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日建設計 
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第31回NSRI都市・環境フォーラム

『2030年の東京都心市街地像の私案』

講師:  伊藤 滋 氏   

早稲田大学特命教授

PDFはこちら → 

日付:2010年7月15日(木)
場所:NSRIホール

土地利用の検討 

1.将来予測と計画の目標

2.都心市街地構成

3.土地利用ゾーニング

4. 提案容積率

都市基盤(アーバンインフラ)の検討

5.水・緑・オープンスペース

6.安心・安全(都心DCP)

7.低炭素化

8.交通ネットワーク

 

 ただいまから第31回都市・環境フォーラムを開催させていただきます。都市経営フォーラムから通算しますと271回目のフォーラムとなります。本日は、お暑い中お越しくださいまして、まことにありがとうございます。
本日のご案内役は、私、広報室の谷礼子でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、本日は、ご案内のとおり、早稲田大学特命教授の伊藤滋先生からお話をいただきます。
本日は、『2030年の東京都心市街地像の私案』と題してご講演をいただきます。今年の1月の講演会では、『東京都市計画の私案』と題してご講演をいただきましたけれども、今回はその後編となります。
伊藤先生のプロフィールにつきましては、お手元のレジュメのとおりでございます。また、この1カ月はご専門以外のことでも大変お忙しいことは、皆様よくご存じのとおりでございます。
それでは、早速先生にご講演をいただきたいと存じます。どうぞ皆様大きな拍手で先生をお迎えください。(拍手)
先生、よろしくお願い申し上げます。

伊藤 伊藤です。今日はパワーポイントを用意していますが、番外編を先にどうしても話したいものですから、その残った時間でまじめな話をしようと思っています。
何を言いたいかといいますと、皆さん、東京の力が落ちているのではないか、という話をよく聞かれますよね。この話を聞いた人は今日は眠っていてください。いろいろな評価があります。経済的にいうと東京は17番目、18番目であるとか、そうではなくて、東京は非常に魅力ある都市で、食い物も全部うまいから1番だというのもあります。そういう中で一番客観的なデータでまとめた報告書が今年出ました。それは、私も関係していますが、森記念財団の報告書で、客観的データによると東京は4番目ということになります。
森記念財団が行った1回目の世界の35都市の評価でも東京は4番目だった。2回目も4番目だった。3番目はパリなんです。1回目の3番目と4番目、パリと東京の差が、仮に10あるとします。それが2回目になりますと半分ぐらいになった。東京のほうがパリに近づいてきている。しかし、パリに追いつけない部分は何かといいますと交通条件です。世界的な交通条件ですから、地下鉄が幾ら便利になっても大したことはない。交通条件とは明らかに空港ですね。だから、森記念財団の報告書にも書いてありますけれども、東京の空港がシャルル・ド・ゴール、オルリー並みになれば、明らかに東京の都市の魅力はパリを超えるし、そういうことは計算上可能です。これは前から皆さんご存じの通りのことを改めて調査した結果です。
パリ並みの飛行機というのうは、発着回数のことです。それなら、東京だって、成田と羽田と合わせればパリ並みにいっているかもしれません。しかし、成田と羽田と合わせてトータルなアクセス条件では、シャルル・ド・ゴールに負けます。シャルル・ド・ゴールより1.5倍か2倍ぐらいの時間がかかる。だから、駄目なんです。
もう1つ、今日、大林組の人たちが、都心部からそれぞれの主要都市の空港、例えばパリやニューヨーク、ロンドンの空港がどこにあるかをドットで描いた図表を持ってきてくれました。これは、物すごく良い。東京の都心部、仮に東京駅にしましょう。東京駅から羽田の距離は直線で14〜15キロ。これは世界のその国を代表する都市の空港の中で一番近いんです。世界には羽田並みの空港もあることはあります。例えばドイツを代表するフランクフルト。フランクフルトの国際空港はフランクフルトの中にありますから、近いに決まっています。フランクフルトの人口はせいぜい100万人です。フランクフルトはドイツを代表する都市です。その中心地とフランクフルトの空港は、地下鉄でいくことができます。それから、もう1つ同じくらいの距離の空港はオランダのスキポールです。これも近い。スキポールは物すごく便利です。アムステルダムからスキポールはとにかく近いんです。この二つと羽田が距離は同じくらいなんです。都心から二十何キロにあるのがヒースローやシャルル・ド・ゴール。もう少し離れたところにケネディ空港。そういうのがズラッと並んでいる。ましてや、韓国の仁川(インチョン)は、成田並みです。
ですから、羽田は都心にこれだけ近い。そこに空港がある。だけど、発着回数では問題がある。滑走路の4本目がこれからできるんですが、羽田をもう少し増やすことはできないか、ということは、皆さんすぐ頭に浮かびますね。5本目はどこかということについては、空港関係の土木屋さんはまじめに考えているらしく、この間どこから滑走路をつけるかという話を聞きました。東京湾アクアラインの換気塔のところ。あの辺を埋め立てて5本目をつくったらいいかなということでした。空港管制もそれぞれ必要でしょうけれども、そういう話があります。5本目もかなり真剣に考えているようです。
5本目で何となく素人が考えるのは、4本目が羽田空港の東南の海上にできましたから、4本目の滑走路の北側の海上に5本目をつくって、この滑走路との間に、高速艇を持ってきて、高速艇の離発着場にする。昔のコペンハーゲンと同じです。コペンハーゲンの空港は、今、橋ができましたけれども、前はしゃれた高速艇がありました。コペンハーゲンの飛行場をおりてバスでずっと行くと、コペンハーゲンの空港の端に高速艇の乗り場がありました。高速艇で、スウェーデンのストックホルムまで連れていった。それと同じようにここへ高速艇をつくって、築地でも日本橋でもいいんですが、そこに行ける。どういう人が乗るかは別ですけれども。中国人の中年のご婦人なんか観光目的ですから、何も急ぐことはないんですから、高速艇に乗って、築地の魚河岸に行くとか日本橋の三越に行く、そういうのもおもしろいです。
5本目はこれかもしれません。問題は6本目をどこにつくるか。ひらめいた。そのひらめきをどうしても皆さんにいいたい。
6本目をどこにつくりますか。僕は羽田からみて多摩川をはさんだ対岸につくろうと思います。ここはどういうところかというと、東亜燃料や石油の蒸留塔がたくさん並んでいるところです。今そこで仕事をしていますけれども、石油精製は日本国内では溢れているから、それをつぶして外国でやろうという話が出ています。原産地で石油精製をやったものを船で持ってくるということは、昔日本はラワン材を丸太で持ってきて国内で加工していたけど、カナダやインドネシアで現場加工したインチ材にして持ってくるということと理屈は同じなんです。
ここはそんなに儲かっている雰囲気もない。ここで企業が営業停止したらその後どうするんだという話です。これは完璧な油の蒸留塔です。東ガスさんと同じです。東京都も困っているでしょう。ここが豊洲と同じになるんです。だから、一見ここで工場ができてやっているけれども、この会社の社長はどうしようかと考えているはずです。僕はここの工場を全部取り払います。取り払って、建設残土を汚染した土壌の上に盛り上げていきます。建設残土を盛り上げた跡を使うというのはイギリスでもドイツでもどこでもやっているんです。公園にしたり、運動場にしたり。日本みたいにピリピリしていない。建設残土を盛り上げて踏み固めて上に滑走路をつくればどうか。これは国が買う必要はない。この地主から、100年のリースか何かで賃借りすればいいんです。賃借りして、ここにつくる。
問題は、6番目の滑走路がどういう使われ方をするか。これは素人です。専門家の方に聞かなければいけない。東京が国際化するということは、定期便だけではないんです。皆さんご存じのように、プライベートジェットがバンバン来るようになります。ここは、東京の都心から一番近いんです。だから、マイクロソフトでもアラビアの王様でも、プライベートジェットでここに来て、そしてここから高速艇でも、道路でもいいので、都心まで行く。プライベートジェットの飛行場を、例えば調布に持っていくというのは一番ナンセンスです。大金持ちと世界の大企業主が飛行場に着いて10分でビジネスの相手のところに行けなければ、プライベートジェットの飛行場の意味がないと僕は思うんです。
プライベートジェットだったら、滑走路をそんなに長くしなくていい。飛行機も軽い。飛行機を渡す橋も軽くて済んじゃう。6本あるんだから、1本ぐらいプライベートジェット専用があっていい。滑走路は2000メートルぐらいで十分かもしれない。土盛りで、賃貸100年。
ターミナルが必要だったら、首都高速、横羽線が近くを通っていて、羽田空港に行っていますから、ここにプライベートジェット用のターミナルをつくって、行けばいい。多摩川を越えたところにプライベートジェット用のターミナルをつくる。
もう少し話を広げていけば、この滑走路は3500メートル必要か。必要ではない。2500メートルだったら台北や釜山の近距離の飛行機もここへどんどん降ろせばいい。羽田の国際ターミナルは、英語でいったらロングホールです。こちらはショートホールです。皮肉なことは、この1本の滑走路とそれに付随するターミナルは羽田でなくていい。管制だけちゃんとやってくれれば、川崎市のオペーレーションでもいいんです。川崎市が地元の燃料会社と相談して、2000メートルか2500メートルの滑走路をつくって、川崎市が自前でターミナルをつくっていいんです。5本は国立の堂々とした羽田滑走路があって、1本は川崎市。それでもいいわけです。
線を引いたら結構できそうなんです。近くには国際的なトレーニングセンターや住宅公団やヨドバシカメラとかがありますけど、これはもういい。小さい飛行機だったら多摩川の上をずっと上がっていけば騒音の問題は大体クリアする。
ということが今年の3月ぐらいに閃きまして、僕は口が軽くて、失言の滋といわれていますが、2〜3カ所で話しましたら、皆さん結構興味持ってくれました。日建設計で話したことがないというので、お話しするんですけど、管制さえ一元的にすれば川崎市営空港でいいんです。ターミナルも川崎市営のターミナル。こっちは国立の国際ターミナル。そうすれば物すごく軽くできます。ビジネス施設の大家さんなんか何も豪壮なターミナルビルの中に入る必要ない。ここなんかほとんど止まらないで、すっと行ってしまいますから。
これで6本目というのがあるのではないか。6本滑走路があると、羽田からの京浜電鉄だけではもちませんから、東海道貨物支線をうまく使う。品川から町中に行く路線でJR並みの地下鉄が1本入れば、これは十分6本の滑走路に対応できます。
こんな話が、前原国交大臣の耳にとまらないかなと思っていたら、誰かが言ってくれて、メモだけとってくれたそうです。でも、それでは当てにならない。僕が直々に行ってこの話をしなければいけないと思っていたら、選挙があんなになってしまってどうしようかなと。これが1番目。
2番目。僕は建築家ですけど、国土計画をやって都市計画をやっているから、土木屋さんと非常に似た思考過程を持っているんです。建築屋ではない、だけど土木屋でもない。だけど、土木屋の話はよくわかる。そういう志向がある。ということが、2番目の話に結びつく。
2番目の話は、前原大臣が「中枢港湾は3カ所ぐらいにしろ」と言った話。これは大問題になっています。大阪と名古屋と、東京といったって、東京の港湾は、東京港と川崎港、横浜港、横須賀港、千葉港と、みんな港湾管理者が別です。これを1つにするというのは大変なことなんです。それから北九州。そこから3つというのは大変です。仮に京浜の港が1つ選ばれたとした場合、東京と横浜と、間に小さい川崎というがあって、東京、横浜プラス小さい川崎の港湾のオペレーションを一体どうしたらいいのかという話がある。
そこから、少し昔の話になりますが、今から15年ぐらい前、私が川崎市の仕事をしていた時に、川崎市が頑張りまして、扇島にコンテナ埠頭をつくったんです。コンテナ船が1隻入るか2隻入るかくらいのものです。コンテナ船が留まってくれると思った。ところが、横浜市が意地悪をした。埠頭をつくったって、オペレーションする通運業者がそこへ船を回さなければ成り立たないんです。通運業者は長い明治以来のしがらみがあって、やくざみたいな話ですが、横浜なんですよ。横浜の方が国の補助も厚いし、昔からのなじみの会社もいっぱいある。横浜はコンテナの船を回してくれない。川崎は、つくったはいいが、干上がってしまった。コンテナを荷おろしできるオペレーション会社を川崎が第三セクターでつくったけど、ついこの間閉じました。神奈川県にある限りは川崎市は横浜市にいじめられて何もできないというのが港の実情なんです。
ところが、東京港は、昔から国に反抗してつくった港です。そういう港なんです。だから、国も東京の港湾計画には手を出せないんです。ということで東京都港湾局というのは物すごい力を持っているんです。大地主であると同時に船のオペレーションもやる。港湾管理者というのは県境に関係ない。アメリカの戦後の民主主義政策で、港湾管理者は基本的に市でやれということになった。だから、横須賀市も港湾管理者、千葉市も港湾管理者になっているんです。県が入っているのもあるんですけれども、力関係でいうと市が強い。
そうすると、東京都が、川崎市はかわいそうだとなります。川崎市と東京都が一部事務組合で港湾管理の会社をつくったらどうなるか。一部事務組合も県ごとでなくていいんです。県をまたいだ一部事務組合もあるんです。有名なのは、熱海市と湯河原市の境の小学校をそれぞれ熱海市は熱海市、湯河原市は湯河原市でつくるのは馬鹿馬鹿しいので、湯河原市と熱海市は共同して一部事務組合をつくって、学校区をつくり、湯河原市の小学生を熱海市の小学校にやった。もっと一般的な話は消防ですね。消防も一部事務組合。ですから、事務の一部運営というのは市の境を越えてもいいし、県の境を越えてもいい。効率よくやれればいいんです。
そうすると、東京都が「川崎市、おれと手を組まないか」というと、いじめの構造の神奈川県にいるより良いので、川崎市はよろめくかもしれません。川崎市がかわいい女の子だとすれば。仮によろめいたとしましょう。何が起きるかというと、僕が考えているのは大井と青海のコンテナヤードを扇島に移すということです。扇島の日本鋼管の埋立地の前にちょっとした埋立地をつくって、全部ここへ並べます。埋め立てれば、この延長は結構長い、ここに7バース、ここに3バースぐらいある。足して10バースぐらいここにザーッととれる。問題は環境関連で埋め立ての反対運動が出るかもしれませんが、それはこちら側で緑をモクモクにして、こっちを埋め立てれば一種の環境のミティゲーションで一応役人的説明はできる。
大井のコンテナヤードと青海のコンテナヤードをここに持ってきて何が起きるかというと、その間があく。ここには第2湾岸道路があります。新木場から来ている。第2湾岸から中は船を入れなくていい。だから、コンテナ船は扇島にずっと並んで、東京湾に入ったら、どうぞ帰ってください。多分このオペレーションのほうが大井の方に入ってくるより易しいはずですよ。東京港の地図を改めて見てください。こっちのほうが易しいんです。
東京都は川崎市に儲けを折半する。場合によってはクレーンから何から全部東京都がつくってやってもいい。金が本当に出るのかというと、東京都は底なしに地主ですから、幾らでも出る。特別会計が3つあって、1つ、副都心特別会計が赤字になって、青島さんの知事の時にその特別会計をどうするかで大騒ぎになった。石原さんになって特別会計の赤字を処理しました。羽田の特別会計と既存の品川とか竹芝で儲けた特別会計の金を新都心の特別会計に埋めて処理した。それでも黒字です。
その他に、ここがあけば、コンテナヤードよりも1ヘクタール当たりのプロフィット、価値の高いものは幾らでもここに入れることができます。例えば、倉庫と一部加工の保税倉庫的な冷凍倉庫。高次の物すごい性能の高い倉庫と、そこである程度の加工した製品、外国あるいは国内でもいい、そういう倉庫機能を全部ここに入れてしまう。
何で僕が倉庫といっているかというと、都市計画屋というのは馬鹿でして、僕もそうなんですけれども。土地利用を書くときに、オフィスビルは大事だ、住宅は大事だ、商業は大事だと言います。それから港も大事だ。鉄道も大事。でも、倉庫が大事だと言いません。大体いつも倉庫をつぶしてマンションをつくったりするんです。しかし、3600万人の南関東で、常に新しい物資を入れながら維持管理していくためには、やはり倉庫なんです。その倉庫を中途半端に追い出していくと、逆に時間、距離が長くなって今度は交通の点でロスが起きます。企業も、倉庫があいたからそれを売り払って三井不動産のマンションにしようか、ということをよくやりますね。みんながそれをやっていると、気がつくと倉庫は、首都圏中央環状道路沿いに行く。もちろんいいですよ、埼玉県や神奈川県でも。しかし、本来東京港の港にあった倉庫がそこまで行って効率のいいオペレーションができるかというと、必ずしもそうではない。倉庫は大事なんです。倉庫をどういうところに立地させるかという議論を都市計画屋は全然やってないんです。学者もやっていない。僕もやっていません。しかし、倉庫は大事だと思いました。
倉庫というのもどんどん質が変わってきています。多分これだけ情報網が活発になると、倉庫が三越になります。お客さんは来なくていいんです。三越の倉庫から車がそれぞれインターネットで発注したところに届ける。そういう時代になります。そういう倉庫をここにずっとつくりましょう。
そういうふうにすれば、アクセス部になっているところに第2湾岸が入ります。第2湾岸からすっと行けるわけです。それから、もしかしたら船が必要かもしれない。この船はコンテナ船でなくていいんです。小さい船でいい。小さい船はここに着いても構わない。今の品川埠頭ぐらいの規模の船です。ただ、コンテナ船のような大きな船はここにはもう着けない。これは扇島に着ける。扇島に着けるためにもう1つ重要なのは、扇島も倉庫地帯で今冷凍倉庫が多いですけれども、僕は将来、日本鋼管の川崎の製鉄所は要らなくなると思います。JFEは千葉で頑張ります。もう決まっているんです。日本鋼管はこの土地をもてあまし始めている。なぜそういう感じを持っているかというと、僕は日本鋼管とここをどうするかというで二十何年つき合ったからです。たまたま郵便局を入れたら、日本鋼管は飛び上がって喜びました。だけど、その後が続かないんです。だから、日本鋼管だって、ここに付加価値の高い倉庫群をつくれば飛び上がって喜ぶ。ただ、ここは土壌汚染ですから埋めなければいけない。倉庫だったら軽いですから。
時代が変わるとそういうことが起きそうだ。今までの土地利用が変わらないという前提で新しい土地を探すのではなくて、土地をどんどん新しいものに更新していくというのは、ちょうど建築屋が古い建物を更新するのと同じだ、特に東京は。ここにコンテナ埠頭ができれば、もしかすると、日本鋼管は、「もうやめた」となって、ここに一次加工の小さい工場団地をつくったり倉庫にしたり、きっとしますよ。
ここからはみみっちい都市計画の話になります。ここの倉庫群はエアカーゴがいい。成田からも羽田からもエアカーゴでここに来ます。何が起きるかというと、葛西のロッテのゴルフ練習場の横のエアカーゴターミナルや、もっと手近な話でいうと、流通センター前の倉庫も要らなくなる。大きい土地利用の転換が起きてくる。トラックターミナルもいらなくなる。ここのところがあくと、ロッテは膨大な金を投入して、次のディズニーランドみたいなものをつくるかしれません。
もう一つおまけに、葛西に下水処理場がありますが、あれがビューロクラシーで使えなくてどうにもならない。いろいろ考えているけど答えがないんです。芝浦の浄水場が再生して、大成建設が上に建物を建てるように、葛西の下水処理場のだって、もっと有効に利用できる。京葉トラックターミナルの土地も利用できるとなれば、あそこに非常に大きい流通機能センターができるかもしれないと僕は思っています。できるかもしれないし、もっと別なレクリエーション機能ができるかもしれない。
流通センターターミナルを移転したら、あそこがあきますね。あいたらマンションにしたらいい。そういうふうに土地利用が動き出すんです。これぐらいの大きい枠組みで土地利用を考えないと、東京の持っている力を思う存分発揮できない。みんなちまちましたところの再開発をやって、幾ら儲けたということをやっている。これは本来民主党が国家として考えなければいけないことです。何故か。東京しか日本を支える都市はないんです。
丸の内の有名なアメリカの情報の会社、そこが約半年ぐらい前に発表したリポートをちらっと見ました。現在、世界で一番富が豊かな都市圏は東京です。何故なら、1都3県で3600万の人がいて、その平均の1人当たりの生産性が4万ドル近い。3万5000〜6000ドルでしょう。その外国経済調査会社は30年まで延ばしてみた。そしたら、中国も、上海もどんどん伸びる。ソウルも伸びる。にもかかわらず、東京はヨーロッパ並みの対前年比1%ぐらいで延びていく。30年で依然として東京1都3県3600万の人とGDPを掛け合わせた総生産、世界で一番なんです。経済調査会社だからまゆつばで、あまり信用置けない。でも、そういうことを外国の調査会社が言っているんだから、うれしいですね。日本の調査会社、三菱総研あたりが言ったって、誰も信用しないけど、30年後にはまだ一番なんです。
だから、東京は頑張らなければいけないんです。東京を頑張らせるということは、単に東京23区ではなくて、もう一回国家が考える首都圏の姿をどうしたらいいかということを考える。横浜や川崎、千葉も面白いんです。そういうところの位置づけをきちんと決めて、土地利用転換はこうすべきだということをいって初めて、民間の皆さん方が「ああ、そうだな、やってみるか」となる。そういうことを今の国会は自民党も、民主党も、全然やっていない。
それから3つ目。それだけいろいろ東京が頑張っても土地は余り出します。家も空き家が多くなります。これは明らかなんです。ただ、空き家も、そう多くないところと物凄く多くなるところがあります。これは2年ぐらい前に皆さんにお話ししました。板橋区に土地は買わないほうがいい。空き家率がべらぼうに多くなる。江戸川の南は大丈夫、そういう話をしました。
それでは、先程言ったべらぼうに金を持っている東京港湾局が臨海副都心をどうしたらいいかということです。臨海副都心だって、あれだけの土地全部に容積率600%ぐらいのオフィスビルなんて建てられません。臨海副都心に建てるぐらいなら品川に集中的に建てたほうがいいというのは誰もおわかりでしょう。品川は、東京3600万人の力を国際的な視野で伸ばす次の戦略的拠点です。丸の内ではない。そういうと三菱地所に怒られますが。それぐらい品川は大事なところになりました。オフィスビルは品川に建てる。三菱地所だって、自分の保全のために一生懸命再開発するでしょう。森ビルだって頑張るでしょう。だから臨海副都心にオフィスビルが来るかというと来やしないんですよ。マンションだってそろそろ飽きられます。超高層の1500戸のマンションなんて、20年も経ってみなさい、とんでもない資産下落です。誰も買いたくない。300〜400戸のしゃれた小ぶりのマンションなら資産価値はあります。だけど、大手不動産会社がそういうことをやってしまった。駄目ですよ。
僕は考えました。大井もあきます。青海もあきます。昔言ったんですが、ここに世界に誇るべき東京都立の動物園と植物園をつくったらいいじゃないか。ここは東京都の土地でしょう。港湾局は儲けているんです。その黒字を都民のために吐き出させる。世界に冠たる動物園、植物園、それにちょっとした都立の大きい広場。子どもが野球からまり投げから何でもできる広場の3点セットをつくります。これは都立ですから、動物園は、入園料は大人500円、子ども100円、植物園もそれぐらいといったら、その大きい広場と動物園と植物園だけで東京都民は1日遊べます。お父さんのポケットから1万円あればおつりが出るんです。食い物だって、どうせ植物園の食い物、動物園の食い物なんて400〜500円の横串の何かでいいんです。子どもと一緒にそれを食べる。それのほうがずっと子どもは、お父さん立派と思いますよ。
何が起きるかというと、ディズニーランドがだめになります。ざま見ろです。今やっぱり独占的なものに一種の緊張感を与えながら努力させなきゃいけない。そうでないと、日本で独占的な力を持っている企業は世界的な競争力を持たないんです。持てない。それの最たるものは僕は野村証券だと思います。それから電通。電通なんて国際的に闘えないんです。日本のお客さんを相手にして広告をやっているから。それをつぶすぐらいの外的ショックを与えないと東京は闘えない。だから、三井不動産に申し訳ないけど、臨海副都心に大きい動物園と大きい植物園と大きい広場、そこに子ども2人とお父さん、お母さんが1万円を持っていったらおつりが出る。それぐらいのことをやらなきゃ東京都じゃないですよ。
ということをして、あきそうな土地を埋めていく。もう少しカッコつけて言えば、ロンドンのキューガーデンのような植物園をつくれとか、ベルリンのツォーを10倍ぐらい広くした動物園をつくれというと、日本人は喜びます。ベルリンのツォーとロンドンのキューガーデン、それよりいい動物園と植物園を東京都はつくったんだとなります。日本人はこういうのが大好きですね。
そういう大きい話をしなければいけない。日本の経済がウハウハで上がっていく時はしなくたって皆さんはやっていました。だけど、日本が周りからヒシヒシと攻め込まれている時にはもう一回全国を見ながら、本当に闘える都市はどこかを考えます。僕は、東京と、小さいけど福岡だと思っています。それから、観光立国京都です。悲惨な状況にいるのは大阪です。大阪の北ヤードは失敗するのではないか。年をとったからちょっと言い過ぎて済みません。大阪はチャイニーズとコリアンをどんどん入れた無政府都市にすれば元気になります。もともとそういうところだ。そういうスケッチをやった方がいいのではないかと思います。
以上、三題ばなしをしました。1つは飛行場、1つは港、3番目は植物園と動物園。この話はもうちょっとまじめなドキュメンテーションにして、またご披露する機会があると思いますが、そのときは二番煎じになりますから、また皆さん眠っていてください。必ずドキュメンテーションにして出します。

 

土地利用の検討

(図) 
これからお話ししますのは、前半は1月に皆様にご披露した都心の容積がどれぐらい増えるかということです。おさらいをします。途中の経過過程は言いませんが、東京の人口はこう増えていくというグラフもあります。23区はこう増えていくよ、都心4区はこう増えていくよというものです。それは国の社会保障・人口問題研究所の予想より確実に上になっている。実績値も、国の予想よりもかなり上をいっているという話です。それをもとにして、提案として私は、東京都が現在皆さんを指導している土地利用の容積率については、部分的には2倍近くしないと、これからの新しい国際化に対応した住宅もオフィスもできないというところが出てくるとか、1.5倍ぐらいのところもどうしても出てくる。逆に東京は土地利用が複雑怪奇ですから、30年後にも今の東京都の定めた土地利用の用途と容積は同じところもあるよという説明をします。それは1月のおさらいです。
ついでに申し上げますと、2030年に2倍近くになるところはどこか。都心4区の人口が伸びる。人口が伸びれば住宅は増えます。住宅以外の用途は、皆さんオフィスと考えますけれども、それ以外に老人ホームがあります。それから、新しい各種学校があります。教育施設。それから、病院を含めた福祉系。これがべらぼうに増えます。オフィスだけだったら、2010年ベースで、2020年、2030年に2割ぐらいしか増えないかもしれない。しかし、それに福祉系と教育系、文化系、そういうものを足すと35%ぐらいになるかもしれない。そういう説明を1月にしたと思います。それは改めておさらいしましょう。
おさらいした後に、先程の話の2倍近くってどこなのという話をします。それは、僕たちの算出結果では、環状2号が新しくできた後の、環状2号の両側です。これは1.7倍ぐらい増えるはずです。それから、もう1つは、もともと容積率が低くて大変苦労して再開発をやった六本木周辺です。何も森ビルにひいきしているのではないんです。あそこは本来六本木ヒルズ、ミッドタウンのようなオフィスだけの大規模再開発をやって、業務と商業は世界に冠たると、両方で言っていますが、そういうものをつくったにもかかわらず、その周辺の土地利用は、用途は住居系で300%しかない。そういうところが多いんです。住居系300%を600%にすると結果として2倍になります。それだけ伸び率が高い。そういう作業を1月の説明でしました。
(図1)
今僕たち何をやっているかというと、いろいろやっています。今日そのメンバーが来ています。
(図2)
今我々が何をやっているかというと、2030年の東京都心市街地像の交通系やアーバンインフラ系の検討です。もう一回これからご説明します。そのほかに品川、渋谷、新宿、池袋、この地域の具体的なイメージをつくっています。それから、臨海副都心のこの姿も今作成しつつあります。それプラス品川から羽田、これも作業しております。しかし、これは本当の僕の好みではない。本当は、江東デルタがどうなるかの提案をしたいと思っています。
(図3)
隅田川から西でみんなが大騒ぎしています。墨田区にスカイツリーができるでしょう。スカイツリーで初めて皆さんここに関心を持った。しかし、江東デルタはいろんな形で東京を支えている重要な場所なんです。その評価を皆さんがしていませんから、ここについての仕事します。続いて、北区から板橋の一部、ここもどうなるか。そうすると、大体これで山手線で囲まれたところの絵姿ができます。
その次に、23区の全部。江戸川から葛飾、足立、練馬、杉並、世田谷、これも全部環境のグランドデザインですから、その住宅像を描く。結構長丁場でつき合っている人はくたびれ加減です。そういうことをこれは意味しています。そういう全体の流れの一部としてここで説明をしようとしています。

 

1.将来予測と計画の目標

(図4)
これはおさらいです。全国の人口は2030年に1億2500万人から1億1500万人に減ります。しかし、東京都と東京都区部の人口は横ばいです。これは皆さん十分ご存じの通りです。
(図5)
これは23区、区部の総人口です。区部の総人口は1995年に約800万人、795万人からずっと上がり出しました。これが東京都推計の人口です。こちらは森記念財団で検討した我々の推計で、2005年で東京都の推計と実績値とのギャップが、10万人ほどあります。我々の推計の方が多い。ところがその後我々の予想を超えて急激に23区は伸びています。2009年のデータで880万人までいっています。我々の推測では2010年に880万人ですから、この緑はもしかすすると我々の推測を上回るかもしれないということです。
(図6)
これは東京23区の将来予測人口です。我々の推計です。2030年と2005年で7.1%。860万から921万になりますから、25年の間に7.1%。しかし、7.1%全部が、23区全部が同じように増えるのではない。これを分けていきますと、江東区、品川区、大田区、江戸川区の臨海の増加人口は1.20倍に。23区平均は1.07倍です。都心区はどこかというと、千代田区、中央区、港区。この3区は一番多くて1.86倍になります。
山手線区というのは新宿区、文京区、台東区、目黒区、池袋区、渋谷区、ここのところは1.09倍。東京23区平均値の1.07倍よりちょっと上回っています。山手線の外は全部減ります。このあたり、中間区はほとんど変化ない。墨田区、中野区、北区、荒川区です。もっと重要になるのは、皆さんのかなりの人がお住いの世田谷区、杉並区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区、ここは0.97倍になります。23区が1.07倍に増えるけれども、外周区は0.97倍。人口は減りますが、年寄りが増えます。これは前に何回か皆さんにご説明したとおりです。特にやばいのが練馬区、板橋区、足立区。葛飾区は大丈夫です。葛飾区は家を持っていても資産価値が十分あります。それから、世田谷区と杉並区では、買いは世田谷区で売りは杉並区です。杉並区は必ず人口より住宅供給が多くて、空き家がべらぼうに増えます。世田谷区は大丈夫。今まで杉並区・世田谷区と1つの区にまとめていましたけれども、実は杉並区と世田谷区の間には暗くて深い溝ができる。というのが僕たちの2030年の予測結果です。ちなみに私は杉並区にずっと住んでいますから、世田谷区をうらやましい顔で見て死ぬ。そういう話がここから出てきます。
(図7)
都心4区を考えますと、森記念財団の人口推計予測は、かなり強気なんです。実は東京都推計は森記念財団の推計に沿いながらちょっと低目で伸びています。これから説明する数字に、0.9掛けぐらいで人口もオフィスも増える。1割ぐらい僕のしゃべったことを間引いて頭の中で整理していただくと、大体東京都の線引きになります。
一番少ないのは国の社会保障・人口問題研究所の調査です。これも多分、今年が国勢調査ですから、相当上に上がるはずです。言いたいことは、森記念財団の2030年の97万人というのはとんでもない話ではなくて、東京都の推計値はそれに沿って、ちょっと下回っているけど上がっているということです。もちろん97万人には日本人の他に外国人登録人口が11万人入ります。日本人が86万人で外国人登録が11万人だから97万人です。

(図8)
下限を説明しようと思ったんですが、時間があったら説明します。ここで説明するのは、こういうふうに人口が増えるというペースでいくと、従業者数とか床面積がどうなるかという数字についてです。これが2030年上限値。これは僕たちがつくった上限値。しかし、物事には上も下もあるというので、下限値というのもちゃんと考えていますよと。その中間をとると中間値ができる、そういうことです
(図9)
こういうことで、都心4区の容積率がどうなるかというのを検討しますが、それの前文句として「コンパクトで複合的な東京をつくる」とありますが、とにかくまとまりがよくて、いろんな機能が非常に効率よく受け渡しができる。日本のサッカーチームみたいなものです。いろんな人の役割分担が綿密に決められて、サッサとその情報が伝達される。そういう都市が日本の東京の一番の強みだと整理しています。2番目は「人工環境と自然環境との融合により東京の環境性能を高める」とありますが、当たり前ですね。3番目。「多様な界隈の魅力を伸ばす」。これは外国人も評価しています。東京の町はおもしろい、いろいろなものがあるということです。こういうのが東京をつくるときのスタートの文言です。あんまり信用はできないんですけど。

 

2.都心市街地構成

(図10)
都心の市街地構成についてです。これは伊藤私案です。大手町、丸の内、有楽町から新橋、それから赤坂の辺までにかけてを高度エリアにしました。その外側に複合エリアをつくりました。外側に混合エリアをつくりました。混合エリアの外にウォーターフロント。一応こういう4分類にしました。この前ご説明したとおりです。

 

3.土地利用ゾーニング

(図11) 
それを実際の地図の上に落とすと、高度エリアというのは、一ツ橋のところから、皆さんよくご存じの新橋、虎ノ門から六本木、ここにミッドタウンと森ビルがあります。それ以外にここに環状2号があります。こういうところが高度エリアです。複合エリアというのは外側です。大体千代田区。千代田区の麹町、官公庁街。ここは昭和通りのそば、裏側ぐらいに大企業の一次下請の子会社がずらっと並んでいる。一部上場の株式会社、大企業の子会社。こういうのが複合エリア。混合エリアというのはごちゃごちゃとしたところがある。一番典型なのは芝です。何でも集まっている。月島も何でも集まっている。人形町の辺も何でもある。神保町もそうです。あと、ウォーターフロントはいろいろと新しいものがある。

 

4.提案容積率

(図12)
容積率を検討する場合にどういうふうに考えたか。一言でいうと、再開発促進地区の考え方と同じです。昔の再開発地区計画です。再開発地区計画というのは皆さん十分ご存知のように、工場があいたとか、大規模な空地があった、用途指定は準工とか工業地域。あいたところにどうしてもマンションやオフィスをつくりたい。豊洲のところはその典型ですね。そういうときに役所は促進区などの名前をつけまして、そこで容積が2段階アップします。例えば大きい工場団地ですと、全部で3ヘクタールぐらいの敷地です。それでは間に合わないから道路を入れるとか、区画整理的にいえば3%といわないで10%ぐらい公園を入れようよとする。そういうふうにして一応町並みにふさわしい道路や公園を入れれば、工場の300%〜400%ぐらいにしようよということです。あるいは500%もありました。
こういう大きい3ヘクタールの一団の敷地に道路が入って、それぞれ0.7ヘクタールぐらいで5カ所ぐらいのもっともらしい敷地になって、そこに建築屋が入って、総合設計的な公開空地を入れたりお化粧します。そうすると、おお、わかった。これはいいことだ。だから、300%を500%にしたのは土木屋ですが、次は建築屋がやったものであと200%ぐらい上げよう。だから、300%を700%にする。こういうのを再開発地区計画でやっていました。十分ご存じだと思います。
それを再開発地区計画だけではなくて、今度は都心地域の再開発の一般的なルールとして考えてみたらどうか。深川の藤倉電線、イトーヨーカドーのあるところや、豊洲、それだけではなくて、藤倉電線の横の富岡八幡の横の、ちょっとした古い木造の住宅が集まっているところ、0.5ヘクタールぐらいを再開発する時だって、同じように藤倉電線並みの提案容積率をやったらいいのではないか。ここでいっているのはこういう話です。
(図13)
東京都運用基準の再開発等促進区における容積率の考え方は場所が限定されるわけです。こっちは一般解なんです。我々が提案するのは、例えばけなげにも、例えば住友不動産が0.6ヘクタールぐらいで、一生懸命そこに2号施設を入れたり、公開空地を入れたりすれば、これは促進区と同じような扱いをしていいのではないかということで、提案容積率は見直し相当容積率と同じです。評価容積率は評価容積率。都市を全体広く考えていこう。そうしないと、いい町はできないよという考え方です。
(図14)
これはどういうことかというと、なかなか皆さんわかりませんから、汐留を例に説明します。もともとが400%の準工業地域に少し街路を入れて見直して800%にしました。建築屋が入った。ひどい建物をつくったんですけれども、役人は何もわからないから、公開空地ができた、水回りがいいなというので、また400%入れた。足して1200%。ひどいことになっちゃった。だけど、これで汐留がいい町かというと、誰もいいといわない。役人のシステムが悪いんです。それを東京都は反省もしていない。役人というのは駄目ですね。いい悪いを全体像から見て判断するということを役人はできないのではないか。数字と表でやっているんです。だから、汐留を見て僕はつくづく思いました。こういう行政指導は決定的におかしい。それに比べればミッドタウンや六本木ヒルズは立派ですよ。住不さんのウォーターフロントの新川の辺だって立派ですよ。こういうことがよくあります。例として、これは再築型です。
(図15)
これは現況の指定容積率です。これが渋谷、六本木、青山墓地。六本木の交差点は600%です。この横っちょに森ビルの再開発のところが600%です。白いところは300%。住宅系なんです。森ビルさんは国際文化会館のところで再開発をしようとか、公団さんもここのところで再開発しようとか、いろいろあります。
環状2号線はここを通ります。ここも600%なんです。それに比べて三菱地所は、1300%とかたっぷりもらっているんです。三井不動産のところだって1000%ぐらいもらっている。何も三菱地所と三井不動産をけなすわけではないけど、世の中不公平。こういう不公平はおかしいのではないか。それは今情緒的にいったんですが、数字的に全部つながっちゃう。町丁目別に容積率が変化している。
(図16) 
提案容積率でいくと、結局六本木の辺は800%にしてください。環2のところは1000%にしてください。銀座1000%、環2は同じぐらいにしてください。それから大・丸・有のところも全体大体1300%で決まっているんだから、これ以上伸ばさない。それぞれの市街地の容積の伸び方、これまでのトレンドの伸ばし方を全部チェックしていって、僕はこれを提案したんです。
ちなみにいうと、新宿は1300%にしました。新宿はかわいそうなんです。こういう提案容積にしました。その結果どうなるか。
(図17)
現在の東京都庁が決めている容積率と我々の提案した容積率の比率をとってみました。そしたら、4段階になりました。1.5から2倍以上。これはおもしろいでしょう。1.5から2倍以上は八重洲です。これは僕の好みが入っている。もう大・丸・有、いいよ、あれだけ皆さん苦労しているんだから八重洲に次、頑張ってほしいよというのがここです。
それから、もう1つ、1.5から2倍は、ウォーターフロントの田町の周辺。ここはもともと容積が中途半端だった。ここを思い切って再開発する。ウォーターフロントの運河にも面しているから、しゃれた住宅をここに入れる。オフィスはここには余り期待していないので、ここだけやる。
あとは1.25倍から1.5倍。これは大部分ここです。森ビルのところも2倍といっているけど、実際は1.5倍ぐらいです。それから、月島も1.5倍ぐらい。一番変わらないのはどこかというと、よくおわかりのとおり、秋葉原は1.25倍ぐらい。東神田から神保町、日建設計さん、ここは今のままでいいじゃないかと。申しわけないんですけど増減なし。これは神保町界隈のごちゃごちゃとした町を残したいイメージがあるので、つい筆が走って、この再開発も同じです。
こういうふうに1倍、1.25倍、1.5倍、2倍としました。しかし、これは先程言いましたように、人口も容積率も最大限でいっていますから、実際にはどれぐらいになるかというのは後でもう一回説明します。一応これが将来の頑張ったスタイルです。
(図18) 
僕はずっと上限値の説明をしました。問題は、上限だけでなくて、そんなに調子いいこといっていられるか、物事はそううまくいかない、ということもあるだろう。下限を考えました。
下限の考え方はどういうことか。ちょっと複雑です。東京都庁は頭がかたくて、2005年の土地利用と用途の容積率を区役所も変えません。これから2030年までの25年変えないでしょう。気がついたら2005年の指定容積率のまま2030年になるという危険性があります。それが下限の考え方です。これだけ調子いいこといっても、役人は容積率は直さなかったらどうなるのか。これで変わらなかった時に、そこにその指定容積率に見合う人口と床とを入れたらどうなるか、これを考えた。上限は人口の伸びを主体にして考えました。下限は役人の馬鹿さ加減を主体にして考えました。年寄りだから口が回って、役人がいたら勘弁してください。そんなに馬鹿とは思ってないんだけど、馬鹿さ加減と言っているだけです。
そうすると、上限では現在の容積率、新宿を入れて都心4区全体の3割容積指定を変えてくださいということになりました。ところが下限値は変わりません。だから、収容力は2.6%ぐらいしか伸びませんよと、なります。これだけいろいろ再開発やっても、2.6%。これはのりしろですね。約3%しかのりしろがないんです。だから、上限が3割増で、下限はほとんどゼロ。この間の中間点は足して2で割れば15%。一応これぐらいの話をしておかないと、いろいろ意地悪されるので、一応こういうふうにしました。
下限値について、繰り返しいいます。2005年の指定容積率に基づく課税床収容力の推計値と国公有地宅地・建物データを頭に入れた国公有地の非課税床の推計値の、両方足して下限値を出しています。上限値は、森記念財団「2030年の東京趨勢予測による姿」、これをもとにして出している。
もうちょっとディテールに入りますけれども、500%の商業地域で床500%になるかというとならない。皆さんご存じのとおり。500%の商業地域を実態調査しますと、4メートル、6メートルの道路がダーッと入っています。港区なんか一番多いですね。震災復興のところでも多いです。戦災復興なら少なくなりますけど。4%、6%というと、全部6掛けか4掛けですよ。住宅だったら300の三六、百八十とか、400で四四、百六十。そうですね。だから、400%の商業地だから400%の建物が建つかというとそうではない。実際は4メートル道路、6メートル道路に接した建物は240%とか160%は建ちます。前面道路が14メートルのところは400%になります。それを全部足しますと、400%のところでも全部で300%ぐらいしか建たないんですよ。それを僕たちは全部調べました。都心4区。そうしますと、平均して400%指定のところは都心3区──新宿区はちょっと低いんです。都心3区では、400%の指定のところは,容積率の85%しか建たないんです。だから、実態としては340%しか建たない。
ここで充足率という言葉があります。充足率とは何かというと、幹線街路街区以外の細街路に面した敷地の、利用容積が減少することを考慮した割合。これが0.85です。全部町丁別にやりました。0.85や0.7もありました。それの合計の平均値が0.85なんです。要するに一生懸命いろいろやって、いい加減ではないということを皆さんに言いたかった。
(図19)
現況の東京の都心4区の超高層がどういうところに建っていて、一般の小さいオフィスビルがどういうところに建っているか、全部シラミつぶしに調べて、パースで立ち上げました。これが現況です。汐留、日本テレビ、松下電工も、全部書いてあります。森ビルさんのところも小まめに調べました。
(図20)
これが2030年にどういうふうになるか。それぞれ容積を積み上げで超高層ビルを立ち上げました。この茶色は、2005年から2030年の25年の間に超高層ビル系として建つであろう建物。ウォーターフロントに大きく建つだろうと私は考えたので、築地の墨田川沿いへ超高層の茶色がかなり建っています。築地はもう場外市場はない。ここは、国際医療特区に考えました。
問題は環2です。環2は複雑で、全部高くいくかというと、そうではなくて、環2に面したところは既に小さいオフィスビルがバラバラ建っていますから、その後ろ側を大街区型にやる。
ここが慶応義塾大学です。この提案のおもしろいのが、慶応義塾大学の外側や、神田の明治大学の外側、こういうところに大学が新しくどんどん成長していくと、オフィスビルと同じように研究棟やセミナー棟をどんどん建てるから、大学の外側には割合高い建物が建つよということです。そういうことを前提にして、神田の周りや慶応義塾大学の周りに高い建物を建てました。私の人生、40年かけた頭の中のライブラリーをもとにして、ここに建てたらいいなと考えました。
ついでに言いますと、新宿に2000%の建物を2本建てています。それから丸の内の日本ビルのところに2000%を建てています。それは何故かというと、容積移転をするんです。日本ビルのところに2000%というのは、前に僕が提案した日本橋川の高速道路を全部取り払って、周りのつまらない――昔魚河岸だったところを震災復興のときに金がなくて東京市が民間に売り払ってしまってできた細長い変なビルをつぶして元に戻します。その分の容積を全部日本ビルの上に上乗せする。だから、2000%必要なんです。
新宿もそういう感じです。ただ2000%を書いているのではなくて、容積移転の結果としてそこに河川やオフィスビル街の周りに大きい緑がふえる、そういう一種のバーター、ミティゲーションとして2000%をここに提案しているということです。

 

都市基盤(アーバンインフラ)の検討

(図21)
ここまでは1月のおさらいでした。ここからやっと今月号、後半に入ります。何をこの半年やったかというと、水と緑のオープンスペースと安心・安全、地震対策と低炭素化と交通ネットワーク、この4つをやりました。

 

5.水・緑・オープンスペース

(図22)
ここからは新しくやりました。どういうことをやったかというと、地形と歴史に根差したきめ細やかな水と緑のオープンスペースを連続的ネットワークにしようということです。東京の地形や歴史が受け継いできた水と緑、民間再開発によってつくられた緑をきめ細やかに連続させる。「きめ細やかに」というところがみそなんです。そのネットワークができると、歴史的な魅力も全部つながる。
(図23) 
何をやったか。これは「かぜの道」の提案です。
(図24)
図中にカエルのたまごみたいなのがたくさんあります。斜面緑地など既存の緑、開発によって喪失された緑などです。これは公園ではありません。斜面緑地で残っているところや、総合設計でつくられた緑を全部ここに拾い集めました。総合設計でできた緑が結構あるんです。もう1つは、お寺。お寺の緑も大事です。、谷中の寺町、高輪の寺町など結構お寺があるんです。寺町も大事にしよう。もう1つ公園だけでなくて、大学その他大規模な施設にも緑があります。東京大学なんか公園だと思え、椿山荘あたりだって公園ではないかと考える。うまく垣根を取り払ってしまう。そういうところを積極的に緑にするとどうなるか。大学を入れますと結構この緑が増えるんです。病院なんかも緑にしたところがあります。
都市緑地法で役人のいう公園は入れますけど、それ以外の緑と思ったものも全部入れた。カエルのたまごが緑系と茶色赤系とでこれだけ広がるんです。本当はもっと1つ1つは小さいんですけど、小さくするとあんまり迫力がないので、ほどほどの大きさにしました。英語でいうとexaggerateしているんです。
問題はこの線です。どういう線か。これは何も新しく道路をつくれということではないんです。寺と寺の間の、例えば谷中なんかである4メートル未満の昔の2間道路、その両側のブロック塀を築地塀にするとか生け垣にするだけで結構3本道になります。場合によっては、4メートル道路で車が一方通行というのは、これはもう仕方がないとする。車の一方通行はバイパスして、そこだけ時間的に補線にしてくださいとか、8メートルの道路があって、相互交通のものは一方通行にして、残ったところは車道を広げてくださいとか。既にある道路をきめ細かく、2間道路であろうと、6メートルであろうと、それをつなげていきますとこんな線ができるんです。これは何も、公園緑地課の役人が、16メートルあらねばならない、公園道路と都市計画決定しなければならないということでは毛頭ないんです。
やりくり算段して、寺の間をくぐり抜けたり、これは東大の農学部と工学部の間の切り通しですが、あれを取り払ってあそこに、工学部か農学部どっちかに歩道を1つつくってほしい。谷中のところも寺町の歩道があるから、それをうまくつなげばこういう道ができる。これは大それたものではございません。慶応大学のところも、イタリア大使館、三井倶楽部も、みんな協力して散歩道ぐらいつくれよという願望がここに入っています。それから、高輪の寺町のところだって、あそこのブロック塀をやめて築地塀か生け垣にすると、ここに通りができそうだ。二本榎の商店街です。二本榎の商店街をもうちょっと歩きやすくしてくれとか、そんなことを考えている。
ただ、さわりが1つあるのは、外壕だけはもう一回堂々と公園にしたいなと。隅田川べりに沿って。この辺は新川の霊岸島です。IBMさんや住不さんのしゃれたウォーターフロントがありますからそこをうまく使う。ここは聖路加のところです。ここは結構歩道ができる。
結果として都心3区の中に、インナーリングとアウターリングの散歩道をつくれば、カッコいいなという感じです。水と緑の環状軸です。
(図25) 
水と緑の環状軸のいくつかの場所のセクションを検討しました。浅草橋や御茶ノ水、市ヶ谷壕などです。
(図26)
これがそのスケッチです。例えば、市ヶ谷・外壕のところは、ここが外壕の通りです。こっちが法政大学、こっちが理科大。市ヶ谷から飯田橋に向かっています。外壕通りの通過交通の車道をアンダーグラウンドにして、上のほうはローカルな自動車だけ通すから、その幅員はせいぜい8メートルぐらいでいいだろう。そうすると、あそこの外壕通りは幅員が多分35〜36メートルあるんです。そこを全部公園にできるではないか。桜が咲いています。四谷のグラウンドのところは、ドライなグラウンドはやめて水を張ってしまえ。上智大学のグラウンドもほかに持っていけと。本来水が張っていたところなんです。占領軍が来て、上智大学がかさにかかってあそこをグラウンドにした。だから、もとに戻してもらう。あれが水になればイメージが全然変わります。
環状2号のところはご存じのとおり、アンダーグラウンドでやっていますから、上はできるだけBRTや歩道にしましょう。一応こういうセクションを描きました。

 

6.安心・安全(都心DCP)

(図27)
次は、安心・安全です。これは僕の商売のところで、2050年までに東京でマグニチュード6.5以上の地震が起きる確率は、皆さんご存じのとおり、地球物理の連中が機械的に計算すると70%です。結構高いんです。最近は京大の地球物理の連中が張り切って、東南海・南海の方が確率が高いと言っています。30年間の確率が0.8幾らだから、そっちを一生懸命仕事しろというので、政府の金をあっちへ持っていってしまいましたが、首都圏だって70%ということになっています。だから、そういい加減なことは言っていられない。ほどほどの準備はしなければいけない。
ほどほどの準備の中で、出てきたのは、2年ぐらい前から内閣府の防災担当のところで一生懸命勉強会をやった一時帰宅困難者をどうするかという話です。
当たり前の話ですが、一時帰宅困難者を考える元データとしては、東京23区の昼間人口が1128万人というのがあります。そこの中で推計する帰宅困難者は、東京23区全体で350万人です。23区に三多摩や横浜、川崎、千葉、埼玉から毎日通ってくる通勤者が大体300万人近い。その人たちが全部一時帰宅困難者になるだろう。もちろんそのほかに外国人や観光の人がいますから、そういう人を合わせると東京23区の一時帰宅困難者は345万人。これを区別にしますと、千代田区で57万、新宿区で35万人と、結構な数字です。どれくらいが歩いて帰れるかわかりません。千代田区57万人のうち何割ぐらい帰れますかね。必死になって帰っても半分か3分の2か。仮に7割帰ったとして3割残ると、57万人の3割ですから千代田区全体で20万人残るんです。3分の2は歩いて帰ります。残ったのは20万人。新宿区も35万人で7割というと15万人ぐらい残ります。
問題は、残った人が全部健全かというと、怪我をするんです。ビルのガラスが吹っ飛んだとか、鉄筋がはね返ったとか、自動車が突っ込んできたとかで怪我をする。地震の時の怪我人が、千代田区で8000人。ただ、千代田区の8000人の他に台東区や文京区で怪我した人も千代田区に流れ込みます。何故かというと千代田区は病院が多いんです。千代田区が面倒見なければいけない怪我人は1万3000人ぐらいいるんです。新宿も、中野区や豊島区から流れ込んできて、これも1万1000人ぐらいいる。
問題は、千代田区の1万3000人や新宿区の1万1000人の怪我人と言っても、重い人もいるし、軽い人もいます。病院がどれぐらい面倒見れるか。1つの例ですが、今千代田区と言いました。僕たちの計算したのは御茶ノ水駅と新宿駅の周辺。御茶ノ水駅の周辺では負傷者が、文京区や台東区から集まってきますから、1万3000人。新宿で1万3000人、御茶ノ水で13000人。それをお医者さんが一生懸命治療します。例えば新宿だと東京医大病院や国立感染症センターが全部やる。御茶ノ水は、順天堂や東京医科歯科大、日大。そこに面倒の見てもらえる人を除いて残るのがどれぐらいいるか。面倒を見てもらえずほっぽり出される人、これが御茶ノ水で5000人、新宿で1万人。医者が面倒見切れない。一体これをどうするんだという話です。
この報告書の結論はどういうことかというと、一時帰宅困難者の中に必ず医者はいるんです。看護婦もいるんです。今前提にしたのは、例えば東京医大とか国立感染症センターといった上位の病院です。そういう病院の勤務医は何人いるか、これはわかっている。これは必死になって働くでしょう。だけど、たまたま学会で来た医者とか、遊びに来ていた医者、たまたま子どものところに来た女医さんや看護師がいるんです。その人をやはり絶対使わなければいけない。
ここからがいよいよ都市計画です。そういう人たちが避難地に来てすぐに応急処置ができるような場所と材料をどういうふうにしてそろえるか。これが大事なんです。一種の野戦病院を緊急に開設するために一番必要なのは水です。いい水を供給しなければいけない。それから次に必要なのは夜間の発電です。地震は何も昼間起きるわけではない。夜起きるんです。それから雨の時も。だから、夜間でもきちっと面倒見れるだけの光を供給しておく。自家発電。水と自家発電とテント。この3点セットが絶対必要です。そういうものを例えば御茶ノ水駅の周りや新宿の西口あるいは中野の再開発のところに置いておいて、あとは野戦病院で自由に使ってください、そういうことをやらなければいけない。一時帰宅困難者340万人を考えると、中野だけではない、新宿だけではない、御茶ノ水だけではない、上野だって必要です。スカイツリーになったら、浅草だって必要だろう。そういう場所が出てくるんです。
あそこも必要だ、ここも必要だというんではなくて、万が一地震が来た時は、ここなら怪我人の世話、ちょっとした情報連絡、食べ物の手当てをしますという拠点をあらかじめ皆さんに知っておいてもらったらどうか。そういう場所をDCPというんです。ディストリクト・コンティニュイティー・プラン。これは僕たちがつくって、まだ役人は対応してくれてないんです。だから、僕はこの間役人をどなりつけました。30年で大地震発生確率70%の首都圏で、被害総額幾らで、どれくらい死者が出るかということまでやったけど、それに対する具体的対応、現場に即したことをやってないではないかと言ったんです。
(図28)
それを一応検討してみました。そういう場所はどういうふうにするかということと、多様な危機管理資源を活用した都心DCPの拠点とネットワークをつくるということです。
平常時にも非常時にも活用できる多面的なDCPインフラとしては、平常時の都心機能の継続と円滑な救援のための水、電力、熱源を確保しよう。もう1つ、ついでにいえば平常時の低炭素化にも活用できるDCPインフラをつくろう。普段は低炭素化にも協力しますよ、ということです。
そういうDCPをどこへつくったかというと、これも今日大林組さんと話しました。品川も大事だというので、品川を入れることにしました。これは何を言っているかというと、一番安心な地下鉄は大江戸線です。大江戸線が平均の地表面からの深度が深いんです。地表面からの深度が深いということは、地震の時の被害は少ない。メトロも都営もありますが、地震の時に一番オペレーションする可能性の高いのが大江戸線。これを1つ中心に考えてみよう。大江戸線の持つもう1つの特徴は、地震の時に関東ロームで余り被害のないところからずっと練馬の陸上自衛隊の駐屯地まで来ているんです。一たん緩急ある時は、練馬の陸上自衛隊の連中が大江戸線に乗って、救助部隊が入ってこれるんですね。大江戸線は東京の地震の時の命綱になる。そういう意識を東京都は持っていないんですね。専門家からいうと、大江戸線は非常に重要。これが動いて何が可能かというと、例えば、上野で非常に負傷者が多く出て、それをどこへ持っていくかといった時に、木場公園のところに持っていくのが一番いいんです。木場公園は、一時帰宅困難者が比較的少ない。緊急避難のときにここで間に合わないのは、大江戸線を使って木場まで持ってくる。西新宿でも溢れます。それはどうするか。逆に練馬の方に持っていく。そういうふうに大江戸線は使えるだろう。
それから、ここで広域防災拠点、救護拠点としたのは、主として公園です。上野公園のところと新宿西口を中心にしたところ、日比谷のところ、芝公園の済世会病院のあるところ、木場公園の周り、これは江東です。もう1つ重要なのは、国がつくった有明の癌研のところの防災公園。ここは耐震岸壁をつくりましたから、緊急物資を全部持ち込めます。地方から来た警察官、消防団はここに一時滞留できます。ここに来た人たちは援助要員となって町の中に入っていきます。それから、先ほど大林組の人と話をしましたが、品川も非常に重要なDCPになる。このDCPは、常識的にどういう病院と連絡が可能か。芝ですと、済世会中央病院、日赤医療センター、広尾病院、北里病院、慈恵医大、これが芝の防災拠点をサポートする、何かというときは患者をここに運ぶ。逆に、野戦病院化した時には、野戦病院に対する連絡は、例えば慈恵医大がやってくれる。新宿ですと、野戦病院化した新宿西口の副都心の広場のところには東京医大が対応してくれる、そういうことがあります。
もう1つは、ヘリポートです。医療機関近接ヘリコプター緊急離着陸場がどういうところにあるかも全部チェックしました。一応緊急ヘリポートもなるべくうまいところにつくって、ここからドクターヘリで遠いところに運ぶ。そういう場所にもしなければいけない。
上野公園のところは、病院は御茶ノ水にいっぱいありますから、御茶ノ水をDCPにしてもいいんですが、御茶ノ水に人が集まると溢れてしまいますので、上野公園に人を集めて御茶ノ水の医療チームと広域病院をタイアップする。そういうことを考えました。
ですから、これは都心4区の一時帰宅困難者に対して、万が一の場合にどういうようにサポートできるかということを概念として示してあります。
(図29) 
御茶ノ水駅周辺にいろんな病院があります。先ほど言いましたように、こういう病院に緊急時の温水を供給できるだけの非常用の電源もエネルギーセンターもないものですから、こういうものを新しくつくってくださいという提案をしています。系統電力がきちっとあって、それが全部温水ネットワークに結びついて、この温水ネットワークでつくられたものは溜めておくと同時に病院に供給していく。温水が物すごく大事です。病院は温水と蒸気を非常に使いますから、温水をみんなのところに供給できるようなネットワークを御茶ノ水地区につくらなければいけない。これは提案です。
(図30)
これは大江戸線のホームを活用した非常時の救急医療の展開イメージです。怪我をした人たちが、例えば冬の夕方、雨が降っていた時にどうするか。表では面倒見切れませんから、プラットホームに全部マーカーをつけておいて、マーカーのところに1人1人担架で全部並べられるようにしておく。真ん中を医者が通る。場合によっては、来た電車に重傷の人を乗せて、より高度な医療ができる病院に運ぶ。プラットホームに緊急時はサッときれいに担架が置けるようなマークをつけておいたらいいのではないかという提案なんです。これは何も初めての提案じゃなくて、ドイツでもう20年前からやっています。核戦争対策で、ドイツの地下鉄のプラットホームは核戦争の時に怪我人の面倒を見なければいけない場所として考えています。ドイツの地下鉄のプラットホームはよく見ると何か薄い線が入っている。何も初めからはっきりする必要はない。プロが見ればわかる。「この線は何ですか」といったら、「この線とこの線の間に担架を1つ入れる」と言っていました。これは日本でも見習ったほうがいい。そうすれば、これは非常電源があって、冬の冷たいときでも夜でもプラットホームが野戦病院のように使える。こういう提案なんです。

 

7.低炭素化

(図31) 
低炭素化は次にしましょう。

 

8.交通ネットワーク

(図32)
交通ネットワークの一番のモチーフは、前から私が提案していた首都高速を全部大深度で地下に潜らせることです。事業費は約3.5兆円です。ただし、現在の首都高速の抱えている借金は別です。現在首都高速は何兆円か借金を抱えています。それは別に外して、新しくつくる地下の首都高速が大体3.5兆円ぐらい。それを前提にしての提案です。これが方針です。「地下を活用した新首都高速道路(首都高リング)の整備」。これだけです。あとの「環2整備・外堀通りの公園道路化・飯田橋交差点改良」「臨海副都心と都心を連絡する地下鉄ネットワークの強化(地下鉄延伸)」「リニア新幹線の東京駅導入(延伸)」「都心を周回するBRTネットワークの形成」はおまけです。
(図33) 
これは今までのように行きと帰りのトンネルは2つではなくて、1つのトンネルの中に3車線の道路を上下につけるという案です。いろいろな意見があるんです。パリですと、この首都高にはトラックを入れない。乗用車だけです。乗用車だけになると途端にタッパが低くなる。なるほどフランス人はけちでセンスがいいと思いました。貨物車を入れないで乗用車だけを円滑に走らせるなら、現在の高さの3分の2ぐらいで済むわけです。べらぼうに建設費が安くなります。そういうイメージでこれも書いた。トラックは首都高の外を走ってください。首都高は乗用車だけにします。上下重ねる。その下に熱源、水道管。これは東京電力に教えていただいた。三河島や下水処理場の放流水をヒートポンプ化して、温水にしてそれぞれの地域に配る。熱源というけど温水と思ってください。蒸気配管、これはガス屋です。例えば池袋とかいっぱいありますが、清掃工場の熱を、今まで自家発していましたけど、自家発をやめて、直接蒸気配管していく。還水配管、これはガス屋。ここはガス屋で、こっちは電気屋で、あとはNTT。これは換気ダクト。避難。このトンネルは17メートル、15メートルぐらいでもいいんです。横幅が15か14ぐらいで高さが17。そういうトンネルは絶対つくれますと、鹿島建設の土木の方は検討して保証してくれました。こういうイメージです。
(図34)
高速道路ネットワーク。カーキ色のところは浅いんです。道路下を浅く入ります。複雑な後楽園の周りや新宿の西口から入って日テレまでのところ、こういうところは大深度にしました。ここが谷町の交差点。アークヒルズ。この辺のところから大深度です。重要なランプに近いところは大深度。大深度だと金がかかるから、大深度をなるべく少なくして、浅深度に上げていったから、この高速道路はサーカスのように上がったり下がったり起伏があるんです。今の首都高だってサーカスみたいなものです。今の首都高的に上がったり下がったりを地下でやる。これは原則として、既存の公共用地を使っています。公園下。だから、新しい土地はほとんど使ってません。例えば、外苑前は、絵画館の前のイチョウ通りの突き当たり。外苑のグラウンドにランプをつくってしまう。それから日テレの住宅公団をつくるところに初めからランプをつくってしまう。大橋あたりにつくってしまう。相当ひどいんです。西新宿は都庁の横のつまらない公園にランプをつくって、あそこからグルグル下げていってしまえとか。後楽園、あそこは都市計画公園なんですけど、知ったこっちゃない。遊園地の下は、軽いからあそこにランプをつくって、遊園地の横に車の出入り口をつくってしまえ。相当荒っぽいことをやっています。
一応こういうふうにして、ランプが青山、芝公園、外苑前。これだけやりますと、今の首都高速のランプと見合うぐらいの交通を処理ができるんです。新しい用地は取得していません。全部工事費だけで済みます。こういうふうにして、新宿に来たら、都庁のところから全部地下。3号線、東名、これは青山学院の裏側から地下に入る。例の五反田に行く道路、あれはほとんど交通量がないので取り払ってしまいました。黒いところは全部取り払う首都高速です。一番大きいのは目黒から来る線を全部取り払ってしまいます。その交通量は他で処理します。
というような提案をしました。これは1年以上かけてやりました。これだけではおもしろみがないということで、これプラス、実は交通の提案だから別なことも考えようということです。
(図35)
何を考えたか。首都高を地下化の他に道路表面は楽しく。外国人観光客も来るから、電車に乗って楽しんでもらいましょうということで、BRTを使いました。バスなんです。チンチン電車ではない。何でかと聞きましたら、チンチン電車というのは軌道法や鉄道法で車両の点検修理から信号システムからガチガチに縛られている。バスは気楽にやれるというんです。運輸省はバスはどうぞ自由にと。停留所も自由に、進行管理も、運転手も何カ月か訓練しなくたって、2種免許の大型をとっていれば乗れる。そういう点で、今役人の中ではBRTというのが割合はやりだというんですね。バス型の路面電車。それを有明から新しくできる道路の真ん中をずっと通して、築地から環状2号に行って、環状2号の中を通って、虎ノ門を通って、先程公園にした外壕を通す。この辺物すごくいいBRTです。上智大学もきれいですね。四谷から下がって、市ヶ谷から飯田橋、後楽園を通って、グルッと回る。もう1つ、東京スカイツリー、浅草と上野、これは目玉商品です。まじめな提案です。
それから、臨海副都心がどうも中途半端ですね。臨海副都心に1つ地下鉄を入れようということで、有楽町線の月島分岐で延ばして、臨海線にくっつける。これをやると、今のゆりかもめも、相当楽になるし、観光電車になります。
リニアは品川から大深度で通す。多分リニアの品川は民間がみんな相乗りしてすごいスーパーステーションになって、3000億円、4000億円のビッグプロジェクトになります。地下鉄、リニア、JR東海の鉄道回りと、プラットホームで2000億円で、上物で2000〜3000億円のビルを建てる。僕は考えました。品川始発だと、東北から来た人たち、北関東から来た人たちは新幹線で東京駅をおりて、チンチン電車に乗って、山手線に乗って品川に来ます。こんなあほなことあるか。これはあくまでもJR東海の自己中心型の計画です。考えてみたらJR東日本をうんと利用しているので、JR東日本のことを考えろといった途端にひらめきました。さっきの第6滑走路と同じです。
ここからリニアは急速に上に上がって、スピードは品川からは100キロぐらいでいいので、ウォーターフロントの水面のところに沈埋トンネルを簡単につくればいい。沈埋でずっと持っていって、東京駅の八重洲口から入る。これだけやると、リニアは東京の八重洲口から東に向かって走っているけど、気がついたら品川から西に向かって走っている。あらゆる点で、東北は、いつも日本政府から虐げられている。これは絶対西日本のわがままでつくっている。東北ないがしろです。僕は北海道生まれなんです。JR東日本で東京へ来た者はここまでリニアが来たら、スーッと行ける。ここまでは浅くて、沈埋でいいんです。スピードなんて100キロだって、60キロだっていい。上野と大宮と同じと思えよと。こういう提案をしました。 2時間話して、低炭素化を除いて私の説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

 

谷 先行きの暗い世の中ですけれども、今日の先生のお話を聞きますと、羽田空港の話、植物園、動物園の話、緑の話、それから何といっても安全性の話、大変夢の持てるお話を聞かせていただいてありがとうございました。
伊藤 今度まじめに低炭素化を時間をかけてお話します。
 次回の予告もしていただきました。今日は時間もなくなってしまいましたので、次回また質問のお時間をとらせていただきます。
すばらしい講演に拍手をお送りください。(拍手)
以上をもちまして、本日のフォーラムを終了させていただきます。本日はありがとうございました。 



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