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1.井形慶子自己紹介とともに、なぜイギリスという国に魅力を感じるのか

2日本人とイギリス人の住まいに対する価値観の違い。なぜ古家は壊されるのか? イギリス人はどんな家に価値を感じるのか?など。

3. 井形慶子が、住みたい町、No1の吉祥寺に500万円の老朽物件を購入し、300万円でフルリフォーム。ロンドン風フラット完成。

5. イギリスで売り家になっている魅力的な家。(借地権999年の古城、
湖が見えるコッツウォルズの古城)

7. 家づくりとは、住まいに命を吹き込む作業



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ところが、予算が限られています。でもどうしてもイミテーションでも暖炉はつくりたかった。この時、びっくりしたんですけど、今でいう古材ですか、そういうものを探して回ったんですが、この暖炉の枠がありますね。これ、私が自分で設計した暖炉が今からできるんですが、この1辺が、世田谷の某雑貨屋さんと言えばいいんでしょうか、建材屋さんと言いますか、若者に非常に人気のインテリアショップで、このぼろぼろの板が1万5000円で売られていたんですね。工事監督と一緒に行ったんです。彼、びっくりしていましてね。腐ったトタンが2万円で売っているのは、見たこともないと言っていました。それをいろいろな若者が業者さんと一緒に買っているわけですよ。「日本も変わったな」なんて言っていました。
私はそんなお金はかけられないので、このハウスメーカーさんにお願いして、近所の解体現場を教えていただき、そういうところで捨てられる古材を自分で拾ってきて施工していただきました。
(図13)
それが暖炉となるわけですね。すべてイミテーションですけれども。
(図14)
それから、何かリビングにアクセントが欲しいなということで、梁も探したんですが、古民家物というのはやはりブランドなのか、高いですね。それで、今、大工さんが磨いて いらっしゃる床柱も、近所の植木屋さんの庭に捨ててあったんですね。それをトラックで拾ってきまして、そしてこのリビングの柱にしております。
(図15)
後で見ていただきますが、古い古い昔の家というのは、梁があるんですね。日本もありますが、その梁も、本物をつけるのは高いので、集成材に色を塗って、そこに殴りを入れました。そして、ニスで汚したりなどして、梁を完成させました。ここに出ておりますのは、構造躯体なんですね。集成材の構造躯体をあえて見せる設計にしてもらいました。
(図16)
 これは玄関のアプローチです。全て拾ってきたり、安くて見つけたものでやりました。
(図17)
この家の外観なんですが、経過年数とともに古さを出したい。ところが、ブリックというのがまた高くて、予算オーバーとなりますので、上の部分は塗装にして、川砂をまぜてもらいました。川砂だと費用は幾らもしないということで、それを塗りました。そして、イギリスの古いコテージを完成させたわけです。


4.どういう家の持ち方、買い方、家に対する考え方を持つと、日本人は幸せになれるのか。

(図18)
私がこのような本を書きましたら、たくさんの反響が返ってきたんですが、私は、その中でいろいろな方々のご意見を聞きながら、改めて日本の家がなぜ高いのか、何故スクラップ・アンド・ビルドになるのか、何故私たちは新しいものがいいんだというふうな概念から抜け切れないのか等々を考えました。
(図19)
そこで、話題は少しかわりますけれども、それを考え詰めていった時に、1つのとっても面白いサンプルが出てきました。それは、住宅広告なんです。
私は、日本でもイギリスでも、新聞や雑誌の広告、チラシを見るのが大好きです。チラシや広告というのは、社会の価値観といいますか、暮らしぶりというか、そういうものが如実にあらわれていると思うんですね。
こういうことがありました。私の友人がマンチェスターに住んでいました。イギリスに行った時の話なんですが、自分の家を探しておりまして、素晴らしい家が出た、是非契約したい、あなたにも一緒に見てもらいたいと電話がかかってきました。その時、私はたまたまロンドンにいたので、そこの現場に駆けつけたわけですね。彼は、自分が買おうとしている家に舞い上がっている様子で、私に自慢を始めたわけです。「見てみてください、この玄関ドアの厚さ、この窓枠のフォルム。素晴らしいでしょう、この天井高」と言って、随分この人はパーツを説明するなと私は思っていたんですね。彼が余りにも舞い上がっているので、私はよく家の全容がつかめず、「ところで、この家というのは、土地は何坪くらいあるんですか」と聞きましたら、彼は変な顔して私を見るんですね。「そんなの、知らないよ」と言うんですよ。「それより、このドアを見てよ。これ、ビクトリアン時代のドアだよ」とか言いながらね。私は、あれ、おかしいなと思いました。彼は証券会社の仕事をする独身だったんですね。もしかしたら、自分の家を物すごく欲しがっていたので、変な業者にだまされているんじゃないかと、日本式に考えたわけです。 そこに案内に来ていた業者さんに、「すみませんが、この家の土地って何坪くらいあるんですか」と聞いたら、業者も変な顔をして私を見るんですね。「なんだ、この東洋人の女は、いきなり登場して」みたいな感じです。あれ、おかしいなと思って、「ちょっと販売パンフレットを見せてもらえますか」といって、それを見たんです。えっと思ったんですが、確かにそのパンフレットには、居間のサイズ、キッチンのサイズ、寝室のサイズと、各部屋の縦横のサイズは書いてあるんですけれども、土地が何坪、何平米であるというようなことがうたってないんです。

 






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