back

©日建設計総合研究所                 
(ここをお読みください)
著作権について    

第9回NSRI都市・環境フォーラム

『国有財産と霞が関』

講師:   伊藤 滋 氏    早稲田大学特命教授

日付:2008年9月23日(木)
場所:日中友好会館

                                                                            
1. 資産・債務改革と国有財産

2. 国有不動産の処分

3. 宿舎

4. 庁舎

5. 売却収入

6. 処分方法

7.霞が関

 

 

與謝野 それでは、本日のフォーラムを開催させていただきたいと存じます。
  皆様におかれましては、大変にお忙しい中をこのフォーラムにお運びいただきまして、誠にありがとうございます。おかげさまをもちまして、このフォーラムは、「都市・環境フォーラム」と呼称を変えて以降9回目で、旧都市経営フォーラムから通算しますと249回目を迎えることとなります。長年にわたりまして、本フォーラムに対しまして皆様から温かいご支援を頂きまことにありがとうございます。高い席からではございますが、厚く御礼申し上げます。
  さて、本日はご案内のとおり、早稲田大学特命教授であられます伊藤滋教授から、このフォーラムでしかお聞きできない貴重なお話を、ご披瀝いただくこととなっております。演題は、前に掲げておりますように、『国有財産と霞が関』とされておられまして、小泉政権の頃の最後のお仕事でありました「国有財産の有効活用と財政改革」について、伊藤先生ご自身が座長をお務めになられました有識会議での審議経緯と協議のご様子、さらにはこれを念頭に置かれました提言などについて、審議結果の情報開示の趣旨にもとづく貴重なお話をお聞きできるものと楽しみにしております。
  前置きはもうこれぐらいに致しまして、それでは皆様から大きな拍手で伊藤先生をお迎えいただき、講演に移りたいと存じます。(拍手)

 

伊藤 今日は、国有財産の話をします。後でたくさんスライドが出ますが、そのスライドより、前置きの話の方が面白いと思いますので、まずはその話から始めます。
  話の出だしは、平成17年の12月ぐらい。実は今日は、その資料を持ってくるのを忘れてしまったので、少し月が違うかもしれません。今年が平成20年ですね。平成17年ですから、足かけ4年前ですが、12月だと、まだ満3年経っていないんですね。小泉さんが政権を終わらせたのが18年9月です。それから安倍さんが1年、19年に福田さんになって、それから麻生さんですから、目まぐるしく変わっています。小泉さんが終わってからは、丸3年です。ですから、平成17年というのは、そう遠い話ではないんです。
  17年に何があったか。小泉チルドレンがわっと衆議院選に出てきた。衆議院は4年ですから、来年選挙ですね。余りにいろいろなことがいい加減に変わっていますから、皆さん、そういうこともすっかりお忘れになっているのではないでしょうか。とにかく、平成17年は小泉チルドレンが選挙に勝ったことと、郵政民営化をやり遂げたことで、小泉さんは割合元気だったんです。
僕は、どういう訳か小泉さんが政権をとってからいろいろな形でつき合いがありまして、2カ月に1回ぐらい、小泉総理の前でいろいろな話をしていました。
  その年、17年12月は、僕にとっては2つ面白いことが起きました。1つは日本橋です。日本橋の地下化のプロジェクトをやれと最初に小泉さんから言われたのが平成17年12月26か27日なんです。
  あれはどういうことかと言いますと、―この話をすると、本題になかなか行けないので、これはまた別な機会に話をしますが、2カ月に1回ずつ小泉さんに都市計画やまちづくりの話をしていた時に、あるメモを出しました。そのメモをもとに、こういうことがまだ宿題で残っていますよという話をして、「短い時間では全部しゃべれないから、小泉さん、また時間を作って下さいよ」と言ったら、総理が、「うん、そうだな」と言いました。そうしたら、その1週間後に、「時間があいたから、来て、説明しろ」と言うんです。何故1週間後だったかと言うと、ベルスコーニーというイタリアの総理大臣をご存知だと思います。あの人は総理大臣になって、首になって、また今総理大臣になっていますが、そのベルルスコーニーが日本へ来るという話だった。ところが、イタリアというのもいい加減で、都合がつかなくなってキャンセルしたから、その時間があいた。だから、その時間を使って話を聞くというんです。よし来た、というので、いろいろあったんですが、帝国ホテルの地下1階の飯屋で飯を食いながら話をしていました。
  あの人は、ずっと話を聞いていますが、例えば10ぐらいの話をすると、これは俺の感覚に合わないなという話はどんどん聞き流します。そのうちの8番目ぐらいに、僕は、日本橋の話を入れておいたんですが、あの人は、キャッチフレーズしかわからない総理です。「日本橋に空を取り戻せ」というキャッチフレーズを書いて、日本橋の高速道路の地下化の話を入れておいた。酒を飲みながらですから、いい調子でダーッと10個ぐらい説明をし終わる。総理は「ああ、今日はうまい飯だったな」なんて、サービスしながら、帰りがけに、背広を着ながらくるっと振り向いて、「伊藤さん、日本橋、面白いからやろうじゃないか」と言いました。その一言で、9カ月間いろいろ大騒ぎしたんです。
  でき上がったものをちゃんと僕は説明したんですけど、あの人は政治感覚の物凄く鋭い人ですから、それをずっと聞いていて、「うん、これは、まあ、国交大臣に話をしておけ」というぐらいなんです。これをやろうとは言ない。面白いですね。政治的な判断は非常に鋭くて、ぴったりです。
  何故、「やろう」と言うわなかったかというのははっきりしています。石原慎太郎に前もって説明していないと言うのです。日本橋の上にかかる高速道路は首都高ですから、慎太郎と小泉が本来話し合っていて、それで、やるか、というので伊藤に任せるなら、これは動いていたかもしれない。実際に、道路局の連中は相当やる気があって、当時佐藤という、今、参議院になった次官がいて、彼なんか乗り気満々でした。それが1つありました。12月です。
  それと同時に、17年の12月に、何があったかと言うと、中川幹事長がかなり頑張っていたんです。他に、あの時の経済財政諮問会議に本間正明さんという人がいました。後で変なことで失脚した人です。本間さんがいた時に、「小さい政府をつくれ」と言っていた。小泉さんの話は全部小さい政府の話です。郵政もそうですが、なるべく役人の組織を小さくして、活動も小さくするという中に、財務省の持っている隠し金、隠し財産がある。この際、その隠し金を全部暴き出す必要がある、そういう話が出ました。これは平成17年の10月ぐらいです。
  この話ついては、自民党の中でも都市系の代議士さんなんかには、「そうだ」という人もいて、中川さんも共感を持たれた。環境省の大臣をやっていた鴨下一郎さんという足立区選出のお医者さんがいますが、あの人も割合関心を持っていて、自民党の中で、財務省の懐で役人がもっともらしいことをして隠している金は全部圧縮記帳で外へ出す、オフバランスしてしまえということが話題になっていました。17年の10月ぐらいです。もう3年前ですが、これは結構新聞種になりました。
  オフバランスすると、全部の資産が700兆円ぐらいあると言っていたかと思います。後で数字が出ますが、そのうち180兆円、200兆円弱ぐらいは全部財務省の貸付金なんです。いろいろな意味の貸付金ですが、それを証券化すれば180兆円減ります。隠し金680兆円の中で180兆円を証券化すれば、これは相当な効果だぞというのですが、財務省は財務省の方で、皆さんから借りている金、国債―直接借りている建設国債とは別です、一般の国債の平均には当たらないと。―その、国債が減ると言うなら、国の借金が減りますから、それは小さい政府になるけれど、貸した金を証券化して戻ったって、それによって皆様方の税金の中から国の借金に払う金が減るというわけではないという、これがまた大蔵的な議論の仕方なんです。これを10月、11月、12月に延々とやった。
  そのうちに、公務員の宿舎があるではないかと誰かが言ったんです。公務員の宿舎はとんでもない。安い値段で街の真ん中にある。隠し財産を沢山持っているではないか、それをまず引っ張り出してやり玉に挙げようという話が出たんです。それと同時に、貸付金の方も、例えば郵政民営化や、政策投資銀行民営化で、政府が出資した分が、国へ返ってきますから、一応貸付金の圧縮になるわけです。
  僕は知らなかったんですが、国有財産というのは定義があるらしい。僕は国有財産と言った途端に不動産だとばかり思っていたのですが、特殊法人に対する貸付金も国有財産なんですね。
  僕が言われたのは、不動産をとにかく整理しろという話です。その時、僕は1.5兆円とか2兆円の整理かなと思ったのですが、ある会議に出たら、そこでは、国有財産の11兆円か12兆円をどう減らすかという話をしていました。「おお、何だ、俺のところは、11兆か12兆の議論のうちの、せいぜい1.5兆円かそこらの話なので、マイナーだな」と思った。その残りの10兆円ぐらいは、今言った特殊法人を民営化して、貸付金が全部戻ってきますから、それで減らせる、という話なんです。
  そういう話を、実は平成17年10月ぐらいからわあっとやっていたんですが、僕はそれを余り知らなかった。新聞では読んでいましたけれども、まさか自分のところに来るとは思わなかった。そうしたら、12月の末、小泉総理といい調子で飯を食って、日本橋をやろうと張り切っていた後に、1月早々に、当時の理財局長の牧野治郎さんが、―あのギョロ目の牧野さんじゃないですよ。―理財局長の牧野さんが、僕のところへぶらっと、ぶらっとではなく、かなりまじめな顔をして駆け込んできた。「政府はこれから国有財産の圧縮をやらなければいけない。これの大部分は理財局の話だ。そこで、不動産についていろいろ議論をしたい。ついては議論の進行係に」。議論というより、動かしたい。議論ではないんです。始末をしたい。始末をするグループをつくったから、それの進行係をやってくれないかということで、僕のところに話しに来たんです。
  1月頃は僕も新聞で、国有財産のことがにぎやかだなとわかっていましたから、ああ、来たなと思ったんですけど、実は牧野さんが突然来たわけではない。その後ろには、今日財務局の人もいるから、多分知っていると思うけれど、小泉さんのところに総理秘書官で、財務局から行っている丹野さんという人がいた。丹野さんは、小泉さんの間だから5年半、ずっと総理秘書官をやっていたんです。どういうことか、ギョロ目の牧野さん―ギョロ目というとまずいか。―(笑)国交省の牧野さんと僕は5年半、一心同体でやっていましたが、丹野さんともずっとつき合っていたので、丹野さんがちゃんといろんな根回しをしたのだと思います。国交省の、当時まだペーペーだった局次長なんかと相談して、「あのじいさんは、この頃余り角も立たず、丸くなったから、やらせればいいんじゃないか」とアドバイスしたんでしょうね。牧野さんは不動産のことを知っている人です。国交省と凄くつき合いの深い人でした。だから、ある程度の情報を持って僕のところに来たんだと思います。
  こうして1月に、「国有財産をやるか」ということになりました。いろいろ言いましたけど、言いたいことは何かと言いますと、僕に牧野さんが言ったのは、大体1.5兆円の国有財産の始末をしてくれということなんです。それがスタートなんです。
  国有財産全部の中で、公務員宿舎と庁舎で処分できる金額をはじいて、それの処分方法を考えろということだったら、これは大変なことだったんです。今頃、こんな形で皆さんにお話しできる状況ではない。多分何兆という枠を決めなきゃいけない。国有財産、公務員宿舎と庁舎と合わせて、例えばその財産が20兆円ぐらいある、その中の何兆円分を処分対象にするかということを決める、それだけで大変な時間がかかります。
  でも、それは、当時自民党に、国有財産処分をめぐって議論している代議士連中のグループがあった。鴨下グループなんかです。民主党もやっていました。その辺の議員が喧々諤々の議論をして、それですでに決めていた。概ね国有財産の不動産は1.5兆円ぐらい、貸付金その他は8兆円ぐらい、それを中川さんのところで決めていたのかと思います。それを決めていた後で、処分の仕方を考えろと言うんですから、これは言ってみると、職人の仕事です。企画部の部長の仕事ではなくて、実施部隊の仕事なんです。それを僕がやった。だから、これは初めから与えられた枠なんです。それがこの間、平成20年、つまり今年の6月に最終決着をしました。2年半かかって、約1.7兆円の処分をしたわけです。
  その時に、いろいろな動きがあった。それは後で話しますが、平成18年の1月に僕のところに、おおよそ1.5兆円の仕事をしろと牧野理財局長が言ってきた。その後、僕は小泉総理にも会って、「わかりました。処分は大体こんなことをします」という伊藤メモなんかを出して説明しました。
  僕の流れは全部財務省理財局系でずっと来ている。これは職人の仕事です。職人の仕事は実務ですから、どこを使うかというと、財務局には地方に関東財務局がある。そこに国有財産処分の実務をやる優秀な職人集団がいるんです。皆さんが相続税なんかで税金を払い切れない時、物納するでしょう。物納処分を公開入札で現金化する仕事というのは、地方財務局の非常に重要な仕事です。物納は年間、少ない時で2500億円、多い時は四千何百億円ある。2500億円だって、5年経てば1兆2000億円ぐらいになる。物納も5年で1兆2000億円。これは僕が一生懸命やった2年半での1兆5000億円と、実は大して違わないんです。メディア的にも大騒ぎをした国有財産処分も、実際は1兆5000億円という本当にわずかな仕事しかやらなかったんですが、役人の世界ではこれは大変な仕事になってしまった。
  前に戻って、僕は財務省理財局の流れでやっているんですけど、もう1つ、経済財政諮問会議というのがあります。経済財政諮問会議の委員は、国有財産処分の話は本来、内閣府が主導した仕事としてやるべきだと言っています。役人の構図から言いますと、まず内閣府が国有財産処分について大枠を決めて、それの重要な部分として国有財産の不動産部門を財務省に任せる、こういう仕切りが一番当たり前なんです。ところが、僕の部隊というのは、その議論をする前から小泉さんと結びついて走っていたわけです。その後に、内閣府で同じ議論が起きました。経済財政諮問会議の委員の本間さんという人は阪大の経済学者で、実は僕と仲がいい。しょっちゅうつき合っていました。本間さんが、「伊藤さん、あんたの話が動いているけど、こっちでもやらなきゃいけないんだけど」という話になった。
  内閣府で国有財産の不動産について大枠の仕切りをすると言いますが、しかし先程言ったように、実務部隊を持っていないんです。財務省は実務部隊を持っています。内閣府の中には経済財政諮問会議の指示を受けた担当の役人がいて、その下に大体大学の先生を中心にした学者が集まって、喧々諤々の議論をするわけですが、その議論は、僕にとっては、もう今から40年ぐらい前に、経済企画庁の連中とやっていた議論と余り質は変わらない。要するに、大枠は決めるけど、実行力をどういうふうにして担保して動かすかというところはできないのです。それに僕も入れられました。財務省で先にやっているのだから、このメンバーにも入れということです。
  しかし、そこで副産物が出てきた。それはどういうことか。「財政諮問会議の本間さんたちの方でやろうとしていること、つまり国有財産の不動産の処分は、財務省で既にやっているので伊藤が仕切る。こっちの方が早いんだから、結果はどんどん出す。あんたたちは後からやったって、役に立たない。もっと重要なことがある」と僕は言ったんです。本間さんも、それに気がついていた。何かと言うと、特殊法人の持っている不動産、これを1つ引っぱがしてみよう。2番目、大学法人の持っている不動産、これを引っぱがす。そこまでは大体国の関係です。最後に、地方政府も中央政府がやったのと同じような流れで自分たちの不動産が有効に使われているか使われていないかを検討しよう。この3つと、僕のやるものも入れて4つ、国有不動産と特殊法人の不動産と、学校法人の不動産と、地方政府の不動産、この4つの不動産について、いい加減に使われていないかを検討しようという宿題が、内閣府の本間部隊の仕事になったのです。これが平成18年の2月ぐらいから動き出しました。この動きは今でも続いています。4つの動きのうち、1番目の理財局のものは、平成20年6月に、僕たちの報告書で決着を見ました。しかし、残りの3つは今でも続いています。
  そこの中で面白いことは、特殊法人の財産です。一番端的に言いますと、印刷局の財産です。これも財務関係です。印刷局の例えば虎の門病院の前に印刷局の土地があります。あれはやはり誰が見ても、あそこになくてもいいのではと思うんですが、役人は役人で、「秘密の文書を作らなければいけない時には、なるべく大臣の近くにいなければいけない」とか、言っているんです。あれも検討の素材になるでしょう。その特殊法人の財産を全部洗い出すという仕事が非常に具体的に動き出しました。これは平成19年ぐらいからです。
  そこで、これは僕も気がつかなかったんだけど、財務省には知恵者がいて、僕につぶやいたんです。その人は今、総理官邸の秘書官をやっているはずです。「伊藤さん、特殊法人の不動産も、本来遊んでいるものだったら、国庫に戻さなきゃいけないですよ」。僕は、ああ、そうだと思った。これは絶対もう一回国庫に戻すべきだ。それは国庫に戻すと決まりました。特殊法人の皆さんにとっては、かなり大変なことになった。特に、財務省系の印刷局とか造幣局とか、そういうところはいろいろあるんです。例えば、滝野川なんかにもあります。今、大変なんです。我々は、その特殊法人を全部チェックする部隊の中に、財務省の国有財産有効活用有識者会議で訓練を受けた非常に能力のあるご婦人2人と、意地悪が大好きな元国家公務員の3人を忍者のように送り込んだ。そうしたら、大学の経済学や法学部の先生がやっている議論が動き出した。これはおかしい、これはおかしいと全部調べさせた。これが動いているんです。これは、次の政府の割合面白いイベントになるかなと思います。
  それから、3番目の学校法人。学校法人も、僕は学校の教師で、今でも教師ですけど、よく知っているんですが、いろいろ持っているんです。僕が学校法人をやるぞと言ったら、早速文科省の審議官が飛び込んできて、いろいろな話をしました。そうしたら、文科省もいろいろ考えている。実は僕が関わっていることは、特別会計という仕組みの中へ全部おさまっているのです。だから、例えば東京大学が、ある新しい大学院のコースをつくって、その大学院研究科の土地の手当てをして、そこへ建物を造る場合は、財務省の一般財源からつくるのではなくて、学校法人が持っている財産のどこかを処分して、その金でつくる、そういう仕組みになっているんです。
  例えば、佐賀大学が福祉関係の学部をつくる時には、建物を造らなければいけない。佐賀大学の敷地を売ったって、佐賀市の端っこは坪何万にもならない。そうすると、文部省の役人はどういうことを考えるかというと、佐賀大学の建物を造るについては、東京大学の土地のどこかいいところをちょっと売れば、東京大学も、文句は言うでしょうけれども、余り痛みをこうむらない。これが特特会計です。
  だけど、考えてみれば、そういうことをやらせておくということが役人世界を安定化させているわけです。東大が検見川のゴルフ場を9ホール持っていますけど、それを仮に売って100億円儲けたとします。そのうち50億円ぐらいは文科省が調整金で取って、残りの50億円を東大が使える。50億円はどうするんだと言ったら、その時の文科省の審議官は、「先生、これは地方大学が困っているんです。地方大学が必要な建物を造るために調整するんです」と言うんです。なるほど。話としてはわかります。だけど、それをコントロールできるというのは、役人にとっては相当気分いい話です。
  文科省には、そういう特特会計というのがあるんです。それにも関わらず、隠し財産があるはずだと思っていたのですが、結局今、学校法人の問題は、余り大きくならず、下火になってきました。特殊法人の方は、まだこれからいろいろ話題が出ます。何故かと言うと、売っても役に立たないもの、例えば東大の北海道演習林なんかですが、東大は演習林を沢山持っています。べらぼうに面積が多い。しかし、北海道演習林の台帳評価は、何百万町歩が多分5億円か6億円ですよ。だから、演習林を売ったってどうしようもないんだけど、学校法人をやり玉に挙げるぞと言ったのが平成18年の6月か7月で、その頃僕がもといた学科の後輩の先生まで僕のところに「先生、東大の北海道にある演習林を知っているでしょう。あれ、取っていかれちゃ困りますよ」という話をしに来たりしました。
  結局、学校法人で使える財産を持っているところは東大しかないんです。東大は頭のいい官僚がいますし、先生も頭がいいから、全部特特会計でつばつけをやっている。例えば、田無に農場と林学科の苗圃があるんです。僕はその林学科の苗圃で、学生の時に苗木を植えたりした。そこのところは空いているかというと、もう空いていない。つばをつけてある。東大が柏に新領域創成科学研究科をつくった。それは国有地を買っているのですが、田無の農場の大部分を売るという約束のもとに国有地を手に入れた。先付小切手みたいなものですから、実際に売ったかどうかわかりませんが。
  ですから、最後、どこが残っているかなというと、結構ない、東大も頭がいい。不動産屋と同じです。京大はあるかというと、ない。結局東大しかない。それで終わり。これはもう余り大騒ぎにならないと思います。だから、文科省の審議官も、もう僕のところに余り来ません。
  次に残っているのは地方政府です。地方政府は、国がこういう国有財産処分のルールをつくったから、それに見合ったやり方でやってくれよということで、これからやると思います。
  ですが、僕はつくづく感じたのですが、重要なことは、僕のやっていたことは全部、小泉さんの政権の時の後始末なんです。それをどういうふうに次の安倍、福田がフォローアップしたかというと、その後、僕は、つき合いをしていますが、余り情熱は傾けない。そこで、皆さんの税金を無駄遣いしないようなやり方が出てくるんですが、余り情熱を傾けないですね。
  僕のやった仕事では、安倍さんがあることを言ったので面白い話になった。今日の最後の話にも出てきますが、福田さんになってからは、福田さんにも説明しましたが、別の動きが出てきた。
  政治が役人の世界の中へ入ってくるのはいいのですが、政治というのは浮気者です。浮気者がすぐ忘れちゃうと役人はもとに戻るのです。だから、1年ごとの総理大臣の交代というのは、役人にとってはこんなにこたえられない話はないというのをこの不動産処分の流れの中で感じた次第です。これが前置きです。

 

1.資産・債務改革と国有財産

 

(図1)
  これは谷垣さんが平成18年3月に出した資料です。小泉政権がこの仕事をやるぞと言った時に、既に平成17年の暮れぐらいから、議員の中の有識者が、鴨下グループとか谷垣グループが別個に、それぞれどれくらい国の財産を売却できるか勉強していたわけです。役人と直接つき合っていますから、大体大枠はつかまえられるんです。この3月16日には、谷垣グループが、国の資産を精査して売却可能な資産はできる限り売却する、それは普通国債残高の縮減に活用という提案を出しています。今1兆7000億円が目処ですが、建物を建て替えなければいけない金がありますから、これだけ努力しても、1兆円ぐらいしか普通国債残高の縮減に貢献していないんです。ネット1兆円。それも10年間でやる。国有財産は相当な隠し金があるだろうと一般常識で思われるかもしれませんけど、きちんとやっていきますと、僕たちは相当腕力のある有識者メンバーなんですけど、たかだか1兆円しか活用できないんです。
(図2)
  国の主な資産は一体どうなっているか。これはいろいろなデータがありますが、出資金が36兆円。これは民間法人への出資金です。先程の政投銀とか、郵政民営化も入っているのかな。これは売却すれば国債の財源になります。一般庁舎は9.6兆円ある。そのうち1兆6000億円ぐらいを財源となる資産へ移し替えた。それから、未利用国有地が4000億円。物納財産とか、本来の国の仕事が終わって、空いた土地です。これも使える財源です。
  国有財産42兆円のうち残り、11兆円の他、防衛施設関係30兆円は駄目。道路・河川等の公共用財産131兆円も駄目。財政融資資金貸付金275兆円が、先程の証券化すれば減るというもの。「見合い負債が単に減少するだけで財源とならない」、これが財務省の一貫した主張です。バランスで、見合いの負債が単に減少するだけ。確かに一般の国債の財源にならない。「一般会計の歳入とはならず、また普通国債残高の圧縮ともならない」と書いてあります。これは確かにそうなんですが、17年の暮れから18年の小泉政権の終わり頃には、これを圧縮しろという議論が経済学者の中で非常にありました。これは今でもあります。竹中平蔵さんなんかがこれを一生懸命考えました。
(図3)
  売却収入の目安は、10年間で11.5兆円。民営化法人に対する出資金で、日本郵政が5兆円、政策投資銀行2兆円、商工中金5兆円、その他ダダダッとあって約8.4兆。これは、書類の書き替え、鉛筆をなめるだけで8.4兆円行くんです。それに比べて、繰り返しますが、僕たちの1.7兆円というのは、涙ぐましい努力をしました。馬鹿みたいなことなんです。
(図4)
  それから、未利用国有地と毎年発生する物納財産で10年間に2兆円ぐらい売れる。先程の8兆と2兆を足すと10兆円です。毎年発生する物納財産が大体2000億円。国有財産だけど、本来の用途が終了したような全未利用国有地は、19年度末の全国で4200億円あるそうです。これらを1.7兆円ぐらいで売却する。
  実はもう1つ、財務省の新しい課長さん達が今、ここに来られてますが、その人たちと、これから話題になるかもしれないことがあります。貸付地。貸し付け中の土地です。これが、6400億円ある。これについては、貸付料が本当にちゃんとした貸付料になっているかどうか、誰でも疑問に思います。貸し付けというのは、多分明治から大正、昭和にかけてずっと貸し付けているところもあるのではないかと思うんです。貸付料の改定も地方財務局はやっているはずなんですが、権利付財産6400億円をもう一回引っぱがして洗えば、もっと出るかもしれない。
  僕の個人的関心は、ここにあります。次に財務省が僕にやらせると言ったら、喜んであと2年ぐらいやってもいいかなというのが今の気分です。ただ、もうやらせてくれないかもしれませんね。伊藤は危ないから。ですが、これはちょっと面白いんです。未利用地と物納と貸付中の土地をまとめて2兆円。
  それから、「一般庁舎・宿舎の効率的な使用により不要になった不動産(今後10年間の売却収入の目安:約1兆円)」。これは一般庁舎が5000億円、宿舎が1兆円になって、1.5兆円になりました。これが谷垣報告なんです。具体的にはこれだけいろいろな売却をするんだけど、この3番目の不要な一般庁舎・宿舎の不動産を伊藤グループがやれというので、当時の理財局長の牧野さんが僕のところに来たんです。
  売却はまず、更地を売ります。更地は実は全未利用国有地と似ているんです。それから、一般庁舎、宿舎。どういう言い方をするかと言うと、原則、一般庁舎は法定容積率に対する利用率5割未満。だから、法定容積率が300%のところで150%ぐらいの庁舎は売ってしまえということです。これは僕たちが決めたのではない。代議士連中、谷垣、鴨下たちがこういう話を整理していた。
  それから、宿舎は都心3区は原則売却。それ以外は庁舎と同じように、法定容積率に対する利用率5割未満のものを売っ払えという話です。
(図5)
  話はだんだん絞られてきて、国有財産の中の建物、土地関係がどれぐらいあるかというと、約5.7兆円です。これは国有財産台帳価格。国有財産台帳価格というのは、一般の入札で売却する価格の2分の1か40%ぐらいです。
結構含みがあるんですが、その一般庁舎で売ってはいけないものは国会議事堂等国会施設。初めはこういうのを売っても面白いかなと思ったんです。国会議事堂を代議士がリースでというのは、イメージとしては面白いでしょう。
  それから、迎賓館、総理官邸。在外公館、その他工作物敷地が7000億円。要するに、3兆円は引っぱがせない。4.6兆のうち、台帳価格で1.6兆円が売却対象。
  宿舎で売ってはいけないのは立法府公邸。これは面白いですよ。立法府公邸とは何かと言うと、衆議院議長公邸とか参議院議長公邸。これは売れないんです。これが1000億円。宿舎は台帳価格で1.1兆円あるんだけど、そのうち1兆円の残りは全部台帳価格です。庁舎と宿舎の台帳価格合計2.6兆円の中から処分価格で換算して1.5兆円分ぐらいを売れというのです。
(図6)
  国の資産は一体どれぐらいあるんだということですが、これは面倒臭い。これは内閣府の資料です。先程の財政諮問会議でいろいろな資料要求をします。その時に内閣府が出してきたものです。でも、大もとは理財局です。国の資産というのは約700兆円ある。695.9兆円。不動産は、そのうち42兆円。これは貸付金が凄いんです。約300兆円。これを代議士連中は狙ったんです。これで百何十兆円圧縮しろ。
  この国有財産42兆円のうち、調べていきますと、防衛施設庁が9兆円分、空港が2兆円分、裁判所、刑務所が2兆円分。それから、ここに「国有林野8.6兆円」。実はこの8.6兆円のうち、国有林野の立木が7兆円近くあるんです。後で面白い図面が出てきますが、土地はネットで幾らぐらいあるかと言うと、本当に悲しい話が、この国有林野が儲けているのです。それから、在日米軍施設として4.6兆円と、もう1つ、地方公共団体には貸付財産がある。これは何かと言いますと、大阪城公園。あそこは国有財産です。だから、一等初め、気楽に「大阪市の国有財産を売っ払ったらどうか」と言ったら、どこかの役人が、「いつつぶれてもおかしくない大阪市にそんな金を払うことができますか」と言った。東京都の中にもあるんです。代々木公園。あれは国有財産だけど、一応東京都の公園になっています。皆さんが気楽にお使いになっている公園緑地、公園財産の中でかなりのところは、役人同士が、国のものを東京都が使っていいよとか、大阪市か大阪府が使っていいよというものがある。それが何と2.3兆円ですから、これを全部売ってしまえば、僕たちがいろいろ苦労した1.7兆円よりあっという間に、儲かるんです。
  土建屋ベースでいく公共用財産が131兆円。河川、道路、港湾、海岸は土建屋です。これを足した国有財産が大体170兆円ぐらいある。全体で700兆円が国の資産です。これは台帳価格です。国有財産は台帳でいいんです。有価証券は決算ベースですから、現在価格にほぼ近い。約700兆円が国の財産です。
(図7)
  企業用財産、国有林野事業は、国有財産台帳価格で8兆6000億円あるんですけど、そのうち土地はたった3100億円です。立木が約6.6兆円ぐらいある。この差額がよくわからないのですが、あれだけ大きい土地を持っている林野庁の台帳価格は3000億円です。行政財産の中で土地にかかわるものは17兆円で、全体は40兆円です。その差は何か。例えば防衛施設で全体が13兆円でそのうち土地が6.8兆円です。その差額は何かというと、航空機。皆さんの税金で買うF1何とかとか、それから潜水艦、そういうものが約7兆円ぐらいあるのです。
  空港施設は1兆円です。東京国際空港を売ると1兆円。これは売ってもいいのかもしれませんね。普通財産では、横田の飛行場。「公園用地など地方公共団体への貸付財産」は約2兆3000億円ある。先程の代々木公園、大阪城公園等です。代々木公園、大阪城公園なんかは、本来国の財産だから、売ったっていいんです。でも、これは売れない。この辺の資料は、今日の私の話の最後にお渡しできると思います。これは公明正大な資料ですので、どうぞ暇な時にご覧になって下さい。国の資産というのはどうなっているのかがおわかりになると思います。
(図9)
  先程の相続の話もあり、財務省の理財局が国有財産の土地を売っ払っています。実は平成11年に、余り役に立たない相続の分も含めて国有財産は1.8兆円あった。それが16年に約6000億円になりました。11年から16年の5年間の間に約1.2兆円売った。平均2500億円ずつ売っているんです。多分毎年2500億円ぐらいずつ、こういう物納系の土地や国の本来の目的を失った土地が、ずっと売り続けられるのではないかと思います。これは相当売ったということです。
(図10)
  国土面積37.8万平方キロのうち、私有地が半分あります。残りの半分は海岸や水面などいろいろありますが、約半分が私有地で、これは宅地です。国有林野が23%。これの総資産は3.5万平方キロで3000億円しかない。ところが、「その他の国有地」が、国有林野の8.5万平方キロに対して0.4万平方キロある。これは30兆円です。ですから、国有地全体としては、財産の台帳価格では31兆円ある。これも資料を皆さんにお渡しします。
 公有地は、地方自治体系で、3万平方キロ、道路が1.3万平方キロ。大体こうなっています。
(図11)
  そのうち、国全体の土地資産は1300兆円あるそうです。国有地が31兆円。だから、民間はべらぼうに資産を持っている。そのうち、林野はたった3000億円。3000億円というのは、鹿児島県の薩摩半島、指宿の先のちょっとぐらいの価格しかない。国民経済計算で、北海道から沖縄まで国土面積全部の1300兆円のうち、国有林野は薩摩半島の先っちょの温泉地ぐらい。国有林野は哀れなものです。国有地30兆円を全部足しても、せいぜい鹿児島県ぐらいしかならない。それが国有財産の国有地です。
(図12)
  ところが、面積ベースで国有林野を全部足すと、四国と九州と中国地方全部ぐらいあります。全国土面積の23%ですから。その他の国有地30兆円の土地は、長崎県の1つぐらいです。
(図12)
  資産債務等専門調査会というのは、先程の本間さんを当時キャップにした経済財政諮問会議が平成17年の終わり頃から圧縮したもので、その時の、もっと国は身軽になるべきだという報告書の内容です。資産債務等専門調査会は今でも続いています。続いていますが、スタートしたのは平成18年1月ぐらいでした。その当時は、平成16年度末の資産全部で700兆円ある。そのうち、先程の貸付金を130兆円を証券化しろ。そうすると、130兆減る。それから、僕がかかわった宿舎等。国有財産出資金42兆円あるけど、そこの中から約12兆円圧縮しよう。そうすると、130兆円貸付金圧縮で、12兆円は国有財産処分で圧縮できるから、140兆円圧縮する。700兆円の資産の中の140兆円だから、約2割の資産圧縮ができて、政府のトータルの資産は軽くなる、ということを言ったわけです。「宿舎・庁舎等の売却収入は12兆円にとらわれず、さらなる国有財産売却・有効活用を目指す」。さらなる国有財産の有効活用で、僕は努力して、1兆5000億円から2000億円増やしました。
  それから、財政融資資金残高の圧縮、130兆は喫緊の課題だった。証券化をしろという。これは僕は専門外ですが、議論を聞いていると難しいですね。役人のいうことももっともだし、財政学者のいうことももっとも。だけど、これは皆さんが貸している一般国債を減らすのに役に立っていないのです。これが資産債務等専門調査会報告書、平成18年3月頃のハイライトです。

 

2.国有不動産の処分

 

(図13) 
  ここで、ようやく国有財産の処分の話です。
  売却収入は、先程言ったように、1兆円と言っていたんですが、1.5兆円で考える。一般庁舎を5000億円、宿舎を1兆円。先程と同じで、都心3区に所在するものは原則売却。都心3区以外というと、都心の23区では、例えば世田谷区とか練馬区にある、法定容積率が低いもの、小規模なもの、40年以上建物が建って老朽化したものは売る。一生懸命やりました。
(図14)
  これが先程の話です。財務省が経済財政諮問会議の専門委員会より2カ月か3カ月ぐらい早く、「国有財産有効活用に関する有識者会議」を設置して、僕が座長になりました。正確に言うと、一等初めは、国家公務員宿舎の移転跡地に関する有識者会議だったんです。それが、6月に改組して、「国有財産の有効活用に関する有識者会議」に名前を改めました。
その後で経済財政諮問会議が専門調査会をつくりました。このキャップが本間さんでした。そこの中で、幾つかの話題があって、1つは資産債務改革です。これが先程の140兆円を圧縮しろとか、十何兆円貸付金を10兆円ぐらい売却して、手元に戻せということ。それから特別会計改革がある。
  それから、公会計。実は、役所の会計台帳というのは一般民間企業の会計台帳と全然違うので、わからない。どういう隠し球があるのか、すぐにパッとわからないから、民間の会計台帳と同じようなレベルにしろという、公会計改革。これはひと頃、随分にぎやかな話題になりました。平成18年の真ん中から19年ぐらいにかけて結構議論しました。
  この専門調査会は3本柱で動いているのですが、この資産債務改革へ、僕が有識者会議の代表として入りました。この資産債務改革のキャップは、新日鐵の監査役をしていた人で、新日鐵の財産処分の時にらつ腕を振るったという、割合はっきり物を言う紳士でした。僕は名目的に、忙しかったから出ていないけど、今でもこの専門調査会のメンバーです。
(図15)
  これが、僕のずらずら言った話を整理したものです。「基本方針2006」とは何かというと、経済財政諮問会議は毎年、「骨太の方針」という基本方針を出す。「2006年骨太の方針」、「2007年骨太の方針」、2008年……と出すんです。その2006年の経済財政諮問会議の「骨太の方針」の中に、「基本方針」に国有財産処分に関する記述がある。「2006年骨太の方針」は7月ぐらいに決まるんですね。そこでようやっと僕たちの仕事は、財務省だけではなくて、政府全体として認知された。「国有財産については、一般庁舎・宿舎・未利用国有地の売却・有効活用」というのが1点。一般庁舎・宿舎が1.5兆円、未利用国有地の売却・有効活用で、10年間で1.7兆円ぐらい。それから、民営化法人に対する出資金の売却が約10兆円。「今後10年間の売却収入を目安として約12兆円を見込む」。一般庁舎・宿舎が1.5兆円、未利用国有財産の売却が約5000億円で2兆円、民営化法人に対する出資金が約10兆円なんです。だから、10兆円と2兆円を足して12兆円を10年間の売却収入の目安とする。「さらに、情報提供を徹底し、PFIを積極的に活用するなど、民間の知見を活用した有効活用(フル・オープン化を含む)を推進する」。これは役人たちの中だけで仲よしクラブでやっていては困る、もっと一般の人たちにも一体何をやっているのかわかるようにしろということです。
  「売却収入の目安12兆円の内訳は、民営化法人の株式で8.4兆円、未利用国有地で2.1兆円、宿舎・庁舎等で1.5兆円」とも書いてあります。株式売却が8兆円です。未利用地とか相続税の何かで残った土地を10年間で2.1兆円処分して、それから宿舎、庁舎で1.5兆円を処分します。
  有識者会議とありますが、これは今、僕がキャップです。最初はこの有識者会議に、宿の専門家として、三井不動産の佐藤さんという非常に学識のある、懐の広い、元役人の人が来ていました。三菱地所も専門家が来て入っていました。しかし、後で大手町の日経の、経団連と農林中金の土地の売却をめぐって、日本共産党が政府のやった弱点を突いてきたので辞めにしました。あれは都市機構が関わった区画整理事業です。日経はあの土地から移って新しいところに移った一種の飛び換地です。区画整理事業の流れとしては筋が通っているんですが、日本共産党のおじさんから見ると、都市再生機構が入ったので、土地を安く評価して、安い評価のところへ日経なんかが入って容積をうんと高くした。オフィスを経営するという点では、通常よりも3割ぐらい得をしているんじゃないかと言う。それがいろいろの問題を出してきました。
  小泉政権の3悪人の1人はオリックスの変なおじさん、もう1人誰かと、3人目は大手町にかかわった伊藤滋というやつがいる、そういう話があったんです。当時は都市機構も随分苦労したようですけれども、僕はこういう調子で気楽に話しますから、麻生さんより言質は取られやすい男です。(笑)
  そういうこともあり、伊藤は独占資本の三井不動産と三菱地所まで抱えて有識者会議をするから、この有識者会議はとんでもない方向に行くという話があったので、それで僕は辞めちゃいました。一等初めの公務員宿舎の有識者会議を改めたでしょう。その時に、その人たちに辞めてもらって、有能な公認会計士系のご婦人と、不動産鑑定士系のご婦人の2人に入っていただきました。
  もう1つは、役人の手の内を十分知り尽くしている建設省系の、これも相当悪口を言うので有名な人の3人に入ってもらった。この3人が物凄く有能。この3人組に、先程の経済財政諮問会議の資産債務改革の専門委員会に行って、徹底的にやって下さいとお願いしたんです。それで特殊法人の眠っている遊休不動産処分をバーッとやった。そのおかげで、抽象化した議論だけ大好きな内閣府が少し動いた。そういうことで、有識者会議は、公認会計士、不動産鑑定士、弁護士、ファイナンスの人達に集まってもらいました。今でも7人のこの組織は非常にうまく動いています。
  しかし、仕事は終わりました。率直に言うと、今年の6月で僕たちの仕事は一応終わりましたので、あとは財務省の課長、お役人が維持管理をするという段階に入ったのでこういうことが言えるのです。
  もう1つ、地方の宿舎や庁舎を処分する。これは俺達はわからないからというので、その時も初めて知ったのですが、全国に11地方財務局ありますが、地方の先生方や実務家に集まっていただいて、我々がやっているのと同じ議論を、庁舎、宿舎について議論して、そこから売却すべき資産を出して下さいということをお願いしました。
  1つ面白かったのは、「徹底した情報開示」と書いてありますが、これをやった時に、多分初めて理財局も公務員宿舎と庁舎の不動産台帳をつくったのではないかと思うんです。例えば、今売ることになっていますが、市ヶ谷の駅の山脇服飾美術学院の後ろに、長いこと誰の目にもつかないようにいい宿舎があったのです。それもこの作業を通じて初めて、その宿舎の地番と面積と都市計画上の容積率、用途地域も路線価も全部分かる台帳を作りました。これなら、不動産屋さんもすぐにわかります。これをホームページに載せました。平成18年の夏ぐらいだったと思います。これは相当凄いことをやった。ですから、皆さん、今日の僕の話を頭に入れて、あの公務員宿舎はどうなっているかなと思い起こしてホームページを見ると、全部出ています。それが何年に売却するというのも出ています。そういう点は一切隠さない。徹底した情報公開です。審議資料、審議状況も全て情報公開です。一番重要なのはメディア対応です。メディアと延々とやりました。
  メディアにもいろいろありまして、テレビ朝日というのは面白いですね。突貫お兄ちゃんがよく出てくるでしょう。あれの対象になったのです。
  そうしたら、やはりテレビ朝日に有能なご婦人記者がおりまして、こういう質問をしてきました。「売るのはわかった。でも、もっと売れないか。例えばバックリースを売って、売ったものを借りて宿舎にする。困り果てた民間は昔やっていたじゃないか。それをやるのはどうか」。それに対しても、こっちは答えるという割合ホットな議論をした。テレ朝のご婦人記者は相当いろいろなことを知っていた。
  その時、テレ朝やNHKは、「宿舎の料金を、上げたと言ってもまだ安いのではないか」と言ってきました。宿舎の値段は、一度1.5倍ぐらい上げたんです。それでも安いのではないかと言ったので、僕はその時、「だけど、恐れながらNHKさんやテレ朝さんの社宅の場所を知っているんだけど、そこの家賃は幾らですか」と言ったら、みんな黙ってしまいました。(笑)調べたんですよ。NHKなんか安いですよ。何故あんな安い値段なのでしょう。公務員宿舎より安い。テレ朝もそうだろうと思います。メディアというのは、自分のことは棚に上げて質問するのが商売なんですね。ここでそんなことを毎回やりました。
  それから、ここはとにかく土建屋ですから、一生懸命現場を歩いて、現場を見て、中へ入って、全部調べました。これは先程のお話のように、18年の1月スタートです。18年1月に牧野理財局長が来て、すぐ委員会をつくって、18年6月に23区内の宿舎を整理して、報告書を出しました。23区外の宿舎は大変で、もう少し時間がかかるということで、庁舎と23区内の宿舎については、一議論やって、19年3月、中間報告をしました。 それから、19年6月に、23区内の庁舎と23区外の宿舎の中間の取りまとめ。19年6月にもう少し精査をして、19年11月にもう1つ報告書をつくっているんです。それは何かというと、入札処分の仕方。処分の仕方までやらされたんです。
  だから、報告書は18年6月と、19年3月と、19年6月と、19年11月と、最終報告の20年6月と、全部で5冊つくった。とにかく2年半でこれだけのことをやったというのを言いたいんです。半年置きにつくった。基本的に、とにかく1.5兆円の確保をやったんです。一生懸命やったということを皆さんにお伝えしたい。

 

3.宿舎

 

(図16)
  宿舎については、これも面白い。省庁別宿舎と合同宿舎とあります。省庁別宿舎と言えば、僕は、林野庁の宿舎を覚えています。それはどこにあったかというと、成城学園の南の崖をおりて、見晴らしのいいところです。何か国有財産の端切れみたいなところがあったんです。そこへ林野庁は宿舎を持っていた。売ってしまいましたけど。それから、建設省宿舎というのもあった。警察庁の宿舎というのもあるんです。それから、外務省の宿舎。それとは別に合同宿舎がある。
  調べると、これが僕がやった一番大きい仕事だと思う。合同宿舎というのは、各省庁の人たちが集まっているところで、比較的新しい建物です。今から10年ぐらい前から増えた。これは財務省理財局が管理しているんです。
  ところが、戦後から50年の間に、どういうことか省庁別宿舎が沢山できた。それは、財務省理財局が情報として知ることのできない、全くそれぞれ各省庁の会計課長預かりの財産です。これを僕は辞めろと言ったんです。全部合同宿舎にしよう。これが多分、財務省に一番貢献した。僕はこのために財務省の御用学者になったと言っていいぐらい。(笑)
  省庁別宿舎を整理するぞと言った途端に何が起きたかというと、各省の会計課長と官房長が僕の前に出てきて、必要なことを縷々と説明するんです。こういう理由で省庁別宿舎をつくっているんですと。これには驚きました。僕の仕事というのは、理財局の局次長と、国有財産調整課長と、その筆頭補佐と3人ぐらいでやって済むのかと思ったら、そこに出てきたんですよ。それは、庁舎の時にも続きました。これは気分よかったですね。何も権限のない学校の教師の前に、警察庁の当時官房長、今事務次官をやっている人と仲がいいんですが、その人が官房長として来て、「伊藤先生、僕を知っているでしょう。今から十何年前に検察庁でやった国民の安心・安全を守るという勉強会で僕は当時、課長でそばにいたんですよ」と言う。よく見たら、ああそうか、おまえか、となる。そういうのが来る。なるほど役人というのはこういうことで一度飯を食ったらこたえられないんだな、特に財務省の役人とは、こういうことばかりやっているのかなと、思ったわけです。
  各省庁はこれで大変でした。だけど、洗ってみると、何が故に宿舎を省庁別に置いておくか、はっきりしないんです。確かに必要な宿舎はあるんです。宮内庁。警察も一部分は必要。だけど、全部必要とは限らない。防衛庁の市ヶ谷あたりの宿舎も必要。それぐらいは必要なんです。それ以外は、省庁別は要らないというので整理しました。
  僕が出した報告書にある省庁別宿舎は残すけど、それ以外はこれから省庁別宿舎は新しく造らない、みんな合同宿舎にすると、書いたら、これは効きました。
  これはメディア対応で23区内でやったんです。メディア対応だから、325団地を107団地に削減する。団地を本当に3分の2整理しちゃったんです。これは凄く重いですよ。廃止基準は「時価の高い土地に存在する宿舎」「土地の有効活用が図られていない宿舎」「小規模宿舎」「老朽化した宿舎」「その他都市再生等への活用」。「移転・再開発計画の結果、23区内に所在する国家公務員宿舎を325団地から107団地に整理し」とやったのです。「都内で55haの土地を捻出。全て売却した場合、約4,860億円の売却収入」。しかし、箇所は7割減ですが、面積はそんなに減っていないんです。面積は3割減。
(図17)
  残す宿舎は、危機管理職員477戸、皇宮警察等414戸。刑務所職員、看護職員324戸。戸山に国立感染症病院というのがありますね。あそこは看護婦さん宿舎が必要。こういうのは残す。
  それから、ここの中で面白いのは、「その他都市再生等への活用」というのは新しい。これは、僕が言ったので、当時財務省の国有財産調整課長が、仕方ないなと言って入れてくれたんですけど、「都市再生等の観点から、特に別の用途に供する」。これはどういうことかというと、23区の区役所。区役所は土地はなくて困っているだろう、だったら、ここで国有地を出すから、区役所が欲しいなら、一般競争入札ではなくて、それなりのネゴシエーションをして、要するに安い値段で処分するということもあるよ、ということです。これは本当は財務省はやりたくないんです。これを入れたら、23区でダーッと来るかと思った。ところが、千代田区も港区も、待っていましたとばかりに何十箇所欲しいというかと思ったら全然来ない。今、話があるのは新宿区ぐらい。これは、がっくりしましたね。基礎的自治体というのは市民、区民密着の生活の仕事をしていて、公園とか、いろいろな市民サービス施設があるでしょう。その土地を買おうという時に、せっかく国がネゴシエーションしようというのに、食いついてこないのです。僕は港区なんかに期待したんですけど、ほとんど食いついてこない。文京区も食いつかない。これは驚きました。区役所の企画部長は何を考えているのか。仕事していないのかと思いましたね。
(図18)
  それでも4割減らしました。都心3区は33を12で3分の1にした。面積は4割減った。戸数は3割減った。これ、6・4・3と面白いでしょう。メディアに対しては箇所づけを減らしたというのは効くんです。だけど、戸数は、7割残り。こういう作業をしたのは平成18年の5月頃です。物凄くホットになって、やりました。
(図19)
  移転が困難な宿舎とは何かというと、皇室系です。皇宮警察とか、がんセンターとか感染症の看護婦さんとか、拘置所の刑務官の施設です。
  それから、宿舎と一体で特別な事情というのは何かあったんですが忘れました。
  危機管理は、主として内閣府の防災統括官系、地震と水害の防災担当統括官のメンバーです。彼らは大体1年間、ここへ緊急のベルを持って暮らさなければいけない。
(図20)
  これで言いたかったのは、省庁別宿舎と合同宿舎。東京23区に373ありました。平成18年1月に話を始めたスタートの時に370。そのうち何と省庁別が286、合同宿舎、財務省理財局がやっていたのは87。合同宿舎の戸数は多いんです。1万戸と省庁別宿舎1万1000戸だけど、箇所づけ、団地の数は圧倒的に省庁別宿舎が多かった。これを整理した。
(図21)
  国家公務員宿舎に、国家公務員で働いている人のうち何割住まわせるのがいいかという話があります。国家公務員で、例えば国交省に働いている公務員でも、実態としては宿舎に入っている人と自宅に入っている人、貸家に入っている人がいる。ひとり者なんかは貸家の方が気楽ですから、そういう人がそれなりの比率でいる。
  宿舎入居が40%、自宅入居が40%、借家入居が20%で4:4:2で、余り変わらない。国家公務員宿舎、国交省の役人が仮に霞が関で3000人いたとして、宿舎対応は、そのうち1500人ぐらいを一応見当につければいい。これは役所用語で「措置率」という言葉を使っています。国家公務員宿舎に入るべき人の数を措置率何%にするか。これが大きいんです。
(図22)
  措置率の話はここまで。最終的に23区内宿舎を幾らで売っ払ったかというと、概算時価格は相続税価格の1.25倍。23区で6500億円ぐらい売ります。台帳価格は3800億円。宿舎が東京23区で2万2000戸ある。平成18年1月の台帳価格は3800億円だけど、時価にすると約6500億円になる。相続税標準価格だと5000億円。そういう現状認識の表ですね。
(図23)
  これは、入札処分の倍率と台帳価格と売却価格の差を示した表です。平成16年の、土地の値段が元気ではなかったころですけれども、入札に応募したのが5〜6倍。公務員宿舎なんかを理財局が売ると、いい場所にあるから、応募する倍率は高い。
(図23)
  現状調査を築21年以上で行いました。その結果、合同宿舎だと法定容積率に対して4割ぐらいしか使っていない。省庁別宿舎は、約4割以下。これは現状認識ですね。
(図24)
  先程からの話を整理したものです。325団地を10年後には107団地にした。これは少しずつ修正していますから、2〜3カ所団地の入れ代わりがあるんです。その後も修正しているのですが、大体3分の1ぐらいの団地数にしたということですね。
(図24)
  宿舎の戸数の推移です。これを説明すると、僕の立場は少しデリケートなんです。団地を3分の1に減らしました。戸数は4割減らしました。最終的に何戸建てるかということです。23区の中で、平成18年1月に、この一番左の表の「その他」も入れて、全部で2万1000戸のうち、10年後には1万6000戸になります。その後ろに「2,980」と書いてある。これは例えば練馬の団地を小金井へ持っていったら、23区の外。だから、正式にいうと、それを足した分も入っている本音なんです。本音は幾らに減ったかというと、ネットで85%ぐらいの減り方。それは先程の措置率なんです。措置率をどれぐらい減らすかというところで、最終的な建物を造る戸数が決まる。措置率は、忘れたけど、定員の60%ぐらいだったのを47〜48%にした。15〜16%減らしたんです。
  何でそれを僕は問題にしているかというと、これはちょっとまずいかもしれないけど、措置率をもっと減らせるのではないかという議論があるんです。民間の社宅は大体2割です。新日鐵などのメーカー系でも2割。公務員が何で4割以上持っているのかと、これもテレビ朝日の記者が聞くでしょう。
  それの説明は、僕も学者だからよくわかります。会社と違って、国家公務員は転勤が多い。会社だったら社宅に平均7〜8年住むのが、公務員は4年ぐらいで地方へ行けとか、そういうことを言われる。もう1つは、転勤が多いと、空き部屋を多くつくらないといけない。回転が多ければ多いほど空き部屋をつくっておかないと、すぐに充当できない。そういうことで、民間より措置率は高くなるという説明を、最後は僕がした。そういうことで僕はだんだん財務省の御用学者になっていくわけです。(笑)そういうことが表の後ろに含まれているんです。
(図25)
  23区外も結構減らしました。6割減らした。札幌とか福岡とか大阪とか、そういうところです。あるいは金沢とか。
  23区外。これもいいでしょう。皆さん、飽きたでしょう。

 

4.庁舎

 

(図26)
  ずっと宿舎の話でした。庁舎も入れて約1.7兆円また努力しなければいけないという話が次に出てきます。
  庁舎はどういうことをやったか。
  庁舎は4分類で議論しました。まず、霞が関の中央官庁を売るか売らないか。平成18年の終わり頃は、霞が関にも手をつけないといけないという感じがしていました。ただ、その感じは、1.5兆円の概ねの処分を「1.5兆円では少な過ぎる。2兆円ぐらい何とかならないか」と、小泉さんとか中川さんに言われるのではないか。その時のへそくりをどこで取っておくかといった時に、やはり霞が関に手をつけなければいけないということがあるんです。今日は皆さんにバーッと話しましたが、平成18年から19年の頃は、この判断は、座長の僕の腹の中だけにあったんです。万が一の時の答えも僕は今、持っているんです。これは絶対に話しません。霞が関も手をつけるとどうなるか。これを考える。
(図27)
  次は、霞が関以外にある中央官庁。大手町の気象庁と東京国税局。あれは皆さん、いつどうなるか一番関心があるのではないでしょうか。
  2番目に関心の高いのは、これは昔からある若松町の統計局、人事・恩給局。それから、意外と皆さん知らないでしょうけど、朝日新聞社の後ろに海上保安庁の建物があるんです。これが「類型2」です。霞が関が「類型1」です。
  「類型3」は、東京の一部のみ、細々した税務署とか社会保険事務所とか登記所がある。これも一応全部整理する対象にする。
  それから、「類型4」。これが各省庁は、やられたと思った。会議所や書庫。何だかわけのわからない部屋があるんですよ。
  外務省の時に面白かったのは、会計課長だったかな、女性の会計課長が僕のところに吹っ飛んできた。昔の狸穴の郵便局の横に、吉田五十八がデザインした国際的な、大使なんかを接待する役所がある。そこは知っていたんですけど、その横に秘密の料亭みたいなのを外務省は持っている。それは何かというと、大使や海外の首相と日本の首相や大臣が、オフィシャルにレセプションをやるのは、外務省の狸穴の会議所です。問題はその前さばきが必要なんです。前さばきの会議所というのは、外交的にも高度の接待をしなければいけない。特に、アラブ系なんかは絶対そうです。それは一見洒落たクラブです。そういうのがあるんです。それに、僕たちの仲間の誰かが眼をつけて「あれは要らないんじゃないか」と言ったら、その女性課長が吹っ飛んできました。わざわざホステスみたいに、こうです、こうですと僕を案内するんです。話を聞くと、なるほど思いました。外交も、外交特権ではないけれど、一律に国の基準で、財務省或いは総務省なんかと同じように律するわけにはいかないものがある。それは残しました。
ところが、もう1つ、これは言ってもいい面白いこと。外務省の職員で、外国へ行っている連中が東京に残した子どもを通わせる学校が必要だというのです。外務省の、例えばポーランド大使館の一等参事官になって行ってしまったけど、子どもがまだ小学生や幼稚園という時は東京に置いておく。それをどこかまとめて外務省として教育しなければいけない場所がある。それも理解できる。だけど、その場所を、これも台帳を見ればわかるんです、外務省は港区とか、いいところに置いてあるんです。それで僕たちは文句を言った。こんなところに置かなくたっていいじゃないか。例えばASIJ(American School in Japan)というのを知っているでしょう。これは調布の昔の飛行場の横にあるんです。大使館の子どもは調布のアメリカン・スクールに行っているわけです。外務省の子どもだけ何で港区に置かなければいけないんだというので、これだけは開き直って、とうとう葛飾かどこかに持っていっちゃいました。(笑)それに応じた外務省も立派です。ゴネない。もうそこまで来たら諦める。
  こういう不動産業をやっていると、この手の話は幾らでもあるんです。それを全部一々克明に、財務省の理財局の国有財産調整課の筆頭課長補佐3代に僕はつき合って整理しました。この人達の事務引き継ぎは見事です。あれは結構有能だと思いましたね。つき合いが大体1年ぐらいです。1年で変わっていく。1年の間に、都市計画とか区画整理とか何だかの生半可な知識をすぐ覚える。事務官のくせにね。技官というのは困ると思いますよ。本当の細かいことは知らない。しかし、こういう行政処理に必要なことは1年ぐらいで覚える。
  こういうことがありまして、分室・会議室は徹底的につぶしました。つぶしてどこへ持っていったかと言うと、滝野川。滝野川に農林省の隠し財産があるんです。農林省の、農業技術研究所。滝野川は大蔵省と農林省の大正、昭和の牙城だったんです。あそこはたばこ工場もあった。滝野川の農林省の土地のところに合同会議所、合同宿舎、全部まとめました。
  倉庫は、財務省の持っている品川税関の検疫所か何かの横に土地があったので、そこに高層の立体倉庫を造らせて、そこへ全部ぶち込む。これでつくづく感じたのは、企業に比べて、国家公務員のデータの処理、マネジメントが何十年も時代遅れであるということ。社保庁と同じですけど、古い伝票をただ積み上げているだけなんです。なんで電子化できないのか。そういう話がありまして、これは全部まとめました。
  だから、僕がらつ腕を振るったのは、国家公務員宿舎では省庁別宿舎。庁舎では、この会議所、倉庫。これを全部つぶしました。
(図28)
  あと皆さん関心の大手町(気象庁、東京国税局等)と若松町(統計局、人事恩給局等)はどうなるか、築地はどうなるか。法定容積率が、東京国税局の前の部分を売ったところを使えば1470まで行けるはずなんです。だけど、これはいろいろ工夫しないと、都市計画ではそこまで認めません。法定容積率に対する利用率は30%とか16%。これは当然売らなければいけない。若松町も売らなきゃいけない。
  問題は築地です。これは皆さん、知らないでしょう。約1ヘクタールあるんです。築地の海上保安庁。これは元の海軍水路部です。築地は海軍大学校や海軍病院や海軍水路部という、海軍系の国有地が固まっていた。それがばらばらに、がんセンターなどになって残った。これをどうするか。
(図29)
  大手町の東京国税局の入っている合同庁舎3号館と気象庁は足して2.8ヘクタール、1.3と1.5です。8000坪。8000坪で、坪単価は1000万円?もっとする?仮に、3000万円で8000坪とすると、それだけで2400億円。これをどれぐらいいい値段で売るか、実はこれからの勝負なんです。5000億円の中の半分ぐらいは、この2.8ヘクタール一体で売れるかどうかにかかっています。そのためには、気象庁と国税局を絶対動かさなければいけない。1つでも残った途端に、これは不動産鑑定士の土地評価としては傷ものですから値段が下がる。絶対動かす。これがハイライトです。どこに移せるか。これも気象庁は物凄くビリビリしています。
  ところが、立派なのは東京国税局。同じ財務省です。一言も陳情、請願しない。もう、まな板の上のコイのように「ご裁定を待つのみ」と言うんです。僕は、東京国税局というのは立派だと思います。中の現場を見たけど、指揮系統はビシッとしています。霞が関の役人なんて、あれに比べたら、いい加減もいいところ。国税局というのは凄いと思いましたね。あれが日本の国家を守っている、そう実感しました。顔つきが違う。
  どこへ持っていくか。これは僕がひらめいた。東京国税局は海上保安庁へ持っていく。何故なら、東京国税局のやる仕事は査察です。査察で東京23区の主要企業に、朝突然パッと行くわけです。電車に乗るだけで30分なんて変なところへ持っていったら、情報が漏れてしまうわけです。「今、電車に乗っている」とかね。素早く行かなければいけない。だから、大手町は物凄くいい場所です。なるべく東京の、大手町に匹敵するいい場所にしなければいけない。地下鉄も使えて、場合によっては自転車に乗っていくようなところはどこかと考える。そうしたら、あった。海上保安庁水路部。築地です。ただ、対象が、大手町や大手企業には近いけど、築地ですから、中小企業の査察には便利。その差があるんですけどね。
  あそこは実は朝日新聞と敷地が隣り合いなんです。もうわかるでしょう。東京国税局と朝日新聞が隣り合わせだと、東京国税局から情報を流す時のスピードは、絶対朝日が早いです。讀賣や毎日は遅れます。これは、小説風に考えると、これから東京国税局と朝日新聞は仲が良くなり過ぎるんじゃないか。場合によっては総理府の首相官邸のように、気がついたら2つの会社が一緒になって、地下通路でも造ったらたまったもんじゃないというような、ブラックジョークが出てくるんです。
  だけど、正確に言うと、国税局の容積が大きくて、ちょっとおさまり切らなかった。それは、仕方がないから、中央区には有名な助役、吉田という人がいるんですが、「泣け」と言ったら「泣く」という。これはちょっと話し過ぎたけど。(笑)それでおさまったんです。
  それから、気象庁。これはわからなかった。そうしたら、これは財務省の、今、国有財産局のどこかの課長になった、当時、東京財務局の国有財産の第1部長だった有能な人が思いついた。あの人がいなきゃ情報の開示も何もできなかった人です。ある時、「伊藤さん、見つけました」と言う。「どこだ」と言ったら、森トラが買った農林年金会館、パストラルの横に港区の小学校がある。その小学校を敷地にすることにした。これもぎりぎりの設計なんです。だから、国税局も気象庁も、涙ぐましい都市計画上、建築設計上の努力を前提として、動かした。
  何でその小学校を見つけたかと言ったら、「伊藤さん、これは企業秘密です」と言うんです。相当いろいろ、プロ同士でやりとりがあったんです。国有地と国有地の移転なら話はわかります。例えば、海上保安庁の水路部へ東京国税局が行くのはわかる。だけど、気象庁のように国有地にあった建物が区役所の小学校へ行く。途中に何か別の解釈が必要です。最終的に、区役所の小学校用地は、区有地から国有地にならなければならないわけです。区有地を国有地にするための1つのステップが必要なんです。これは何かをやった。これも僕は知っているんですけど、言いません。
(図30)
  その他に、札幌、名古屋でもいろいろ努力をしました。

 

5.売却収入

 

(図31)
  売却収入の話です。要するに、1兆5000億円と言いましたけど、積み上げたら1兆7000億円になりました。
  庁舎は6200億、宿舎について1兆1000億、合計1兆7200億円になった。ただ、そのうち1兆7000億円全部が国庫に入るのではなくて、6600億円は建物に必要。建物を造り直すということです。だから、手に残るのは1兆600億だというんですが、しかし不動産市場を活性化するという点では、倍に考えた方がいい。1兆7000億円を売って、おまけに次が6000億円の建物発注をしなければいけないわけです。不動産市場のお金の流れからいうと、1兆7000億の不動産のお金の流れがあると同時に、次に約6600億の建物のお金の受け渡しがある。そうすると、不動産市場の中での金融の流れが2兆3000億円になる。わかりますか。2兆3000億円の景気刺激効果がある。2兆3000億円というのは結構大きいんです。これは非常に大事な話です。ですから、1兆5000億円の土地を売れということをやっているんだけど、気がついたら大体2兆3000億円の、不動産市場あるいは土建市場での景気刺激効果を、この国有財産の整理は生み出したというわけです。
(図32)
  これは先程お話したが、気象庁、虎ノ門、大手町、国税局、海洋情報部の移転、処分の図です。
  若松町の統計局は、財務省の建て替えをやりますから、そこへ入れます。若松町の統計局と人事・恩給局は棚ぼたなんです。若松町からもう1回霞が関へ入れてやるよというんですから、ありがたいことです。
(図32)
  横浜も同じようなことをやりました。これは庁舎の合同です。合併で、横浜の税関、新港のところにある港湾の合同庁舎と税関のところをまとめて、新しい庁舎を造って、そこへ全部入れた。これで200億〜300億円儲けが出るんです。

 

6.処分方法

 

(図33)
  平成20年の3月に報告書では処分の仕方をやりました。これも役所にとっては大変大事な話です。これをきちんと決めておかないと、任意の随契をやったのだろうと新聞にたたかれますから、処分方針を我々有識者会議が定めた。これにのっとってきちんとやるんだと、なるわけです。これは役人にとって非常に重要な仕事です。

 

7.霞が関

 

(図34)
  霞が関は、小泉総理、安倍総理、中川幹事長、福田総理、それから、細かく言うと額賀財務大臣、全部かかわっている政治的な臭いプンプンのところです。
  初め、小泉総理の時には、先程言ったように、いよいよとなったら霞が関も処分しなければいけないかというので僕は腹案を持っていたんですけど、安倍総理になったちょうど平成18年頃に、国交省は景観法をつくりました。日本の街、特に東京や大阪は、汚い、ごみためのような街ではなくて、もっときれいにして、品格のある街にしろということで、平成18年、景観法ができた。安倍総理も中川さんも頭が良いので、霞が関はやはり各国からの首相や外交官が来るところとして、ザッツ・トウキョウ、これぞ東京という品格のあるまちづくりをしたらどうかという話がありまして、その答えで、同時に僕の腹案はなくなって、霞が関は売らないということにしました。
  品格のあるという話で何をやったか。今までは処分する話でしたから、全部、公認会計士とか不動産鑑定士の委員とやっていましたが、霞が関については、やはりもう少しいいまちづくりということで、それに従う専門家を選ぼうということから、交通と、土地利用と、造園と、アーバンデザイン、4人の専門家を雇って、有識者会議の下にワーキンググループをつくりました。そのワーキンググループで、3カ月ぐらい必死になって勉強しました。
  その必死になってやっている最中、今年の初めから突然様子が変わってきました。サミットがあったでしょう。CO2削減、低炭素社会という話があった。それで福田政権は物凄く低炭素社会の話で、今年前半は、日本中が低炭素社会へ向かうようになった。
  低炭素社会の中で、考えてみたら霞が関は一体どうするんだという話になった。これも面白いことに、低炭素社会と福田さんが言ったのを受けて、ごつい顔をした熊本選出の土建屋の親父みたいな野田たけしという人と、塩崎恭久、通産OGの川口順子、それと、大蔵省のOBで頭のいい人、この4人が中心になって、低炭素化社会に対する自民党の基本方針をつくるという委員会ができたのです。僕たちが作業をしていた委員会がありながら、片一方でこういう委員会がありました。その時は額賀さんが財務大臣だったのです。
  よくわからなくて、ここは非常にデリケートな表現をしますけれども、牧野さんの後に、理財局長に勝という、勝海舟みたいな雰囲気の、今は官房長になった人がいる。彼は何も言わない男。何も言わないけど、低炭素社会ということに対して霞が関が黙っているのはおかしいという雰囲気を、僕に謎かけするんです。「美しい霞が関だけでいいんですか。低炭素社会ということも頭に入れながら次を考えた方がいい」。はっきり言わない。腹芸です。日本人の以心伝心というのはこういう感じ。僕は仕方がないのでメモをして、当時の額賀さんのところに行って、霞が関は景観と一緒に低炭素もやりましょうと言った。そうしたら、額賀さんが、「これはいいぞ」なった。そうしているうちに、低炭素の話が閣議にも上がり、僕はたまたま川口順子と知り合いだったので、自民党のところで低炭素でいろいろわめいていたら「伊藤、来い」というので、話をした。他の話題で行った最後に、「霞が関も低炭素だよ」と言ったら、「そうだ」と言う。
  そこで1つ面白い話がある。霞が関がそうだと言うなら、自民党の建物も低炭素化した方がいいよと僕は言ったんです。外壁に太陽光発電の薄いフィルムを巻け、とかです。あんなみっともない建物なら、少しぐらいみっともなくなって構わないからと言ったのです。そうしたら、「面白いな。それをやるか」と言う。「おれは建築屋だから、図面を持ってきてくれたら、アドバイスするよ」と言ったら、その後、電話が来まして、「伊藤さん、前に自民党は革マルか何かに襲われた」と言うんです。確かに。隣の中華料理店、南甫園が被害を受けたんです。そのことがあって、図面がどこかから漏れると大変だから、自民党の事務方が出してくれないと言う。仕方がない。今も待っているんですけどね。
  とにかく、自民党も低炭素社会をやる。当然、霞が関もやる。低炭素社会と景観と両方で霞が関は格好をつけろということで、いつの間にか国有財産処分の話から切り離された。ですから、今、霞が関は全然別の動きになっている。
(図35)
  霞が関は約500%の容積率で建ぺい率50%です。大体そうなっている。
  しかし、ここで先程の話ですが、重要なことがあります。霞が関を計画すると言った時に、庁舎や宿舎の時も司法と行政は協力してくれました。最高裁の事務総長か事務局長か偉い人が来て、裁判官の戸建ての宿舎も合同庁舎化してアパートにしてやりましょうとか、司法の方はいろいろ進言してくれたんです。僕たちもそれで随分まとめることができたんですが、立法は駄目ですね。
  立法は、本当に腹が立ちます。「おまえらが言ってくる筋合いはない。おまえらは行政の出先ではないか。伊藤が何とか言っているけれども、それは立法府に対する権限の侵害」なんて言う。「それならどうするんですか」と言っても、立法府は低炭素化についても何の対策もとっていないんです。立法府だっていろいろな、事務総長とか職員宿舎がある。これらの施設を整理したって一向に差し支えないんですけど、それも俺たちが決めると言って、決めないんです。それを頑張るのは、ここからは言わないですけれども、議員です。議員でも、何か権限を握ると、とんでもないことを考える。僕はこれは議事録に入れてもらいたい。ちゃんと立法府も協力するなら、我々にちゃんと情報をくれ、或いはどういう提案をするか言ってくれと言っても全然来ない。頭に来ています。
(図36)
  「霞が関低炭素社会の実現」というのは、財政諮問会議の2008年の基本方針に確か入ったはずです。「建替え等による省エネルギー性能の向上・長寿命化」他、書いてあります。
(図37)
  これは政治家にわかりやすくした、霞が関をデザインするときの4つの目標です。
  1番目、「世界で最も優れた省CO2型の官庁街」。
  2番目、「国民から信頼される安全・安心の官庁街」。これは災害と犯罪です。ヨーロッパへ行くと、セキュリティが物凄いでしょう。あのようなセキュリティではなくて、僕はもっと市民が省庁に入って、いろいろなところで、例えばデータを見られるとか美術館へ行けるとかしながら、セキュリティがソフトに組み立てられているというイメージです。そういう技術は、日本人は絶対できるはずです。ヨーロッパ型とかアメリカ型のイエスかノーではないセキュリティを考えるということ。これは非常に面白い課題です。
  3番目は、美しい環境。
  4番目は難しいんです。「親しみやすく、開かれた官庁街」は、デザイン的にどうするのか。口では言うけど建築屋にはこんなのはできないです。でも、一応4つの目標です。
(図38)
  霞が関の将来像の「7つの原則」です。「低炭素化の徹底」と「危機管理能力の強化」と「効率性・生産性の向上」。建物も効率よく、会議室を空きをつくらないで使おうとかということです。
  それから、「通り・スカイラインを意識した景観整備」。道路を重視した景観整備です。
  「緑と水の活用」。水と書いたのは、国会議事堂の敷地の中の、国会を背にして右手前のところまで、東京都の下水道局が再生水を持ってきているんです。そこからいつでも流せるようにしている。だから、東京都の下水道局長や国交省の下水道部長から、あの水をここまで持ってきたんだから、何とか使ってくれよと言っているんです。それを使う方策を考えようというんですが、これもまた難しい話がある。あの水を、例えば国会議事堂から何とか通りを堰のようにして、農水省の方へ水を流します。通産省へ流したり、国交省の前に流す。その水はどこへ行くかというと、どうしてもお堀に入ってしまいます。あのお堀の真っ黄色な水、死んだような水、あれはもっと水が入れば流れていいのではないかと思いますが、中水道の塩素濃度と、お堀のどぶどろな水の塩素濃度の違いがあるから、環境庁の方では入れてはいけないと言っている。難しいんです。ですが、僕はあの水を何とか使いたいと思っているんです。それで7つの原則に入れたんです。
  それから、「歴史的・文化的価値の保全と再生」と「親近性・開放性の向上 『立ち止まり、休息できるスペース』」。これは、財務省の建物の交差点は、1つの角は通産省、もう1つは外務省、もう1つは農水省がある。財務省、通産省、通産省の北に農水省、財務省の北に外務省とありますが、あの交差点の真ん中に広場をつくる。建物を半円形にして、広場にして、農水省の建て替えの時に、その広場で朝市をやったらどうかと思っている。農水省の地下へ行くと安いものを売っているんです。通産だって、地下へ行くと、安い飯を売っている。みんな隠し財産を持っているんです。(笑)農水省のところに広場を造って、そこで隠し財産で朝市とか日曜市をやったら、それの方が、役所の中を査察に行くような趣味よりよっぽど楽しくなります。そういう広場を造りたいと思っているんです。
(図39)
  霞が関構想図です。図面化しました。これは何かと言うと、明治から財務省始まって以来、こういう都市計画的なアーバンデザインの図面を描いたのは我がチームだけなんです。財務省に、戦争前は営繕管財局というのがありました。そこの一部が今、営繕部へ行って、その一部が国有財産局になって、今、理財局になっている。ですから、今の理財局と営繕局というのは、物凄く仲がいいんです。国交省の中での営繕部と住宅局の仲の悪さに比べたら、(笑)財務省の理財局と国交省の営繕部は本当に仲がいい。戦争前にきっと大蔵省の建築設計の図面を描いていたのでしょう。建築の技官がいましたから。しかし、都市計画の図面を描いたというのはなかった。それを初めて描きました。我々の描いたものがちゃんと理財局の報告書の後ろに載っています。ホームページにも多分載っていると思いますから、見て下さい。
  以上で終わります。どうもご清聴ありがとうございました。(拍手)

 

 

與謝野 伊藤滋先生、ありがとうございました。

 国有財産の現況と有効利用についての情報を完全な形で開示される、非常に貴重なお話をいただきました。あわせて低炭素社会に向けての霞が関街区の将来像についても示唆深い貴重なご提言をご説明いただきました。また、有識者会議が求められているそのミッションの重さを改めまして認識させて頂き、皆様も大いに啓発を受けられたことと存じます。ありがとうございました。

 それでは、最後に、有識者会議での貴重な審議経緯と結論について、伊藤先生ご自身のおことばでリアリティある具体的事例とともに、分かり易く熱意をもって私たちにご開示されご説明頂きました伊藤滋先生に対しまして、皆様からの感謝のお気持ちをお伝え頂きたく大きな拍手をお贈り頂きたいと存じます。(拍手)ありがとうございました。これにて本日のフォーラムを締めさせて頂きます。

 


 




back