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1.英国におけるCO2排出量削減の枠組み

2.広域都市圏にみる排出量削減の方法―大ロンドンの取り組みに着目して─

3.開発事業に求められること─行政が民間に何を求めるか?─

4.分散型エネルギーネットワークのための公共と民間の関係

5.今後官民連携で考えるべきことは何か?

パネルディスカッション

フリーディスカッション



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(図7)
こういったバックグラウンドを理解していただいた上で、考えていただきたいのですが、都市づくりでのプライオリティーって、一体何なんでしょう。私はここで、都市計画という言葉ではなくて、「都市づくり」とあえて言いたです。都市づくりでCO2の排出量削減がどれほど優先順位が高いか。あえて都市計画でなくて、都市づくりと言ったのは、都市計画でできることは限りがあるからです。都市計画で面的なまちづくりはできるかもしれません。しかし、私たちの持っている能力は都市計画の範疇に限られていますから、ほかとの連携がないとできません。そこで、都市づくり全体の中でCO2をどう考えるかということを考えたいです。
2つ目に、エネルギー政策や都市計画ではなく、分野横断が必要な事項が、CO2の排出量削減にはとても求められるわけです。もともと分野を横断するのは、私たちは余り得意ではありません。これは行政の中でもそうだと思いますし、企業間の連携でもです。もちろん1つの部局の中で連携しながら何かやっていくのも大変なことです。これをやろうとするのであれば、本気でやらないとできない。「これを本当にやるんですか、腹をくくっているんですか」、ここが非常に気になるところです。
そこで、都市計画でやれることは何かといえば、開発事業との連動で排出量の削減を行うこと。これも規制になります。面的エネルギーネットワークを実現していくことの2つです。
私は、「まちづくり」とは言いたくないのです。何故なら「まちづくり」と平仮名で書いてしまった瞬間に教育的なものが入ってくるからです。「スイッチを消しましょう。みんなでLEDに変えましょう。断熱をしましょう。」という形の啓蒙活動が増えます。ところが、啓蒙活動だけだったら民間にとってのメリットは非常に限られてきて、全体で連携しながら都市をつくっていくところにはなかなか到達しない。なので、あえて、「街づくり」のほうが、こういった面的なエネルギーのネットワークを考えていくときには大事だと思っています。
しかしながら、ここには課題があります。都市計画をやっている人は基本的にはエネルギーは素人です。私はたまたま機会があり若干勉強はしましたが、一般的に都市計画をやっている人にエネルギーの話をしても、ちんぷんかんぷんです。こういった人たちと一体どうやって都市づくりをやっていくのかといえば、素人にわかるような支援体制が求められるでしょうし、開発事業とどうやって連動させていくのか、この辺も大事になってくると思います。
(図8)
そこで、今日の発表となります。私の今日の話のポイントは5点です。イギリスでのCO2の排出量削減の枠組み。広域都市圏での排出量削減の方法。特に大ロンドンでの取り組みについてお話をします。3つ目に、開発事業として何が求められるのか。行政が民間に何を求めるのか。4つ目に、分散型エネルギーネットワークのための官民の関係。最後に、今後の官民連携で考えるべきことは何なのか。この辺のことを海外事例を通しながら皆さんにもご理解いただければいいかなと思っています。

1.英国におけるCO2排出量削減の枠組み

(図9)
最初に、イギリスのCO2排出量削減の枠組みというものをお話ししていきます。
(図10)
イギリスでは、2008年のClimate Change Actというのができまして、ここで排出量の削減目標が掲げられています。2050年に90年比80%です。この90年比80%を削減していくために、Carbon Budgetというのが決められています。このCarbon Budgetというのは、排出上限を決定して、2008年から2027年までを4期に分けて、各期別にどれほど下げるのかを決定し、これを省庁別に振り分けることです。最初の期に比較して、だんだんこの削減の割合が苦しくなってくるんです。雑巾を絞っても徐々に絞りにくくなってくるのと同じで、省エネが進んでくるとなかなかやりづらい。最終的な段階では50%までの削減をするという目標が掲げられています。
(図11) 
 Climate Change Actの目標値である2050年の排出量を削減を支えていくためのプログラムがとにかくたくさんあります。まず1つが、エネルギー事業者向けのプログラムです。今エネルギーを事業としている人たちが省エネを図っていくために何をしなければいけないのかという縛りをつくっています。それから、再エネを推進させる。再生可能エネルギーを熱供給もしくは電力をつくる側に導入しないといけない。こういうことを推進するための縛りをつくります。一方で、こういったエネルギー事業者に対する支援も枠組みとして用意されています。
 それから、マーケットのコントロールがあります。1つは、金融市場との関係で、日本でも皆さんよくご承知のFITとかEUETS、こういうもので取引をすることが、枠組みとしてつくられ、建築物についてもゼロカーボン化を図ることがやられています。このCode for Sustainable Homesというのは、2016年に住宅についてはゼロカーボン化を図らないといけないというものです。建設時に建物単体でどれほどの削減をしないといけないのかが求められ、なおかつ市場への取引をする時にエネルギーをどのくらい使う建物なのかといった情報も提供しないといけない。こうやって市場に、低炭素の建物ほどランニングコストが小さいから毎月のお支払いが少なくて済みますよというメリットを提供させて、マーケットを取り込んでいく、こういうことがやられています。
また、Climate Change Actを補完するためにさらに別の枠組みがあります。低炭素化を進めていくための施策です。Carbon BudgetやLow Carbon Transition Plan、がつくられ、たくさんの施策が連動しながらイギリスの低炭素化は進められています。

 


 

 

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