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第21回NSRI都市・環境フォーラム

『私見的都市計画』

講師:  伊藤 滋 氏   

早稲田大学特命教授

PDFはこちら → 

日付:2009年9月16日(水)
場所:ベルサール神田

                                                                            
T.現状
   (1) 都市計画の目的(快適、安全、効率、健康(環境))
   (2) その日本的な執行力(混在と矛盾の容認)
   (3) 専門家と市民と利益グループ(専門家に対する低い評価)
   (4) 宅地についての認識(建築は自由という通念)
   (5) 地主の数と宅地地権者(日本型の絶対的土地所有制)

U.提案
   (1) 建築不自由(宅地についてのみ建築許可・農地転用の禁止)
   (2) 開発許可の一般化(一定規模以下と以上について)
   (3) 最小限宅地規模(美観をそこない環境性能の悪い零細建築)
   (4) 市街地整備地域とそれ以外の地域(農山村地域では開発許可)
   (5) 市街地整備地域制(形態と用途を一体化する)
      限界集落から丸の内迄、を都市計画地域:集落地域の創設
   (6) 都市施設の都市計画決定(特に街路予定の宅地の容積率)
   (7) 執行体制(都市計画委員会と計画主事)
   (8) その他の地域・地区 
      (a)防災地域、 (b)低炭素地域(市街地建築の質的向上)、(c)高度利用地区、 (d)保全再生地区(容積移転の仕組み)
      cf.地区の種類は極力少なくする
   (9) 空地と空家(人口減少地域の宅地の転用について)
   (10)高齢化に対応する都市計画(介護施設、高齢者ホームの重視)

フリーディスカッション

 

 

與謝野 定刻でございますので、ただいまより本日の第21回目、通算で261回目のフォーラムを開催させていただきたいと存じます。
皆様におかれましては、大変お忙しい中を本フォーラムにお運びいただきまして、まことにありがとうございます。また、このフォーラムでは毎年1月と9月に早稲田大学特命教授であられる伊藤滋先生のご講演をいただいておりまして、いつも大勢の皆さんにご参加いただいております。本日もこのように大勢の皆様にお運びいただきまして、まことにありがとうございます。高い席からではございますが、厚く御礼申し上げます。
さて、今回の伊藤滋先生の演題は、ご案内のとおり「私見的都市計画」とされておられまして、先生の長年にわたるこの分野での識見の総括を念頭におかれた、本当の都市計画の考えの「導入編」とお聞きしております。新たな視点からの大変に示唆深い貴重な卓見をお聞きできるものと大変楽しみにしております。
  それでは、前置きはこれぐらいにさせていただきまして、大変にお忙しい中をお運びいただきました伊藤滋先生を、皆様からの大きな拍手でお迎えいただきたいと存じます。(拍手)

伊藤 伊藤です。相変わらずこんな調子でしゃべらせていただきます。
「私見的都市計画」といたしましたのは、今日、皆様、目次をお手元にお持ちになっていると思いますが、僕にしてはかなり書き込んであるんですね。これを見ると大体伊藤は何を言うかわかると思うんですが、結論は、今までは本当の都市計画を日本はやっていなかった。多分、これからは本当の都市計画をやるべきだ、それはどういうことかというと、専門家がもっと自信を持って都市計画を市民に説明することと、市民は放縦に土地利用の権利を振り回さない。そうしない限りは、日本で、率直にいうと都市計画は存在しない、それが私の結論なんです。それでおしまい。
  それをグタグタと書いたのがこの目次なんです。

 

T.現状

 

(図1)
  目次に沿っていきますと、皆さんは学校の教科書で都市計画は何の目的でやるかというのは十分お聞きになったと思います。学校の先生のいう都市計画の目的は、快適性と安全性と効率性、古い都市計画では健康、最近は環境になってきました。そういうことを目的にして町をつくれば絶対町はよくなるといっていたんですが、実際に都市計画を動かしていくと、ほどほどの快適、ほどほどの安全、ほどほどの効率、全部「ほどほど」がつきます。ほどほどの目的が4つ集まっても、特別にパッとした都市計画はできない。そういうことなんですね。
  それでは、何故、ほどほどなのかというと、2番目の日本的な執行力。これはどういうことかというと、都市計画というのは役人が主体になる仕事なんですね。日本の役人というのはあちこち気にする。特に地方のお役人はそうですね。そうしないと、市会議員さんとか都会議員さんに文句をいわれて、一生涯市役所や県庁から動けません。最後ひどい目に遭うので、ほどほどにやるんですね。国の役人もほどほどにやる。要するに執行力が執行力として機能しないで、都市計画という法律を運用してきた。ですから、矛盾があっても仕方がない。そんなにひどい矛盾でなかったら矛盾は認めよう。
  それから、住んでいる方が勝手な意見をいいますね。例えば、2階建ての住宅で、容積率だけちゃんと認めれば、5階建ての建物を建てたっていいじゃないか。それから、突然、小さい病院を何とか一種住専の中へつくれという。本来つくってはいけないんですけれど。そういういろんな要求が出てきます。それを絶対駄目ですといわないで、少しずつ修正しながら、容認していきますから、土地利用というのは混乱していくわけです。率直にいうと、都市計画は、90年経っているというんですけど、実際に都市計画が動き出したのは、ご存じの昭和43年、新都市計画法ですね。それから約四十何年、ずっとそういう状況で都市計画が運営されてきていた。
  そこで問題になるのは、建て主の普通の地主さん方なんですね。地主さん方は昔から、土地を手に入れればそこに家を建てるのは自由だ、何で自分の土地に家を建てちゃいけないんだという。建築自由です。これは日本の社会の通念です。自分の土地に自分の考えた建物をつくらせないなんてあり得ない。そういう通念がありますから、土地を手に入れれば相当自由に建物を建てられます。
今もそうだと思いますけど、特に30年ぐらい前に、東京や大阪にいろんな人が集まってきて、木賃住宅なんかができた時、その木賃住宅をつくる地主さんたちは、建ぺい率なんてくそ食らえなんですね。だから、敷地目いっぱいの貸し家住宅を建てて家賃を稼ぐということをやりました。これは有名な話です。
  昔よくあった話は、確認申請をとる時、区役所には、例えば建ぺい率6割にして出します。しかし、実際に現場に行って建てる時には、建ぺい率は7割とか8割とかになる。そういう話は幾らでもあったんです。これもやっぱり執行力の弱さですね。執行力の弱さと建て主さんの「まあいいじゃないか、こんなことをやったって、周りが全部やってんだから、自分1人がお縄になることはない」という共通の村社会的な概念です。こんなことがずっとやられてきた結果が今の都市なんですね。
(図2)
  一番の問題は、地主の数です。地主の数を、国土省の土地白書で毎年出しているんです。日本中の土地の地主の数は、森林も林も全部入れて、初めは3200万といっていたんですけど、今や2007年で、3900万。3900万いるんですよ。下に大都市地域の地主の数が約600万とありますが、全国の宅地所有者の地主の数となると全国で2700〜2800万いるんです。これだけの宅地を持っている人が自由に勝手に建物を建てたいといっている。そして、その土地で何らかの稼ぎをしたいというのが動いているわけです。それに対して人口が爆発してどんどん増えて大都市に集まってきた時に、有能な役人でもそれをそう厳しく食いとめるわけにいかなかったんですね。
  多分、世界中で、日本のように国土面積約37万平方キロの中で、3874万人の地主がいるという国はない。国有林も入れて1人1000平米、300坪。こんな国ないんですよ。だから、結果として建築自由にならざるを得ない。なおかつ、土地の所有者は、昭和45年を100とすると、大都市地域ではどんどん増えて、300近くなってきているんです。
  私は、都市計画の制度をつくる時に地主の数の持つすごく恐ろしい力をどれくらい認識していたのか。あんまり考えていなかったのではないか。そういうことを一等初めに申し上げたいんですね。
  これが現状です。現状を整理すると、一言でいうと、日本の都市計画をうまくいかせなかったのは地主の数です。地主が3900万人です。今1億2800万人くらいですか、土地を持っているのは2.7人に1人くらいです。
  皆さん方ここに300人お集まりだとすると、100人は土地をどこかに持っている。マンション、区分所有は別ですよ。それを前提にしていろいろ考えていきたいということです。

 

U.提案

 

(図3)
それでは、どうしたらいいか。私はここで「私見的都市計画」といったので、相当粗っぽいことを申し上げると思います。
1つは、どんどん宅地が増えていって、それを都市計画的に対応しようという時に、宅地とは何かという話。今、都心部を離れて、三多摩とか埼玉県を対象にして考えますと、一番宅地が増えるのは、農地転用で増える。農地転用というのは農業委員会が決めるわけです。農業委員会というのは、僕が学生の頃、都市計画を素朴に信じてやっていた時は、農地を守るための委員会だったんですね。農地を守って、そこで米を100%日本で自給するために質のいい農地をどういうふうにつくるかということを議論していたのが農地委員会ですね。それがいつの間にか農地委員会は宅地化の最終権限を握る行政委員会になってしまった。そこで農転を認めればそれは宅地になりますから、そこに都市計画が対応しなければならないという話が幾らでもあったわけです。昭和50年代、60年代、今から30年前です。
私は、考えました。都市計画が宅地を認めようと。農業委員会が認めるのではなくて、都市計画で宅地を認める。何故ならば、宅地になって初めて建築行為が可能なわけです。建築行為の責任を負うのは都市計画の領域です。皮肉なことをいいます。農業委員会が農転を認めても都市計画側でそれを宅地に認めなければ宅地にならないんですよ。
だから、攻守ところを変えて、我々が宅地を認定するんだと考えたわけです。それによって今までの長い流れの「農転、農転」という話題を切りかえていくことができないかということですね。そういうような社会的状況が今できつつあります。
10年くらい前までは、人口が増ふえる。増えると、郊外化が進む、郊外に住宅地をつくれと、いろいろな圧力がありました。ところが、この10年くらい前から風向きが変わってきました。コンパクトな都市づくりをやらないと、地球環境がガタガタになってしまう。コンパクトにするためには、そんなにあちこちに宅地をつくる必要はないんですよね。今まで宅地化したところをもっと高度利用する。そういうふうにすべきでしょう。そういうふうに世の中の流れが変わってきた。
ですから、一番初めに考えるのは、都市計画が宅地を認定する。宅地でない限りは絶対に建物は建てられない。ところが、今の建築基準法では、多分、無指定地に建物は建てられますね。例えば山林原野は無指定地です。そこに一応建ぺい率何%、どのくらいの建物を建てていいと書いてある。あれをやめるんです。
国立公園の中のホテルであっても、これは宅地にする。あるいは造林の、林道のそばの、昔でいう飯場。これも宅地にしない限りは建物を建てさせない。そういう基本姿勢をまずきちっと立ててみたらどうかなと思うんです。
都市計画区域といろいろいっていますけど、そこの中で本当に勝負するのは宅地です。農地は農業委員会がちゃんとやればいい。そうすると、宅地認定は誰がやるんだといった時に、ここの目次に書いてありますけど、「執行体制で都市計画委員会と計画主事」。戦争前には、農地委員会に対応して、実は都市計画委員会あったんですね。戦後なくなりました。もう一回行政委員会として都市計画委員会をつくる。そこには大体7人くらいの都市計画委員を任命して、7人の合議で宅地の転用も全部決めてしまう。その時に事務的処理をやる有能な技術者として計画主事を置く。僕の頭の中はこういうイメージなんです。
行政委員会で都市計画委員会をつくって、そこが、先程いった宅地許可の権限を持つ。そういう形に1つしていいのではないかなというのが、建築不自由のひとつの出発点です。
2番目、「開発許可の一般化」です。僕は当時学生でよくわからなかったんですが、昭和43年頃に、先輩の都市計画に関係した国の人たちに聞きますと、実は都市計画はかなり裁量権を持っていた。イギリス型のように開発許可をもっと思い切ってやらなければいけないんじゃないかという議論があったようです。
しかし、その流れは、都市計画の流れではなかなかうまくいかなかったようで、宅地開発の宅地整備の法で、開発指導要綱なんかに示される一定の裁量権を持って開発許可が進められるようになったんです。都市計画では、開発許可というのは、現状でも、あります。やっていますが、一般的な市街地ではほとんどやれていない。
皆さんよくご存じの「事前確定性」という言葉があります。「事前確定性」なんていやに難しいことをいうな、と思っていましたが、要するに実は市役所の皆さんや都庁の皆さんは全部マニュアルを持っていて、それでいろいろ決まっている。いろんな皆さんが再開発をやりたいとか宅地開発をやりたいというと、お役所の人はぶ厚いマニュアルを全部ひもといて、そこの何ページの何条に計算式があって、これに当てはめると、あなたの建物はこれ以上の容積出せませんとか、都市計画公園の中ではこんな建物は建てられませんと、ということになるわけです。確かにそれは近代化されていいように思いますけど、全ての都市計画をマニュアルで本当にやっていいのか。これが都市計画の特色なんです。例えば製品をつくる時の品質管理などは、マニュアルでキチッとやればいいわけですね。
ちょっと横にそれますけど、最近の若い人は全部マニュアルなれしているから、突然起こった不慮の事故に対応できない。マニュアルに書いてありません、そういう話があるようです。
都市計画というのは、これだけ微妙な気象条件と微妙な地形条件と微妙な土地の区分所有の集合ですから、事前確定性のマニュアルで全部やるなんてことは大体おかしいんですよ。だから、どうしてもそこに専門家としての裁量権を入れていかなければいけない。レジメには「開発許可」と書いてありますけど、これはいい加減で、もしかすると、僕の今のいい方の筋を通せば、開発許可ではなくて、「計画許可」という言葉に変えてもいいかもしれませんね。もちろん一定の幅のマニュアルがあるとしても、専門的な見地で、計画主事の責任で、計画許可をやるということであれば、例えば青森は青森らしい建物の建て方、鹿児島は鹿児島らしい建物の建て方、道路のつくり方、というのがあっていいわけですね。
もう1つ、開発許可の一般化の中で、「一定規模以下と以上について」考えたいと思います。これはどういうことか。今日はそれを僕は非常にいいたかったんですね。
建築敷地というものについてですが、日本は、素朴にいうと、30平米の敷地でも建物は建てられるんですよ。極論すると10平米、3メーター角の敷地でも建物を建てられる。そういう国なんです。敷地規模の最低限というのはないんですよ。
これも昔話ですけど、昭和45年ぐらいでしたか、私がまだ若い学校の教員だった時に、中央公論に日本の現代の若い建築家12名選べというのを頼まれたことがありました。僕も若かったから、年上で兄貴分の建築家の名前を挙げました。大谷幸夫とか、槇文彦、それから同年配でおもしろいという人を入れました。どういう人かというと、尾島俊雄。当時、助教授になりたてのほやほやだったかな。結構先見の明があったと思う。もう1人は三沢さんを選んだ。日本の名建築家12名。三沢さんはのりづけベニヤで建物をつくっていた時に、これはおもしろいぞと思って選びました。三沢さんやり過ぎてつぶれちゃった。でも、これはいいですよね。技術革新のチャンピオンです。最後に、東孝光、阪大の教授やった人です。年の頃は、75ぐらいになったかな。
何で選んだか。東孝光が、東京オリンピックで246ができて青山通りが広がった時に、御苑前のどこかの角地に最小限住宅というのをつくったんです。三角形で4階建てぐらい。その敷地がたしか50平米ぐらいじゃなかったかな。僕現場へ行きました。階段だらけで、居間が7平米ぐらい。2階に上がると2畳ぐらい。3階に上がるとやっぱり2畳ぐらい。その頃から、皆さんは敷地規模なんてくそ食らえだったんですね。敷地規模について制限がない国は日本ぐらいではないですか。
もちろん僕はワアワアいいました。今から10年ぐらい前に都計審で、最低限か最小限の敷地規模を決めなければ劣等国だぞといったら、当時の役人は頭がいいので、「先生、先生、最低限敷地規模を決めました」とやってきました。「何だ」といったら、第一種住居専用地域で最低限敷地規模が200平米という敷地規模制限を設けたというんですが、それはどういうことかというと、設けることができるんです。設けることができるというのは、極めて少数のケースについてはできるという話。だから、「設けることができる」では全く意味がないんですね。強制力がない。そんな最低限敷地規模なんです。
僕が学生の頃は住宅というのは100坪といっていた。300平米。それが戸建て住宅をつくる敷地の標準坪数でした。今は100平米でも結構皆さんちゃんとした住宅をつくられますね。50平米、60平米という建物もいっぱい建っています。一種住居専用地域でもそういう建物が建つんですよ。それは何故か。そこで必ず出てくるのは相続税です。相続税で敷地分割される。100坪を3人の息子で割るとすれば100平米になるから仕方ないではないか。僕はここが一番の問題だと思います。だから、こういう提案をしたんです。相続税で敷地分割を認める、300平米を100平米にしていい。しかし、そこは一種住居専用地域で、仮に最小限敷地規模が40坪だと140平米ですね。140平米とするとどうするだろう。相続税の対象は3分の1だけど、建築許可は140平米以上しか建てられないんだから、頭を使え。2戸1にしろ、あるいは3戸1にしろ。そうすれば建つんです。
だから、相続税で敷地が細分化されて困る、困ると泣き寝入りするのに対して、先程の建設省の役人が、そうだな、どうにかしてやらなければいけないなと思う一方で、大蔵省の主税局の役人のいうことについて、わかったとなると、大蔵省の主税局の役人は、あいつは話がわかる、いいやつだとなる。そんなことでは駄目なんです。いい町をつくる筋を立てる時は、そういう主税局の相続税の話なんていうのは、きかない。民間で相続をやるやつは頭使って考えろということです。
都市計画の方では、ここは最小限敷地規模が140平米になっているんだから、敷地は3分割されても、建物はそこに1棟建ての3戸1をつくれ。場合によっては3人の男で3戸1をつくって、1人が借金で困っているなら3戸1の1戸を売ればいい。そういう話をしないと駄目なんです。
それぐらいのことを役人は市民にはっきりというべきなんですね。市民は、率直にいって都市計画の「と」の字も知りません。ここにお集まりの方は、都市計画というと相当立派な話で、世の中の普通の人もちゃんと理解してくれると思っているかもしれませんが、とんでもない話です。都市計画なんて全然眼中になくて、たまたま家を新築、壊すといった時、設計事務所が来て、説明を聞くと、ここは都市計画でいうと第一種中高層住居専用地域ですからなんていわれて、途端に、「え、そんなの、あるの」となるんですから。
僕たちは思わぬ間違いをしていた。都市計画というのはほとんどの市民は知らないんです。知らない中で、それぞれの市民が勝手な建築行為をすることを役所の役人が、ほどほどの矛盾と混在を認めながらずっとやってきたからこうなった。だから、もう一回ここで専門家は、俺のつくりたい町はこうなんだ、そういう町をつくるために執行をするんだ、市民の皆さん、理解しろと、やり方をはっきりすべきではないか。これが、開発許可の一般化ということです。ここで一定規模以下、例えば、一種住居専用地域では最低限敷地規模を40坪にすると140平米、それ以下は建築行為を認めない。
話が少し飛びます。これは我々のマーケットの中の話です。先程、都市計画委員会と計画主事という話をしました。これについて、僕の頭の中の理想形としてはこうなっています。計画主事は国家試験で選びます。弁護士ほどの権力はないけれど、弁護士の状況を思って下さい。計画主事は地方公務員です。国家公務員ではありません。定年までその役所にいろというのではなくて、契約で仕事をします。
例えば、武蔵野市都市計画委員会が、黒川洸先生を都市計画主事として雇う。市長は黒川先生と大体6年ぐらいの契約をする。その間は、市民の反対、市会議員の反対をはねつけても、6年は期間が保証されますから、首は飛ばないんです。6年間は勤めを保証されている。そのかわり計画主事は計画委員会の7人の人たちにちゃんと説明ができるようにしている。それが重要なんです。7人の計画委員会は市長が選ぶんです。こういうのはちょっとアメリカ的なんですけど。
6年経って、都市計画委員にとんでもないやつが来て、黒川先生のやり方は駄目だといった時どうするかといいますと、黒川先生やめます。やめたら、民間で計画事務所をつくればいいんです。何故ならば、計画を許可するための素材というのは、通常の一級建築士事務所でつくれるものではないわけですね。ちゃんと市民の意向を聞きながら、法律の変化を頭に入れて、落としどころを心得ながら、そういう品物をつくって、計画主事のところへ持っていく。そういうことを今でもやっている事務所がありますけどね・・・。
そういう能力を持っている人が、例えば黒川先生が武蔵野市の市役所をやめて、黒川計画事務所をつくって、そこで、今度は杉並区の都市計画委員会に出さなければいけない住宅団地設計を頼まれたとします。黒川先生は、よし、やってやるとなります。ちゃんと杉並区の計画主事とネゴシエーションしながら、それをつくっていく。
ですから、僕の頭の中には、都市計画というのは役人が一方的に判断するのではなくて、或いは日建設計が一方的に民間でお願いしますというのではなくて、それを裁量する人が必要なんです。ちょうど弁護士と同じように、検事の経験もやりながら弁護士の経験もやる。場合によっては、弁護士の経験からまた検事の経験もやる。 そういうコントロールする側と提案をする側の2つのマーケットを行ったり来たりする人が多くなった時に、多分都市計画委員会の質も上がって、日本の町もよくなるだろうというのが僕の理想なんですね。
黒川先生は武蔵野市に雇われる時は、年俸3000万円ぐらいで雇われるわけです。黒川計画事務所をつくって、もしかすると、4000万円ぐらいの仕事をもらえるかもしれない。何でそういうことをいっているかといいますと、都市計画というのはまさに今ここ数年来、建築もそうですけれども、どん底、ジリ貧の窮みです。何故かといいますと、まちづくりが全部マニュアル化されて、マニュアル化されたものを役所の役人が解釈して、それで仕事を進めるということをやっているので、そんなに都市計画の経験のない都市計画課に突然総務課から移れといわれて移って2年ぐらい経った人が、頭がよければ、マニュアルぐらいわかるようになります。でも、それで処理すればよいなら都市計画課って要らないんですよ。そういう問題があるわけです。
私は都市計画で飯を食っていますから、今の話は自分たちのマーケットを広げるというわけではありませんけど、やはりもう一度専門家としての町に対する見方を末広く市民に知らしめる、そういう体制にしたい。そうなればおのずから都市計画家の数も増えるし、仕事の内容も多彩になってくる。
この制度が、もしできますと、僕の提案では都市計画の対象は全ての市町村に及びますから、まずは、最小限1市に1つの都市計画委員会をつくって、1人の都市計画主事ができます。そうすると、1400〜1500人の専門家が必要になります。実際本当にそれぐらい都市計画家がいるかというと、残念ながら、まだそれほどいないんですよ。僕はこれを話しながら、是非黒川先生に都市計画家協会として、「私見的伊藤都市計画」が現実化した時に備えて、本当に深みのある前向きな都市計画の専門家を養成しておいてもらいたいと思う次第です。
それと、もう1つ、細かいことに少しずつ入っていきます。これからの都市計画で、これもよく今、現在の都市局で議論されておりますけど、幾つかの線引きがありますね。線引きというのは、都市計画は3種類ある。ひとつは、都市計画区域であって指定なし、用途にしない。単に都市計画区域だけ。それから、都市計画区域であって、線引きなしの用途地域だけ、これが2番目ですね。3番目、都市計画区域であって、市街化区域と市街化調整区域を分けている。この3種類が、都市計画区域にはあるんです。
この頃現場では都市計画区域の線引きについて話題があります。それは何かというと、国交省の都市計画の某審議官が発表した中にあります。香川県は真っ平らで、ほとんどが水田地域です。県境に近くなって山岳になるんですが、そこに農村集落がバラバラとあるわけです。人口がかなり稠密に入っているわけです。 そこで、昭和43年、市街化区域線引きしました。高松市や坂出市です。そして市街化調整区域にしましたが、集落の分布が、市街化調整区域の中も市街化区域の中もほとんど変わらないようなところを線引きしたんですよ。こういう地方都市は、香川県だけではなくて、どこにでもあるんですよ。埼玉県だってそういうところはいっぱいあります。無理して引っ張っている。
そうすると、香川県で起きたのは、これは山形県でも昔からあった話ですが、住宅地をつくるといった時に、都市計画区域の外側につくっちゃうんです。そこも田んぼなんです。農転すれば、そこは宅地になりますから、宅地分譲がバラバラとされる。調整区域だと役人がおっかない顔をするから、そこは避けるけど、調整区域の外側に未指定のところがあります、そこに宅地が増える。有名な話はショッピングセンターができますね。ショッピングセンターというのは悪いやつで、そういうところばかり狙うんですよ。
それにも先程いった農転が関与しているんです。農転の方は、コンパクトな町とか、そんなことは考えていません。地主の利益を最高にするということでやります。結局、香川県では、市街化区域の人口は増えない、市街化調整区域の人口もほどほどだ。その代わり、その外側の無指定のところの人口はどんどん増えるというので、結局、市街化区域と調整区域と未指定を取っ外しちゃったというんです。取っ外した後どうなるかということです。
現状では、開発許可はそんなに効力を持っていませんから、取り外してしまえば、農転をしたところに小さい団地がバラバラと建つ。香川県ですと、自動車がどんどん使えますから、高松や丸亀の町から30分ぐらいで、自分の車で行けるちゃんとした住宅があれば非常にいいんですねよ。ですから、田んぼの中の、あんまり見ばえはよくないけど、小さい戸建て住宅がたくさん建つ。小さいけど、楽しい我が家なんです。そういうことがあるので、私はこういうふうに考えました。
(図4)
これは素朴につくったとりあえずの案です。市町村合併した場所をイメージしています。これが旧D市、人口が大体10万で、出入り人口が4万人ぐらいと思ってください。それにA町とB町とC市、これが合併して合併市になりました。A町とB町は人口1万人だから、ここに用途地域を一応塗ってあります。この中に3000人ぐらい入っています。
ここがC町です。境界線が書いてあるんだけど、よくわからないでしょう。C町は用途地域が塗ってあります。D市は大きいですから、市街化区域と市街化調整区域を一応分けてあります。C市は人口が小さいですから、市街化区域にしていない。用途指定だけしてある。こういうモデルを考えました。 どうなるかということですね。ここの市街化調整区域の農地は普通の農地と違っていますから、一応ここは都市型農業地域にします。市街化調整区域の農地は農転禁止します。しかし、農業施設や、どうしようもなくて転用せざるを得ないところがあるんですよ。フレームをつくってとか、集荷場をつくってとか、そういうのはありますよね。そういう時は、場合によっては極めて厳しい開発許可をする。市街化区域の中でも大規模開発区域は全部開発許可にしてしまう。市街化区域の中でも確認申請だけで認めるということはさせない。いってみると、再開発促進地区、あれも一種の計画許可ですね。ですが、あれだけではなくて、ちょっとした規模の大きいものは全部開発許可の対象にしてしまう。市街化調整区域の中で転用するのは、農業経営上必要なものだけで、その場合は開発許可する。
都市計画区域以外の農地があります。水田と思ってください。この農地は農業地域とあります。農業地域では開発は不可。絶対させない。農業委員会が何といおうと、都市計画委員会は宅地に認めない。何故ならば、今の時代、土地は余っているんですね。土地は余って、建物は余って、全部余っているんですよ。余っているところで、個々の不動産業者、宅地開発業者、農業地主の利益目的のために、余り質のよくない戸建て住宅地を地方都市でつくるということは、それ自体許すべきではない。そういう話です。これは建てさせません。
山間部のふもとの道路が集まってきているところは、防災地域です。防災地域は何か。皆さんは防とつくと防火地域を思い出しますね。防火地域、準防火地域。しかし、伊勢湾台風の後、基準法で災害危険区域というのをつくったんです。ゼロメーターとか、ズブズブの水田のところの建築物は、1階はコンクリートにしろということを定める災害危険区域ですが、当時災害危険区域に指定されたら、誰も土地を買いに来る人はいないというので、物すごく評判が悪かった。伊勢湾台風の後、ほとんど指定されていないのではないかな。
ですが、最近の都市周りで何が起きているかというと、火災もさることながら、地方では水害、急傾斜地がけ崩れ、土砂災害です。そうすると、ここが山でしょう。山間部と書いてあります。この間の老人ホームに土石流が流れて、お年寄りが十何人死んだという山口県の事故がありましたね。ここはちょうどそんなところなんです。ここのところは、まさに土石流対策、あるいは大都市では、横須賀でいえば急傾斜地対策。横浜でも、急傾斜地対策。そういうところは防災地域を指定しなさいということです。そこは原則として耐震化をやる。コンクリートの建物は評判悪いんですが、コンクリートの建物のために救われた事例もあります。長崎水害です。今から30年ぐらい前、長崎市に大水害が起きた。その時に急傾斜地で木造の建物はもろに押しつぶされたんですけれども、急傾斜地の長崎の山腹に建っていたコンクリートのマンションは、コンクリートの堤防の役目をして土石を食いとめた。そういう意味もあるので、急傾斜地のところは防災地域を選ぶ。用途地域の話は後でしましょう。
もう1つ、バイパスですが、これは通常でいうと、ショッピングセンターができます。でも、僕はショッピングセンターをつくる気はさらさらない。農産物の即売所とか展示センター、そういうものをつくるならオーケーです。
それから、山合いの街道がありますが、そこに沿って集落があります。集落も宅地ですから、用途地域の一分類としての集落地をつくる。集落地域としてここを指定します。この集落地域は宅地ですから、ここの中での開発は許します。ここは確認でやってもいい。その裏山、ここは山林です。里山地域。水田は絶対つぶさないけど、里山の一部分は傾斜が緩やかで、地形がちゃんとしっかりしているところ、盛り土でなくて、切り土のところ、里山のところは開発許可をしよう。開発許可あり。工場、住宅団地、ショッピングセンターは集落地域の後ろの里山につくれ。工場団地はこの頃里山につくる例が多くなりましたね。東海道線沿線。例えば、掛川の後ろは、里山を非常にうまく工業団地にして評判がいい。だから、里山地域は一部分開発許可をするようになった。
それから、山間部でも宅地でない限りは、建物を建てさせない。小さくても山間部でいいかげんなものを建てますと、物すごく景色を壊します。だから、ここでは規模が小さくても山間部であるという条件で全部開発許可、先程の言葉で計画許可にします。
そして、水田から山間部までの地域のところを一応田園計画地域として、他を都市計画地域にします。何でここを田園計画地域と都市計画地域にしたかといいますと、これは多分ここにお集まりの方はご存じないと思いますけど、実は田園計画地域は農業土木と農業経済の人に完璧にやらせていいと僕は思っているからです。農業土木の連中は、相当いい加減なお金を使っているといっているんですけど、そのいい加減なお金で水路とか水田の圃場整備をやっています。ほどほどの金で集落整備のいろいろな絵をかいたり部分的な仕事をしています。例えば、農村公園なんてありますね。これは公園ですけど、僕からいえば農村公園なんておかしい、あれは公園だから、公園でいいではないかというんですけど、農林省の金でやっているから農村公園。
それから、山村や農業の構造改善センターなんていうのもありますが、いってみれば、都市計画でいうコミュニティーセンターです。相当立派なものをつくっている。あと有名なのは集落排水施設。ですから、なし崩し的に実は都市計画区域の外で農水省の農業土木や農業経済の連中が、余り表へ出ないけど、かなりの金を入れて、集落地域の都市計画事業っぽいことをやっているんです。相当腕を上げていますから、それならば、都市計画の中で田園地域の集落地域、田園計画地域の中は農業土木で思い切ってやってもいいのではないか。そういう話がある。
話を整理します。この狙いは何かというと、市街化区域、市街化調整区域で、市街化の実態をコントロールするのではなくて、全部計画許可でコントロールする。計画許可は今までの再開発での市街化区域の中の工場転用とか、そういうものより、数は増ふえます。僕にいわせれば、山間部の1つの建物によって、その景色が全部壊れる、あるいは生きるというところも、これも小さく綿密に手を入れる。これはどういう例があるかというと、実は国立公園です。国立公園の特別地区では、そこの宿屋や店は、環境省の自然保護局が全部計画指導をやっている。だから、そうひどいものはないんです。それと似たようなことをこっちでやる。計画許可にします。
こんなような形で、地方都市の新しい都市計画というのを考えてみたらどうかなというのが、4番目、「市街地整備地域とそれ以外の地域」ですね。 
次、僕はこれまで「開発許可」を「計画許可」といってきました。その分野をうんと大きくするということをいってきました。それでは、市街化区域の中のこれまでの用途地域はどのようにしたらいいかということです。ここでもまさに私見的都市計画というのを考えてみたいと思います。今、僕は「防災地域」の話をしましたね。これは通常は「防火地域」です。防火地域制です。しかし、防火地域だけでなくて、水害や土石流など、そういうのも広く入れて防災地域にする。これは何がみそかというと、危ないところには耐火建築物をもっともっと広めていく。防火にも役に立つし、土石流にも役に立つ。低炭素地域、高度利用地区、保全再生地域、防災地域はその他の地域地区で、多分4つは地域制に入ると思います。今は僕はここだけ説明します。
次は、「市街地整備地域制」についてです。今、日本の地域制は、12ですね。「一種住専」、「二種住専」、「第一種中高層専用」、「第二種中高層専用」、「第一種住居」、「第二種住居」、「準住居」、「準工」、「工業」、「商業」、「近隣商業」、「工専」の12種類。あの地域制は20年ぐらい前にできた。あの時僕は都市計画地方審議会でいろいろやっていて12になってしまった。率直にいって、12もできたってこんなの誰がわかるか。あんな地域制を出している限りは市民はもうアレルギーで見たくのない。多分、高校の先生、中学校の先生も、社会科で都市計画を教えるといっても、12地域だったら何が何だかわからないですよ。
この地域制はいろいろ問題があるんです。第一種住専と第二種住専、第一種中高層住専と第二種中高層住専、第一種住居と第二種住居、準住居。要するに、住居系が7つある。近隣商業、商業地域、準工、工業地域、工業専用、そして無指定も含めると13なんですね。
それでは、12種類に地域制を指定して、建築確認でその12種類の用途地域の中で何やっているか。実は、基準法上の用途制限の別表というのがあるんです。これは知る人は知るですね。用途制限の別表を12種類に分類して、これでこの市街地は第二種住居にするとか、この市街地は準工にするとかしているんです。この用途制限の内容をよく見ますと、物すごくナンセンス、時代遅れなんですよ。国がこういう細かい用途制限を使って定める都市計画法の用途地域でやっていいかどうかといいうことが大問題なんです。
今、地区計画については、とんでもない混乱の極致ですが、それはちょっと別にして、大まかにしますと、国が定める用途地域は物凄く単純明快にして、まさに中学校の社会科の先生もわかるようにする。だから、都市計画を中学校の生徒にも教えることができるぐらいの大きい区分けする。現行の例えば準住居というのは、そもそもバイパスなどの自動車交通の多いところで、ガソリンスタンドをつくったり、交通騒音を遮へいできるようなマンションをつくるようなところだったんですね。それは、今から25年ぐらい前の問題です。そういう理由で準住居をつくって、準住居の用途指定が一体どのくらいあるかということを、全国でとると、用途地域の構成比0.27%です。たった0.27%、これを用途地域として入れていいか。これでいきますと、国全体の用途地域の構成比を見ると、準住居は1.48%になる。第一種住専、戸建て住宅、が約19%。次に多いのは第一種中高層住専で、14%。一番多いのは第一種住居で23%。それから、準工が11%。ですから、この地域制の中で、本当に僕たちがまじめに考えなければいけない地域はどこかということになります。12種類に分類された中では、例えば、戸建て住宅地を一体どうするか。第二種低層住居専用地域はわずか0.84ですから、第一種低層住居専用地域と一くくりにしていいんです。これで約20%。それから、中高層のマンション市街地は14%です。
もっと大問題は住居地域なんです。住居地域に対して都市計画がどれぐらいの積極的提案をやっているかというと、ほとんどない。荒川や大田とか葛飾には、そういうところはいっぱいあるんですが、何もやってない。準工もそうです。準工と第一種、第二種住居地域を足しますと、37%になります。要するに、都市計画の用途地域している約4割は、ほとんど国も町も手をつけないでそのままにして、違反建築に目をつぶっている、そういう地域なんです。
こういうことをもう一回直視して用途地域を直してみるということを少し考えてみたらどうかなと思って相当乱暴な地域制を出しました。ここに書いてある。第一種中高層住居専用地域は3階建てが多いんです。僕が一番嫌いな、戸建て3階。敷地が大体20坪ぐらいで3階建て。基準法上許されるんです。第一種住居って、住居地域ではないですよね。混在地域ですよ。準工と住居とほとんど変わらない。
それで、僕は用途のことはあんまり考えない。先程の最小限敷地規模のことを考えている。
それから、違反しているか、違反してないか、誰でもわかるようにする。3階建てと決めているところを4階建てにするのはけしからんとか、道路から1メーター建築線がセットバックしているというのは、測ればわかります。ところが、建ぺい率、容積率は誰もわからないんですよ。設計事務所だって、確認をとってしまえば、あとは知ったことではないでしょう。役人もわからない。だから誰でもわかるようにしよう。
まず地域制ですが、12区分を8区分にしました。戸建て住宅は旧来用途の第一種住専と第二種住専を「戸建て住宅地域」に入れた。それから、「低層集合住宅地域」は3階建てぐらいまではいいだろう。だけど、4〜5階は建てさせない。一番典型は、荒川の町屋の裏側のごちゃごちゃとしたところの裏側住宅です。それから、「低中層集合住宅地域」。これが一番多いんです。マンションの4〜5階があり、中層がある。そういうところはどうしても残ります。大田区でも中野区でも幾らでもある。それから、「中高層集合住宅地域」。これは団地なんかです。これが第一種、第二種中高層住居専用が入ります。「低層集合住宅地域」には第一種、第二種の住居が入ります。「低中層集合住宅地域」は第一種住居と準住居。これは団地です。「混在地域」は準工業地域です。準工業地域というインチキな名前はやめろ。混在しているんだから、そのまま混在地域にしてしまえという訳です。役人というのはみんなそうなんです。本当とは別な話をします。「混在地域」。商業地域と工業専用は全部ここは一くくりにしました。
もう1つ、先程いった「集落地域」です。これを入れて8つにする。何が違うかというと、「戸建て住宅地域」では、小規模低層の2戸1の住宅は許可するけど、もっと大規模な集合住宅は絶対許可しない。3階も許可しない。それ以外の住宅地域は全て戸建てを禁止にします。低層集合から低住層は全部戸建て禁止。これは個人の好みですけど、最小限敷地規模を守らせるためです。小さい敷地で建物を建てることは許さない。小さい敷地ならそれを2つ集め、3つ集めて集合住宅にしてください。
あと、商業は大体似たようなものです。戸建ての小さいものと、コーナーショップは入れろとか、小規模のちょっとしたスーパーを入れたっていいのではないか。これは大したことないです。それから、「工業地域」は大体おわかりになる。「中高層住宅地域」、「混在地域」、「集落地域」には、宿泊、これはホテルの小さいのはいいと、一応しますが、風俗は商業に入れます。
問題は、建築の別表にある「個室つき浴場」、ソープランドですね。これは別表では商業地域でオーケーなんです。これを商業地域につくらせないためには、学校から半径500メートルの中にはソープランドをつくってはいけないとかあります。パチンコもそうだったかな。別表では、個室つき浴場、料亭、キャバレーの類は近隣商業と商業地域で建てていいということなんですけど、これも非常に不思議な話です。現状の基準法の確認申請では、新築の建物だから、ソープランドでも新築の場合はここで確認を取る必要はあります。ですが、頭のいい経営者は、そこで四の五のいわれるなら、フィットネスセンターにして確認を取ってソープランドにする。ということをいった時に基準法上はこれをけしからんと、追跡しません。新築の時だけです。阻止するわけにいかないんです。
ですから、僕は思い切って、風俗系は、パチンコも入れて、キャバレーからソープランドまで全部風俗営業法で取り締まれといいたい。基準法の外側です。だから、建築警察というのをつくれという提案をここでしています。何でそういうかというと、風営法上のソープランドなんかは、警察は常時観察できます。それから、フィットネスがソープランドになると、必ず風営法上の違反でしょっぴけるわけです。
だから、基準法や都市計画法でできもしないことをさもできるにしているのに、新築の時だけで、後は知りませんというなら、それは市民社会にとってペテンもいいところなんです。それなら警察にやらせればいい。法で許可をした以上は、それはその通りいっているかどうかを監視できるわけですから。
そんなこともありますが、「商業地域」にとりあえず風俗も一応分類に入れておきました。
用途地域についていいたいことは、12地域を分類してもほとんど意味がないということです。例えば、住専で大学、高専、専修学校、病院をつくってはいけないと書いてあるんです。しかし、常識的にいうと、一種住専で、規模が小さいちゃんとした研究大学院を入れたって一向におかしくないし、病院だって、このごろ中規模の病院で専門の病院だったら、むしろ一種住専にある方が、その周りの住民にとっては便利です。だから、別表でいろいろ整理しているんですけど、皆さんほとんど見てないと思います。面倒くさいし、物すごく古くさい。だから、実は8種類にしても余り意味がないということをここでいいたいんです。それなら、8区分は、何で特色を持たせるんですかということになります。
形態です。形態でこの8種類を分けてみたらどうか。ここでは、最小限敷地規模で、「戸建て住宅地域」は150平米、これは40坪です。「低層集合」は130平米。これは戸建ての最小限。「低層集合住宅」で、どうしてもやらなければいけない戸建ては130平米。「低中層」は200平米。「中高層」は300平米。「混在」は110平米。これは35坪です。実際は、調査すると110平米ではなくて90平米や80平米で、戸建てならば建っているんです。それをここでは戸建てを禁止しています。一部分は「低層集合住宅地域」で認めます。でも基本的には戸建て住宅地域以外は、戸建てを禁止していますから、全部集合住宅の規模と考えています。ここではっきりと8地域の区分ができます。「集落」が300平米、「工業」が300平米、「商業」150、110平米。階数は戸建て住宅地域」は3階以下、高さ12メーター。一種低層住居では、10メーターというのもあるんですが、12メーターでいいだろう。高さも地域制で区別します。それから、道路からの後退距離も区別します。
容積率の目安は、今回の8地域の提案では、僕はあまり必要ないと思う。この最小限敷地規模と階数と高さと道路からの後退距離だけでかなりいい建物ができるはずです。ですから、容積率はここで議論するなということです。容積率が高いものについては、計画許可に出せということです。計画許可の規模も、確認が相当今まで立ち入っていて、計画規模の最小限規模は「戸建て住宅」では300坪、1000平米。「低層集合」1000平米。「低中層」2000平米、「中高層」3000平米。「混在」では500平米。ごちゃごちゃしているところだから、小さくても厳しく計画許可をやる。いろいろ指導をするということです。形態によって8地域の区分ができる。そういうことですね。
先程僕がいった新規の宅地分割、相続税対策などは最小限敷地規模以上とする。先程いったように相続税対策で最小限敷地規模以下になったとしても、建築する際にはこの最小限敷地規模を守れよということですね。
それから、今後農地転用の宅地化は認めない。これは理屈としては僕はそれでいいと思う。土地が余っているんです。農林省の水田も余っているけど、宅地ももう余り出した。余っているから、今、空き家率が10%から17%まで上がってきました。もっと上がります。空き家率が高くなっているのに、相当無駄なことをやっている。地方都市ではやはり農地転用した畑や水田の小さなところに戸建て住宅をつくっていて、そこが車も入れやすい、農村環境も楽しめるということで、新しい買い手が行く。そうすると、どこが減るかというと、市街地の中のマンションなんかあいてしまうんです。非常に大きい無駄が都市全体で動いています。先程いった山林の宅地転用は集落地域の外周部についてのみ認める。農転は認めない。
一応こんな地域制をつくってみました。次の話は、伊藤は、用途分類があんまり意味がないから、今いった形態、敷地規模で8つの用途分類の個性を出すといっているけど、問題は、もう1つ中へ入っていけば、これだけで済まない話があるだろう。それは地区計画です。地区計画はいろいろな地区計画が出てきていますが、地区計画の原点に立ち返ります。地区計画は今腐敗していて、すごいことになっているんです。10年前はこんなに地区計画が出ると思わなかった。地区計画では、例えば、住宅地の中の道路舗装をどうするか、道路舗装はアスファルトをやめて、少し芝生と石がまざったような、でこぼこしたような道路舗装にして、車がゆっくり来るようにする。これも地区計画です。それから、外構、緑化。これも地区計画です。屋根の勾配、屋根の材料をどうするんだ。これも地区計画です。これは美観地域制に関係するんですが、美観地区というのはそういうことを管理しています。そういう話があります。
しかし、北海道の庭づくりと、京都の庭づくりは全然違いますから、敷地の外構についての地区計画だって、北海道と京都では、多分その記述は違います。僕は、地区計画はそれぞれの市が勝手につくって、都市計画法では、条例の扱いではなくて、市でつくった地区計画は都市計画法の法の扱いの中に組み入れるという一文を入れて、きちっとそれを守れといいたい。そういうやり方があるのではないかなと思うんです。 
地域制について、その2。その2が実は僕が一番いいたかったことです。用途分類、これはあんまり意味はない。ちょっと露悪的にいえば、用途分類でいうパチンコとか、大規模集客施設、料亭、キャバレー、個室浴場、劇場、映画館、パチンコ、マージャン、カラオケ、これだけで5分類あるんですよ。これの中のかなりの部分は、建築警察、風営法で取り締まれば、近隣商業も商業も準住居も一緒になってしまうということです。
いいたいことは、先程いいましたように、今の準工地域と住居地域について、これまで私たち都市計画の専門家は何をやってきたかというと、何もやってないんです。区画整理も、郊外の畑や割合あいている宅地でまだ使ってないところは区画整理をやりますが、今いった2つの地域、「準工」、「住居」について何もやってないんです。
ですが、やはり、これからの都市計画は新しいことを考えなければいけないということで、1つ考えました。
それはどういうことかというと、今、僕は防災の先生です。特に地震災害の先生です。ここ2〜3年、政府は地震で危ないぞ、水で危ないぞと、災害のことをいっぱい皆さんに宣伝してきました。その中で、東京が主題で、地震の時に一番弱い地域を、総合災害危険度5と4という地域として指定しています。それはどこかといいますと、大体が「住居地域」と「準工地域」なんです。  僕は、これまでの防火地域ですと、経験的に古い慣習で商業地域に防火地域かけていたんです。ところが、黙っていたって商業地域は、今の時代、耐火建築になりますよ。とすれば、総合危険度5と4の地域について、新たに、防火地域ではなくて「防災地域」の「地域指定」をして、昔の言葉で耐火建築を義務づける。そんなことできるかというけど、これまでは防火地域の指定をされれば、必ずみんな耐火建築をつくらなければいけないから、ずっと義務でやってきていたわけですよ。それなら、総合危険度5と4の地域については、極めてそこでの災害発生が広く大きい都市に悪影響を与えるというのであるなら、そこを耐火建築にしろといってもいいのではないかと思うんです。
しかし、それだけで、そういうところがよくなるかどうかという話もあります。今いった準工地域、住居地域の実情をちょっとご紹介します。
(図6)
幡ヶ谷です。敷地規模が100平米以下です。30坪以下が密集しているんです。
道路は幅員3.5メーター。幅員3.5メーターというのは2項道路です。42条2項。建築線指定です。それがここのところに全部集中しているんです。図面がかなり赤くなっていますが、赤いのは、1975年以前の木造建築です。これは東京の幡ヶ谷。笹塚の駅を出て北側に行くところです。そこの例を取り上げていますが、こういうところは、先程いった東京の準工業地域と住居地域がほとんどこうなんですよ。これをどうするかという提案が実は物凄く難しいから、学者も調査して批判はします、問題点指摘します。しかし、どうしていいか答えはないんですね。たまりかねて僕は次のような提案をしたんです。
(図7)
密集市街地に小さな遊び場をたくさんつくる。密集市街地の再開発で一番典型は三軒茶屋です。世田谷区と住宅公団が延々と三軒茶屋を再開発して、話が出てから20年ぐらいかかっていると思います。ようやく4階ぐらいの集合住宅をつくりました。一応格好はきれいです。だけど、あれは、今いった準工地域、住居地域に一般適用されると、絶対できない。僕は墨田区の都計審を二十何年やっていましたが、昭和30年に、墨田区の都計審でまさに区会議員の圧力で都市計画道路の16メーターが指定されましたが、現在まで1本も通ってないです。それが住民です。だから、ああいうところは再開発できないんです。僕はやめました。再開発しない。これは全部4メーター道路に囲まれた16軒の家です。これはどういう選び方したのか。先程いった災害危険度5の地域では消防が建物を1軒1軒調べて、この建物は一番危ないとマークしているんです。例えば裸木造で昭和30年ぐらいに建った木賃アパートや工場を、全部マークしているんです。そこの建物から一度火が出れば必ず周辺に延焼して何百戸という延焼火災が起きるということは、専門家の中では指摘できるわけです。
今の話を逆にたどると、災害危険度5の地域で、消防が専門家として認定した危険建築物、これを区役所が買って、そこの建物は除去します。除去すれば、そこは火災上危険な建物はなくなります。そして空地になります。空地になれば周りの4戸に日が入ります。もしかすると、個別に30坪か25坪の建物が建っていますけど、ここに空地ができれば2戸1ができるかもしれない。2戸1ができれば、災害上も極めて抵抗力が強い。それから、低炭素化に対しても2戸1は戸建てよりもCO2の排出量が少ないです。話は単純なんです。そういう小さい遊び場をつくっていく。
それをやるんだったら、難しい再開発で権利変換をして、個人の権利はどこへどう移して、そこに新しい道路を入れてなんていう気が遠くなるような話もなく、即物的には早くいくのではないかなと思って、こういう案をつくりました。この原案は去年の9月の「新都市」に、伊藤の防災都市計画というので載せてありますからご覧になってください。消防の専門的能力で、この建物は、地震の時につぶれて火が出るという建物をつぶしていけば、地震で、首都圏の民間の建物が火で燃えてつぶれて、50兆円の大損害ができると思われているのが、10兆円ぐらいで済むんです。
これを準工地域と住居地域にやってくれば、これは庶民的にもささやかですよ。空き地どうするんだといったら、おばあさんのひなたぼっこの場所にしてもいいし、木1本植えて枝にブランコをぶら下げてもいいし、下町だとこういう場所を有効に使うんです。杉並とか世田谷は別として。そういう提案です。
(図7) 
それから、もう1つ。これはディテールの話ですが、前から僕は不思議に思っていることがあります。都市計画道路についてです。例えば現況道路8メーターにしましょう。これを、両側に8メーターずつ拡げて24メーターの都市計画道路にすると、その両サイドに都市計画決定の敷地境界線が引かれます。宅地はモデル的にいうと8メーター、8メーターあって、これを足して16メーターある。都市計画道路ができると、この8メーター全部、お役所が道路にしますから、残りは8メーター分になる。地主も馬鹿じゃないですから、こうなっていると、よくある例はいずれ道路になる部分を空地にして、その容積を残る方の敷地に積み上げて建てますね。山手通りなんか一番典型例だと思いまね。ところが、この山手通りに面した用途地域を仮に容積率500%とします。これを積み上げているということは、それまで空き地だった部分を役所が買い上げて道路になった時には、残りの敷地に対しては1000%になります。それがそのまま1000%で残りますから、これは既存不適格で残るんです。役所は既存不適格と名をつけただけで何にもしません。特に建築系は何もしません。既存不適格がいっぱいありましてね、なんて人ごとのようにいっているんです。だけど、これは都市計画の本来をずれているんです。こういう卑劣な考えを市民に与えるような仕組みをつくっているから、僕はいけないと思います。なら、初めから建築線を決めろということです。これは相当のお情けの提案なんですけど、現在は、この都市計画道路になる予定の敷地の中に、3階までの軽量鉄骨ぐらいの建物はつくれます。これは常識ですね。だけど、この頃は3階建てもつくらないんです。駐車場にするからゼロなんです。だったら、3階建てをここでつくって、取り壊すと考えて、初めから、都市計画では500に3階分の200ぐらいを上積みして700になるような建築線をつくって、これの中で建築の行為を許すとするといいんです。これ以上はみ出すなということです。
都市計画の自らの矛盾でとんでもない建築をつくらせるのではない。都市計画の指導をきちっとやるべきなんですよ。これが、直ったという話を聞いているんですが、僕はまだ50代の時、都市局でけんけんがくがくの議論をして、そのままほっぽり出された記憶があるので、ちょっとこれを取り上げました。
(図8)
防災地域の話です。防災地域の総合危険度4から5の地区に適用して防災建築を進める。これは今まで墨田区なんかで慣習的にやっていましたが、2戸1をつくる時には1軒、つかみで200万〜300万円やるという助成制度がありますから、それをもっと広くしろということなんです。これは何をいっているか。よくある3階建て売りが2戸並んでいるとします。これは表が3間で奥行き7間ぐらいの敷地で、21坪。これをイメージしています。それが2軒並んでいます。それを2戸1で建てろ。その時に総合危険度4〜5なら、下をベタ基礎にして、1階だけ耐火建築化してコンクリート造にして、上は高気密、高断熱にする。皆さんが電気代、ガス代を仮に毎月2万円払っているとして、高気密、高断熱にしますと、そのガス代、電気代が半分の1万円になります。それに太陽光や太陽熱を入れると、また2000円〜3000円安くなる。要するに、高気密、高断熱プラス太陽光、太陽熱発電をすると、CО2削減率が70〜80になるというのが大体常識なんですよ。いいたいことは、太陽光、太陽熱より重要なのは、高気密、高断熱という建築の問題なんですよ。
2戸1にしますと、壁が共有で、外壁を厚くできる。この建物は外壁が断面でいくと2棟だった時は4つあるんですけど、2戸1だと2つになるんです。実態として外気に熱が出るのを防げるわけです。だから、防災建築イコール高気密、高断熱住宅。2戸1というのはそういう特徴を持っていると思います。
(図9)
今いったのがこれです。3間×7間で21坪、約70平米。それぞれが建築面積12.6坪です。隣地境界から建物の距離が0.25、要するに1尺5寸。1尺5寸にしてやると、こういう建物が建つんです。これがよくある建て売りです。これを2戸1にします。2戸1にすると共通の壁があって、今いったように外気に面する、6面から3面になります。当然これで熱の放熱は少なくなる。2戸1になると、自動車も、小さい自動車ですけど入れることができる。こういううまいこともありますよと、2戸1の勧めで前からいっています。
こんな話を「私見的都市計画」というので、今日初めて皆さんにお話ししました。僕の意図は、今日お話をした後を受けて、少しずつ武装強化して、来る暮れか何かに中央官庁、国家の都市計画の人たちに話をするためのテストです。そういうテスト台になってしまった皆さんに大変申しわけないんですが、この話で私の説明を締めくくらせていただきます。

 

フリーディスカッション

 

與謝野 伊藤先生、ありがとうございました。それでは折角ですからこの場でのご質問を2,3お受けしたいと存じます。
(前千葉市副市長) 防災をやっていたましたが、東京都の防災、計画はつくってもなかなか進まないので、本当に現実的なご提案だと思いました。1つ思ったのは、用途地域ですね。12種類もつくってもなかなか使えない。もっと選択して使えばいいんだけど、市町村は全部使おうと頑張っているところがあります。特に問題なのは、住居系。いい住居系でいい宅地が、相続の問題があって、みんな分割されて、そこにマンションが建つ。紛争になってから、紛争調停に1年ぐらいかかって、建てようとするディベロッパーも苦労するし、建てられる方も苦労する。だから早目に、前もって看板立てて地区計画をつくって、こういう地域だからということを宣言しなさいというんだけど、地区計画というのは、いろいろとアウトリーチしてまちづくりのアドバイスをしてもまとまらない。
ですから、用途地域の一種住専と地区計画つき用途地域みたいなのがあってもいいのかと。セットで、用途地域指定する時に、レディメードでつくって、行政がやや先走りで提案して、選択してもらう。住民サイドで全部合意形成をするのは、やはり時間もかかるし、今の財産権もあって現実的に非常に難しい。用途地域と形態をセットにしたということでしたが、その用途と地区計画を付録つき用途地域にしてみるということもやってみたらどうじゃなと。いい住宅地の人はそういうものを行政に求めている人が多くなっているのではないかという気はしているので、今の形態をセットにしたというのは非常に興味持って聞かせていただきました。実験的な試みもやられるんじゃないかなという感じで聞かせていただきました。感想です。
伊藤 どうもありがとうございました。
岡田(樺|中工務店) 攻める都市計画という方向性が今日のお話であったと思います。先ほどの林さんの話とも関連しますが、8つの地域区分は用途区分ではなくて、形態区分ということですね。今度は形態に加えて、さらに中身をもう少し積極的に攻めて、先ほどの例示にありました「防災地域」なり「低炭素地域」の質をさらにアクティブに計画していこう、というご趣旨だと思います。
地区地域の説明の中で、先ほどご説明のなかった「高度利用地区」というのはどういうイメージでしょうか。
伊藤 高度利用は、率直にいうと、大阪なら中之島や北ヤード、東京だったら都心のところですね。札幌では駅前。そこでは思い切った容積移転をやれということです。容積移転して、ガッと上げるものは上げてしまえと。容積移転のやり方が問題なんです。まず容積移転の対象地域をどれぐらいの広さにとるか。そういうことがあるんですが、都心は本当に国際競争に勝たなければいけないんだから、そういうめり張りのついた容積地域をバンとやれということです。問題は容積移転の時に、容積は誰が、どうやって認可するのか。役人が決めるんですが、1案として、役所が容積を三井不動産や三菱地所に売る。容積移転を300やるなら、地所や三井不動産に売って儲けろ。それを、例えば住居地域や準工業地域の広場取得に使え。そんな考え方があるのではないかと思うんです。
それから、低炭素ですが、3つぐらいの低炭素の地域制があっていいのではないかと思う。1つは戸建てです。戸建てはもうご存じのとおり、太陽光、太陽熱を必ず屋根につける。これは皆さんわかりやすいですね。
第3分類は、丸の内、新宿。ここは今検討している個別の低炭素化の建物内の機械だけでなくて、地域冷熱。道路の地下にパイピングをして熱の受け渡しをやる。
問題はその間なんです。今いった住居地域をどうするか。これを答えとして準備できないと低炭素化に対応できない。
僕が考えているのは、とりあえず今いったその他大勢のところは、燃料電池とヒートポンプ。燃料電池とヒートポンプの技術開発は物凄く進んでいますから、それを新設の建物は必ずどっちか選択する。ヒートポンプでいくか、燃料電池でいくか、新設のマンションとか貸しビル、病院が選択する。
第2段階で、これはほとんどできませんが、希望的観測は燃料電池、ヒートポンプを新設のマンションや病院や事務所でつくります。その他のところは小さいんです。それができたら、電線で結びつけます。最近はやっていますが、スマートマイクログリッドのネットワークの小さい集団をいっぱいつくる。それでその他のところをやるという手はないかなと思っているんです。これを1つ完成すると、本邦初演です。都市計画が低炭素化にどう対処するかという完全の答えを今つくっていないんですよ。建築はつくっているんです。これは建築設備で物すごく性能が上がりましたし、高気密、高断熱の技術が上がりましたから。だけど、都市計画はどうするんだというと、答えがない。早急につくらなければいけない。私は今3つの提案を低炭素地域に入れてみたらどうかと考えています。
それでは、時間が来たようなので、今日の話を終わらせていただきます。
與謝野 伊藤先生、本日は大変に示唆深い貴重なお話を頂きましてありがとうございました。最後に、皆様からの大きな拍手を伊藤先生にお贈りいただきたいと存じます。(拍手)
ありがとうございました。これにて本日のフォーラムを締めさせていただきます。

 



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