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ところが、その後に「ポスト75」というのが出てきた。これはファミコンとパソコンの世代です。子どもの時からゲームをやっていた世代です。ポスト55世代はテレビ番組をつくらせるとすごくうまいですが、ゲームをつくらせるとまことに下手ですね。要するに、インターラクティブにできていないということになります。
さらに、「ポスト95」。1995年の段階で携帯とインターネットという、まさに新しい世代が生まれつつある。重要なことは、2015年のこの世代が労働力として市場参入を始めることになります。これはウェブユーザーが主役になるということです。この動向をどうとらえるかということは極めて重要です。
(図12)
それでは、ウエブ世代はどんな特色を持っているか。第一にすべて情報収集に当たってはまずインターネットを利用する。我々は新聞を読んだり本を読んだりしますが、まず彼らはインターネットを利用する。次にインターネットの接触時間が、他のメディアよりも高いし、頻度も高い。人によっては3時間も4時間もインターネットと接触している。そして第三に価値判断をインターネットによる情報に依存する。(4)関心領域は、超細分化し、多様化している。これらがインターネット世代の特色だといっていいと思います。
要するに、ポスト95の世代はプレ95の世代とは全く違ったメディア環境の中に生きていると見てよいのではないかと思います。
(図13)
同様のことはアメリカにもいえるわけで、アメリカでは、彼らのことを「ミレニアル」という言葉で呼んでいます。これは1982年から2001年に出生した世代です。日本語では「2000年世紀世代」と呼ばれて、「ジェネレーションY」という呼び方をしています。なぜ「ジェネレーションY」と呼ぶのかというと、1960年から1975年の15年間に生まれた世代をアメリカでは「ジェネレーションX」という言葉で呼んでおります。要するに、生活の目的を喪失してしまった世代、偉くなりたいとも思わない、何になりたいとも思わない、社会の中でどういう役割を演じていいかわからない、そういう世代がジェネレーションXでした。それに続く世代としてジェネレーションYという世代が出てきて、グーグルや携帯カメラなど、ファイル共有、携帯メール、ソーシャルネットワーク、ユーチューブ、セカンドライフ、ツイッター、こういったものを使いこなす7000万人がいるということです。
今年の夏、私の友人がパリに行ってきましたが、あの携帯嫌いのパリっ子たちが、今年はiphoneを地下鉄で使っているということを報告してくれました。あの保守的なフランス人にさえ、ケータイ化の現象が出てきたわけでありまして、グローバルに大きな変化が起こってきていると考えてよいのではないかと思います。

(図14)
  

それでは、このWeb社会は一体どんな特色を持っているのか。ここでは3つのキーワードをあげ、述べてみたいと思います。第1のキーワードは「ロングテール」。第2は「クラウドソーシング」、そして第3のキーワードは「クラウドコンピューティング」という言葉です。まず最初のロングテールからいきましょう。
このロングテールの発見があったのは、2004年のことで、ごく最近のことです。ワイアードというコンピュータ雑誌の編集長をしていたクリス・アンダーリンが、ラプソディという音楽配信の会社のダウンロード回数を調べました。これを見ますと、ダウンロードの回数が多い方から16万回、12万回、8000回、4000回という物すごい回数のアクセスがあることを示しています。その後は2万位くらいまでいくと非常に小さくなる。ところが、2万5000位になっても、まだ依然としてダウンロードの回数は600回ある。8万5000位になってもまだ100幾つあるということがわかった。さらに、順位をふやし10万位から80万位でも、少数だがダウンロード数はなくならないということがわかった。ということは、どんな小規模でもサービスさえすれば、ちゃんと顧客はいることを発見したんです。これはロングテールの法則と呼ばれていまして、情報社会の生産のあり方にきわめて重要な示唆をあたえることになった。
(図15)
ロングテールはなぜ発生したのかといえば、まずはPCが物すごく普及した。商品数、これはコンテンツのことですが、それが増大した。だから、テールは延長する。インターネットのウエブが普及して、配信コストはほとんどただになってしまった。検索エンジンとフィルタリングが発達して検索コストが安くなった。ですから、日本国中どこにいても、自分はこういうものを出していますよということがあれば、それに対する顧客が見つかる。そういう時代がやってきたと申し上げてよいでしょう。

(図16)

ロングテールの小売業の3業態として、従来型の物理的小売業、要するに物販を扱っているものについては、一番左のところにあるだろう。物販と情報流通を一緒にしているようなところは、中間になる。一番最後のデジタルなものしか扱わないところは、一番右のところにある。この場合にはほんの少量を生産しているだけで十分顧客はあるということを示したわけであります。大量生産がなくなるかどうかはなかなか難しい問題です。また、中小生産でもいいということになるかどうかわかりません。しかし、大量生産、大量流通、大量消費の時代が終わって、むしろ多様生産、多様流通、多様消費の時代に入りつつあるということは明らかだといわなければなりません。
いいかえればこのロングテールの法則ということを十分わきまえない限り、地方都市の復興や地方都市の振興というのはできない相談だと申し上げてよいと思います。

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