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(図19) 
 これはそのうちの1つの例で、大成建設さんの札幌ビルです。短冊形のユニットで構成されていて、この短冊の中に制震構造が含まれています。別に僕は大成建設さんの人ではないので、余り細かく言いませんが、柱はコア内でガチッと持っている。周りには柱を持たない構造になっていて、非常にシンプルです。これだと、これだけ労務費が上がっていても、すごく安くつくれるのだそうです。もう少し工夫したら汎用性が上がりそうです。その辺を考えないといけない。

 

 

 


(図20)                                  
これは清水建設さんの本社です。これもすごいトライアルでいろいろなことをやっていると思います。

 

 

 

 

 

 

 

(図21) 
これは外壁です。このユニットを積み上げていってつくりました。外壁に柱がないのです。こんなに抱きが深くなくてもいいのではないかという気も正直しますが、それでもこういうユニットをつくって、それを積み上げていくことでビルを形成したというのは、なかなかすぐれものだろうと思います。実はもっともっといろいろな工夫がされているのですが、余り言い出すと細かくなるので、構造に限ったことで言うと、こういうことにトライされているのもおもしろいと思います。
床スラブ、フロアももっとユニット化ができるだろうと思っています。これは地組みをして揚重しているところです。先ほど紹介があった東館についてもユニット化をしているので、この辺のことを後ほどご説明しますが、これは東館のユニットではありません。こういうのがあちこちで進み始めているということだと思います。多分東京の物件だと思います。
さっきBIMの話が出ました。「釈迦に説法」ですが、BIMはビルディング・インフォーメーション・モデルのことで、これをもっとしっかり使いたいと思っています。これは、もしかしたら今日の本題になるかもしれない。BIMをCADと勘違いされている方が世の中には結構多い。もちろん設計の皆さんはそんなことはないと思いますが、BIMはCADと根本的に違って、要するにコンピューターの中にビルを丸ごと仮想でつくってしまうシステムです。そうすることによっていいことがあるのは、後ほど事例を少しお話ししたいと思います。
いろいろなことを話してきましたが、一番大切なことは何か。
最初に意匠があって、その後を構造の人が追いかけるというのがこれまでのありがちなパターンで、誰とは言いませんが、先生に頼むとこういうことが多いですね。「地下にラグビーボールがあったら格好いいと思うんだよね」と言う先生がいらっしゃいましたが、「そのラグビーボール、誰が見るんですか」と言いたくなりますよね。まぁ、僕に芸術的センスが欠けているだけかもしれませんが。
日本生命もそういうビルを結構持っています。村野藤吾さんがやられた日比谷ビルはまさにスケッチありきです。本当にそれを実現できるのか。それはそれで芸術的価値が高いので、否定をすべきではありませんが、ああいうビルはもうからない。まず意匠があって、次に構造が追いかけてきて、最後に設備が何とかうまいことすき間を見つけてダクトを張りめぐらすようなことが、今までの20世紀のビルづくりでした。僕は、21世紀はそうではないのではないかと思っています。
我々建築主、設計の人、施工する人、それからこれはあえて分けていますが、設備を施工する人、設備設計の人も入るでしょうね。そして、施設管理。こういったビルを計画して、実際に運用を開始して、しばらくの間、もしかしたら長い間携わるべき人たちが一体となって計画に入ることがとても重要だと思います。
(図22)
これは先ほどから出ている東館のミーティングの様子です。月1回、必ずこういうミーティングをやっています。オレンジ色の服を着ているのは大林組の皆さん。真ん中に立っているのが、恥ずかしいですが僕です。この右側にいるのが日建設計さんで、大谷さんがいます。青っぽい作業服姿は三機工業さんです。施工も設計も設備も施主も、みんなで寄ってたかって、ごった煮みたいにしてミーティングをして、こうしよう、ああしようということをいまだにやっています。もう2年ぐらい続けてきているので、相当の回数をやってきましたが、こういう会話をすることが何よりも大事だと思っています。
実際やってみた東館が今どんなものになりつつあるか、少しご紹介して終わりたいと思います。
まず最初に、目的が大事という話がありました。今回のお題は「事務工場」です。日建さんには、事務工場をつくりたいので、それに見合ったものを計画しましょうというお題をお願いしました。ここがポイントです。何のためにつくるのかということを明確にしないと、なかなか正しい答えには行き着かない。目的をきちんと明示するのが施主側の重要な役目だと思っています。
(図23)
それで出てきた答えはメガプレートです。これが結果です。こんな格好になりました。

 

 

 

 

(図24)
これはもともとのプランです。ワンフロアだけで有効が900坪ちょっとあります。普通はこうつくるのです。センターコアにして、短冊に切りやすくしている。最初、4年前に僕が担当し始めたときに出てきたプランはこうで、まあいいかなと思ったのですけれども、よくよく考えてみると、ここが15mしかとれない。果たしてこれは事務工場として便利か。ここの人は向こうで何が行われているか全くわからない。別なフロアみたいです。
なので、今回は貸しビルではないという設定に立ちましたので、こうしました。それで先ほどのプランが出てきた。コアを全部ドーンと寄せる。柱が少しあるのですが、でもまあ見通しのいい、相当の距離を見渡せるオフィスにしています。柱をまとめたのは少し下心があって、将来どうしても短冊に切りたくなったときには、ここに廊下をつくろうと思えばつくれるという構造にしてあります。

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