業務として行い、一部土地を最終的には取得させて頂いたわけでございます。あの複合開発でサッポロビールのお手伝いをしたのが、まず最初でございます。
 2件目は、名古屋の千種で同様にサッポロビールさんが工場用地を閉められるというので、そちらの方は、まず工場用地を全部私共が取得させて頂いて、そこに基盤整備をした上で、いろいろな民間事業を立ち上げた、というプロジェクトでございます。そういう意味では、本件は3度目の縁ということでございます。
(図2)
 パワーポイントの構成としては、プロジェクトの概要を先ずざっと全部説明した上で、その後にこのプロジェクトで私共都市機構はどのような役割を果たしてきたのか、これから果たそうとしているのかを説明する、2段階構成になっています。まずはプロジェクトの概要の説明でございますが、地区の概要及び上位計画から入っていきたいと思います。
(図3)
 計画地は、JR京浜東北線川口駅が最寄り駅でございます。東京の北西約15キロに位置し、京浜東北線上野駅より18分、埼京線赤羽経由で池袋駅より12分、交通の利便性が高い地区です。ちなみに川口市の人口は約49万人です。
(図4)
 従前の工場用地の周辺の写真です。右上が工場正面、前から見た写真、右下は計画地南側道路沿いから、左下は計画地西側JR線路沿いから、左上は北側道路沿いから。
(図5)
 最寄り駅の川口駅から徒歩約8分。駅からの位置関係は、先程説明した恵比寿の場合と非常に似通っております。恵比寿の場合も、山手線の恵比寿駅から徒歩このぐらいの距離で、しかも線路沿いに工場用地がありました。用途地域は準工業地域、容積率200%、建ぺい率60%です。
(図6)
 従前の航空写真です。現在、工場は解体され、都市機構による基盤整備工事及び民間各事業者さんが建築工事に入っていますので、現地は基盤整備工事と建築工事が錯綜している状況です。
(図7)
 面積は約12ヘクタール弱です。現況写真ですが、左上が昨年の7月時点で工場を解体し、ちょうど地中に埋まっている杭の引抜きをやっているタイミングの写真です。右下が今年の4月末時点で、基盤整備工事に更に上物の工事が乗り込みつつあるという状況です。
(図8)
 このプロジェクトの上位計画の説明です。都市・居住環境整備重点地域という、国が指定して整備を重点的にやっていこうというエリアに、平成16年1月に、この図面の黄色で書かれているエリアが定められておりまして、地域の名称は、「川口・鳩ヶ谷地域」。川口市と鳩ヶ谷市にまたがる、約1380haのエリアが指定されております。それから、平成16年5月には都市再生緊急整備地域、名称は「川口駅周辺地域」、68haが指定済みです。
(図9)
 また、計画地は都市再開発方針2号地区、中心市街地活性化基本計画の川口市中心市街地のエリアに隣接しており、更に住宅市街地総合整備事業、いわゆる住市総事業区域にも隣接している位置にありました。
(図10)
 次に、関係者の意向とプロジェクトの主な経緯です。
(図11)
 まず、私共のコーディネート業務という意味でいけば、私共のクライアントでありますサッポロビールさん、従前土地所有者でもありますサッポロビールさんからは、以下の3点の意向がありました。1つは、サッポロビールは、製造基盤を千葉へ集約することによる経営合理化の一環として、平成15年12月までの土地売買契約が必須。これは、重要なサッポロビールのニーズでございました。これが非常に重要な意味を持つサッポロビールの私共に対する要請でして、それを可能にすることが必須であった、ということでございます。
 それから、あと2つは、今までの地元工場としての役割でございます。一つは地元の活性化に貢献できる工場跡地の土地利用転換。それから、既設でビール園とスポーツプラザがあったわけですが、市民からは、それを何とか残して欲しいというニーズがあるので、ずっと地元とおつき合いしてきたサッポロビールさんとしては、これを何とかして残していきたい。こういう意向が、私共機構に示されたわけでございます。
 一方、地元公共団体であります川口市からは、80年間に渡り市民に親しまれてきたビール工場が閉鎖するに当たって、都市再生及び地域活性化への寄与、市民に親しまれる文化性の高い良好な市街地の形成、市民が憩える公園の都市機構直接施行による整備、これらが市の意向として当機構に示されたわけでございます。
(図12)
 主な経緯でございますが、平成14年11月土地処分時期のちょうど1年前の11月に、サッポロビールから都市機構が土地利用構想策定等のコーディネート業務を受託致しました。同年すぐ12月には、埼玉県、川口市、都市機構による意見交換会を設置し、更に翌15年の4月には慶応義塾大学の日端先生を委員長とする基本構想策定委員会を立ち上げまして、集中的に議論して頂きました。7月にはそれを取り纏め、それを9月には都市機構から土地利用計画を含む開発計画への提言という形で、サッポロさんに提出し、それを受けてサッポロさんから川口市に開発計画の方向性として、地主であるサッポロさんから市に提案をするということになったわけです。
 それをもとに協議をした結果、10月にはサッポロビール、市、都市機構の、本開発におけるそれぞれの役割分担、それから開発の方向性、つまり開発の基本方針を確認する3者覚書を交換しました。
 また、同月に、都市機構が取り纏めた土地利用計画及び土地譲渡条件書を基にサッポロさんと、商業事業者、住宅事業者との間で土地売買契約が締結できたということでございます。
 同年12月24日、サッポロビールと都市機構の間で、構想計画段階のコーディネート業務から引続いて、今度は事業実施段階に入るということで、さらにパートUのコーディネート業務契約と相互の開発基本協定を締結したわけでございます。
 また、都市機構は併せてサッポロビールの土地の一部を、民間供給支援型賃貸住宅制度を活用する賃貸住宅用地として取得し、事業者のワン・ノブ・ゼムとして一部事業参画するということになったわけでございます。
 更に、その翌日の25日には、民間事業者間の計画スケジュール調整等を行う事業者協議会を立ち上げ、以降当機構が事務局として運営してきているということでございます。
(図13)
 翌年の16年3月になりまして、サッポロビールと都市機構の間で、移管道路・移管公園、これは開発条件として公共団体、川口市の方に移管する道路なり公園について、住市総事業の補助を活用し機構が整備を行うスキームを組立て、先程の上位計画のところでありましたように、隣接している住市総事業区域をこのプロジェクトを含む形で拡大する大臣承認を受け、同年6月には、市からの非常に強い意向の1つであった、近隣公園を都市計画決定し、川口市から都市機構が直接施行することの施行同意を受けました。更に9月には、大臣より直接施行の事業承認を受けたということでございます。
 10月末からは基盤整備工事に着手し、各事業者も順次建築工事に着手し、現在まさに工事中です。また本年3月には都市再生特別措置法に基づき、民間都市再生事業計画の認定を受け、今現在に至っています。
(図14)
 ちなみに、民間都市再生事業計画で認定を受けた民間事業者は、商業事業者としてイトーヨーカ堂、同じくサッポロビールの子会社でございますが、サッポロスポーツプラザ、それから分譲住宅の事業者であります東武鉄道及びリクルートコスモスです。事業の名称が「サッポロビール埼玉工場跡開発事業」ということでございます。
(図15)
 次に、プロジェクトの概要の説明をさらに進めますが、経緯の中でも述べましたように、構想計画段階でのコーディネート業務で、私共が受託した主な内容がここにある3つです。「地域の課題抽出・広域整備方針の策定」。2つ目が「開発コンセプト・土地利用計画の策定」。3つ目が「公共団体との開発事前協議の実施」。それぞれの内容を順に説明したいと思います。
(図16)
 まず地域の課題の抽出ですが。これについては約12haの大規模な工場が操業されていたということで、以下の3点の課題があるということでございます。1つは、大規模な工場用地がそこに存在したことによって、歩行者ネットワークが地理的に分断されている。周辺地区は公園空白エリアである。それから、一次避難地までの距離があるために緊急避難路が分断されてしまっている。このような3つの課題がありました。
(図17)
 この課題を解決するために、私共が提案しました広域整備方針ですが、これも3つの方針を提案しました。1つは、歩行者動線の整備として計画地を東西、南北方向に貫く歩行者空間を整備することにより、周辺とをつなぐ歩行者ネットワークを形成する。2つ目に、近隣公園を整備して、既存公園との緑のネットワークを形成する。3つ目が、地区内に整備する近隣公園が一次避難場所の指定を受けることで、緊急避難路のネットワーク形成に寄与していく。
(図18)
 以上の関係者の意向、地域の課題、それを解決するための広域整備方針、これらを踏まえ、都市機構は、川口市及び埼玉県に働きかけ、面的整備手法である住市総仕立てが最適であるということで、既存の川口駅周辺地区住市総事業区域を当地区を含む形で拡大して頂くお願いをしまして、平成16年3月には区域拡大について大臣承認が得られ、また同年6月には、非常に重要な1つの鍵を握ります近隣公園について都市計画決定がなされ、9月には大臣より事業承認を受けて、都市機構が直接施行の施行者となるということになったのです。
(図19)
 開発コンセプトに移ります。開発コンセプトは、「まち歩きが楽しい新しい都心空間の実現」というものでございます。これを具体化するために、まず第1に、様々な都心機能が複合した一体的な市街地の形成を図る。具体的には、地域の活性化のための商業施設誘致、良好な都市型住宅の供給、市民に親しまれる公園とアートギャラリー等の整備というものです。
(図20)
 以下は、コンセプト実現のための整備イメージですが、まず開放性の高い、快適な歩行者空間として、地区を東西、南北に貫くアクティブモールを整備する。
(図21)
 「まちをつなぐ緑」の実現を目指し、地区の緑の拠点となるべく緑化計画に努める。
(図22)
 「安心・安全な空間づくり」を目指す。
(図23)
 「新しい市民文化ゾーンの創出」をする。市民アートギャラリーの建物をサッポロビールが整備し、川口市へ寄贈するということになっています。
(図24)
 土地利用計画の説明に移ります。S字状の区画道路で南北に区分されるわけですが、
そのうちの北サイド、JR沿いから分譲住宅街区、その隣が機構の民間供給支援型賃貸住宅用地、さらに産業道路沿いにレストランとフィットネスクラブ。区画道路の南側ブロックでございますが、産業道路沿いの東側に近隣公園。公園内には市民アートギャラリーを設置。そしてJR線路沿いには商業施設。移管公園は、JRからの景観に配慮して、JR線路沿いに3カ所、また近隣公園と一体に1カ所、計4カ所を適宜配置するという計画になってございます。
(図25)
 次に、事業者協議会で検討、調整されました全体を貫く重要な1つのランドスケープ計画、それからそれぞれの各事業者さんの計画内容について説明したいと思います。
(図26)
 ランドスケープ計画に当たりましては、当地区の開発コンセプトである「まち歩きが楽しい都心空間の実現」ということが、各事業者が協力して進めるための指針でございまして、それに向けて、事業者協議会で選定しましたランドスケープデザイナー宮城先生に監修をお願いしました。
(図27)
 具体的には、まちを南北に抜ける歩行者専用道、東西に抜けるメインストリート、この2本のアクティブモールを新しいまちの骨格として際立たせ、この地区名が川口並木元町で、並木というキーワードが入っていますので、この並木元町というアドレスにふさわしい、四季を彩る表情豊かな並木道で、まち並みを演出するということを考えました。
 2つのアクティブモールの結節点となる「インナーノード」と、まちと周辺をつなぐ6つの「アウターノード」では、上質なまちの創出を意識し、素材の選択や細部の収まりなど、現在設計検討中でございます。
(図28)
 まず、東西に抜けるアクティブモールから説明させていただきます。東西アクティブモールは、先程S字状の区画道路と申しましたけれども、その両サイドに歩行者空間としてのアクティブモールを整備しようということです。全体として400メートル程の長さがございまして、これがこの地区の骨格となるシンボルストリートになるわけです。このストリート、まず公道内に2本、民地側左右に商業施設者あるいは住宅事業施設者、それぞれ1本ずつ、計4本の断面構成にしまして、並木のピッチと樹種を、みんなで揃えてやっていこうということで、各事業者及び川口市と協議し、既に合意をしております。
 歩道の両側の約80本のベニカエデにより緑のトンネルができ、秋にはそれが真っ赤に染まるという予定です。
(図29)
 次に、南北に抜けるアクティブモールですが、中央の結節点から南側部分は、近隣公園の緑道部分として川口市が管理する歩行者空間となります。また、その北側の半分は、分譲事業者が整備し、後々の管理は分譲管理組合の方で管理していく歩行者空間となるわけでございますが、住宅事業者の開発条件にすることにより、南北にこの歩行者空間が連続して通り抜けていく、ということを担保しているわけでございます。
(図30)
 南北アクティブモールの説明ですが、南側の川口市が管理する部分については、JR川口駅からの歩行者のメインアプローチとなるものですから、幅員7.5メートルの並木道を整備します。商業用地内に1本、アクティブモール内、これは移管公園として市に移管する部分でございますが、それが1本、それから近隣公園内に1本という、計3本の断面構成となるものでございまして、これも事業者及び川口市と協議の上、既に合意を得ているものです。近隣公園と商業施設の賑わいをつなぐ緩衝空間でもあり、春は新緑、秋は黄葉で来訪者の目を楽しませるカツラの木を選定したところでございます。なお、民間分譲事業者さんの方で、北側については、樹種等を今現在検討して頂いているところでございます。
(図31)
 さらに、敷地南側道路に設ける3つ目の並木道、これは紅花が楽しめるハナミズキ、クルメツツジを選定。
(図32)
 また、JR線路側からの景観に配慮し、4つ目の並木道として並木と灌木、両方に白花が咲くような樹種を選定しているということでございます。
(図33)
 次に、各事業者の街区を各事業者のPRも兼ね、少し説明させて頂きます。
(図34)
 まず、分譲住宅街区ですが、ここは経緯のところでも説明しましたように、東武鉄道とリクルートコスモスにより計画されており、集合住宅は15階建てと20階建て合わせて868戸、さらに街区の線路沿いに少し建物の高さを抑えるということもあったんでしょう、戸建て住宅を34戸配置しているというものでございまして、黄色で囲っている部分がアクティブモール、先程の北側半分の部分で、24時間開放の歩行者空間となる予定です。
(図35)
 次に、その隣の賃貸住宅街区ですが、これは都市機構の民間供給支援型賃貸住宅制度を活用して賃貸住宅を整備しようというものです。この制度は、工場用地の一部を都市機構が取得し、これを公募により選定された民間事業者に、50年以上の定期借地方式によって、私共の方から土地を賃貸し、その上で民間事業者は上物を建設し経営するという制度です。昨年の10月に事業者の公募をし、ハウスメイトパートナーズに既に決定しているところです。
(図36)
 これは、ハウスメイトパートナーズ提供の完成予想図ですが、地上12階建ての建物に賃貸住宅90戸、その住棟の下に併設施設として保育所と有料老人ホーム等が予定されています。
(図37)
 それから、その東側のフィットネスクラブ・レストラン街区ですが、フィットネスクラブについては、サッポロビールプラザが、レストランについてはカジュアルイタリアレストランとして、サッポロライオンが経営するということです。これまで市民に親しまれてきた、市民から存続要望のあるビール園とスポーツプラザが、こういう形で再生されます。これについては全体の中で一番早くオープンする予定でして、今年の夏にはオープンの予定となっています。
(図38)
 今度は商業施設ですが、これにつきましては、イトーヨーカ堂が整備することになります。ヨーカ堂のショッピングセンターとしては珍しいですが、約100店の専門店街から成るショッピングモール、川口市や川口市民のアンケートで非常に要望の高かったシネマコンプレックス、9スクリーン約2000席のシネコンと、ヨーカ堂さんの本業であります、総合スーパーマーケットを合わせ、全体として、それらを5階建ての建物の中におさまる大型ショッピングセンターとして、これは今年の11月にはオープンの予定となっています。
(図39)
 それから、1haの近隣公園。これは、このプロジェクトのある意味で1つの目玉でもあるわけですが、直接施行により私共都市機構が整備します。川口はご承知のように、鋳物で有名な街ですが、「川口のものづくりの伝統を継承した文化芸術活動の支援、発表、交流の拠点を創出」するというコンセプトの基、現在設計検討中ですが、基本的な骨格としては、産業道路沿いに面した東側ゾーンには武蔵野の自然林をイメージさせる緑陰空間を、その内側には文化芸術の発信拠点となるアートギャラリーとその前面に芝生広場。イトーヨーカ堂側、商業施設側にはイベントの受け皿ともなる石張り広場をそれぞれ配置し、何度か述べていますが、アートギャラリーについては、サッポロビールが建設した上で、川口市に寄贈するということになっています。
(図40)
 産業道路側から緑陰空間越しにショッピングセンターを見たイメージパース。ウォータープレートは子どもが水に触れ、遊べる水系施設でございまして、水が噴出するノズルは川口市名物の鋳物のレリーフでカバーします。エントランスノードは、産業道路からのメインのアプローチに位置して、デザインされた地区の総合サインが来訪者を迎えます。また、川口駅からの歩行者のメインアプローチのエントランスに位置しますギャラリーコートは、シンボル樹と舗装パターンで来訪者にアートを予感させ、アートの拠点となるアートギャラリーへ導くという計画になっています。
(図41)
 次に、スケジュールとまちの愛称でございます。
(図42)
 細かい画面で恐縮ですけれども、ざっと基本的なところだけご説明しますと、機構が整備する基盤整備は、平成16年10月に地区内道路から着手しまして、本年17年11月に完成の予定です。一番早くオープンしますサッポロビールのレストラン・フィットネス街区が、この夏にもオープンの予定。更に追いかけてヨーカ堂が11月にオープン。また東武鉄道、リクルートコスモスの分譲住宅については、18年4月と9月の2段階で入居予定です。私共の民間供給支援型賃貸住宅については、18年度末に入居予定。近隣公園とアートギャラリーは共に18年の4月にオープンということでございまして、全体としては、18年の4月をメインのまちびらきと位置づけております。
(図43)
 地区愛称ですが、昨年の8月、事業者協議会において「リボンシティ」に決定しました。愛称リボンシティは、当地の工場用地が操業している時に、毎年夏にビアフェスティバルというのを開催し、たくさんの市民の人が集まっていたわけですが、そういう中で非常に親しまれている、サッポロビールの清涼飲料水のキャラクターが「リボンちゃん」。それからビール工場跡地を、人々が輝くことができる複合都市に再生させるということで、それを英語でいいますと「Reborn」。もう1つ、地区内に計画されている東西、南北に走る緑豊かなアクティブモールにより、住民のみならず、周辺の人々も交流し、まちとまち、各施設が「りぼん」で優しく結ばれることを願い、命名されたということでございます。
 以上、少し長くなりましたが、プロジェクトの概要について説明しました。
(図44)
 本日の一番のポイントでございます、私共がどういう役割を果たしてきたのか。今までの説明の中でも、端々、出ているわけですが、もう一度そこに焦点を当てて、説明します。
(図45)
 大規模複合開発における都市機構の役割を一言で言うと、「プロジェクトプロデューサー」ということでございます。
 大規模複合開発の進め方として、従来型は街区毎に各開発事業者が公共団体と個別に協議を行うため、公共団体は、地区全体の統一感があるまちづくり指導がなかなかやりづらい。また逆に事業者サイドからは、各開発事業者にとっては、他の街区の開発協議状況の把握が難しく、結果として開発協議成立まで長い時間を要することがしばしばあるということです。
(図46)
 本件のような、都市機構プロデュース型では、まず開発計画づくり段階においては、公共団体と従前土地所有者の間に入り、両者の意見調整を図ることにより、地域に適したまちづくりの基本構想の関係者による早期合意が図られ、またその後の事業実施段階においても、都市機構が各事業者間の計画調整などを実施すると共に、公共団体との間に入り、総合調整を行うことにより、まちづくりの基本構想を着実に実現することが可能になるということです。
(図47)
 それでは、各事業段階における協議体制と主な経緯を順に説明いたしますと、先ず構想・計画づくり段階では、土地所有者であるサッポロビールさんから、コーディネート業務パートTを受託し、開発コンセプト及び土地利用計画等の成果物を提出。これをもとに、都市機構がサッポロビールと市の間に入って協議を実施した上で、開発基本方針、及び役割分担を定めた3者覚書を交換。そこで3者の合意を得ました。それを受け土地利用計画、及びその土地利用計画に基づく土地譲渡条件書を私共が作成しまして、それをもとにサッポロビールから民間事業者に土地譲渡がされました。
 これまでが開発計画づくり段階ですが、この間の協議体制としては、1つは、土地所有者であるサッポロビールと私共での、定例打合わせと呼んでいますが、お互い部長クラス出席のもと、相当頻繁に実施致しました。それから、開発事前相談の場として、県、市、機構の意見交換会を早期に立ち上げました。
 それから、開発の方向性を決定する機関として、市の関係部長に揃って出席して頂いたわけですが、サッポロビール、市、機構の3者協議会。これらが構想・計画段階の協議体制と言えると思います。
 次に、事業実施段階に入りまして、まずサッポロさんからコーディネート業務を再度受託し、参画する各民間事業者から成る事業者協議会の運営を開始しました。この段階での協議体制は、各事業者間の総合調整の場である事業者協議会と、既に設置されておりますサッポロ、市、都市機構の3者協議会、この2つの協議会で事を進めていくということですが、このサッポロ、市、都市機構の3者協議会においては、まちびらきのスケジュールあるいは市民ギャラリーの計画内容などの重要事項を決定していく、ということを行ってきている訳でございます。
 以上のそれぞれの協議体制に、私共が常に中心として中に入ることによって、迅速かつ適切な事業遂行が可能になっているということであると思います。
(図48)
 それぞれの段階において、私共がプロジェクトプロデューサーとして、どんな取り組みをしたかということですが、まず構想・計画づくり段階では、1つ、進出意欲のある民間事業者のニーズの把握。2つ目として、県及び市と事前協議の場を設け、開発条件を早期に確定。3つ、具体的な土地利用計画案を作成するとともに、開発スケジュールを確定。4つ目に、土地所有者から民間事業者への土地譲渡条件の整理を実施して、民間事業者の早期参画を実現したということでございます。
(図49)
 さらに現在、事業実施段階では、当地区の事業完遂を支援すべく、次の4項目に取り組んでいるわけです。1つは、事業段階でのコーディネート業務を実施。具体的には、参加各事業者から成る事業者協議会を設立し、都市機構が事務局として運営、大店法、交通協議等、各種開発協議について、公共団体との間に入り総合調整。それから、魅力ある一体的景観に誘導するための、ランドスケープ計画の策定及び景観調整。サイン計画、あるいは、先ほど出ました地区愛称の決定、地区PRパンフレットの作成等、地区PR全般の企画調整。それから、各事業者間の計画調整及び工事用仮設通路の確保等、いわゆる工事工程調整をここで図ってきているところです。
 2つ目に、地区の共通インフラとしての移管道路・移管公園などの基盤整備工事を私共が実施しています。
 3つ目が、地区の核となる公共施設であります近隣公園の直接施行による整備。
 4つ目に、私共も土地を一部所得することによって、民間供給支援型賃貸住宅制度の活用により賃貸住宅を整備する。こういうことに取り組んでいるということでございます。
(図50)
 現在、平成18年春のまちびらきに向けて、円滑な事業推進と川口の顔としての魅力づくり、景観形成を図るべく取り組んでおり、最後までプロジェクトプロデューサーとしての役割を全うすべく、都市機構としては邁進する所存でございます。
 説明は以上でございます。ご清聴ありがとうございました。(拍手)



フリーディスカッション


與謝野
 
岡田理事、大変ありがとうございました。都市再生機構の役割、具体的なプロジェクトを通じてかなり具体的なお話を頂きました。ここでご質問の時間をとりたいと思います。先ほどのお話のうち、この点をもう少しご説明いただけないかというご質問をはじめございましたら、お受けいたします。どうぞ遠慮なく挙手いただいてご質問下さい。
吉村(埼玉県)
 私もこれまで横から見ておりましたが、いろいろご苦労されていると思います。でも、今のお話では、かなりサラッと出来上がったという感じにとられてしまいますけど、実は相当苦労されたと思うんです。特に土地をお持ちでないがための、事業主体でないがための苦労ですとか、あっちが言うことをこっちは全然聞かないという、間に立っての板挟みの苦労がいろいろあったかと思うんですが、主に苦労した点をちょっとご披露頂ければというのが1点。
 それから、それの裏返しなんですけれども、こういったコーディネーター業務というのはカッコはいいんですが、苦労の連続で、それで商売にしようとするとなかなか商売になるものじゃない。一部民間供給支援型賃貸住宅の事業をされていますけれども、もう一歩踏み込んだ関わり方みたいなことを、今後お考えになる可能性があるかどうか。今後の見通し、考え方の展開のあり方みたいなものが、もしあればお話し頂きたいと思います。
岡田
 横からとおっしゃいますけれど、このプロジェクトに吉村さんには埼玉県の立場で直接関わって頂いておりましたのでご理解頂いていることかと存じますが、最も苦労した点は、先ほどの説明で少し触れましたが、当時サッポロビールさんから検討依頼を受けたのが土地処分期限のほぼ1年前といった極めて短期間であったことです。最初は名古屋の千種と同じように、工場跡地12ha全部を機構が取得できないかというご依頼でありました。
 当時、既に都市機構になることがある程度方向性としてあり、自ら全部パッケージで事業に取組むのではなく、できるだけ民間事業者さんの投資を誘導することに軸足を移す、ということが方向として決まっていたものですから、跡地全て土地取得、ということは出来ない状況でした。そうであれば、コーディネートをお願いしたいということで、私共にそのご要請がありましたのが、土地処分期限の丁度1年前であったということです。
 全く何の構想もない中で、1年の間に民間事業者が、サッポロビールの土地を買えるところまでの道筋をつける。1年間で民間投資を誘導する土俵作りである、いわゆるコーディネートを実施しなければならない、という時間の切迫と言いますか、これが今回の中で一番厳しかったことです。ここで、公共団体として、埼玉県、川口市、両者が、都市機構がサッポロとの間に入ったことで、好意的に対応して頂いたということもあって、結果として1年といった短期間に土地利用構想、土地譲渡条件等初期段階のコーディネートが出来ましたことは、苦労はしましたが実りも大きかったと考えております。
 それから、土地所有者と公共団体の間に私共が入るわけですが、土地所有者にすれば、1円でも高く土地を売りたいというのが当然のニーズであるし、川口市にしてみれば、それまで市民に親しまれてきて、脈々と80年もかけて地元に密着して操業して来た工場跡地の土地利用転換ですから、できるだけ市民にとって良いものにしてもらいたいという、基本的なニーズがあり、ある意味で相反するところがあるわけです。
 私が常々当時担当者に言っていたのは、こういう話はどちらに対してもハードネゴしなきゃ駄目だよと。川口市で80年も操業してきた、社会的地位のあるサッポロさんには、跡を汚していくようなことじゃ駄目ですよ、市民にとって意味のある、あるいは貢献するような形で、土地利用再編をしなきゃいけないですよと、相当ハードネゴさせましたし、川口市に対しては、もうサッポロビールへの過度な要求は、かえって良い結果を生まない、とハードネゴしなさいと、私は部下に言いました。
 どっちともハードネゴした上での落ち着きどころというのは、どちらからも評価されるということです。どちらかというと、私共のクライアントはサッポロビールなので、本来であれば1円でも高く売れる方に軸足を置いて仕事しなきゃいけないのですが、やはり都市機構は、公の看板を背負ったデベロッパーとしてコーディネート業務を受けている以上、クライアントがサッポロビールだとしても、1円でも高く売れればいい、ということだけに軸足を置くことは出来ないということです。両者に対してハードネゴしていきながら、何とか限られた1年間の中で、両者のコンセンサスを得ていったということでございます。
 私は事業実施段階になって、支社を離れましたので、その後は報告で聞いている内容ですが、事業者さんが決まった後の、いわゆる事業者協議会での、ものの決めていき方について、支社職員に次のように言い残しました。事業者は民間企業であるので、ヨーカ堂にしろ、東武・リクルートコスモスにしろ、当然利潤追求が必須条件だから、平たく言うと、何とか造るのは安く造って、できるだけ賃料なり価格との間で利潤を生み出そうとするわけだけれど、既成市街地にある貴重な大規模敷地での、多方面から注目されているプロジェクトに参画するわけであるから、エンドユーザーに支持されることが、ヨーカ堂にしろ、東武・リクルートコスモスにしろ、結果として商売がうまくいくことに繋がるのだ。景観の話を含めて、そういうコンセンサスをとるよう調整するようにと。
 多分そこで相当苦労はしたと思いますが、今日ご説明しましたように、各事業者として、例えば並木道を造っていこうということについても、そのことが自分の本業にとっても良い事だ、という認識になったのだと思います。結局は出来上がったものがユーザーに支持されれば、民間事業者の事業もうまく回るというコンセンサスを得てゆく作業、この内容を見ていますと、恐らくこれまで支社の職員がかなり苦労したと思いますが、概ねいい方向に向かっているのかなと、手前味噌的に評価しているところです。
與謝野
 もう1つ、質問があって、再開発コーディネーターという職能の将来についてのご質問がございましたが・・・。
岡田
 ご質問は、端的に言うとコーディネートフィーで食っていけるのか、という質問と承りましたが、事業のレベルで次の事業参画の為の収益を上げるようなことも必要ではないか、平たく言えばそういうご質問だと理解していいでしょうか。
 都市再生推進業務は、もともとの特殊法人改革の基本である、民に出来ることは民に任せる、民に出来ないことを独立行政法人が実施するということが、基本的な道筋です。私見という前提であえて言わせて頂きますと、先ほど言いましたように、都市機構の業務には2本柱があるわけです。1つが都市再生を推進するということで、もう1つが77万戸の賃貸ストックを、資産価値としては種々有りますが、旧公団から引き継いだ賃貸住宅を国民の貴重な資産として再生活用していく業務。その内の都市再生推進業務においては、民間がやれば出来ることは民間でやってもらうという事は、儲かるところは全部民間にやって頂くということの裏返しなので、コーディネート業務だけを切り取って、例えば私共の職員が汗をかく人件費が回収出来ないとなると、そこはやっぱり辛いところがあるんですが、都市再生推進業務で、例えば土地を取得し、敷地整除の上土地を売却することにより収益を上げることを念頭に置いた業務の進め方は、私共の使命でないし、又可能性としても低いと考えます。
 いわんや、密集市街地となると、公的支援なくして事業遂行などバランス的にも難しい都市の改編です。従って都市再生推進の、先ほどの5つの業務分野の中では、それなりに収益を上げていくということは難しく、むしろ組織の名前にあるように、本来の一番の看板業務分野ではありますが、そこは何とか赤字を出さないようにしながらやって行く、そこで私共の経費を捻出するというのは困難極まるものと考えます。
 そういう意味で言うと、もう1つの77万戸のストックを、資産価値としては種々有りますが、今後の日本将来像としては、人口も減りますし、高齢化もどんどん進んでいくわけですから、77万戸を量的にも質的にもシェイプアップして行き、しっかりと経営していけるようなストックに再生してゆく。仮に収益を上げるとしても、そちらの方向であるのではないかというのが私の考え方です。現に、このプロジェクトでも12haの内5000u程度は私共が直接取得しているわけですが、その用地についても定期借地方式なので、そんなにそこで利益が得られるといったスキームではなく、基本的に私共は、赤字は出してはないですけれど、そこで大きく収益を上げられるという構図にはなってない。恐らく私共の役割としての都市再生は、そういうものだと考えます。
與謝野
 他にご質問ございませんでしょうか。 ちょっと私の方からよろしいでしょうか。先ほどハードネゴをされたご苦労談がございましたが、こういうコーディネーターの交渉の勘所について、実務の場面での交渉には、こういうところに心したほうが良いとか等について差し障りのない範囲で、皆さんにナレッジ・シェアリングをしていただければと思います。
岡田
 勘どころというのは難しいのですが、先ほど申し上げました通りで、著名な大企業相手ですので、その名を汚すようなことが無いようにと。1円でも高く利益を得るがために土地利用、土地処分に難色を示す場合には、永い年月に渡っての公共団体とのお付き合いなどに言及し、またキラリと輝くようなものを足跡として残す必要があるのではという観点で、先方のプライドを尊重する心構えが必要と感じました。
與謝野
 ありがとうございました。 ほかにご質問はございませんでしょうか。
奥村((株)イリア)
 今コーディネートということで、いろいろな各地区参加者の思いをコーディネートされたということを伺ったんですけれども、一方において、それを進めていく上で資金と言いますか、お金がうまく回らなきゃいけないということがあると思うんです。そういうことに対して、コーディネーターとして、いろんな助成金だとか融資、そういうものを手当てしていく仕組みというか、そういうものがくっついているんでしょうか。
岡田
 そういう意味で言いますと、旧公団時代には、例えば民間支援型賃貸住宅制度とよく似ている制度として、土地をお持ちの方が賃貸住宅経営をするのに、私共が上物を建てて、割賦でお譲りするという制度があったわけですが、それなんかは、まさに機能としてはファイナンスの機能があったわけですけれども、今後それは一切行えないことになりましたので、現在直接的なファイナンス機能は持っておりません。
 ただ、流動化だとか、そういった資金調達方式のノウハウを一緒になって、私共もまだ勉強途上なのですが、そういう面でのアドバイスは出来るとは思いますが、民間事業者の資金繰りに対して、私共が直接ファイナンスするということは出来ないことになっています。
 ただ、1つあるのは、関連公共施設制度というのがありまして、従来は学校とか道路、公園、全部公共施設、あるいは公共公益施設に限られておりましたが、私共が行っている事業に関連して、民間企業が公共施設等を整備するという場合には、割賦制度が認められておりますので、そういう意味でのファイナンスの可能性はあるかと思いますが、実例としては非常に少ないです。
奥村(潟Cリア)
 都市再生機構を使うことによって、例えば、政府系の金融機関からお金も借りやすくなるとか、そういうことは……。
岡田
 それはございません。むしろ、趣旨は、民間投資を如何に具体的に都市再生に誘導するかというところなものですから、民間資金を調達していくためのいろいろな知恵出しはしますが、民間事業者に対して官側の資金を持ってくることは出来ません。
野崎((有)NOVA建築計画研究所)
 これだけの規模の事業ですと、地方自治体として、例えば都市計画公園もあるし、道路の整備もある。インフラの負担が自治体に相当あると思うんです。それについてのご説明がなかったので、ちょっとお聞かせいただきたいんですが。
岡田
 先ほど、任意事業の面整備で国の資金を調達する仕組みとして、住市総と簡単に言いましたが、そういう制度があるわけです。先ほど説明しましたように、すぐ隣までがそういう事業エリアになっておりましたので、住市総事業エリアを拡大して頂き、基本的には道路とか公園の整備については、公共団体に対して、通常の道路とか公園という公共施設整備の補助枠の外数で国の補助が入るスキームがありますので、当然国費がこのプロジェクトに入っております。
 ですから、川口市に全部負荷がいっているということではないです。
 ただ、川口市の負担としては、1haの近隣公園、これも土地の半分はサッポロビールが寄附されたので、1haの近隣公園の用地費の半分の補助裏分と、公園の上物整備の補助裏分の負担がかかっておりますが、市としても市民の防災上の安全の確保の観点から一時避難場所としての近隣公園の確保は重要な政策であり、それに応える形で、その用地の半分は無償でサッポロビールが寄付することとなりました。かつアートギャラリーはサッポロビールが建物を建てて、市民に寄贈するわけですので、官民うまくバランスした負担に落ち着いたと考えます。
羽賀(JR日本コンサルタンツ(株))
 計画の段階のお話を質問させていただきたいと思います。
 これだけ広い地区の開発計画でございますけれども、事業の計画を立てる時に、地域の中でのそういう計画を基本的にお考えなのでしょうけれども、実際にはビール工場であったわけで、その時のこの地区に対する人とか物の動きがあると思うんです。それが今度こういう形で開発されますと、人も物もガラッと変わってくると思います。そうした場合に、この地区がこういうふうに整備されることによって、この地区の周囲のインフラ部分に対する影響というか、そういったものはなかなか、経済の問題もあったりして、計画の中で具体的な計画までいかないのかもしれませんけれども、どの程度推測されたり、お考えになっているのかということです。
 例えば、これはちょっと駅から離れていますけれども、これによって何万人かの人が張りついた時、あるいは従業員がいますので、そのときのJRの駅の設備はどうなのかとか、周辺の道路、これもどうなんだろうか。特に下水なんかもそうなんでしょうけれども、そういった地区の周りに対する検討というのはどの程度なさるものなのか。大ざっぱで結構なんですけど、教えていただければと思います。
岡田
 重要な視点だと思いますが、JR川口駅については、結果的には東口の駅広も確かに狭い感じがします。ただし、それは駅前の全体の駅前広場のありようだとか、それはもう少し上位の計画になっていくと思いますので、私共も1年といったこの限られた期間の中で、そこまでの広がりで議論は出来なかったんです。そうは言っても、苦慮しましたのは産業道路の交通問題です。工場の東側サイドが接している道路ですが、これについては相当苦労しました。交差点の改良とか、川口市とも相当協議を実施してきております。先ほど言いましたような協議の中で、交差点の拡幅、この地区の産業道路サイドに接している所は、当然セットバックしますから、道路は拡幅されたり、その結果として右折レーンがとれたり、あるいはこの地区への車の入り方も少し制限をするとか、対症療法的にしか出来てないかもしれませんが、交通量の比較的多い産業道路に接している事のハンディキャップについては、県、市といろいろ議論しながら最終的に決めていったという経緯です。
 もともとの産業道路自体が、非常に負荷が高くて、そこをこのプロジェクトだけで全面改良というのはなかなか難しいものですから、このプロジェクトで更に負荷が高まる部分については、負荷を高めない程度への何らかの改良等の措置をこのプロジェクトサイドでも対応する必要があり、最終的に合意出来たということが正直なところです。抜本的な駅前を含めた広域的な道路の計画だとか、駅広場計画という議論まで踏み込める時間的猶予がなかったのが正直なところです。
松井(松井一建築事務所)
 ランドスケープ計画における近隣公園・並木道に過分と思われる植栽などについては、同じ理想を抱く立場の者として誠に同慶の至りでありますが、将来の成長した樹木の落葉等維持管理清掃について、行政・企業・有益者である市民へどの様な形で負担が課せられるのか、また合意が得られているか懸念するところです。
 その管理について、市民参加型エコサイクル構想の実現化など期待するところもあります。そこで、エリア内のパブリックアート計画の概要等についてもあわせて、プランナーとしてのご意見をお伺いしたく思います。
岡田
 ご質問頂いた内容は、私共機構としても重要な問題であると認識している課題です。
 まず維持管理の負担についてですが、行政、各事業者及び周辺居住者とは、協議の中で、地域のシンボルとなりうる、魅力的な環境が実現するということに賛同頂いており、同時に、落葉等メンテナンスに課題があることについてもご理解頂いております。
 ご指摘のとおり、整備完了後も良好な管理状態が維持できる様に配慮がされている必要があり、今後関係者と検討を進めていきたいと考えております。
 また、今回の計画においては、従来の「パブリック・アート」に相当するものではなく、ストリートファニチュアやサイン、舗装など、具体的な機能を有するもののデザインの質をあげることを意図し、ランドスケープ全体がパブリック・アートと呼ぶことのできるものを目指しており、その中には川口の地場産業である鋳物、ビール工場の記憶を留めるための蒸留釜の利用等、土地の記憶を表象するものも含まれております。
 なお、近隣公園内には川口市が市民と共同で運営する「アートギャラリー」が計画されており、固定的に設置されるようなアート単体ではなく、そこでアートに関わる市民の活動そのものが「アート」となる、よりダイナミックなしくみが出来ればと考えております。
與謝野
 他にご質問はございませんでしょうか。
 特にございませんようでしたら、これで本日のご講演を終わらせていただきたいと思います。
 今日は、都市再生機構の業務内容と役割のご説明、及び具体的なコーディネートの実務のご紹介等を含めて、都市再生「事業」の仕組みと抱える諸課題についてご説明いただきました。
 皆様におかれましては、今日の貴重なご説明の内容の数々を日ごろの皆様のお仕事に生かしていただければ幸いであります。
 それでは、岡田理事の今後のご活躍を祈念して、最後に大きな拍手でお礼の気持ちを表して頂きたいと思います。(拍手) ありがとうございました。



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