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1.英国におけるCO2排出量削減の枠組み

2.広域都市圏にみる排出量削減の方法―大ロンドンの取り組みに着目して─

3.開発事業に求められること─行政が民間に何を求めるか?─

4.分散型エネルギーネットワークのための公共と民間の関係

5.今後官民連携で考えるべきことは何か?

パネルディスカッション

フリーディスカッション



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(図19)
特に最近は、面的エネルギーのネットワークが非常に進められてきているわけです。熱と電力の25%、これを分散型エネルギーのシステムからつくっていかないといけないということで、エネルギーのマスタープランをつくり、接続要求にプラオリティーを与えていくことになるわけです。
(図20)
ロンドンでここまでどうしてコジェネが推進されるか。これがベースラインの建築基準法です。ここから省エネを図って、コジェネをを導入して、最後に再エネです。今までの経験からすると、ロンドンでは省エネを図っても、建物では13%しかCO2が減らない。ところが、コジェネを入れると17%削減できる。再エネを入れても3%しかできない。
(図21)
そうすると、何に一番力を入れれば省エネ化が図れるのか。CO2の排出量が減るのか。イギリス、特にロンドンではコージェネレーションの導入を検討するのが一番効果的だと考えられたから、今ここに積極的に投資されています。
こうやってデータをとって、データから開発規制をしていくのがイギリスの特徴なのかなと、この段階では思います。
(図22)
ただ、データだけとっても仕方がないので、これを支えるためのいろいろな仕組みがあります。これはLondon Heatmapです。ロンドン市の目標達成のためにロンドンの33の行政体、民間事業者が活用できる情報の提供を行っています。どこにコジェネのエンジンがあるのか、発電所があるのか、廃熱源があるのか、こういった地図情報をウエブ上で提供しています。会員登録さえすれば誰でも情報をとることができます。私も会員登録をしてこういった情報をとっています。これを見ると、どこに熱需要があって、どこから自分は接続する可能性があるのかを見ることもできます。
(図23)
さらに、こういった施策をより積極的に進めていくために、ロンドン市は基礎自治体に地域冷暖房の可能性調査を積極的にやりなさいと言っています。各自治体では、熱需要の推計をGISデータを用いて行います。熱需要の高いところを抽出して、こういうところが需要が高いから、ここにプラントを置いたら一体どうなるのかということを考えていきます。そこに熱導管を整備し、みんな建物がつながったらどれほどの排出量が削減できるのか、さらに、工事の費用はどのくらいかかるのか、こういったことの検討が行政でやられています。
(図24)
これをやっていくのにもやっぱり連携がないと難しいです。都市計画はあくまでも開発のコントロールが一番やらなければいけないことなので、これを進めていくためにはいろいろな支援や連携が必要になってきます。
まず、ロンドン市と基礎自治体の中でこういった関係をどうやって実現していくのか。上位の組織である大ロンドン市がいろいろな連携を行いながら、政策の立案を行います。全体的なエネルギー計画、都市計画として、地域熱供給のネットワークをどう考えていけばいいのかといった政策の立案をし、これをもとに基礎自治体がマスタープランの策定を行います。
(図25)
ただ、これをやる時に、基礎自治体にはそれほどエネルギーのエキスパートがいるわけでもないので、基礎自治体が低炭素型都市づくりを進めるためにどんなことに留意しなければいけないのかといったことを盛り込んだツールキットが存在します。これは官民連携でつくったLondon Energy Partnershipが提供をしています。先ほどお見せしたLondon Heatmapの提供により、エネルギー施設の立地、周辺の熱需要の情報をロンドン市側が基礎自治体に提供しています。
(図26)
さらに、基礎自治体はエネルギーのエキスパートが少ないので、上位の組織であるロンドン市が直接基礎自治体に支援をします。「あなたのところはエネルギーに関係している人が少ないから貸してあげますよ」と言って、エキスパートを出してあげたり、質問を受けたらアドバイスもします。行政によってはエネルギーのエキスパートをたくさん抱えているところがあります。そういうところは隣接する行政体にアドバイスをしてあげる。つまり、イギリスの低炭素型都市づくりは、上からも支えられ、横からも支えられている。連携をしながら低炭素型都市づくりの都市政策が立案されています。
(図27)
また、お金も準備されています。ロンドン市の中で、Mayor’s Decentralised  Energy for Londonというところがお金の準備して、これを受ける形で都市計画が開発の時にお金を入れていきます。もしくは開発規制の中で出たお金を使って、プラントの整備をしていくということもやられています。
このように面的な開発の中でエネルギーを考えていくということが都市計画の中でも実現しているのがイギリスの特徴だと思います。

3.開発事業に求められること─行政が民間に何を求めるか?─

(図28)
3つ目の課題として、開発事業に求められること─行政が民間に何を求めていくのかということです。
(図29)
インナーロンドンというのは、ロンドンの中心部に位置する行政体でこれだけの数があります。基本的には基礎自治体が都市計画の細かい政策の立案をして、各事業者さんは基礎自治体に行って、開発の申請をし、そこで協議をしていくことになります。従って、ここも非常に大事な政策の立案をする場となります。
特徴を見ると、まず省エネ化を図っていくことはどこの行政体も当たり前のようにやっています。先程も地方別に見て、ロンドンはたくさん書かれていますねと申し上げましたが、地域冷暖房との接続、コジェネのプラントを導入していくことについても、非常に多くの行政がロンドンの中では積極的に導入していくと言われています。
(図30)
一体どんなことをやっているのか、これをもう少し詳しく見ていきたいと思います。
最近出てきたロンドンの都市政策の中で非常に興味深いのが、こういうタイプの政策です。熱供給のプラントがあるところから距離をはかって、そこの中に新規に開発が出てきたときには、熱導管に接続をしないと開発を許可しない。こういうやり方で開発を縛る行政体が出てきています。
カムデン区は、1キロと500メートルで縛りが変わってきます。これは1キロのほうです。こういったプラントのあるところから1キロの線を引いて、この中で開発が出てきたときは接続のアセスメントをしないといけない。アセスしない限り、開発の許可をするかしないかの判断をしないから、とにかくアセスをしないといけない。3年以内にこういったプラントが稼働する可能性があるということがわかっていれば、接続アセスをしないといけないし、接続しない場合は、その理由を説明しないといけないということが決められています。


 

 

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