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1.英国におけるCO2排出量削減の枠組み

2.広域都市圏にみる排出量削減の方法―大ロンドンの取り組みに着目して─

3.開発事業に求められること─行政が民間に何を求めるか?─

4.分散型エネルギーネットワークのための公共と民間の関係

5.今後官民連携で考えるべきことは何か?

パネルディスカッション

フリーディスカッション



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4.分散型エネルギーネットワークのための公共と民間の関係

(図39)
エネルギーのネットワークというのは、一体誰が運営していくのかです。
(図40)
イギリスの場合は民間事業だけではなく、公共がやっている場合もあります。公共は物すごく高いプライオリティーで、CO2の排出量削減をしたい。それをやる時に民間に任せないで、全部自分たちでやってしまいたいと考える行政があります。そうすると、こういったエネルギーネットワークをすべて公共がつくって、公共が運営管理するものもあれば、公共が主導で民間がやるケースもあります。民間が主導で民間が調達して運営をするケースもある。民間が強くなってくると、値段をどうしていくのかという話が入ってくるわけです。最後は民間主導で全部進めていく。ほとんどの場合、民間がかかわって熱供給事業はやられています。
民間は、低炭素のノウハウを物すごくたくさんお持ちで、これをどうやって行政側がうまく利活用しながら自分の目標値である低炭素化を積極的に進めていくことができるか。両方にとっておいしい話にしないと熱供給事業なんて進んでいくわけがないんです。
(図41)
これは2年間で私が行った熱供給事業のエリアの全部です。16カ所行っています。行政主導でやっているものから、官民連携、ジョイントベンチャー、民間主導、いろんなタイプのものがありました。ここからその特徴について説明をしていきたいと思います。
(図42)
まず、行政主導型。行政主導型は、一番北にあるアバディーンの行政体がやっているタイプのものです。ここは、エネルギーの貧困層と呼ばれる公営住宅に住んでいる人たちに対して、安い熱供給をしていかないといけない、これが一番の目的でした。
そのため、公共の建物と公営住宅だけを対象とした地域のエネルギーのネットワークをつくっていくということがやられました。ところが、自分たちだけで熱供給していくことはできないので、ここではNPOをつくっています。2002年にAberdeen Heat and Powerという会社をつくって、ここが熱供給の事業をします。
ところが、公共の建物と公営住宅だけに限定した熱供給をするので、ここには物すごくたくさんの補助金が導入されています。このNPOは、運営をする時に、最初の投資のお金が補助金としてたくさん入っていますし、お客さんが絶対にいるんです。公共の建物、公営住宅、このお客さんが全部つながっていますから、熱料金を取りはぐれることがありません。
(図43) 
現況は、高層の住棟が4棟で288戸、これに学校やスポーツ施設、などいろいろなものがある。高層の他に6棟、500戸の住宅がある。これらに対して熱供給のネットワークをつくり、将来的にはこれを全部つなげていく計画になっていて、お客さんたちがいるということになります。
(図44)
アバディーン市役所とNPOが一体どういう関係なのかというと、協定を結んでいます。この協定は、まずエネルギーセンターの土地はただで提供する。補助金もたくさん導入されています。ランニングコストをつくるために、フィージビリティースタディや熱供給協定、メンテナンス協定、設備設置協定、インフラのための土地の占有ライセンス、こういうものを行政側が支援します。そうすると、民間はこの辺を何も心配しなくてもお金が入ってくる。
なおかつ、ここは公共建物限定で熱供給が進んでいるので、民間の開発がつながるかもしれないとか、将来そこから接続が抜けるかもしれないという心配は何もしなくていい。こういうビジネスモデルになっています。
プラントを整備して、プラントでできる電力をナショナルグリッドに逆潮流させる。逆潮流させることによって売電したお金を、熱料金を下げるのにさらに使うということがやられています。結果、熱料金はガス料金よりも20%安い。こうやってビジネスが回っていく。
これをやることによってCO2の排出量目標も公共側は達成することができるわけです。こういうやり方でここの行政体は官民連携をしています。
(図45)
官民連携で事業を進めていくものは幾つもありましたが、そのうちの1つとしてバーミンガムの事例をお持ちしました。
このバーミンガムは2006年にコジェネを導入していこう、市が熱導管のネットワークを敷設したほうがいいだろうということになっていきました。熱供給してしまうと、結果的にどこかの事業者さんと長期的におつき合いしないといけないので、どこにするのかを選定しました。ここではCofely(GDFスエズ)が市のパートナーとなっています。
フェイズ1で、病院と中心部の業務・商業施設もしくは公的な建物がつながるところにエネルギーセンターを置く。フェイズ2として、大学との接続を行っていきます。都心部に2つのエネルギーセンターがあるので、ここは都市計画権限を用いて新規で開発が起きると、この熱導管に接続しないといけない。こうやってお客さんを増やしていっています。
市とエネルギー供給事業者との間には25年間の熱供給の協定が結ばれています。
(図46)
都市計画は何をやっているのか。都市計画は50戸以上の住宅開発もしくは1000平米以上の非住宅開発ではコジェネを導入するか、接続するかの検討をしないといけない。特別な事情がない限りネットワークに接続しないといけないし、それのフィージビリティースタディをしないといけない。こういう政策を市がつくっています。つまり、つながないと開発は許可されない。これが市側が行っているわけです。
(図47)
エリアを決めて、ここの中での開発が起きたときには導管接続をしないといけないということが決められています。
(図48)
また、ここは中心部ですので、ビジネス・インプルーブメント・ディストリクト(BID)、商業地の中で商業を活性化するというエリアがあります。2005年に262の地元の商業を中心としたビジネス団体が、このエリアの中で商業の活性化をしているわけです。こういうマネジメントの組織、これは日本で言うエリマネですが、ここに新規の開発が起きて、地域冷暖房に接続する意味をここの地域のエリマネのマネジャーが理解していると、地権者や店子に説明してくれます。エリマネとの連携も非常に大事だと言われていました。

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