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第239回都市経営フォーラム

『 環境制約下の都市エネルギー』

講師:  柏木 孝夫 氏 国立大学法人東京工業大学大学統合研究院教授 大学院理工学研究科教授

 
                                                                           

日付:2007年11月15日(木)
場所:日中友好会館

                                                                            
1.
国家戦略の柱となったエネルギー確保と地球環境

Cool-Earth 50 に向けた我国の都市エネルギー戦略

3. 環境配慮型エネルギーコミュニティー構想による地域活性化と都市の自立

フリーディスカッション



 

 

 

 


與謝野 皆さん、こんにちは。
それでは、第239回目の都市経営フォーラムを開催させていただきます。
  皆様におかれましては、大変お忙しい中を本フォーラムにお運びいただきまして、まことにありがとうございます。また、長年にわたりご支援いただきまして、厚く御礼申し上げます。
  本日は、我が国のエネルギー政策の基本的方向性について、産官学界を通じて、啓蒙的な卓見を意欲的に示されて来られておられますこの分野の第一人者をお招きいたしまして、この分野の抱えるさまざまな課題等について、皆様とともに学び、基本的な理解と認識とを深めていきたいと思います。
  本日お招きいたしましたのは、国立大学法人東京工業大学統合研究院教授の柏木孝夫様でいらっしゃいます。
  柏木様におかれましては、まことにご多忙の中ありがとうございます。
  柏木先生のプロフィールにつきましては、受付でお渡ししましたペーパーのとおりでございますが、東京工業大学のご卒業で、ご専門は「エネルギー・環境システム、エネルギーシステム解析、冷凍・空気調和」でいらっしゃいます。
  ご卒業後、米国商務省に一時ご勤務され、その後東京農業工業大学大学院教授を歴任された後、本年から現職に就かれておられ、経済産業省の総合資源エネルギー調査会の新エネルギー部会長を初め、多くの要職につかれておられます。まさにこの分野の当代におけるオピニオンリーダーでいらっしゃる方でございます。
  本日の演題は、ご案内のとおりでございますが、「環境制約下の都市エネルギー」とされておられます。
  それでは、柏木先生、よろしくお願いいたします。(拍手)
 
 
柏木 柏木でございます。よろしくお願いいたします。
  ここにレジュメを3つ用意してございます。1つが、国家戦略の柱となったエネルギー確保と地球環境。2つ目が、「Cool-Earth 50」。これは安倍さんのニュアンスが強いのですが、福田さんも、一応この「Cool-Earth 50」は受け継いでおられます。この「美しい星へのいざない」と、「都市エネルギー戦略」とあります。最終的には私の持論をお話しさせていただきます。これからの環境制約下にある都市エネルギーシステムとはどうあるべきか、ということです。2010年から2030年の間にどういう変化が起きていくか、ということに着眼してお話をしたいと思っています。
  今日、ご出席のリストを拝見しますと、大変広い範囲の方々がお集まりになっておられるので、皆さんとは違った切り口でお話をしてみたいと思っています。
 
 
1.国家戦略の柱となったエネルギー確保と地球環境
 
  2010年の長期エネルギー需給見通しを、この8月に日本は策定しました。どういう答えを出したかというと、皆さんよくご存じだと思いますけれども、京都議定書上の第一約束期間が2008年、来年の4月から始まります。5年間です。この期間の平均値で総量規制がかかっています。1990年レベルで出した温室効果ガスですが、それはCO2やメタンなどいろいろありますが、CO2が8割ぐらい寄与していると考えて下さい。この量が1990年に12億6100万トンと決まっています。これを私どもと環境省で決めましたが、12億6100万トンのうちの6%減を、5年間分ずっとやるということですが、6%はなかなか減できない。どうするかという話です。
  あの頃、川口順子さんという大変な切れ者の女性の官僚がいらっしゃいました。民間で小泉内閣で大臣に入られて、環境大臣をやっていた。彼女は大変な才女です。
  私はこの間、ノーベル賞をいただきました。IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)でのノーベル賞です。あのノーベル賞は凄く政策的だと思っています。私は、IPCC第2次評価報告書の時には、特にコンビーニング・リード・オーサーといって、執筆代表やりました。「ワーキンググループ2」の20章を全部書きました。40ページあって大変な思いして書いた。
  その頃のIPCCの議長はボリーン。スウェーデン人の気象学者でストックホルム大学の教授でした。ノーベル賞は、スウェーデンのスエデッシュ・ロイヤル・アカデミーというカウンシルが決めます。各国にいろんな調査員がいて、日本が少しもらえるようになったのは、日本に調査員が少しできたからと言われています。ボリーンの次の議長は、アメリカのボブ・ワトソン。世銀からホワイトハウスに入って、ブッシュと喧嘩になって、ゴアと仲良くなった人です。ブッシュに替わってオイルマネーになってきて、彼は失脚したわけですが、その人が、IPCCの第2代目の議長です。
  この間、IPCCのノーベル賞受賞で、喜んでシャンパンを飲んでいたのが、パチャウリというインディアンの議長です。
  IPCCのノーベル賞が政策的だというのうは、EUとしては、CO2の網をかけて、気候変動問題を錦の御旗にして、CO2の排出によって、今までの財の再配分をする、ということを狙っているということです。今までは、エネルギーシステムが決まれば、CO2の排出は青天井。自分の好きに経済活動をやって、エネルギーを使ってきた。エネルギーを使うことによって我々はインフラを敷き、都市を造ってきたわけです。
  ところが、これからはCO2の排出に網をかけて、多く出ているところから、これから発展しようとするところに財の配分をする仕掛けをしている、これが環境問題です。もうガラッと変わっている。今、いくらになるかということを最初に話してから、都市レベルに入っていきたいと思います。
  CO2の排出に網をかけるということを、EUはずっと長く仕掛けてきました。15年やっています。ISO14000が1985年ぐらいです。ブリテッシュスタンダード7750を作って、2年やり、EUに膨らませて、アメリカを巻き込んでISO14000に上げたわけです。あの辺から環境に対する国際グローバライゼーション、スタンダードを作り、都市から何から環境制約を仕掛けてきて、ついにCO2の仕掛けまできたのが、第1約束期間です。これは総量規制をしたからです。
  総量規制をするということはどういうことかと言うと、キャップ・アンド・トレードができる。要するに排出権取引ができる。都市間の排出権取引もできる。今度、東京都が「カーボンマイナスタウン構想」というのをやります。産業界は反対しますが、キャップ・アンド・トレードやろうとしている。だけど、キャップ・アンド・トレードをやると言っても、総量を規制しなかったらキャップ・アンド・トレードはできるわけがありません。総量規制しない、つまり幾らでもでかい帽子を被っていいというのなら、成立ちません。「あなたはこの大きさの帽子しか駄目ですよ。それ以上頭が大きくなったら、あなたは余っているところから買っていらっしゃいね。」ということです。排出権の総量規制すると、お金の枚数は限られているから、その価値が決まって取引ができる。
  要するに、ストックマーケットができるということですね。新たな「CO2ストックマーケット」という欄が、これから日経新聞の中にできてくるということです。都市再生とはそういうことです。
  今、第1約束期間が始まろうとしていますが、EUは、その後のポスト京都にどうにか総量規制をつなげていきたい。そうでなかったら、今まで総量規制をこれだけ苦労してやってきたのが、水泡のごとく終わるわけですから。
  そう考えた時に、ポスト京都をどうやって仕掛けるか。アメリカが批准してない。キャップを被ぶってないわけです。オーストラリアも被っていない。オーストラリアなんて、ゴアが来た京都会議、COP3で、あの時に、9%増と言っているわけです。増えると言っておいて、帰ったら批准しない。カナダは批准したんです。今、先進国で批准してないのは、アメリカとオーストラリアだけです。あとは、中国、インディアは、みんな帽子を被っていないくせに、批准してやれやれと言っているだけ。こんないい身分はないですよ。オブリゲーションなく批准して、ちゃんとしたCOPの会議の正式なシートに座るわけですから。アメリカは、正式なシートがなくてオブザーバーです。
  カナダは、批准しました。批准したのですが、この7月にG8のサミットがあり、そこでカナダは首相が、「できない」と言った。安倍さんがいた時です。できないと言った時点で、環境に対してネガティブな姿勢をとったということで、国として発言力は全くなくなっています。カナダは、第1約束期間になったら、できないから批准をやめると言っているわけです。国会で取り決めを撤回する批准をする。そこまで、今、環境問題は金権市場になっているということです。嫌らしい言い方ですが、市場が新しくできるためにEUが仕掛けてきたわけです。
  この仕掛けに、アメリカは入らない、中国は総量規制には絶対入らない。都市は荒れ放題に荒れてくる。キャップをはめてなかったら、何もしなくても良い。今まで通りやっていけばいいわけです。電力は石炭で作り、環境に対しては、喘息にならない程度で保っていればいい、こう思っているわけです。経済成長がメインだと思っている発展途上国は、みんなそうです。キャップなんか嫌。
  ところが、キャップがはめられないし、今、第1約束期間までは決まっていますけれども、その後が決まってない。決まってないのを決めようとEUは思うわけです。これで胴元になるわけですから。排出権を認定をする権利を持つ。アングロサクソンですから、そういう顔をしていますよね。
  そうしますと、EUがポスト京都で同じフレームをやるためには、科学的に1倍、2倍に理由づけをする。そうすると、ノーベル賞よりいいものはないわけですよ。よく考えてみたら、スウェデッシュがスウェデッシュにまず褒めたたえることができた。IPCCの最初の議長はスウェデッシュですから。2番目がアメリカでしょう。ブッシュに対してプレッシャーかけられます。ゴアと仲がいいわけです。
  その次のワトソンというのは、イングリッシュです。大変な男です。国際会議でチェアをやる時は本当に素晴しい。私もコンビーニングをやって代表者で、第2次IPCCの時の20人の1人に入っているわけです。95年ぐらいから8年やりましたから。疲れる会議で、二度とやりたくないと思うような会議でした。
  そういうのを経験してきますと、もろにインサイダーで話がでてきますが、ワトソンというのは凄かったですね。その次に譲ったのが、インドのパチャウリ。発展途上国です。スウェーデンらしさと言うのでしょうか。気候変動問題を、ノーベル平和賞という大変な賞を授与することによって、認知する。アメリカも逃げられないようにする。ゴアにもさらに、平和賞をやる。大変巧みなEUの戦略です。本気だということです。
  本気だということは、市場があれば、売り手と買い手が出てくるということになり、売り手が誰で、買い手が誰だという話になります。買い手は、日本とカナダだと言われています。が、カナダはもうヒーヒー言っています。あれだけ水力のある国で、駄目だと言っているわけです。カナダは抜けたいと思っています。
  日本は、京都議定書と言って、「京都」という冠がついていますから、どうにかやらざるを得ない。その中で、一番伸びが大きいのが民生需要だという話になっているわけです。運輸はトップランナーです。車の良いのが出ていますし、ひと頃バイオエタノールという話も出ました。そういう意味では、運輸の方は少しCO2の削減がなされる可能性があるけれども、民生需要、特に家庭、業務、皆さんが特に関係、関心のおありのこの分野におけるCO2排出というのは、今まで大変な勢いで伸びています。産業部門は、GDPが1.6倍〜1.8倍にまで伸びているにもかかわらず、エネルギー総量はあまり変わっていません。例えば、製鉄1トン作るのにどれだけエネルギーが必要になりますかという原単位は、大体36%、37%低減できている。おかげで、一定の量で来ていたにもかかわらず、バーンと民生需要が伸びた。皆さんが、これからもろに考えなきゃいけない大変な問題を抱えている、と言っても過言ではないということです。
  EUが仕掛けた罠というのは、大体本格的にお金の市場に発展します。これは半端なものじゃないと思います。その証拠を少し申し上げたいと思っています。
  日本は、今、私もメンバーになって需給見通しというのをやっています。私は新エネルギー部会長をやっています。経済産業大臣の諮問機関の総合資源エネルギー調査会というのがありまして、会長が三村明夫さんという新日鉄の会長さんがやっておられる。三村さんも大変だと言っておられますね。たまたま三村さんは私と同じところに住んでいるものですから、一昨日も、9時半頃私が帰ったら、三村さんがNHKにロビーで捕まっているんです。「先生、助けてくれ」。行ったら、「もう、たまらないんだ。排出権で大変な金額を出さなければいけない」と言っていました。半端な額じゃないです。数百億円のオーダーになります。
  簡単に言いますと、8月に我々は需給見通しで、CO2の排出、温室効果ガスがどのくらい出されるかを出しました。最初に戻りますと、1990年12億6100万トン出ている。これはCO2、メタンとか全部ひっくるめて12億6100万トン。2005年で13億5600万トンぐらい出ている。7.8%増になっています。
  皆さんの関係ではエネルギー起源、例えば電力とかガス、石油、冷暖房、そういうものが伸びている。IT絡みの通信網なんて13.6%伸びています。これを来年の4月から5年間で、6%減にするということになるわけです。できなかったらペナルティー。とんでもない話です。
  今、一応正式な値でどうなるかというと、政府見解をご紹介します。GDPが2%伸びるとか、ちょっと甘いところもあるんですが、バレルが50ドルから52ドルぐらいでずっと推移していく、という仮定のもとで計算します。そうすると、6%減の内訳は、3.8%は森林が吸収する。川口さんは頑張って森林吸収を3.8%取ってきたんです。大変な貢献です。日本は、それだけの森林吸収の能力がある。タフネゴシエーターですからね。あと、0.6%はメタン、特定フロン、指定フロン、N2O。CO2以外の温室効果性ガスの低減。これは低減している。90年レベルに対してマイナスです。エネルギー起源のCO2に関しては、90年レベルで安定化させるという目標でやっていました。
  今は十何%伸びているわけですから、そう簡単にはスタビライゼーションできるわけはない。とりあえず6%減は、何か他の手はずでやって、エネルギー起源は90年レベルで安定化させるというつもりで、我々は計算していたんです。
  そうすると、どうしても3.8%プラス0.6%で4.4%。6%には1.6%足りない。ですから。1.6%は最初から京都メカニズムを使うことになっていたんです。要するに、日本は市場を使おうということです。
  そして、去年からNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を通して、国が予算を出すという話になっていた。京都メカニズムは皆さんご存じですよね。釈迦に説法ですが、3つの種類があって、先進国同士でやるのがジョイント・インプルメンテーションや、エミッション・トレーディング。エミッションというのは、キャップをはめている同士でやりとりすることです。結構高い。買い手はジャパン、売り手はロシアということになっている。ロシアは、もっと値段が上がると思っていたらしくて、ふてくされていると聞いています。
  そういう、いろんな国際的な動きがあるわけです。飴と鞭で、ロシアはWTOに加盟させてやるから、というEUの甘いささやきに乗って批准したけれども、まだ加盟していない。資源ナショナリズムに走っている。国が前面に出て、新しい国家資本主義をやるわけです。ガスプロム社なんてプーチンが出てくる。サハリン2鉱区なんて、今ガスプロムが50%プラス1株持っていますから、プーチンそのものですよ。三井物産、三菱商事が入ってやっていて、あとはロイヤルダッチシェルがやっていて、来年の秋ぐらいから、天然ガスを日本に輸出ということになっています。ロシアのプーチンの言いなりだ、と言っても過言ではないぐらいの資源ナショナリズムを展開している。
  ロシアは、キャップ・アンド・トレードでは売り手だったわけです。カナダは「やめた」と言いつつあって、今、非難を浴びている。それがエミッション・トレーディング。
  もう1つあるんです。これが、日本が今、狙っているCDM(Clean Development Mechanism)。これは、日本のODAや、外務省、経済産業省のお金を使って、中国に発電所の効率を上げるような石炭のガス化をするとか、商用段階にないような技術移転をする。それによってCO2を削減した量を、企業対企業だったら、その企業から日本が買ってくる。三村さんのような製鉄会社は、それを買ってくると言っているわけです。それがCDM。これは比較的安い。
  ですから、ベトナム、タイランド、フィリピンなどで、バイオエタノールなどを作って、商用段階にないところで切り開いてあげた。これによってCO2削減ができた。CDMでもらってくるという話です。これは、日本が削減したと同じようなカウントができる。
  こういう排出権取引市場を使いながら、日本は1.6%を削減しようと最初から思っていたんです。それに対しては、国がお金を与える、つまり、国の税金からそれを集めてくることになっていた。これが幾らぐらいかというと、去年の夏の時点で、1.6%は12億6100万トン掛ける0.016、2000万トンになります。2000万トン掛ける5年間で1億トン。1億トンの予算を、日本は税金からとって1000億円用意したんです。ということは1トン当たり1000円。去年の夏には1000円と踏んでいた。
  NEDOが、5年間で1億トン集めてくるという役を担って、いろいろな会社から一生懸命集めてきた。1000億円を用意して、年間2000万トン買ってくるということは、1億トン集めれば1.6%、5年間やったことになります。そうすると、エネルギー起源は安定化だけで済ませる、こういうことになっていた。
  ところが、ことしの3月の時点で、買えたのが400万トンぐらいだと聞いています。2000万トンに遠く及ばない。価格は幾らだったか。正式に買えたのが、トン当たり1900円の平均だったと聞いています。企業がお上に差し出したCDM絡みの、今まで買ってきたエミッション・トレーディングは、まだ認定を受けてない。この間、東電と三井物産はCDMコミッティーでキャンセルされました。
  認定というのは、国連の中にCDMコミッティーというのがあって、これは確かに大丈夫だと判こを押す。また、青い目のアングロサクソンが押すわけですよ。みんな握られている。
  いずれにしても、買えたのは1900円だったと言われています。だから、もはや去年の夏の時点で1000円と踏んでいたのが、約、倍になっている。そして、今、計算して、8月の時点で日本がどのぐらい温室効果ガスが伸びるかというと、幾ら頑張ってやっても、1.6%はもちろん買ってくるとして、さらにCO2換算で2000万トンから3400万トンは増える。幾ら頑張っても2000万トン以下にはならない。足らない。ということは、最初から予定していた2000万トンにプラス4000万トンから5400万トンということです。
  今、自主行動計画で、皆さんの業界にプレッシャーがどんどんかけられているのではないですか。国交省もかける、経済産業省もかける。経団連にもっと削れと言う。今、1700万トンぐらいは減らせる、アディッションで減らすという話をようやく約束を取りつけて、それでも、3400万トン伸びるので、まだ1700〜1800万トン足らない。
  その時に、日本が今、現状において、先物でヘッジングしているCDM絡みの排出権があります。この排出権を、幾らぐらいに踏んでいるか。20ユーロと言っています。ユーロは今、高い。USダラーで1トン当たり25ドルです。20ユーロと言ったら3300円。去年の8月で1000円。今年の3月で実際に買えたのは1900円。今年の夏で、今、実際にヘッジングしている排出権を換算してみたら3300円。ということは、幾ら足らないかというと2000万トン足らない。2000万というのは、最初から考えていますから、プラス2000万トン、合計で4000万トンだとすると、1300億円ぐらいになります。国民1人当たり1000円、4人家族で一家で4000円。これだけが水泡のごとく消える、ということになるわけです。
  このお金は、全部外に出ていきます。地域が景気悪いというのは、地域の中でお金が回らないからでしょう。私は経済学者ではないから分かりませんけれども、地域の中でお金が回って、出したお金が戻ってくれば、財布に入っているはずです。3回回れば歩合制で少しは貯まってくる。それがイニシャルコストだけでやっていると、出ていったら、一生懸命やらないと戻ってこないわけです。
  ところが、排出権取引というのは国対国ですから、国対国ということはサーキュレーションしないということです。一方通行でドーンと行ったままで終わってしまう。これを、Lどうにか避けなければいけないんだったら、何をやればいいのか。内需拡大をしないと仕方がない。私はそう思うんです。中でどうやってお金を回すか。都市開発ですよ。箱物ではなく、エネルギー絡みのプロジェクトを国内で立ち上げることによって、中でお金を回す。エネルギー絡みであれば自給率が上がる。箱物は2次的に建っていく。都市計画そのものに網をかけなければ駄目だ、ということになる。
  これは、民生需要あるいは産業部門も含めて、産民複合型です。いろんなことを考えている時に、その都市レベルに応じてそれぞれ自分たちが最も得意とするまちづくりをやっていく。「低炭素社会」と我々は今呼んでいます。低炭素社会のまちづくりをやっていかないと、結局は、キャップ・アンド・トレードで、国対国でそれだけのお金が流れていくという話になってくる。
  もっと分かり易く言いましょうか。電力1キロワットアワー当たりのCO2排出が幾らだ、という話になります。電力1キロワットアワーと言ったら、大体どのくらいか。今日、役所の新エネルギー課に行ってきました。来週、僕はプレゼンをやらなければいけないんです。経済産業省と環境省の合同審議会というのがあって、良くテレビにでていますが茅陽一先生が委員長です。経済産業省の産業構造審議会と環境省の中央環境審議会です。そこで、原子力が地震などで動きが悪いから新エネをやれということになっています。新エネは、そういうと怒られますけれども、ヒステリックな人が多い。私は新エネの部会長ですから、新エネを進めなければいけない立場にあって、もちろん進めています。二者択一という考えはありませんから、原子力のいいところをとりながら、新エネのいいところをとる。ベースとしての、原子力と地域活性化の新エネルギー。自給率の向上ということを考えた時に、やっぱり新エネの良さというのはあるわけです。
  新エネに対してプレゼンをやれと言うので、打ち合わせをしてきました。その時にまとめを何にしようかなと考えていて、この頃よく使う、電力の排出コストというのを考えた方が分かりやすいなと思い出した。まず、商用電力1キロワットアワー当たり燃料費相当というのは3.3円ぐらいですか。設備コストを入れないで、燃料費だけです。燃料費、1キロワットアワー電力を作るのに、石炭とか何かいろんなので作って平均値をとると3.3円ぐらいです。
  これをベースにして、CO2排出コストは幾らになるか。原子力は幾らになりますか。原則はゼロですね。発電所を造る時はCO2を出しますよ。セメントで固めるわけですから。だけど、運用段階に入れば、原則ゼロです。だから、CO2排出コストは0円。
  それでは、一般の電力は幾らか。環境省でキロワットアワー当たりどれだけCO2を出しますかという推奨値があります。0.555キログラムと言っています。これはどこから出ているか。日本の場合は複雑で、電力会社が主張するのは、今止まっている柏崎が動き出したら、3割ちょっとは原子力が入っている。水力も入っている。もちろん石炭も入っているし、天然ガス、コンバインドも入っている。全部ミキシングしたら400グラムぐらい以下になる。原子力も入れますから、ぐっと減るわけですよ。だけど、火力平均だとすれば0.6、600キログラムで多くなる。そこで、あまり細かいことを言わず、もし電源構成が分からなかったら、日本のざっくりした値で、環境省はキロワットアワー当たりが0.555という値を出しています。1キロワットアワー当たり電気を大規模集中型の電力で作ったら555グラムCO2が出る。
  555ですから、覚えやすいんですけれども、500グラムにしましょう。ということは、2キロワットアワーで1キログラム出すということです。1キログラム当たりのCO2の排出権コストは、現状で3300円。1トン当たり3300円ですから、3.3円です。これは動きます。需要と供給の関係でガラガラ動くわけですが、一応それで今計算しますと、1キロワットアワー当たり排出権取引だと1.7円。これが4000円になれば、3300円がもう少し上がって、25ユーロ、30ユーロぐらいになり、4000円、5000円のオーダーになってきて、もっと上がるだろうという人もかなりいます。そうすると、2円、3円のオーダーになってくる。1キロワットアワー当たり、CO2の排出コストが、アボイデッドコストの燃料費と同じぐらいの値になり得る。このぐらいのマーケットを持っている。ただ、90年レベルのエネルギーシステムを基準にした上で、伸びた分が何が伸びるかという話です。全体の需要が伸びた分に対してのコストということですから、そこを誤解のないように、しておきたいんですが。
  そうなった時に、排出コストというのは、1キロワットアワー当たり1.7円、2円ぐらいのオーダーです。それでは、新エネ電力は幾らかということです。バイオマス、風力。太陽光はちょっと高いです。今RPSコストと言っています。新エネ電力は、それを作った事業者、風力事業者、バイオマス事業者、みんなで競争しています。電力はその管内の電力会社の系統に1キロワットアワー当たり3.3円で売る。3.3円では、とてもでないけど、やっていけませんから、プレミアがついている。そのプレミアがRPS相当量と言われている。これは現在CO2排出とはリンクしていなくて、あくまでもプレミア料、環境料です。今大体幾らで売られているかというと、1キロワットアワー当たり5円から6円です。電力会社が5円か6円で買うわけです。
  そうすると、これは風力だったら大規模化したり、バイオマスだったらもっと合理的な収集行程を考える。廃棄物系で、変な塵種が入らないように収集のルートを考えて、それをガス化する、液化するとか、いろんなシステムがある。ごみ発電は60%がバイオマスですから、ごみ発電に持っていく。こういう都市密着型の発電所の中にうまく収集して、そして発電に変える。こういうことをすれば、どんどん5円、6円は安くなる可能性がある。
  ということは、新エネルギーの良さというのは、キャッシュフローで国対国でドーンと外に出ていってなかなか戻ってこないお金の排出権を買うより、2倍ぐらい高いですが、内部のサーキュレーションができるということです。新エネにも一理あるのではないでしょうか。お金の換算が今まで、できなかったんです。新エネは高い高いと言われて、誰もやらない。誰がそんなコストを払うんだ、1キロワットアワー当たり5円、6円払って、誰がそんな電力を買うんだ、と言っている人はたくさんいたわけです。総論は、みんなオーケーするんです。新エネはいいですね、高くてもやるべきですと。ただ、自分で払うとなると、そうはいかない。その証拠に、グリーン電力料金を皆さんの中でお支払いになっている方何人ぐらいいらっしゃいますか。月500円です。ご存じないでしょう。電力会社が月500円、グリーン電力を払うために寄附を下さいというのをやっています。電力会社はプールした分と同じ額を継ぎ足して、風力を建てたりして新エネ電力を作りますと言っているんですけれども、大阪なんていったら、ほとんど入らない。関西地区は、500円では高いから一口、100円にしたんですが、それでも入らない。
  寄附金みたいなものです。大学なんか寄附を集めたって、私の勤めている学校なんて、ほとんど集まらない。慶応が一番集まると言われています。寄附というのは、日本はまだシャビーなんです。生活レベルがもう少しアフォータブルでないとそういう余裕が生まれてこない。まだ投資するのはいいけど、寄附なんて嫌だ。総論は賛成だけど、お金が高ければ誰も払わない。
  そうすると、今言ったように、中でうまく回すような仕組みを考えるのが、これからの環境制約下の都市計画。その時代が、もうすぐそばに来ています。来年の4月から第一約束期間が始まって、もろに払うとなった時に、ちょっと待ってくれと、焦っているのが経団連です。電力だって大変ですね。国対国の取り決めですから。
  この頃よくNHKから電話がかかってくる。排出権や地震で原子力が止まったこととか地球環境問題についてです。地球環境は確かにいいぞ、ということなのですが、ノーベル賞に見られるように、それはEU、アメリカの戦略です。これに乗せられてやられるのは日本人だという可能性が十分あるということを頭に置いた上で、これから都市計画をやっていかないといけない。一番伸びているのは民生用です。そういう意味で、今日は楽しみにして来たわけです。
  皆さんの業界とお話しする機会がそんなにありませんが、凄く重要な責務を担っておられると思っております。今まで快適性、利便性がテーマだったのが、環境価値というのが価格に換算されるようになります。価格に換算したこれからの都市計画はどうあるべきだ、ということを考える必要があるということを言いたかったわけです。
  この間NHKで言っていましたが、柏崎の原発で、どのくらいCO2が出ると思いますか。柏崎が地震で止まり、700万キロワット相当の電源が止まりました。今、第1号機に水中カメラを入れまして、中の破損度合いを見ている最中ですね。まだ1年以上かかると言われています。なるべく早く再開すべきだと私は思いますけど。
  柏崎が止まっていることによって、何かの電源を動かすわけです。石炭を動かしたり、稼働率を長くしたり、石油火力、重油火力やったりする。今までのピーク対応だったものを動かさざるを得ない場合だってあり得ます。電力はツインピークになっています。夏の冷房だけでなくて、ヒートポンプで冬の暖房も結構ピークが出るんです。暖房というのは量が多い。冷房は一瞬時ですけれども、暖房になると、ピーク時が長いので積分値多くなります。全部燃料を炊かなければいけない。それによってCO2が増大する。
  原子力が天災で止まったことによって、火力発電を動かした。それによって、出るCO2の増分量は、正式な値で2800万トンと言われています。2800万トン分を排出権で対応すると、900億円です。燃料費、原子力以外の燃料、石油が上がっていますから高いですよ。3200億円と言われているところに、プラス900億円分の排出権を買ってこなければいけない。4100億円。東京電力の利益4000億円、そっくりそのままということになる。
  私は、NHKがインタビューに来たから出してもらいたい話がある、と言ったことがあります。でも、なかなかその部分を出してくれないですね。それは次のようなことです。私が言ったのは、経団連の自主行動計画がありますね。皆さんは建設業で自主行動計画をやっていますね。うちはこれだけやります、2010年で今から15%削減しますというものです。A、B、Cがついているわけです。あんまり削減に努力しないところは、補助金がいかないです。いろんな意味で嫌がらせされる。仕方ないから一生懸命やる。国の指標だってもちろんやりますね。それは自主行動計画ですから、やるのは自分の考えの中でやっているわけですから、いいでしょう。電力会社は20%CO2削減します。だけど、自由化で安くせざるを得ないから、石炭火力を炊きました。だけど、自分でデクレアしているんだから、石炭火力を炊いたとしても、それによってCO2が増大したら、それは自分の責任で排出権を買ってきて帳じりを合わせます。
  だけど、今回の地震は天災ですよ。天災によって原子力を止めざるを得ない。火事になった家から金取るのかという話です。見舞金をあげても良いくらいなのに金を取るのか。国際社会に対して、日本政府は、天災によって原発が止まって、それによってCO2が増大するんだったら、その分は執行猶予を与えてもらうとか、あるいは削減義務量から差し引いてもらうとか、そのくらいのことは主張すべきだと言ったんです。誰が聞いたって、おかしな話ではない。それが不調に終われば、消費者から取る場合だってあり得る。こういうことを言ったんです。
  そうしたら、出たのは最後だけ。消費者から取る可能性もある。エネルギー庁の長官が出ていましたから、「そんなことはない」とか言っていました。
  本来、国同士の政府レベルの取り決めをやってきたわけですから、国際社会の中で日本が主張すべきことは、きちっとできるような国民性でなければ、やられっ放しになる、というのが私の考え方です。そこら辺が、今日お渡しした一番最初の資料(「国家戦略の乏しさを挽回すべきとき」時評 特集「資源外交」2007.9 P.44)にたっぷり書いてあります。『時評』といって、凄く硬派の雑誌です。インタビューを起こしてくれるんです。原稿が多いものですから、自分で書くのが大変なので、インタビューでやるわけです。いい加減に言ったことが文章になると、全く通じない文章になっているんだなと思いますが、何となく通じているというのがなかなか面白いものだと思います。強烈な文章で、こんな凄いのを見て自分でも恥ずかしくなったんですけれども、後でお暇の時にお読みいただければと思います。
  いずれにしましても、そのぐらい大きな話が来年から始まろうとしている、という現状を把握された上で、これからの都市エネルギー計画、都市計画を考えていくべきではないでしょうか。
 
 
 
 
2.Cool-Earth 50に向けた我国の都市エネルギー戦略

 
  次の話に移りたいと思います。
  日本は長期戦でいきたいというのが我々の考えです。ですから、2030年を目安にして、徐々に脱CO2化していきたい。それが都市計画そのものになっていくと考えています。
  日本のスタンスをもう少し申し上げれば、安倍さんが言ったことと同じようなことを、福田さんも今度、洞爺湖サミットでやることになっています。これが「Cool-Earth 50」。2050年で50%をどうにか削減したいという願望を述べている。それには3原則があって、これは福田3原則と言っても過言ではありません。
  どういうことを言っているかというと、環境と経済の両立を図るのが技術開発だということです。日本は技術開発をうまく考えながら、今の環境問題を、日本イニシアチブがとれるような形で乗り切っていきたい、こういうふうに考えている。
  もう1つ、日本の今度の洞爺湖サミットの3原則の中には何が入っているか。まず、メジャーの排出国、要するにアメリカ、中国、インドですが、このメジャーのCO2排出国が全員参画するようなフレームを、第1約束期間以降には作っていかなきゃいけない、ということです。これが1つ目。
  2つ目が、日本のような省エネ国家において、やはり国情に応じて柔軟性のある対応がとれるようなフレームにしなければいけません。これが2番目。
  3番目が、環境と経済の両立を図れるようなフレームでポスト京都は考えていかなければいけない。それを達成できるのが技術開発そのもの。そういう意味では技術のシーズが日本にあって、日本が、これからの環境制約下の都市エネルギーあるいは産業エネルギー、こういうものを乗り切っていくドライバーになれますよという話をしているわけです。
  その5つの技術とは何か。5つの技術を立ち上げたんです。5つの技術でメジャーは何かと言いますと、まず1つ目は石炭火力。クリーンコールテクノロジーを日本主導でやっていきましょう。石炭のガス化をすれば、コンバインドサイクルができて発電効率が50%を楽に超える可能性があります。ガス化して、ガスコンバインド。ガス化すればガスタービンが回せますから。ガスタービンを回せるということは、廃熱でスチームタービンが回せる。よってコンバインドサイクル、複合発電と言います。
  今の日本の発電効率は大体40%弱ぐらいですけれども、この複合発電になりますと、50%から、うまくいきますと59%、60%ぐらいいく可能性が出てくる。カルノーサイクルのギリギリの上のところまで達成できる、と言われている複合発電です。石炭の場合にはCCSも含めますという話です。
  ですから、建設をしておられる方は、これからはデマンドだけやっているのはおかしいんですよ。サプライサイドまで考えた中での都市計画とはどうあるべきかということを考えないと、ただ、あてがったものを使いますでは、これからの都市計画は乗り切れないということです。ポートフォリオを上流の発電システムまで考えた上で、都市計画に持っていかないと、結局CO2の排出でやられる、ということです。
  例えば、石炭火力をやるのであれば、これは大規模になりますので、CCSで、CO2が出てくるのを煙突からとってやって、どこかに埋めるぐらいのことまでやる。キャプチャー・アンド・ストレージですね。捕まえてそれを保存する。こういうことまでやらないと石炭火力は生き残っていかないとまで言われる。これは中国に対するプレッシャーですよ。
  中国の石炭火力。あそこもWTOに加盟しています。WTOに加盟するということはどういうことかというと、為替レートがつくということです。今、元の為替レートついていますね。もっと上げなければいけないという動きが出ています。あれは国対国の中で決めていくわけです。今、日本の場合には変動制になっていますから。
  日本の為替レートは面白いんですよね。日本は1ダラー360円でデビューしたんですね。何で360円だったんでしょうか。1970年頃です。10で割ると36なんです。400円でも良かったのかもしれない。
  要するに、WTOに加盟する、世界貿易機構に加盟する、貿易機構に加盟するということは、為替レートで実力に応じて変動するということです。だから、世界のマーケットというのは変動制なんです。要するに、ゴルフのスクラッチ制ではないんです。みんなハンディキャップがついて戦う。日本は360円を10で割ると36でデビューして、そのころ実力は20ぐらいあったんじゃないですか。車だって私がアメリカに住んでいた80年頃は、向こうで1万ドルと言われていた。360円だったら、日本で作って1万ドルで還金すればウハウハ儲かります。あの頃200万でできていましたから、9000ドルぐらいで売ってもウワーッと儲かった。日本は強い強いと言って、幾つまでいったと思いますか。80円。ハンディが8ということです。今110円でまた高くなっている。
  中国も今、36でデビューしているわけです。それが徐々に高くなっていきます。最後はEUが仕掛けたCO2排出、これをうまく入れていかないと、ハンディ戦の中でどんどん高くなり過ぎる。低CO2化をすれば、少しハンディをもらえるような格好になる。ちょうどその国の内需とバランスするような形で、これから推移していくんだろうと私は思っています。そういう意味で、石炭というのは、中国対応として日本が売り込める一番いい手だと思っています。
  2番目の柱が太陽光です。次世代ソーラーと言われています。これは薄膜系アモルファス、色素増感型など、いろいろなのがありますが、やはり日本主導でやっていきたい。ソーラーはシリコンで律速する場合がありますし、薄膜型ということになっていくんだろうと思います。
  3つ目が、水素プラス燃料電池。これは、どうしても日本発にしたい。政策としてCO2の環境がぐっと縛られた時には、間違いなくエネルギー源の多様化を図るような形になる。多様化を図った時には、エネルギーシステムも多様化しますが、それでは困ってしまいます。まず、水素という水素キャリアがあるような1次エネルギー源、あるいは水素にうまく収れんできる1次エネルギー源があれば、燃料電池というカルノーサイクルに律速されず、分子化学的な反応で、電気と熱、物質、水やお湯が出てくる、という世界が必ずやってくると思います。
  ただ、まだ高くてそう簡単にはできません。だけど、一応日本としては車も準商品が出ました。出た時、トヨタは奥田さんが会長だった。だから、奥田ですから1億円と言われた。値段が決まってなかった。60台ぐらいしか出てないと言われています。社長が張さんだったので、社長に聞いたら、「兆だ」と言ったというくらい値段がわかってなかった。そのぐらい高かったわけです。でも、まだそれが量産に入っていないけれども、一応ハイブリッド技術としては大成できていますから、ガソリンハイブリッド、ディーゼルハイブリッド、その後に来るのが燃料電池ハイブリッド、こういう話になってきます。
  そうなると、燃料電池の時代がやってくる確率が2030年は極めて高いということを頭に置いて下さい。これは3つ目の柱です。
  4つ目の柱は原子炉です。原子炉は日本のお家芸だと言われています。一応ノウハウもありますし、これを次世代型原子炉、中小型化に持ってきて地下に埋める。こういう原子炉を都市密着型で造った時に、都市計画はどう変わっていくか。原子炉がそばにある町というのは本当にできるのかどうか。
  5つ目が、産業工程で、製鉄業のコークス炉から水素炉への変換と言われています。今の高炉というのは、コークスを入れて、Fe203という鉄鉱石の酸素をとって鉄を作っているわけです。鉄の製錬。コークスを入れてCO2を出して鉄をとっている。このコークスの代わりに水素を入れる。コプロダクションです。製鉄工程の中で水素が出てきます。その水素でうまくサーキュレーションしながら、鉄鉱石を還元するのにコークスの他に水素を入れれば出てくるのは水だけです。その水蒸気を何らかの形で回収すれば良い。水蒸気の都市熱利用で、製鉄業あるところに快適な町ができる。それがないと空洞化をしていく、こういうことになります。産民複合型の地域開発が再度到来する可能性が出てくる。CO2が水素に代わる可能性が十分にあるということです。
  製鉄業、エネルギー多消費産業のそばに都市ができ、この都市は、今まではCO2、廃熱、排ガスだけで汚かったものが、今度は水素という連産品でうまく内部サーキュレーションしながら製鉄用に水素を使って水蒸気を出して、その水蒸気を地域冷暖房に出していく、ということです。
  この5つのキーテクノロジーを官邸主導で出してきました。これが2〜3カ月前に発表になった。我々が、これから環境制約の中で技術開発を乗り切っていくためにはどうしなければいけないか。その時に出てきたのが50%CO2削減となった。50%CO2削減ということは、先進国なら70〜80%CO2削減しなければいけない。その姿を描くためには、産業部門にこういうテクノロジーがあって、後は太陽光があり、水素、燃料電池があり、次世代型の原子炉があり、超省エネ型の生産工程があり、石炭のガスケーションがある、こういうことを言ったわけですよ。
  そうなった時に、私たちの家庭用のエネルギービジョンがどうあるべきか。いろいろなプレハブメーカーさんが、いろいろなことを考えているそうです。2030年に向かって我が国が、環境制約下のCO2に関して、どうにか乗り切るためには、家庭の中のエネルギーシステムはどうあるべきかということを考えた。この間、需給部会である先生がおっしゃったんです。、例えば太陽光、風力などの新エネルギーは量が増えてくるとどうなるのか。バイオマスはいいんですよ、燃料がありますから。ただ、太陽光や風力が増えてくると、大きな発電所から樹脂状の構造で、電圧が50万ボルトから22.5万になって、ずっとやってきて電信柱へ6.6キロおりてきますね。それが100ボルト、200ボルトで家庭に送電される。6.6キロで都市のビルに高圧で結ばれているところもあるわけです。
  こういう樹脂状の構造にあって、デマンドに、太陽光や風力が入ってくると、特に風力なんて風が吹いている時には電圧を上げ、デマンドでバッと吹き出しができるわけです。周波数はカラカラ変わってくる。
  今までの上質な系統のグリッド電源に対して、比較的悪さをする間欠性の電源、これをどうやってうまくハーモニックに、メガインフラの中に受け入れてやるかというのが1つの大きな問題になります。これがあんまり多いと系統制御に陥って、下手するとどこかでショートする。電力会社というのは、制御できなくなるというのは好ましくない、こう思われているわけですよ。
  そうしますと、風力やソーラーが、10%、20%入るなんてことは、そんな簡単にはうまくいかない。今でもそうですね。系統連系の中の5%だったらいいけど、7%、10%になったら、もう解列は切っちゃうわけです。あるいは蓄電池をつけろと言っているわけです。蓄電池をつけて、いつでも同じ電源、電圧に保てるような形で、吹いてない時は蓄電池の中から貯めたやつを出してやる。常に一定の電力になるような形での対応が必要ですね、こういうことを言っているわけです。
  そうすると、2030年、長期にこれからの都市計画を考える時に、間欠的な電源は、環境の観点からいいと言っても、それほど入ったら、かえって国民的なレベルで考えたならば、割高なシステムになっていくのではないか。それだったら石炭火力でCCSと組み合わせた方がいいのではないか。こういう議論も多々あります。
  本当にそうなるか、というのをよく考えてみたいと思うんです。今、エネ庁でエネルギー絡みの予算が9600億円と聞いていました。先程、今度の発表のために大体のオーダーを教えてくれと言ったら、エネルギー庁でエネルギー絡みの助成金は1兆弱なんです。新エネ絡みの助成金は、そのうち1200億円と言っています。その中で300億、400億ぐらいは、蓄電池、リチウムイオンなどの次世代型のバッテリー。これは、こういう新エネの間欠的な電源を安定的に系統連系するために必要だということです。
  もう1つ大きな話があるんです。これが、今言った運輸部門と民生部門のリンクです。運輸部門と民生部門というよりも、エネルギー変換部門とのリンク。ここが重要です。プラグインハイブリッドが出ると言われています。その時に何を考えなければいけないか。2030年というと、これから二十数年。都市計画というのは20年かかると言われていますね。そうすると、ちょうど2030年のビジョンを描きながら、今何をすべきか、ということをお考えになっておられるのではないかと思います。
  日本には骨太方針の中に、内閣がきちっと認定したちょうど2030年をターゲットにした新国家エネルギー戦略というのがあります。運輸部門のエネルギー消費について、エネルギー供給源を、今は98%石油に頼っていますけれども、これを80%に下げたいという目標値を出している。ということは、20%は他の形の供給源を使うということです。ここで言いたいのは、都市と運輸というのは、これから切れなくなるということです。
  皆さん、運輸は運輸でやっていけばいい。そういうふうに思っておられるかもしれませんが、そうではない。都市と運輸は切っても切れない状況になるとは、どういうことか。今、運輸部門のエネルギー消費を20%、石油から他のものに変えていきたい。パッと頭に来るのはバイオエタノールですね。バイオディーゼル。でも、そうではないんです。もちろん20%のうちの3分の1ぐらいずつ何かに置き変わっていくんでしょう。この3分の1よりももっと多くなるだろうと思われているのが、プラグインハイブリッドです。
  新国家エネルギー戦略の中には、数値目標が5つあります。その中のもう1つ大事なことが、日本の場合には原子力の比率をあげて自給率を上げたいというものです。原子力が自給率の向上に資するかというのは考え方によりますけれども、一応リサイクルができるということを考えますと、原子力も自給率のうちの1つです。恐らく、2割から3割になる。でも原子力比率を全電力の40%以上に上げるのは大変です。
  一時、関西電力さんが、原子力がうまく動いていて、40%以上のシェアを誇ったことがあった。そしたら、夜間電力の負荷が足らなくて、負荷の方が原子力の割合よりも小さくて、捨てざるを得ない時が一瞬生じたと言われています。ということは、40%以上に原子力を上げた都市計画は、負荷平準化対策をどうするかということを考え合わせないといけない。ただ、何でもいいから、電力をあてがいぶちでやるという話ではなくなってくる。
  要するに、エネルギー供給源が原子力で40%を占める、これは日本の国家エネルギー戦略として書いてあるわけです。実証するわけです。40%以上と言ったって、夜間電力の負荷をどうやって創生して、かつ稼働率を上げるような形にするのか。交通の分野が20%石油から他のものに置き変わる。原子力は40%以上上がる。ここで夜間負荷の向上を図る。ソリューションとして何が出てくるかというと、電気自動車、プラグインハイブリッド。
  ハイブリッド自動車というのは、今、マイルドハイブリッドというのがありますね。クラウンなんかがそうです。マイルドハイブリッドというのは、バッテリーがちょっと小さくて、起動時だけバッテリーで動いて、あとはエンジンがベースで馬力をボーンと出す。エンジンを小さいものを積んでしまうと高速道路で馬力がなくて抜けません。クラウンレベルで、カローラぐらいのエンジンを積んでいて、最初は電気だからバッと出るんだけど、あとは高速に乗ったら、クックックッとしていて走らないのでは面白くない。それでは仕方ないと言うので、マイルドハイブリッドにするわけです。ちょっと感じだけハイブリッド、というのがマイルドハイブリッド。
  具体的なメーカーの名前で恐縮ですけれども、プリウスはストロングハイブリッド。要するに電力は五分五分で動く。電力とエンジンが変わるぐらい。もっとストロング、超ストロング、ウルトラストロング、これがプラグインハイブリッド。殆ど電気で動く。いざという時だけエンジンが動く、こういうものです。
  完全にエンジンがないのが、三菱が作っている「アイ」です。これは今1000万円すると言われています。ベンツのAクラスみたいな箱型で、バッテリーが下に積んであるだけですから中は広いですよ。エンジンルームがありませんから。これは電気自動車。
  ストロングハイブリッドよりも、もっとプラグイン電気自動車があるシェアを占めてくる時代がやってくるだろう。それは何故かと言うと、これだけガソリンが上がったりしますと、経済競合性が出てくるということです。電力は今幾らですか。1キロワットアワー当たり、昼間、普通の家庭用電力で24円。夜間8円です。昼間は我々が買っている家庭用の変動制でない電気は平均で23〜24円。大体1キロワットアワーで10キロ走ると言われています。そうすると、ガソリン自動車1リットルで10キロ。1リットル150円ですから、150円で10キロ。電気自動車は1キロワットアワーで10キロ。正確にいうと、8キロなんですが。そうすると、一番高い24円で10キロ。燃料費だけで考えたって6分の1です。だから、電気自動車の経済競合性というのは担保されているということです。


3.環境配慮型エネルギーコミュニティー構想による地域の活性化と都市の自立
 
  そうなると、これは面白いですよ。CO2削減80%ハウス。屋根にまずバッテリーが乗ってくる。普通の家庭です。皆さんが考えておられる業務用ビルはちょっと別です。業務用ビルは燃料電池が入ってくる可能性があります。長期的には違うシステムになると思いますけれども、適材適所で違うシステムが入ってくるんです。どうなるかと言うと、まず都市計画をやったら、もちろん住宅地もある。駅の真ん前には高層ビルがある、ホテルもある。そうすると、クラスター別に分かれて考えていかないような状態になってくる。複合クラスターみたいなものになる。住宅クラスターはどうなるか。そこだけ考えただけでも、ぞっとするようなイメージが湧いてきますね。
  家庭用CO2は伸びていますから、削減80%の家ということになると、どう考えなければけないか。メガインフラがやはりなければ駄目です。メガインフラを否定する人がいるんです。再生可能エネルギー、もうそれだけでやっていけると言うけれど、それは詭弁でしょう。これだけの工業国家においてあり得ないですよ。
  そういう意味では、原子力をベースにしたメガインフラがあって、負荷平準化のために何をするかと言うと、プラグインハイブリッドが入ってくる可能性が十分あるということです。ここのプラグインハイブリッドというのは、普通は走るためのバッテリーだと私たちは思っていたわけです。そうではない。車なんて走る時間は限られています。ずっと運転していたら疲れますよ。結局、自家用なんて年間1万キロぐらいしか走らないでしょう。そうすると、家庭用電気自動車は、殆ど車庫に入っています。普通、夜は出ない。私は、マンションに住んでいますけど、2台ぐらいは夜いない車がありますけど、夜出ていく人は少ない。寝ていますからね。夜間電力で8時間充電します。そのうち200ボルト時代が来ますから、200ボルトで6時間充電で、昼間400キロ走る。夜間電力負荷、要するに、車のバッテリーが運輸部門のエネルギーキーではなくて、新エネルギー貯蔵、夜間は原子力発電のCO2フリーの電力の貯蔵用に使われる可能性があるということです。一石二鳥、三鳥です。
  昼間はどうなるか。昼間は太陽バッテリーになる。何軒かの車はなくても、ある家の車で貯蔵する。太陽バッテリーは余剰電力が大体3分の1出るんです。3分の1は外に出る。それを外に出さないで、バッテリーにしまっておく。そうすると、プラグインハイブリッドのバッテリーというのは常にCO2フリーの電源からの電力を選択して充電する機器になり得るということです。
  プラグインハイブリッドが何軒のうちに1台入っていれば、その電力は融通される。CO2フリーの電力がデマンドに入ってきても、別に新たなバッテリーを併設しなくても一石二鳥でできる可能性がある。こういうことで、随分世の中変わってくるのではないでしょうか。
  これは、決して間違ったビジョンではないと思います。今の延長線上でCO2削減、70%、80%というのは無理だなとおっしゃるかもしれませんが、世の中が変わってきて、運輸部門も変わる。量産に入って、バッテリーがそれだけ入るということはバッテリーのリサイクルシステムが機能しないことにはあり得ません。捨てているのでは仕方がありませんから、バッテリーはあくまでもリースです。エスコモデルみたいなものでしょう。ガソリンスタンドに行くと、ガスステーションかエコステーションになっている。お金を入れてバッテリーをパチャッとはめ込む。いつも自分のバッテリーではない。誰かのバッテリーの容量だけ買うという話になる。それがリサイクルされる。もちろんリサイクルされるということは、流通行程はしっかりしてますから、逆工場がきちっと機能するようになってくる。それでバッテリーのリサイクルシステムが回る。
  これを日本が仕掛ける。原子力立地、夜間電力負荷平準化、一石二鳥のプラグイン、屋根にソーラーバッテリー、間欠性の電源のしわとり効果もできて、という時代になる。そうすると、これがコミュニティーレベルでもっとうまく機能するためにはどうしたらいいか。
  このエリアの海岸地域には、例えば風力発電が入ってくる。風力発電のバッテリーはどこにつけるか。系統に流すよりも、そこにあるプラグインハイブリッドの中のどこかでチャージされて、充電されるようになる。バッテリーがある意味、家庭の中に入ってくる。ビルの中には燃料電池、バッテリーと水素と燃料電池、こういうものが入ってくる。水素貯蔵は燃料で貯蔵できる。物質で貯蔵できますから、極めて快い。
  エネルギーストーレッジで水素が入って、さらに最適な規模のバッテリーがある。このバッテリーは、そばにあるコロコロした間欠性の電源のストーレッジに使われる。そのバッテリーは、もちろんリサイクルされる。こういう都市計画というのは、1つの代表的なモデルではあるんです。全てではないと思います。それは皆さんがこれからお考えになることです。
  私がエネルギーの視点から考えていきますと、環境制約下の都市エネルギーシステムの答え言う時には、そんな答えを1つ言っても、「あいつはちょっと馬鹿なことを言っているようだけど、確かにそういう時代もあるかな」と思うのではないでしょうか。CO2削減80%というのは、不可能ではないということですね。
  そうしますと、エネルギーインフラがどうなるかという話になります。私が今ずっと言っていて、電力会社にいつも文句を言われているのはマイクログリッドです。愛知万博ではチーフデザイナーやらせていただいて、燃料電池のマイクログリッドをやりました。NEDO館にマイクログリッドを入れて、政府館と一緒につないで、いろんな食堂から出てきた厨芥類をガス化したり、MCFCの燃料電池を入れて、三菱重工のSOFCを入れて、SOFCとMCFCと太陽バッテリーのマイクログリッドをやりました。あそこは風がありませんでしたから、風力は入れません。需要地に系統があって、6.6キロボルトです。
  何を言いたいかと言うと、今言ったものをイメージアップしてみますと、ある車が車庫に入っている。自分の家の電力の系統が引き込み線で6.6から100ボルト、200ボルトになっていて、コンセントまで来ている。駐車場の車庫にコンセントが200ボルトで来ている。家庭の引き込み線です。家庭の中の太陽電池しかいかない時代ではやはり駄目なんですね。他に融通しないとうまくいきません。
  そうすると、あるエリア、何丁目何番地群で1つのマイクログリッド、需要地の6.6キロのループ状の系統ができるんです。そこで都市レベルでITコントロールがなされる。マイクログリッド需要地に小さなグリッドができます。樹脂状の巨大な系統構造があります。50万ボルト、22.5万からずっとおりてきて、電信柱のところのトランスで6.6キロがおりているわけです。6.6キロの電信柱のところに、配電棒の親分みたいなのが丸くできている。1点あるいは2点でつながるんです。ここの中に間欠性の太陽バッテリーが入ってきたり、蓄電池が入ったり、水素のループが入る。統合型インフラになれば、この中に水素ループの融通ネットワークが入るんです。燃料電池が入る。そこにヒートポンプがぶら下がり、ビルが何軒か入ってくるわけです。負荷と分散型の発電と、このマイクログリッドの中にぶら下がってくるんです。
  今まで供給システムと需要システムは、供給があって、樹脂状で一方的にずっと流れてくるだけだったものが、マイクログリッドという需要地系統と連携し、この中でITコントロールで最適融通が行われる。中で負荷平準化して、中の分散型システムの稼働率を目いっぱい上げられるようにITでコントロールされる。夜間電力は、この中の蓄電池で貯めておく。昼間負荷が多くなった時には、蓄電池から出してやる。こういうマイクログリッドが整備されないと、新エネが入ったとしても、それらを最適融通できない。ということは系統の概念が変わるということです。今言ったようなCO2排出減ということを考えた時に、樹脂状の構造から、間欠性の電源がいち早くうまく機能できるような、新しい系統が需要地に入ってくるということです。
  一番簡単に考えやすいのは、地冷です。地域DHC。例えば幕張。幕張は400ヘクタールありますから、2キロ四方ぐらいありますね。あれは電力系とガス系と分かれていますけれども、ガス系の方は、今大きなバルチラエンジンを入れて、15メガぐらい入っている。あそこは廃熱で熱供給を賄った上で電力を小売りしています。PPSに余剰電力を売っているわけです。だから、電源コジェネと呼んでいます。これは非常に効率がいいわけですよ。
  ですから、ああいう熱供給のあるところは統合型インフラ、ガスアンドパワーアンドワイヤになってくるわけですよ。熱供給パイプ、ガスパイプ、そこにワイヤが引かれて、電力も引かれる。通信もそこ。ITコントロールで需要地が最適コントロールされて、負荷平準化できるようにうまく調整がこの中でなされる。
  ですから、地域冷暖房の中にマイクログリッドが一番分かりやすく引けてくる。そこに系統と1点でつながってきて、系統に対しても、負荷平準化に資するような需要地の系統ができてくる。そうすると新エネも入る。その時に家庭部門にあっては割高にならないようにする。家庭部門では蓄電池をそんなに入れられるわけないと普通は考えるんです。今のエネルギーシステムの延長線上で考えていた場合は、それしか考えられなかった。でも、実は運輸部門のバッテリーが蓄電池の代わりになる。いつもいつも全部が出ることは殆どない。何台かは必ず停まっています。何台かの1台がプラグインハイブリッドになって、そこで融通体制に入らないと、これからの都市ビジョンはなかなか成り立たない。新エネ立地にするということになれば、そういうことも1つのソリューションになっていくと私は思ったわけです。
  そうなると、家庭部門にこういうシステムが市街区域おきに入ってきて、今度はオフィス用ビルの中に地域冷暖房システムが入ってきて、熱供給が行われる。長期的に見た時に、都市部の中の系統は、もちろん原子力立地です。安価な石炭も、もちろん残ります。これを否定しては駄目です。新エネルギーでいくんだとか、風力だけで大丈夫だとか、太陽光を全部積めば何でも賄えるとか、そうなると、どこかの宗教みたいになりますから、そういうことは言わない。
  ベースがあって、という話になるわけです。ベースは、やっぱり原子力立地です。天然ガスコンバインドもある。小ぶりになれば、熱電併給CHPのコンバインド・ヒート・アンド・パワーになる。適材適所ですよ。熱機関を動かすんだったら、大規模というのは1つのメリットがありますからね。中規模になれば、熱機関は余り効率は上がらない。よって効率の高いマチュアのエネルギーシステムが要所要所にできてきて、メガインフラが引けてくる。そして、石油火力なんていうのは殆どなくなっていく。ノーブルユースだけ。ノーブルユースというのは、運輸部門やそういうのだけです。
  そういうのがなくなった時に、どういうエネルギーシステムに変わっていくかというと、大規模集中型のシステムをベースにしながら、新しく大規模を建てるのではなくて分散型システム。それも新エネ、燃料電池、普通のガスコジェネ、何でもいいんです。適材適所。熱電併給など、いろんなデマンド、あるいはデマンドと合ったシステムが決まる。バイオガスがあったら、バイオガスで回していく場合もあるでしょう。
  長期的には規模のメリットがない高効率発電システムは、やはり燃料電池なんです。燃料電池のアドバンスト版を、今度、私どもの大学で入れることにしたんです。SOFCは800度、900度で動き、SOFCの廃熱を天然ガスの改質に使って水素を出す。PEFCを回す。複合発電効率で59%いきますから、これは立派なものです。5キロワットのSOと1キロワットのPEと、これと連系して、水素を廃熱で改質して、複合発電効率で59%。現状では6キロワットで59%いく熱機関なんかあり得ません。この燃料電池の発電効率の高さを、今度、実証しようと思っています。
  こういうシステムが商用化され、中小ビルの中に入ってくる。そうすると、中小ビルの中に、アドバンスト・イノベーション・テクノロジーが入ってきて、車か水素の蓄電システムで貯蔵される。そしてマイクログリッド的なものが要所要所にできてきて、メガインフラとつながりながら、全体の融通体制に入っていく。こういう時代が、すぐそこにやってきているんだという発想をしないと、ドラスチックに環境制約下の都市エネルギーを考えろと言っても、ただ、コジェネを入れる程度のことになり、それだけでは大きなCO2削減はなかなかできない。
  CO2というのは、先程申し上げたように、1キロワットアワー当たり1.7円から2円ぐらいの排出コストに相当し、CO2の経済内部化が生じつつある。これを頭に置いた上で、これからのエネルギーシステムを考えていく必要があるんじゃないかということを申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 

フリーディスカッション

與謝野 ありがとうございました。我が国のエネルギー政策の方向性をはじめ、幅広くこの分野の課題の捉え方等について熱っぽくまた、わかりやすく一気にお話をしていただきました。
  それでは、ここでご質問をお受けしたいと思います。
小柳(大成建設梶j 私は、分散型エネルギーとマイクログリッドを、今、研究しておりますが、1点、マイクログリッドを地方都市で入れる時に気になっていることがございます。それは、必ず今、調整電源として、コージェネレーションシステムを入れなければならないわけですが、地方都市ですと廃熱をなかなか有効利用できない事例がございました。将来的に調整電源なしで、蓄電池のみでマイクログリッドを成り立たせる可能性というか展望はあるか、ちょっと教えていただきたいと思います。
柏木 わかりました。このマイクログリッドというのは、大体系統が悪くて中だけいい電源を維持したいという時に普通使うんですね。日本の場合には系統がいいですから、私どもは新エネルギーの促進のために入れるという言い方をしている。例えば、アジア圏の中で、系統が非常に脆弱で、その中にハイテク団地を造るような場合には、ハイテク団地の中にメガワットクラスが必要になるわけです。1000キロワット以上のマイクログリッド容量がないとペイできないと言われています。1メガ、10メガぐらいの範囲内でこのマイクログリッドを引いて、熱供給がない場合、熱の需要が少ない場合には発電効率を上げるしかありませんから、小型でもいいから、ガスエンジンでも効率のいいものを入れます。今、バルチラとかでも45%いっています。系統よりも発電効率のいい分散型が出ていますから、廃熱の使い道がないということもあるかもしれませんが、冷房などの負荷にはもちろん使えるわけです。基本的には熱需要があって初めてうまく回るんだと私は理解しています。
  蓄電池は高いですから、もう少し蓄電池が安価にならないと入れられません。今の三菱自動車の電気自動車「アイ」の小さい蓄電池が600万ぐらいする。それが50万、60万のオーダーに入ってこないと、車としては出せないぐらいです。蓄電池が安くなるという条件でマイクログリッドも機能するんだと思うんです。
今は、まだ、中でITでコントロールして負荷をうまくコントロールすることによって、発電システムの稼働率を上げられて、蓄電容量が小さくて済むようにするというレベルだと思います。電源の中の3分の1ぐらいの蓄電池が入っていて、夜間の電気をきちっと買い取った上で、お互いに系統の電力の負荷率にも適切になるような形で、中のコントロールに持っていくのが本来の姿だと思います。どこでも通用するというものではないと思います。機器が高いですから。
  スーパーゼネコンさん、清水建設でも大成でやっておられるのはよく存じ上げているんですけれども、あくまでも先を見た形で、発電効率が高いものを入れていくシステムにした方が本来は利口だと思います。系統を引くのは共同溝を利用して引いた方がいいわけです。洞道みたいなところ。ですから、NTTと一緒にやる。NTTの洞道というのは非常に大きなものを持っていますから、あの系統をうまく使いながら、マイクログリッドみたいなものを引いてくる。あるいは地域冷暖房の中に配管ができているところにうまく配管していくようにしないと、マイクログリッドを引くコストだけでも高くなります。熱供給のあるところでマイクログリッド化していくというのが本来の姿で、地方都市でやるとなると、新たに引かなければいけない。八戸なんかもそうですね。
  そういう意味で、今やれるところは、まずは熱供給でやっているDHCのところに電力供給を行っていく。電源立地をしていくと、蓄電池の容量も小さくて済みますし、インフラも備わっていますから、最適なところだと思います。
與謝野 今のご質問に関連して私からのご質問ですが、マイクログリッドの概念で取り扱わられるまちのスケールはどのような大きさをイメージするとよろしいのでしょうか?人口何万ぐらいとか、1万戸とか、何か具体的なスケールをイメージできるようなお話がありましたらお願いいたします。
柏木 大体、最低でも1メガ、1000キロワット。ですから、住宅地だと今は全く考えられませんね。バッテリーが高いですから、そんなものを入れても仕方がない。ただ、屋根に太陽光システムが入ってきて、今言ったようなモデルが本当にうまくいくとなると違います。商用段階で、プラグインハイブリッドが出てくるという話になって、それがバッテリーになる。そうすると、一挙に住宅地にマイクログリッドは広がる可能性も出てくる。それを今、示唆したわけです。
  1軒3キロワットというと、大体300世帯の1000人規模が1つの住宅地。あと、オフィスビルでもそのぐらい。1メガ、2メガ。それが幾つでもいいわけです。だから、本来東京電力の系統だって、マイクログリッドが徐々に全体ネットワークされたと言っても過言じゃない、と電力会社は言っておられるそうです。そういう意味では、大体1メガから10メガぐらいのオーダーで1つのグリッドが形成されれば、今度は、そのグリッドをつないでいくことは可能だと思います。そのくらいのオーダーだと思います。
與謝野 ありがとうございました。他にご質問お受けいたしますけれども、いかがでしょうか。皆様お考え中のようでございますので、それではそれまで、先生、引き続きご講演をお願いいたします。
柏木 まだ言ってないことが幾つかありまして、最後に日本の都市戦略ということを考えていきたいと思います。
  先程言ったみたいに、CO2の排出を総量規制をする、というのがEUの戦略だったわけです。それでキャップ・アンド・トレードをやる。我々がこれによってどのぐらいの損失をこうむるかと言うと、2000億円までは容認すると言っているんです。年間2000億円まで、5年間で1兆円。2000億円と言うと、今4000万トンとしますと、トン5000円までは容認すると。5000円というのは、下手するとすぐ来るでしょうね。今、もう3300円ですから。
  5000円になると、排出権取引だけで2000億円になるわけです。そうすると、企業活動に大きな影響を及ぼしてくる。これは、都市活動にも同じような影響が出てきます。どうしたらいいか。
  ポスト京都の話をして締めくくりにしたいと思います。今日言ったのは、第1約束期間でどうなりますという話をして、これを想定した上で都市計画をすると、そのビジョンの中に、今言ったビジョンが入ってきますという論法で申し上げたわけです。
  ポスト京都の日本の戦略は何か、こういう話です。私が確実に思っているのは、原単位論争にどうやって持っていけるかだと思っています。原単位というのはどういうことかと言うと、例えば製鉄1トン当たり作るのに、どれだけのエネルギー消費で済みますかという話です。この原単位論争でチャンピョンになっているのはジャパンです。先程言った5つの技術開発の最後に製鉄の工程を申し上げましたね。これはコークスの補完に水素を使うんだということです。もちろん、水素を作るのが大変ですから、全部水素なんかあり得ません。だから、コプロダクションでできた水素を使うわけです。そうすると、一部を、例えば、コークスで高炉で使うのと同時に、一部を水素で還元する。CO2も出れば水も出るわけです。ということは、水が出るということは水素絡みの話を新エネとすれば、省エネ、新エネを一体型にして、原単位を低減させると同時に、そこに新エネを入れることによってCO2の原単位をさらに減少させる。こういうモデルが、今出てきつつある。
  要するに、原単位論争に我々はどういうふうに持ち込めるかというのを、今、考えなければいけない。それは都市レベルでも同じです。延べ床面積当たりどうか。例えば、CASBEEもありますね。CASBEEというのは、きちっと領域を決めた中で、このビルはAランクだとかBランクとつけていくわけですから、より分かりやすいユーザーフレンドリーな指標です。これは、村上周三先生が音頭をとってやられたと聞いております。そういうことを日本発でやっていくのは非常に重要だと思います。その中に、延べ床原単位当たりどれだけのエネルギー消費ですかというのが入っている。これは、もちろん断熱をよくするということなのですが、延べ床原単位当たりどれだけのエネルギー消費で済みますかというのは、原単位論争に持ち込めるということです。それにかつ新エネを入れれば、CO2原単位をさらに低減できる。ここが問題ですね。
  製鉄工程で水素を入れることと、都市計画、オフィスビルの、延べ床面積のエネルギー原単位を低減させるということと同時に、供給システムのCO2低減化を図ることによって、エネルギーは原単位が同じでも、CO2原単位がさらに低くなるビルとは、どういう形態のものか、こういう論法にうまく展開できるようになれば、世界の中のスタンダードを日本が握ることができるということです。これに持ってこれるか否かというのは、ポスト京都の1つの大きな柱になるというのが私の考えなんです。
  それでは、原単位論争だけでいけるかというと、これがまた難しいんです。延べ床がどんどん優雅になって増えてくると、CO2の排出が増えてきます。延べ床が倍になったら、増えるわけです。それでは、総量規制をしなければ全体のパイは決まらない。よって、総量規制も重要だという論法に逆転されるわけです。
  ということは、第1約束期間の6%減という総量規制は、ある意味で続けざるを得ない。続けざるを得なくて、かつ緩やかに続けた中に、原単位論争を入れることによって、主要なメジャーの排出国も、うまく原単位には乗れるような形にする。日本は両方やるわけです。総量規制のキャップも緩やかにはめておいて、日本はEUにもちゃんと顔がききますよ、総量規制まで厳しくやっていますよと。さらに、原単位でちゃんと規制も基準もクリアしていますよ。生産量が増えても、それは原単位が減っているから、帽子の中の範囲で済んでいるんですよ。こういう論法に、日本が持っていけるかということです。これは、都市計画、産業全て同じなんです。
  そうしますと、ある意味では中国もアメリカも原単位だったら入ってもいいぞということになります。それはそうでしょう。中国だって、ザブザブ高いエネルギーを入れて作っているよりは、日本の技術と一緒にやって、非常に原単位のいいもので鉄を作るとか、都市計画をする方が彼らにとっても幸せになるわけです。ウインウインモデルになりますね。そういうモデルが日本発信でできれば、今度は原単位が主流になってきて、総量を少しずつ緩やかにしていける。でも6%減はやらざるを得ない。実印をついちゃっているわけですから。
  日本は6%減を維持しながら、原単位に持ってきて、日本が少し膨らんだ分は、EUと同じで、日本も1国だけでなくアジア圏全体で考えるとする。例えば、ヨーロッパはアフリカと組む。日本はアジアの中の全体として、アメリカは南米と組む。この中の全体のビジョンで本当は原単位論争のボランタリーな自主的なアグリーメントができてなかったら、もっともっと膨らんでいたものが、原単位論争に持ち込めることによって、日本は少し増えているかもしれないけれども、こっちの方はもっともっと本当は増えたのが、これだけ減っているから、自然体でいくよりも、総量としては少なくなっているという論法に持ち込める。それが、私は日本の戦略だと思っているんです。
  それを担保するにはどういうことをやるか。日本だけではできないです。日本は残念ながら、幾ら皆さんが地域開発などで貢献してこられたと言っても、地域開発のモデルを世界のどこかに移していけるかと言うと、できない。これはやっぱりアメリカと中国と日本、この3国でうまく組めるようなシステムが必要です。
  これをやっているのが何か。APPというフレームがあります。アジア太平洋パートナーシップ。これで理論武装しなければいけない。残念ながら、これはアメリカが仕掛けているんです。日本が仕掛けると大体駄目ですから、アメリカに仕掛けてもらって、日本が技術をうまく利用できるシステムが一番品が最適ではないかと私は思っています。
  これには理論武装が必要です。この理論武装は何か。議定書で批准している国がありますね。アメリカ、オーストラリア(オーストラリアも11月批准)以外の国は批准しているわけです。批准している国でキャップをはめている国々、先進国が排出しているCO2の量は、全世界で排出しているCO2の量のたった30%なんです。幾ら頑張ったって、30%の中です。アメリカや中国が入ってないですから、やった割に分が悪いんです。
  APPはどうか。これはアメリカが仕掛けている。オーストラリアはもちろん入ります。日本も入ります。韓国、中国、インドも入り、今まさにカナダが入ろうとしています。それは何故かというと、原単位論争をここでやって欲しいからですよ。
  そこで何を言っているかというと、6カ国で排出しているCO2の量は、全世界で排出している量の約半分、50%を占めているんです。よって、この6カ国の自主行動計画の方が、京都議定書で批准した、キャップ・アンド・トレードやっている国々がやる量よりも、よっぽど効果は大きいです。ここで原単位でアグリーメントを作る。1トン当たりの製鉄は、CO2というよりもエネルギー原単位です。ところが、中国はなかなかしたたかで、「分かった、いいぞ、中国も入ってもいい。ただし、エネルギー原単位では駄目だ」と言っているんです。自分の経済成長を維持したいから、GDP原単位だったらいい。単位売り上げベースで原単位を考えると、レートが変われば違ってきますからね。そういう意味で、GDP原単位当たりだったら入ってもいいと言っている。
  私どもは、エネルギー原単位当たりと言っています。みんなでエネルギー原単位を決めましょう。セメント工場はこれ、製鉄はこれ、そこに民生部門のことをヒューマンセツルメントとIPCCは言っていますね。ビルディング・アンド・ヒューマンセツルメント。地域開発、オフィスビル、こういうものの延べ床当たりのエネルギー原単位は幾らにしましょう、ハイテクビルでは幾らにしましょう、こういう取り決めをしていく時に、これからの皆さん今までやってきた都市計画が非常に大きく生きてくる。原単位論争にうまく持ってこられれば、私たちはイニシアチブをとれるわけです。 その世界がすぐそばにやってきているということを頭に置いた上で、APPのフレームを皆さんも少し頭に入れた上で、参画されるようにした方がよろしいじゃないかと思うわけです。

 この資料の中で少し説明しておきます。「国家戦略の乏しさを挽回すべき時」という資料は、今の原単位論争を大変厳しく書いてあります。今の原単位のシフトなんていうのは、47ページ、48ページのところに書いてあります。
  その次の1枚物が、「美しい星へのいざない」。ここには先程申し上げた、福田3原則。要するに、「Cool Earth 50」3原則というのが、書いてあります。これが、先程申し上げた3原則そのものです。「2013年以降の温暖化対策の具体的枠組みを設計するための『3原則』を世界に提案」。3原則。3つ言いましたね。主要排出国がすべて参加し、京都議定書を超えて、世界全体での排出削減につながること。ここが重要なんですよ。議定書を超えるということは、総量規制の枠を超えて、何らか他の取り決めをしたいということを言っているわけです。それが今、APPのフレームに出てきたような原単位論争ですよということを言っているわけですよ。
  第2が、各国の事情に配慮した柔軟かつ多様性のある枠組みとすることというのは、もちろんのことながら、日本というのは省エネ大国なんだから、一律何%のキャップ・アンド・トレードは少しおかしいですよという話をしているわけです。
  3つ目が、先程申し上げた環境保全と経済発展の両立を図る。これを図るために5つの技術開発というので、先程5つが出てきたという経緯です。
  ストーリーとしては大体おわかりいただけたと思います。
  その次の資料の1というのがあります。これが「2010年のエネルギー需給見通しのポイント」。現行対策ケースで、今年の8月9日に経済産業省の需給部会で出されたもので、8日に日経新聞でリークされて、10日に環境省と経済産業省が、これをベースにして、温室効果性ガス全体の数値を公表したという経緯です。
  これは、エネルギー起源だけのCO2ということになっています。答えがどこに出ているかと言いますと、エネルギー起源だけが出ているのが4ページ目です。ここに出ていますのが、エネルギー起源のCO2です。これにN2O、メタン、他の温室効果性ガスが入ってきて、温室効果性ガス全体で6%減ということになるわけです。先程言った6%減の中に、5.4%に関しては、京都メカニズムの援用と、森林の吸収が出ていて、0.6%は他の温室効果性ガスで低減できる、こういうことになっているわけです。
  CO2だけの話でいきますと、既に90年レベルが、10億5900万トン。12億6100万トンというのは、他の温室効果性ガスが入っているということになります。
  現在の2005年が11.4%伸びて、CO2だけだと13.6%伸びているということになります。対策下位ケース、上位ケースで、5.9%、4.6%、基準年と比べますと、5.0%、3.8%伸びている。温室効果性ガス全体にしますと、CO2換算で2000万トンから3400万トンまた足らなくなるというのが、これをベースにして計算された答えになります。
  その次のページ、5、6、7、8が、感度分析で、どこがこれだけ伸びる要因になっているんでしょうか、というのを書いたものです。皆さんに関係のおありになるのが、7ページです。例えば、1990年レベルに対して、家庭部門は全体としてどれだけ伸びたかというと、かなり多く伸びていまして、4000万トン以上伸びている。伸びが一番多いのが世帯数で、2005年で一番大きく伸びた。この見方としては、2005年で何で伸びたのかというと、原単位も伸びたんです。だから、家庭部門は省エネができてないんです。増エネ型になっている。原単位も低減してない。家庭数、世帯数が伸びたというのが全体の総量を押し上げた1つの要因です。燃料転換でもやっぱり伸びているんです。
  2010年度においては、これから強力な政策を打って、原単位で減らして、燃料転換で減らして、世帯数は引き続き伸びる。少し減るんですけれども、まだ2010年度は約1800万トンの高い水準、伸びが大きくなると言われている。
  業務部門はどうなるか。燃料転換は進んで、1990年レベルに対して、2005年は燃料転換が進んだが故に、少し低減された。ただし、商業活動による生産額が伸びることによって、延べ床面積が増えた。よってCO2の増大がなされた。プラス原単位が多消費型に移ってきて、付加価値がついた建物になっているが故に原単位も伸びた。よって、全体としてはこれだけ伸びた。それを、これからの5年間で急激に減らしていって、燃料転換を強力に進めていくとともに、トップランナーによる原単位、要するに建物の効率が上がってマイナスに作用するようにして減らす。ただし、生産量はGDPが増えますから、そういう意味では、少し生産活動が増えて、増える要因になる。それでも、全体としては減る方向にいく。ただし、2005年までの伸びが大きいから、2005年から減ると言っても、大して減りはしませんというのが、この折れ線グラフになっている。その量がどうかというと、4700万トン。CO2排出価格にしますと、1500億円程度ということになります。CO2の排出だけで1500億円がさらに出ていくという話になる。
  こうしたことが産業部門についても出ておりまして、他の運輸部門なども出ています。目標達成に向けて、これが今年いっぱいに決まる。
  最後は読売新聞。ちょっと古くて恐縮でしたが、7月8日号、私の持論が、自分で言うよりも極めてうまくまとめられておりましたので、何かお分Kかりにならないところがあったら、これを読んでいただければ、これだけで私の言いたいことの1時間半分がこれに凝縮されているということになります。
  「『ポスト京都』目指す戦略は」ということで、マイクログリッドの話が書いてあります。主導権を握るEUの話。今の総量規制から原単位論争へ、こういう流れが出ているということであります。
  復習を兼ねてこの資料を説明しました。どうもありがとうございました。(拍手)
與謝野 柏木先生、ありがとうございました。
今日のお話も、前頭葉が刺激されるような啓蒙的なお話が多々ございました。とりわけ「CO2フリーのプラグインハイブリッド」のお考えは誠に新鮮にお聞きしました。また、この新たな都市エネルギー体系をもとにした都市コミュニティーのフレーム像のご紹介、CO2よりも「エネルギー原単位」で捉えるという識見等々、大変に興味深くまたありがたくお話を拝聴いたしました。ありがとうございました。
  それでは、最後にもう一度大きな拍手をお送りいただきたいと思います。(拍手)それではこれで本日の都市経営フォーラムを締めたいと存じます。ありがとうございました。
                                  
 




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