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1.英国におけるCO2排出量削減の枠組み

2.広域都市圏にみる排出量削減の方法―大ロンドンの取り組みに着目して─

3.開発事業に求められること─行政が民間に何を求めるか?─

4.分散型エネルギーネットワークのための公共と民間の関係

5.今後官民連携で考えるべきことは何か?

パネルディスカッション

フリーディスカッション



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2.広域都市圏にみる排出量削減の方法―大ロンドンの取り組みに着目して─

(図12)
枠としてこんなにたくさんある中で、都市計画が一体何をやってきているのかということを次に見ていきます。
(図13)
一番大きな都市であるロンドンと東京の比較で大体の状況を理解していただきたいと思います。左側がロンドンの人口、右側が東京の人口です。ロンドンの人口は800万いかない。ところが、見ていておもしろいなと思うのは、人口は1970年代から下がってきて、1986年頃から上がっていく。この後は予測になっています。1970年代に何で下がっているのか。ニュータウン施策で、ロンドンの人口を増やさない、郊外のグリーンベルトの外側にニュータウンの建設をして、そこが人口の受け皿としてイギリスではずっと成長してきました。だから、ロンドンから人が外に出ていったんです。ところが、そこがある程度いっぱいになってきて、ロンドンでの人口が増えてくる。今度は低密の市街地がだんだん開発されていって、今後人口が伸びていくだろう、こういう説明がされています。
一方、東京は、皆さんご承知のように人口はだんだん減ってくる。こういう形でまず増減が全然違うことがわかります。
(図14)
これは平均気温です。気温にも違いがあります。東京が緑系で、ロンドンが青系で説明しています。東京の冬をロンドンと比較すると、最高気温が高い。ところが、東京は最低気温が低いんです。ロンドンの場合はこの間に入っていますから比較的寒いんですが、物すごく寒い時はロンドンのほうが若干暖かい。ところが、夏にすごく違いがあります。東京はすごく上がります。30度を超えますが、ロンドンの最高気温は夏でも余り高くなることはありません。30度を超えることはほとんどない。従って、家庭では冷熱需要はない。オフィスではもちろんクーラーの需要はありますが、一般家庭では熱需要ばかりになる。こんな違いがあります。
(図15)
そして、排出量。ロンドンの排出量は、交通、業務、住宅とありますが、住宅の排出量は物すごく多いです。36%。これを減らしていくことが求められることになります。
(図16)
これを都市計画を通じて一体どうやっていくか。まず最初に、イギリスの都市計画の基礎的なところだけご理解していただきたいと思います。
イギリスの都市計画は、日本でいう都市計画マスタープランをもっと詳細にしたようなものです。すべて政策で書かれていまして、この政策集をもとに開発が許可されるか、されないかの判断がされます。マスタープラン自体は、交通、住宅、商業、観光という分野別で書かれていてセットになっています。計画の申請者は、日本と同じように、その土地がある行政体のところに相談に行きます。その都市計画部局は、このマスタープランをもとに計画を許可するか、条件をつけるか、不許可にするかを決めていくことになります。条件の中に、必要とされるものが盛り込まれます。例えば、新規開発のコントロールと、地域に必要とされる施設の資金を提供する。低炭素で考えてみると、例えばオフィスビルを開発する、それに伴って、ほかの施設に必要とされる太陽光パネルに必要な資金を提供しろとか、そういう言い方をされるケースもあります。
(図17)
こういうバックグラウンドがある中で、広域都市圏、ロンドンだけではなくて、地方別に一体どういうことが低炭素型都市づくりに位置づけられているんだろうかということを見たものがこの表です。非常に見づらいんですが、ここで見ていただいてもわかるのが、この下だけがロンドンなんです。ロンドンから上が7つの都市圏になります。ロンドンの政策は、ほかのところに比較して非常に細かくて、非常にたくさんあるということがまずわかるかと思います。つまり、イギリスの中でもロンドンは、低炭素型都市づくりを進めるときに枠組みが物すごくたくさん用意されているわけです。エネルギーのことを考えるのに、開発の中で排出量を削減する。Lean、Clean、Greenという順序でエネルギーのダイエットをする。その次に地域冷暖房を導入する。最後に、再生可能エネルギーの導入をするという3段階で考えるケースが多いんですが、このエネルギーの序列、Lean、Clean、Greenということを考えている都市圏が結構多いという特徴があります。
それから、Clean、コージェレーションの導入や、地域冷暖房については特にロンドンが充実しています。ロンドンでは2025年までに熱需要の25%を分散型エネルギーネットワークからにしないといけないという政策をつくっています。従って、このCleanに関係する政策がほかの都市圏に比較して非常に細かい内容になっています。
 Greenについては、分散型エネルギーのネットワークが言われるより前から言われていたことで、敷地の中で再生可能エネルギーの設備を導入しないといけないということを都市計画が開発に応じて規制するケースが今までありました。これについても、ある程度あるんですが、特に最近増えているのが真ん中のところCleanです。
(図18)
真ん中のところがCleanです。
一般的に、ロンドンや、ほかのところでもそうですが、開発事業が起きる時に、どのように低炭素化を進めるのかという協議の順番があります。協議の順番が、イギリスの場合、特にロンドンでは、Mayor’s Energy Hierarchy(エネルギーを考えるときの序列)と言われています。
最初に、建築規制、日本でいうと建築基準法で建物を設計します。次の段階で省エネを図ります。省エネを図ると何%かCO2が下がります。これがまず第1段階のLean(減量)という考え方です。次に、コジェネを導入する、地域冷暖房に接続すると、どれほどCO2の排出量が減るかということが検討されます。最後に、再生可能エネルギーを導入する。この3段階を全部やって、最終的なCO2の排出量が、初めのところからすごく減ってくるわけです。
どこまで減らせるのかということを行政がある程度ターゲットを決めていて、コジェネを導入する段階で終われば、最後は再生可能エネルギーの導入をしなくても済むかもしれない。こういう協議の仕方をしています。


 

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