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第228回都市経営フォーラム

『未来世代のための街づくり:ケミレスタウン・プロジェクト』

講師:  森 千里氏 千葉大学大学院医学研究院環境生命医学教授

 
                                                                            注釈:「ケミレスタウン」は登録商標です。

日付:2007年12月21日(木)
場所:日中友好会館

                                                                            
1.はじめに:環境と健康

.ヒトの発生

3.近年の化学物質問題

4.毒性学

5.対応策の実践:次世代環境健康学プロジェクト構想と、NPO次世代環境健康学センター

6.環境健康学トランスレーター(正確な情報伝達のための人材育成)

7.影響判定法の確立のための化学物質の健康診断 (現状認知促進)

8.体内濃度の削減方法の開発(予防法の確立) 

9.社会全体の対応への試み:環境ユニバーサルデザインからケミレスタウンプロジェクトへ

10.シックハウス症候群問題

11.未来世代の街づくり:ケミレスタウンプロジェクト

12.おわりに

フリーディスカッション



 

 

 

 

 



與謝野 それでは、第228回目のフォーラムを開催いたします。
  本年最後のフォーラムになりますが、2006年もあと10日足らずとなりました。この1年もいろいろな出来事がございました。社会現象としても自然現象にも異様な兆候が見られた、誠に騒がしい1年でもございました。異常気象、環境異変にかかわる社会不安、そこから起因する幼児、子どもに危害を加える忌まわしい事件が多発し、「命」の尊さを考えさせられる1年でもあった、と思います。
  本年最後のフォーラムは、このようなことも振り返り、都市経営の分野から見れば少し異分野の領域になりますが、医学、それも環境生命医学という新たな分野から次世代のための街づくりを果たすべく活躍しておられます第一線の専門家をお招きしたフォーラムとさせていただきました。
  皆さんにご紹介させていただきます。千葉大学大学院医学研究院の環境生命医学教授であられます森千里先生でいらっしゃいます。
  森先生のプロフィールにつきましては、お手元にお渡ししております通り、ご専門は環境生命医学、解剖学、生殖毒性学を研究しておられまして、現在環境予防医学の観点から、次世代の健康増進とクオリティー・オブ・ライフ(生活の質)の向上を目指した研究や実践的対応など次世代環境健康学プロジェクトを掲げておられ、ケミレスタウン・プロジェクトに取り組んでおられます。化学物質や環境ホルモン、我々の生活環境あるいは人体に及ぼす影響を調査、研究されまして、健康被害をなくして生涯を通じて健康的で豊かな生活を維持し続けられる街、これの実現に向けて、実際に大学キャンパス内にモデルタウンを建設されて、実践的な予防研究にも取り組んでおられる方であられます。
  異分野を取り込んだこうした知見の融合といいますか、都市計画・建築計画学と医学との融合という、今の時代に最も求められている知見の統合(INTEGRATION)の潮流が、ここにも現れている感慨を覚えておりますことから、この度の企画とさせて頂きました。
  森先生は、明治の文豪であり旧帝国陸軍の軍医総監、医学の最高権威でもあられました森林太郎、つまり森鴎外の曾孫さんでいらっしゃいます。後のご講演の中でもご紹介があると思います。
私からのご紹介は以上までとさせていただきまして、それでは森先生、よろしくお願いいたします。(拍手) 
 
 
 こんにちは。千葉大学の森と申します。
  今日は、都市経営フォーラムにお呼びいただき、講演の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
  それでは、「未来世代のための街づくり:ケミレスタウン・プロジェクト」についてお話をさせていただきます。

1.はじめに:環境と健康

(図1)
  まず、私は医学部に所属しておりまして、医学部の学生や大学院院生が、将来しっかりした医者や医学者になることを願って指導しております。
  医学の分野が取り扱うのは健康ということになりますので、今日は、まず最初に、健康という話を少しさせていただきます。
(図2)
  まず、皆さんも当然、自分の健康が気になると思いますが、健康の成立には、内因である遺伝的要因と、外因である環境要因と、生活行動が関係しております。これはどういうことかといいますと、風邪が流行っている場合は、インフルエンザ等の風邪の原因となるウイルスが蔓延して環境が悪い状態になっているので、健康を保つために外出後の手洗いやうがいを、よく行うようにされていると思います。つまり、環境要因が健康に良くない状態になっている場合は、自らの生活行動の改善で健康を保つように努力する必要があるということです。一方、生活習慣の改善では直しようがないケースでは、市民の健康を保つために環境を変えなければいけないこともあります。
(図3)
  では、医学というのはどういうことをやっているかというと、「医の学」と書くように学問なので、学術研究を主として行っております。医学と聞くと、みんな難しいことをやっているように思われるかもしれないですけれども、簡単に言うと、3つのことをやっています。第1は、病気(疾患)の原因を究明することです。第2は、その治療法を見つけ開発することです。そして、第3は、その病気を予防する方法を見つけることです。
ちなみに、 医療は、医術で治療することを言います。
病気の原因には、環境要因と遺伝的背景(要因)が大きく関係しています。 今、皆さん方の周りで起こっている大抵の病気は、環境要因と遺伝要因の両方が関係していると考えられております。特に、最近よく耳にするメタボリックシンドロームとか生活習慣病というのは遺伝的になりやすい人もいますけれども、日頃の環境という環境要因が原因にあります。この環境には、生活習慣も入ります。
ここで20世紀の医療と21世紀の医療を比較します。20世紀の日本の医療を簡単に申しますと病気ありきで、病気になった人の治療を主としておりました。早期発見で早期治療をしましょうというのが目標でした。一方、21世紀の医療は、医療費の問題も根底にあり、予防医学を主にして考えております。病気になりやすい人をまず見つける。そして、病気になりやすい人がその疾患、例えば生活習慣病を発症する前に発症予防の対応に入る。そうすれば治療費もかからず、本人もハッピーだし、健康な生活が送れる。つまり、未病の段階で対応して、発症を予防すると同時に、本人の健康増進に趣をおきましょうということです。さらに、最近の 予防医学は、健康に良くない環境の改善も大事だという時代になってきました。
  話をちょっと戻させていただきます。医学のすることの最も大事なことは、病気の原因を見つけ、治療を見つけ、予防法を見つけると言いました。医学の分野は大きく分けて3つあります。患者さんを治す臨床医学と医学生を育てる基礎医学。そして、もう1つが社会医学と言って、社会に公衆衛生を広げて病気を予防する分野があります。私は基礎医学も行っていますが、社会医学の活動も盛んに進めております。
(図4)
社会医学の講義を学生にする時に説明するお話があります。英国の結核の死亡率は、1850年から2000年にかけてずっと一定の割合で右下がりに下がっています。医学で大事な3つのステップ、第一ステップの原因の究明である結核菌の発見の段階、第二ステップの治療法開発の抗結核剤の開発の段階、そして第三ステップの予防法のBCGワクチンが出来た段階において、結核の死亡率が急激に減少すると言うことはなく、常に一定の割合で減少していったのです。この減少の理由は、環境が整備されたこと、つまりインフラ整備ができたことが死亡率が下がったことに繋がっている、というのが社会医学の研究から判ったことです。街を造るに当たって上下水道がしっかり完備されていることで、実は感染症の予防がしっかりなされ結核患者が減少していったと理解されているのです。この環境改善型予防医学の実践が21世紀の医療において、最重要視されているのです。
  この未病の段階で対応しましょうという考えは、東洋医学の考え方ですが、
3000年前の中国の書に、「聖人は未病の段階から治す」と記載されております。
  今日のお話の最後に街づくりについてお話いたしますが、私たちが行おうとしている街づくりは何のためかというと、21世紀の医療の方向性に沿った予防医学を基盤とした健康を重視した街づくりを行ってみましょうということなのです。
我々が行っている公衆衛生とは、「地域の組織的な努力を通じて疾病を予防し、寿命を延ばし、精神的にも肉体的にも健康な状態にする技術・科学」と定義をされていています。公衆衛生の基盤として予防医学があります。最近の言葉で言うと、ヘルスプロモーション。もっと皆さんに伝えやすいキャッチフレーズとしては、「みんなの健康をみんなで守り、向上させるための活動をみんなでやりましょう」ということになります。 
(図5)
  この公衆衛生という考えは、憲法の第25条にも出ていて、公衆衛生の向上、増進は国がしなければならないとされております。
(図6)
  また、予防医学は、時代により健康障害の内容が変化するので、それに対応して新しい展開が要求されております。そのためには、「疾病の予防と健康の保持増進のためには、医学的技術だけでなく、工学的、社会学的にも多方面の知識と技術を融合して結集する必要性がある」と言われており、私たちが今やろうとして街づくりは、このような背景のもと前に進んでおります。
(図7)
  もう少し予防医学について説明しますと、予防医学には、健康増進を行う1次予防と、早期発見、早期治療を行う2次予防と、再発防止とリハビリ等を行う3次予防があり、これらは主に個人の努力でなされていきます。最近、さらにもっと広い意味で、1次予防の前に0次予防が必要だという考えがでてきました。つまり、環境改善による予防の考え方です。これは個人の努力では対応できないもので、社会、自治体、国のレベルでの対応を必要とする予防です。
(図8)
  環境要因には、物理的要因、生物的要因、社会・文化的要因、そして化学的要因の4つ要因があります。病気が起こる時には、どれか1つの要因が主として病気が起こる場合もありますけれども、いくつかの要因が重なって起こる場合もあります。
  いろんな疾患を持った人が病院に来るというのが、医学の現場ですけれども、何が原因かというと必ずしも1つでないことが多々あります。そういう場合の治療法は、原因として思い当たる環境要因をみんな削減してみて、どれが原因なんだろう探すこともあります。原因が特定できなくても、最終的に疾患が治ればいいという考え方もあり、原因が明確でなくても症状の改善を願っていろいろ対症療法を行う医療・医学も必要なことを理解していただければと思います。
(図9)
  本日のお話しの主題は、環境要因が健康に悪影響を及ぼす時の医学的対応は、先程の医学の3つのステップ、原因を見つける、治療する、予防するというのを同じように考えると、まず第1段階として原因となる環境を見つける。そして、第2段階として、その環境が原因となる病気の予防法を開発する。さらに第3段階として、治療法というより、原因となる環境が何で、どうやったらいいのかということを見つけて、それを社会に還元して、なるべく早く知らせ対応するということになります。
  最近、サステナブル(持続可能性)という言葉が使われ始めましたが、私たちが行おうとしている事は、サステナブルとも関係している。近年、大量生産、大量消費、大量廃棄の急速な経済成長で、環境問題がたくさん起こっている。水質・大気汚染とか地球温暖化、オゾン層の破壊等がある。こういう環境問題は地球の持続性に関係してくるので、従来の各々の学問だけでは解決できないため、持続可能性学とか地球の持続可能性について探求する学問としてサステナビリティ学というものが作られてきました。サステナブルディベロップメント(持続可能な発展)ということを考えて今後は行動・活動することが必要だという時代になってきたのです。
  それと同じように、高度成長期の後に急激に増えてきた病気があります。それは化学物質による健康影響であるシックハウス症候群、それから、アレルギーなどです。アレルギー疾患のアトピーなどは、シックハウス症候群を起こすような家の中に住んでいると、5%から10%の人は症状が悪くなるということも医学的に判ってきております。
(図10)
  それから、生活習慣病、心の病などもあります。高度成長期、日本の生活、ライフスタイルが変わったことによって起こってきた環境病です。十数年でヒトの遺伝子の配列が変わるということはないので、原因として考えられるのは環境要因ということになります。
  そうすると、健康に関しても、このサステナビリティ学に似たようなサステナブルな健康状況を作るための学問が必要となる。
  私たちの予防医学の研究は、サステナブルに健康を保つにはどうすればいいかという研究に繋がっています。私たちは、2002年に、次の世代が多くの化学物質に汚染されていることを示し、その対応策として次の世代(胎児)を基準とした環境予防医学が必要ということを社会に投げかけました。
(図11)
  この時点では、サステナビリティとかいう言葉が余り使われていなかったんですが、サステナビリティの語源としてよく使われるのは、アメリカ先住民の諺の「大地は7世代先の子孫からの預かりもの」というものがあります。
  この発想と私たちが2002年に提唱し始めたものは同じ考え方をしていて、私たちの未来世代のための予防医学というものは、サステナブル・ヘルス・サイエンスに繋がっていると言えるのです。
(図12)
  少し化学物質の基本的知識の整理をさせていただきます。化学物質の環境影響は、タバコを考えていただければわかります。要は、タバコを吸えば吸うほど健康への悪影響のリスクが上がります。肺癌になるリスクとか他の疾患に結びつくリスクです。これは、曝露量、つまりどのくらいの頻度でどのくらい喫煙するか、何年喫煙するかが問題になります。影響の評価はリスクの強さと曝露量で決まります。曝露量というのは喫煙期間と喫煙量ということになります。
(図13)
  肺癌の例を見ると、たくさん吸っている人の方が当然肺癌で死ぬ確率は高いし、当然肺癌になる人も高い。禁煙すると当然リスクは下がってくるということになります。
  基本は、悪い生活習慣を良い方に直せば健康は保てるということになります。最近の医学の進歩で判ってきたこととして、糖尿病や高血圧のような生活習慣病対策は、食生活に気をつけて体重管理をする介入型の生活指導が薬より良く効く、ということが米国の医学研究から判ってきました。
  環境要因による影響は、先ず的確な状況を判断して、教育を含めた介入をしてやる方が、薬を飲むより効きがいい。どうしても治らない場合は薬も当然併用しなきゃならないですので、薬がだめだと言っているわけではありません。ただ、薬をファーストチョイスにするよりは、先ず環境を変えたり、自分のライフスタイルを変えることが大事だということを言っています。さらに、環境要因による影響は、大人と子供では違い、子供のほうが影響を受けやすいということも多くの医学研究から判ってきました。
  子供の成長過程で、特に小学校に入る前ぐらいは、化学物質が外から体の中に入ってきたら、吸収する量は大人より高く、外に出す能力は低い。要は、ため込みやすいという状態があります。

2.ヒトの発生

(図14)
  ここで、ヒトの発生について少しお話をします。ヒトはお母さんのお腹の中で受精してから大体280日お腹の中にいて出産となりますが、ヒトの体は受精後の最初の2カ月の間(60日)ででき上がってきます。ただ、この発生過程でちょっとした揺らぎやひずみが遺伝的あるいは環境的要因によって起こると、発生過程で死亡(流産)したり、先天異常や癌化などが起こることがあります。
(図15)
  受精してから子供が生まれてくるのは、ネズミは90%ですけれども、ヒトの場合は実は4割にも満たない。受精後6割以上がヒトの発生過程で流産しているのです。ヒトとネズミは全然違うということを知っていただきたいと思います。
(図16)
  6割流れる中の半分は受精してから着床、つまりお母さんの子宮に受精卵がくっつくまでの過程で流れ、残りの半分はその後の妊娠の途中の過程で流れているのです。さらに、無事に生まれてきても、出生時、見た瞬間にお母さんたちがお医者さんから、「ちょっとお子さんにはハンディがあります」と言われるケースが、大体1%から2%の頻度で起こっているのです。どんなハンディがあるかというと、手の指がくっついているとか、おしりの穴が開いてないとか、口がちゃんとできてないとか、そういうハンディです。
  さらに生まれた時に気がつかず、学童期などの成長過程で見つかるケースは(内臓の異常や知的障害を含む)、6%から7%にもなっております。日本では毎年100万人が出産されておりますので、毎年7万人ぐらいのお子さんにハンディがある現状をご理解下さい。
(図17)
  そういう原因として、赤ちゃんがお腹の中にいた時のお母さんの環境が関係しているのです。例えば風疹にかかったとか、明らかに何かの薬を飲んだとか、原因がはっきりしている場合もありますが、はっきり原因が判っていなくてもいろんな環境要因が合わさって影響している可能性が高いのです。
(図19)
  化学物質の胎児への影響は、ヒトの胎盤経由で起こった過去の被害で判ってきてます。1950年代に公害でご存じかと思いますが、胎児性水俣病という子供の神経発達異常が水銀で起こり、1960年代にあざらし肢症(四肢短縮症)、サリドマイドが起こって、1970年代に合成女性ホルモン(DES)で、子供はちゃんと生まれてきたんですけれども、その生まれたお子さんが大きくなったら、膣癌になったり、精子の数が少なかったりという被害が起こっています。
  お母さんの胎内の状態って、子供たちに本当に影響するのという疑問ももたれるかもしれませんが、お母さんが30歳以上でお子さんを産んだ場合は、30歳以下で産んだ時よりも、そのお子さんが食物アレルギーになる率は非常に高く、しかも第1子の方が第2子以降よりも高いという報告もなされています。お母さんの子宮内環境で、子供の疾患が起こりやすくなることがあるのです。

3.近年の化学物質問題

(図20)
  ここからは、生活環境における化学物質の話になります。今、家の中の空気からも、食べ物からも、化学物質が本人の知らないうちに自分の体内に入ってくる状況になっています。
  近年の化学物質問題は、大きく分けて2つになります。1つ目は、大量・急性曝露による被害で、急性毒性の症状をしますものです。もう1つは、微量・慢性曝露による被害の問題です。例として ダイオキシン・環境ホルモン問題、シックハウス症候群や更にその症状が進んだ化学物質過敏症、そしてアスベスト問題などです。
(図21)
  短期に多量に曝露されるケースは、医療的にも国の政策でも対応の仕方は確立されてきていますが、微量で長期曝露されるケースは影響がはっきり見えにくく、特に子供たちに影響が出ているケースなどは余計に影響評価が難しい点などから、対策はほとんど未着手状態なのです。それゆえ、この問題を何とかしなければならないと考え、行動を開始しているのです。
  化学物質問題の対策については、とにかく危険性を下げる方法を考える。それが次の世代のためになるので、毒性の強度を下げるか、曝露濃度を下げるか、曝露時間を短くするという対策が必要なのです。
(図22)

4.毒性学

 化学物質の影響は、化学物質の濃度を上げていくと、ある濃度を超えた時に症状が出る。また、さらに濃度が上がっていくと症状はだんだんひどくなる傾向がある。
  この有効刺激の中で、最初に症状(反応)が出てくる濃度が閾値(いきち)になります。
  毒性評価に半数致死量というものがあります。ある濃度を投与して死ぬか死なないかを検討します。動物実験で毒性を調べますが、主にラットの雄の大人を用います。毒性評価でネズミ(ラット)でAという濃度までなら安全という値が出てくると、ヒトでどこまで安全化ということを言うためには、安全係数というものを掛けます。ネズミからヒトの種の違いを考慮し10分の1、各々ヒトの間には個体差(感受性の差)を考慮し、更にに10分の1を掛け、ヒトではAの100分の1の濃度まで安全という事にします。最近は、更に安全性を考える上で、大人と子供の違いも考慮して、更に10分の1を掛ける必要があると言われております。
(図23)
  これをもうちょっと判りやすく言うと、風邪薬が良い例です。薬も化学物質と同じですから、風邪薬の飲み方の説明として、大人が3錠、子供は1錠とされていることはご存知ではないかと思います。大人と子供は同じ量じゃないことは、ご理解いただけると思います。
(図24)
  未来世代のための街づくりとして我々が行っている考え方の基盤は、子供のためには、大人を対象とした基準に安全係数の10分の1掛けた社会を作っていきましょうということ事です。
  これから、人の健康リスクというものを考えていく上で、胎児や子供、乳幼児を基準に少し考えてみましょう。
  私たちの研究内容を簡単に説明すると、化学物質の胎児曝露の研究を進めていて、へその緒の中からいろいろな化学物質が検出されることが判り、第1子を出産するお母さんの年齢が高いほど子供にいく化学物質量は増え、第1子のお子さんの方が第2,3子のお子さんより化学物質濃度が高いことが判ってきました。お母さんの中に溜まっていた化学物質は、子供に移行することによってお母さん内に溜まっている化学物質の量が減ります。ですから、2子目、3子目を産む時のお母さんの化学物質蓄積量が下がっておりますから、2子や3子のお子さんにいく化学物質量も減っているのです。
(図25)
  先程、第1子の方がアレルギーが多いという研究データが発表されていることをお話したが、1子目にいろいろ化学物質が多く移行していることが関係しているかも知れません。健康リスクを考える上で、現在の曝露状況の平均が安全域にあるなら大丈夫という考えもありますが、自分の子供が平均より数倍高い場合、それを不安なく安全と考えられる方は必ずしも多くはないと思います。図は、へその緒に含まれる残留性化学物質量を加算した時に、各赤ちゃんにおける化学物質の複合汚染状況を見たものですが、Eという赤ちゃんとかHという赤ちゃんは、普通のお子さんよりも量がかなり高いことが判ります。これが今の日本人の胎児の複合汚染状況ですが、平均の濃度では現状では安全と言われていても、平均より数倍から10倍以上高い子供が大丈夫かどうかは、誰にも判らないのです。
(図26)
  私たちが化学物質問題の対策を検討する時には、各々どういう人たちが本当に健康リスクを持つかを考えなければいけません。未病の段階で(症状が出る前に)対応するためには、ハイリスクの人たちを見つけなければならない。そのためには、ハイリスクグループに含まれる人を見つける方法を開発しなければならない。
(図27)
  その方法を見つける検討を進めていく中で、私たちは血中PCB濃度が高い方は、他の残留性化学物質濃度も大体高いという傾向が判ってきた。このことは、PCB濃度を測定したら、その方の残留性化学物質曝露状況がある程度判ることを示しております。
(図28)
  ここまでのお話をまとめると、皆さん方も全員、化学物質にかなり汚染されています。採血して化学物質の血中濃度検査を行ったら、全員からPCBが検出されますし、ダイオキシンも出てきます。もしかしたら、たくさん検出される方もいます。そういう方は、何にも症状が出てきてないから何ともないと言うけど、皆さんが大丈夫でも皆さんのお子さんが大丈夫かどうか、お孫さんが大丈夫かどうかというのは、全く別な話だということ知っていただきたいのです。
  今、日本だけでなく、世界中が化学物質の複合汚染状態になっております。この現実は不安を煽ることになるし、お子さんのうち、9割の方が大丈夫でも、1割の方で疾患が出る可能性があるとなると、それに対応しなければならないという事になります。

 
5.対応策の実践:次世代環境健康学プロジェクト構想と、NPO次世代環境健康学センター

(図29)
  化学物質の複合汚染が、今後の日本社会にとって新たな問題であると判断したため、これからお話しする、化学物質問題の対策を主とする研究プロジェクトを始めたのです。
  サステナビリティ学も含めこれからは、次の世代とかその先の世代を守る社会を作ることが大事と考え、特に健康に留意して実践していくプロジェクトを考えたのです。
  まず第1の研究実践プロジェクトとして、正確な情報を伝えるシステムを作ることを考えました。多くの方に、この問題を認知していただく手段の確立です。研究者と一般の方の間の架け橋になる方の育成です。
(図30)
  次の第2の研究実践プロジェクトとして、数値で自分の汚染状況のデータをお知らせする方法の確立です。これが化学物質の健康診断です。
(図31)
  第3研究実践プロジェクトとして、本当に化学物質濃度が高かった時に、どうやって下げるのかという対応法の開発です。
以下の図のように、この3つの研究実践プロジェクトをまとめて、全体として次世代の環境と健康を考える学問を作りましょうということで、次世代環境健康学プロジェクトを3年前に始めました。 将来世代の健康と健やかな発達、発育、QOLの向上を目指すのが研究プロジェクトです
(図32)
さらに、 NPO次世代環境健康学センターを大学発で開設し、市民の力を使い、新しい力で環境改善をしましょうという流れを作りました。
  NPO次世代環境健康学センターを使ってまず何をしたかと言うと、化学物質汚染の現状を認知してもらって、この問題の対策の行動に移ってもらうために、化学物質の曝露の測定事業と、化学物質の医学的知識を社会に広めるトランスレーターという人材育成事業を開始しました。また、一般的な市民講座を2ヶ月に1回ぐらい開催しております。

6.環境健康学トランスレーター(正確な情報伝達のための人材育成)

(図33)
  トランスレーター養成講座とは、身の回りにある化学物質の危険性や健康被害を防ぐ方法などを、一般の人たちに判りやすく伝えることのできる専門家を養成する取り組みです。 
  環境健康学トランスレーターという名前の資格をNPOとして新たに設けて、一定の学歴のある人を対象に、医学や化学など専門の講義と実習を受けた場合、試験に合格した人を認定します。
  そして、資格を持つ人に企業や学校、地域で開かれる講習会などで、化学物質の量と健康被害の関係や、被害を防止する方法などについて、判りやすく説明してもらい、化学物質に対する正しい知識を広めたいと思っております。
  この環境健康学トランスレーターは、集団教育を主として、皆様になるべく幅広く知識を伝えようという、研究者と一般市民の架け橋になるというものが目標です。
2005年秋から第1期を始め、現在2006年第2期の養成講座を行っています。参加者としては、全国からいろんな方が受講されに来られています。学校の先生とかNPOの方、お医者さんも来るし、看護師さんも来ております。 
 

7.影響判定法の確立のための化学物質の健康診断 (現状認知促進)

次に、血中の化学物質の濃度測定を行い、自分の汚染状況を知ってもらおう(認知してもらおう)という活動です。これまでは、一般の人が化学物質の検査を受けるための施設や体制がありませんでした。それで、 発癌性や神経の発達への影響が指摘されている化学物質PCBの血液中濃度を安い費用で測定して、1人1人の健康管理に役立てる取り組み、化学物質の健康診断を始めました。
希望する人がいつでも採血して、血中の化学物質濃度を知ることができるよう、現在どこでも行われている健康診断のスクリーニングのようなものを確立したいと思っています。
(図36)
  この大きな目的は、先ず自分たちの体内の化学物質濃度がどのくらいだということを知っていただくということです。そうすると、高ければ生活改善して体内濃度を下げる。それが若い人たちに広がれば次世代のために良い事だと考えてやっております。実際やってみると、割と低い人もたくさんいるのですけれども、中には高い方がいらっしゃいます。食生活が原因だったり、あるいはその人自身が化学物質を取り込んだら排出しにくい体質のためだったりします。それはアルコールをたくさん飲んでも具合悪くならない人と、すぐ具合悪くなる人がいるように、同じように化学物質が体に入っても代謝・排出できない方とできる方がいるのです。

8.体内濃度の削減方法の開発(予防法の確立) 

(図38)
  次に、予防法の確立です。人体の化学物質濃度が測定できるようになると、次に、データが高かった人には、外から入ってくる量を減らして、体の中にある量をたくさん排出できれるようにしてあげればいいことになります。先ず、体の中に入ってくる量だけを減らすという段階もあります。これは、環境教育とリスクコミュニケーションが効果的と考えております。野菜についている農薬類は、洗ったり煮沸すると3分1ぐらいは落ちるというデータが報告されています。魚の中に入っているPCBとかダイオキシンは、湯通しをしたり煮たり焼いたりすると、お刺身で食べるより30%から50%体内へ入る量が少なくなるというデータも発表されております。このような知識を学んで、バランスよく食事を摂ることが化学物資の複合影響防止の上からも健康にいい、ということを知ってもらうのです。
  次に、もし本当に化学物質濃度が高かったら、薬を使って排出を促進しましょうかということになります。
  私たちは、2004年から2006年の研究で、人の体内にごく微量に蓄積しているダイオキシンを、コレステロールを下げる薬剤を使って最大で40%近く減らすことに成功しました。ダイオシキンは、一般の人の体内にも、健康には影響がないけれども、ごく微量が蓄積しており、年齢とともに増加していくとされています。コレステロールを下げる薬剤がダイオキシンやPCBと結びつきやすいことに注目し、この薬を投与しました。そして、血液中のダイオキシンの濃度を測定したところ、投与を始めてから半年後には、平均で20%、最も効果があった人では40%近く濃度が減少していることを見出しました。また、濃度の下がり方の特徴としては、化学物質濃度の高い人ほどはっきりダイオキシンとかPCBが下がっており、私たちの目的である化学物質濃度が高い人の濃度を下げることに一致した結果でした。
  私たちの考え方は、次の世代を守るためということになりますけれども、お母さんになる方あるいはお母さん自身がこういうダイオキシン、PCBの化学物質をたくさん溜め込んでいると、胎盤や母乳を経由して、子供に多量に移行することになります。そうすると子供の健康リスクは大きくなり、不健康な状態になりやすい。ですから、教育や医学的対応などの介入によってダイオキシン、PCBを、お子さんを妊娠される前に下げておいてあげれば、次世代の健康リスクは小さくなり、次の世代の健康の度合いやQOLが上がっていきます。

9.社会全体の対応への試み:環境ユニバーサルデザインからケミレスタウンプロジェクトへ

(図40)
  私たちの目標としては、こういう考え方を社会に広め、環境由来の化学物質による健康被害に対して、未来世代が生涯を通じて豊かな健康な生活をするための対応を考えましょう。1つは当然食品由来がありますし、吸気由来もあります。食品由来は次世代環境健康学プロジェクトで対応して、住環境由来はケミレスタウンプロジェクトで対応ということになります(図参照)。
(図42)
  次にリスクコミュニケーションの必要性について、ここで少しお話します。これは環境省のリスクコミュニケーションですけれども、化学物質に関しては、相手を説得するんじゃなくて、ちゃんと利害関係も含めて意見交換をする。要は、情報をちゃんと開示しましょうということです。
  ただ、リスクコミュニケーションで、胎児を基準にしてとか次の世代を基準にしてというのは、通常のリスクコミュニケーションで配慮する点で大きく視点が違うところが1カ所あります。
(図43)
  化学物質のリスクとベネフィットを見た場合、当然、化学物質にはリスクとベネフィットがあります。今の社会は、化学物質によっていろいろ便利な世界になったのは事実です。別にそれが悪いと言っているわけじゃない。ただ、過度に多くしてしまうと、そのリスクは、大人は大丈夫でも子供とか胎児に影響が出て、リスクの可能性が高くなることは多くの研究者から報告されております。
  ここで、大事なのは、次の世代は自分の意志でリスクを背負うわけではなくて、自分の意志ではリスクを回避できないということです。次の世代のリスクは、現世代の私たちが削減してあげなければいけない。
  ですから、私たちは胎児を基準にした環境予防医学を広めた方がいいと考え、環境ユニバーサルデザインという概念を広げられないかと活動してます。
  ユニバーサルデザインの考えは、1985年ぐらいに車いす生活のロン・メイス氏が米国ノースカロライナ州立大学に小さなセンターを作って、バリアフリーの考えを発展させ、ハンディのある方にもみんなにも便利なものを使った方がいいという考え方で、急に最近広がりました。それと同じように、環境も、次の世代とか胎児を基準にした環境を考え、多少、今、努力するのが大変かもしれないけど、ちょっと努力して、結局弱者にも、次の世代にも、そして一般の人にも調子がいい健康によい社会を作りましょうという発想につながり、未来世代のための街づくり:ケミレスタウン構想が出来上がっていきました。
  ケミレスというのは、化学物質(ケミカル)をなるべく少なく(レス)したという意味で、我々の造語です。NPO次世代環境健康学センターで、登録商標をとりました。
(図45)
  全体の流れの中では、次世代環境健康学プロジェクトの中の1つの実践研究活動として、みんなで化学物質を少なくする社会を作るということを試みでやってみましょうというのが、このケミレスタウン・プロジェクトということになります。
 

10.シックハウス症候群問題

(図47)
  シックハウス症候群は、居住空間を、それは職場も含めてですが、特にリフォームしたり新築したりして新しくして、そこの建材から揮発性の有機化合物が室内に出てきて、それを吸い込むことによって症状がでるものです。一部にはタバコことか殺虫剤、カビ、物理的要因というのも原因にあるけれども、家に根本原因があるものにシックハウス症候群という言葉を使っております。
  この疾患は、割と女性の方が多い疾患ですが、この頃はシックビルディング症候群(職場)、シックスクール症候群(学校)もありますので、男性の患者さんも多くなってきています。症状としては、不定愁訴が多く、いろんな症状が出てきて、風邪でも出てくる症状だったり、ストレスでも出てくる症状だったり、記憶力が低下したり、集中力がなくなったり、慢性疲労になったり、肩こりの症状が出てきたりします。最も多いのは目、耳、鼻の症状です。時には睡眠障害になったり嗅覚障害も出てきます。ただ、この疾患に典型的な病歴として、新しい家とかリフォームした家に入ると症状が出る。そこから出ると、症状が和らいだり消失するという特徴があります。この病歴が、疾患名をつけるときの決め手になります。
(図48)
  では、化学物質の健康影響の一つである、このシックハウス症候群に対してどうやって対応するかです。化学物質の健康影響対策の基本は、原因となる化学物質の接触を避けるのが基本ですが、住環境による健康被害では、原因が明確でなかったりして、今のままでは化学物質からの回避による対応は事実上難しいです。そこで、化学物質によって健康被害を受けやすい人たちの対応策として、ライフスタイルも含めた環境改善型予防医学を考え、少しでも人工化学物質が少ない環境で家を造ったり、さらに街でも造ったらいいんじゃないかということを思い立ち、ケミレスタウンプロジェクトを開始したのです。
  ここ数年、シックハウス症候群という言葉をが一般の方に広く知られ、名前が知られることによって、患者数は増える傾向にあり、潜在的な患者さんも含めて、5〜10%の人がこの疾患に関係しているのでは、と考えられてきております。今までなにか症状があっても気がつかなかったものが、この疾患を認知することで病院に来る人たちが出てくる現象が起こっているのです。 
  国は一応2003年にホルムアルデヒドとクロールピリフォス(白蟻駆除剤)に規制をかけて、その後住環境におけるホルムアルデヒド濃度がは低くなってきてます。しかし、この疾患が疑わしい患者さん数は減ってこないで、むしろ増える傾向も見られます。原因はホルムアルデヒド以外にあるかもしれないですし、今までこの疾患を知らない間は風邪だと思ってずっと放っておいたのが、自分がシックハウス症候群と思って病院に来るケースが多々見られます。

 

11.未来世代の街づくり:ケミレスタウンプロジェクト

 千葉大学は、2005年から「未来世代の街づくり:ケミレスタウンプロジェクト」を国や千葉県の地域再生や活性化の研究費に申請させていただき、採用されました。目標は化学物質をなるべく削減した街づくりで、一番やりたいのは、環境を改善したことによって、次の世代が元気な生活ができる街を造りましょうということです。化学物質の曝露状況を、大人の基準じゃなくて子供(次世代)に焦点を合わせた基準、つまり大人の10分の1という基準を採用して、それを目標に家を建てる。胎児を基準にした予防医学、つまり「胎児を基準とした未来世代のための街づくり」の試みを行うことにしたのです。
  いろいろな企業の方にお声をかけて、企業間交流をしたり、指針値を作ったり、実証実験したり、人材育成したり、情報発信しましょうということで、この千葉大学の柏の葉キャンパス内にパブリックゾーンとプライベートゾーンをもつケミレスタウンを作ることにしたのです。パブリックゾーンは、病院、公会堂、教室を想定したスペース。プライベートゾーンは、集合住宅や一軒家を想定した実証実験施設スペースです。
2005年の11月にケミレスタウン・コンソーシアムも作り、「未来世代の街づくり」を社会にアピールし始めました。当然大学だけではできない部分も多々あるので、NPOケミレスタウン推進協会を作りました。このNPOは千葉大学学長に理事長になっていただいております。どういう活動をしているかは、ホームページを見ていただきたいと思います。化学物質削減は建物だけでなく、街路樹や公園などにも化学物質を減らす、という取り組みをお願いしていきたいと思っております。 
建てる時に、こういう環境、健康、化学物質に注意したものをなるべく採用していただくように働きかけて、柏の葉地域に広がり、全体的に更にこのような成功例が重なることによって、千葉県あるいは首都圏に広がり、日本全体に広がって行くのが私たちの夢と思っております。 
(図53)
  このケミレスの目標というものも、ある程度3つのレベルに分けて考えています。ケミレスは、空間レベルの話になります。
  レベル1は部材の段階で、各々の部材では、素材に人工化学物質を使わない、あるいは少なくするという方法を模索し、一方吸着や分解するものを使いましょうという試みでもあります。同時に、サステナブルなものということも大事ですので、部材は後で燃やしたり何かすると化学物質がたくさん出るというのも困るので、注意しましょうと話合っております。
  レベル2は、部屋や家のレベルです。私たちが現場で困るのは、シックハウスになった子、シックスクールになった子供が、化学物質に配慮されていない保健室にも行けない。病院に来ても、大学病院はその対応になっていませんので、診察室だけ変えても、待合室とか薬局にいられないなどの問題が起こっております。それで、公共スペースで活用可能なケミレスパッケージ・ユニットを創出しようと考えております。保健室、子供病室は、このような部材でこのように建築し、このようなベッドや家具・机を装備するとよい、というユニットを提案するのです。指針値として、通常の10分の1の濃度を目標にします。
レベル3は、街のレベルで、そこの地域が環境と健康に注意を払うことが前提となり、ケミレスタウンに興味のある人が入ってくることによって、ライフスタイルも含めて、そこの社会がみんなでケミレスな街になっていくことを目指します。当然、街路樹などへ薬剤散布なども、注意を呼びかけれるような社会にしていきたい。 
今、2006年度で、建物の建設が進んでいます。化学物質の健康診断も、少しずつながら始めました。2007年度、建物が出来ますので試行入居を1年ぐらいやって、本格的な実証実験を、2008年度から3年やる予定です。大学としては先ず5年のプロジェクトと考えております。 
(図55)
  未来世代のための街づくりのコンセプトをまとめたのが、下図です。
  環境ユニバーサルデザインによる街づくりです。ちなみに、ケミレスとかケミレスタウン、ケミレスハウスという言葉に、一応NPOで登録商標をかけております。やはりしっかりした概念があって、このプロジェクトは社会に広がるべきものと考えているからです。
  最終的に、これは千葉大だけのグループじゃないですけれども、この地域が環境と健康をテーマにして、環境予防医学の世界のメッカになるようなキャンパスタウンになればと思っております。
(図57)
  このように活動を1年ぐらい続けていると、千葉県には、柏の葉キャンパスタウンの建設要件の中に、ケミカルフリー、ケミレスというものを目標要件に挙げていただきました。経産省の方にも何度か説明に行きました。五感で納得できる今後の暮らしとして、人間生活戦略の中の1項目の、安らげる暮らしの中で、なるべくアレルギーを防ぐ技術としてケミレスハウス、ケミレスタウン等が、2010年を目標にして、2020年までに実用化されるように記載いただき、行政の面でも、少しずつ使われ始めております。
(図58)
  最後に、ケミレスタウン構想というのは、私たちの今までの研究である化学物質の複合汚染というところから始まっております。大学に所属していて研究を行っておりますが、やはり社会医学を志しているならば、最後は社会を変える努力をしないと予防医学による実践にはならない、という気持ちが根底にありました。今までの医学だったら同じような発想からでも、大学の中に専門の診療科を作るぐらいで終わったんでしょうが、21世紀の医療が予防医学を中心に社会を変えていくという流れでもあったことにより、我々も医学の分野でもNPOを作って、更にこういう社会を巻き込んでユニバーザルデザインみたいなものを日本に広げてみたいな、という活動に広がったのだと思っております。

12.おわりに

(図59)
  「未来の世代のために」というのが私の目標で、エッセーも書いています。何故こんなことをやっているのかと時々と聞かれることが近頃多いです。先ほどご紹介の時、お話があったように、私の曽祖父は森林太郎で皆さんは鴎外の名でご存知のことと思います。鴎外は文豪であったと同時に、医師で軍医総監にもなりました。医学者としての活動としては、留学してきたドイツの医学の知識を日本に広めました。日本の衛生学の基本となる初めての日本語で書いた衛生の教科書は、衛生新編という本で、おう外と小池先生という方が1897年に書きました。
  それまでは、日本の医学はすべてオランダとかドイツからの本を翻訳するだけだったのですが、鴎外は日本独自の概念も含んだ教科書が必要ということで、今後の日本は「健康を守ると同時に、その増進を図ること」が、絶対必要と本の中に書きました。
(図60)
以下の図のように、鴎外の時代は、現世代のための衛生学「健康を守ると同時に、その増進を図ること」の基本概念が出来、普及して来ました。鴎外は東京都の下水道整備に関する仕事もし、環境整備による疾病予防に貢献しております。21世紀の私たちの世代になると、現世代もそうだけど、更に先の世代のことも考えた社会を作った方がいいんじゃないか、というのが私たちの提言です。 
時代とともに公衆衛生学は変わるものだということは最初にお話ししましたが、現世代に加えて次の世代を考えるべきじゃないでしょうか。 
(図61)
  中国の昔のことわざに「小医は病を癒し、中医は人を癒し、大医は国を癒す」という言葉があります。
  医学の世界は、昔は病気だけ診ていて人を診ていなかった。今は人を診るようにどんどんなっている。これからは、医学の世界も国自体を癒すということが再び必要と考えます。
「未来世代のために今、私たちが行動を!!」を、皆さんに提案させていただいて、 今日の講演は終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)

フリーディスカッション

與謝野 森先生、ありがとうございました。
  これまでの街づくりについての知見のご紹介とは趣きの異なる、しかし誠に身近な健康維持等の観点から、街づくりと生活環境改善という2つの課題について環境予防医学の体系を通して橋渡しされた、非常に身につまされるかつ重要な示唆深いお話であったかとお聞きいたしました。ありがとうございました。
  それでは、時間がございますので、この場でご質問を2〜3お受けしたいと思います。是非、この機会にお聞きしたいということがございますれば、挙手をしていただいてお申し出下さい。よろしくお願い致します。
小林(日本環境センター) 先生のケミレス住宅というのは、長期の居住者が入っているんでしょうかというのが1点。次は、通常の住宅に比べてケミレス住宅というのはトータルとして化学物質の曝露濃度がどのくらい減る期待があるんでしょうか。3点目は、化学物質をトータルで減らすのは非常に重要だと思いますが、中でも健康に影響の強いものを重点的にゼロに近づけるような、化学物質の種類によってのアプローチがあるんでしょうか。この3点お願いしたいと思います。
 どうもありがとうございました。
  まず、長期の居住という点に関しては、個人的に長期に入れるというのは大学の実証実験施設の趣旨に合わないので、長くても1カ月とかいうレベルで、最初は1週間レベルでやっていきます。2番目に、実際どのくらい化学物質が少なくなるんでしょうかというんですけれども、対象としては厚生労働省とか経産省が出している13物質をまず極力下げるんですけれども、全部を一遍に10分の1にできるかというのは,実験を通して少しずつやってみます。3番目の健康影響物質をこの研究を通して見出す試みを行う予定です。最終的に3年〜5年して、実証実験データが出た時には、もしかしたら、13物質以外のもので、こういうものがやっぱり健康影響が出る可能性の人が何%ぐらいいますよというデータが出せるかもしれないと思ってます。
笹谷(ア・エスパシオ) 内装デザインをやっています笹谷といいます。
  ケミレスタウンはゴルフ場の跡地に建っているんですか。
 いや、つくばエキスプレスの柏の葉キャンパス駅周辺は、跡地だったところになります。
笹谷(ア・エスパシオ) ということは、土壌汚染というのはどうなっているんでしょうか。
 ケミレスタウンは大学の土地の中にあるので、そこはゴルフ場の跡地ではありません。そこの部分の土壌調査は全部してあります。履歴見て、何ともなかったです。
橋(首都大学大学院) ちょっと教えていただきたいんですが、日本の小さな地域に分けたら、例えば平均寿命を見ても地域別に違うわけですね。異常児の出生を見ても、特定の地域に異常児がたくさん発生するという発生率も大分違っていますよね。そういうふうに地域ごとの被害状況というか、そこに住んでいる住民のこういう問題になる確率、そういうのを全国的に調べる必要性があると思うんですけれども、その辺はどんな感じになっているんでしょうか。
 質問の意味と違うかもしれませんが、住環境の問題に関してまずお答えします。住環境によってシックハウス、シックスクールになるのは、明らかに高気密性の家を建てられた所で疾患になるケースが多く、田舎の古い家とか換気がよい家ではシックハウスの疾患になる率は少ない。住環境で問題になるのは先進国のほとんど大都市で、このシックハウスの問題も首都圏を含めた大都市で多いと言えます。ですから、本当の避難的な転地療養所としてではなく、首都圏近郊における対応を考えてみたのです。このケミレスタウンプロジェクトでは、ライフスタイルや考え方をまず変えながら、住環境について健康に配慮した状態にしましょうといことで、ある疾患が日本のどこかで多く発生しているのとは、対応の仕方が違ってきます。子供アトピーなどのアレルギー疾患は全国的に増えており、日本全体で環境改善型予防医学の普及が必要でありますが、まず対象は大都市で行うのが効果的と考えております。
  それが答えです。ちょっと質問と違いますか。
橋(首都大学大学院) そういう地区別の異常値をどうやって把握するかと。
 モニタリングみたいな話ですか。化学物質、それともレシピを基にした疾患の発生数のですか。
橋(首都大学大学院) いろんな原因があると思うんですけれども。
 病気に関しては厚生労働省管轄で各基幹病院で、どういう疾患がどこでどのくらい出ているというのはある程度モニターされていると思います。
橋(首都大学大学院) それでは、逆に言うと、地域毎の対策の仕方はある程度見えてきていると。
 というか、病院に来たらその症状は治すことはしますけれども、今問題としなければいけないのは、疾患として病院にきて、症状に対する対応ではなく、健康影響の根本となっている環境を改善するということは、地域の自治体が行えばよいのかもしれないが、現時点ではなかなかうまく進んでいない。それで私たちがモデルケースを作ってやってみようということです。
平木(日本経済新聞) 今日のお話の趣旨で、今お答えになったことの続きになるかと思うんですけれども、考えてみると、自分の家の衛生状態を保つために、年に1〜2回ダニ何とかというやつで燻蒸して、お風呂場にはカビ何とかというやつでシュッシュッやって、臭いがあればシュッシュッと臭いを消す。もちろんゴキブリがいればシュッとやる。衛生を保つために一生懸命化学物質を家の中でばらまいている、それがまた健康を害している、そういう認識を持って生活の仕方をもう変えた方がいいですよという、そこまでに受けとめたらよろしいんでしょうか。
 このご質問に対しては、先程のリスクコミュニケーションのお話が大事で、まず現状を正確にお知らせして、健康リスクを考えていく必要があります。化学物質のメリットもありますが、そこまで必要ですかというケースもあると思います。大人にはよいけど、小さなお子さんがいたり、妊娠された奥様がいたら、そのそばでタバコを吸わない方は今の日本では増えていると思います。化学物質に関しても、次世代に対しては、必ずしも必要でないのなら、次世代への化学物質の曝露は避けるようなライフスタイルにするのが必要だということを、私たちは提唱し、賛同される方には実行して言っていただきたいと思っているのです。
  今売らんがためにと言ったら、企業の方々に怒られるかもしれないけれども、余りにきれい好き、きれい好きを日本に広めています。でも、これで子供たちの疾患を作っていたり、アレルギーの増悪因子なっているのも事実なのです。これはまず認識して下さい。
平木(日本経済新聞) 化学物質ではなくて、例えば木炭が空気をきれいにするとか、昔からの生活の知恵で、これがお勧めというのがありましたら、1つ教えて下さい。
 確かに木炭で脱臭するというのは効きますし、漆喰で化学物質を削減した部屋を造ると効果があったというデータが報告されてきています。それから、体内の化学物質量を削減するのに、お茶とか何とかが結構効くというデータも出てきています。必ずしも、昔のものより今のものがいいというわけじゃなくて、昔の中でちゃんと効くもので、生活の知恵で広まっていたものをもう1回家の中に戻す、そういうことも大事かもしれない。そういうデータを街づくりに取り入れて、そういうものに興味のある人たちが集まったら、そこは非常に新しい街が出来上がるのではないかと思ってます。そういう健康、環境に注意した街というのがこれからの日本にできるのがいいんじゃないでしょうかという提言になります。
三橋((有)シーエルシー) 今のご質問に派生するんですが、食生活、防腐剤とか圧縮材だとか、いろいろ加工食品に入っていますが、そういったことはどうなんでしょうか。化学物質として安全性は確保されていると思うんですけれども、問題もあるような話も聞くんですが。
 過度に同じものを食べなければ大丈夫だと思います。でも、今の学生たちに対応していると、同じものを毎日食べる、毎日コンビニばっかりに行って食べる食生活をしているのを聞くと、やはり健康に注意するのならバランスよく食べるという基本的なところを教えなければならないと思います。ケミレスタウンプロジェクトでも、食生活もこうした方がいいですよいう情報は発信していく予定です。
小林(和フルネスプラン一級建築士事務所) すごく基本的なことなんですけれども、化学物質の体内の蓄積量とその症状、その疾患の症状が出てくるのは、今お聞きしているのとほとんど無関係なように思うんです。ということは個体の資質とかいろんな要素によって症状が出たり出なかったりする。蓄積した方が出るというんだったら、いろいろ蓄積しないように対応もみんなやるかなという感じがして、その辺がちょっと。症状が出る人にはすごく重要であるけれども、先程もおっしゃったけれども、多数の人は症状が出なくて余り重要じゃないような気がする。蓄積量がある量を超えたら症状が出やすくなると言うと、みんな行きたくなると思うんです。ケミカルの少ない社会を創るべきだと思うんですけれども、ある量を超えるとかなりリスクが高くなるのか、症状が出るのかということをちょっとお聞きしたい。
 化学物質の基本は、濃度が高くなれば症状で出る率は高くなる。もう一度言いたいんですけど、皆さんでも、体調が悪くなった時には化学物質の強い所に行くと、咳が出たりのどの痛みがひどくなったり、時にぜんそく症状が出るようになります。現在何ともなく過ごされている方も、体調が悪ければ、化学物質の濃度が高い所にいけば様々な症状が出る率はあがります。
  何を言いたいかというと、自分が全く健康な時は病院に行かないと思います。ところが、人間いつか病気するとか、年に何回か病気する。そういう時にも、ユニバーサルデザインと同じ考え方が必要です。平常で何ともないなら普通のものが使えるけど、人間体調が悪かったり、手がしびれた時には、ユニバーサルデザインのものが使いやすかったりする。正直言って下痢してトイレ行った時はやっぱりウォシュレットがあった方がいいねという話になるのと同じような感じで、ケミレスの環境も過ごしやすいし、体調が悪い時にも症状が悪化しないのが環境ユニバーサルデザインの必要性なのです。
小林(和フルネスプラン一級建築士事務所) わかります。
 人間歳を取るのは100%歳を取りますし、人間必ずどこかで病気をしますから、そういうことがあるわけです。逆に、子供たちにとっては、自分たちでそれを防げないから親が注意してあげないと駄目だという基準が、こういうのに必要という感覚です。
  大人で健康な人たちを基準にして、今の化学物質の健康影響というのが出ていて、半数以上の人が出ないから安全だというのを国で基準にしています。そして、それは今の基準で守られている。でも、それだけでは駄目で、もう少し踏み込んだものを考えようというのがこれになります。
鈴木(福島県) 先程、環境ホルモンが人体の中で蓄積された分を低減させるのに、コレステロールの抑制剤の効果があるというふうにおっしゃいましたけれども、ケミレスタウン構想の中には、あそこに住み続けることによって体内のそういうものを排出できる、新陳代謝ができるという効果を狙うという部分はございますでしょうか。
森 いい質問をしていただきました。先ず新陳代謝を亢進して体内の脂肪を減らすということで、化学物質による症状が緩和することはいくつかの論文で報告されております。診療科としては、それに出来る限り対応してみたいと思ってますし、生活指導を含めたライフスタイルの改善ということも当然提言していきます。
花上(潟Lャドセンター) 素晴しいお話をありがとうございます。
  シックハウス法というのが施行されました。いわゆる24時間換気です。何故こんなことを聞くかというと、自分で家を作りました。漆喰を使って柿渋を塗って。何故かというと、自分の娘がアメリカにいたんですけれども、その時はアトピーが出ないんですね。日本に帰ってくると、必ずアトピーが出てしまう。アトピーの出ない家を造ろうというので、柿渋を塗ったりしまして、自分の家を造った。そこに出てきたのがシックハウス法。それによって家の中は全部穴だらけ。換気扇を各部屋につける。例えば、トイレに入ってもドアの下も空いているし、全部筒抜けになってしまう。換気で全部エアを通しなさい。
それで、何故こんなことをやるんだろう。自分ではシックハウスの出ない家を作ったんだ。何故こんなのを法律で決めなくちゃいけないんだろうというのがわからないのが1つ。省エネ的にも、地球温暖化ということを考えたらエネルギー損失が物凄い。僕、東京ではマンションに住んでいるんですけど、各部屋全部がそういう形でエネルギーを使っている。 ですから、シックハウス法というのが非常に納得いかないものである。出ないものを造るんだったら、換気扇を24時間する必要ないですし、出るからこそ換気扇をつけなさい。非常に矛盾した話。
  この間、国交省でこんな話をしてきました。ああいう法律は何故あるんだろう、何故変えないんだろう、そこら辺をちょっとお聞きしたいと思います。お願いします。
 それは、私たちも同じように思うこともあります。結局今の段階は、様々な化学物質の揮発量を少なくするというが種類も多く、どの化学物質が根本原因かも今後の検討が必要であるため、揮発して出るのはしょうがなく、24時間換気で対応しましょうということなってますね。ただし、私たちのように新たな対応を考え行動を始めている所もあるので、少し世の中の流れは変わっていくかもしれません。
  ちなみに、漆喰塗られてそのお子さんのアトピーは出なくなったんですか。
花上(潟Lャドセンター) 山の中に入っちゃったもんですから、出てないですし、柿渋を塗ることによって、1年間虫が出ない効果がありました。
 ありがとうございました。いろんな効果があるし、それが合わない人もいるので、判らないことも多いですが、今のところ、私たちも効果50%の人には予防医学的な効果があるレベルで対応して行くのがよいと思ってます。 
與謝野 ありがとうございました。 最後に、私の方からご質問させて頂きます。
ケミレスタウンというのは、タウンですから建物だけじゃなくて、周りの自然の樹木、水のせせらぎ、大地を被覆する植物等とかいろいろありますね。これらがもたらす効能についての評価・検証とまちづくり手法への応用などについてヒントを与えて頂ければありがたいのですが。これらは当然タウン構想の中に、よい環境要素としてとらえられているのでしょうか。
 ということになります。ただ、もう1つ言わなきゃならないのは、家だけ建てるとモデルハウスみたいになるんですけれども、次に、このケミレスの問題はシックスクールという学校とか公共の場が問題になるんです。ユニバーサルデザインが最も先に広がったのは、公共の場でトイレとかを行政が取り入れていった。家の中も当然ですけれども、病院も全部そうやって取り入れていった。最後は行政が力を入れてザッと広めていくのが大事だと思うので、最初は全部の建物ができなくても、タウンとして、その周りの街並み、街路樹、公園とか含めても少しずつでも広がっていくことを望んでます。認知してもらって、社会全体に化学物質が、「そんなに要りますか」、「下げられるところは下げましょう」という社会の流れになったらよいと願ってます。
與謝野 ありがとうございました。
  「環境」「まちづくり」という分野は、あらゆる分野の知の体系の統合であるということは、我々も一応は承知しておりますが、きょうのお話は特に、医学と建築学と都市計画学の知見の融合の一端のお話をお聞き出来たと思います。本当に貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。本日の森先生のお話をお聞きしまして一層、異分野を超えた知の融合の必要性を強く痛感致しました。
  それでは本日のフォーラムをこれにて締めさせて頂きたいと思いますが、最後に、本日お話をいただきました森千里教授へのお礼と今後の先生のご活躍を激励する気持ちを込めて、皆さんから大きな拍手をお贈り頂きたいと思います。(拍手)
ありがとうございました。

 


 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 



                                  

 


 

 

 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 


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