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馬鹿なやつは、全部国営公園にすればいいと言っている。国営公園というのは国交省の公園緑地課の仕事ですから、役人から見れば、仕事が増えれば発言権が増える。だけど、ほかに何の役に立てるのか。農地で土地を買うと、役所が宅地で支払った価格よりもっと低い値段で処分しなければいけない。そういう問題が、石巻から釜石から一斉にある。これも一種の縮退というんですか、都市が小さくなってみんなが逃げ出していった残りの土地をどうするかという問題なんです。
そんなことを考えながら話していました。僕の話はかなり飛躍がありますが、25~26坪の住宅が建って、隣にも同じようなのが建っている住宅環境を先進国の日本がずっと引きずっていていいのか。僕はあり得ないと思う。やはり敷地は最小限50坪です。60坪あれば申し分ない。今の分割した敷地を2つ統合してちゃんとした敷地にして、そこに30坪か40坪の住宅を建てて暮らすのが、大都市郊外の田園居住ではないかなと思っています。
小林 別のポイントでよろしいですか。私は75歳で、先生のおっしゃるモデルです。65歳から75歳の我々の年代を見ますと、果たして、先生の持てる気力、体力がある人がどのくらいいるかなと。
伊藤 いますよ。(笑)
小林 かなりの人が病院通いをしておりますし、手に職というか技術があるわけでもないという人がごっそりいるんですね。月の半分、定期的に拘束されて行ける人がどれぐらいいるか。そういう不安を持つんですが、先生がおられると言うなら結構ですが。
伊藤 僕もお伺いしたいんですが、営業というのは年の功でしょう。そうじゃないですか。会社に行って、物を売ったり、仕事のあっせんをする時に20代の青二才よりも、60歳ぐらいのゆったりした人たちが来て、話をするほうがペースがゆっくりしてうまくいくのではないでしょうか。単純な答えは、営業は60歳以上でなければいけないとか。(笑)そうなんですよ。若い人の就職を気にする必要はないんです。端的に日本人で若い人はどんどん少なくなりますから、必ず売り手市場になります。
一番間違っていると思うのは、僕は建築出なんですけど、建築学科で受けた授業は何の役にも立ちませんね。大学の建築学部でなくて、むしろ職業訓練学校や、工学院が昔持っていた工種学校の技術のほうがよほど役に立ちます。土木も同じだと思います。建築学科を出て一級建築士になっても何の役にも立たない。左官、ブロック積みなんて間に合っているんですか。余っているんですかね。そういうことまで考えて、月10万円というのがあるのではないかなと僕は思うんです。
僕は一度こういうことを考えたことがありました。定年になる前の59歳の頃、大学のお呼びがどこからもなかったんです。どうしようかと思って、一丁変わったことをやろうと思いましてね。住んでいるのが杉並なんです。さすがに学校の教員の手前があるので恥ずかしいから、川崎に朝一番で行って川崎のごみ車に乗っけてもらおうと思ったんです。ごみ車は時間当たり高くて、多分2000円ぐらいくれるのではないですか。もっと高いかな。川崎でごみ車に乗っていれば杉並の人は、伊藤が朝どこに行って何やっているか知らないですよ。朝一番で行って、川崎のごみ車に乗って3時間か4時間働けば10時。終わってから風呂へ入って何食わぬ顔して杉並の家に帰れば結構いい仕事かなと思って真面目に考えたことがありました。
何かありますよ。職業の機会参入を自由にさせないで拘束してしまえばいいんですよ。美容院は男もやっているから7000円や8000円取ればいい。だけど、理容院、床屋は、就職機会、60歳以上しかやってはいけない。そのかわり、1人1000円でやれと。それでいいわけです。来る客も65歳か70歳。そういうことがあり得るんのではないかと思うんです。 
もう1つあるのは、地籍測量です。全然動いてないでしょう。全国、政府が本当に腰を据えてやれば、あれは年寄りに向いています。老眼でのぞくのが難しければ若い人にやらせて、年寄りは棒を持って立っていればいいんです。あれは山の上を歩きます。地籍は長丁場かかります。全部やるのに40年、50年かかります。小さい集落のおじいさん10人ぐらいをまとめて地籍調査をするのがちょうどいいんです。地方都市で仕事がない65歳以上の人が10人ぐらいいたら、地籍調査を測量事務所が国のお金を使ってやつ。これは生きがいがあると思います。
10万円で何か、ぜひ仕事してください。話は物すごく明快でしょう。
(図)
これで僕はショック受けたんです。生産年齢人口65歳の場合は0.8いってしまう。これを0.4に収束させるとすれば年金を半分以下にしなければいけない。現在の45歳から50歳の人たちが65歳になった時にもらう年金は今の皆さんの半分以下です。だから、これは役人がよく考えていると思う。80歳まで働かせた場合は0.1ぐらいでいくというんです。まだ働けるじゃないかと思うんだけどな。
先程病院に行くとおっしゃっていましたが、我々の調査だと、65歳から75歳までの80%は元気なんです。測量は歩くし、山の中ですし、非常にいいんです。営業というのは僕はいいと思うんですが、だめですかね。65歳ぐらいでにこやかにゆったりとした気分でお話をするというほうが警戒心もなくていいと思うんだけど。
谷 お話だと、人口は増える見込みがないので、自ら働いて、老後の自分の生活は自分でやらなければいけないと。働き口もこれからゆっくり自分で考えて。
伊藤 いや、急いで考えないといけない。国を挙げて考えなければ。僕は、職業機会参入の自由はやめてしまったほうがいいと思うんです。まさにこれからお年寄りが独占的に働くためには職業を選択して、こういう職業は60歳以上でなければ参入させないとか。
谷 後進に道を譲るなんてことはしないで。
伊藤 しない。後進は新しい仕事をこの時代幾らでも探せるんです。この頃警察官の質が悪くなった。何で悪くなったかというと、職業選択の自由度が増えたんです。今65歳ぐらいの人が、47年前、オリンピックの頃、若者の職業選択の中で一番行きたいと思ったのは警察なんです。特に高校出はそうです。パーマ屋なんて全然軽蔑されていた。ところが、今、高校を出て、警察官になりたいというのは少ないんです。整骨医、ペットの面倒を見る獣医、コンピューター屋とか、警察よりもカッコがよくてお金も入る職種が増えたんです。そうするとそっちに行ってしまう。昔は、そっちに行くやつが、職業選択の幅がなかったから警察官になって、悪いやつをしょっぴいていた。だから、検挙率が下がってしまった。
これが必要だという職業については、なるべく堂々と胸を張って入れるようにして、これはカッコいいけど、あんまり世の中に役に立たないという職業はギュっと締めてしまう。そういうことを考えざるを得ないと僕は思うんです。ぜひ75歳まで月10万で働くような場所を。ゴルフのキャディを65歳のおじさんがやったっていいわけです。今日はプレーをして、明日はキャディというのでいいわけでしょう。そういうことを考えざるを得ない時代になってきたと思います。
谷 ありがとうございました。先生に拍手をお願いいたします。(拍手)

 

 

 

       
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