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1.井形慶子自己紹介とともに、なぜイギリスという国に魅力を感じるのか

2日本人とイギリス人の住まいに対する価値観の違い。なぜ古家は壊されるのか? イギリス人はどんな家に価値を感じるのか?など。

3. 井形慶子が、住みたい町、No1の吉祥寺に500万円の老朽物件を購入し、300万円でフルリフォーム。ロンドン風フラット完成。

5. イギリスで売り家になっている魅力的な家。(借地権999年の古城、
湖が見えるコッツウォルズの古城)

7. 家づくりとは、住まいに命を吹き込む作業



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庭を望む和室の方に行きますと、雪見窓とがある。英国英国と言っていた私は、日本のこの古い住宅のよさに打ちのめされました。営業マンも、「井形さん、こんないい家を今ご自身で建てようと思ったら、まず業者さんがいませんよ。大工もいませんよ。幾らかかりますかね」と言います。私は真剣にここを購入しようと考え始めたわけです。
ところが、やはり予算というものがありまして、まだバブルの終わりを引きずっていましたので、正直、私の予算の倍くらいでした。このお宅、8000万円ちょっとしたんです。私は、どんなふうに算段しても無理だということで、泣く泣く諦めてしまった。諦めざるを得なかったんです。
ところが、ある日、私のところにまた電話がかかってきまして、「井形さんが欲しがっていたあの古家つきの土地なんですが、お客さんがご契約されて、ご入居されたみたいですよ」と営業マンに言われまして、心はざわざわするわけです。自分は買えなかったくせに、他人のものなのに、やっぱり何か物すごく引かれるものがあって、一体どういう人が住んでいるんだろう、どんなふうに住みこなしているんだろう、見てみたいなというふうにすごく思ったわけです。
(図10)
それで、私は、ある日こっそり、ストーカーのように、意を決してそこを見に行きました。こういうことは本当はやってはいけないと思うんですけれども、気になって気になって仕方がなかったんですね。見に行って、愕然としました。そこは瓦礫の山だったんです。イギリス人であれば、間違いなく住み継ぐ価値のある、日本のよさを満載したこの家を、購入された方は、古家つきの土地ということで新しい家に建てかえようとして壊されたわけですね。
何度も申し上げますが、イギリスであれば間違いなく手を加え、住み続けられた希少物件だったんです。

  日本で、家は消耗品です。服や家電と同じく、スクラップ・アンド・ビルドが続いてきました。私は、そこから社会の大きなゆがみが出ているのではないかと、かねてから思っていました。資源は無駄になり、人々は安い材料に走り、工期も短くコンパクトに、もう職人も要らない。
この間、竹村健一さんの最後の番組にくしくもゲストで呼んでいただきました。その時に伺いましたけれども、「首都圏の産業廃棄物の8割は、井形さん、何だと思いますか」とお嬢さんから言われまして、「さあ、わかりません」と言ったら、「井形さん、住宅資材なんですよ」と言われたんですね。
今、日本では、量より質の時代に転換しようとしています。2009年、マンション、一戸建てともに中古の成約率が上昇しました。古い物件は安い。リフォーム費用をかければ思いどおりの住まいがつくれる。人気のエリア、特に私が住む吉祥寺などでも、中古物件というのが不足しております。私は、こういう、何か捨てられていくもの、一見価値がないと思われるもの、あるいはされてきたものの中から何かつくり出したいなと思って、そして、その後も土地を探し続け、何とか理想の土地を得ることができました。

 

3.井形慶子が、住みたい町、No1の吉祥寺に500万円の老朽物件を購入し、
300万円でフルリフォーム。ロンドン風フラット完成。

(図11)
私の家づくりの話に戻ります。土地で大枚はたいてしまいまして、上物、建物を建てる費用が1500万円しか出なかったんですね。いろいろなハウスメーカーがあるんですが、予算をアンケート用紙に書いた段階で鼻で笑われて、「ちょっとうちは無理ですから、他の工務店さんを当たってください」と言われまして、その中で唯一、今はもうないんですが、大手のハウスメーカーさんが、いろいろないきさつから家を建てるようになったんです。

  いろいろないきさつという言い方をしますと、私が本でタイアップしたと思われても嫌なので、内情を言いますと、余り研修をまじめに受けてなかった新入社員の方が、1500万円とアンケート用紙に書いて、理想の家のスケッチを私が持っていったら、「うちではおつりが出るくらい、これだったらできますよ」と私に約束したんですよ。それで、私は土地を購入したんですけど、「そんなの、聞いてない」というふうに後で上司が怒り出して、でも私も困ってしまうんで、結局、会社の方が何とかしましょうということで家づくりが始まったという経緯なんです。
(図12)
私は、何とか古いものを使って、味のある、築年数が経っても、経過年数が趣になる家をつくりたいなと思っていました。それには、やはり自然素材へのこだわり、見える部分のパーツをいかにうまくつくるかということが問題だなと思いました。

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