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(図15)
 これが今、計画しているビルです。赤く塗っているところが敷地です。 こちらが大通りです。どんな建物になりそうですかねという議論を今、始めています。

 

 

 

 

 

 

 

 

(図16)
最初に持ってこられたボリュームスタディは、敷地を目いっぱい使っています。でも、「どうしてくれようか」という部分のある平面になりそうな感じだったので、「こういうアプローチはやめましょう」と。ビルの断面ですが、「要らないところはもう削除して要るところだけ建てたら、もう少しでかくできませんか」と言ってできたのがこれです。別に容積率は変えていません。無駄を省いてすっきりさせて上に伸ばしたら、こうなりました。このときにはフットプリントの話は一切しないで、基準階の平面プランから議論を始めました。

(図17) 
れもケーススタディーです。最初に出てきたのは左のような感じの図面でした。ありがちで、よさそうですよね。アウトフレームビル。これは実はうちのビルです。どこだとは言いません。東京でもうすぐ竣工するビルで、多分それに模した感じで持ってきてくれたと思うのですが、僕らが「ちょっとここは嫌だ」と言ったのは、廊下と居室の部分の間に雑物が多過ぎる。短冊状に切って貸すケースが圧倒的に多いのですが、物によってはワンフロア貸すケースもあるし、半分貸しちゃうこともあるわけです。できる限り稼ぐことを考えたら、廊下から賃料を取りたいわけです。あんなところに雑物があると、オフィスが満足にとれないので、EPSや、ダクトなどは極力いろいろなところに押しつけて、スカスカにしてくださいということで出てきたのがこの図面です。
これはこれで成立しています。どうやったかというのは、まだオープンにしないでおきたいと思いますが、小ざかしい手をたくさん使っています。こちらからも「テナントエリアには空調機を置かないでください」とか結構無茶な宿題を出していて、いろいろなところで苦労いただいて、空調機は天井の中に入っています。メンテナンスも廊下からやるようにしてあります。そういう意味では、設備シャフトがあって、どんな要求にもたえられるというのも優しさのうちの1つだろうと思います。
運用コストがかかりにくいというのも大事だと思います。そういう話をすると、設計サイドからよく出てくるのは「LCCで考えています」。それはそのとおりだと思います。しかし、本当なのか。LCCは立派ですが、日常的にメンテナンスコストが物すごくかかるとか、機械はメンテナンスコストがかからないけれども、オペレーションをするための人件費がかかるとか、それでは余り意味がない。この辺も少し意識をしてビルをつくらないといけないなと思っています。
「LCC」と言うからには、まず僕自身が非常に重要な思想だと思っているのは、スケルトン・アンド・インフィル(構造と内装)です。この単語はよく使います。丸の内の計画をしたときから使っていました。考え方としては、かえられないものについては、よりしっかり、きっちりつくる。かえざるを得ない設備、インフィルについては、できるだけかえやすくする。この思想を建物から家具に至るまでずっと徹底させるというのが当時のプロセスでした。これはかえるべきものか、かえないでずっと使うものか、そこの区分けは建物では結構まじってしまって、混在します。それをしっかりと分ける発想が建物をつくるときに物すごく大事だと思います。
それから、建物ができた後に維持や管理をするのは我々ではなくて、管理会社や清掃会社です。この人たちからも意見をたっぷり聞いて、優しい仕様にしておかないと、メンテナンスコストがかかります。かからないにしても、それは誰かが苦労している。何とかつじつまを合わせています。短期的にはそれでもいいのですが、「そんな面倒なことは嫌だ」と言って管理会社や清掃会社の人が逃げてしまうと、意味がないわけです。そういう人たちにも、このビルは清掃しやすい、管理しやすいという印象を持ってもらうようにするのも建物の価値を上げる1つの方策だと思います。
口で言うのは簡単ですが、どんなことをやっているのか。これは後ほど詳しくお話をしたいと思いますけれども、今、東館でトライしているのはBMSです。今回はクラウド型にしようと思っています。BA、BMSは、テナントビルの場合は普通、持っています。特にBMSは、僕も最初この業界に入ったとき、どんなすごいシステムなのかと思いましたが、大体パソコンです。大阪には日建設計さんが設計した堂島アバンザというビルがあり、今そこのBMSが竣工15~16年目になっています。ちょうど老朽化していて、「取りかえようか」「いいんじゃないの」という話をし始めたのですが、「クラウドをつくるから、ちょっと待っていて」。ということになりました
クラウドにしないと、どういうことが起きるか。そもそも何で取りかえたいのかといえば、OSがウィンドウズ2000なのです。XPももう終わりますが、ある特定のOSに沿っていると、それをベースにしたBA、BMSは総取りかえしなければだめで、「費用はどのくらい?」「2000万円」「ふざけるなよ」というぐらいのおカネがかかる。そんなことが起きないようにするにはどうしたらいいかというと、クラウドのアップサーバーだろうなと思っていて、今、クラウド型BMSの試行をしています。
(図18) 
概念図です。例えばビル管理をするときにいろいろなレポートを書きます。今の時代は、直接端末を持って歩いて、点検フォーマットにピッピッピッと入力すると、報告書のでき上がりということができるはずなのですが、意外にやられていない。そういうことを今回、実現しようと思っています。
クラウド型BMSは、BIMのデータや避難安全検証のデータなどを全部乗せられるので、ゆくゆくは非常に便利なのではないかと思います。BIMについては後ほど詳しく触れます。
それと、最初からビル管理会社の方々にも設計行為に入っていただいています。例えば、この辺に水がないと雑巾を絞れないとかいう話が結構あります。雑巾を絞るためにエレベーターに乗っていきましたというのが普通にあるので、そんなことはさせたくないと思って、設計段階から入ってもらっています。
ローコストで高いスペックというのは、ご提案というよりもお願い事に近い。今、建設コストが非常に上がっています。アベノミクス効果と震災復興による労務需要、それと急激な円安によって海外からの材料は大体2割ぐらい上がっています。日建さんに調べていただいたら、今、年7%ぐらいの勢いで工事費が上がっていて、非常に困ったものだと思っています。理由を聞くと、一番大きいのは労務費です。職人さんが集まらなくて、非常に高いという話があります。ずっとこんな調子でいくと、ビルを新築できなくなってしまう。そのままでいいのか。もう少しやりようがあるのではないか。
原因をいろいろ考えていくと、ビルはこんなにでかいのに、常に一品物で、常に特注です。これでいいのか。それから、どうつくるというつくり方のところも、施工者の個性と技術に頼り過ぎている。もう少しシステマティックにできないのか。車に例えて言うと、全部ロールスロイスと同じようなつくり方をしている。一品一品、手づくり。トヨタや日産がそんなことをやったら、確実に潰れるわけです。ベルトコンベアーで個性のないものをつくれとは言いませんが、もうちょっと共用ができるところがあるのではないかと思うのです。
僕自身は、ビルのつくり方はだんだん工業化すると思っています。その一環として、ユニット化、プレハブ・ユニット化はもう必然になってきます。この辺も、設計サイドからつくっている人たちに、こういうユニットにしてくれたら設計しやすい、つくりやすいはずだという働きかけをしたらいいと思うのですが、そういうコミュニケーションはありそうで、なかなかない。こういうところを今後進めていけたら、日本のビルづくりはもう少しシステマティックになるのではないかと思います。

 

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