実走実験の様子
上:みゆき通りにおける路面標示とあわせた自律移動ロボットの実走実験
下:姫路駅前広場における自律移動ロボット
「モビまち研」で目指す未来モビリティを活用したまちづくりの実践に向けて、11月に、国土交通省都市局のウォーカブル空間の創出に向けた自動運転技術の活用の取組みの一環として、姫路駅と姫路城を結ぶエリア(大手前通り、みゆき通り(商店街))において、日建設計・日建設計総合研究所、ウォーカブル協議会にて、歩道を走行可能な自律移動ロボットの実走実験を行いました。
今回の実験は、ロボット目線ではなく、都市側の目線に立ち、混雑時にロボットが走行しても歩行者が危険を感じることはないか、商店街や地元の方の社会受容性は得られるのか、今後のロボットの普及に備え都市側の施設として準備しておくことは何か、という観点で実施しました。
具体には、通常の平日に加え、姫路城の世界遺産登録30周年にあわせた各種イベントが実施され歩行者がにぎわう日に走行を行い、ロボットの走行データ(速度、停止回数、軌跡等)を取得するとともに、すれ違う歩行者の方々にヒアリング調査(安全性、望ましい走行位置等)を行っています。また、姫路の広い歩道断面の中で、走行位置を中央、右、左に変えて走行させたり、ロボットの走行位置を路面に表示して走行させて、それにより通行者の反応がどのように変わるのかも把握しています。沿道商店街の方々には別途アンケート調査を実施しています。
調査結果の分析については、これからになりますが、約2000人の通行者の方々にヒアリングにご協力いただき、現場でヒアリングを行った印象としてはかなり好意的にロボットを受け入れて頂いていると感じており、歩行者とロボットの早期の共存に向けて成果を展開していく予定です。
(筧文彦・主任研究員)
視察の様子
上:車両の概要説明時
下:株式会社セネック本社にて
茨城県境町では、自動運転バスの定常運行が行われています。一時的な実証実験ではなく、長期間にわたって既成市街地において自動運転の運行が行われている例は、日本でもまだ限られており、まちづくりと先進モビリティの関係を考える上でも、とても興味深い取組みです。今回、「モビまち研」の会員の皆様と、境町で実施されている自動運転バスの視察プログラムに参加し、その取組を体験してきました。
視察当日は、車両の概要説明(車両の仕様や走行の原理など)から始まり、自動運転バスの試乗、バスの運行・遠隔監視を行っている株式会社セネック本社にお邪魔して、自動運転事業を行っている、BOLDLY株式会社から自動運転技術や今後の展望等の説明を受けました。参加者の皆様から多くの質問が挙がり、大変盛り上がりました。
境町では、町民やバス事業者などをはじめとする地元企業から多くの理解と協力を得ながら自動運転バスの運行をしていました。とくに自動運転バスの運行路線の地元の理解が円滑な運行を支えていると感じました。
地元の足として自動運転バスを導入するだけでなく、まちおこしの一環としても考えられ、まちのPR効果や補助金の獲得、雇用の創出など、まちづくりにおける様々な効果を生み出しており、モビリティを活用したまちづくりの知見に合わせて、技術的な観点だけでなく、まちづくりとしての事業の観点からも先進的なモビリティの取組みのヒントになりました。
10月には新たな車両が導入される予定です。
運賃は無料です!!興味のある方はぜひ試乗してみては如何でしょうか。
(成田聡子・研究員)
横浜市青葉区東部におけるデマンド交通の実証
上:2022年度実証実験
下:2023年度実証実験
本稿では「モビまち研」で取り組む先進モビリティのまちへの導入・実証に関連する事例として、NSRIが関わっている横浜市の取組みについてご紹介します。横浜市では、地域に適した形での持続的な地域公共交通の実現が求められている中、移動サービスだけではなく地域の生活サービスと連携した新しいサービス・事業モデルの構築に向けた検討が進められています。具体的には、横浜市青葉区東部(たまプラーザ駅・あざみ野駅周辺の地域)において、デマンド交通の実証が行われています。NSRIでは、2021年度から今年度に至る期間、横浜市の調査業務の受託者として本実証の企画・実施・評価等に関わっています(実証実験は2022年度および2023年度に実施)。なお、現在の取組みにあたっては、横浜市のほか、NTTドコモ、東急、EPARK、神奈川都市交通、東急バス、イッツ・コミュニケーションズ、地域の商業施設・医療施設の方々、地域住民の皆様と連携しながら実施しています。
本実証の対象地域は、鉄道駅から近い地域ではあるものの、地形の傾斜が大きく、また最寄りのバス停から少し距離のある箇所があるなどの地域課題を抱えています。特に傾斜については、筆者のような30代の男性でも歩いていて辛いと思う箇所があり、高齢者の移動や子連れでの移動、手荷物をもった状態での移動の際には相当な身体的負荷があると想定されます。本実証では、こうした地域における移動を支援する手段としてデマンド交通を導入し、そのニーズや成立可能性を検証するための実証実験を2023年1・2月に行いました(また、2023年度では9月より実証を実施しています)。また、その際「生活サービスとの連携」という視点で、「交通チケット」という仕組みを導入しました。これは、サービスの利用者が連携する地域の商業施設・医療施設を利用した際に、1回分のデマンド交通の運賃が無料になるチケットをお渡しする仕組みであり、地域の施設の利便性向上やデマンド交通の利用促進の施策として行っており、将来的には協賛金獲得につなげることも想定しています。
実験の結果、他のデマンド交通の実証事例を踏まえても実証初期としては一定程度以上の利用がみられ、特に移動に対する自信が低い方の利用頻度が高い傾向がみられました。また、交通チケットの利用率も高く、利用促進に関する一定の効果を確認することができました。通常デマンド交通は、地方都市における交通空白地域で導入されることが多いですが、本実証を通して、地方都市のように明確な交通空白地域のない大都市でもデマンド交通のニーズがあることを確認することができ、今後他の地域での展開等も期待されます。また、その際、移動の不安を抱えた人たちがどこに住んでいるか、既存の公共交通とのすみわけをどう考えるか等の検討がポイントになると考えられます。
【参考URL】
HANEDA INNOVATION CITY(HICity)では、2020年9月から自動運転バスの定常運行が行われ、誰でも無料で乗車することができます。
今回、NSRIのモビまち研メンバー数名で、羽田みらい開発株式会社が開催しているHICity視察プログラムに参加しました。自動運転バスの試乗と導入・運行に関する解説を受けるとともに、未来志向のまちづくりを推進するHiCityの事業・施設に関するツアーを体験し、自動運転に限らず、様々な先端技術に直接触れることができました。
自動運転バスの試乗には車両オペレーターが1名同乗しますが、オペレーターの操作としては緊急時にコントローラーを利用するのみであり、運行管理は遠隔監視システムにより行われています。敷地内のルートを走行し、搬入車両や通行人との接近時にはセンサーで検知して一時停止、安全性が確認されたうえでの走行再開など、先端的な自動運転技術が実際に運用されています。さらに、将来的な「自動運転レベル4」を用いたバスの定常運行に向け、公道での実証実験も実施されています。
自動運転技術は、今後さまざまな場所にも展開され、より人々の暮らしに近い移動手段となることが期待される一方で、一般的には、完全無人となった場合のユーザーの不安解消など技術面だけではない課題もあると言われています。モビまち研でも“まちなかにおける先進モビリティの実装・普及”に関心を向けておりますが、今回の視察を通し、オペレーターの操作が限定された無人運転に近い状況での運行を体験することができ、自動運転が導入されやすい走行環境について大きな示唆を得ることができました。
(杉原礼子・研究員)
モビまち研代表の森川先生(名古屋大学教授)と日建設計の望月顧問を講師として、第1回勉強会を開催しました。会場参加、リモート参加と多くの方にご参加頂きました。
始めに、望月顧問から現在の大都市圏の交通課題等から今後のモビまち研へ期待する事を語っていただき、続いて、森川先生から「モビリティイノベーションによるまちづくり」と題して、交通の視点からまちづくりについて話題提供頂きました。CASE改革でモビリティ問題は解決するのか。レベル4・5の自動運転交通システムのインパクトが、まちにどう影響をもたらすのかなど興味深い講演となりました。
参加者の皆さまからも多くのご意見や質問を頂き、会社・組織の垣根を越えてモビリティとまちづくりのあるべき姿や課題、具体の実装方法を考える場としての本会の意義を感じることができました。
「100年に一度の自動車革命」と言われている昨今ですが、そこから生まれる新しいまちづくりについて、モビまち研の検討テーマのヒントに繋がる勉強会となりました。
(成田聡子・研究員)
このたび、無事、第1回モビまち研シンポジウムを開催させて頂きました。
会場参加で107名、リモート参加で805名と、大変多くの方の参加登録を頂きました。
森川先生からはCOI-NEXTマイモビリティ共創拠点の取組み概要、金森先生、長束様、西田先生からはこれからのモビリティまちづくりで大変参考になる、とても貴重なご講演を頂きました。
また、パネルディスカッションは、大変臨場感のあるもので、私自身もとても触発される内容でした。
これから、いよいよ本格的にもびまち研究活動を開始しますので、是非、皆様と活発な議論をさせて頂ければと思います。
(安藤章・主席研究員)
先進モビリティを活用した近未来のまちづくりを実践するには、先進モビリティの世界的なトップランナーとの協働が必要不可欠です。
この度、ご縁があり小職は、森川高行教授(名古屋大学)が拠点長を務める名古屋大学COI-NEXTマイモビリティ共創拠点の副プロジェクトリーダーを務めさせて頂くことになりました。今後は、モビリティの世界的研究拠点である本共創拠点と、まちづくりのプロフェッショナル集団である日建グループが連携することで、先進モビリティの都市実装を目指していきたいと考えています。
皆様におかれましても、まずは気軽な気持ちで、情報収集や意見交換の場として、私たちのプラットフォームを活用して頂ければ幸いです。
また、私たちが目指すのは、市民と企業、行政がwin-winの関係になれる先進モビリティ都市の実装であり、都市ビジネスの構築です。
研究だけを目的とする堅苦しいものではありません。
是非、みなさまのビジネスに貢献できる活動を目指したいと考えていますので、皆様の率直なお声をお聞かせ頂けますと幸いです。
(安藤章・主席研究員)
モビまち研のホームページ(HP)をリニューアルしました。これからは、このHPを、私たちモビまち研メンバーと皆さんのコミュニケーションの場に発展させていきたいと考えています。
私たちは、日建設計という設計会社のシンクタンクに所属しており、「モビリティ」を常に「まちづくり」や「都市空間デザイン」の視点から捉えるようにしています。
私たちは、車両を製造する会社ではありません。
MaaSアプリを開発・販売することもありません。
しかし、将来のまちづくりプロジェクトに実装させるための機会・繋がり・経験を持っています
そのようなモビリティ企業の方々との共創で、新しいモビリティを活用した、まちの具体的なカタチを研究し、実現していきたいと考えています。我々の活動に共感頂ける企業や団体のみなさまの新しいビジネス創出の場に貢献できればとも考えています。
モビリティ企業だけでなく、モビリティを活用した〇〇に関心のある全ての方との出会いと議論、気づきを楽しみにしていますので、このHPを定期的にご覧頂くとともに、何かあれば是非、お気軽にお声がけ頂けると幸いです。
(安藤章・主席研究員)