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(図22)
事務所です。事務所の増加率は余り考えないでください。江戸川区や世田谷区はほとんど事務所がないところですから、そこがちょっと伸びるだけでも5割から6割増えたとことになります。中野区もそうです。むしろ区部構成比で見ますと、23区を100%にして何%が事務所で集まってきているかというのを見ると、品川は事務所が下に伸び出してきているんです。上のほうの千代田区と港区、中央区は、よくある御三家です。そのほかに渋谷区、新宿区、これは大体エスタブリッシュした事務所の性格が強いところです。それに比べて品川区がそこのメンバーに入ってくる。23区の中の構成比を見ますと、これが事務所の性格を強くしている。
これをどういう読み方をするか。2030年に向けて、品川区がだんだん事務所化していきますから、南側に事務所がずっと伸びていく。そういうことが考えられるのではないかということです。
もう1つ、補足的に言うと、台東区は、僕たちはよくわからないのですが、下町の小さい事務所群がしつこく残っています。これは特別に減りません。台東区というのは住宅もほどほどに増え、事務所も増え、併用商業も増える。浅草の浅草寺や上野のある区ですが、山の手とは全く違った形の商業中心、業務中心が台東区にある。そういうことが言えるのではないかと思います。
(図23)
それぞれの区の中で各区ごとに事務所が何%占めているかということをこの数字が物語っているんです。港区で言えば港区の総延べ床面積の中の事務所は47.9%、千代田区は42%、中央区が53%。各区の持っている事務所の力を各区別に出していきますと、見事に事務所は港区、中央区、千代田区の都心3区に集中し、その外側に次の事務所をサポートしている区がある。一番外側は住宅を主体にして事務所はほとんどない。区別の事務所のパーセントがどれくらいかというのを正確に分けていくと3つの層がはっきり分かれてきます。
(図24)
区部構成比で東京23区の事務所を全部足して100とすると、そのうち何%が、上の何区におさまるか。66.6%というのは3分の2です。6区の事務所の床面積を足すと3分の2になる。港区、千代田区、中央区、新宿区、渋谷区、品川区。品川区というのは事務所としても非常に重要なところです。4分の3にすると、江東区と台東区が入る。品川区を入れた新宿、渋谷副都心と都心3区、これで3分の2を占めている。それに比べますと、豊島区はずっと少ないんです。こんなことが1つ読み取れるかなということでございます。
(図25)
先程、人口がどれぐらい伸びるかということと住宅床がどれぐらい伸びるかということを別々に話しました。住宅床の伸び率を人口の伸び率で割ってみると、住宅床は23区全体で22.6%増えているんです。人口は8.6%です。ですから、住宅の床のほうがどんどん伸びている。しかし、区別で事情は違う。人口が一番伸びているのが中央区です。60%ぐらい伸びます。次に港区。それに比べて人口が減るところがあります。先程言ったように、目黒区、杉並区、北区は減る。
それに対して住宅床が増えているのはどこかというと、千代田区が37%、品川区が36%。相当増えています。中央区が34%。ずっと下がってくると、下のほうで渋谷区。先程言いましたように、渋谷区は人口も伸びないし、住宅も伸びないんです。意外と新宿区も住宅床が伸びない。住宅床は千代田区や品川区がドーンと増えているのに、新宿区、渋谷区、北区は伸びない。北区が伸びないのは当たり前と言うと怒られるかもしれない。これの類似点がどこかと考えると、渋谷区は人口も減るし、住宅床も減るから、住宅的区という形ではこれからはもう判断できない。むしろこれは住宅的な性格の区ではなくて、事務所や商業的性格の区だと見ざるを得ない。これを割ってみると、人口に対して1.26倍だけ住宅の床が増えています。人口1に対して26%。江戸川区、中野区、杉並区、品川区は住宅が過剰に増える。人口の伸びに対して住宅の伸びのほうが多いというところです。
逆に、人口が少しは伸びているのに住宅の供給がほとんどないというところが0.98から下です。住宅が足りないというところが文京区、台東区、新宿区、荒川区というところです。
(図26) 
全体を見てみますと、住宅が少ないのは都心に近い区です。文京区、台東区、新宿区、荒川区、江東区、大体都心か都心に近いところが住宅の供給が少ない。逆に住宅供給が非常に大きいのは周辺区です。江戸川区、杉並区、練馬区、大田区、板橋区。どうしてそういうふうになったかというのはよくわからないんですが、こういうような結果が出てきました。
(図27)
空き家は一体どうなっているのか。先程の人口統計や建物統計とは別に空き家だけの調査を平成20年にやったものがあります。これを見ますと、23区全体で空き家というのは約11%です。ところが、よく見ると、賃貸用にワンルームマンションを買った人たちがいる。それの空き家が13%。持ち家があるんだけど気がついたら人が住まなくなってしまったというのが9.5%、これはいいんです。問題は、賃貸であいているところが千代田区、中央区で高いんです。それからガクンと減って、12、13が第2グループです。目黒区も高いです。賃貸で少ないのは江東区や中野区。それぞれ特異的な説明ができます。
空き家率を順番に並べました。先程言ったように、賃貸でいうと千代田区、中央区、目黒区の空き家率はとても高い。空き家率の少ないのは江東区、世田谷区、墨田区。どういう関係があるかはよくわからないんですが、例えば中野区では9.9%。中野は古い木賃アパートが多くて、それが埋まっているんです。
どうしてそうなのか。僕はたまたま早稲田の教員なので周りの人たちと話していますと、地方から早稲田に新入生が来て、「どこかいいマンションはないですか」と学生課に相談に来るんです。学生課のほうは、何十年も前から持っているリストがあって、そのリストで「ここに行けばいいですよ」と教えると、そこはあいているんです。何故かというと、一等初めにそういう木賃アパートを早稲田の学生課の人が開拓するのは大変なんですが、一度それで契約をしてしまいますと、自動的に、卒業すると新入生が入るわけです。学生課は、あのアパートに新入生が来たから、面倒を見る。家主のほうも空き室が少なくて済む。ですから、早稲田の学生に家賃を低くしてサービスをよくする。そういうふうに、空き家についての不動産あっせん業を学校がきちっとやっている。あっせん業の安定した状況があるところに学生は安心して学生課の言うとおりにおさまる。そういう区が幾つかあるんですが、中野区はそれの最たる区です。
木賃アパートでどうしようもない、そんなところに人が住むかという見てくれで決まるのではなくて、賃貸住宅の空き家率を支配するのは、今言ったように、組織的な企業や大学です。新入社員や新入生に対して、どういうふうに面倒を見るかと考える。世田谷区もそうです。世田谷区にもたくさん大学があります。
中野区、墨田区、世田谷区、江東区、この辺は人柄がいい。コミュニティがある。うまく機能している。それに比べて千代田区、中央区は機械的にぶっつけ本番で、大学もいなければ企業もいないところに行って空き家がないかと探す。そういうことが1つあります。

 

       
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