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(図25)
 規模はこんな感じです。 事務室部分で60m×45m。東側をヘビー・デューティーゾーンにしているのですが、そこも含めると53m。ほぼ正方形に近いぐらいのサイズのオフィスをつくれそうだなと思っています。
 独立柱で見えているのは8本という状態なので、このサイズにしては相当少ないだろうと思います。この辺は構造に頑張っていただいたところで、それはそれで重要なテーマです。構造もちゃんとやる、設備もしっかりやるということがうまく絡み合わないとだめなのですがそういう点ではうまく絡み合っている例だと思います。
 さんざん言いましたが、僕はキャンチレバーが嫌いなので、アウトフレームになっています。もともと免震なので、余り上の構造物を薄くしなくても大丈夫という利点はありますが、アウトフレームで、窓は比較的小さいです。大阪の夏は物すごく暑いので、窓を広げて積極的に熱を取り入れる必要はないだろう。窓から見える景色は決して眺めのいい場所ではないですから、そんなことを事務工場には求めない。ただ、外光が入ることは重要なので、外光は当然窓ガラスから入ってきます。しかし、前面を横連窓にする、カーテンウォールにするなどの必要はないだろうと思って、こんなことになりました。
 非常に大きなポイントだと思ったのは、ここまで決めた後、次に何をやり始めたかというと、空調の検討です。いきなりそこに話が飛びました。まだ取り壊しをしているときから「空調を検討しようじゃないか」と言っていました。これは結構下心があるのです。
(図26)
 これは従来の空調方式です。どうなるかというと、セントラルなので天カセほどではないけれども、ドラフトがあるし、足元に冷たい空気がたまってしまいます。夏場に女の子がブランケットを腰に巻いている姿を見ると、これは明らかにビルの計画としては失敗と僕は思うのです。そうせざるを得ない事情もわからなくはないですが、そんなものはつくりたくないので、一から考えようじゃないかと。
 それで、どうやったか。天井をパンチングメタルにしまして、その裏側に冷たい空気を置きます。ここでやったことは簡単です。通常は天井にアネモがあり、ダクトがアネモにつながっていて、アネモから吹いているのですが、アネモに接続せずに途中で切った。アネモをなくして、吹く空気も結露しない程度に普通よりは冷たくしました。
 このパンチングの穴からジワーッとしみ出してくる。大体毎秒5cmの速度で空気をおろすようにして、パンチングの金属がその間に冷えます。こっち側から冷やすほうが冷えるのですが、冷えるとこれ自身が輻射効果を持っていて、2℃ぐらい体感温度が下がる。28℃に設定していても、26℃ぐらいの快適さが得られる。気流が毎秒5cmというほとんど感じられないぐらいの速度になると、全面が一気に来ますので、そういう点では風を感じるところはほぼないです。実は物すごい大量の空気が動いているので喚起も非常によくて、すっきりさわやかな感じをくれる空調になっています。
(図27)
 これがその実際の図です。アネモはありません。この穴からずっと空気がしみ出てくる、こういう空調方式にしています。「これ、何?」というのは後ほどご説明します。

 

 

 

(図28)
次に、どこから吸うのか。床で吸おう。これはOAの切り欠きがあって、配線の取り出し口があるところですが、それを一部ガラリにして、そこから吸う。上もチャンバー、下もチャンバー。この辺、日建さんはさすがです。チャンバーの場合、どこかで迎えに行かなければならないので、「下のダクトが欲しい」と言ったのですが、やめて、スラブを少し掘り込んで、そこにふたをして、そこがダクトがわりということで、そこから吸っています。床下は非常にすっきり、何もなしなのですが、ちゃんと空気のラインになっています。
上も当然、アネモから下は切ってしまっているので、サプライの途中までしかない状態です。強制排煙のためのダクトが少し残っていますが、これだけしかない。これは先ほどの吸い込み口です。この辺に大量のダクトがありますが、ここからヒューッと。そういうことをやっています。
このOAフロアは新開発です。一見普通なのですが、サイズが普通ではありません。533mm角!です。
ここは3.2mモジュールなのです。先ほどのスケルトン・アンド・インフィルの思想からいくと、モジュールをきちんと合わせることはすごく大事なのですが、日本のオフィス建築では、なぜか床だけはモジュールを無視してつくられています。OAフロアは500mm角、タイルカーペットも500mm角。「それで何が悪いの。別にいいじゃん」と言いそうなのですが、先ほどの切り欠きの場所が徐々にずれるのです。それに何の問題があるのかというと、あそこから配線が出てくるわけです。ということは、デスクモジュールや、構造モジュールに合っていないと、変なところからニョロニョロと配線が出てくる。そうすると、随分前の写真で見ましたけども、余長がグリグリとあるような、ああいうことにせざるを得なくなってしまう。
実はこれは丸の内ビルでものすごく苦労したのです。当時、500mmしかなかった。三六モジュールの建物だったら、600mmでつくってほしいと思うし、三二モジュールだったら、533ではないか。今回は533かなとなりましたが、これをつくってもらうのに、えらい苦労しました。OAフロア屋さんでつくってくれるところがなくて、大分すったもんだしましたが、1社だけ「やります」と言ってくれたところがあったので、頼んだのです。
次がタイルカーペット関係です。これまた本当に苦労したのですが、やはり1社手を挙げていただいたところがあって、あとは右へ倣え。そんな細かい手配のところまで結構ちゃんとやらないといけないのだなと思いました。
(図29)
これが従来のダクトです。「普通」と思っている方がいると思いますけれども、その人は多分感覚が鈍っています。僕から言わせると普通じゃないです。すごいなと思うのは、同じ場所でもフロアによって全部違うのです。これはダクトワークという。またこれも普通だと思っている方がいらっしゃると思いまずが、普通ではないです。「ダクトワーク」なんて、そんなわけのわからない単語があること自身、僕はどうかと思っています。設計しているのだから、ダクトがどう走っているか設計図に描いてよと思うのですが、ないですよね。この状態を設計図に描けるわけがない。だから描かれていない。それが普通だと思っている人が多いのですが、やっぱりそれはおかしい。どこをとってみても基準階は基準のダクトがあるべきで、すっきりやりたい。そのためには量が多過ぎるのです。なので、上下のチャンバーで分けたというのが今回したことです。
(図30)
結果はこうです。これはほぼ完成形です。考えてみたらサプライしかないので、こんなものです。あとスプリンクラーが入ってきます。

 


 

(図31)
図面はこんな感じです。サプライ系はこれでもう完了してしまっているので、本当にきれいさっぱりした図面になっています。これをBIMでつくっています。そのため我々もどこにどういうダクトが通っているかを全部把握することができるし、管理の人たちもその後がわかるので、一々点検口から首を突っ込んで見て「どこだ」みたいなことはしなくてよくなる。今回はそのようにしたわけです。

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