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第23回NSRI都市・環境フォーラム

『空間と技術』−アーキニアリング・デザインをめぐって−

講師:  斎藤 公男 氏   

日本大学名誉教授

PDFはこちら → 

日付:2009年11月18日(水)
場所:日中友好会館

                                                                            
1.私にとっての構造デザイン

2.AIJ会長として考えたこと

3.アーキニアリング・デザイン(AND)とは

4.世界遺産に学ぶAND

5.都市・環境のAND

6.サステナブルなAND

7.カタチの先にあるもの

8.「技術的挑戦主義」

フリーディスカッション

 

 

與謝野 それでは本日の第23回目、通算で253回目のフォーラムを開催させていただきます。皆様におかれましては、大変お忙しい中を本フォーラムにお運びいただきまして、まことにありがとうございます。また、長年にわたり温かいご支援を賜りまして、厚く御礼を申し上げます。
  さて、昨年の2月でしたか「科学・技術と社会」という演題で村上陽一郎先生から科学・技術についての歴史的考察をはじめ3分野をホリスティックに捉える識見についてのご講演をいただきました。本日は、これと関連しますが、技術と感性、空間と物語性などの命題について、建築領域での取り組みについての誠に示唆深いお話を皆様とともにお聞きしまして、これらの分野が抱える諸課題についての理解を深め学びたい、とこのように思います。
  本日お招きいたしました講師は、日本大学名誉教授であられ、建築学会の前会長であられます斎藤公男様でいらっしゃいます。斎藤様のプロフィールにつきましては、お手元のペーパーのとおりでございますが、日本大学理工学部建築学科にて構造分野で長年教鞭をとられ、その真摯で感性豊かでエネルギッシュな学生指導と研究姿勢の軌跡は、皆様のお手元のペーパーのとおりの受賞歴、作品歴と数多の著書からもおわかりのように、誠にすばらしい功績を挙げられた方でいらっしゃいます。
  さらに、2年前に建築学会会長に就任されたその任期中に「アーキニアリング・デザイン」----これはアーキテクチャーとエンジニアリング・デザインの融合概念で挑戦的技術主義というこころが込められている-----という新概念をみずから考案され、提示されまして、建築界に一大意識改革運動を提唱され今日まで熱心に展開して来られておられます。また、2年後の2011年にUIA(世界建築家連合)の東京大会が開催されますが、その大会へのアピール活動もこのテーマにもとづいて精力的に展開しておられ、まことに熱き現代の学識リーダーでもあられます。
  本日の演題は、前に掲げていますとおり「『空間と技術』――アーキニアリング・デザインをめぐって――」とされておられます。
  それでは、大変にお忙しいところをお運びいただきました斎藤公男先生を、皆様からの大きな拍手でお迎えいただきたいと存じます。(拍手)
斎藤 皆さんこんにちは。ただいま與謝野さんから大変ご丁寧なご紹介をいただきまして、ありがとうございました。
  今日の出席者の方々の名簿を拝見しますと、年齢層も様々なのと同時に、都市開発から構造設計、さらに学生の方々もお見えということで、どちらかというと、今日は焦点の絞りにくいお話になりそうですが、とりあえずは私が最近考えていること、あるいは感じていることをお話しして、皆さんとディスカッションできればと思っております。
  ということで、冒頭から訂正のお願いです。最初は「建築」というタイトルでお話しようと思っていたのですが、余りにも私には荷が重過ぎるので、構造設計、構造デザインと関係のある切り口ということで「空間と技術」としてみました。ただ、技術というのは、本来的にはすべてのことが入るわけですが、今日は、私の専門でもある構造に比較的近い話をさせてもらおうかということでございます。
  パワーポイントを用意してきましたが、欲張り過ぎて膨らみ過ぎたような気もしますが、日頃お疲れだと思いますので、紙芝居だと思って、気楽に一緒にお楽しみ頂きたいと思っております。

1.私にとっての構造デザイン

(図1)
  この似顔絵は20年ほど前学生がかいてくれたものです。最近のリユースの思想につながりますので、もう一度、眼鏡をつけたり、髪の毛をだんだん白くして再利用させてもらいたいたなと思って、名刺にも使っています。
  最初は、自己紹介を兼ねて、私が今までやってきた仕事あるいはプロジェクトをお話しいたします。
今から約50年前、私は4年生の卒業研究のときに東大生研にあります坪井研究室の扉をたたきました。以来3年間、坪井善勝先生の大変厳しい教育を受けました。微分積分の日々にあけくれる3年間でしたが、幸いなことに、大学院の最初の年に世紀のプロジェクトである代々木オリンピックプール並びに体育館のプロジェクトが始まったわけです。坪井先生もまだお若くて、丹下研究室と四つに組んで仕事をされていました。
(図2)
  スライドの左側に小さな模型がたくさんありますが、2つの研究室が全くフラットな状態で、1人1人が模型を持ち込んで、50ぐらいの模型がだんだん形をなしてくる。それによって建築と都市のあり方、あるいは構造空間との関係がリアリティーを増していく、そういうプロセスを垣間見まして、これは大変なコラボレーションの姿であるなということを一番感じたわけです。
(図3)
  そんなことが私のスタートです。以来、構造デザイン、あるいは空間構造のことをやりたいと思ってまいりました。研究と教育と設計をうまく回せたらいいなというのが夢だったんですが、なかなか普段は仕事がない。たまたま舞い込む仕事を一生懸命やろうと。これが東京オリンピックから4年後につくられました岩手の体育館です。
  代々木がサスペンションに対して、こちらはアーチで大空間を分節化しています。地震も積雪も大変厳しいところでしたので、かなり重厚な建物となりましたが、おかげで現在も大変よく使われている。当然、手計算のコンピュータの時代ですので、こういうバウンダリーの中空断面を持ったアーチの、断面2次モーメントを出すだけでも筋肉が痛くなるぐらいの計算量でした。この時代ですと、そういうことを経験された方もあると思いますが、一日も早く計算機なるものが生まれたらいいな、そういう時間があれば、考える時間に回るのではないかということを夢見ていた時代でした。
(図4)
  それから5年ぐらい経ちますと、あっという間にコンピュータの設計界への成熟度というのが増してまいりました。研究室でも、テンション構造について研究は進めておりました。例えば茨城の体育館などは、完成した形状や張力分布がわかっている。その場合、最初の1本のケーブルをどのくらいの強さで引っ張ったらいいか。現代でいう逆工程解析というものをこの頃から始めました。施工と設計ということは非常に重要だなということを感じていたわけです。
  とはいいましても、構造設計あるいは構造というものが、本当に我々の設計するサイドから物になるには、身体の感覚というんでしょうか、そういうものを何とか近くに置きたいということで、相変わらず実験をしまして、解析の結果と実験とがどう対応するかということを学生たちと一生懸命やっていた時代でございます。
(図5) 
  ケーブルネットあるいは山型のアーチあるいは初めての立体的なシステムトラス。これは、1981年のポートピアですが、こういうものを含めて、一言で、サラブレッド(純粋な)の空間構造として、まとめました。こういうのを一生懸命やっていた時代があったというわけです。
(図6)
  そういうサラブレッドな空間構造に象徴されるような構造をやっていた先人たち、たとえばマイヤール、ネルビー、トロハ、坪井先生、キャンデラ、サーリネン等々が活躍した時代があり、それに触発された日本の建築界において、いわゆる構造とデザインの話題が大きなテーマとしてあったわけです。
  ところが急速にそれがしぼんでまいります。特に代々木のオリンピックプールを境いに、あるいは1970年の大阪万博を境にグッと絞られるわけです。そしてこの間のタコの胴体がしぼまれたあたりにポストモダンが生まれてくる。
  それから、日本で次から次へと大きな地震がおきたということで、研究者のテーマも耐震工学ということに流れていく。コンピュータが発展し、何とか少し構造デザイン的なおもしろいことが見えるのかなという期待とは逆に、建築デザインが求められない時代が続いていったという印象です。
  その一番見えない時代の中に、これは独断ですが、小さなファラディーホール(1978)というものを位置づけさせてもらいました。これを契機に1990年に向かって一気にいろいろなものが花開いていった。そう感じられてなりません。
  それからの展開はコンピュータの進歩もあるんですが、海外からの様々な黒船としての刺激もあり、余り詳しい話はできませんが、こんなような図柄(図6)を思い浮かべながら話を進めたいと思います。
(図7)
  これが日本大学のプラザ習志野で、3つの食堂には各々、ファラディ、ダ・ヴィンチ、パスカルといった科学者の名前がついております。
(図8)
ファラディーホールは大変小さな食堂で、当初は天井にこんなシャンデリアをつけて、これで少しリッチな雰囲気を出そうしていた。結構高く、何百万円もするわけです。そのとき私も設計のスタッフに入っておりましたので、ひとつ提案をさせてもらいました。せっかくだから、理工学部らしいサイエンティフィックなフィーリングを、余り仕上げ材に頼らないで構造だけの表現でできないだろうかと。かつて一寸おかしな構造表現主義というのがあったんですが、この時代はそういう発言も全くなかった時代です。多少恐る恐るであったんですが、構造表現の本質的な動きを出したかったという思いもありました。
(図9)
  もちろん、この原理は非常にシンプルで、私どもの大学ですと、1年生のときにこのちょうげんばり(ちょうげんばり原)の原理を説明すると、大体わかってもらえる。だんだん歴史を調べているうちに、これは我々が考えた新しいものではなくて、かつて19世紀の中ぐらいから結構使われていたことがわかりました。
  しかし、見方を変えると、このテンション材やストリングが、要するに部材の補強ではなくて、構造体の応力とかたわみを制御することができる。そうしたアクティブな役割を持つことに着目すると、新しい構造的な合理性が出てくるのではないかということを感じ始めたわけです。そんなことでいろんな施工法を考え、とにかく失敗しないように、それだけを一生懸命心がけました。
  でき上がって、インテリア・デザインとして皆さんどんな関心を持つかなと思ったのですが、それほど違和感なく受け止められました。特に鋳鋼ジョイントのデザインには力を入れました。大阪万博のお祭り広場などで坪井先生のグループではかなり大規模に使っておりましたが、職人の手ざわりが出るような、こういうすぐれた素材をエンジニアリングサイドから提案していくことが重要ではないかということを強く感じたわけです。
(図10)
  もともとはヨーロッパの技術として潜在的にあったわけですが、あっという間になくなった。それをもう一度今の世の中に出したらどんな反応なのか。大変興味がありました。そこで、ちょうど今から30年前、IASSに和製英語ですが、張弦張をBSS(B e a m S t r i n g  S t r u c t u r e )と名づけて論文を出しました。意外と新しい構造システムとして話題を集めたので、これは可能性があるかなと。以後いろいろとこれに関係した仕事をしていくうちに、先程いったサラブレッドではなくて、混成あるいはハイブリッドといった概念が必要ではないか、という考えが強くなって、今でこそハイブリッドは日常語でございますが、このときは建築界でこういう言葉が出てくる先駆けになったのではないかと思っております。
  たまたま1986年の大阪における国際会議(IASS)で「H y b r i d F o r m - R e s i s t a n t S t r u c t u r e 」というタイトルを出しましたところ、私の尊敬するシュラヒ先生が同じようなハイブリッドという言葉を使って「H y b r i d T e n s i o n  S t r u c t u r e 」という論文を出されました。これは大変大きな勇気になったわけです。
(図11)
  これが私のふるさとのグリーンドーム前橋です。長径が170メートルの楕円形ドーム。以後、スパンや空間の形状に合わせて材料などをいろいろと組み合わせて様々なものが可能になりました。
  特に、アーキテクトの方が、トラスやアーチということ以外に、新しい建築の表現としてもこういうものがあり得るのではないか、ということを評価していただいた。これは大変ありがたいことだなと考えます。
(図12)
  これが2つ目のテーマである張力膜といいますが、空気を使わないで膜局面によって力を引き出す、そういう工法を使って、様々なプロジェクトを手がけてまいりました。
(図13)
  今やっているハイブリッド構造というのは、規模は小さくても様々な混成システムが生まれるということで、大変おもしろい分野ではないかと思っております。
(図14)  
  そういう延長上として、後ほどお話ししたいと思うんですが、テンセグリック・システムという新しい名前をつけた構造方式を考えました。これを大規模なドームや、小規模なガラス屋根、ファサード、橋に使い、従来のトラスやラーメンという概念の延長上にある技術的な新しい着目点、そういうものを展開しようとする試みは現在も続いているわけです。
(図15)
  先程教育の問題も少しお話ししましたが、研究と設計を常にフィードバックさせることが重要なんですね。ものづくりの世界を教育の場にどう展開するかということに私は大変興味を持っております。学園祭などで、テンポラリーな仕掛けを学生たちとつくっていく。物の重さ、風の強さ、施工とジョイントはどうあるべきかということはホリスティックに全部連動しておりますので、そういうものと力学とか材料を含めてトータルなことを実体験として教育できる場ではないかと思います。教員にも体力が必要なので、それなりに頑張らなくてはいけないんですが、それも私たちにとっては大きな目標だったと思います。
(図16) 
  ところで「構造デザイン」ということが最近よく言われております。英語でいうと、ストラクチュラル・デザイン。しかし、意識の仕方によって、単なる計算であるのか、共有したデザインを目指すべきなのかという違いが出てくる。
  そういうことを考えながら、40年以上、いろいろなプロジェクトを、本日お見えの方々とも随分いろいろな場面で協同させてもらいました。この場をおかりして厚く御礼を申し上げたいなと思います。
(図17)
  建築学会も、大変多分野の人たちの集まりで、専門的なディスカッションなり研究というのは会員の勉強になりますが、雑駁ないい方だと分野が縦割りになっております。たとえば材料や構造種別であるとか、耐震、地盤、などがあります。それに比べ、私が所属しておりますIASS、国際シェル・空間構造学会といいますが、そこでは、その辺の垣根がとれていまして、アーキテクトもエンジニアもいますし、リサーチャーもゼネコン、メーカーの方もいて、大変自由で横断的な雰囲気で我々にとっては大変勉強になったといえます。
(図18)
  たまたま今映っておりますが、この方がシュライヒさん、イスラーさん、お2人とも私より20〜30センチ大きい方です。業績もさることながら、何といっても人柄が素晴らしい。インターナショナルであると同時に、素晴らしい魅力に富んでいる、そういうことも大変勉強になったと思います。
  イスラーさんは、残念ながら、今年の春お亡くなりになってしまいました。
(図19)
  そんなことで、私も大学院を卒業して以来、このIASSの会員になっておりす。最近は理事をやったりしております。今年の秋、この大会の50周年がスペインで持たれました。10年に一度必ずスペインに帰る。といいますのは、そのファウンダーであるエドゥアルド・トロハがスペイン、マドリッドの出身で、研究所もつくられている。
  私ごとで恐縮ですが、50周年の大会の記念式典のトロハメダルをいただくことができました。2年か3年に1人受賞するということで、日本では坪井善勝先生と川口衛先生が受賞されています。大変ありがたいと同時に、これはやはり日本の建築界あるいは日本の構造設計、特に構造デザインというものが世界から相当期待されている、そういうことのエールをいただいたのではないかと感じながら、帰ってきたわけです。
  ということで、最初の「私にとっての構造デザイン」をごく簡単にご紹介しました。

2.AIJ会長として考えたこと

(図20)
  私が会長になったときにどんなことをしなくてはいけないかということの1つのバックボーンがここにあります。
  私は、会長になる前に副会長をやりましたが、秋山宏先生と村上周三先生が会長のときに副会長を務めさせていただきました。おかげさまで、無事今年の6月で終了になりました。学会は2年という大変短い間なので、いろいろなことはできないのですが、ただ、自分自身がいろいろ携わってきた構造設計のあり方、アーキテクトとエンジニアのコラボレーションのあり方については、私も関心を寄せておりますので、何かそういうことができないだろうかと思っていました。
  特に、今日は構造設計の方も何人かお見えですが、構造設計は難しい。魅力もたくさんあるんですが、難しさがなかなか理解してもらえないということも伝えたいと思いました。
  建築や建設の世界でも、よく事故が起きます。事故の中には天災ももちろんありますが、やはり人災も多い。一生懸命やってもミスがどこかに出てくる。そういうものをどうやって埋めていくか。構造設計の中でも耐震設計については、材料も未知の部分があり、また地震エネルギーの大きさなり挙動はなかなかとらえ難い。
  そういうものをどうやってモデル化して設計していくか。そして、それを社会資産としてどういうつなげていくかというあたりには、まだまだ議論を尽くさなくてはいけないことがいっぱいあるだろうと感じていたわけです。
  もう1つは、姉歯事件というものがありました。この事件はひとつの教訓です。先程、昔の手回しの計算機の話が出てきましたが、コンピュータの計算だけにたよっていると見えなくなるものがあるということがやはり大きな問題だろうと感じました。
  そんなこともあって、法律改正をめぐって2年間いろいろな問題とも取り組みました。その議論は、今日は時間がないのでできませんが、たまたま昨日、與謝野さんもちょうど出席されておりましたが、建築基本法について、参議院会館で議員の方々と意見交換といいましょうか、報告会のようなものがございました。
  新しい政権になって、取り組みも前向きに動きそうだなという期待もありました。ただ、それを具体的にどういうふうにするかというのは、これからも目がはなせない。やっとスタートの緒についたという感じでしょう。
  会合の中で、以前からかなりこの活動に関心を寄せています前田武志参議院議員がいわれた2つの言葉が私の心にとまりました。
  1つは、鳩山総理がいわれている低炭素社会。25%マイナスするということは、もちろん厳しい課題ではあるんですが、同時に、これは建築界にとっては好機である。これこそ今までの知見を集めて、建築界に活躍している人たちが各々の場で力を発揮するときではないかということ。
  もう1つは、基準法の見直しや、建築基本法の立ち上げということもありますが、いずれにしても、それを進めるためには、やはり国民に建築のことあるいは建築界のことをもっと理解してもらう必要がある。もっと激しい言葉でいえば、国民運動が必要ではないかということをいわれました。確かにそのことは非常に重要だなと思います。
  そんなことを考えましたら、今日実はお話ししようと思っていますアーキニアリング・デザインという1つのイベントも、国民をいかに建築ファンといいましょうか、建築を理解する人たちをつくるか、そういう希望のような思いが強くあるんだなということを再確認したわけでございます。
(図21)
  たまたま去年でしたか、1月の日経アーキテクチャーに会長のこんなニュースが載りました。
(図22)
  私は大きく2つのことを考えております。1つは学会の中でまず頑張ろうということ。特別調査委員会として、「建築学から見たあるべき構造設計」というものをもう一度総括し、そのゆくえをしっかりと見直そうということ。いまひとつは「既存建築を活かす対震デザイン」。対震の「対」は相対するの対、つまり免震、制震あるいは耐震といういろいろなバリアブルな対応もさることながら、構造強度だけではなくて、建築のソフトとそれをどう組み合わせるか。耐震改修することによっていかに魅力的な社会資産をもう一度つくれるか。そういう視点こそ大事だということです。各々の委員会には和田先生と松村先生に委員長になっていただきまして、今、若手をたくさん集めて鋭意活動しているところでございます。
(図23) 
  もう1つは、先程の建築ファンという視点も含めて、学会を社会へむけること。まず、大会のときに「建築デザイン発表会」をしようと。今までは構造や環境の先生方、院生は多数集まっていますが、1年に一度のお祭り的な大会に、意匠関係、設計関係の先生方とか院生はなかなか出てこない。そういう方々が自由に発表できる場、大学だけでなく実務の方々も自由に発表し意見を交換できる場をつくりました。
  昨年、今年と非常に大きな反響を呼びまして、大会の発表回数も今までの記録を大きく上回る結果を得ることができました。

3.アーキニアリング・デザイン(AND)とは

(図24)
  つぎにアーキニアリング・デザイン。これは建築学会が音頭をとって建築界と社会とつなげる。そして責任と同時に「建築への誘い」を共有したい。
  そんな思いで、「アーキニアリング・デザイン展」を昨年の10月、田町の学会でやったところ、大勢の方が来てくれました。子供達から専門家まで6000人を超える入場者でした。
  皆さんに聞かれるわけですね。アーキニアリング・デザインとは何か、と。一寸いいにくい言葉をつくったということで、頭文字をとりまして、略称ではAND(アンド)と呼びたいと思っております。
  私は、映画が好きなので、時々時間があれば映画を見ることにしていますが、最近は「天使と悪魔」がかかりまして、これは以前の「ダ・ヴィンチ・コード」の姉妹編のような形です。ダン・ブラウンの小説で、トム・ハンクスの主演です。両方とも難しい映画ではありますが、「ダ・ヴィンチ・コード」ではパリ。「天使と悪魔」ではローマが舞台になりまして、たくさんの建築が出てまいります。我々にとってもおもしろい映画だったと思います。
(図25)
  この2つの映画の主題は、いわゆる宗教と科学ということです。宗教と科学の対立が顕在化してくるのはルネッサンス時代です。
(図26)
  ダ・ヴィンチはいろいろな意味で才能豊かな人で、芸術はもちろん、すぐれた多くの発明もしております。その功績は大きいんですが、力学の方は余り大きな功績はなかったように思います。
  それに比べて、その後50年ぐらい後に活躍したガリレオ・ガリレイはある意味では科学の祖、あるいは力学の祖といわれるほどたくさんの力学的な功績を残しています。
(図27)
  特に、彼が最初に力説したのは、ここに大小の骨がありますが、形と力という関係です。大きさに対してプロポーションというのはどういうことか。建築のデザインをする上では非常に重要なことなんですが、こういうことを科学的に究明しようとしました。あるいは構造の世界では一番シンプルな片持ちばりのメカニズム、これを何とか究明しようとした。
  彼の提案した力のつり合いは、前面が引っ張りで、ここに圧縮力をかけるということで、剛体のつり合いのようなことで、そんなに大きな間違いとはいえない基本的な概念を持っております。弾性力学でいうと、三角形分布ですが、ここに到達するまでダ・ヴィンチから約200年かかっているということになるわけです。
(図28)
  そういう科学の時代が、材料の開発に先行して、花開いてくるわけですが、やがてルネッサンスから産業革命が始まり、18世紀後半から鉄の技術が盛んになった。19世紀のビクトリア王朝時代に鉄骨構造が大きな発展をするわけです。
  今日は、この辺の話は余りできません。ただ、いかにその時代のエンジニアが今も国民的な支持を得ているかという1つの事例として、アイザンバード・ブルネルという人を紹介しておきます。
  彼の代表作であるロイヤル・アルバート橋の橋脚に彼の名前が出ております。イギリスが時々行う人気投票で、1位はチャーチル、3位はダイアナ妃で、その真ん中にブルネルが入るというぐらいエンジニアが大変評価されている。ということは、当然アーキテクトの存在が社会的に位置が高いということが想像できるわけです。
(図29) 
  ということで、工学の世界に非常に良質な材料が出てくる。ここで、ブルネルによる技術も出てまいりますから、4つのタームがここで明らかになるわけです。それは芸術、科学、技術、工学です。
  建築学会は、定款にもありますように、学術、技術、芸術の発展を図ることを目標にしてきた。それがどのくらいオーバーラップしているかという議論は今まで余りありません。何となく外から見るとバラバラでお互いに頑張ろうという感じがするわけです。それをもっと融合し触発しあうことが大事な視点ではないかと思います。
  それぞれがバラバラのように見えますが、こうやって各要素をくくってみますと、芸術と科学、あるいは技術と工学、科学と工学は、1つのつながった分野であるということがわかるわけです。
  一番わかりづらいのは、芸術と技術ですが、実は1つの関連性を持っている。それは人間が想像した様々なもの、様々なソリューションの中から最終的には1つのものを選ぶ、決断するということ。これは芸術もそうですし、本来は技術も同じ。どちらも個別的なものであるということです。
  今日の技術について昨今ちょっとした錯覚があると思うんです。先程ルネッサンスの建築も見ましたけれども、世界遺産を見ましても、どの時代を切り取っても、科学や工学がない時代にも技術は存在するわけです。逆にいうと、科学と工学さえあれば技術が何でもできるという考え方、これは現代における陥りやすい偏見というか、間違いではないかという指摘があります。
  もう1つは、芸術と技術がかなりつながるのと同じように、技術は人間がしっかりと自分の個性を持って決断をしていく。この2つの視点がこれから非常に重要であろうということです。
(図30)
  芸術と技術が近い、ということをあらわす2つの事柄を紹介しましょう。1つは、1997年にパリのポンピドーで行われた国家的なイベントなんですけれども、「技術の芸術」という非常に大きな展覧会がありました。私も行きまして、かつてパリのエッフェル塔が非難された同じパリで、そういう21世紀の考え方があるのかなということで、大変好感を覚えました。
  あるいは同じ年に、先程ちょっとお話ししたシュライヒさんが、「ジ・アート・オブ・ストラクチュアル・エンジニアリング」という素晴らしい本を出版しました。これを手にとっていただきますと、今私がお話ししますような技術と芸術は、あるときは一体感を持った事柄だということがおわかりかと思います。
(図31)
  ここで日常的な話に戻ります。我々の身の回りにはエンジニアリング・デザインされたプロダクツがあふれているわけです。携帯電話も自動車もすべてそうです。すべて機能、使い勝手、耐久性を満足し、しかもコストをできるだけ絞ろうということで、プロトタイプをつくっていく。しかも、それが手にとってもらえるような魅力的なものでなくてはいけない。大変大きなエネルギーをかけたものが世の中にプロダクトとして出てくるわけです。
  あるいはまた、世界は違いますが、人力飛行機なども、人間が足でこいで空を飛ぶわけですから、きわめつけのスリムな構造をつくっていく。その結果、大変美しいものができ上がります。
  あるいはスポーツの世界でも、スピードで争っているスキーの世界、あるいは陸上でも一瞬とらえたときの姿形というのは非常に美しい。恐らくこういうところも一種のエンジニアリング・デザインといえるのではないかと思います。
(図32)
  そのエンジニアリング・デザインという領域は、当然、設備設計、都市とかまちづくりとか様々なところにあると思います。もちろん構造設計もエンジニアリング・デザインといえますが、アーキテクチャーの世界に引き戻してまいりますと、その難しさというのは、プロダクトに比べると相当厳しいものです。
  1つには、工期の問題、敷地の条件の問題。さらに構造的にいえば、地震、積雪、風、すべての与条件が違う。いわゆるハウスメーカーのつくられるものはプロダクトに近いと思いますが、一般的には個性ある一点生産に近い。そういうものを瞬時に決断してやらなくてはいけない。ですから、これは何か、建築の世界に特有なデザインという概念があっていいのではないかということで、「アーキニアリング・デザイン」という言葉を考えてみました。
  ここには2つの意味が含まれています。1つは多分通常行われているように、アーキテクチャーがまず目指すべきものがある。それをいかにエンジニアリング・デザインで実現するかということ。
  もう1つは、エンジニアリング・デザインには科学とか工学を背景にした様々なポテンシャルがあるわけです。まだ見えない、眠っているポテンシャル、そういうものをいかに魅力的な建築や空間としてつくり込んでいくか。この視点はこれからの21世紀、ますます重要ではないかと思います。考えてみれば、日本の「匠」の世界はまさにその一言かなと思います。
(図33)
  さて、そういうことで会長になってこの言葉を掲げると同時に、とにかく何かやらないと間に合わないなということで、展覧会をやろうということにしました。理事会などでも議論に大分時間がかかって、6月に提案して、12月頃やっとゴーサインが出たという状況です。ひそかにいろんな作戦を練っておりましたが、お金を集めたり、どこでどういう模型をつくるかというのも大変なんですが、一番難しいのは、やはり何といっても、コンテンツをどうするかということでした。
  限られた空間に何を幾つぐらい並べようかということです。そのときに今日、大変僣越ながら配らせていただきました「空間 構造 物語」。この本を数年前に半年ぐらいかけて頑張ってつくったんですが、この本が大変参考になりました。古今東西様々なプロジェクトがこの中にぎっしり詰まっているわけです。
  幸いなことに、この本は中国版、韓国版にも出版されて、広く読まれております。本離れの今の世の中なので、何とか1日10円の本をつくろう、全ページ、カラーにしようとか、いろいろ考えました。自分の撮った写真を2000点ぐらい載せながらつくったものです。まだの方はぜひ手にとっていただけたらと思います。
  この本の中には、誰がつくったかというクレジットはあまり入れてないんです。それを入れ出すと大変なのでかなり簡略化されたものですが、たまたま私が36年ほど前に、大学から世界旅行の機会を与えられまして、研修旅行をしたときに出会ったさまざまな建物を折り込んであります。建設中あるいはモダンな建物もおもしろいですが、やはり昔の世界遺産を含めて、そういうものをフラットに並べるとまた違った物語が出てくることがおもしろいと感じました。そのことを模型で実現したらどうかと思ったわけです。
(図34) 
  とにかく田町の学会の会館でやろうということになりました。スペースの関係上、どんなにつくっても百幾つだろうということでコンテンツを選び、それをグルーピングしてみました。Aの歴史の歩みから、住まい、あるいは都市の問題、超高層の問題等々、様々なテーマに分けて、とりあえずダーッと並べてみたわけです。
(図35)
  既につくられたものの模型をつくるというのは、プロだけでなく学生でもすぐできます。学生は、自分の作品を模型にするのは結構みんな一生懸命やるんですね。それとはちがって今回は、既につくられた名作、傑作、時には話題作、問題作、そういうものを取り上げながら、どういうふうにその建物を見せたらいいか、どういう仕組みがあるんだろうかということを探しながらそれを見せる方法を考える。それを勉強してもらいました。スタディー模型を作ったり、中間発表をしながら、小さい模型なんですが、皆さん本当に頑張って勉強してくれました。
  中には、日建の山脇さんみたいに、プロのものが出てきたりしていますが、それが入りまじってもおもしろいなと思っております。
(図36) 
  そんなことで、アーキニアリング・デサインという言葉も少し難しいので、「模型で楽しむ、世界の建築」というタイトルを大きく掲げてみました。おかげさまでたくさんの方に来ていただきましたし、日建設計を初め各企業の方にも大勢ご参加をいただいたことを感謝いたしております。
  東京だけではもったいないということで、今全国を巡回中です。福岡から金沢、札幌、仙台。仙台はちょうど大会中になりましたので、8日間ぐらいだったんですが、1万人を超える方が、お子さん連れで来てくれました。それから、京都、名古屋、広島に行って、今、高松が始まろうとしています。それから埼玉に来て、最後に東京に参ります。東京は2月の末、2月の26日から東京駅前の丸ビルのマルキューブでコンテンツを少し新しくしながらやりたいなと思っております。
  今、この会場の壁にポスターが2枚張ってございますが、これは12月の中ごろにやります埼玉のポスターです。こんなふうに各地域ごとにポスターやらいろいろなイベントを絡めながら、それぞれの地域で楽しんでいただく。実は模型をその度に東京に持ってきてまた運ぶということで、紙と木の模型はよれよれになっております。展示期間中、一生懸命補修をしながら運んでおります。
  今日は、あまり時間もございませんので、中身の話はほとんどできませんが、世界遺産が幾つかありますので、その話を少ししてみたいなと思っています。

4.世界遺産に学ぶAND

(図37)
  世界遺産の登録は今年で既に1000件ぐらいになるだろうと思います。日本でも次の候補がメジロ押しです。最近はテレビでもたくさんの世界遺産が紹介されています。その中で人気ナンバーワンは、何といってもペルーの空中都市、マチュピチュだろうと思います。私が訪ねたのは1983年、ちょうどその年にこのマチュピチュが世界遺産に登録されました。当時はそんなことはわかりませんでした。とにかくやっとたどり着いた遺跡を前にして、自然と都市がいかに美しく共生しているかということに大変感激したわけです。
(図38)
  そんな風景をジオラマであらわしております。インカ帝国は石造技術にすぐれています。しかし、アーチ構造は見あたらない。古代の石造の技術の歴史を語ると同時に、さらにここではインフラとしての水が豊かに都市の中にあふれているということで、石と水と町、そういうテーマでもくくってみました。
(図39)
  石・水・都市というテーマでは、3つの世界がこの展覧会では並べてありますが、その2つ目が、アルベロベッロというイタリアのかかとの辺りにあるものです。屋根も壁も3層構造になっていて、夏は涼しく、冬は暖かいという環境建築としてすぐれたものです。私は2度訪ねましたが、何度行ってもおもしろい。特に、水が大変少ない地域で、水をいかに各家が貯水するかという仕組みであるとか、町全体がコミュニティーとしてその水をどういうふうに広場に集めるか、そういうしかけがたくみにつくられている。現代への示唆になりそうです。
(図40)
  もう1つ、構造的にもおもしろい。単純に石を積むだけではなくて、このアルベロベッロでは、新しい技術の革新が少しずつ見え始めている。持ち送り構造というものです。石を少しずつずらしてつくるわけです。その原点がギリシャのミケナイの遺跡に、アトレウスの宝庫として今も残っています。それがエーゲ海を渡ってアルベロベッロをつくったわけです。
(図41) 
  その石造技術のごく簡単なメカニズム――持ち送り構造とは一体何だろうということを手にとって実験するような仕掛けもあります。積み木があるんですが、ここをスタートラインがありまして、ここからだんだんせり持ちしていって、何センチまでいくのか、親子で競争してもらう。これは原則をつくらないとすぐできちゃう。原則は3つあります。第1は、片手でやる。第2に、下から必ずやる。第3に一度置いたら動かさない。最後の置いたら動かさないというのが難しくて、これを置いた瞬間にガラガラッと落ちるというのは、プロの人はわかります。この方は構造のできる人だなという人は逆に手が動かなくなっちゃう。子どもにせかされている人もおりました。
  これはいわゆる片持ちばりの応力を求めることに似ている。先端からは簡単にできるけれども、逆からやろうとすると、反力を求めなくてはいけない。逆工程と順工程問題にもつながる。大学1年生の力学の時間でも楽しめる基礎的なものです。
  そういう持ち送りの技術から、やがてせり持ちの技術がでてきます。カテナリーというのは一発で鎖の形が決まりますが、一般にアーチというのは、理論的には球を並べればいいわけですが、それはできない。不安定なアーチ構造では、支点部の傾斜とかスパンを変えると、全体の形は変わってくる。ごく簡単に模型ではできるんですが、これを解析的にやろうというと、なかなか手ごわいものです。
(図42) 
  そんなことで、やがて、ローマ時代のポン・デュ・ガールなどに代表されるせり持ち構造や真のアーチ構造の時代がやってくる。私が最初行ったときは、石造のアーチ構造に目を奪われていましたけれども、2度目に参りましたときは、やはり水の問題、これをどう技術的に解決するかということに大変感心いたしました。ポン・デュ・ガールは、南仏のニームという町に源泉から約50キロずっと迂回しながら来ます。50キロの間にどのくらいの落差があるかというと17メートルしかないんです。ですから、1キロ行って34センチの落差しかないところを延々と運んでくるわけです。その測量技術、水密性、水圧をどうやって抜くかなど、いろいろな技術がおもしろい。
(図43)
  実は、日本にもそのたぐいの技術があるということを展示してあります。有名な通潤橋です。これはローマのただ水を平らに流すのと違って、一度谷に落として上に持ち上げる逆サイフォンを利用している。水圧が物すごくかかるわけですから、水密性をどう保つかということが、日本のしっくいの技術と結びついている。ローマの橋はアーチと直行方向に非常にフラットにできていますが、日本ですと耐震性能が求められる。熊本城の石垣の技術を組み入れることで、全体の形態も日本独自のものが生まれている。
(図44) 
  さらに、アーチの持っている力のつり合いを、応力分布として考えてみる。簡単にいうと、ミドルサードの原理ということで大学でも教えるわけです。ゴシック・カテドラルの中にも含まれている。ドームのスライトが常に壁体の中の3分の1を通るように上からの重量を加えて力の流れを変えていく。この時代には、科学はないわけですが、何らかの経験と勘でつくり上げたということがわかります。
(図45)
  これをどう表現するかということで、学生諸君が非常におもしろいアイデアであらわしております。
  それは1つは、ガウデイの逆さづりを使いながらあらわしています。この逆さづりの原理というのは、皆さんもよくご存じのように、17世紀にロバート・フックが考えたといわれております。お子さんが実際にこのチェーンをさわって、重力が形をつくるんだと体感します。それを反転すれば、アーチになって石造でもいくんだということが、ごく簡単に体験できる。なかなかよくできた模型かなと思います。
(図46) 
  さらに、そういう力のつり合いはガウデイのコロニアル・グエル公園の擁壁の形にもみられ、これを錘りの分布とテンションでうまくバランスさせながら、この形が土圧とのつり合いによって生まれているということをあらわしております。
  そういう設計技術というか原理が、ガウデイの原点として、脈々と流れているわけです。その1人が、先ほど紹介いたしましたハインツ・イスラ−というスイスのアーキテクトエンジニア。今年亡くなりましたが、彼はこういうシェル構造を薄い布に石こうをしみ込ませて、それが固まる形状をそのまま反転してつくるわけです。周辺が微妙にうねっているものをシェルの補剛に役立てているということが見てとれます。
(図47)
  これは少し難しいんですけれども、フライ・オットーによるラチスシェルです。細いチェーンの吊り形状と細い棒がたわんだ形というのは、よく似ています。そのことを利用して、こういう有機的な形態をマンハイムの多目的ホールでフライ・オットーが実にうまく木の5センチぐらいの断面でつくっている。ディテールも画期的です。つくるときはやわらかくつくっておいて、できたら限りなく固くなる。これが難しいわけです。
  そういう木の持っている弾力性、たわみの特性をフライ・オットーが初めてやったかというと、多分そんなことはない。
(図48)
  例えば、群馬県にある上三原田歌舞伎客席構です。模型では実験ができるようになっています。ひもを引っ張ると、直線の木がぐっと下に下がる。そのたわんだところを縄で縛っちゃう。舞台が終われば、またほどいて住宅等に使うという、江戸時代の日本の匠が考えた木のリユース・システムです。
(図49)
  さて、先程のアーチまでたどり着いた石造の世界のその後の発展を見てもらおうと、ここでは3大ドームを並べてみました。ローマのパンテオンとイスタンブールのハギヤ・ソフィア、フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレが同スケールで並ぶようになっています。いずれも、我々が見たことのないような構造の仕組みであるとか、パンテオンには球形がうまくおさまっています。ハギヤ・ソフィアはなかなかユーモラスです。四角い断面をどうやってペンデンティブでカバーするかということもよくわかります。
(図50)
  ドーム建築は、ローマのパンテオンが原点となっている。つまり、建築の歴史はドームの歴史ともいえる。素材の発展によって劇的に軽量化になっているということも、歴史の1つの流れとして見てもらいたいと思っています。
(図51)
  それから、日本の匠の世界にもいろいろなすぐれたものがあります。ここでは木塔を見てもらおうということで、薬師寺の西塔を出しています。この塔が再建されたのは1978年。30年前ですが、たまたま私は現場を見ることができました。心柱のありようはいろいろな選択があるようです。ここではくさびを入れて、周りの木組みの沈下といずれ整合性を持たせようということです。コンピュータで解析してみようといろんなモデルが提案されているようです。
(図52)
  そんなことで、日建設計さんがつくられている東京スカイツリーも含めて、最近の新しい超高層の幾つかを出展しています。五重の塔そのものではないんですが、制震やエネルギー吸収ということで、古代の知恵が現代も活用されているということを見ていただこうかと思っております。
(図53)
  一番高い建物としては、ブルージュ・ドバイをつくってもらいました。これは実はスタディー問題で一番最初につくったものです。学生諸君はもっときれいにつくろうといったんですが、もうこれはこれでやめておきました。これが一番ドバイの状況をあらわしているのではないか。多分この模型を取り囲んで、いろんな議論がわき起こる、そんなことを期待しているわけです。
(図54)
  それから、今度は鉄の時代を何かお見せしようということで、エッフェル塔の紙の模型をつくってもらいました。遠くから見るとシンプルな形ですが、近寄っていきますと、なかなか絵をかくのも難しい。ここでは、全体の模型とディテールをつくってもらいましたが、恐らく当時の小さいアングルを合わせたら接合部がどうなっているかということを、実務の方もあんまり見たことがないのではないかと思います。
  自由の女神も、エッフェルだよということを一般の人にも知っていただきたい。
(図55)
  巡回展のスタート、九州のJASCAの方々が参加してくれた中で、小学生のお子さんがこの模型を一生懸命つくってくれました。終わってから、あげるよというと喜んで自分の家に持っていっちゃいました。毎日眺めているそうです。博多弁で、「いつ行けると?」とか「遠いと?」といっているそうです。そのうち大学生にでもなったらアルバイトでもして、エッフェル塔に会うのを楽しみにしているのではないかと思います。
(図56)
  最後は、RCということになるわけです。RCもいろいろありますが、ここではブレキャスト。シドニー・オペラハウスを紹介したいと思っております。恐らく建築家が存命中で世界遺産に登録されたのは、このウッソンのシドニー・オペラハウスが初めてだと思います。世界遺産になった翌年、昨年ですがウッソンも亡くなってしまったようです。彼の描いたイメージ、それをどう実体化するか。そこに物語があります。
  自由な四面形態と構造解析の問題もありますが、打込みタイルのパネルをどう合理的につくるかという難問もある。卵か扇子かという話や、球面ジオメトリーの発見、安定大架構の発想などもおもしろい。そうした物語をたどれるようにということでいろんな模型をつくりました。後ろに見える柱は、仙台のメディアテークの柱です。ここでも1万人を超える方が見えました。特にお子さんが興味しんしんで、ここに写っているお嬢さんは、1時間ぐらいいました。あっちこっち見てはまた戻ってきて、ウッソンがやった球角のジオメトリーのパズルを一生懸命自分で考えながらはめ込んでいました。
  膨大なプレキャスト・ユニットをプレストレスでどう締め込んでシェルをつくるか。集積の技術という点でも革新的な意味があるのではないか。
  おいでになった方も大勢いると思いますが、私は、中のレストランに入って、港側と町の側が一緒に見えるダイナミックなスペースが大変気に入っております。
  坪井研の大学院にいたときに、このシドニーの青写真がたくさん送られてきました。すごいのができるんだなと思って、感心していた当時を思い出します。 
(図57)
  もちろん、代々木オリンピック室内競技場も、世界に類をみない20世紀を代表する日本の最高傑作だと思います。
  この写真もセスナ機をチャーターして自分で撮ったんです。機体が傾いている中を身を乗り出して撮るというのは結構腹筋が要るんだなということを痛感しました。この時代も計算機で、コンピュータがまだ生まれる前の仕事ということです。
  この代々木の見方もいろいろあるわけですが、模型をつくることによって、一方は原宿の、一方は渋谷という都市の流れがどういうふうに建築空間につながってくるかがみえてくる。あるいは開かれていながら閉じている空間というのはどういうことか。3ヒンジをもった半剛性吊屋根や吊橋にヒントを得た自碇式軸力系中央ケーブルといった構造システム、あるいは可動式サドルやユニヴァーサルジョイントといったディテール。これらのものがすべて1つの建築の中におさまっていることが分かる。こうした具体的な形でのホリスティックなデザインを若い人たちにもぜひ学んでほしいなという思いがあります。 
  さらには、シドニーがそうならば、代々木の競技場もぜひ世界遺産にならないかなと実は強く思っております。

5.都市・環境のAND

(図58)
  いろいろな展示テーマがあるうちで、「都市・環境のAND」は、今回のフォーラムに一番近いと思いながら、とてもこの話は今日は詳しくできません。ただ、どんな展示があったかだけをご紹介したいと思います。
  先ほど申し上げましたように、エンジニアリング・デザインの概念は、構造だけでなく設備や環境、都市もそうですし、あらゆる計画の中で生かされている。特に、最近例えばコンピュータとものづくりを結んだBIMの技術、そういう新しいテーマも次のステップでのアーキニアリング・デザイン展にぜひ入れたいなと思います。  
(図59)
  伊藤豊雄さんのスペインのガビアの公園プロジェクトであるとか、ちょっと古いんですが、アクロス福岡。南太平洋のチバウ文化センター、ロンドン市庁舎、最近いろんな賞を取られました東工大レトロフィット。これも先ほどの対震デザインの象徴的な事例だと思います。
(図60) 
都市の問題はテーマが大き過ぎるので、ここでは代表例として、1960年に話題になった丹下健三さんの東京計画1960、あるいは最近の尾島俊雄さんの地下一体都市TOKYO2050、大野秀敏さんのファイバーシティが展示されています。
(図61)
  それから、太田さんにつくってもらったPopular Scape。これはなかなかの迫力です。現在の都市化の問題、約65億のうちの35億の人が都市に住みつつある。どんどん増大する都市を時系列でビジュアル化して、それを宇宙衛星から見るような形で、世界中を回っているような画像でした。いろんなディスカッションを喚起するプレゼンテーションだと感心いたしました。

6.サステナブルなAND

(図62)
  昨日(11月17日)の参議院の建築基本法の話の中でもサステナブルという言葉がたくさん出てきました。これは今、いろんな分野の方が取り組んでいるところです。私どもの研究室でも、そんなに本格的なことはできませんが、こういうこともある程度意識しながら研究やプロジェクトをしようということを考えております。
(図63)
  伊勢神宮とドイツのケルンのダンス場です。ダンス場はテント膜でできている。恒久膜ではない弱い膜です。ご承知のように、伊勢神宮は20年でご遷宮することによって、木材あるいは日本の技術の伝承ということをうまくアピールしている日本の文化の象徴のようなものです。
  ケルンのダンス場も、何度か参りましたけれども、いつも美しくきれいになっています。こんなにもつはずはないなというので聞きましたら、やはり時々つくりかえている。冬になると雪が降るので、しまってしまう。そういうテンポラリーかつ長持ちのするデザインです。
  この2つを見てみますと、もちろんフィジカルな意味の材料の耐久性、丈夫さも大事ですけれども、やはりデザイン的にいかにそれが魅力かということが、物を社会資産として長持ちさせ、大切にされる根本の非常に重要なことだろうということを痛切に感じるわけです。
  話は飛びますが、私の卒業研究の時代に、フラーの研究をやっていまして、ドームなどはわかったんですが、よくわからないことが2つありました。1つは、「テンセグリティ」という言葉です。今の若い学生諸君も興味があって、皆さん知っているんですが、引っ張りの海に圧縮の島が浮かんでいるという概念です。
(図64)
  日本では、恐らく今のところ、最初にして最後のプロジェクト、テンセグリティによる天城ドームです。ストラットが鮮やかに空中に浮いている。  
(図65)
  これは最近の仕事ですが、柏の杜という展示場で、東京ドームほどの大きさのものを1000平米ぐらいのブロックに分割してつくっている。雨どいを構造柱として使いながら、鉄板屋根では得られない風の流れとか、輻射熱を防ぐ。この辺はテンセグリティな表情です。全体として超計量であり、生産性や施工性が大変いいということです。
(図66)
  テンセグリティは軽量性が特徴ですが、一方、プレストレスという問題が結構重要です。つくば万博のときのテスト・ユニットです。三角形を1つの圧縮材とみなしてストリングにテンションをいれる。外側のこの白い部分でつくられた多面体は、立方八面体といいます。キューブ・オクトヘッドロン、Cu−Ronと呼んでおります。この多面体は、ここによく見えないかすかなケーブルがありますが、これを外しますと、パタパタと畳んでしまうような性能を持っている。多面体の中でも安定なものと不安定なものがあるわけです。
(図67)
  そのケーブルのかわりに、ここにあります通路とこの曲げ材を組み合わせまして、全体的には、海の泡のような表情を持ちながら、剛接がしっかり出るような唐戸ブリッジの構造をつくることができました。
(図68)
  いずれにしても、テンセグリティというのは、アートとしては大変おもしろくて、トリッキーでいいんですけれども、それを構造体にすることがなかなかできない。そういうことで、テンセグリティの概念を拡張して何とか構造化できないかというのが研究室のテーマになったわけです。
(図69)
  突然ですが、今年の夏、お台場に高さ18メートルのガンダムができた。今年のデザイン大賞の最後の15作品まで残ったという話も聞いておりますが、残念ながらこれは簡単に動き回ることはできない。
  今年の秋、グッゲンハイムのビルバオに行ってまいりました。そこに六本木ヒルズと同じようなクモがございます。これももちろん動かない。
  ところが、横浜の150周年の開港記念で出てきたラ・マシーン、これは実に複雑に動き回りまして、もちろん走行はタイヤなんですけど、この動きは見ていても飽きない。
(図70)
  何をここでお見せしたかったかというと、この動く秘密はこのヒンジのところに小さいピストンのような圧縮材があって、それを油圧でもって動かす。わずかな動きで多様なパフォーマンスをする。
  考えてみれば、人間の体は、そんなピストンとかオイルジャッキなしで、非常にたくみに動くわけです。しかも、全部の関節はヒンジになっておりますが、それを回転ヒンジも固定にも瞬時にできる。それはなぜかというと、バラバラの圧縮材である骨が筋とか筋肉によってつながっている。ひょっとしたら、テンセグリティの先にこういうものがあるのではないかと考えました。要は、バラバラの圧縮材なり曲げ材にテンション材を少し絡めることによって、全体構造としての強度や剛性を得る。しかも、つくるときは非常に簡単で軽量化できる。
(図71)
  これは船橋日大前駅、わずか20メートルくらいの小さいスパンですが、こういうあやとりのようなドットを絡ませることによって、剛接構造ではない部分構造で成立させたということです。これをスケルションと呼んでおります。こういうスケルションの原理、あるいは先ほど紹介した張弦張り原理の大きな建物に、それぞれ雪荷重、積雪荷重に負担させるような仕組みを持たせたのが金沢駅前のもてなしドームということです。これがファラディーホールに使われたようなリング、積雪をカバーするようなテンション材でつくられております。
  見ておいてほしいのは、これは普通の立体トラスです。上弦、下弦があって、斜材があるから、上にトップすれば斜材が視覚的にも経済的にもちょっとうるさくなる。ということで、今述べているテンセグリックなシステムですと、同じ立体トラスではありますが、ちょっと違った構造体に仕組んでくる。
(図72)
  建物全体をテンセグリックな考え方でいうと、例えば静岡にあるエコパ・スタジアムは、できるだけ自然と融和する形で、形をつくるというと無理にガッーとつくってしまうこともできますが、これを1本1本樹木をつくるようにしてつくっていこう。このときにテンセグリックな剛体と自由なものを組み合わせることによってつくる。大体50メートルあるんですが、足場がないわけです。一切足場を使わないでクレーンが地上からつまんで上に置いて、先端を2センチという誤差におさめる。約2時間でできるわけです。それもすべて後ろにありますテンション材をちょっと調整するとできる。そういう大変すぐれた施工性にもつながってくる、そういう可能性もある。
(図73)
  ご存知だと思いますが、出雲ドーム。これも初期のこういう放射型アーチの単純なものをいかに補剛していくかということで生まれてきたわけです。テンション材はほとんど目に見えない。アーチの持っているダイナミックな、あるいは木造の持っている力強さが大変素直に表現できた建物だなと思います。
(図74)
  そうした全体にテンションを絡めて、つくっているシステムに対して、今度はユニットで何かできないかということをご紹介したいと思います。
  これは有名なバックミンスター・フラーの概念をあらわしています。アトラクションというのは、例えていうと自転車の車輪ですね。スポークがあって車輪がある。テンションでぐっと締め込んでいくと、かなり軽量にできます。こちらはエキスパーション、風船ですね。内部に空気を閉じ込めて周りのスキンの張力で釣合わせる。この2つのメタファーを手がかりにして、今のところ、TypeT、U、Vという立体的なユニットを考えてみました。
(図75)
  それを利用した1つの例が、これはタイプTです。最も軽量化されたテンセグリティ・トラスです。建築学会の会館が、築後約30年、中庭をコンバージョンしようということになった。クレーンも入りませんので、とにかくバラバラの部材を持ってきて、人手で組んでいくという超軽量なものを要求されました。ドームがふだんはこの上にあって、ボタンを押すと、音もなく可動し、約5分でこういう状態になる。自分でいうのも変ですけども、非常に意味のあるコンバージョンだったと思っております。既設の空間を変えていく。あるいは動くものと固定したものと組み合わせるという概念。これは1つのサステナブルなソリューションとして重要な糸口になるのではないかと思っております。
(図76) 
  テンセグリックトラスのタイプUの例は、こんなガラスファサードです。名古屋大学の野依ノーベル賞記念会館です。すだれのような表情が求められました。
(図77)
  これは名古屋のアビタンというアトリウムです。これはディテールですけれども、ガラスを穴をあけないでとめるというシステムです。MJCと我々は呼んでいますが、ガラスの固定金具が同時にラティス材のジョイントもかねることができます。
(図77)
  それから、最近静岡駅前にできたガラスでつくられたオーバル・ルーフですが、これはタイプVという一番丈夫なユニットを使ったものです。スカスカの構造ですが、非常に大きな耐力を発揮するものです。
(図78) 
  そのタイプVを使った一番大きな事例は山口きららドームです。外見はいかにも自由な曲面ですが、これも無理をしないで、できるだけ自然な構造方式でやりたいと考えました。ローマのパンテオンにならって、ここに大きなオクルスを設けて、自然風が常に流れるようにしています。室内環境を確保することに成功したと思っています。
(図79)
  TYPEVはストリングスのプレストレスの導入というのが一番の問題です。予め張力レベルから定められた薄い板を挟んで、それを抜いてからジョイントのすきまをギュッと締める。8本のストリングに同時に、プレストレスが導入されますが、ほかのユニットには一切力が伝播しないという性質を持っている。
(図80)
  膜構造は、最近なかなか事例が少ないんですが、私はまだまだこれからいろんな使い方があると思っています。設計上では、特に2次部材を余りつけないで、自分で浮遊できるようなものにしたい。独特な膜の特性があって、伸びやすいんですが、その伸びを傘のように吸収してしまおうということで、ばねを使ってその変形を吸収を図るばねストラットというのを考えました。
  最近、ETFEというフィルム材料があちこちで使われ始めた。日本ではまだ相変わらず認可されない、建築材料として認めてもらえないという大変閉鎖的な雰囲気があるわけです。それはそれとして、空気を入れたピロー方式ではなく、空気なしで成立させるために、ばねストラット方式を利用した新しいシステムの実験を今やっております。
(図81)
  これは以前に、学会の会館で行ったフィルムを使ったオーバル・ドームの様子です。こんなような雰囲気が可能になるということです。
(図82)
  それから、とても小さなプロジェクトですが、張弦アンブレラを名古屋の「愛・地球博」のときにやりました。終わったら畳んでまた再利用しようということで、テンセグリック・システムの応用です。
(図83) 
  万博終了後にお茶の水の大学内に持ってきまして、学生諸君につくってもらいました。約40分ぐらいでつくれる。こうやって、デザイン性のあるシェルターができますと、敷地の環境が格段によくなったように感じます。
(図84)
  これは大学でドームの実験が終わった後、ここを裁断して、そこに柱を立てまして、野外のウエルカムドームに使っています。
  一種のトレーニングといいましょうか、学生と一緒にセルフビルドを体験教育としてやるということが大きな意義をもつように思えます。
(図85)
  学会としても、「学生サマーセミナー」のイベントのように若い人達と実務の方との交流の場を時々設けていきたいと思います。
(図86)
  一番新しいこういうテンポラリーなシステムは、はさみの原理、シザース、これを使っています。宇宙空間ですと簡単に広げたり縮めたりできますが、風の抵抗等を考えると、そのままではまずいので、先程お話ししたテンセグリックになるように筋肉、筋としてのケーブルをちょっとつけますと、大変丈夫になる。さらに、これを人力だけで何とかできないかということで、出雲ドームのときに経験したプッシュアップ工法を思い出した。地上で組んでおいた。3ヒンジのドームをもち上げるという技術が使えないか。昨年の展覧会でこれをやろうということで、まず、畳んであったものを広げて3ヒンジにしまして、グッと持ち上げて引き寄せて、アーチをつないで完結したものをグルッと90度回す。3時間ぐらいでできました。そうすると、四角いホールの雰囲気が全く違ってしまう。その演出効果には驚きました。この張弦シザーズ−虹のシザーズは、愛・地球博のときは、約半年間、台風が来て心配もしたんですが、無事休憩所の役割を果たしました。
  おもしろいのは、1つの部材が、ピボットといって、はさみの中央、ここの点をちょっと変えると、形をかんたんに変えるということ。同じ部材でもいろんなものができるということ。これも大変おもしろいと思っています。
 

7.カタチの先にあるもの

(図87)
  最近、コンピュータあるいは建設の力が高まったので、建築の形というのがかなり自由にできるようになりました。こういう時代に我々が、これからも含めて、どういうふうに考えるのかということを模型展では一緒に議論したいと思っております。
  一般にエンジニアリング・デザインされた身の回りのプロダクツや橋梁などには、力の流れやしくみをたくみに利用したものがある。こういうものを建築の空間構成に利用する、あるいは建築の造形とか形態に利用するということが当然ある。この酒田の体育館なども、技術と完成が結びついたよい事例だと思います。
(図88)
  唐戸市場では、約100枚のプレキャストされたコンクリートパネルをインナーケーブルでしっかりとめたものをさらにアウトケーブルで絡め取るんですが、トータルの構造は、自重時の曲げモーメントの分布を利用するということです。
(図89) 
  実は、そうした発想は我々だけではなくて、昔の人もいろいろやっています。例えばポンピドーセンターのコンペ案。ピーターライスの本などを見ますと、彼らが成功した理由は、フォース橋、この力の表現にヒントを得ている。今学生たちがやっている人体実験で、彼女はこの位置、2人の男性がこの位置です。こういうシステムを持ち込むことによって、非常に力強くユニバーサルな空間が生まれたということ。  
(図90)
  ガーブレットのすぐれたデザインは見事です。最近は、自由局面ともいえるようなシェル構造を採用しているプロジェクトをよく見ます。もともとキャンデラのやっていたHPシェルは、美しさつくりやすさからできたと思います。いずれにしても、膨大な支保構や仮枠があって初めて成立するという関係を知る必要がある。したがって、こうしてつくられるものは相当エネルギーがかかっているわけで、カタチは心を込めてつくる。そのことが大事だろうと思います。
(図91) 
  それから、単純な形でもちょっと工夫すると、実におもしろいものができるという事例としては、村田豊さんの発想した大阪万博の富士グループ館。これは世界が認める傑作だと思います。これも会場で体験することができます。同じ長さのチューブの底辺をちょっとつまんで回転させると、一瞬で不思議な美しいフォルムができる。空気による構造システム、形態とジオメトリー、こういう一体性がおもしろいんです。
(図92) 
  先ほど紹介しましたシドニー・オペラハウス。これも模型をよく見ますと、シェル四面が紙でできています。紙で二重曲立はできないだろうと思いますと、学生諸君の模型の手腕はすごいものがあります。
  カラトラバも最近ますます活躍しています。いろんな作品はありますが、このアラミージョ橋は、普通はバックステーがあるのが斜張橋と思うんですが、それがない。バックステーのかわりに支柱を傾けることによって釣合いをとり、全体の軸力として流れるというもの。
  それに対して、ミュンヘン・ミュージアムのガラスの橋。シュライヒさんの卓抜なアイデアには驚きます。ここの断面だけ見たのでは、どうしてこのガラスの床が安定しているのかというのは、なかなかわからない。こういう立体的なメカニズムも模型をみるとよくわかる。ケルハイムの歩道橋など、町の景観としても非常に見事なものです。
(図93)
  こういう立方体を詰める、これも最近よく見られます。北京オリンピックの屋外プール、水立方はちょっとやり過ぎのような感じがします。
(図94)
   最近見たものでは、青木淳さんの白い教会は、なかなかおもしろい構造ですが、彼の発想としては、小さな多面体でまず空間を埋め尽くして、そこを今度はえぐってとっていく。これはピラミッド的な発想なんだといっている。こういう多面体から物事を考えていくということはこれからあるのかなという感じもいたします。
(図95)
  それから、ビルバオのグッケンハイム美術館の仕事は、構造と表層のメタル・スキンとは当然違うわけですが、建築空間としてはなかなかよくできていると思います。これもITの技術によって仕上げをどういうふうにメーキングしていくかという新しい1つのあり方なのでしょうか。
(図96)
  最近は、「アルゴリズム」というテーマの研究が進んでおります。その発端となった大江戸線の飯田橋の地下鉄駅も、これが学会賞を取ったときにはもうひとつよくわかりませんでした。しかし、これが1つの流れとして、最近、話題を集めています。
(図97)
  伊藤豊雄さんのサーペンタイン・ギャラリーです。大変おもしろい空間ですが、ディテールは、いかにも大変だなという感じです。小さいからよかった。
(図98)
  それに対して、ブルージュ・パビリオン。これは非常にやわらかい構造体をパッチワークで補強してあるんですね。曲げモーメントにうまく抵抗している。エンジニアの力量を感じます。
(図99)
  それに対して、北京の鳥の巣については、いい悪いという話はそれぞれ議論があると思いますが、まずはこれがどういうことで成立しているかということを理解することが大切です。4つの仕組み模型がありますが、最後に行くと、シンプルな、ラーメン構造を複雑化していることがわかり、構造の非合理性がみえてくる。最近また見てきましたが、大人気で、中国中の人が見物に集まっています。
(図100)
  高雄ワールドゲームです。相当エネルギーをかけた力作ですが、これまたコンピュータなしではできない仕事です。
(図101)
  伊藤豊雄さんの台中メトロポリタン・オペラハウスです。これも成り行きがちょっと心配でしたが、プロジェクトも動き出したということです。
(図102)
  これは、本からコピーさせてもらって申しわけないんですが、磯崎さんのフィレンツェ駅です。まさかできるとは私も思ってなかったんですが、着々と工事が進んでいるということです。
(図103)
  こうしてみますと、私どもがやった静岡・エコパスタジアムや山口きららドームのように、できるだけ無理をしないで自然につくろうという考え方も、これからの大きなテーマになってくるように思います。

8.「技術的挑戦主義」

(図104)
  大分駆け足になってきましたが、最後に少しお話します。それでは、アーキニアリング・デザインというのは日本語でいうと何だろうな、という問いかけがあります。なかなか難しいのですが、とりあえず「技術的挑戦主義」という挑戦的な言葉を使ってみます。
(図105) 
  ダ・ヴィンチの話は先程しましたが、彼はヘリコプターのアイデアもつくっていました。これは彼の発明した焼き肉機です。ここに燻肉があります。暖かい空気がどんどん上っていくと、ヘリコプターの翼のように扇風機が勢いよく回る。すると、この軸は急速に回転して、焼き肉はこげることはない、おもしろくてユーモアがある。何となくこじつけでよく似たものがあるなと思ったのは、シュライヒの提案しているソーラーチムニーです。約1000メートルのタワーを立てます。そうすると、灼熱の砂漠の太陽がこの中を熱して、その高温の空気が一気に駆け上るわけです。扇風機ならぬタービンをここにしつらえて、これでもって発電をして、1基20万都市を賄える。向こうにエアーズロックが見えますが、こういうオーストラリアの人の住まない砂漠、あるいはインドやアフリカ、こういうところで1基立てれば、そこがまた次のチムニーを増殖してくれる。こうすれば多分オイル問題はなくなるのではないかという彼の持論です。事務所も相当なエネルギーをかけて、技術的にこれを立証しようとしております。
  つい先週聞いた話だと、オーストラリアはまだ実現がとまっていますが、アメリカのオバマが環境問題に取り組んで、この話をかなり真剣に考えているというニュースを聞きました。もし、どなたかご存じでしたら、ぜひお聞かせください。
(図106) 
  いずれにしても、こういう考え方は、50年前にバックミンスター・フラーが発した「宇宙船地球号」という言葉が、いかに今日的な意味を持っているか、ということにつながります。私も卒業研究のときに、この言葉に出会ったんですが、そのときはよくわかりませんでした。このメッセージは今日的で、まさにエンジニアリングの力が求められているなと思います。
(図107) 
  エンジニアリングの技術的挑戦というのは、そういう新しい未来的なこともありますが、今までの歴史をみていると、必ずそういうものが見え隠れしているわけです。例えば、アロップのペンギンプールも、当時生まれたRCという素材に立体的なねじり抵抗をいかに有効に活用し得るかということが考えられています。  
(図108)
  それから、ライトの落水荘もそうですね。ここには技術者の顔はなかなか見えませんが、相当革新的なことに挑戦している。ところが、そのこともあってか、床がだんだん垂れ下がってきてしまうので、プレストレスを入れて、とにかく一度たわみの進行を、防止しようということになった。工事も無事終わったようです。そんなことも今回の展示会で模型としてあらわされております。
(図109)
  それから、レム・コールハースがセシル・バーモントと組んだボルドーの家も、でき上がったものは相当トリッキーなものです。どうやってここにたどり着いたかという、エンジニアとアーキテクトの共同の物語を模型展の中に示そうとしています。
(図110)
  あるいは、最近の事例では、学会賞の恐らく一番小さい物件だと思いますが、日建の大谷さんが設計された積層の家があります。私も何回か伺いましたけれども、とにかく5センチのPCをすき間をつくりながら積層していくという発想が機能・感覚・構造を総合しながら住空間の新しい境地を開いたのかなと思います。
(図111)
  それから、今年の学会賞は、石上純也さんでした。彼も最近、ある仕事でおもしろい若手建築家と思って、注目しはじめたんですが、例えば四角い風船という作品があります。それから、たわまないテーブル。本当に薄いテーブルで、「えっ、どうして」という仕組みになっています。
(図112)
  このテーブルも展示会では、模型を並べました。1枚のたわんだテーブル模型と真っすぐなテーブル模型を2つ並べました。左は張弦張りだったわけですが、右のおもりが5つ並んだテーブルには何も仕掛けがない。何かおもりをとりたくなるような気持に駆られますが、でも、さわっちゃいけない。ということで、おもりをとったら、どういう形になるかひたすら想像力を働かせてみる。
  先程、コンピュータとデザイン、感性とITとの融合ということがこれからのテーマだと申し上げましたが、よく見ないと、中身がいろいろあると思うんです。例えば、鳥の巣的な、強引というんでしょうか、体力勝負でいってしまうのもありますし、石上さんのKAIT工房のように、基本的なアイデアとコンピュータ技術をうまく使って、感性がそれを導いてくれるものがあります。恐らく環境的な問題もそういう手のもので、私は、大変おもしろい時代がこれから始まる、あるいは大事な時代に突入するのではないかと思っています。
  簡単に、芸術、技術、科学という言葉を最初に説明しましたが、それが今後の流れを考えると、極端な場合、芸術主義、工学主義、といったものもあると思うんです。しかし、やはり本流は全体を統括し、融合させてホリスティックなものにどうまとめるか。それをできるだけ計画の初期的な段階から取り組んでいくことがとても大事だろう。「挑戦的技術主義」というちょっと変な言葉を出しましたが、たとえば、ブルージュ・ドバイのように、ただ高さが高ければいいという問題ではない。それはめざす技術ではないわけです。我々の目指すべき技術、ベクトルはどこかということがこれからの時代、問われていくはずです。
(図113)
  最後のスライドになります。来年の丸ビルのマルキューブの展覧会に向けて、ポスターを1枚、有名な秋山孝先生にお願いしていましたが、この間こんなポスターができました。何だろうと思いましたら、実は先ほど紹介した私の本の中に、私が一番好きなサルギナトーベル橋があります。これをうまくモデファイしていただいたということがわかりまして、非常に感激しました。これだと橋の世界だけなので、これに少し建築を絡ませたらどうかと。とにかく市民の方が、建築の世界に顔を向けて、建築の仕事とはどういうことかということを我々と共有できることをこれからやらなければいけないなと思う。
  私も会長の間、いろんな会合で、JIAとかBCS、事務所協会や建築士会などの、いろいろな方々と話す機会がありました。日本の建築界を何とか一本化できなかということも含めて、皆さんにもいろいろ教えていただきながら、建築界が少しでも元気になるよう、私もお手伝いをしたい。ぜひお声をかけていただきたいと思います。
  大きなすそ野は1つの建築という姿にまとまっていくようなことをイメージしながら、皆さんと一緒に頑張っていきたいと思います。
  長時間、ご静聴ありがとうございました。(拍手)
 
 
 
フリーディスカッション
 
與謝野 斎藤先生、大変ありがとうございました。
  建築における技術と感性と形と物語性、そしてこれらへの挑戦的な統合概念である「アーキニアリング・デザイン」という新概念の意義と、そのベースにある思想について、挑戦的技術主義という視座から、非常にわかりやすくご説明いただきました。
  また、架構における力の流れ、テンセグリティー、サステナブルなどの要素技術テーマを統合させた実際の作品事例あるいは模型展での作品のご紹介をふくめて数多の具体例を非常にわかりやすく、興味深い刺激的なお話としてお聞き致しました。ありがとうございました。
  それではここで、斎藤先生に是非ともこの点についてさらにお伺いしたいというご質問も含めてございましたら、この場を利用していただいてお聞き頂きたいと思います。なお、ご質問をお受けする前に、私の方から、UIA大会へのアピール活動は具体的にはあの模型展をさらに発展させていかれるお考えなのでしょうか?
斎藤 先程申し上げましたが、今回は本当に短時間で、比較的私が自分で今までやってきたことのわかりやすいものを展示したんですが、UIAに参加できるとすれば、もうちょっと広い分野の方々と新しいコンテンツ、たとえば環境や都市をテーマにしたものを入れたらいいかなと思っています。歴史性を含めながら古今東西のものをフラットな形でお見せするのが一番おもしろいと思うので、学生諸君と専門の方が、できたら同じような場で議論をしながらコンテンツができるようにしたい。つまり、学生諸君を巻き込んでいくと、UIAの活動は大いに盛り上がると思います。そのためには、建築学会にはたくさんの先生がおりますので、ぜひそういう意味で協力できたらと思っております。
與謝野 ありがとうございました。それではご質問はいかがでしょうか?お若い方もいらっしゃいますので、学生の皆さんからも声を挙げていただければとも思いますが。
原田(鞄建設計) 構造設計をやっております。今日は多岐にわたるお話ありがとうございました。質問というより感想でございます。
  先生のやっていらっしゃる作品は存じ上げているんですけれども、構造設計を日頃やってまして、環境という言葉が二言目には出てきます。まさに先生が今までやっていらっしゃる、できるだけ自然な形で、力づくじゃなくてつくるということが本当にそういうことだと感じています。構造というと、再生材料を使うとか、そういうことしか環境の方面ではないんですけれども、まさにそういう構造自体が環境に適した考え方だと思うんです。今日の最後の先生のお話で、コンピュータをこれからうまく使いながらおもしろいことができるのではないかというコメントをいただきました。新鮮と申しますか、これから勉強していきたいなと思いました。このあたりで多少補足のお言葉があれば教えていただきたいと思います。
斎藤 一番最後のスライドで石上純也さんのお仕事をご紹介しました。この模型展のコンテンツを考え始めたのが昨年の12月ぐらいからなんです。かなり早い時期に、私は石上純也さんというおもしろい人がいるなというのは知っていました。というのは、構造設計を小西泰孝さんとやっていたからです。先程のテーブルもそうですし、「四角い風船」も石上さんがやったものです。とにかく彼は、芸大出で感性が物すごい人らしいということはわかったんですが、その彼が仕事をするときに、必ず優秀なエンジニアと仕事をしています。それはなぜだろうかなと興味を持っていたんです。たまたま小西さんが、私の大学院の教え子でしたので、彼の仕事を聞く機会が随分ありました。そのことがかなり具体的な原田さんの質問に答えられるかなと思います。
  KAIT工房をご覧になりましたか。KAIT工房というのは今年の学会賞です。昨年7月頃、彼がビエンナーレの展示のために五十嵐太郎さんとやっていて、その準備に忙しかったときに、前からたのんでいたんですけど、模型を出してくれといったんです。と同時に、ぜひ学会賞に応募していただくということも勧めたんです。僕は会長をしておりましたので、推薦文を書けないので、最終的には佐々木睦郎さんに書いていただきました。
  何がおもしろいかというと、KAIT工房は、数センチの細い柱が、無定形、不定形に乱立していて、空間がよどんでいたり、揺らいでいたり、とにかく見たことない透明性があるわけです。その中に一見してもわからないんだけれども、きちんとした支持柱と耐震柱があるわけです。その2つの全く異なった、つまり、地震のときは効かない、地震のときによく効く、という2つのものが同じように細い柱として無数に立っている。どうやってそこにたどり着いたかを知りたくて、彼の事務所に行きましたら、模型が物すごくたくさんある。普通、建築家は模型をつくるんですが、おもしろかったのは、あるゾーンの中で、地震力を担う部材の数、量、そういうものをある程度構造のほうから指示しているんです。つまり、遊べる土俵を決めてやるわけです。その中で、今度は感覚的に見える世界とコンピュータとのやりとりで、そこに立ったらどういうふうに何が見えるかと、彼のほうは感性を中心にやるわけです。一方で、その出たものを今度は構造家が、強度や剛性をチェックする。つまり互いの個人がコンピュータを全部コントロールしている。最初に形を決めてそれに押し込むのではなくて、どれが最適かをぎりぎりのところまで個人の力でコントロールしている。
  つくり方も、地震力を担う耐震壁は、雪が加わったときに座屈しないようにプレロードをかけておくとか、鉛直柱は地震力が効かないようにジョイントのところをピンにしている。そういうディテール等をうまくのみ込みながら、またそれが見えないようにうまくやっている。アーキテクトとエンジニアがうまくコラボレーションしていくことによって、今までできなかったことが、そんなに無理をしないでもできるような世界がありそうな気がする。
  そういうすぐれた個人の力を発見するような作業をこれからしていかないといけない。そういう人ならこういう仕事ができるということを見つけて育てていく。このことがこれから大事だ。それは環境の世界でも同じことが起きている。人間がすごくおもしろい、重要な時代になってきたという感じがすごくします。
  ちょっとつけ加えますと、ポスターをさっき説明しましたが、埼玉で12月から行われます。私もお話ししますが、講演のところで、日建設計の慶伊さんと吉野さんが、お話をしていただけるので、ちょっと紹介をしておきたいと思います。
與謝野 ありがとうございました。
  会場の皆さんにおかれましては、大変熱心にお聞きいただきまして、ありがとうございました。また、斎藤公男先生のお話の中の「アーキニアリング・デザイン」が従来からのエンジニアリング・デザインをさらにホリスティックに統合された概念だということが良く理解できまして、これについての斉藤先生からの分かり易いお話を縷々いただき、誠にありがとうございました。
  最後に、いま一度、斎藤先生に大きな拍手をお贈りいただきたいと存じます。(拍手)
それではこれにて本日のフォーラムを締めさせて頂きます。ありがとうございました。



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