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 大変長らくお待たせいたしました。ただいまから日建グループ主催によりますNSRIフォーラム特別講演会を開催させていただきます。本日は、お忙しいところ、また、お暑い中、お越しくださいまして、まことにありがとうございます。
皆様方には日ごろから大変お世話になりまして心から感謝申し上げております。本日は講演会並びに懇親会を開催させていただきますので、最後までごゆっくりとお過ごしくださいませ。
早速、本日のご案内役は、私、日建設計広報室の谷礼子でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)
本日の講演会を始めさせていただきます。本日の講師は、伊藤滋先生でいらっしゃいます。ご案内のとおり、先生は現在、早稲田大学特命教授でいらっしゃり、また東京大学名誉教授でいらっしゃいます。本日は、「たたかう東京~世界都市・東京の底力を引き出す7つの提案~」と題して、ご講演をいただきます。
それでは早速、先生にご登場いただきます。伊藤滋先生でいらっしゃいます。皆様、大きな拍手で先生をお迎えください。(拍手)
先生、よろしくお願いいたします。

 

伊藤 皆さん、たくさんお集まりいただきましてありがとうございます。時間が限られておりますので、前口上抜きにすぐに話題に入っていきたいと思います。
「たたかう東京」というテーマにした私の一番の真意は、森記念財団の世界都市総合ランキング2012の観光ランキングで、観光客がどれぐらいそれぞれの都市に来ているのかというのを見て唖然としたことです。森記念財団の都市ランキングは50ぐらいの都市を対象にしていますが、1番目はロンドンで年間1475万人、ニューヨークが928万人、パリも入ってくると思いますが、そこは抜かして、我々に近いところでソウルが880万人、上海が666万人、東京が410万人です。
日本に来ている外国人の数は、去年で840万人ぐらいでしょう。出ていく日本人が1600万人か1700万人ぐらいありますから、1対2です。日本人2人が出ていって、外人さん1人が来る。ソウルの880万人というのは、日本に来る外国人全体の840万人より多い。これは大変なことになった。
5~6年ぐらい前まで、僕たちも、お役所の方もそうだと思いますが、国際比較するときに、ドイツはどうだ、ニューヨークはどうだ、ロンドンがどうだと言っていました。当時からソウルやシンガポールの話題はありましたが、まだ距離があるなと思いました。ところが、ここ1~2年、日本がもたもたしている間にソウルが非常に力を持ってきました。上海もこれからもっともっと力を伸ばしていくと思います。
そういう中で東京をどうするのか。一言で言うと、日本は年寄りになって元気がなくなった。その結果として東京の観光客は410万人ぐらいでいいのかということです。
これは何かやらなければいけない。ソウルと真正面に戦う。10年ぐらい前はソウルなんて大したことないと思っていた。いよいよソウルと真正面から戦わなければいけない。そういう時代になってきたんです。戦うためには真剣にいろいろなことを組み立てていかなければいけません。
西欧社会の国の中では、ニューヨークとロンドンとパリは三都物語。キリスト教社会の中ではこの3つでしょう。アジア系の国の人口が増え都市も大きくなってきた時に、ニューヨーク、ロンドン、パリと比較するアジアの都市はどこか。僕の考えでは、上海、東京、ソウルです。
考えると当たり前なことで、日本人は韓国の人たちから知恵を授かって、それを日本風に仕立てることを1000年以上やってきているわけです。中国の知恵もかりてきた。人間の1人1人の能力は、韓国の人のほうが高いかもしれないし、中国のエリートのほうがずっと高いかもしれない。日本だけが偉いのではない。そういうことを真正面から僕たちにいろいろな事実によって知らせてくれたのが、ここ1~2年でしょう。
それを前提にして、東京はどう戦うかといった時に、役人の既存の考え方は全部なしにしてください。何故かというと役人は法律をもとに仕事をします。法律というのは、ソウルが急に浮上してきた、上海が急に上がってきたということを前提につくってあるわけではない。都市計画法にしても、建築基準法にしても、何でもそうです。
日本という国が静かに一定の成長をしてきた時に起きるいろいろな矛盾を解いていくためにつくってある法律です。日本が生きていくためには都市と都市の戦いだ、となって、「東京がつぶれれば日本がつぶれる」、こういう話をジャーナリズムは書きます。あながちこれはインチキではない。そうなった時に役人の持っている法律の所管業務をずっとやっていて戦えるのか。役人の持っている所管の法律を超えた形で、新しい世界と戦う東京のための法律をつくって、それでひとつやってくれませんかという話になります。
僕は7という言葉が好きなんです。今日テレビを見ていたら、「七福神」のインチキな話がありました。一方で、7というのは、セブンスターもそうですが、割合福を呼んでくれる数字です。だから「7」という数字が好きです。東京がこれからソウルと上海に正々堂々と何もインチキをしないで経済競争や都市間競争で勝っていくために、東京で7つ重要なことを伊藤が選びました。それが何なのかをここで皆さんに説明します。

 

        
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