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1.英国におけるCO2排出量削減の枠組み

2.広域都市圏にみる排出量削減の方法―大ロンドンの取り組みに着目して─

3.開発事業に求められること─行政が民間に何を求めるか?─

4.分散型エネルギーネットワークのための公共と民間の関係

5.今後官民連携で考えるべきことは何か?

パネルディスカッション

フリーディスカッション



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石川 ないですね。
村木 だからこそ、連携しながら最初から考えていくほうがいいのではないかなと最近思います。
石川 まさにそのとおりです。たまたま、データセンター周辺の街づくりの仕事をやった時、データセンターは省エネ都市や低炭素ということからすると、大量のエネルギーを使い、熱を放出する、本当にやっかいな熱のお化けみたい施設だということでした。ただ、東京がグローバルシティであるというスケールから考えると、データセンターのような施設があることは、国際都市としての価値が上がることになるので、むしろ立地を誘導して、国際的な企業を集めるということように考えれば、ある意味、「都市施設」のような扱いもできるのではないだろうかと。それなら、省エネ都市の推進という観点からデータセンターは悪者だけど、この施設を都市戦略としては味方にするために、そこから出ている熱を吸収して、住宅なり、ホテルなり、病院なり、熱を必要としている施設やあるいはグローバル企業が入ってくるための付加価値になるような施設を周辺に誘導し、それらの熱源と捉えて、きちんと位置づけ、熱を有効に使うという風に考えれば、都市の活性化もできて、グローバル企業も入りやすくなる。東京の国際競争力強化から省エネとか低炭素の話をすると、どうしてもネガティブで二律背反のように捉えられがちだけれども、もう少しいろんなことをバルグで捉えて考えて、省エネとか低炭素という枠を超えてアピールする材料として使っていくことによって、もっと都市の競争力を高めていくことができるのではないか。
僕の場合は、たまたまそういうことを考える経験があったので、それまではエネルギーから土地利用や用途地域を考えるということはなかったけれども、逆にそういう制約条件があると、都市のデザインや都市計画は、もう一段ステップアップするというか、もうちょっと高いレベルでいろんなことが出来るんじゃないかなという感じがします。分野横断的に解決していくという話は今からどんどん広がっていくと思います。
山村 想定していたようなやりとりの展開になって嬉しいです。一般的には、土地利用を決めて、容積と用途配分を決めて、道路をつくって、その次あたりからインフラの話になる。水道、電気、ガスをどうしようかと。最後に、環境を何かやっておかなきゃいけないんだけど、決まったプランの中で何ができそうかという段階で私のような技術者が登場するというのがこれまでの流れであるような気がします。
他方で、建物の設計を例にとると、アーキテクト(デザイナー)がいて、構造がいて、機械や電気の設備がいて、といったように、特に日本の場合では、設計プロセスの中で一体的に議論していく。もちろんアーキテクトが主導していきますが。都市計画のプランナーは必ずしもそのような立場にはない。そういう相互関係がまちづくりのプロセスにあってもいいのでは?いう気がしています。そういう立場を誰が担っていくのか。それを行政の方がいきなりやっていくだろうか。イギリスでも、先ほど先生が、都市計画部門には当初そのような意識はなかったとおっしゃっていました。
ひるがえって、日本を考えるともっともっと差があるわけですね。その辺いかがでしょう。
村木 多分、組織として行政がやるのが立場としては簡単なのかもしれないですね。ただ、それができるタイプの仕事をずっとやってきた方たちばかりがいるわけでもないので、専門職としてのそういうポストをつくるということも1つかもしれませんし、先ほどエクセターでお見せしたように、関係する主体を集めて、そこでそれをコーディネートするタイプの人を置くということも考えられます。エクセターでコーディネートしているのは、都市計画局長OBです。再開発事業をその市の中でずっとコーディネートしてきた経験がある方が担当されていました。こうした人がいないのであれば、外からでも連れてくればいいと思います。それがその市にとって、その町にとってとても大事なことであれば、それもやはり何がその市にとって高いプライオリティーか、ということだと思います。最適なコーディネーターを探すという点では、これも、エリマネと一緒かもしれません。それが大事ではないかなと思います。
山村 人を育てるという話にまで広がってきますが、他方で、先ほど、やはり訴求をとるのは価格だ、これは確かにそのとおりであって、ガス料金より2割安い熱料金設定が可能であるというのは、またこれも驚きです。先生の話を伺いながら、日本でどうやって実現したらいいんだろうと、ずっと悩みながら聞いていました。マーケットとして見てみると、熱需要は確かに少ない、減っている。日本の場合は冷房負荷が多い(温熱の需要よりも冷熱の需要のほうが多いので)、そこに製造費、原価がどうかかわってくるかという話とか、いろいろプラス面になりにくい要素が確かにあります。
他方、今日のイギリスの例は非常によかったなと私は思っています。ちょっと補足させていただくと、イギリスの地域熱供給の比率はヨーロッパの中では少ないんです。ドイツは10%以上で、フランスが5%ぐらい。イギリスは2%を切るぐらいです。先生がおっしゃったとおり、つい最近から始めたばかりで、北欧のような状態ではない。さらに言うと、低所得者向けの住宅を再開発で整備しなければいけない。これも開発者にとっては負担なわけです。必ずしも日本の事業者ばかりが、あれが負担だ、これが負担だということばかりでもない。イギリスにだってたくさん負担があるにもかかわらず、もちろん制度として強くやれということがあるかもしれませんけれども、そういう制約の中でやっているのは、日本にも非常に参考になるところが多いのではないかなと思いました。
 1点明確になっているのが、公共側がそのビジネスチャンスを一生懸命見つけてあげようとしている。この視点が非常に大きいかなという気がしています。日本の行政サイドでは人を育てればいいという話になってしまうかもしれませんけれども、そういうビジネスチャンスを見つける機会は、開発の中でどういったところにありそうですか。イギリスの場合ですと、公共施設整備を利用するというのがありましたが、日本の場合は公共施設整備の機会もそう多くないような気がしているんですけれども。
村木 公共施設といった時に、今日はお見せしませんでしたが、公園用地にエネルギーセンターをつくってしまうという例もありました。この間アメリカで見たのは、道路の下にあるエネルギーセンターでした。使えるものはとにかく使ってしまうというのが海外の考え方です。イギリスだったら公共主導型でエネルギーセンターをつくる、その時に自分たちで新たに土地を買うなんてことができないんだったら、公共用地を使えばそれでいい。公園の使い方ができなくなるかもしれないけれども、かわりに排出量を削減するという公的な目標を達成することができればそれでいいじゃないかということもあり得ます。
日本で考えた場合、エネルギーセンターを上に持ち上げて下をピロティにして、サッカーしようが何しようが、そういう使い方だってできます。使い方は検討すればいいと思うんです。公開空地の利用だってあり得るかもしれないし、今ある市役所にエネルギーセンターを置くこともあり得る。公的な駐車場だったら車の数がという話がたくさんありますから、それなら、そこにエネルギーセンターを置くというのでもいいのかもしれません。もっとフレキシブルに公的なアセットを民間に利用させたら、どれほど公共の目標値を達成できるのかを考えることが大事ではないかと思います。
石川 公共用地の有効活用の話は、前政権の国土交通省の成長戦略の中でも、語られていましたが、例えば学校用地は文部科学省管轄ですが、上から下まで全て学校で使う必要は全くないと思います。小学校の圏域、計画人口1万人ぐらいで、今の市街地の中で割と均等に配置されています。そういう意味では、エネルギーにしてもコミュニティにしてもセンター機能を集約するには一番いいところに位置している公共施設だと僕は思っています。そこを学校だけなく、もう少し複合利用、重層利用する。エネルギーセンターを配置するという話もあるし、地域の介護センターや病院、保育園、幼稚園に使うこともいいのではないかと思います。

 



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