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(図8)
この結果、ほぼ5年間にわたって、IT事業は終わったという議論がされました。これは日本だけではなくて、アメリカもそうでありました。T.H.フリードマンが2005年「フラット化する世界」の中で、彼は「自分は、ITバブルが起こった結果、もう情報化は終わったと思っていた。だが、2005年になってみると、そうではなくて、それは非常に静かに進行していた」ということを告白しています。
図8は過去10年間の動向と図8に年表風にまとめてみたものですが、2001年のWipipediaの発想から始まって、2010年のiPadの発表まで、過去10年間の動向を年表風にまとめたものです。言いかえれば、1995年にスタートしたwebビジネスが2010年の段階になって、ほぼ完成として形をみせてきた。それが現在の状況だったといっていいと思います。よく<失われた10年>、最近では<失われた20年>といういい方をされますが、そのいい方は完全に間違っている。むしろ、この1995年から2010年までの間に、日本の社会は明らかに情報社会への構造改革が終わって、web社会がその様相を呈しはじめた。社会現象になったアップルのiPadの発売は、その象徴といってよい。こういうふうに理解をするのがよいのではないかと思います。
(図9)
それでは、Web社会とは一体どんなものなのかと言いますと、これは4層になっているとお考えいただければよい。最下層が1970年代から開発されたインターネットの世界。ケーブルワイヤ、PC、ルーター、伝送関連機器から成っているハードウエアの世界です。その上に、1990年以降、wwwというソフトウエアが乗りました。そして、1995年以降インターネットないしウエブビジネスといわれる産業、新しい企業が登場。2010年以降、ウエブユーザーと呼ばれる人たちが出てきた。これが最上層をかたちづくっています。
ウエブユーザーとは、一口に言えば、メールアドレスを持っている人、あるいは、自分のホームページを持っている人、いわばインターネット上のサイト・ホルダーだと考えればよい。
ウエブ・ビジネスはポータル、検索、格づけ、その他多様なサービスをしている業界ですが、ここではその代表ともいえるGoogleについてご説明したいと思います。

(図10)


Googleの事業が無料サービス部門と有料の部門から成る二重構造をもっているのはご承知のとおりであります。上段にnewsとありますが、これは今まで新聞社がやっていたサービス。mailは通常のメールですね。Book search、これはアマゾンがやっているような仕事。localと書いてありますが、有名なグーグルマップをやっています。重要なことはこれらサービスをGoogleはすべて無料で提供していることです。これは新聞社にとっては大変なことです。今まで有料サービスしていたものをグーグルは全部無料にするわけです。本来であれば、有料でお金を儲けられたかもしれないサービスをグーグルは全部ただで提供しています。どこで儲けているのかというと、独自の自動検索システムにもとづく広告代理業、これが重要な収益部門になっている。下層儲けて上層はただでという、これがグーグルの事業構造です。
ですから、日本、アメリカ間の新聞社が、あるいは出版社が非常な危機感を持つのは当然です。特に最近の電子ブックの登場によって、日本のほとんどの新聞社と出版社は大きな方向転換を迫られていることはご承知のとおりであります。
グーグルは検索システムを自力でつくり上げました。そして、従来のバナー検索広告に代る、新しいキーワード広告をつくり出した。これがグーグルの事業構造です。ウエブビジネスは多かれ少なかれこういう構造を持っているとお考えになればいい。

(図11)


それでは、ウエブユーザーというのはどうかということです。ここに「4つのメディア世代」と書きましたが第一の世代は1945年以降に生まれたいわゆる団塊の世代です。団塊の世代は2005年から2015年で60歳から70歳になる。今やリタイアに差 しかかっていると考えてよいと思います。この団塊の世代、結局はプリントメディアに依存ている。要するに印刷された紙の上に情報はある。本や新聞というメディアの中に情報があって、それを読むということで知識を得てきた。
第2の世代は「ポスト55年」、昭和27年以降のテレビの時代に生まれた世代です。この世代は子どものときからテレビの世界にいて、写されることは何でもない。親になって、小さなテレビカメラを買って子供を写すということになれている世代です。ですから、この世代の人々にテレビ番組をつくらせると結構うまいですね。素人離れした作品をつくります。

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