→日建グループへ



 



 PDF版はこちらです→ pdf


(図14)
全体の区別の人口増加の傾向から根本論で幾つか申し上げたいことがあります。どういうことがこれから起きるかということです。20年間に人口は8%増えます。どこで増えるかというと、意外と隅田川沿いのところで増えていくんです。昔、僕たちは、荒川区なんて町工場がたくさんあって、余り人の住むところではないと言っていました。墨田区もそうだったんです。墨田区も余り人けのないところで、いい住宅地ではない、住めるところではないと言っていましたが、過去の傾向をずっと追ってみますと、意外や意外、隅田川沿いの区の人口が増えているんです。もちろん港区は老舗ですから、人口もばっちり増えます。中央区も人口が着実に増えます。中央区は商業の区、事務所の区ではなくて、だんだん住宅の区になってきます。千代田は、おもしろいことに、ほどほどに、人口も増え、商業も増え、事務所も増え、意外と厚生文化も増え、割合バランスよく増えていくんです。それに比べて、赤字になっているのは人口が減っていくところです。どこで減るかというと、北区、中野区、杉並区、渋谷区と目黒区。目黒区はほとんどゼロです。増えもせず、減りもせずで、マイナス0.3です。
練馬区は元気なんです。人口がどんどん増えていきます。世田谷区は減りそうで減らない。わずかですけど増えていく。大田区よりも人口の増え方が高い。これを見ていきますと、区ごとの顔がおぼろげながら出てきます。僕たちは昔、杉並区、世田谷区というのは大体一体で、サラリーマンの一番住みたい区だと言っていましたが、こういう一体感よりも、中央線沿いの区のつながりのほうが強くて、中野区と杉並区はマイナスで、世田谷はプラス。世田谷区と杉並区の間に住宅地としての力の差がだんだん大きくなってくるんです。それに比べて練馬区は後発ですが、人口は伸び、学校や厚生福祉も意外と伸びるんです。練馬区は非常に若々しい。23区の中で一番若々しい区です。練馬区、杉並区、世田谷区は一体感があるとか、世田谷区と大田区は一体感があると言っていましたが、中央線が真ん中を切り裂いてしまった。そういうことがここからうかがえます。
それに比べて、僕たちが、川筋はなかなか住宅ができないよと言っていたのですが、荒川区とか墨田区が結構人口を増やしていく。こういうことがわかってきました。
(図15)
進む高齢化・長寿命化。これは先ほど言った23区の高齢化の話で、これは65歳以上の女性で、これは65歳以上の男性です。ずっと65歳以上の人口は増えていっています。
(図16)
先程言ったことの繰り返しです。これは簡易生命表からつくった表です。全国で、昭和のオリンピックの頃は、50歳の男性は18年余命があった。2008年にしますと31年余命があります。50歳の人が、オリンピックの時は68歳までしか生きられなかったのが、今や81歳まで生きる。65歳の人があとどれくらい生きられるか考えてみますと、オリンピックの頃は約10年、2008年は19年ぐらい生きるんです。ここでも10年ぐらいは働いて平均余命を同じにすればいいのではないか、そういうことが言えそうだということです。
(図17)
これは世帯です。世帯というのは人口ほど上がったり下がったりしません。ここで75歳以上の世帯というのがあります。これが着目点です。2010年に55万世帯、2030年に83万世帯です。一般世帯の中で75歳以上世帯が23区の中でどういうところに集まってきているか。人口と似ています。
(図18)
一般世帯の増加は川筋に沿ってきます。人口と大体同じなんです。
(図19)
あちこち話が飛びました。世帯や人口について分析しましたが、もう1つ申し上げたいのは、僕たちの調査は、人口だけでなくて、建物についても検討する必要があるだろうということです。建物について新しいデータを少しつけました。
建物は東京23区全体で、2010年に6万4000ヘクタールぐらいあります。その中で住宅はどれぐらいかというと、ちょうど60%です。住宅以外が40%です。事務所は一体どれぐらいかというと意外と少なくて、6万ヘクタールの中の1万ヘクタールですから、15%ぐらい。今言ったように60%が住宅ですから、住宅がどういう区でどれぐらいこれから増えてくるのかということと、住宅が全面積に占める構成比がどうなのかということを図にしました。
(図20) 
20年間の比較です。明らかにわかるのは外側で住宅が増えます。区部構成比を見たほうがいいと思います。東京都全体を100%にした時にそれぞれの区が何%ずつ増えてきているかということです。
ここでもおわかりでしょう。練馬区が増えます。世田谷区も増えます。大田区もそれほどでないけれど増えます。それに比べて、杉並区、中野区、新宿区はそれほど増えない。住まいでおもしろいのは渋谷区です。渋谷区は住まいの床面積が減るんです。そのかわり急速に事務所と住商併用住宅、大きいマンションの1階、2階に店舗が入ったというもの、これが渋谷増えます。渋谷区というのは、23区の中で過去のトレンドを追ってくると、特異な区で、人口は減る、しかし事務所は増える。住商併用、上がマンションで下が商売をやっているところがかなり増えてくる。そういう点で、副都心3区の中で、事務所や住商併用住宅の一番変化が高いのが渋谷区で、その次が新宿区です。豊島区は、事務所はそれほど増えません。商業も増えません。どちらかというと住宅的な性格が強くなる。副都心3区、池袋、新宿、渋谷と言っていますが、これから見る限りは豊島区の池袋周辺は住宅地帯になっていって、事務所はほとんど増えない。新宿区は事務所が増える。しかし、渋谷区は事務所だけでなくて、商業機能や文化機能が増えていく。そういうふうにだんだん3つの副都心の性格がはっきり変わってくる。こんなことがわかってきます。
(図21)
戸建て、独立住宅です。独立住宅がどういうところで減るのか、または増えるのか。千代田区は独立住宅はゼロになります。もちろん都心の中央区、港区の独立住宅はほとんどなくなります。ところが、世田谷区、杉並区、練馬区、江戸川区、都心の中の住宅地と言われたところに、もちろんマンション化で集合住宅も増えますが、一方で独立住宅もしぶとく残っているんです。品川区はおもしろい区です。品川区は独立住宅が増えていきます。
23区全体の中でおもしろい区を幾つか挙げてみろというと、先程から僕がずっと説明してきたように渋谷区が変わります。中野区は全体が住宅区ですが、その質が少しずつ下がってくる。それに比べて品川区は、事務所機能はそれほど増えないんですが、住宅がガタッと増える。
特異な区は、渋谷区、品川区、中野区、荒川区です。荒川区は、こういうところで住宅が増えるのかといったら結構増えていっているんです。それなりの下町の暮らし方ができていく。こんなところが非常に特徴のある区だと言えるのではないかと思います。

 

       
copyright 2010 NIKKEN SEKKEI LTD All Rights Reserved