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第1回NSRI都市・環境フォーラム

『 低炭素化と都市計画』

講師:  伊藤 滋 氏 早稲田大学特命教授

 
                                                                           

日付:2008年1月24日(木)
場所:大和ハウス工業株式会社大ホール

                                                                            
1.2050年の都市像

2.都市計画による低炭素化(試案)

3.森林の育成と排出権取引

フリーディスカッション



 

 

與謝野 定刻となりましたので、ただいまより都市経営フォーラム改め、 「NSRI都市・環境フォーラム」を開催させていただきます。
  私は、本フォーラムの主催責任者でございますNSRI日建設計総合研究所の與謝野でございます。
  皆さんにおかれましては、お忙しい中、また今日は風の非常に強いお寒い中を本フォーラムにお運びいただきまして、まことにありがとうございます。
  また、年が改まりまして、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
  既に昨年来よりご案内させていただいておりますように、20年の長きにわたりまして開催してまいりました都市経営フォーラムは、このたび「環境」分野の課題についても大いに取り上げていくことといたしまして、その開催運営の基本スキームはそのまま継承することとして、会の名称を「NSRI都市・環境フォーラム」と改称させていただくことと致しました。
  本日は、通算241回目で、また再開「第1回」でございます。本日のこの趣旨での再開に当たりまして、元環境大臣で衆議院議員であられます小池百合子様からもご懇篤な祝意を頂戴致しておりますことを皆様にご報告致します。
  私どもといたしましては、このように多くの皆様からの温かいご支援を賜っておりますこのフォーラムを今後とも皆様のご期待にお応えすべく、幅広い視野に基づく充実した内容で開催・運用していく所存でございますので、引き続きのご指導とご鞭撻とを賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
  また、本日のこの記念すべき再開第1回目のフォーラムの会場として、大和ハウス工業株式会社様からこのようなすばらしい会議場をご提供いただきましたことに対しまして、この場をお借りいたしまして、大変高い席からではございますが、厚く御礼申し上げたく存じます。
  さて、本日の講師は年の初めの好例として、ご案内のとおり早稲田大学特命教授の伊藤滋先生にお願い致しました。先生からは、皆さんご高承のとおり、長年にわたりこのフォーラムの充実に向けてまことに温かいご支援とご指導とを賜っております。ここにご紹介とともに改めまして深甚なる感謝の意を表したく存じます。
  また、本日の演題は、「都市計画による低炭素化の試み」とされておられます。時宜を得たまさに現下の最大関心事のテーマに基づく貴重なお話をお聞き出来るものと楽しみにしております。皆様と共に真摯にお話をお聞きしたいと存じます。
  それでは、ご多忙の中、貴重な時間を割いていただきました伊藤滋先生を皆様からの大きな拍手でお迎えいただきたいと存じます。(拍手)
  それでは、伊藤先生、よろしくお願いいたします。

伊藤 今日、與謝野さんは、フォーラムの改称のお話をされたんですが、何もそのような意図ではなく、私の諸般の事情からこんなテーマを掲げて皆さんにお話をするという状況に追い込まれました。
  くだくだした説明は申し上げませんが、僕は都市計画は専門家で、低炭素化は全くの素人ですから、この2〜3カ月勉強しました。そして、これは都市計画の連中も腰を据えて対応しないと大変だなという気分になった。皆さんの前で話をすることで僕の頭の中が整理できるだろう、そういうことでこういう話題を選んだ次第です。ですから、都市・環境フォーラムの1回目というのは、全く念頭にございません。うまくいけばご喝采ということで、話を始めます。
  今日の日経新聞に出ていました。EUが2020年に向けて、1990年に出していた炭酸ガス排出量に対して、20%削減すると書いてありました。1面と7面で書いてあるんです。
  もう1つ。自然エネルギー、風力、太陽光、バイオマス、それをヨーロッパではもう8%ぐらい使っているらしいんですが、2020年には20%に上げる。今日の日経の1面と7面を家に帰ってご覧になって下さい。そういうふうにして排出権取引をもっと活性化すると書いてある。
  この話は、洞爺湖サミットで京都議定書の見直しをどうするかという予想を、先に行ったということなんです。日本政府も、EUと足並みを揃えて対応することが大変になる。それが今日のホットニュースです。
  それに関連して、私たちの仕事の周りを申し上げますと、安倍さんが去年辞める前に、興奮ぎみに、2050年に世界の炭素を50%削減すると言いました。それを受けて、僕は都市計画の専門家で、環境系の専門家ではございませんので、外側から見ていました。世界で2050年に50%削減ということは、先進諸国は1990年対比で70%から80%削減しなければいけない、できるかということを環境系の専門家が議論しました。その成果が去年の4月に、「2007年2月、2050年日本低炭素社会シナリオチーム、国立環境研究所、京都大学、立命館大学、みずほ情報総研」という報告書で出ているんです。
  この報告書は、環境省の地球環境研究総合推進費というので、日英共同研究として、相当のお金をもらってやっているはずです。都市計画に国はこんなお金は絶対にくれないですよ。凄い金だと思います。ジェラシーを感じるぐらい。
  役人の皆様方はこのお金を一応拠り所にして書いているんですが、これを都市計画の専門家が見ますと、まだ不十分なところがあります。
  先進諸国が2050年に70%、80%、炭素ガス排出削減をやるのに要素技術だけでできるなら、何も都市計画は関与する必要はないんです。要素技術というのはどういうことかというと、例えば製鉄会社が鉄を造るのに水素を使ってやれなんてことを言っている学者がおります。なかなか難しいようです。石炭をなるべく使わないようにしようと言っています。それから、電力会社が原子力を増やさないと駄目だと言っています。そういうものも要素技術の1つです。その他にコジェネレーションを究極の形にする。水素を使って電気を燃やすというのも、要素技術です。もっと身近な話ですと、太陽熱。この頃太陽熱で企業はあんまり儲かってないんですけれども、どこかはやっていますね。そういうものの性能を上げるのも要素技術です。工学部で言うと、主に機械工学科と電気電子工学科、応用化学、資源工学科、この辺の卒業生が一生懸命勉強して機器を開発すると要素技術になる。
  要素技術というのは、工場の溶鉱炉に取りつける、ヒートポンプを住宅にくっつけるということで、うまくいけばこれだけで済んでしまうんです。それならうまくいくんですが、どうもそれだけではおさまらない事態が出てきました。
  1つは、今言ったように、それで本当に2050年までに先進諸国が80%炭酸ガスを減らせるかということ。この答えにも必ずしもうまく書いていない。期待する項目は挙げている。その期待する項目がうまくいくかどうかは保証の限りではない。これが1つ。
  それから、これまでどちらかと言うと、国交省系の役人や国交省関係の都市計画系は、この問題は隣の畑の仕事だと思っていたんですが、ここのところ、次のような話が出てきた。
  はっきりしているんです。少し読みます。1年ぐらい前からの話です。まず基準年である1990年に日本でどれぐらい炭酸ガスを排出していたかというと、当たり前の話で、約12.6億トンなんですね。それが2005年には13.6億トンになって、基準年より7.8%増やしてしまっている。ところが、例のCOP3京都議定書では、2008年スタートで2012年に終わる時、日本は6%削減でいくと約束してしまっている。6%削減でやるための途中段階で、それがもう7.8%も上がったというのは一体何なんだ。
  新聞論調なんかは、日本は環境で世界トップを走っているなんて言っているけど、本当にそうか。新聞もテレビも、すぐそういうことを言います。でも、もはや日本はトップランナーではない。それは事実なんですが、問題は、その増やした内容。それを分析しますと、これもお役所の報告書なんですが、例えば基準年の約13億トンのCO2、それをどういう部分で出しているかというと、新日鉄やソニー、そういうメーカーが35%、トヨタと道路局、道路と車とJR、鉄道、運輸部門、これが20%。家庭が13%、オフィスが18%、民生が31%。
  民生が31%も出している。その上、1990年から2005年までの間に、今言った産業セクター、運輸セクター、業務セクター、家庭セクター、それぞれが、1990年を100とした時に、どれぐらいエネルギーを使ったか、CO2を排出したのか。2007年の日本国温室効果ガスインベントリ報告書という報告書に書いてあるんだそうです。それによりますと、産業、企業側は0%、1990年の排出ガスを増やしていない。運輸は、自動車を皆さんが買って増やしていますから、24%増えました。それに比べて業務は50%、家庭が40%増えている。1990年から15年間の間です。
  こうなってきますと、国交省の領域の連中も対岸の火事なんて言っていられなくなる。特に、家庭の40%というのは、住宅局系が多いんですけれども、要素技術的な領域で減らすことができます。この頃一番言われているのは、コジェネとヒートポンプですね。話によると、ヒートポンプを全国の皆さんが使うと1億トン、炭酸ガスが減ると言うんです。1億トンというのは、2004年ベースで13億トン日本が出しているなら、8%です。
  都市計画の連中は、そういうのを馬鹿にするんですけど、日本は要素技術の性能を上げることについては世界でトップの国です。
  例えば、田んぼの耕運機は、稲を自動的に植えるでしょう。あれの発達なんて物凄いですよ。田んぼの苗を植えるシステムを体系化してとかいうように進めるのでは、井関農機とか三菱農機とかクボタとかが必死になって、耕運機の改良をやって競争して凄いものを作っちゃった。そういう点では、日本はお上がシステムでこういうふうにしなければいけないということに乗っかって、みんなが言うことを聞くということでは、うまくいった試しが殆どない。むしろバラバラに努力してやってみようということをワーッとあおると、結構いいものを日本のメーカーは作るんです。
  ですから、要素技術を余り馬鹿にできない。住宅局系では、家電メーカーは、そういう意味ではヒートポンプの性能を上げるなんていうのもいろいろやりますよ。或いはコジェネだってきっと良いものを作ってくれると思います。それはみんな住宅の中に納められます。ここで条件がある。本当に納められるだけ日本住宅は大きさがある。とんでもない、ないんですよ。
  僕の見通しでは、例えば安倍さんが2050年に50%削減を民生系の家庭部門でやれと言った時には、住宅局系の個別要素技術で3割ぐらい減らせると思うんです。
  ですが、次の問題は業務なんです。業務も、建築基準法的なところでいろいろなことを書いてやればできるかと言いますと、これはむしろ都市局が、都市の全体像を考えながらコントロールしないと、要素技術だけではうまくいかないんです。これは後で説明します。
  そういう状況がこの1年でヒタヒタと、私たち、特に都市計画、住宅もそうですね、そういうところに襲いかかってきております。
  特にこの半年ぐらいで急速に物事が展開している。たまたま、国交省の都市局が、2〜3年前からポツリポツリ、エネルギー削減のことでいろいろ勉強しようというので、企業や学者を集めてやっていたんです。それがどうも、尻に火がついたので、慌てて加速しようということで、去年の春か夏ぐらいに、国交省の都市局ベースで動きだしまた。この頃コンパクトシティとかサステナビリティという言葉がありますうが、こういう言葉は都市計画家は大好きなんです。本当はできもしないんですけれども、大好きなんです。
  そういうことのエネルギー版を考えなきゃいけないというので、勉強会を始めました。よせばいいのに僕をまたキャップにしてしまった。仕方がなくて、僕も勉強を始めた。始めたら、ちょっと待てよ、これは大変なことだ。大変なことというのは、見せる前にお説教になっちゃうんですけれども、どういうことかと言いますと、CO2削減というのは、先進諸国の国際常識という流れに今追い込まれてきているわけです。特にEUがリーダーになって、アメリカもロシアもそうなっている。国際常識の中で仕事をしないで、私たちの国は別ですよとやっていると、いろんな点で、例えば経済的な面、ガットやOECD、FAOの話、そういうところで日本は必ず差別的扱いを受けるわけです。
  まさにこのCO2問題は外務省を超えた国際的問題です。今まで国内の問題ばかりやっていた土建屋の都市局とか住宅局が、それを目の前で何とか料理しろと言わされているわけです。そういう緊迫感があります。それをもとにして、今日は最後に私は面白い提案をしたいと思うんです。これが前置きです。
  これからスライドをやります。これまで、CO2削減に関わるテーマで僕は一体何をやってきたのか。2003年に世界ガス会議の東京大会議で、世界中から先進諸国9都市を選びまして、100年後、つまり2100年のそれぞれの都市像を書いてくれという設計競技をやったんです。1等賞を決めました。2等賞も決めました。これが僕が低炭素化に関わる1つの仕事です。これをこれからちょっと説明します。これは僕が主体になってやりましたから、マルC、パテントは僕です。その後に例の国立環境研究所のお話をつけます。これが第1部です。
  その後、もう1つ僕がやったのは、一昨年、去年、今年と、3年間で、大都会の中心市街地で低炭素化をするということで、役所で言えば都市局、住宅局、資源エネルギー庁、環境省が一緒になった時に、何ができるかという勉強会をやりました。これも僕が主体でしたから、マルCは僕がもらっていいだろう。
  それ以外に非常に面白いことを僕はこの2〜3カ月勉強させていただきました。その話をやります。その中には、環境省の官房長だった小林光さんが2003年頃だったか自分の家をエコハウスとして組み立てた。凄いことをやっているんです。そのお話もちょっと触れます。
  一応そんな話をした後に、要するに、僕は都市計画家として、日本が先進諸国の中で恥ずかしい思いをしないように、低炭素化でEUと協力するということならば、どういうことを考えなきゃいけないかということを話します。大体そんな流れでいきます。

1.2050年の都市像

(図1)
  これが2003年第12回都市ガス会議で1等賞を取ったバンクーバーの国際コンペの概要です。ここで「バックキャスティング」ということが書いてあります。環境系の先生方はこのバックキャスティングということをやります。ご存じだと思いますけれども、2050年なら2050年、2100年なら2100年の都市像、環境像を専門家として設定するんです。
  例えば、立命館の都市環境系のバックキャスティングがある。2050年に炭素を70%、80%削減のためには要素技術はこういう性能のものを張りめぐらせなければいけないとか、そういうことを決めて、現在とバックキャスティングした50年先との間をどういうふうに実現していくかというプロセスを考える。これがどうも最近はやりなんですね。
(図2)
  ここで言いたいことは、促進戦略。2100年に向けての都市像ですから、何もエネルギーだけではなくて、食料、教育、雇用、交通など全部の説明を求めているわけです。その中でエネルギーに関係したところだけをとって言いますが、ここで重要なのは「多目的利用空間」と「変換可能な構造設計」です。このふたつが、2100年のバンクーバー市における新しい都市づくりの重要な言葉だということなんです。
  1つの例として、多目的利用ですから、多重利用でもある。多重利用というのは、普通の学校をフルサービスのコミュニティースクールに変えてしまう。学校だけでなくて、健康、文化、社会活動を、若者にも老人にも提供する。そういうことをやるんだ。
  それから、バンクーバーは東京と違って戸建て住宅の場合たっぷり庭がありますから、そのビルや住宅の周りの庭には下水を流したり、余ったエネルギーで土地を温めたりして、畑を耕す。
  都市空間では昼や夜も、いろんな種類の機能が24時間休まないで動いている。そういうふうにしないとエネルギーは節約できないよということです。
  戦略手法。低温熱エネルギーネットワーク。これはヒートポンプなんかが代表ですけれども、バンクーバーですと、いろいろな低温熱があります。例えば暖房に使った廃熱利用。これもどうするんだ。それから、建物の平均寿命を延ばそう。200年とは言っていません。ですが、今考えると、ニューイングランドとかバンクーバーの木造建物は200年もっていますね。ヨーロッパのレンガ建ての建物は300年以上もっています。
  低温熱エネルギーも使いながら、建物も長く使う。このように設計された都市空間が必要なんだということがうたい文句ですね。
(図3)
  これは図面なんですが、わからないから詳しくは話しませんが、要するに、建物も軽やかでしょう。重くないんですよ。材料も木材や鉄骨を使って軽くして、フレキシブルにして、取りかえ可能。そういうふうにして、例えば病院の上に老人ホームを造るとか、老人ホームの上に学校を造る、そういうことをやったっていいんじゃないかということです。
(図4)
  それから、促進戦略3。ここで重要なのはショートループです。ショートループと総合インフラネットワーク。この2つ、対立しています。電気屋さんで言うと、この頃一番のはやりのショートループは「マイクログリッド」ですね。総合インフラネットワークは、電気屋さんの用語で「系統」ということです。つまり、マイクログリッドと系統をうまく組み合わせて計画的に考えようということ。
  ショートループは、電気ではなくて、都市のつくり方自体に自給自足的なまちづくりをイメージしているんです。ショートループとネットワークの重要な特徴の1つは、自己管理と共有の機能です。ですから、コミュニティーベースで、いろいろな政策決定もするし、コミュニティーベースでお金の使い方も決めていこうということです。
  これが1等賞を取ったバンクーバーの2100年の姿。保全、変換、処理、生成などの機能は1つのスケールまたはロケーションから別なところに容易に移動する。例えばエネルギーにはいろいろな種類のエネルギーがありますね。太陽熱、ガスから出たエネルギー、そういうエネルギーを変換する。電気屋の言葉で言うと、電圧を調整して、電圧があんまり変動しないようにしながら多様なエネルギー源からエネルギーを供給する。そういうことです。これは都市生活の中の他の分野でも同じことです。個々の建物が水、電気、熱、情報の流れを地域の他の用に供しながら自己完結的なところでちゃんと維持していく。そういう話です。
  もっと素朴なことを言うと、ショートループということで、バンクーバーと言えども、等距離の中に重機を沢山入れたい。それから、等距離のコミュニティーの中で有機物質を沢山出して、それを地域で処分したい。
  もっと言えば、工場も、なるべく遠距離通勤しないで、住宅の近くに持ってくるようにしたい。ショートループというのはそういうことですね。
(図5)
  これも絵姿。これはマイクログリッドと系統のイメージで、右側の図面を見て、「なるほど」とわかります。
(図6)
  これは戦略6。戦略2、3とラッピングしていますが、ソフトの話ですね。住民は持続可能なライフスタイルと技術を多種多様な選択肢の中から選ぶことができる。ですから、ここは土地利用も多様化したい。都市計画、建築規制は、目的を基礎としたものとなり、技術革新などに対して柔軟性のあるものとなる。
  だから、建築基準法も、昭和20何年以来の基準法を営々と少しずつ直しながらやっているなんていうのは、ナンセンスな話だということですね。
  土地利用、交通計画というのは、地域全体がモザイク状になるように立案される。このモザイクというのは、最近、都市計画を雰囲気的に話す学校の先生が大好きな言葉なんです。東京はモザイク的な都市で、考え方によっては、ニューヨークやベルリンのように単能型の土地利用が集まった都市ではないから、人間の社会的安定を保障しているんだということを言う社会学者もいますし、都市計画屋もいます。要するに、ごちゃごちゃに適当に造っちゃったんですけれども、それを後で解釈するとモザイクだった。
  戦略手法の1番目が面白いんです。要するに、今世の中は単独世帯とか2人、3人の世帯が多くなっているんですが、バンクーバーは、できたら複数世帯、例えば、息子夫婦とじいさん夫婦でもいいですし、おばさんと息子夫婦が住んでてもいいですし、場合によっては、血縁でなくても長いつき合いをしている人たちが同じアパートの中でしょっちゅう話題を交換しながらつき合うという複数世帯でもいいですが、複数世帯が居住できる住宅形式を25%以上持っている近隣社会をなるべく大きくしたい、ということになっています。
(図7)
  バンクーバーは物凄く良いリポートを作っています。今、4つぐらいのケースでバンクーバーの姿を申し上げました。多様性、モザイク、ショートループ、システム的なこと、そういう言葉が出てきました。
  それに対して、これは1等賞ではなかったんですが、ベルリンです。ベルリンは文字だらけのリポートで評判が悪かったんですが、よく読んでみると、なるほど、これは先進諸国、特に欧米の都市を代表する都市像を、ベルリンの専門家は作っているなということがここに書いてあります。
  まず一等初め。これは皮肉なんですね。人口の減少を補うために移住者を迎え入れれば、文化的な変化が生じることが次第に明らかになってくる。しかし、ヨーロッパ人の大半は文化的な変化を歓迎しない。要するに、あまり外人が来て、困ってしまった。ドイツで言うと、トルコ人帰れ、フランスではアルジェリア人帰れよとなるわけです。入れ過ぎてしまってとんでもないことになっているということを言っているんです。
  日本にも関わることです。日本の労働力をどうするかと言った時に、非常に皮肉な表現を回りくどくドイツ人がやっている。
  それから、ヨーロッパは、日本と同じで低い出生率で人口が劇的に減少しています。ドイツは日本に20年遅れて人口減社会に突入します。
  この傾向を移民の受け入れで補った場合には、ヨーロッパの高齢者層と年齢の若い移民層の間の社会的な相違を埋める解決策は見出せない。これは日本社会も十分に考える必要があるんですね。フランスもイギリスも同じことを言っています。ベルリンは、ドイツ人だからはっきり言ってくれた。

(図8)
  ベルリンは2100年に向けてどういう提案をしたか。1つは、徹底的なエコポリス。バイオマスを沢山使いたいということです。
  2番目、究極のテクノポリス。ドイツは情報社会が遅れていますから、ドイツは、ベルリンを情報社会にもっともっと持っていきたい。現在知られている技術的進歩の全てが都市生活に生かされ、建築物はインテリジェントビルになる。日本の新しいビルの方がドイツのビルよりずっとインテリジェントビル化されています。そういうことで、日本の東京の都心部とかそういうところに追いつきたい。
  市民生活が様々な「センサー」と書いてあります。21世紀は確実にセンサーが我々の生活を全て支配する時代です。このセンサーについても日本の技術はかなりのところまでいっています。センサーはチップでやっていますね。生活がセンサーや情報によって快適なものになる。
  3番目が面白い。高度に都市化された観光都市。世界から観光客が集まる娯楽の中心地。要するに、ヨーロッパの都市は何で生きるかと言うと、もう今後は、観光都市でいきます、そういうことですね。
(図9)
  人口統計です。これは非現実的なんですが、女性が子どもを産める年齢の間に何人産むかというのではなくて、単純な出生率ですが、ドイツは出生率を回復させるんだと言っています。これは断固たる決意ですね。逆三角ピラミッドは100年の間になくしていって、円筒型の人口構成に持っていきたい。これは悲願ですね。
(図10)
  労働です。労働もサービス産業が増加します。自宅に近い場所での雇用が生まれる。ですから、人々の移動は、家から職場への通勤よりも、様々な場所で異なるスキルを柔軟に利用することの影響の方が大きい。
  これは具体的に何を言うかと言いますと、例えば大学の先生は、「俺は大学教授だ」と言って、定年まで、いつも家から大学まで行って学生を教えてそれで帰ってくるのではない。大学の先生は大学で教えたら、次は会計事務所に行って、会計事務所で企業の会計検査を全部チェックして、夕方になったら、ごみ工場へ行って、ごみのCO2削減のための技術者として働け、ということなんです。
  1人の人間が多様な技術を持って多様な職場で暮らす。そうしない限りは、21世紀のベルリンは安定した、生き生きした町にならないということなんです。
  都市計画と書いてありますが、長期的なインフラのネットワークを通じて、個人が選択肢を利用することになる。長期的インフラネットワークを都市計画化する。本当に21世紀のテクノポリスとかエコポリスを造れるのと言った時、問題は、都市計画家の意識。社会の枠組みが変化することで町に荒廃した場所が生まれてはいけないとか、絶え間ない建物の転用を通じて、荒れた場所を作らないようにする、こういうところに目をつけなさいよ、と言っています。都市計画で地域制を作って、こうやればいいということだけでおさまっているのではなくて、町をしょっちゅう監視する。重要なことは、荒廃した場所は生まれてはならず。経済原則では必ず荒廃した場所ができます。それを作ってはならないということは、まさに都市計画は経済原則を超えて公共の福祉のためにやる仕事だということを言っているんです。ドイツははっきりしています。そこでエコノミストとぶつかるわけです。
  経済原則では、絶対に空き地ができて、それは経済的に仕方がないと言われている。しかし、そこで犯罪が発生するとか、いろいろな生態学的な変化が起きたりする。こういうことが起きないように、経済原則を乗り越えて都市計画がそれに対応する。そういうふうに都市計画は今までやってきたかということをベルリンは言っています。
(図11)
  エネルギーです。エネルギーは、ドイツは遅れています。ただ、ここでもエネルギーネットワークは、トップダウンのタイプ。これは電気屋でいうところの、系統です。系統から水平で交差結合型のネットワークにする。これがマイクログリッド。マイクログリッドは広義の意味で電気もガスも入ります。
  我々が提案したのは、都市エネルギーパッケージというものです。こういうものが水平型、それをうまくつなげていくということです。
(図12)
  交通手段ですが、これはベルリンのようなところでも自転車を使えと言うんです。歩いて自転車を使え。歩行や自転車利用を優先する。あの寒い、暗いベルリンで自転車を使え。だけど、幸いなことに、日本の都市よりもベルリンもオランダも自転車専用道ができています。日本は自転車専用道はないですね。大変なことです。日本は自転車専用道できるかと言うと、なかなかできないでしょうね。ベルリンの方がよっぽど立派です。
(図13)
  ここで1つ面白いのは、建物の建設と都市デザインの3行目です。「ビルの密集度が中程度であればコストは削減され、社会的な質のメンテナンスも考慮する」。これは何かと言いますと、ヨーロッパの都市は全部、人口100万とか200万の都市です。それに比べて中国、香港、東京、アメリカは大都市へ全ての機能が集中します。
  日本では、東京を必死になってコンパクトシティ化して、エコポリスにしてエネルギー削減すれば、仙台とか新潟がガタガタになっても仕方がない、そういう議論が比較的しやすいんですが、ヨーロッパはそうではない。ヨーロッパでは、大規模集積は必ず社会的デメリットを生み出すと考えています。都市圏人口が500万とか1000万になると必ず社会的デメリットを生み出す。例えば、先程お話した人種間軋轢とか犯罪の増加です。人口が大体50万から60万単位ぐらいの都市を中規模の密集と言います。ビルの密集度が中程度。そういう都市をネットワーク型に配置して、お互いに行ったり来たりするということが21世紀、100年後のヨーロッパの1つのスタイルだと、ベルリンは考えています。ベルリンがそういうことを言うということはイギリスも考えている。フランスは少し違いますが、イタリアは多分ベルリンに同調するでしょう。
(図14)
  教育です。これは先程のバンクーバーと似ているんです。教育は学校の教育ではなくて、学校教育をやる学校自体がもっと娯楽の中心になったり、お年寄りの中心になったりと、複合化してくるんだということです。つまり、学校や大学といった類型は技術の粋を集めた高度設備のある場所へ変わっていく。
  一番重要なのは、社会は地域社会になると、持続可能な可能性を実現するための共同行動をするようになる。みんなで努力して、小さいNPO、NGOが、より身近なことで、炭酸ガスを削減するとか、子どもの犯罪を減らすとか、そういうことが沢山増えていく。そういう町にならなければならないということです。
(図15)
  娯楽です。1つは当たり前です。電子ショッピングのことや、娯楽のために商店街がもう一回もとに戻ると書いてある。将来の都市を議論する住宅や都市計画のあらゆる連中は必ず、将来中心市街地は復活すると言うんですが、ベルリンが面白いのは、後段のところで、コミュニティーセンターは世界の娯楽ネットワークの入り口だと書いてあるんです。世界中の人とともにエンターテインメントを楽しむことができる。センターには来場者たちが架空の世界に入り込んで探検を楽しむことができる大型スクリーンが設置される。
  これは何を言っているのかと言うと、実は低炭素化社会の中で、自動車はプラグインでハイブリッドとか電池を使う。列車も殆ど低炭素化できます。問題は航空機なんです。航空機のケロシンに代わる新しい燃料が航空市場でできるかというと、ベルリンではできないと見ているんです。
  依然として航空機輸送だけは石油を使わなければいけない。その時の石油価格はべらぼうに高くなっているのではないか。或いは低炭素社会を目指すモラルとして、そういう航空機を使ってまでみんな気楽にあちこち行っていいのかと言うことです。これがベルリンの報告の特徴です。
  行かなくても、日本のシャープのハイビジョンがもっと立体化してシャープになったら、現地に行かなくても、例えばベルリンの小学校を中心にした新しい娯楽センターに行けば、アメリカのナイヤガラの滝を臨場感をもって楽しむことができる。それで代替したらいいではないか。これが新しい娯楽機能だ。これはベルリンの面白い話です。
  航空機問題というのは、日本でも他の国でもちゃんと触れてはいないんです。ドイツ人は真面目ですから、トコトン考えると、航空機どうなのと言った時に、答えはこれしかないと言うんです。実際、僕はそうはならないと思いますけれども、1つの新しいイメージです。
(図16)
  社会的一体性です。1つは、先程言ったように、ショートループとか多様性という中で、ベルリンは10万人の住民が補助的な枠組みの中で自治を行う。ベルリンの中に10万人単位の町を作る。東京で言えば杉並区の人口は50万ぐらいありますけれども、それを5つの区にしろということです。それぞれに思い切った毎日毎日のデシジョンをする。意思決定は10万人の中でやってしまえということです。
  ドイツの都市計画の連中は、この点を一生懸命に言っていますね。都市は中規模。中規模の都市の中でも自治組織は5万から10万。これが100年後のヨーロッパ、フランスはわかりませんが、ドイツ、オランダ、イタリア、イギリスの将来像です。
  都市の利用するスペースが減って、利用するエネルギーが減って、教育や訓練のために建物はどんどん変わる。特に学校は変わる。
  それから、実際に出かけていく代わりに、電子メディアを使うことで交通量が減る。これはなかなか難しい、ナンセンスな話かもしれません。
(図17)
  これが一応バンクーバーとベルリンの100年後の姿です。もっと説明すれば面白いんですが、エネルギーに関係しては以上のことです。
  これは僕がやったわけではないんですが、先程の2007年の2月に出した「日本の都市の将来像」で、2050年までに70%、80%にCO2を減らせるか。減らせるというシナリオの中の、エネルギーの部分ではなくて、都市の姿を書いた部分を抜き出してきました。
  1つ、地域内交通で面白いのは、女性の社会進出が絶対起きる。そうでないと、労働力は供給できない。女性の通勤目的の交通が増える。シナリオでは、地域内トリップ発生原単位で、仕事関連のトリップが50%増える。65歳以上は倍増する。女性と65歳以上の年寄りを徹底的に使わないと、日本の社会、生産性に関わる社会は維持できないということです。
  逆に、女性が働きに出ると、外食とか中食が増えます。家事、買い物のトリップが3割減る。ところが、生涯学習が普及しますから、通学のトリップは増加するということです。
  こんなことが交通では言えそうだということです。
(図18)
  地域間交通も地域内と似たような話です。65歳以上は倍増。女性は50%。当然ですが、鉄道分担率は増えます。ここが違うんです。ベルリンは航空分担率は減るけど、日本では航空分担率を増やしています。ここが面白いところです。
(図19)
  これはその姿。2000年と2050年で、3大都市圏の航空が増えていますね。
(図20)
  都市シナリオのイメージです。1つ面白いのは、この報告書では農業地帯の話をしている。大都市に人口が集中すると、農村部は、人がいなくなって、農業地帯が増えます。農業地帯が増えると、日本の企業が、資本集約、知識集約型の農業を展開できると言うんです。日本の水田というのは輪作をしないでずっと何百年も使える。水をベースにした凄まじい生産能力を持っている。これを使って、農村を食料供給の場所にできる。これは相当正しい。農村はバイオテクノロジ―を駆使した民間企業による大規模、高効率管理ができる。これは相当正しいです。多分日本の企業はここに必死になって入るはずです。
  ということは、皆さんその気になれば、食料は自給できる。肉は食べては駄目です。魚はいいです。小麦もほどほどにして下さい。日本が緊急になってどうしようもなくなった時には、コンパクトシティ化する。人口が2030年には1億人ぐらいになります、2030年に地球的危機が来て、食料が買いつけできない、どうするんだと言った時に、日本は、もし人口が大都市へ集中して農村地域があけば、高効率の農業経営ができて、米の自給がもう一回できます。だから、生きていけるんです。
(図21) 
  幾つかの人口のシナリオで、外人居住は10%と書いてあります。外国人労働者が全人口の10%程度占める。年間20万人外国人が来る。これは相当危ない。どこの外国人を入れるのか。イラン人を入れるのと韓国人を入れるのは全然違いますよね。もしこれをやるなら、オーストラリアと同じように、国別クォータ制で割り当てをして、厳しく外国人の移入をコントロールしなければいけない。
  現在、日本の外国人の定住者比率は2%か3%ぐらいですかね。これは本当か、ということです。
  このシナリオはAシナリオ、Bシナリオとあって、僕が説明しているのは、今までと同じように元気にソニーで働いたり、東芝で働いたり、大学の先生はもっと元気に学生を指導したり、大都会を魅力あるものにするというシナリオの話です。Bシナリオは、農村が大事だというシナリオです。
  大都市型のシナリオでいきますと、人口集中地域の純移動というのは、東京と大阪、愛知では1.5%だけど、札仙広福という札幌、仙台、広島、福岡、こういうところでは0.5から1%でガクッと減る。やっぱり3大都市圏には人が集まってくるということです。
(図22)
  都市シナリオのストーリーは、人口減少社会の中で、人口や資本の集中が進み、少数の巨大都市において人口がある程度維持される。都心部では、土地の高度利用が進み、地価が低下しますが、家賃が高くないことから、職住近接が可能になる。この国環研の若い先生方の分析は甘い。このストーリーは僕は納得しないんですが、エネルギーの本質には関係しないから、いいでしょう。
(図23)
  地方は先程言ったようなことです。農業、林業、漁業は民間会社によって大規模経営され、機械化によって大幅に省力化され、ヒト、モノ、カネといった資源の効率的利用が進む。最先端のバイオテクノロジーを駆使した日本の農業は、世界でも有数のレベルになる。世界の食料危機回避に大きな役割を果たしている。これはかなりできそうです。
(図24)
  ライフスタイルです。これも当たり前のことですが、必ず出てくるのは、結果的に利便性、安全性の高い集合住宅に居住する人の割合はどんどん増えます。田舎でも増えます。
  それから、個人のライフスタイルが個性化してきますので、家族の中でも1人1人の生活時間が違ってきます。そういう中で家族のつながりをどうするかといった時に、よくわかりませんが、携帯を立体化しながら、そこでバーチャルコミュニケーションをやるということは重要になってくるでしょう。
  職業は、ベルリンとバンクーバーは意外と同じなんです。1つの職業で、「俺は大会社の重役だ」と威張っていられる時代ではない。大会社の重役でありながら、清掃工場の荷物を運ぶ人であっていいし、図書館の司書であっていいということです。職業を選択しながら多様な人が、「俺は俺だ」だと、定年まで重役と言って威張るのではなくて、40ぐらいになったら多様な職業を持っている人が肩を並べて楽しんだり、仕事をする。
  実際に起きているのは、建築の世界。1級建築士でちゃんとした木造住宅を造れるかというと造れないですよ。そうすると、工務店でたたき上げた工業高校出の木造だけ一生懸命やっていた若い職人さんの方がずっとうまく造ってくれる。そういうことが起きているんです。だから、1級建築士が多くなったから、日本の木造住宅の質が上がったかというと、とんでもない話です。
  もっと歴史的価値を重要視するなら、宮大工が必要になる。宮大工を作るというのは大変なんです。これは、大学の修士課程を出る、デグリーをやるより余程難しいんです。そういうことが必要になってくるということです。だから、職業の重要性が変わってくる。
(図25)
  これが、外国と日本の将来像の話です。ここからは非常にリアリティーのある話なんです。このリアリティーのある話は何かと言いますと、住宅団地でのお湯の使い方を考えましょう。或いはマンションが3〜4個並んでいる1つの町で、お湯の使い方を統計的に調べると、家庭が使うエネルギーの4割ぐらいがお湯なんです。お湯を使うのは、住宅団地では夜が多い。ですが、できるならお湯をコンスタントに供給した方がいいですよね。夜だけうんと使って昼間は使わないというのでは、お湯の供給の効率が悪くなります。住宅団地の中に病院を入れたとします。病院は昼間お湯を物凄く使います。そうすると、住宅団地の中でマンションと病院が一緒になることによって、お湯の供給が一定量で確保される。よくある話です。こういう話は事務所ビルでしょっちゅう起きている。
  例えば大・丸・有はオフィスビルばっかりで、あそこで本当にうまく熱を使っているのという話になると、夜いないですから、常識でもわかりますよね。昼間のために造られた発電施設や給湯施設を夜も使うと言うと、ホテルを入れた方がいいとか、住宅を入れた方がいい、病院入れた方がいい。ただ、地価が高いから入れられないだけです。
  しかし、熱の方から言うと、そういうふうにすれば格段に設備投資も安くなり、熱の品質もいい品質のものがコンスタントに供給できますから、熱の効率が下がらないということがあるわけです。
  ここで、都市エネルギーパッケージという概念を考えようということをやったんです。一昨年、去年まで、そこにいる竹内さんに一生懸命やってもらったんですけれども、ガス協会と都市局の人もつき合ってくれました提案なんです。
  都市エネルギーパッケージとは何かと言うと、例えば再開発をしました。大きな再開発をした時に、今まではどこかの大手不動産が、ここは住宅だけ建てた方が収益最大だとやっていた。あれを、やめろということです。住宅だけでなく、そこに病院も入れてくれ。或いは夜間の学校も入れてくれ。昼間のためにオフィスビルも適当に入れる。要するに、まぜ合わせて再開発の用途をやってくれ。そういうふうにしますと、そのまぜ合わせ方によっては、エネルギーの使い方がガクンと減るということですね。
(図26)
  都市とエネルギーの組み合わせのメニューです。まず1番目、賑わいを生み出す広場や公開空地の地下を活用したエネルギーセンター。これは再開発でやる総合設計でも公開空地がありますね。その下に、小さいのは駐車場をつけているんですが、駐車場よりもエネルギーセンターを入れる。それから、建物を大規模化できますから、高効率のエネルギーシステムが導入できる。主としてガスはこういうことができそうです。
  それから、街区単位での建物更新と同時期集中的なエネルギー供給。これは建物更新をやる時にはエネルギーの方の点検をきちっとして、その建物のエネルギー設備は今までの設備より良かったのか、新しくするならどういう施設に変えなければいけないか、必ずチェックをする。
  4番目が重要なんです。多様な都市活動を生み出す用途複合化。用途複合化をすれば負荷を平準化できる。そして設備容量を低減できる。もちろんエネルギーだけでなくて、都市とエネルギーのパッケージですから、すき間ができれば歩行者空間整備によって線的空間ができて、その歩行者空間の下に、例えばマイクログリッドで言えば電気のケーブルを入れるとか、給湯管、お湯のパイプを入れるとか、そういうことができるのではないか。こういう再開発をやってみようということです。
  これは区画整理と再開発を合併施工すれば、かなりできそうな話です。ただ、難しいですよ。概念としては理解できます。
(図27)
  そうすると、どうなるか。今言った複合化というのは、オフィスと商業、住宅とオフィス、或いはフィットネスとか、いろいろな生活サービス機能と住宅、高齢者施設、ホテル、託児所なんかをまぜ合わせるということです。これは用途の複合化です。
  その間に地域エネルギープラントを何カ所か置いて、そこでコントロールして熱を供給する。都市側でこういうモデルを造って、エネルギー側でそれでどれくらいエネルギーが減るかという計算をしたわけです。
(図28)
  これは都市エネルギーパッケージですから、図の左側の方が都市です。公開空地で大規模なオープンスペースを造るとか、防災性の高い業務ビルを造るとか、水辺空間を生かした賑わい機能を入れる。都市側でそういう町が理想像と考えた時、それにエネルギー側はエネルギーセンターを1、2、3、4、5と造って、電気が主体のマイクログリッドシステムを入れて、太陽光発電なんかをやる。こうするとどうなるか。
(図29)
  これです。これが触りなんです。4ヶ所でCO2削減効果をケーススタディとりました。まず、業務特化型市街地は、東京の中央区日本橋の震災復興区画整理をやったところ辺です。
  それから、都心居住市街地。これは大阪の、この間、例のいんちきをやった料理屋のあるところ、船場。あそこにマンションも沢山あるんです。船場辺りの場所を選びました。
  成熟型市街地。これは名古屋の駅前です。ここは地域を結ぶ熱供給のパイプも入ったりしています。
  一番右側が前橋の中心商業地域。要するに、シャッター通り商店街です。
  4ヶ所それぞれに「現状」という項目がありますが、それは、今のままで建物が建った時。その隣の「BAU」というのは、今流行りなんです。ビジネス・アズ・ユージュアル。これは建物は用途変更しないでそのまま建てさせますが、器具を、ガス屋とか電気屋が性能のいい器具に変えます。コジェネを入れたり、ヒートポンプを入れたり、設備屋だけで努力して新性能を入れる。
  その隣が「都市エネルギーパッケージ」。都市エネルギーパッケージはそうではなくて、今言ったように、区画整理と再開発を入れながら、ビルと住宅、ビルと病院、託児所、老人ホームと事務所と、組み合わせをしてやります。
  そうすると、どうなるかと言うと、「BAU」で建物を変えないと大体2割減るんですね。これが先程言った個別要素。要素技術の進歩で減るのが2割ぐらい。それでも熱は余ってしまう。余ったり、変な温度低下をしたりする。それを「都市エネルギーパッケージ」で都市側、市街地側を変えると、あと3割減る。要するに5割減る。要素技術で2割、ネットワーク化で3割。5割は減らせそうだ、というのが大体の結論です。
  そうすると、今までの都市計画、再開発の位置づけは変わってくるんです。単なる経済的算盤勘定だけで区画整理や再開発をやっていいのとは違ってくる。むしろ、先程言ったように、日本がOECDやEU、そういうところで国際的辱めを受けないために、きちっとエネルギーのことをやる、国民を挙げてこういうことに関わってくれ、ということがベースに生まれてこないとできないわけです。
(図30)
  これは、役所の言っているいろんなうたい文句です。これもプロジェクトです。どこでこういうことをすれば何ができるということです。例えば、三河島の周りの市街地で下水道利用のエネルギーを使って熱を供給すればよくなるし、三河島の市街地の周りの住宅地の中で荒川区役所が小さい公園で緑化をすればどうなるかということだし、三河島辺はまだ倉庫が沢山ありますから、その倉庫をうまくみんなで使えるようにして、トラックの搬出も楽にすればどうなるとか、というような話です。
(図31)
  例えば、これはできているんですけれども、名古屋で熱導管を敷設すると、名古屋の駅前は炭酸ガスの排出が非常に少なくなります。
  左側は、都市廃熱処理型、これは熱のマイクログリッドです。電気型でなくて、熱型のマイクログリッドをやるということです。
(図32)
  これも、特例案における補助事業イメージ。下水道でやっているぞ、ということです。これはやっているわけです。
(図33)
  緑化です。都市緑化は公園の人が一生懸命頑張ってやっているんでけれど、炭酸ガス削減にどれぐらい役に立つかというと、残念ながら都市緑化は余り力がありません。
(図34)
  これは物流システムを円滑にすると幾ら炭酸ガス排出が減るか。これも都市局で一生懸命やっています。
(図35)
  先程言った個別要素でどうなるかということですが、これは太陽熱の集熱器です。太陽熱でお湯を温めて住宅へ持っていく時にどうなるか。太陽熱だけでお湯を温めても冬や雨の時は温度が上がりませんから、どうしてもガスで太陽熱集熱器からのお湯を少し温めてやらなければいけない。ということで、補助熱源装置、主としてガスがあって、それでサポートすれば、その水はお風呂場へ行ったり床暖房に行ったりいろいろできる、ということです。これはよくある図面です。
(図36)
  これはちょっと出して恥ずかしい話で。お縄ちょうだいの危険性がある。NEDOでまだ実験中ですが、ついつい先走ってお話します。モデル地域が何カ所かありまして、そこで太陽熱を集めてお湯を温かくして、ガス代がどれくらい安くなるかということをやりますと、去年の4月は、40%。太陽熱でやるからガス代が6割で済んだ。5月は55%だから、ガス代が半分以下になった。6月になるとガス代は3分の1になった。7月は半分。担当している専門の技術者は、この流れで1年間で5割ぐらいは皆さんのお湯とか床暖房のガス代は安くなると言うんです。
  何でこの話を入れたかと言うと、いろいろ物議がありますけれども、「太陽光」は、工学部で言うと、頭のいい学生が行く電気工学科とか計測とかそういうところが好きな装置なんです。一方の「太陽熱」は、できの悪い建築の学生でも理解できる程度。ローテクなんです。ローテクでもうまく屋根に載っければ半分のガス代になるというものも大事にしよう、全てハイテクではないよ、ということなんです。
  そういうことを僕がどこかで話しましたら、長いこと資源エネルギー庁系で仕事をしているある有名な建築の専門家が、僕のところでひそひそと、「通産省の前ではあまり大きな声では言えないんですけど、ローテクというのは大事なんです。僕、前から思っていたんですよ」と言うので、がぜん元気になったんです。
  ただ、残念ながら太陽熱による給湯は2社あったんですが、皆さんが使っていないので、ドイツ系の1社は店をしまいました。今は、1社しかない。残念なんですよね。ドイツ系の太陽熱を集める装置を見たらカッコいいんです。透明な蛍光灯みたいな中に1本芯が通っていまして、中は真空なんです。真空のところに太陽熱がビュッと入って、真ん中のフィラメントをバーッと熱くするんです。物凄くカッコいいんです。
  それが需要がないので店を畳んでしまった。昔、皆さんご存じと思いますが、長府製作所でゴム袋の湯たんぽみたいなものを作っていました。太陽熱です。ひところ流行ったんですね。最近はあんまり流行らない。夢よもう一度。ローテクで復活したっていいんではないかと思っているんですね。
(図37)
  これは僕が少しいんちきをしたんですけど、東京電力の田中さんという方が、2003年の調査で、マンションと戸建て住宅の、床面積25坪ぐらいのエネルギーの使い方、電気を調べました。赤が戸建てで青がマンションです。
  そうすると、マンションの方が年間で3割ぐらいCO2が減るんですね。6掛けぐらいになる。これは考えてみると、当たり前の話なんです。戸建ては地面も入れて6面。屋根と下と壁4つですから。マンションは4面ですよ。だから、6分の4ですよ。3割減るって当たり前なんです。この頃3階のどうしようもない木造の建て売りがあるでしょう。CO2問題が深刻になってきた時に、あれは撲滅すべきなんです。あれは撲滅して、必ず京町屋のように、ゼロロットにして、壁を共有して、3階長屋にすればエネルギー使用量は約3割減るんです。その方が見ばえもよっぽどいい。ああいうことを許している建築基準法というのは絶対よくない。CO2を国際的に日本が一生懸命頑張るという世界になった時にそういうことが堂々と言えるわけです。
  国民に問題を1つ1つ突きつけなければいけないんです。人ごとではない。
(図38)
  これは先程言った小林さんのお話です。2002年か2003年に小林さんが自分の家を徹底的に環境配慮した住宅に改善しました。CO2排出量がどうなったか。2年目には約4割減らした。だけど、これは、細かいところまで全部手入れをしている。坪単価が70万から100万ぐらいいっているんです。3割ぐらい上がっているんです。それだけ努力してCO2を42%削減しています。
(図39)
  これは、エネルギーを使う時に温度差というのがありますね。下水と海水。温度差でヒートポンプってあるんです。これも問題提起なんですけれども、かつて東京、大阪も物凄い地盤沈下に見舞われました。例えば江戸川なんか、海水面から40メートルぐらい下がったところでないと地下水がとれない状況まで落ち込んだんです。昭和45年。昭和30年ぐらいは江戸川は地下水位がマイナスの20メートルぐらいだったはずです。それがオリンピック後に、地下水をどんどん取り込んで、50メートルぐらいまで落ちた。
  ところが、今どうなっているかを調べますと、ずっと上がって、昭和60年ぐらいから、昭和30年ぐらいの地下水位まで上がったんです。昭和30年には地下水位がマイナス20メートル。今はマイナス10メートルまで来た。
  上がった結果何が起きたか。これも有名な話で、上野のJRの地下駅は、周りの地下水位が上がったので、コンクリートの船のようになって浮き出してしまったんです。鉄の塊をプラットホームの下に浮き上がらないように入れている。それと同じことが地下水位が上がったために東京駅でも起きている。地下駅はコンクリート船が埋まっているようなものなので、それが地下水位が上がったから上に上がった。JR東日本は必死になって鉄の塊を入れたり、水抜きをしたりいろいろなことをやっています。
  でも地下水位が上がったものを、うんととるとまた下がっちゃう。今の日本人は馬鹿でないですから、程々に地下水をうまく使えばと考える。東京の中でヒートポンプを使うとか、場合によっては温度差をうまく使ったコジェネができるはずなんです。
  これがまた、役人の頑迷な頭で変えないんですよ。これは問題提起。地下水をエネルギー源として見て、下水と地下水の温度差を使ってヒートポンプにしたらどうなるのか。そうすると、例えば中央区から千代田区、港区、台東区、都心の重要な区の今のオフィスビル街は電気、ガスの使い方が随分減ってくるはずです。これが1つ話題提供です。

2.都市計画による低炭素化(試案)

(図40)
  ここからが本番です。ここまでは序曲です。今お配りする3枚の紙があります。
  これを出すための前文句が先程言ったEUのCO2削減や、そういう動きが着々と動いているという話です。それはこれを出す前受けで話したわけです。
  もう1つは、家庭用、業務用の領域が物凄く増えていると言いました。これもこれのための前受けとして話しました。
  先程言いましたように、この低炭素化の問題というのは、新日鉄や東京電力や三菱地所、三井不動産をいじめるだけでは話が済まない。まさに日本国全体が低炭素化に協力するということによって初めて2050年に、うまくいけば1990年ベースの炭酸ガス排出量の7割、8割減らすことができるわけです。
  だから、まさに21世紀の都市政策における国際的約束を履行する国家的な仕事になるわけです。
  ここで挙げたのは、そのために低炭素地域制という制度を使おうということです。もう1つ言いますと、皆さん都市計画と言うと、何かカッコいいことを何でもやってくれるのが都市計画だとお思いでしょう。ところが、都市計画はつまらないものなんですよ。1つは、皆さんが家を建てることを意地悪じいさんのように規制するわけです。例えば、一種住専地域では建物の高さを11メートルにしろとか、ここは一種住専だから、原則として容積率が何%というのがあるでしょう。皆さんの建築行為をいじめるのが都市計画なんです。
  2番目は、経済原則に乗らないもので、そういうふうにした方が国家にとって都合がいい、皆さんの生活に都合がいいというものを法律で都市施設として認定する。都市施設として認定しますと、都市施設のある部分については、税金を使うことができるということなんです。公園を都市施設と決めますと、公園は都市施設になります。公園の取得費というのは、これは国からも県からも出て、市役所は国や県の補助金で公園を取得することができます。道路も都市施設です。
  公共目的のために、その町で必要なものを造る場合は、都市計画で、これは都市施設だと認定すると初めてお金が動く。経済合理性ではなく、公共福祉です。
  いじめる、金を出す。3番目は、褒める。都市計画では「地域」と「地区」という言葉がある。地区計画とか再開発地区、高度利用促進地区。この地区というのは一種のプロジェクトなんです。
  名古屋なら、先程言ったエネルギーを余り使わないようなところで、道路をまたいで熱供給管を入れてありました。そういうところは「高度利用促進地区」とかいうことで、地区をかける。地区をかけると都市計画法や建築基準法が定めるものでない自由度が与えられて、知恵を使った仕事ができるんです。
  その象徴が再開発地区計画で、これは皆さん悪用していますね。再開発地区計画に指定されると、2号施設とか何かを入れて容積が倍にできるからやろうではないかと不動産屋の連中はしょっちゅうそういうことを考えている。算盤勘定を合わせているんです。
  地区というのは、もう少しいい意味で考えますと、地域住民合意で作った都市計画。「地域制」はお上が上から定める地域制なんです。都市計画の学者が言っている一番の理想像は、地域制に基づく土地利用地域計画をやめて地区計画に基づく市街地計画を作ること。これが理想的な都市づくりだと言っているんです。
  再開発地区計画は少し違いますが、普通の地区計画は、地区計画を定めると、そこでは、皆様の家の建物の外壁は道路から2メートル下がったり、景観地区なんかになると屋根は必ず瓦屋根にして、色は赤白まんだらにしければいけないとなってきます。どこかの裁判で突き返されましたね。そういう地域の皆さんが約束したことでまちづくりをやる。地区というのはそう悪いことではない。ただ、再開発地区になると途端に不動産屋が入ってきていろんなことを考える。
  「地区」と「都市施設」と「地域制」、この3つが一般則です。
  それと、もう1つ「プロジェクト」があるんです。今までの国交省がずっと出してきたのは、みんな単発のプロジェクトです。例えば三河島で適用する、名古屋駅前で適用する、八重洲口で適用するとどうなるかという単発プロジェクトに対して補助をするということを言っていた。そういうプロジェクト全部で、日本の全体のCO2削減に、先程言った民生部門、業務と家庭はどのぐらい貢献するかといったら、要素技術では2割しか減らない。やはりネットワーク化した中で考えなきゃいけない。
  次の問題は、今言ったように、都市計画というのは「地域」と「都市施設」と「地区」、「プロジェクト」、で成り立っているんですが、低炭素化というのは、極めて技術領域で専門的知見を必要とするところなんです。
  例えば、太陽光発電というのが一体5年後にどれぐらいの値段になるか、土建屋はわからない。専門家でもよくわからない。それから、コジェネがどのぐらい性能が上がるのか、これもよくわからない。世の中にはそういうことを一生懸命書いている本が沢山あるんです。
  プラグインのハイブリッドで、電池の性能を上げるためにはどうしたらいいかと書いてあったり、水素を分離して、それで発電したらどうかと書いてある。全部要素技術ですね。それは都市計画ではない。要素技術を、皆さんが使う時に使いやすい道具をあらかじめ設定しておくというところで、都市計画が初めて皆さんと一緒になって、低炭素化社会を実現するために足並みを合わせることができます。
  例えば地域制を考えた時に、地域制の中にくだくだした要素技術を入れても、何の意味もない。むしろそれは通産省や環境省や燃料工学科や電気工学科が考える。都市計画屋の頭というのはそんな大それた能力もない。これが1点です。
  2点目は、低炭素地域制というのはおかしいではないかと言いますね。しかし、皆さんよくご存じだと思いますが、普通の地域制というのは第一種低層住居専用地域とか商業地域、準工業地域など、12種類かあるんです。
  地域制にもう1つあります。防火地域です。防火地域、準防火地域。これは地域制なんです。全国に波及しています。何で作ったかと言ったら、昭和の25年頃、日本の街は木造市街地で、炭の管理も悪くて、いろいろなところで火事が起きました。昭和25年から35年ぐらいまでの間に、魚津の大火、能代の大火、新潟の大火、鳥取の大火、熱海の大火、沼津の大火、幾らでも起きました。年寄りになると大火の数は10や20、幾らでも挙げられます。折角皆さんが造った市街地の建物を大火で一瞬のうちに失わうのはいけないからというので、防火地域を作った。防火地域は耐火造です。それと準防火地域。この2つを決めました。
  そこでやったことは、考えてみますと、例えば防火地域なので耐火造を造るということになると、昭和30年は、耐火造にすると建築費は倍ぐらいに上がっているはずですよ。倍ぐらい上がったところで魚屋の商売をしたからって、成り立つかというと成り立たない。それでも、公共の福祉のためにやれというので防火地域にしたんです。
  経済勘定の合理性からは成り立たないけど、国民全体から見て、防火地域にすることによって大火が半分になったというと、それの得られる社会の改善効果は物凄く大きいわけです。ただし、これは国内問題、日本の特殊事情問題で、防火地域、準防火地域を作った。これは地域制です。
  これに対して、今度の低炭素化というのは国内問題ではなく、国際問題なんです。なおかつ民生、業務の伸び率からいったら、これは特定の企業いじめではなくて、皆さん全体の問題です。これはまず大枠として低炭素地域という地域制を稚内から石垣までどこでもかけられるような広いシステムとして考えた方がいいだろう、と僕は考えたわけです。
  ただ、準防火地域と防火地域の3区分よりは、もう少し細かく対応する必要がある。何故ならば、先程言った名古屋の駅前とか、都市エネルギーパッケージで取り上げた日本橋のようなところは極めてオフィスの建築活動が激しく、ビジネスチャンスがあるところで、民間も仕事をしたい。そういう民間が仕事をしたいという意欲を持っているところは、そこに協力金を求めることで、非常に精度の高い低炭素化の装置を入れることができます。
  それに対して、例えば富山の郊外の住宅地なんかになれば、おじいさん1人で大きい部屋で無駄な電気を沢山使っています。そういうところの低炭素化を求めるというのはそんなべらぼうな金をつけるということはできない。程ほどの金で我慢してもらわなければならない。
  ですから、低炭素化地域制というのはそれぞれの地域によって、その対応を決めていこう。みんなが共通して守る約束事というのは幾つかあるだろう。考えたのが、1番目が、まず地下室を造って欲しい。地下室さえあれば、そこに蓄電池も入れられるし、エコキュートの給湯器も入れられます。将来は、コジェネの装置も入れられますし、マイクログリッドという時代になれば、そこでエネルギー調整の器具も入れられます。
  だから、土建屋がやれることは、要素技術がどんどん発展してきた時に、それを受け入れられるスペースを造ってやることです。これが1つ。できたら地下室は容積率の算定基準から外す。
  それから、建築線の設定。これは何かと言いますと、将来マイクログリッドや都市エネルギーパッケージで、お湯を配る管や、場合によっては、自分のところで電線を配らなければいけないということになる。カラオケ配線と思って下さい。カラオケ配線をやらなければいけないと思った時に、それをちゃんと入れられるようなスペースを敷地の中で造っておかなければいけない。パイプが入れられるスペースがあると、お役所のお金を入れて、道路を横断して、場合によってはガス屋や電気屋の子会社がそこへパイプを入れて、お湯を流すとか電気を流す管を入れるかもしれません。それは公共です。都市施設です。その都市施設が入るために、民間側ではちゃんと自分の家のことは自分で始末しろということになるので、自分の敷地の前に少し空き地があれば、そこへパイプを通してつなぐことができる。そういうスペースがないと皆さんの家にはつながらないんです。だから、建築線の設定が必要です。
  前面道路境界もしくは敷地境界の問題です。この敷地境界というのは田舎に行きますと、昔、武家屋敷だったようなところや、昔、商店街だと表にお店があって、真ん中に接客空間があって、後ろに居間があって、菜園があって、最後に敷地の奥に倉庫がある。その倉庫と裏の家の倉庫との間に水路があったんです。台所の排水を流すような水路です。水路のところは、昔は赤道(あかみち)と言いました。所有区分がない。民地か公かわからない。だけど、だんだん皆さん工夫して裏のところに下水を造ったり、蓋をして通れるようにして、そこを通路認定しています。酷いのはそれに向かって、基準法上2項道路認定で住宅を造ってしまうんです。酷いことをやっているんですが、まだそういう酷いことをやってない地方都市がありますから、その裏の境界線のところ、つまり赤道をあけておけば、そこにパイプも送れるし、電気屋からいじめられてどうしようもないカラオケ線みたいな電線も入れられる。それを造っておいてくれということです。
  それから、3番目、戸建て建築の禁止。これは全面的にではないんです。低層一種住専は戸建てを造るのは当たり前ですから、これはどうぞおやり下さい。しかし、例えば住居地域、準工業地域で容積率300%の3階建ての建て売りをやっている。見るも見苦しい。安いんですよ。あれは絶対建てさせない。それは先程言ったように、戸建ては6面面している。町屋は4面ですから、それだけでエネルギーが少なくなる。絶対そういうことはさせない。目的はCO2削減にある。
  それから、最小限敷地規模。これも自ずから決まりますね。商業地域なんかで、敷地規模が20坪で小さいオフィスビルを造るなんていうのは、CO2削減に全く貢献しない。商業地域400%のところで最適のCO2削減ができる最小敷地規模があるはずです。それはもしかすると150平米かもしれない。そういうことを決めます。
  5番目。自然エネルギーに対して私たちは貢献します。将来の値段どうなるかわかりませんが、自然エネルギーをちゃんと受け入れられるような備えだけはしておきましょうということです。
  この5つが遵守項目です。
  これがAで、地域制です。こちらのBは都市施設です。1のコミュニティー型電力ネットワークというのは、先程言ったマイクログリッドの電気版です。地域冷熱供給ネットはガス屋の方の都市エネルギーパッケージです。だから、ガス屋のマイクログリッドかもしれません。僕は老獪ですから、電気屋とガス屋にここで顔を立てているわけです。いずれ勝負は決まります。
  問題は、これは都市施設ですから、エネルギーセンターでお湯をジャンジャン沸かす。エネルギーセンターから道路を横断して一般市街地に行くエネルギー供給管は、都市施設と認定する。エネルギーセンターは、約10ヘクタールに1カ所です。300メートル角で9ヘクタール。東京の市街地を見ますと、大体300メートルピッチで児童公園、公園、小学校、病院、ちょっとした大きいお寺さんの敷地とか、大体500〜600平米の空き地がある。そこの地下を使う。地下を使うのであれば、300メートル毎にエネルギーセンターを造ることができます。そこから、道路沿いにいろいろなパイピングをする。これはマイクログリッドの発想ですね。
  そうすると、エネルギーの平準化ができる。用地は学校、公園、病院、駐車場等の地下部分を考える。都市施設としてこういうのを考える。ここは、1と2も、先程言ったように、東京電力とか東京ガスの系統に、ショートループのコミュニティーのエネルギー供給システムを結びつけて、ショートループで足りないものを埋めたり、ショートループが余ったものを引き受けたりする。
  こういうことは、要素技術屋の優れた日本はできると思うんです。既成市街地、特に高密度市街地、中心市街地ではできると思う。
(図41)
  次、これがみそ(・ ・)なんです。第1種の低炭素地域から第5種まで書いてあります。第1種の低炭素地域は容積率800%以上です。第2種が500%以上、第3種が300%以上で、第4種が150から300まで。第5種が150以下。これは何かというと、既存の地域制に対応しているわけです。800%は商業地域で、渋谷、新宿、日本橋、新橋、こういうところです。民間の不動産屋が何かしたくてうずうずしているところです。
  それから、500%以上、これは地方の中心市街地。東京で言えば中野、北千住、少し外側の中心商業地域。第3種、これは中高層住居専用地域、マンションをうんと建てていいというところです。中高層住居地域を第3種。第4種、これは低層住宅、地域制でいうと住居地域です。住居地域と準工業地域。これが150以上。150以下は第一種住居専用地域です。
  それで、先程言った5つの遵守事項を、例えば800%は地下室を造って下さい。建築線を下げて下さい。戸建ては絶対駄目ですよ。最小限敷地、これもきちっと決めて下さい。これは500%以上も同じです。
  違うのは地域冷熱、マイクログリッドを入れるのは800%以上は必ず入れて下さい。500%以上は、場合によっては入れて下さい。従って、800%以上はエネルギーセンターの規模は大中小ありますが、大々的なエネルギーセンターを造って下さい。500%以上はそれほど大きくなくていい。こういうところが違うわけです。
  最小限敷地規模、これも決めたい。800%以上は最小限敷地は1000平米、300坪。500%のところは150坪、これぐらいにしておけば、変なバラ建ちで無駄なエネルギーを使う建物は建たないだろう。容積率の順に1000%、500%、300%、150%とありますが、これ全部、エネルギーをなるべく無駄にしないということで決めた最小限敷地規模です。
  戸建て住宅地区は何をやるか。最小限敷地規模を決めて、自然エネルギーを使う。戸建て住宅は2階建てでも40坪ぐらいの住宅というのが多いですから、屋根も30坪から40坪あります。それに6割の部分を太陽光発電にしますと、1年間のその家の必要とする電力の3割ぐらい供給できる。だから、値段を無視して、屋根に太陽光発電を乗せて下さい。300万円ぐらいはかかる。200万円以上はしていますが、ここに余分に出してください。この2つは守って下さい。
  住居、準工というのは一番悪いことをする連中が多いところです。ここでは戸建て住宅は建てさせない。中高層になると、マンション街ですから、太陽光は余り意味がない。そのかわり最小限敷地と戸建て住宅禁止と建築線を決める。そして、ネットワークを組んで、コミュニティーのエネルギーセンターを決める。
  こういう地域制が仮にできると、何が可能かというと、稚内から石垣まで、東京の中心部から長崎の何とか島までの地域制を適用しているところ全部に通用するわけです。それぐらいの枠組みを作っておかないと、先程言ったような地球環境問題に対応できないということです。
  問題は、不動産屋さんや土建屋さんが一番関心のある、「俺の考えている再開発地区は一体どうなんだ」というところですね。これについては、大規模な再開発地区と団地、例えば多摩ニュータウンの再生については、まずその建物用途を混在化する。混在化して、計算上エネルギー消費が最小化になるということを証明してくれということです。そこを市街地エネルギー統合地区として設定したら、そこに何がしかの補助を出します。
(図42)
  問題は、その他にあります。それは今日本には住宅戸数5400万戸ぐらいあります。住宅で新耐震になっているのは2割ぐらいですか。まだ4000万戸以上建物を更新しなければいけない。目標年次を、例えば平成60年とすると40年ありますから、40年でいくと、更新できないことはないけれども、問題はプロセスです。40年間、既存の建物については、建て替えをした新築のところだけに目を当てて、「どうぞやって下さい。俺のところは建てかえないから何もしなくもいいよ」とは言わせないということなんです。
  既存の住宅に対しても、オフィスに対しても、義務を果たすということで、きちっとした1つの仕組みを作る。上記の各種地域制の地域内にある小規模な既存建築物については、窓の二重化と外壁の二重化を求める。窓の二重化と外壁の二重化をやらなくて、自然エネルギーを使わない建物については、グリーン料金を適用する。電気料金が途端に6倍ぐらいになります。場合によっては固定資産税にカーボン敷設費用を上乗せする。それぐらいの仕組みを作らないと、既存の建物の人は、それは他の人の仕事だから知らないよというふうになってしまう。
  ということは、国民総動員ということです。太平洋戦争で国民総動員という言葉を使いました。国際的なカーボン削減の動きというのは、国を挙げてこれぐらいのものをバーンと出さない限りは国民は動かない。日本人というのは、僕も含めて本当にずる賢いですから、必ず抜け道を探す。
  仏教徒はそうなんですね。キリスト教と違うんです。神様がいっぱいいるから、救う神もあれば、救わない神もあるけど、キリスト教は、イエス様が駄目だと言ったら駄目です。モスリムもそうです。
  もう1つ、市街地エネルギー統合地域というのを決めて、区画整理と再開発に関する補助支援を民間企業に行う。これはよくやりますね。
  1番目は、道路を横断するエネルギー管や地下室を使うエネルギーセンターは、都市施設だから公共事業で整備する。要するに、JRのように、上下分離方式でいく。トンネルと地下室は公共事業で入れるけど、そこをどう使うかというのはあなたの力量次第ですよ。株式会社のマイクログリッドとか都市エネルギーパッケージがやって、赤字になったら自業自得、どうぞ勝手にやって下さい、上下分離方式でいきますよということです。こんな話をやりました。
  一等初めとしては、これは割合いい線いったかなと思います。地域制についてこういうことを言ったのは、本邦初演なんですよ。他の誰もやっていない。これは著作権は、僕です。マルCで、何か使う時は僕に著作権料払って下さい。冗談ですけれども。
  ただ、先程言ったように、何回も言いますけれども、新聞の流れ、無責任にメディアが流すEUの低炭素化の話、アメリカはどうするかという話、これには日本だけでは抵抗し切れません。その時には日本全体が分担する。みんなが一緒になって、この話に乗る。こういうことは意外と日本人は好きなんですよ。道路造りと言ったら、みんな一緒になって道路造りをしろと、地方の議員はやって来たでしょう。理屈はわからないけど、みんなで一緒になってやるというのは悪いことではない。
  問題は、その悪いことではないという仕掛けをするのが悪いやつかいいやつか。僕はいいやつなんです。重要なんです。道路造りで仕掛けているのは悪いやつかもしれませんよ。だから、ここが最後なんです。
  その財源は揮発油税を充当する。道路がいいか、CO2がいいか、どっちを選ぶか、これを福田さんに迫ろうではないか。国民投票しようではないか。そういう話です。

3.森林の育成と排出権取引

(図43)
  もう1つ、重要な言いたいことがあります。日本の森林の育成と排出権取引。オフセット。これも時間がないから言いません。ただ、これは物凄く重要なんです。この紙は皆さんには配っていません。
  日本の森林は秘めた凄い性能を持っています。これを使わない手はない。日本の森林の現況と京都議定書の森林の改良に基づくCO2吸収の話です。
(図44)
  「3、排出権取引の対象と森林のCO2吸収量目標」。
(図45)
  「4、CO2取引額」。
(図46)
  「排出権取引について」。
(図47)
  事例計算までちゃんとやってあります。これは今日お見せするだけで公開しません。
  ということで、5時近くまで話しました。
  どうぞ、質問があったら出して下さい。相当乱暴な話をしましたけど、そう悪い話ではないと思うので、どうぞ。
  この本、物凄くいいですよ。「温暖化防止のために」清水浩さん。3〜4日前に僕は手に入れたんですけれども、物凄く読み易くて物凄く明快です。ぐだぐだ書いて、何が何だかわからない本ではない。これは凄いです。ゴアが言ったって、ゴアが答え出してないものを俺はこういう答えを出したという本です。久しぶりにいい本を見ました。答えがある本です。経済学者の難解な本より余程良い。彼は東北大の機械工学を出て慶応の先生。僕がSFCにいた時の同僚です。非常にいい本です。僕はこれを使って森林の排出権取引の説明をしようと思ったんですけれども、時間がなくてやめました。

フリーディスカッション

與謝野 伊藤先生、2時間ぶっ通しで熱っぽく素晴らしいお考えを、貴重な資料とともに披瀝頂きまして大変ありがとうございました。これまで都市計画分野と環境分野との間をどのように重ねて行けばいいのかという戸惑いがありましたが、今日のお話で綺麗に晴れ渡った頭になりました。ありがとうございました。それではここで、折角の機会でございますから、皆様からご質問を2〜3、お受けしたいと思います。
水谷(日本上下水道梶j 自然エネルギーの利用というところについて、「既存建築物」についての大切なお考えが示されました。しかし、既存建築物でそういうことをやらない人というのは大体金がないからやらないわけですよね。
伊藤 金がなくても税金で取るんです。
水谷(日本上下水道梶j そういう弱い人間の立場からすると、我慢しようという選択肢だってあるのではないでしょうか。
伊藤 それはある。だから、例えば東京電力が電力を停めちゃうとか。(笑)
水谷(日本上下水道梶j クォータか何かにして、君、1人当たり何キロワットアワーまでだよとか、そういうことはあるのではないですか。
伊藤 そういうやり方は、日本が全て今までやってきて、これからもやるでしょう。だけど、その流れに乗った提案は私はしませんでした。やはり日本人が一番嫌な原理原則をここで貫徹して書いてみようと思った。必ずそういうところにいくんです。それは公明党と共産党がいる限り必ずそういう話題になる。
水谷(日本上下水道梶j そうなるから、やはりそれは考えなければいけないのでは。
伊藤 それは水谷さん、考えて下さい。
水谷(日本上下水道梶j 揮発油税を充当するというのは賛成なんですが、その辺にも使わないと、こういうのはうまくいかないのではないですかね。
伊藤 やって下さい。工学部で第1近似値を出せというのがあるんです。僕は第1近似を出した。これは一等初めにやった者が持つ権利なんです。あなたは第2近似を出さなければいけない。
與謝野 それでは他の方からのご質問をお受けします。
田村(東京電力梶j 大変すばらしいお話でしたが・・・。
伊藤 この人、会長さんなんですよ、東京電力の。
田村(東京電力梶j 目下、エネルギー資源の価格は大変高騰しております。それから、資源そのものも大変厳しい争奪戦でありまして、今のところは何とかなっていますが、これから何年か先を考えると、先生の言っておられるようないわゆる経済合理性を超えたところで、公共と言いましょうか、今やお役人、官僚がしっかりしなければいけないのか、政治がしっかりしなければいけないのか、恐らくそういうところにきていると思うんです。この先生の案というのは私は素晴しいと思います。そういうところにいかないと、先生がおっしゃっているように、世界の中で、この地球環境問題で日本がリーダーになろうとか、リーダーシップを発揮しようというわけにいかないと思うんです。
伊藤 とんでもない、いかないです。
田村(東京電力梶j こういうことを言い出せば、恐らくリーダーに近づけるんじゃないかと思うんですけれども、先生は、これが現実のものになるというか、どれぐらい時間がかかるというふうにお考えになっていらっしゃいますか。
伊藤 時間はないんですよ。
田村(東京電力梶j ないんですけども、恐らく時間がかかるのではないかと思います。東京電力も東京ガスも、それぞれのエネルギーの価格をどんどん高騰して、高くしていけば、恐らく皆さんこういう方向にいくと思うんですよ。だけど、今すぐのことを考えますと、そうもいかない事情もありますね。
伊藤 恐ろしいことを申し上げますと、東京電力が、いろいろなコンベンショナルな技術改良をしている間に、気がついたらとんでもない要素技術が来て、そのやり方の足元を侵し始める、そういうこともあるのではないかと思います。
田村(東京電力梶j あると思います。あると思いますし、今日は話題になりませんでしたけれども、地球環境問題を考えた時は、エネルギーをできるだけ使わないようにするということが第一ですね。その時に化石燃料を使ったエネルギーを使わないということになると、手前みそになりますけれども……。
伊藤 僕は原子力のことを言わなかったんですが、原子力が前提になっているんですよ。大変な話なんです。
田村(東京電力梶j ただ、まだ原子力を全面的に社会に受け入れられるというところにいっていないですね。だから、そういう方向にいくということも考えられるわけです。
伊藤 ですから、僕は国民に選択を求めると思うんですよ。原子力による被曝危険性の確率と非常にマクロにジワジワと来る炭素化、炭素濃度の上昇に伴う地球環境の悪化による人間の死亡とどっちを選ぶんだ。これは間の答えはないはずなんです。
田村(東京電力梶j 全くそうですね。そういう選択に迫られるときが来ると思います。
伊藤 僕はそういう話は5年ぐらいの間に世の中にバンバン打ち出した方がいいと思っているんです。これは学者の仕事です。企業の方は大変だと思います。老い先短いもので、言うだけ言って死のうかと思っているもんですから。(笑)
田村(東京電力梶j ありがとうございました。質問にならない質問をしまして、まことに申しわけございませんでした。
伊藤 この方、東京電力の会長さんで物凄く面白い方ですよ。
與謝野 ありがとうございました。
皆様におかれましては、熱心に伊藤先生のお話をお聞きいただき、また熱心にご質問もいただきありがとうございました。また、伊藤先生におかれましては誠にご丁寧にかつ具体的な問題点を解りやすく熱っぽくお話をいただきまして本当にありがとうございました。最初から最後まで前頭葉を刺激されるお話に充ちていました。それでは、最後に本日の貴重なお話を頂きました伊藤先生に御礼の気持ちを込めて、大きな拍手をお贈りいただきたいと思います。(拍手)
伊藤先生、本日は誠にありがとうございました。
  以上をもちまして本日のフォーラムは閉会とさせていただきます。
 

 

 

 

 

 

 


 




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