家庭でできる省エネ術

集合住宅でもZEHによる省エネ

家庭部門の省エネルギー対策として、「ZEH」の普及が期待されています。「ZEH」は、新築戸建住宅を中心に、普及促進のための助成制度などの支援が行われてきました。一方で、これまで集合住宅については、太陽光発電パネルの設置に制限があるなどの理由で、「ZEH」の定義がされていませんでしたが、最近になって集合住宅版「ZEH」の定義案が報告されました。集合住宅版「ZEH」は、建物全体で評価する「住棟ZEH」(別名 ZEH bldg、ZEH-M等)と、住戸ごとに評価する「ZEH」が定義されるようです。

住宅全体の床面積のうち、約27%を占める集合住宅の省エネルギー対策の推進は、非常に重要であるため、集合住宅版「ZEH」の普及が期待されます。

参考)平成29年度東京都環境建築フォーラム「集合住宅の省エネ対策」(主催:東京都)資料
※「ZEH」(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、「外皮(外壁や窓)の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」です。

レンジフードファンの適切な運用で省エネを図りましょう

キッチンのコンロで調理する時は、においや水蒸気の排出、不完全燃焼防止のために、レンジフードファンなどで換気をする必要がありますが、適切な風量での運用で省エネをしましょう。

一般的なレンジフードファンは、「強、中、弱」などの風量調整があります。あるレンジフードでの消費電力は、強運転では100Wであるのに対して、弱運転では23Wと、4分の1以下になっています。また、換気風量は、強運転では580m3/hであるのに対し、弱運転では205 m3/hと3分の1程度になっています。

換気は、排気した風量と同じ量の外気が室内へ入ってきます。強運転での換気風量は、床面積80㎡の集合住宅では、約20分で住宅全体の空気を入れ換えるほどの風量になります。一般的な換気では、冬に、暖房した室内で換気をすると、暖かい室内の空気が排気され、外の冷たい空気が入ってくるため、暖房のエネルギーも増加することになります。

使用しているコンロの口数が少ない時や火力が弱い時は、レンジフードファンの風量を、「中」や「弱」にする、コンロを使用していない時は止めるなど、調理の状態に合わせた運用をして省エネを図りましょう。

注)ガスコンロを使用する時には、不完全燃焼防止のために、必ずレンジフードファンなどで適切な換気をしてください。
東京ガスHP(http://home.tokyo-gas.co.jp/gas/userguide/anzen/yobou/kanki.html

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風向きを考えて窓開け換気をしましょう

10月になると外気温が下がり、外の空気が快適な日も多くなってきます。このような時はエアコンを止め、窓を開けて、通風を活用した省エネをしましょう。

効果的に通風するためには、風上の窓を十分に開ける必要があります。風配図(各方位の風向の頻度を示した図)を見ると、東京では夏の間は、南からの風が多いですが、秋になると北北西からの風が多くなります。北側の窓を開けて、効果的な通風を得ましょう。

注意)通風を活用する時は、風の通り道の全てのルートで十分な開口を確保する必要があります。風が抜ける反対側の窓を開けることや、風の通り道となる廊下へのドアなども開ける必要があります。


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無駄な湯の使用削減による省エネ

洗面所やキッチンの混合水栓で、無駄なお湯の使用をしていませんか?

シングルレバーの水栓では、ハンドルを中央の位置で使っていると、水しか必要ない場合でも気づかないうちに給湯機が稼働し、お湯が供給されてしまい、エネルギーの無駄使いをしている場合があります。

ただし、給湯機からのお湯が出てくる前に、水の使用が終わってしまう場合が多いため、使っている本人は、不要なお湯を使っていることすら気づかないことがほとんどです。
お湯が必要ない時は、ハンドルを右(水側)に動かしてから、水を出すことが基本ですが、湯が不要な夏の間は、洗面台下の給湯のバルブを閉めてしまうと、確実な省エネにつながります。

夏の温水洗浄便座の省エネ

トイレの温水洗浄便座の設定を変えて、省エネを図りましょう。

温水洗浄便座は、洗浄のための温水を作るためと、便座を温めるために電気を使っています。
夏期は、水温や気温が高いため、冬期ほどは電力を使用しませんが、温水の設定温度を低くする、便座の保温を停止する設定を行い、更なる省エネを図りましょう。

温水洗浄便座は、通常の使用では15W程度の電力を使用しますが、温水の設定温度を40℃から33℃に下げ、便座の保温を停止した結果、2W程度の電力使用となり、87%の使用電力量削減となった例があります。

グラフは、温水暖房便座の使用電力量(NSRI調べ)です。
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賢く涼しさを得る方法

涼しさを得る方法を工夫して、賢く涼しさを得ましょう。

夏の室内を涼しく快適に過ごすためには、エアコンの設定温度を下げ、気温(空気の温度)を下げる以外にも、「除湿する」「風を当てる」「薄着をする」など、いろいろな方法があります。
以下の方法は、それぞれ気温を1.1℃下げた場合と同じ効果があります。
薄着をする、扇風機を併用するなど、省エネで涼しさを得られる方法を選びましょう。

  • 除湿して湿度を35%下げる
  • 扇風機などで0.1m/sの風を当てる
  • カーテンなどで窓や壁の表面温度を0.8℃下げる
  • 0.15clo分の薄着をする(長袖シャツを半そでシャツにする、または半そで下着を脱ぐなどで0.1clo分の薄着になります。)
参考文献:ASHRAE Transaction, No.2417

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家庭の電力見える化よる省エネ

電力使用量の見える化を活用して、効果的な省エネ対策をしましょう。

スマートメーターの普及によって、電力会社のホームページなどで、皆さんの自宅の30分毎または1時間毎の電力使用量が見ることができることをご存じですか?

以前は、1ヶ月合計の使用量しか分かりませんでしたが、時刻別の使用量が分かることによって、今まで分からなかった電力の使用実態が推定できます。
1日の内で、何時頃に多くの電力を使用しているかを知ることによって、どこに省エネの余地があるかが分かります。夜間でも多くの電力を使っている家庭は、消し忘れている機器がないかの確認が必要です。または冷蔵庫などの24時間動いている機器の効率が悪くなっている可能性があります。夏の昼間に多くの電力を使っている家庭は、エアコンの電力が多い可能性があり、高効率エアコンへの買い替えが有効と思われます。エアコンを使わない中間期にも電力の使用が多い家庭は、照明などの電力が多い可能性があり、LED照明などへの買い替えが省エネにつながります。

どのように電力が使われているかを知ることによって、効果的な省エネ対策をスマートに知ることができます。

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食洗機による省エネ

水やお湯の使用量を削減して、省エネを図りましょう。
浄水場で水道水を作り、家庭まで水を送るためには、多くのエネルギーを使っています。
電気やガスなどと同じように、水やお湯の使用量を減らすことは、省エネにつながります。

家庭で食器を洗う際に、食洗機を使用すると、手洗いの場合に比べて、水やお湯の使用量が大きく削減できます。特に、洗う食器の量が多いほど、減効果は大きく、2人分の食器では17%削減であるのに対し、4人分では48%、6人分では62%削減するといった研究報告があります。更に、食洗機での食器洗いは、高温洗浄による殺菌効果、家事の時間の節約など、省エネ以外の効果もあります。

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住戸位置によるエネルギー消費量の違い

省エネ・室内温熱環境からみると、集合住宅の中で中間階中間住戸が、最も良い住戸です。

集合住宅は、住戸位置によって、暖冷房のエネルギー消費量に違いがあります。
上下や隣が住戸の中間階中間住戸に比べて、妻側住戸*や最上階、最下階住戸は、暖冷房のエネルギー消費量が5~7%程度多くなります。妻側住戸は窓が多い、最上階住戸は眺望が良い、上の住戸の足音騒音がないなどのメリットから、一般的に人気が高いですが、省エネの観点から見ると、中間階中間住戸が最もメリットがあると言えます。また、外壁面が少ないため、室内の温熱環境もより良いと言えます。

住む部屋を決める観点の1つとして、省エネ・温熱環境の視点を入れてはいかがでしょうか。

※住棟の端に位置する住戸

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LED照明による省エネ効果

照明器具を消費電力の少ないLED照明に交換して省エネを図りましょう。
住宅でのエネルギー消費の15%程度を占める照明の省エネ対策は効果的です。

東京都では、白熱電球2個とLED電球1個を無償で交換し、LED照明普及の起爆剤とする省エネ対策を実施するようです。

LED電球は、白熱灯電球に対して86%程度、電球型蛍光灯に対して29%程度の大きな省エネ効果があります。
住宅全体をLED照明に更新することによって、住宅全体のエネルギー消費量が7%程度削減(年間電力使用料金12000円程度削減)できます。
廊下やトイレなどは、人感センサー付LED照明に交換するとより効果的です。

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ウォームビズによる省エネ効果

冬の季節は、ウォームビズにすることで、暖房の設定温度を下げて、省エネを図りましょう。
ウォームビズは、クールビズほど根付いていませんが、有効な省エネ対策です。

セーターを1枚追加で着ることによって、気温が1.8℃低くても、同じ暖かさを感じることができるため、設定温度を1~2℃下げることができます。

※左図は同じ暖かさを示す着衣量と気温の関係を示したものです。着衣量[clo]は、衣類の暖かさを示す指標で、冬のスーツは1clo、セーター1枚追加で1.3cloになります。

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節湯で省エネ

住宅でのエネルギー消費量のうち、給湯は3割程度と大きな割合を占めています。特に冬季は給水温度が低いため、湯使用量が同じでも、給湯のエネルギー消費量が大きくなります。
40℃の湯を作る場合、冬季のエネルギー消費量は、夏季の約2.5倍(左図参照)となり、冬季での給湯のエネルギー消費量削減は非常に重要です。

給湯の省エネでは、湯使用量を減らすこと「節湯(せつゆ)」がポイントです。節湯を意識すると共に、節水型水栓、節水型シャワーヘッド、手元止水機能付きシャワーヘッドの使用なども有効です。

【手元止水機構付シャワー水栓の例】
 出典)TOTO株式会社ホームページ http://www.toto.co.jp/products/faucet/bath/shower_head/index.htm

また、シングルバルブ水栓のハンドルを中央の位置で使っていると、湯が必要ない場合でも給湯機が稼働してしまい、エネルギーの無駄使いをしている場合があります。
湯が必要ない時は、ハンドルを右(水側)に動かしてから、水を出すことで省エネとなります。ハンドルが中央の位置では、水しか出ない水吐水優先水栓の設置でも同様の省エネ効果が得られます。
節湯は、給湯機の省エネだけでなく、水使用量の削減にもなります。

【水優先吐水機構 洗面水栓の例】
 出典)TOTO株式会社ホームページ http://www.toto.co.jp/products/groom/octave/feature/03.htm

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外壁・窓の断熱性能

住宅の暖房の省エネには、外壁や窓の断熱性能を高くする(逃げる熱を少なくする)ことが重要です。
外壁や窓の断熱性能を示す熱貫流率を見ると、無断熱の外壁に比べ、単板ガラス窓は2.4倍であり、熱が逃げやすく、窓の断熱性能を高めることがより効果的であることが分かります。

一般的に、鉄筋コンクリート造の住宅では、外壁の断熱性能に比べ、窓の断熱性能が低いため、窓の断熱対策はとても重要であり、高い効果が期待できるため、優先度が高い対策です。
窓の断熱対策には、複層ガラス、三重ガラス、Low-eガラス、樹脂サッシ、二重サッシ(内窓)などがあります。窓の熱貫流率は、単板ガラス窓に比べ、複層ガラス窓は71%、樹脂サッシ複層ガラス窓は54%、樹脂サッシ複層ガラス内窓による二重サッシは30%となり、窓の断熱性能を高めることができます。
窓の断熱性能を高めると、省エネの他に、窓の結露防止やコールドドラフトの削減など、室内環境向上の効果も期待できます。住宅選びやリフォームをする際には、窓の断熱性能にも注目することが大切です。

注)熱貫流率は、室内と外気の温度差1℃、面積1㎡での熱の逃げる量を表したもので、熱貫流率が大きいほど、熱が逃げやすいことになります。

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家電の買い替えによる省エネ

エネルギー使用量の大きい家電から優先的に、効率の良いものに買い替えを行うことが、効率的な省エネとなります。

ある集合住宅一住戸のエネルギー使用量を測定したところ、冷蔵庫が23%を占めていることが分かりました。冷蔵庫の効率は年々良くなっています。この住宅の冷蔵庫は10年前のもので、同じ容量の最新型は年間消費電力量※が65%削減もされているものがあります。冷蔵庫の買い替えで、住宅全体のエネルギー消費量を約15%削減できる計算になります。

大事な家電を長く使うことも大切ですが、新しい効率の良いものに買い替えることによって、簡単に省エネが実現できます。特に、使用時間の長い冷蔵庫や照明器具などは、消費電力量が大きく、買い替えによる省エネ効果も大きくなります。

※JIS測定(JIS C 9801: 2006)による年間消費電力量のメーカーカタログ値

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自然換気で省エネに涼を得ましょう

9月になると朝晩は外気温も下がり、外の空気は快適な日も多くなってきます。
このような時はエアコンを止め、通風を活用して、省エネを図りましょう。

通風を活用する時は、風の通り道の全てのルートで十分な開口を確保する必要があります。
風の通り道のどこか1ヶ所でも、扉が閉まっている、窓の開きが少ないなど、開口面積が小さいと、十分な通風が得られないので注意が必要です。

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夏の室内環境をより快適にするために

暑い室内を快適にするために、冷房の設定温度を低くしすぎて、エネルギーの無駄遣いをしていませんか?

人の温冷感(暑い・寒いと感じる感覚)に影響する室内環境の要素は、気温・湿度・風速・放射の4つがあります。放射は馴染みが少ないと思いますが、温冷感に与える影響が大きい要素です。放射は、壁や窓などの表面温度に起因するものや室内に日射が入ってくる場合は日射によるものがあります。夏の室内環境を快適にするためには、放射の影響を減らすことが重要です。

放射の影響を減らすためには、すだれ・グリーンカーテン・オーニングなどで、窓や壁に日射が当たらないようにし、日射による放射を室内に入る前に減らすこと、壁に日射が当たることによる壁の室内側の表面温度の上昇を抑制することが効果的です。