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第238回都市経営フォーラム

『 米国型PPPの日本における可能性』

講師:  K サム 田渕 氏 フロリダ州経済開発局日本代表 東洋大学大学院客員教授(公民連携)

 
                                                                           

日付:2007年10月18日(木)
場所:ベルサール九段

                                                                            
1.アメリカにおけるPPPの背景と現状

アメリカにおけるPPP事例

3. 岩手県紫波町の挑戦〜日本における初の米国型PPPプロジェクト研究

4.これからの日本におけるPPPの可能性を巡って

5.フリーディスカッション



 

 

 

 

與謝野 それでは、本日のフォーラムを開催させていただきたいと存じます。
  皆様におかれましては、お忙しいところ、本フォーラムにお運びいただきまして、誠にありがとうございます。また、長年にわたりましてこのフォーラムをご支援いただきまして、ありがとうございます。
  このフォーラムは来年1月から、「都市・環境フォーラム」という名前に改称されるのでございますが、都市あるいは町の問題だけではなくて、広く環境分野の問題も取り上げていきたいと考えておりますので、皆様におかれましては、引き続きのご支援、ご鞭撻のほどをよろしくお願い申し上げます。
  さて、このフォーラムで今年の6月に東洋大学の根本先生から、現在大変関心の高い新しい事業スキーム、PPP他についてのご講演をいただきました。その事前の評価も高言い上、事後の反響も非常に高く、この課題についての意義の重さというものを改めて再認識した次第であります。
  そこで、本日は、このPPP等のテーマについて、今度は目を米国へ移しまして、先を走っておりますアメリカの事情について、現地でご活躍されている第一人者をお招きいたしまして、我が国での適用事例もご紹介いただいて、日本におけるPPPの可能性について、皆さんと共にお聞きし、学びたいと、このように思います。
  本日お招きいたしましたのは、米国フロリダ州経済開発局日本代表で、東洋大学大学院客員教授であられますK.サム田渕様でいらっしゃいます。お忙しいところをありがとうございました。
  田渕様のプロフィールにつきましては、お手元の通りでございますが、1977年以降米国フロリダ州において10年間、州の経済開発に携わられまして、1987年に民間に移られて、PPPによる高速鉄道開発プロジェクトに携わられました。1998年からシンクタンクULIの日本進出に当たりまして、担当部長になられまして、2003年からフロリダ州経済開発局日本代表として活動しておられる方でいらっしゃいます。
  本日の演題は、「米国型PPPの日本における可能性」ということで、アメリカにおけるPPPの背景と現状あるいは事例、そして日本における適用事例等のご紹介を通じて、日本におけるPPPの可能性についてお話をいただくことになっております。
  それでは、田渕先生、よろしくお願いいたします。(拍手)
 
 
田渕 初めに、私、国籍がアメリカ人、アメリカ30数年おりましたので、ところどころ日本語がおかしいところもありますけれども、日本語で皆さんに私のやっていること、考えていることをお伝えできればと思います。日本語がおかしいところは最初から謝っておきます。その分、英語は上手いのだろうと思っていただければ幸いです。
  今、簡単なご紹介をいただきましたが、もう一度、今日のサブジェクトと関連があると思いますので、自己紹介させていただきます。
(図1)
  私は立教大学を卒業して、フロリダ州立大で都市計画の大学院を卒業しまして、その後、フロリダ州の商務省経済開発局というところに入りました。商務省には経済開発局と、もう1つ観光局があり、いずれも今日、私がお話をするPPPのコンセプトで民営化されました。何故、民営化されたか、何故、そっちの方が効率がいいのかは、後で説明します。
  今週、日本米国南東部会が帝国ホテルで開かれました。これはアメリカ南東部7州(今年より8州)の地域開発をテーマに、官と民が一緒になって、日本企業を誘致しようという組織です。70年代後半からアメリカに進出した日本の製造業の7割は、南東部に行きました。最近のトヨタ、ホンダは、全て南東部で、デトロイトには行っておりません。そのような経済開発、まち起こしがPPPでやれるということも後で説明します。
  その後、私は出向ということを強調しなければいけないんですが、アスキュー元知事がカーター政権の時に通商代表部に行きまして、私は彼の日本ミッションをやったこともあって、手伝えということで、ホワイトハウスで仕事をしたこともあります。非常に面白かったです。これも、機会があれば話します。
  それからPPPのプロジェクトをやりました。皆さんの中には、フロリダに新幹線を敷こうとか、リニアモーターでプロジェクト開発しようという話を聞いたことのある方もいるかと思いますが、それをやっていたのが私でございます。アメリカで高速鉄道を敷こうということで、今でもアメリカで騒いでおりますけれども、まだ成功しておりません。アメリカで高速鉄道をやらなければガソリンの値段が上がった時に大変になるよと、私が、70年代、80年代に言っていたんですけれども、その通りになりつつあるようです。
  そのプロジェクトを約10年程やりましたが、結局はアメリカの車、飛行機ロビーに負けました。アメリカの鉄道は非常に難しい。私は、アメリカのアムトラックを買って、アムトラックが持っているアメリカ中の町の中の開発をやりたいというのが夢だったんですけれども、うまくいきませんでした。
  その後は、PPPのコンサルとしてカリフォルニアをやったり、デンバーをやったり、ボルティモアをやったりしておりました。リニアモーターのプロジェクトで州から認可を取って、国から百何十億という援助金をもらってやっていたのは私だけだったものですから、コンサルとして食っておりました。
  そして、90年の終わり、私の顔をULIの顔として覚えていらっしゃる方もいるかと思いますけれども、アメリカのアーバン・ランド・インスティテュートという都市開発系、金融系で世界最大、3万人程世界中にメンバーがいて、60カ国にネットワークを持っているシンクタンクの日本進出をお手伝いしました。三井不動産さん、三菱地所さん、森ビルさん、日建設計さん、日本設計さんとともに、日本でULIを始めたんですけれども、やはり最終的に日本ということが大切ということで、根本先生と去年から大学院で特任という形で教えています。日本で今、根本さん、私も含めてPPPが必要なんだということを思うが故に、です。
  フロリダ州の経済開発局は民です。私は民の人間ですけれども、日本で説明する時には官的な名前をつけた方がいいということで、こういう名前をつけております。東洋大学のPPPの大学院は、公民連携と言います。
(図2)
  PPPを、簡単に説明します。フルパブリックというのはサービスコントラクトで、官が全部仕事をする。官が全部を出して、民間がサービスをとって、ターンキーをやるとか、ジョイントベンチャーをやるとかというのが、多分PFIのあたりです。PPPというのは、民間が全てをやる一歩手前で、官と一緒に仕事をやるという形のところに近いんだというコンセプトでよろしいかと思います。


1.アメリカにおけるPPPの背景と現状

(図3)
  アメリカで何故PPPが、これほど爆発しているか。今、年間1000件ほどアメリカでやっております。何故そういうふうになったのか。それが今の日本に何故必要だと私が思うのかということを、少し背景的なところから説明させてもらいます。私がアメリカに行ったのは1973年。73年というのは、戦後世界のマーケットをドミネートしていたアメリカ経済が、日本、ドイツにどんどん食われていった頃です。日本経済、西ヨーロッパ経済が60年代復興し、車だ、鉄鋼だ、造船だと、第2次産業でどんどん世界のマーケットに出て行く中で、アメリカの2次産業が空洞化し、UAWというアメリカの自動車労働者組合で、30万人に近い失業者が出て、「病めるアメリカ」と言われた頃です。
  その時にアメリカは2次産業から3次産業、サービス産業に移転して、まちづくりをやっていきました。その70年代に私はアメリカに行って、2000年過ぎまでいました。アメリカが、転機であった70年代の終わり、ベトナム戦争に負けて、国が初めて敗戦を経験して、ヒッピーが流行し、国の方向性が出てない頃だったように思います。
  私がホワイトハウスに行った時、カーターさんが大統領でしたが、カーターのイラン政策失敗、人質政策失敗で、レーガンが出てきました。レーガンは共和党の大統領で、タックスカットは良かったんですけれども、防衛費に莫大なお金を使いました。
  皆さんのご記憶にあると思いますが、「ツインデフィシット(双子の赤字)」と言って、財政赤字と貿易赤字が真っ赤っかでした。私が最初の家を買った時、金利が15%を超えていました。なかなか苦しかったことを覚えています。そういう時期に、国は税金をカットしたので金がなくなり、今の日本の政府のように、地方に廻すお金がなくなりました。
  赤字赤字で、その時のアメリカの財政は、100のインカム、収入に対して、140ぐらいの支出という状況でした。それでは、国は生存できません。しかし、今の日本は100に対して170という支出で、やっていけているはずがないのに、皆さんには伝わってないというのも、アメリカ人としてはおかしく思っております。
  85年に、グラム・ロッドマン・ホーリングスという法律ができました。レーガンが真っ赤っかにした財政赤字、つまり100に対して140の支出ではアメリカはやっていけませんので、バランスバジェットといって、支出と歳入を一緒にしてバランスさせなければいけないという法律です。グラムさんというテキサスの上院、ロッドマンというのはワシントン州の上院、ホーリングスさんはサウスカロライナ州の上院、この3人の上院議員が集まってバランスバジェットを通しました。グラムさんは共和党で、ロッドマンとホーリングスさんは民主党。これは共和党、民主党の問題ではなかったということです。「緊急財政赤字修正案」という日本語に私はしています。これで修正が行われました。財政が黒に向かうように国の予算が動きました。
  アメリカと日本が違うのは、財政赤字になった時に、大統領がサインしなければ、お役人、政治家の給料は払えません。だから、政治家は集まって一生懸命予算を通しますが、大統領がサインを入れなければ、次の月の給料がもらえないんです。日本はそういうところで甘さがあると思います。
  その修正ができて、実際は1992年、クリントン政権の時に一度バランスしました。私は民主党の人間ですから、もう少し言いますと、ブッシュが入ってくるまでには真っ黒々になりましたが、ブッシュはレーガンをあがめている人ですから、今また真っ赤っかに逆戻りしています。
  ここで言いたいのは、日本でいう交付金、つまり地方にいくお金がどんどん落ちていったことです。そして、私が今、論文を書いているIntermodal Surface Transportation Efficiency Act、アメリカではISTEA(アイスティー)と言い、日本語では余剰道路財源の都市再生、自治体主導の活用と言いますが、それができるようになった。
(図4)
  1956年、アイゼンハワーが始めたハイウエーづくりが80年代の終わりで4万4000マイル、キロでいうと7万キロぐらいでほぼ終わりました。そして、そのハイウエーの財源だったハイウエートラストファンドの使途がなくなり、余剰道路財源が出てきました。Intermodal Surface Transportation Efficiency Actですが、「Intermodal」というのは、辞書にも出てない言葉で、「交通手段を連結する」という意味です。水陸交通、空、海、道路、全てを連結させるという意味で、その余剰道路財源を、ハイウエーだけはなく、水、空、電車全てについての連結のための使いましょうということを、もう亡くなりましたが、私の尊敬するモイナハンというニューヨーク州の上院議員が法律にしました。ハーバードの教授から上院議員になった今のヒラリー・クリントンさんの前の上院議員です。残ったハイウエー税が、都市再生のために、地方にいくようになった。地方はこれが欲しい。このお金は連邦50に、地方25に、州が25というマッチング方式だったものですから、やる気のある地方がこのお金をもらえるというシステムになっています。他に、州をバイパスして地方自治体、MPO(メトロポリタン・プランニング・オーガニゼーション)という地域計画をやる組織にも直接いくシステムをモイナハンは作りました。
  それと、もう1つ、日本では考えられないかもしれませんが、フロリダ州が連邦に出したガソリン税のうち、90%はフロリダ州に戻しなさいという法律がその中に入っています。東京が税金を出して、30%しか戻ってこないとか、大阪は8兆円納めても4兆円しか返ってこないという形では、大阪は幾ら頑張っても東京の経済に勝ちっこありません。地方に還元するなら、そこまで地方に戻さなければいけない。
  こういうことがあり、実際アメリカのPPPが拡大したのは90年代からです。それまではまだアメリカの地方はどうにかやっておりましたけれども、だんだん首が回らなくなってきて、PPPがなければやっていけないという状況になってきました。
  ハイウエートラストファンドが、こうして使えるようになりました。フロリダ州のグラハム知事は知事を2期やってからワシントンの上院議員になって、ワシントンのファイナンス委員会で、委員長のパトリック・モイナハンに交渉して、私のやっていた高速鉄道のプロジェクトに、今のお金で120億円、97.5ミリオンダラーというお金をつけてくれました。けれども、1銭も使わずにお返ししました。
Intermodal Surface Transportation Efficiency Actの特徴として、都市再生とマッチングをするということがあるので、やる気のある地方自治体が、頑張ればこれが入ってくるというふうになりました。
(図5)
  第2回のPPPフォーラムを、今年の9月27日に東洋大学で開きました。アメリカにNCPPPという組織があります。ナショナル・カウンシル・フォー・パブリック・プライベート・パートナーシップ、アメリカでPPPを促進している組織です。そこから3人、社長、専務理事、ボードメンバーを連れてきて、アメリカのPPPの現状、ケーススタディーの勉強をしました。
  その話の中で、1000に近いPPPのプロジェクトがアメリカでは起こっているという話がありました。金額ベースでの上位3分野、「不動産・経済開発」、「運輸」、「下水処理等」で2004年時点で約750億ドル、8兆円に近いお金がPPPで動いています。
  バージニアでは、「Compete・Privatize」という言葉から始まって、2001年、PPEAといって、官民教育共同法という、学校は全て民の金で建ててもいいよという法律ができました。2002年以降5年間で、30校は民の金で建っております。これはPFIではなく、PPPです。PFIとPPPの違いも後で説明します。
  インディアナ州では、「Marketization」という言葉、日本語では「市場化テスト」という言葉になるかもわかりませんけれども、電話帳テストというのをやりました。官のサービスで、1社でも電話帳に載っていたら、その電話帳に載っている会社と官は競争しなければいけないというのが、この電話帳テストです。
ゴールドバーグ市長はそれで人気をなくしました。市役所の人間はどんどん首になって、市長2期は務められなかった。そのような状況になっています。

2.アメリカにおけるPPP事例

 これから日本に絶対に必要になってくる言葉ですけれども、1996年にフロリダ州の政府では、ガバメント・パフォーマンス・アンド・アカウンタビリティー・アクトという法律が通りました。アカウンタビリティーという言葉は、日本では説明責任というふうに訳されていますけれども、もう少し詳しく説明します。
  ガバメントのパフォーマンスというのは、政府がどれほど効率よく税金を使ったということです。アカウンタビリティーという言葉は、予算請求に行く時に、「私はこれとこれをやって、こういう成果を上げますからお金を下さい」と言いますが、その次の年に知事が議会に行く時には、「結果をここまで出しましたから、来年これだけのお金を下さい」というのがアカウンタビリティーです。成果を出さなければならず、能力のない役人はついていけません。
  私は経済開発局の日本代表ですが、フロリダ州からもらうお金の35倍を、日本企業がフロリダ州に投資するか、またはフロリダのものが日本に輸出されなければ、私の来年の契約は保障されません。これがアカウンタビリティーです。
  私が10年いましたフロリダ商務省は以前、大体の数字で言いますけれども30ミリオンという予算で運営していました。ここでは仮に、経済開発が15ミリオン、観光が15ミリオンとします。しかし、95年に民営化され、今、経済開発局はEFIという株式会社になり、会長は知事、社長は民間人、社員もみな民間人です。この会社に州は、もともと15ミリオンだったのが、今12ミリオンしか出しません。それもフロリダ州に来る観光客が乗るレンタカーに州税をかけて、その州税を経済開発と観光に使います。我々は、他の州の皆さんがフロリダに来た時に借りるレンタカーに税金をかけて、それを取って仕事をしている。だから、フロリダ州民に対しては、あなた方の税を使っているのではありませんよ、というふうに説明できます。
  なお、私はフロリダ州民で、フロリダ州には一銭も税金を納めなくていいんです。地方税がないんです。何故か分からないと思いますけれども、フロリダ州には8500万人という観光客が来ます。その人たちが落としてくれる一般消費税で、州の歳入の30何%が成り立つから、個人の所得からは税金を取らないんです。相続税もフロリダ州にはありませんから、お金を持って死ぬ人はだんだんフロリダに集まってきます。タイガー・ウッズさんはカリフォルニアに住んでいたんですけれども、年間100億稼ぎます。カリフォルニアでは州税が7%ですから、7億払うのに、フロリダ州に移ってくると、その分、ポケットに入る。お金持ちはすぐにフロリダに来たがる。
  だから、最近、カリフォルニアからフロリダにバイオ産業がどんどん移っています。意味は、そこでわかると思います。カリフォルニアのサンディエゴにあったバイオ産業ですけれども、サンディエゴの環境、水、海、太陽がフロリダには全てあります。物価は、うちの長官に言わせると、25%安いです。ですから商売するお金も25%安いです。だから、フロリダがどんどん伸びている。1日に900人から1000人人口が伸びています。年間40万人程伸びているそうです。
  フロリダは、私が州政府にいた1980年代には、人口、経済でアメリカで15〜16番目の州でしたけれども、今は4番目です。カリフォルニア、テキサス、ニューヨーク、フロリダと言われてますが、実際には、うちのトップに言わせると、2010年の人口統計調査を待たなければフロリダは3位になれないんですけれども、統計学的にはフロリダはニューヨークを抜いている。
フロリダの宣伝をしに来たわけじゃないですけれども、皆さんが良く知っているニューヨークの経済より、既にフロリダの経済の方が大きいことになります。
  フロリダのGSP、州の生産高を計算すると、世界で14番目の国に相当します。14番目の国の経済と、2番目の日本の経済をくっつけるのが私の仕事です。
  話を戻しますと、我々経済開発局に、96年に15ミリオン出したお金が、今2007年で12ミリオンしか州は出しておりませんし、税金は出ておりません。これに対して、民間が12ミリオン、マッチングです。そうすると、24ミリオンです。これはインフレ分を考えると多分、かつての18ミリオンぐらいにしかならないと思いますけれども、今は、24ミリオンで州の経済開発を行っています。これにノルマがつきます。経済では、ROI、リターン・オブ・インベストメント。何ぼ出したら何ぼ返ってきたというアーンスト&ヤングの計算によると、我々は今1ドルもらったら5.4ドル返すという計算で仕事をしています。
  私は3年半で約500ミリオン、600億円ぐらいの日本企業の投資をお手伝いしたので、日本事務所の予算を来年はどうしましょうかと言った時に、知事はもっとやれということになります。州知事は議会に対して説明は全部できます。ここのところをして説明責任と言っているのかもわかりませんけれども、成果が上がってないところは半分にしておけ、3分の1でいいだろうという話になっていくはずです。
  観光の方も、71年にディズニーがフロリダにできました。73年から私はフロリダにいますが、20年でPPPを使ってフロリダの観光は世界一になりました。これもPPPです。機会があったらお話ししますけれども、官と民が一緒になれば、20年で、ディズニーがオープンしたばかりの頃の経済が、あっという間に世界一になる。観光客が来る。税金を落としてくれる。我々は州税を払わなくていいというシステムになっていくわけです。
  ところで、日本には観光を教える学校は、僕が行った立教大学か、もう1つぐらいしかないですけれども、世界最大産業は観光業です。
  日本は、三菱さん、三井さん、日立さん、東芝さんなんかが偉いとされていますが、アメリカでは、観光が世界レベルで年間約800兆円という産業あることを熟知しています。石油でも車でも石炭でもなくて、観光が世界最大なのに、それを教える学校が、日本には立教と他1〜2校しかないと聞いています。
  フォート・ウエイン市とありますが、これはインディアナです。図書館を中心にした活性化でPPPが行われております。
(図6)
  これはNCPPPが持っている成功する6つの要素です。「政治的な環境が大切です」、「そのPPPのストラクチャー、構成を考えなくてはいけません」、「企画書は詳細にわたるものでなければいけません」、「収入のストリーム、収入をどう確保するかということがギャランティーされていなければいけません」、「ステークホルダー、いろんな関与している人たちがお互いにサポートしなければいけません」、「民のパートナーを選ぶ時、官のパートナーを選ぶ時に注意して選ばなければいけません」とあります。
(図7)
  これは1992年にアメリカで初めて起こったPPPで、ジェームス・オイスタースクールという学校です。ワシントンDCの中にあります。DCというのは、ご存知でしょうが、1.6キロ四方しかないところで、お金はいつもないところです。
  学校は、70年、80年前に建てられた学校です。この学校が75年経って日本の学校のように建て直しをしなければいけません。学校はお金がありません。地方自治体もありません。教育委員会もお金はありません。どうするんですかというところでPPPが働きました。エルコアというニューヨークの会社ですけれども、PPPの本を書いているスタインバックさんがこれを考えました。
  このオイスタースクールは、何故建て直しが必要かというと、増築が必要になるほど、高級住宅街の中にある学校だったんです。この学校の裏に土地が余っていました。そこで、エルコアという選ばれた会社は、そこにヘンリー・アダムスという賃貸マンションを造るというプロポーザルを作って、この賃貸マンションの建設費の中に、こっちの修復、改築費を入れ込んだ内容を提案しました。
  その修復の部分は、官がボンド、債券でやりましたけれども、そのバックアップは全てこの開発をやった会社がやりました。これがPPPの第一歩です。
  民は、賃貸住宅を建設するに当たって、マーケット、市場というものが非常に大切でした。収入がなければ駄目ですから、収入の入るいい場所にたまたま土地が余っていたところから、半分を使わせてもらって、260何ユニットの高級賃貸マンションを造りました。そして、そこから上がってくる利益をこの債券を買う費用に充てたわけです。土地代はもちろんただです。そうすることによって、ジェームス・オイスタースクールの建て替えが90年の半ばぐらいに終わりました。
  これはワシントンですけれども、これが先程言ったバージニア州のPPEA、公民連携の教育施設法案のもとになったモデルシステムです。5年で30校バージニアにPPPで学校が建ちましたと言いましたけれども、同じコンセプトで、今バージニア州では300以上の学校以外のパブリックファシリティーがPPPで民間の金で造られています。PFIは、今は独立採算制がありますけれども、最初のイニシャルコストを民が払っても、後は延べ払いで、結局皆さんの税金が払われるわけです。PPPは最初から税を当てにしません。民の力で建てる。この学校を修復する時に、官はボンドを出すという自分の特権は使いました。しかし、その金銭的なバックアップはすべて民がやっております。だから、官の税金はゼロで新しい学校ができたわけです。
  アメリカでPPPの勉強をする時は、オイスタースクールを知らなかったら、アマチュアだと言われますので、ジェームス・オイスタースクールを覚えておいて下さい。
  ここで、もう1つシステムを紹介します。PILOT(Payment In Lieu of Tax)。固定資産税でも土地代でも、税金を払う替わりに、官が必要とすることを民がやってあげるというのうがPILOTコンセプトです。開発が行われることによって、未来予測がつくものを抵当にして、今、お金を借りるというTIFというコンセプトもPPPでは使います。
  11ミリオン、約12〜13億円のボンドは教育委員会が出した。それを民間がバックアップした。非常に有名ですので、覚えておいて下さい。
(図9)
  ビスケインランディングは、私が住んでおりますフロリダの話ですけれども、とてつもない規模の大きい話です。皆さんが信じられないPPPの事例です。
  これがフロリダ州です。本州よりはちょっと小さいです。ビスケインランディングというのはマイアミの北にあります。ビスケンランディングから、北にずっと上がっていくとニューヨークで、南に行くとマイアミです。ここに大学がありますが、ここは日本の夢の島のようにごみを埋めたところです。昔ですから、湿地帯にごみを埋めることは多分可能でした。今はEPA・環境省がそんなことを許すはずがありません。それが20年経って開発をEPA、環境省がオーケーしました。
(図11)
  350エーカーあります。350×1250坪は44万坪にあたります。1989年に合衆国の環境省サイドが、ヒューマンヘルス、健康に異常がないので開発していいよと発表してくれて、92年からいろんな形のプロジェクトが始まりました。RFP、RFQというPPPのやり方を使いました。日本のように談合とか汚職をさせない方法です。すべて机の上から始まる選択のシステムです。
  土地というのは、私も役人していましたから言いますけれども、市民の財産であるということをお役人は絶対に忘れちゃいけません。これを忘れると汚職になります。パブリックサーバントというのは、日本語では「公僕」という言葉です。民主主義では州民のために仕事をする、市民のために仕事をするのがお役人です。市民の税金をどう使うかを決める権利は、市民に選ばれた議員さんが持っています。
  アメリカの公僕の話をここで1分程します。77年に私は大学院を卒業して州知事の秘書になりました。アスキューさんという全米州知事会の会長さんをやっていたような偉い方です。昔は、カーターさんより偉かったと言いますけれども、州知事だった。フロリダ100人会というランチが州知事の公邸でありました。100人会といっても100人来るわけじゃなくて、その時多分20人ぐらい来ていたと思います。そこで、円卓で1人1人自己紹介。「マイアミ銀行の頭取です」、「何とか商工会議所の頭取です」、「ディズニーの社長です」とかバーッと出てきた。私はミーティングをセットしていて、アスキュー知事が「おまえも自己紹介しろ」と言ったので、私は「I am samu tabuti. I work for Governor Askew」と、誇りを持って留学生の日本人が一生懸命言ったところ、アスキュー知事は、向こうの方の偉いところにいて、立ち上がって、これからが公僕ですけれども、「Samu you don’t work for me.(おまえはおれのために働いているんじゃない)You work for State of Florida・citizens of Florida.(フロリダ州のため、フロリダ州民のためにおまえは働いているので、おまえはおれのために働いているのではない)」。最後がカッコいいです。「as I do」。知事ですよ。カッコいいでしょう。27歳の若造は背骨が震え上がりましたけれども、それがアメリカの公僕の正しい考え方です。日本のお役人は、これを持っていない。学校でちょっと成績が良かったからといって、国民の税金をどうするという権利は民主主義の中ではありません。お役人がいたら、ごめんなさい。
(図11)
  193エーカー×1250坪が土地です。そこに2800から6000のマンションを造っていいですよということです。そのかわりワン・ツー・ワンで、1個マンションを造ったら、1個、北マイアミ市の低収入、中収入の住宅を直せ、建て直せという責務をかけました。マンションというのは、その時に非常に儲かる、市場性のあるものだったし、大西洋が見えて、海に出かけられるウォーターフロントですから、いいに決まっています。それをやらせてあげるから、土地代を払わないでマンションを造って売れたら儲かります。その代わりその金を投資して住宅を直す。ノースマイアミというのはハイチ人とか黒人とかが多くて、ボロボロの家が多いので、その家を直すために、市は空き地で開発可能なものを使って、6000戸に至る住宅を直してしまえ。その代わり、これを投資するに当たって、15%までは儲けは認める、という約束をしました。
  コマーシャルスペース、ホテルも150から400、今600室ぐらいになっていますけれども、土地は99年リースを2回、200年貸してやる。契約が終わったら市に1億よこせということになっています。1ミリオン。レジデンシャルなユニットは、工事が始まるまでは1年間で8万円しか払わなくていい。その代わり、造ったら、マンションを買った人が土地代として年1500ドル払う。ディベロッパーは、家を直すことが大切で、学校を造ることが大切で、市は、PILOT、その税金をとる代わりに、市の修復を民間のディベロッパーに全部やらせたというスキームです。
  住宅を造った儲けのうち4%は市に払う。コマーシャル、商業で儲かったら50%は市に払うという約束です。これが成り立っているんです。
  マーケットがあって、そこに40万、50万ドルのマンションを建てて売れるのであれば、日本でも地方自治体で土地を持っているところはたくさんあります。たくさん駅前の土地を持っている人はいますけれども、地方自治体はお金がありません。アメリカと同じです。だから、そこに、このようなスキームをやれば、地方の経済だって復興できる可能性があります。だから、タイミング的に今、日本ではPPPが使えるんです、と私は言っています。
(図12)
  もっと凄いところを話します。これはジョージア州のアトランタの北、サンディスプリング市です。デカルブ郡というところに所属して、郡が自分の郡の中に入れようとした。アトランタというのは南部で非常に大きなジョージア州の町、9万人の町です。去年のNCPPPの協会の1等をとったプロジェクトですけれども、市役所には従業員が3名しかおりません。
(図13)
  警察と消防以外全て、民間のディベロッパーに委託しています。市役所がないんです。市長さんはいます。市議会議員もいます。アメリカの市議会議員とか州議会議員の説明をここでします。私が次に説明する岩手県の紫波町という3万4500人の町があります。町議会議員が22名おりました。これでは幾ら頑張ったって民はついてきません。その人たちが400万ずつ、22名いるわけです。何をしているんですか。フルタイムで仕事をしていなくて、1年間50日しか議会がないのに、400万はないでしょう。それが22名もないでしょう。
  私が住んでおりますオーランドという町は65万人の町です。市議会議員は5名です。その人達は300万ちょっとしかとりません。市議会は週日の夜か週末にやっています。これが公僕の精神です。議員さんで食っていこうというのはパブリックサーバントではなくて、キャリアポリティシャンですね。
  30年以上、郡と、郡に入れ、いや市になろうと喧嘩をしていたんですけれども、2005年に94%のサンディスプリングスの住民投票で市にしようということで決まりました。その代わり、CH2というゼネコンさんが全ての仕事を請け負いました。後で出てくると思います。30〜40%以上のセービングになっていると聞いています。私、今月末にアメリカに行きますけれども、ヒアリングをしてきます。
(図14)
  民がやるとスピードがあります。2005年の11月に市になろうという選挙が行われて、ジョージア州で12月1日に7番目の市になりました。12月20日にサインが行われ、その次の年の1月1日からフルに、オペレーションをやっているという民間経営の市営です。
  これ以上、どういう契約になっているのかわかりませんけれども、アメリカは、そこまで進んでおります。
  ハイウエーとかインフラもそうです。トールロードを造りましょう。官が土地を用意します。民はトールロードで儲けて下さい。しかし、儲けは何%と決めます。日本の高速道路と違うのは、15年、18年の計算でもとがとれたら、トールのゲートを外しなさいというやり方です。
  開発系もあります。オイスタースクールとかビスケインランディング、紫波のプロジェクトは開発系です。
  私が言っている民営化というのは、フロリダ州の場合や、このサンディスプリングスのように、官の組織を民営化していくという形です。NCPPPのスタディーでは、民でやった方が30%から35%セービングになると出てきています。お役人には大変な言葉です。優秀なお役人には非常にいい言葉です。アカウンタビリティーという言葉でジャッジされる時に、仕事ができるお役人はウエルカムします。仕事ができなくて税金だけを食っている人たちは、いられなくなります。フロリダの商務省からEFIになって、今残っている人は80人のうち2人か3人です。首にはならなかったです。労働省に移ったとか他の職場に移って、今度の社長に解雇されたのは5人ぐらい。能力のない人は首になります。でも、社長、知事会長は、税金を払っている州民に対して正当性を持った判断をもってやっています。首になった人は大変だと思いますけれども、皆さんの税金を使うんですから、いかに効率よく使うかだと思うんです。
  日本の年金問題や官邸は、私には信じられない浪費です。日本の人というのは、本当に文句を言わない凄い国民だなと思います。一揆が一番少ない国が日本だと言いますから、忍耐強い。もっともっと自分の権利というものを要求すべきだと思います。
  インフラ系はPFIで、今PPPに移ろうとしていますけれども、PFI的な、官が一方的にリスクを民に押しつけるようなやり方では、絶対先は見えないです。
  イギリスもPFIから始めました。サッチャーが始めた小さい政府を始めて、国が金がなくなったことでPFIが流行りましたけれども、今、イギリスの地方自治体だって延べ払いで金が払えなくなっているんです。
  だから、PPPに移行しています。民が活躍するためには、もっと民を優遇する。民と官がパートナーシップを組むから初めてできるのであって、一方的に、お上が下にやれというのでは無理です。プロジェクトを知らない人が最初から箱を決めて、金利を決めて、デザイン決める。プロジェクトやっている人はみんな知っていますけれども、プロジェクトは毎日変わるものです。金利が0.5%やっても変わるのに、最初に箱物から全部決めておいてやれと、官のお役人がどこかで書いているとしか思えないです。
  これが3種類のPPPで、日本にもこれは必ず来ます。郵政省もこの1つだったのかもわかりません。日本の事情はよくわかりません。
  日本の皆さんの税金をいかに効率よく使うかというのにアカウンタビリティーという言葉が必要ですし、民が官と一緒に仕事をしていく時にアカウンタビリティーというものが判断の中心になければなりません。
(図15)
  これは先程言ったかと思いますが、フロリダの商務省が民営化された時のやり方です。日本でも、これから経済開発をやらなければ日本の地方は死んでしまうと僕は見ています。日本の地方をどう救おうかという時に、僕がアメリカで30年やってきた地方の開発のやり方があります。「おまえ、あほか」と思う人もいるかも分かりませんけれども、アメリカの州の政府の人間、州の議会の人間は皆、「ワシントンを食わしてやっている」と思っています。
  俺たちが税金を出してやって、おまえらは防衛と外交とを道路をやっていろ。あとは全部俺たちがやる。フロリダ州には憲法があって、自分で徴税やって、自分でその使い方を決める。そっちはやるから、おまえもやっておいてということです。それでも時々、州は文句を言います。だから、合衆国なんです。ユナイテッド・ステーツ。国といった、まとまりがあるわけではない。
  テキサスを、我々フロリダの住民は外国だと思っていますし、カリフォルニアも外国だと思っています。ジョージアは隣の国かなと思っています。
(図16)
  今度はローカルという話です。州にエンタープライズフロリダという経済開発地区があります。ピラミッドがあります。今週もフロリダからたくさん来ています。南東部からもたくさん来ています。これが各地域の経済開発と連結しています。その人たちが州の人たちと一緒に日本企業を誘致しています。この下には市、町、村が入っています。
  例えば、誰か私に日本の道州制をやれと言ったら、この形を作ると思います。国があって、日本を8つ、9つの道州にして、その下に県を入れます。フロリダの場合は、例えば都市計画なら、エリア・プランニング・カウンシルという地域計画局という州政府があって、そこが10の郡をまとめて面倒を見ています。各10の郡の連結というのは、RPCがやっていて、これを全部まとめる役が州の仕事です。日本は騒ぐだけで金をつけない。ここに金をつけなきゃいけない。交付金でなくて自分で集めてくる金です。自分で集めた金は、自分で死に物狂いになって使おうとします。
  例えば、ビジット・フロリダというフロリダの観光省ですけれども、オーランドには12万室というホテルの数があって、ラスベガスと競争しています。このホテルのオーナーたちは、自分が1室売った時に、その部屋の値段によって30セントから50セントを、自分の預金に貯金します。預金するシステムというのは、郡の選挙で預金していいよと決まったもので自分への税法です。官がやってあげたんですけれども、それを使う方法を決めるのは、自分たちです。もちろん市議会も郡議会も、そこに入っていますけれども、自分で汗を流して、年間に何万室か売って、×30セント出したものですから、自分のホテルが儲かるようにと思って、ホテル・モーテル・アソシエーションの会議で来年の予算を決める時に、死に物狂いでみんな喧嘩します。それが本当の地域の経済活性につながります。
  上から流れてきたものを、お役人のように、今までの3セクのように、リターンを考えないで使えばいいでは、3セクの会社が儲かるはずが絶対ないです。お役人というのはもらったものを使えばいいのであって、リターンがあったら怒られるような組織にいた人に儲けろ、と言ったって、できっこない。民は逆に儲けなければ自分は存在できないから、先程の30%、40%の効率が出てくる。その儲けが皆さんの給料になるわけです。官は、それが今までなかったんです。私は、官が儲けるということはよくないとしても、官の目的が州民、市民、県民のためになるものであれば、儲けという言葉は決して悪いことではないはずだと思っています。それがはっきり見えて、汚職がない。紫波町のプロジェクトをやりましたが、既に6回紫波町の町民との会合を開いています。町民の意見を入れて、町民の目の前でプロセスを全部オープンにしてやっています。
  日本では、今度の福田首相を選ぶ時でも、議員さんが料亭に行って誰にしようか、とやっているけれど、皆さん、文句を言わない。皆さんの未来を決めるリーダーを決めるのに自民党の3人が集まってやっている、税金でやっているのに、皆さんは、無関心。直接選挙で育った私にはよくわからないんです。皆さんの税金を使っているんです。議会だってフロリダ州で議会は年に2カ月しかやらないですけれども、1日でも3カ月目に入ろうとしたら、メディアにこっぴどくしかられます。税金を無駄にするな、おまえの仕事は2カ月で予算を通すことでしょう。それが何故2カ月でできないんだ。おまえには次は入れないよと。皆さんの税金は毎日何億失われていても、何にも文句を言わない。非常に一揆の少ない国。

3.岩手県紫波町の挑戦〜日本における初の米国型PPPプロジェクト研究

(図17)
  これは、岩手県の紫波町という町です。
  岩手県というのは四国よりも大きい。北海道の次に大きいところです。盛岡があって、北上、花巻があって、紫波という3万4700人の町があります。
  JRが通っていて、新幹線が通っていて、ハイウエーが通って、北上川が流れています。ここは30万人の都市で、ここを中心とした30キロで60万人という人が住んでいます。
  北上は、トヨタはある、富士通はある、東芝はあるはで経済開発で非常に成功してます。盛岡は30万人という非常に大きな町です。こう言うと紫波町長にしかられますけれども、紫波は何もないところです。 
  これが紫波中央駅で、この土地が10.7ヘクタールあります。紫波町のゼネコンの人で、PFIと同じだと思ってPPPの大学院に来た人がいまして、いろんな勉強をする中で、紫波町はもう債券出せない、金は借りれない、役場は建てなきゃいけない、引っ越しをしなきゃいけない、図書館を造らなきゃいけない、給食センター建て直ししなきゃいけない。しかし、お金はありません。あるのは、この10.7ヘクタールだけです。こういうのはPPPでプロジェクトとしてできますかということで、根本先生が12月に1回行って、私のゼミの7人で紫波町に2日行きました。町長との話し合いが入って、4月に東洋大学と協定が結ばれまして、私のゼミで、報告書作りました。「田渕ゼミの提案による紫波町のPPP可能性調査」という報告書で、「可能ですよ」という報告を書きました。
  根本先生がフォーラムで講師をした6月には、そういうことはなかったと思うんですけれども、この報告書ができたおかげで、紫波町は9月に国交省から都市再生調査ファンド580万円がおりてきました。
  今月の初めに、根本さんが申請して、うちの大学院に8000万円という援助金が文科省から出てきた。今日も根本さんと会っていたんですけれども、どうやって使うんですか、このアカウンタビリティーをどういうふうに出すかという話です。国もこのようなことが起きなければ、日本の地方はやっていけないと思っていてくれるんではないかと思っています。
(図18)
  紫波町の話をします。10.7ヘクタールの公有地が駅前にあって、図書館を建てなければいけない。役所はあるんですけれども、3つのビルに分かれていて、2つのビルは出ていってくれと言われている。もう1つは、ボロボロで耐震もない。建て直さなければいけない。しかし、町の財政は真っ赤っかで、債券も出せない。PPPで民間の開発を募ることによって、町の財政負担を最小限にできないか。紫波の長期的な未来を考えて、未来の紫波の経済開発の原動力のような開発を、ここでやってくれないかというのが、我々の挑戦です。
  これは、経済開発もPPPも、私が30年間やっていたことですから、そんなに難しい話ではなかったです。
(図19)
  8月に報告に行きました。これをもとにして、今、町では議会を通して母体となるPPP公社たるものを設立しました。今、その社長になる人を公募しています。11月末に締め切りがあって、12月中に社長を決めるというところまでいっています。
  経済開発というのは、紫波の場合、第一に僕いつも言っている「レモン」を探すことです。「レモンがあればレモネード」を探します。60万人が30キロ内に住んでいる。ベッドタウンコミュニティーになり得ること。紫波は日本一のもち米生産地です。お酒も作っています。リンゴも作っています。ラフランスというナシも作っています。ワインも作っています。しかし、お酒を買いに行くと、酒屋さんが僕にお酒を売るノウハウがないんです。町で配っていて、東京には出してない。その人は自分でお米を作って、その中で一番いいお米をとって、そこから自分のお酒を作って、紫波の町だけで売っているから、どうやって外に出すかも知らない。それだけいいものがあるから、マーケティングを考えなくてよかったんでしょうけれども、今さらそうはいかないです。
  紫波町には、お酒を作る職人、南部杜氏が180名程います。全国で二百何名しかいないうちの180名が紫波町にいるんです。この人たちは夏はお百姓さんで、冬になると酒づくりで京都からそこら中を回って、お酒を作って春になって帰ってきて、また農業をする。その杜氏の人たちも全く利用していない。
  今だったら、チョコレートを作る職人がいれば、酒づくりを見せて教えて、酒を売るというシステムがありますけれども、それも全然考えてない。北上は新しい市長さんで、どんどん経済開発をやって、トヨタや、富士通がどんどん入ってきています。その中で取り残された。
  盛岡、北上、花巻への支援産業でも食っていけます。でも、今まで営業をかけなかった農業を、もっとブランド化して世に出しましょう、紫波牛という牛もいるんです。前沢牛という日本第1位2年連続の親牛なんですけれども、後継者がいないという問題もある。もっとマーケティングをやって、ブランドを持って、誇りを持ってもらえれば、幾らでもマーケティングできるものがあるのに、紫波町の人たち、日本の人たちの弱点といいますか、自分を外に出すということをよしとしない国民です。「俺、俺、俺」と言わない。アメリカ人は、「俺、俺」と言わないと買ってくれないですけれども、日本は「沈黙は金なり」ということです。
  アメリカは多国籍の人種が入っていますから、パッと見た瞬間に、「こいつはできる」と思ってもらえなかったら、仕事はできない。ぼろは着てても心は何とかではアメリカでは通用しないんです。価値観が違う人たちが集まっているから、オリバー・ノースが言ったように、パーセプション・イズ・リアリティー。見た感じでもう判断されるわけです。私も、今日はいい格好をしているとまでは言わないですが、人前に出るときはちゃんとした格好をして、一見してくれたら、「こいつはできる奴」と見てもらえる。髪の毛が1本耳にかかっちゃ駄目だ、人前で酒を飲んでは駄目だ、太っては駄目だ、たばこ吸ってはいけない。天子様でなければ表に出れないという社会です。
  ホワイトハウスなんていうと、12時までみんな仕事をしていて、帰らないんです。僕は帰って次の朝7時に行くともう来ている。「おまえ、眠ったのか」と聞くと「ちゃんと眠っているよ」と言うんだけど、マディソン・ボーイズ、ハーバードやイエールを出たピシッとした格好でないと、上司がミーティングに連れていってくれないんです。上司に連れていってもらえないと自分を外に売るチャンスがない。官にいても自分を売るチャンスがない。そういうところに行く時には、ピシッとして連れていってもらえるから、仕事ができる。
  その紫波の未来は、環境産業です。環境を大切にするという紫波が今までうたっていたものを中心に、自動車産業じゃなくて、ITじゃなくて、環境産業と言って、今あるものをブランド化して紫波の未来を考えましょう。それを誰がやるか。役場にやらせては駄目です。PPP公社にやらせましょう。それなら、PPP公社の金は誰が出すのと言った時に、金は10.7ヘクタールから起こしましょう。10.7を定期借地なりで3分の1売ることによって住宅もできる。高級住宅街です。駅から近いから住宅は売れます。ホテルもできると思います。しかし、PPPだから、ホテルの会議場が役場の議場です。ホテルの厨房が給食センターです。図書館はオフィスビルの1階かもわかりません。頭を使って、オイスタースクールとビスケインランディングを使えば、これはできます。それだけではなくて、一部をPPPディストリクトとしましょう。そこで上がってくる税金の3分の1なり2分の1をもらって、PPP公社に与える。そのPPP公社が、これから30年の紫波町の未来計画をすればいいというのが、私が作った紫波町の挑戦です。
(図20)
  そんなことできるのか。できます。先程言いましたけれども、皆さんも、私の話を少し聞いていただいて、日本の地方自治体がこれからやっていけなくなるというのは絶対知っているはずです。このまま続くはずがない。皆さんの税金が急激に上がるか、中央政府がつぶれるかしなければ、日本はもうやっていけないのです。先程の85年のアメリカの財政は、100に対して140だった。それに対して日本は、今170という支出でこれを超えていたら破綻なんです。ということは、ローカルには絶対入っていかない。だとしたら、民の力を使わなければ絶対できなくなってくると私は思っています。私が間違っていればいいんですけれども、多分そうじゃないでしょう。
  短中長期の総合計画ですから、紫波町の場合でも、これから5年後、これから10年後、これから30年後をどうするのということになってきます。私はアメリカの都市計画で学びましたけれども、日本には5年、10年、30年の計画はないんです。長期計画がなくて、何で今できるんです。三井不動産さんがいらっしゃっていますが、防衛庁の跡地ができて、国がそれをどうしようという方向性がない。三井不動産がやるからできますけれども、三井不動産があそこで失敗して、次にラブホテルになっても誰も文句言えない。
  だから、地域は、自分の方向性、30年を決めて、その中で5年目は、10年目は、20年目は何をやっていくかを考え、ステップごとに上げていく。そうすると30年後に先が見える。物は起こっているという考え方が都市計画です。5年置きにコンサルが計画を変えて、棚の上に上げて、また来て無意味なものをやるのではなくて、やったら、そこに金をつけて、人をつけて実現させなければ物は起こらないんです。
  地方自治体が独自の予算システムで、交付金に依存しないシステムができなければ、PPPは難しいです。うちのようなPPPの大学院で、このようなことはできますが、考え方がやわらかい、システムが分かる人たちが官の方に増えなかったら、民はどうしようもできない。民だけでは、幾ら金があって、ノウハウがあってもPPPはできないのですから、官が勉強しなければいけないのです。
  先程の8000万円とれたということで、今、我々は、紫波町のような勉強、研究をする地方自治体を探しております。文科省が探してやってくれということで、紫波町もただでやりました。そんなたくさんできるわけではないですけれども、1地方自治体、2地方自治体だったら、根本さん、私たち、東洋大学の方で支援できるシステムがあります。PPPを考えてみようかというところがあるんだったら、是非、手を挙げてもらうなり私に連絡をいただけないでしょうか。正当性がなければできませんけれども、紫波町のような状況でしたら、2カ月、3カ月でそのコンセプトだけはすぐにでき上がります。
  また、今、このプロの養成をしています。PFIのようなかたい考え方じゃなくて、ちょっと言い方があれですけれども、PPPはむしろ芸術です。その場で、サイトスペスティックで本当に作り上げるプロがいないとできない。先程のPPPディストリクトも、そんなに税金を使うことはできないのではないかとおっしゃるかもわかりませんけれども、千葉の市川市は、1%は、どのNPOに上げていいかということ、選んで良いということを総務省はオーケーしています。ということは、税金の使い方を町民が選挙で決めて良い、というふうになってきているんです。ですから、民のお金、官の金もあらゆる形で、駄目だったら特区をかけてやるという方法も根本さんはあると言っています。
  「官から民に」「中央から地方に」、この言葉をマーケット主導で実現する。紫波町には、住宅を建てられるマーケットがあるんです、ホテルを建てられるマーケットがあります。マーケットがなかったら、収入がなかったらPPPはできません。水でも電気でも収入があればPPPはできます。官は金がなくてもできます。マーケットがあるということが官には分からない。民しか分からないのです。儲かるか儲からないかということです。PPPをやるには、アカウンタビリティーが重要です。民は官が仕事をするわけですから、税金、市民の資産を使ってやるわけですから、その市民が納得するやり方ではっきり出せるものでなければできません。

4.これからの日本におけるPPPの可能性を巡って

(図21)
  PPPをやっていく際に、「総合地域計画」「都市開発」「経済開発」の3つの知識が必要です。私は、大学院では都市計画をやりました。ULIのような都市開発です。経済開発、まち起こしが分からないとできません。日本の駅を降りると、どこへ行っても同じことをやっていて、シャッターが下りていてどうしていいか分からない。当たり前です。自分のレモンを分かってなさ過ぎます。この3つが大切です。
  今のULIの社長は、プリンストンのアーキテクトです。アーバンランドの社長です。ニューヨークの経済開発の社長をやっていました。僕のところに来るシュニッドマンはハーバードの教授で、都市計画を教えていて、先程のビスケインランディングの専務理事をやっていました。今、地域の経済開発をやっています。この3つが分かれば、PPPが分かってきます。
(図23)
  自分のレモンが何であるかが分かればレモネードは作れるというのが経済開発の基本です。自分に何があるのか。他よりもいいものがあって、それから製品が作れれば、他の製品よりいいに決まっているんです。
  京都駅は何ですか。自分のレモンを全く分かってない。京都は3000年の歴史がある。寺院があって、お宮があって、庭もある。シアトルのタワーは、何にもないから、あれを造って観光にしているのであって、京都は自分の良さ、レモンが分からないから、レモネードができない。フロリダは8500万人の人が来ているのに、日本は500万に来ただけで喜んでいます。日本には本当にいいものがたくさんあるのに、自分のレモンが何だか分からない。
  外人が来て一番喜ぶのは築地の市場なのに、ガイドもなければ、JTBもなければ、はとバスも停まらない。僕が一生懸命、朝、怖いところを連れていかなければいけない。自分のレモンが分かってない。観光が何だということが分かってない。人が何を見たいかということが分かってない。そのレモンがわかればレモネードは生み出せます。
(図23)
  岩手県が数年後に国体をやります。国体というのは県の財政に非常に負担がかかる。だったら、民営でやりなさい。PPPでやりなさい。今、石原さんは第2オリンピックを東京でやろうとしている。それなら、皆さんの税金一銭も使わないでやらなければ駄目です。ロサンゼルスオリンピックでもアトランタオリンピックでも官のお金は一銭も使ってないです。絶対にできます。僕にやらせてくれたら絶対にできます。ロスでやって、アトランタでできたものが、日本でできないはずがないです。皆さんがやる気なら絶対できます。
  日本の大手デベロッパーやゼネコンは絶対乗ってきます。その方法があります。日本の放映権、テクノロジーを使えば絶対できます。石原さんは都税は使わないと言いっているけど、国の税金は使わないとは言ってない。1500億円とか何とかかかります。1ビリオンです。PPPで歌舞伎町もできます。築地の移転だってできます。浅草だってできます。渋谷だってできます。東洋大学大学院に来てくれればその方法を教えます。
  あと、1つだけ。アメリカのバランスバジェット法とかアカウンタビリティー、スマートグロース、こういう勉強をすれば、日本のこうした問題の解決の糸口があります。今の日本の財政をどう立て直すか。余剰道路財源をどう使うか。アカウンタビリティーで、今、真っ赤っかの税金をどう処理するか。
  皆さん、絶対税金を上げさせては駄目です。また、官があなた方の虫になるだけです。
  アメリカは、国民の、国民のための、国民によるシステムができています。僕はアメリカ人ですから無責任ですけれども、政治家のための政治家によるシステム、お役人によるシステムが日本のシステムと僕は思っています。
  ウォーターフロント開発は、2次産業で要らなくなったものをオープンして人が住めるようにして開発すればいいと思うんです。日本の国民が、フロリダの人間のようにボートが使えるようになれば、ホンダだって、ヤマハだって、トヨタだって、みんなボート産業を造れるはずです。皆さんの生活にゆとりが出てくるわけです。
  ミックス・ユースで、インフィルで、コンバートできれば、要らなくなった三番瀬の汚い倉庫から、京浜工業地帯の倉庫、工業地帯は全部きれいにできます。ボルチモア、クリーブランド、シカゴ、シンシナチ、全部見れば必ずわかります。
  3セク、PFIからPPPが、僕は日本のこれからの課題だと思っています。
(図24)
  ここで、レモンからレモネードについて。
  フロリダの気候、カリフォルニアと同じです。ハリケーンも時々来ますけれども、湿気がちょっと多いぐらいです。アメリカで経済開発する時には気候が大切です。サンディエゴからバイオ産業がどんどん移ってきていると言いましたけれども、ここ5年でフロリダ州は1ビリオン、1200億の金を使ってバイオ産業を誘致しました。フロリダは、バイオ産業をコントロールする人は次の経済をコントロールする、と思うからです。後は光、フォトニクス、光も、シミュレーションもモデリングもフロリダはナンバーワンです。光、ナノテクノロジーをコントロールするところが次の技術、次の経済を牛耳ると思うからです。そこで何を使うかと言うと、気候、地理優位性というものを使うんです。
  フロリダの税金はアメリカで下から4番目に安い。フットルースエンジニアという言葉を僕は使いますけれども、IBMのエンジニア、インテルのエンジニア、マイクロソフトのエンジニアは、よっぽど上でなければ、会社に対してのロイヤリティーというのは持っていません。自分が住むためにいい環境、いい条件を作れば人はどんどん動いてくれます。
  だから、例えば、バイオ産業。サンディエゴは確かにいいです。いい生活ができるけれども、税金が高くなって住みづらくなってくる。フロリダに来ると30%も、サンディエゴより安く住める。そうすると、フットルースエンジニア、手に職があって頭のいい人はどこに行っても住める人たちですから、フロリダ、カリフォルニアへ移ってくる。コロラドは山、スキーですね。ボストンは、大学、歴史。このように何かがある町に先端産業のエンジニアが集まります。何にもない、遊びもないところに人は集まらない。
  スペイン語人口は、南米と北米で、今10億人になりました。北米があって、南米がありますから、フロリダが地理的にはその砂時計の一番狭いところです。地理的なレモンも使って、FTAA(Free Trade Area of Americas)をやる。日本でFTAAアジアを言っている人はいないですけれども、アジアの経済を牛耳りたいんだったら、FTAAアジアパシフィックを考えれば、日本の経済は未来に伸びると思います。
  フロリダは、そのようにやっています。スペイン語は、キューバ革命時、中米カリブで仕事をしていたキューバの商売人で共産党になったら困る人たちが逃げてきて、フロリダで30年頑張って、中南米経済の中心地をマイアミにしました。私の仕事は、日本企業をどんどんマイアミに入れて、南米へのディストリビューションをどんどんやってもらうという仕事です。地理的なレモンも考えなければいけません。
  NASAは、非常な技術を持ったところです。先々月、無重力が経験できるアトラクションができました。スペースシャトルで宇宙に行って帰ってくる経験ができるものもできました。NASAはジョンソン大統領がヒューストンにヘッドクォーターを移したんですけれども、ヒューストンみたいな汚いところに行きたくないエンジニアはフロリダに残って、フロリダの先端産業の礎になりました。その人たちがNASAの技術でシミュレーション、モデリングを作った。ディズニー、ユニバーサルに行くと、バックツー・ザ・フューチャーなどありますが、あれは全部NASAの技術からできたものです。ハイテク・ハイファンド。観光と先端産業をくっつけてああいうものができた。なお、シミュレーションでは世界一です。
  今度のアトラクションもNASAの技術を使って、宇宙に行って帰ってくる経験をできる。僕はまだ行ってないので、今度行ったらやってこようと思います。
  日本にも大勢になってくる老人、これをフロリダでは老人とは呼ばないです。アクティブ・アダルトと言います。日本でもアメリカでも、70%の個人資産は60以上の人が持っていますから、その人たちのお金をいかにうまく使ってもらうか。これはフロリダの老人産業です。失礼ですけど、皆さんはお金持ちではなくて、60以上、70の人がお金を持っているんです。そのお金をどうやって使って、ハッピーに死んでもらうか。レクリエーション、観光、先程話しましたFTAA、ハイテク、リゾート、テーマパーク、ゴルフ、消費があるから我々は助かっています。
  私はタイガーウッズと同じゴルフ場のメンバーです。ゴルフが好きで、練習場に行くと隣にタイガーが球を打っている。しびれますよ。それが日本人でもできるんです。三井不動産の瓜生さんという方が、昔よくいらっしゃっていました。向後さんも来ている。行くと隣にタイガーがいるというと、嬉しくてしようがない。ゴルフのキャピタルです。世界中のゴルフのトップが来ています。アーニー・エルス、ガルシア、マーク・オメーラも、30人程のトップがメンバーにいるんです。PGAのトーナメントをオーランドでやりますけれども、1月のPGAショーには20万人以上フロリダに来ます。
  
 

フリーディスカッション

與謝野 大変にありがとうございました。まことに前頭葉が刺激されたという感じが致します。PFIの自縄自縛的な根幹的な欠陥がよくわかったのですが、PPPの実践には専門家が絶対に必要だという点については、この方式のある意味の難しさはまだあるのではないかとも感じました。その辺が質問で出るかもしれません。
  今日は、多分質問が多いかと思いまして、30分程質疑の時間をとっておりますので、どうぞ、遠慮なくお申し出下さい。
小池(竃村総合研究所) 今日は大変貴重なお話ありがとうございました。
  今お話あったPPPとPFIのところで是非お伺いしたいと思います。PFIは税金が担保にされていて、かつ延べ払いなので、安全性はかなり縛られています。ただ、今日お話あったPPPですと、リスクが非常に伴う。再開発が失敗したらどうするのか。その辺をどう民と官がリスクをシェアしているのか。具体的なところを教えていただければありがたいと思います。
田渕 結婚なさっていますか。
小池(竃村総合研究所) してます。
田渕 PPPというのは、非常に似たようなものです。官と民という今まで全然違う種類のものが結婚するわけです。まず、相手を信用しなければいけない。そして、お互いに自分のやることは絶対やらなければいけない。信頼をベースにしなければいけない。パートナーをよく選ばなければいけない。官もリスクを取らなければいけない。民もリスクを取らなければいけない。だから、PFIみたいに官が民にリスクを押しつけるのではなくて、官のお役人も、うちの大学院に来て、プロジェクトファイナンスを理解してもらう、開発を理解してもらう。そうすると、どこに落とし穴があって、どこにリワードがあって、どこにリスクがあるかがわかる。リスクとリワードを官と民で、お互いの利点でカバーし合うんです。
  官は必ずしも儲けなくてもいいかもわからないけども、紫波町は役場を造らなければいけない。必ずしもそれで儲けなくてもいいんです。長期的に町民に説明できる、町民の資産を使えるということであれば、リスクは最初からお互いにはっきりさせて、プロファイルを作る時に、官と民が、例えば特区を官から取ってもらうとか、国から援助金を持ってくる、ボンドを出す、官は官でできるとことんまでやる。そうすることによって、民のリスクが、全部やるものに対して小さくなります。
  ビスケインランディングなんか、信じられない程、契約書が厚いものになります。もしこれが起きたら、もし起きたら、全部カバーしなきゃいけない。それでも、分からない時がありますから、計画が分かって、開発がわかるという経済開発が分かる人たちが一緒にならないと、本当のパートナーシップは生まれない。
  プロファイを作る、契約書を作る時に、官と民の責任分担をはっきりして、官は民だけにリスクを負わせることはしないし、民も官に嘘をついては駄目なんです。結婚のように、お互いに信頼し合ってやれるところまでとことんやるから、いい結婚ができるんですけれども、それができなかったら失敗します。
ただ、官の人に、役場を造った後に民が失敗しました、官が取ってしまえばいいじゃないですか。そういう考え方もあるけど、そういう考え方じゃなくて、とことん官と民のパートナーシップで、リスクから、リワードから、金から、国からもらえること、民の都市再生ファンドを使えること、全てやれることはやる。例えば、紫波町の場合、我々が行った時には、あそこでは開発をやってはいけないという土地だったんです。我々が入っていって分かれば、すぐに町は県に報告して、できるようにしてもらっています。
  そういうことも、民で知らないままだったら、さあ、勝ちました、やろうとしたら開発できなくなった、そんなことではとても無理です。開発のプロが一緒になって、リスクをお互いに分け合って、ライダーシップとかホテルの稼働率は、官も民も一生懸命やって、本当のプロをやって計算して、ここだろうとやっていく。ここだけど、10%低かったらどうするか、20%低かった時はどうするか、20%よくなったらどうするか、ここのところも全部契約で決めて、リスクをミニマイズする、極小化する。リスクがゼロということはないです。どんなプロジェクトでもリスクはゼロということはないけれども、プロジェクトが分かって、開発が分かっている人が官と民で一緒にやれば、リスクはミニマイズできます。
  だから、アメリカのゼネコンでも、PPPの要素がないとやらないという人たちが出てきます。それは官がお手伝いしてくれるからです。紫波町の時に、手を挙げた民は土地代を払わなくていいんです。土地代は、家を買った人が払ってくれればいいんです。土地代を払わなくていい、家は建てられる。それなら、儲けをどういうふうにして役場を建てていこうか。オフィスの下が図書館だったり、議場がホテルの会議場だったりすれば、ホテルの議場は2カ月分、3カ月分、オキュパンシー、稼働率があって、お金が取れるわけですから、残りの9カ月をどうやって埋めようかとすればいいわけです。そうすると、リスクがミニマイズできます。
高橋(木更津市) 私は、木更津市の先程言った金をとっている議員です。市民のために働いていますが、今日、何故ここに来たかというと、3セクとPFIまでは木更津市もやっていたんですが、PPPで小学校を建て直すというのが出てきているんです。1年半ぐらい経っているんだけど、全然進まなくて頓挫しています。PPPのような、片仮名が出てきた時は、役所が説明できないから私はまず信用しないんです。
  今のお話を聞いて、学校の後ろで利益を生むものと組むという時に、うちの計画にそんなものはあったのかしらと。学校をPPPで建てて、同じ場所に何で担保するかが全く見えなくなりました。これは質問というよりも、先程どこかで一緒にやっていると言った時に、「あら、うちに本当にぴったりだわ」と思ったんです。何らかの方法を後で教えていただけたらと思いましたので、よろしくお願いいたします。700万円も赤字財政の町から私はいただいておりまして、44日しか議会に行きませんので、あとは何をしているかというと、本当に申しわけなく思っております。よろしくお願いいたします。
田渕 神奈川県の僕の友達が、みんなトンネルを使って木更津に行ってゴルフをやっている。それも今の東京では物凄いレモンだと思います。
  学校がある場所を僕は見たことがないので、何がマーケット、市場性があるものなのかは分からないんですけれども、見れば、何ができるのか、できなかったら、例えば市が持っているほかの土地とスワップして、そこでやるとか、を考えることもできます。そういう、いろんなソフトな頭がないとPPPはできない。
  アートのように、1つのキャンバスに、どこに何をするかを全部を把握した後で、こうすれば経済的に銀行さんが金出してくれるというマーケット性のものを生み出していけば、よっぽど過疎化された何にもないところ、民が何にも興味がないところでやれと言われない限りできます。木更津だったら何らかの方法があるように思います。
  今、文科省のお金でそういうところを探していますから、手を挙げていただきましたら、もちろん選択しなければいけないんですけれども、根本さんと私のほうで考えて、できるものであればやらしていただきます。
高橋(木更津市) ありがとうございます。
與謝野 他に、どうぞ。時間はまだたっぷりございますので。大分PPPという問題に臨むスタンスが分かってきたような感じがしますね。本質はなかなか分からないようですが。
田渕 必要が発明の母なんです。今の日本では、地方自治体、皆さんが抱えている地方の開発案件というのは、必ずトラブっているはずなんです。起こってない、冷蔵庫に入っちゃったというプロジェクトでも、駅前のまちづくり会社が持っている土地だとか、県が持っている問題、町が持っている問題、少し観点を変えて考えれば可能性は出てくるはずです。難しいことはないです。最初に、州だったら州のレモンは何であるか、木更津だったら木更津の自分のレモンは何であるか。それなら、その学校がある土地は、何に使うのが一番いい方法なのか。ここに来ている方がやりたいと思うものができるものなのか、最初にそこから入っていけば民はついていきますね。学校が必ずしもそこでなければいけない、建て直ししなければいけないといった時に、僕は、給食センターの場合でも、紫波では、日本の給食法で、ホテルの厨房ができないというお役所の法律があるのであれば、それは今のものを1億、2億出して建て直ししなさい。その建て直し代は、民が10.7ヘクタールを開発する時に出した利益でやってもらいなさいと言いました。給食センターを駅前の一等地で造る必要は全くないのです。市場性というのはそういうことです。PPPをやっていく時に、役場が駅前にある必要はないです。でも、駅前なら、民は住宅を建てたい、マンションを建てたい、商業施設を建てたい、ホテルを建てたいと言うわけだから、その利益をとって役場を造る。役場でも図書館でも何でもいいんです。官が欲しいものを造ればいいんです。
吉村(三井不動産梶j 田渕先生の東洋大学大学院にプライベートで通わせていただいています。先生の授業はなかなか時間が合わないと伺えなくて、今日はゆっくりお話を伺えて非常に良よかったです。
  PPPの本質というか、最後にレモンからレモネードを作るとおっしゃいました。官の側にある眠っている資源、リソースを生かして、そこにもしマーケットがあれば、キャッシュになるわけです。それであらゆる事業ができる。それを公のために役に立てられるということではないかなと理解しました。
  例えば、大手町のような官庁街の大規模再開発が、東京都心でもこれから出てくるのではないかと思います。日本では長らく官の土地を、本当は国民の土地なのに、役人が、各省庁ごとに抱えちゃっている。国鉄は土地を売らなかったわけですが、ああいうことになって解体されて、汐留の土地を私どもが使わせていただいた。実はあれはシンガポールの事業者に投資をいただいて、ああいう立派なビルを造りました。六本木でも、昔だったらお役所が使って、売らなかった部分にミッドタウンの開発をさせていただいて、あそこに2つの美術館があるわけです。
  根本先生が、授業で、政策大学院とか、あんなものを作る必要があったのか、何で、民にもっと活用しないんだということを悔しがるんですが、資源があって、マーケットがあれば、そこにできる。基本的にそのような理解でよろしいんでしょうか。
田渕 御社の佐々木さんは、世界中の町がどうやってまちづくりをして、国民、市民をハッピーにさせているかという実例を、日本でも多分トップになるぐらい見て回っていますけれども