→日建グループへ



1.英国におけるCO2排出量削減の枠組み

2.広域都市圏にみる排出量削減の方法―大ロンドンの取り組みに着目して─

3.開発事業に求められること─行政が民間に何を求めるか?─

4.分散型エネルギーネットワークのための公共と民間の関係

5.今後官民連携で考えるべきことは何か?

パネルディスカッション

フリーディスカッション

 PDF版はこちらです→ pdf


(図1)
今ご紹介いただきましたように、私は、専門が都市計画でございまして、都市計画の観点から低炭素型都市づくりを研究しています。私が千葉大に採用されたのが2002年で、都市環境システム学科というのは、自分の大学の宣伝みたいになってしまいますが、色々な分野の相互乗り入れです。その時に一緒に採用された先生が化学工学の先生で、「せっかく新しい学科に来たのだから、何か一緒にやろうよ」ということになりました。それが「環境」だったのです。ところが、化学のエネルギーの専門の先生にとっては当たり前のことは私にとっては当たり前ではなくて、何もわからない。そこからのスタートでした。結局、いろいろなすき間を埋めていくところからスタートするから、何をやっていいかがなかなかわからない。それが初めの頃でした。やっていくうちに、だんだん、環境ってこういうことを考えるんだ、エネルギーってこういうことなのかというのがわかってきて、今、このような研究に行き着いています。
(図2)
私は、学生時代からずっとイギリスの都市計画研究を行っています。また、東工大にいた時は1年ほどアメリカに行っていたこともありまして、海外調査を結構行っています。海外調査をしながら、日本のエネルギーを見た時にいつも気になることがあります。それは何なのか。まず1つが、海外に行くと、熱導管というのは必ずインフラです。ところが、日本に来ると、電気やガス、通信がインフラで、熱導管だけは道路の占用、縦断も横断もしづらい。この辺が海外と全く違うところです。
熱供給事業をやっているところが海外に比較して断然少ない。熱導管に接続されている建物が少ないということがあります。どうして日本はこれが少ないのか。熱料金が高いから、そこから熱を買っても、自分たちにとって高いお金を払うばかりだ、この辺が問題になっているのかもしれません。全体では安くなるかもしれませんが、毎月の支払いだけを考えると高い。この辺のライフサイクルコストの説明の仕方が、もしかしたら悪いのかもしれませんし、理解がないのかもしれません。または行政で支援してくれるところが少ないのかもしれません。
3つ目、本当にエネルギー危機なんですか、ということです。本当にエネルギー危機だったらばコジェネで電力をつくって、それをもっと利活用するということを積極的に考えてもいいのかもしれません。行政の方も来ていらっしゃると思いますが、省エネや創エネ、CO2の排出量を考えていく時に、これらがどれほどプライオリティー高く都市経営の中で考えられているのか。何が私たちの都市づくりの中で一番大事で、それをやっていく時に、低炭素はどのくらいプライオリティーの高いところに位置づけられているのか。この辺がまずは気になるところです。
(図3)
今日はDHCの話が多いのですが、日本のDHCの接続について、学生が卒業論文でアンケート調査等をやりました。そのうちの一部を今日はお持ちしました。日本でのDHCの接続需要家数の推移を見ていきますと、やはり減ってきている。住宅・業務とも需要家数は減少してきていて、1事業地区当たりお客さん10件ぐらいと非常に限られている。スケールメリットがあってこその熱供給事業だったのに、だんだんそうでなくなってきている、こんなことが問題かなと思います。
(図4)
アンケ-トは去年から今年にかけて行いました。全国140地区、地区別にアンケート調査させていただいて、74%という非常に高いアンケート回収率です。いろいろなところから熱供給事業の課題のご回答をいただきました。

(図5)
これはもっと細かく見ていく必要性がありますが、学生にやってもらった結果です。需要家の新規の獲得はやはり難しい。何で難しいのかというと、熱料金が高い。この辺が非常にネックになっている。それから、需要家を維持し続けていくことも難しい。何故かというと、やはり熱料金が高いからなんです。価格をどうやって下げていくのかが、面的エネルギーネットワークを日本で考えていく場合には非常に大事になってくる。これはいろいろなところで言われていたことです。しかしながら、こうやって全国いろいろな規模のDHC営業地区でアンケート調査をやると、これまで言われてきたことをデータとして取ることができました。
(図6)
事業者が行政側に期待する支援メニューとは一体何なのか。もちろんそれは熱料金を下げるために財政的な問題を解決するような、例えば税制優遇や、補助と答えるところも多い。地域冷暖房地区で、開発について、より積極的にお客さんが接続してくれるようなメニューをつくってもらえるといいという回答もあります。
しかし、それ以外に、例えば公共用地を使わせてもらったらいいのではないかとか、道路占用の料金を取らないでほしいといった、必ずしも直接財政負担に関係しないような事項についても要求事項が挙がってきています。こういうことが行政への民間事業者からの支援のメニューとして考えられるわけです。

 




         10 11 12 13 14 15 16 17
copyright 2010 NIKKEN SEKKEI LTD All Rights Reserved