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1.井形慶子自己紹介とともに、なぜイギリスという国に魅力を感じるのか

2日本人とイギリス人の住まいに対する価値観の違い。なぜ古家は壊されるのか? イギリス人はどんな家に価値を感じるのか?など。

3. 井形慶子が、住みたい町、No1の吉祥寺に500万円の老朽物件を購入し、300万円でフルリフォーム。ロンドン風フラット完成。

5. イギリスで売り家になっている魅力的な家。(借地権999年の古城、
湖が見えるコッツウォルズの古城)

7. 家づくりとは、住まいに命を吹き込む作業



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(図43)
玄関の外回りですね。このドアは約2万円で買ってきて、自分たちでつけたと言っております。
(図44) そして、コンサバトリーと呼ばれる温室なんですけれども、イギリスでは裏庭に面したところにこのようなキットを取りつける家が今すごく多いんですね。ホームセンターなんかに行きますと、10万円台からコンサバトリーのセットというのを売っています。こういう自分たちでできる簡単なキットが、日本でももっと出回るといいなといつも思うんです。
(図45)
これもご夫婦でくっつけられたブレックファストルーム、外から見るとこんなふうになっています。
(図46)
そして、裏庭ですね。草ぼうぼうだったところを、お2人できれいに整地をしてつくりました。
(図47)
これは昔のこの家のスケッチですね。
(図48)
そして、もともとのオリジナルの図面が出てきたんですけれども、こういった小さな家を増築、増築を重ねて、現在のような家にしたということでございます。
(図49)
この予算なんですが、どういうふうになっているかということですが、この築200年の古い家を、彼らは7年前に約2000万円で購入しました。これは当時のバーゲン価格です。リフォームにどのくらいの期間がかかったかといいますと、夫婦2人で7年越しでリフォームをされました。
ちなみに、この家のご主人は大学教授です。大学の講義の合間にやられていたようで、土日はずっとかかりっ切りだったようです。そのリフォームの総費用が1250万円です。合計でこの家に使ったお金というのは3600万円ですが、さて、それが現在、間取り3LDK、プラスコンサバトリー、プラス立派な裏庭ということで幾らになるか。ここがイギリス人が大好きな部分なんですよ。リフォームを自分たちでやり遂げて、落ちつきましたら、必ず不動産業者を呼びまして査定させるんです。私たちは、売ろうとする時以外、業者さんを呼んで査定させるということはないんですけれども、イギリスの人たちは、でき上がったらすぐに電話をして、「我が家の価値は幾らかね」というふうに出してもらうんですね。
それで出てきた金額なんですが、これが7500万円になっていて、約2倍の価値になったということです。
こういうお話というのは、最初は面白くて、英国に行くたびに写真を撮ったり、メモをとったり、インタビューしたりしていたんですが、イギリスに行きましたら、ロンドンも地方も、それこそ掃いて捨てるようにこういうお話が転がっていまして、これはほんとに当たり前のことだな、改めて紹介することでもないなと思うようになりました。
ひところ、よく聞かれましたアメリカンドリームというのは、一獲千金、成功をねらえ、ということでございますが、イングリッシュドリームというのは、廃屋を購入して、自分たちでせっせと価値を高め、そして価格をつり上げること。これこそイングリッシュドリームなんです。生活の場、生活の質に手を加えて豊かにすることが、ヨーロッパ型社会の象徴と私は感じるわけですね。大量生産ではない、消費型ではない、こういう価値ですね。
このような考え方が社会にどんどん広がっていきましたら、価値がないと思われること、もうこれは捨てたほうがいいと思うこと、部材や住宅建材とか住宅だけではなく、もしかしたら人材もそうかもしれません。そういったところまで価値がある、価値がつくり出せるということになるのではないでしょうか。
(図50)
最後のお話に行きたいと思うんですけれども、私は2年前、イギリスに行きました時に、刑務所に行ってまいりました。ハイダウン刑務所という、ロンドン郊外のサリー州にある刑務所なんですけれども、人里離れたところにあります。
私が刑務所に行ったというふうに言いましたら、いろいろな方々から、ボランティアか、面白い囚人がいたのかとか聞かれるんですが、私はそこに世界一おいしいフランス料理を食べに行きました。そういうと、「何故、井形さん、刑務所にフランス料理を食べに行ったんですか」という話になるわけです。実は私はイギリスの家についてたくさんの話を聞き、本なども書かせていただいていますけれども、私は、日本はまだまだイギリスに学ばなければいけないことがたくさんあるのではないかなとかねがね思うことがあります。
今からお話しするハイダウン刑務所で起きた出来事、起きている出来事というのは、私たちに大きな教えを投げかけているのではないかと思います。
英国では刑務所のカテゴリーというのが上からABCDとありまして、ハイダウン刑務所は男性専門の刑務所でカテゴリーBに属しています。麻薬の密輸などで捕まった人々が服役している刑務所です。麻薬の密売や輸入ですから、当然、イギリス人だけではなく、日本人もいますし、世界中の人がいるわけです。
この刑務所の中に、「クリンク」というフレンチレストランが2009年5月にオープンしました。これは、ロンドンの五つ星レストランの元シェフであったクリスティーさんのレストランです。この方は、これもイギリス人らしい生き方なんですけれども、セレブシェフとして名をはせていたんですが、何を思ったか、ハイダウン刑務所の料理人となって、ここで働き始めまして、彼が発起人となってスタートをしたフレンチレストランなんです。

 

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