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1.英国におけるCO2排出量削減の枠組み

2.広域都市圏にみる排出量削減の方法―大ロンドンの取り組みに着目して─

3.開発事業に求められること─行政が民間に何を求めるか?─

4.分散型エネルギーネットワークのための公共と民間の関係

5.今後官民連携で考えるべきことは何か?

パネルディスカッション

フリーディスカッション



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(図70) 
 各主体のメリット。これがこれから先の低炭素型都市づくりを進めていくときに私は大事だと思います。公共側にとっても必ずメリットがあります。つまりCO2の排出量削減が公共の中で物すごく高いプライオリティーであれば、これを実現することができます。しかしながら、公共はできるだけリスクを小さくしたいということがあって、公共用地を提供することがやられます。民間開発にエネルギー供給をリスクだと考える場合は、アバディーンのように、公的な建物だけに限定して熱供給をしてしまうということも可能性としてあります。行政にとっては都市計画の協議を用いて、熱導管への接続の要求をしていく。これも公共側がやらなければいけないことになります。
これをやることによってエネルギー事業者はどんなメリットがあるのか。民間には公共というお客さんが絶対にいます。協定に守られた期間で絶対的に事業が成り立つので、リスクがすごく限定的になります。行政側が持っている熱導管の接続義務があるので、新規で開発が起きれば必ずお客さんが増えていく。これが民間の事業意欲を拡大することになります。お客さんが増えれば値段も下がるし、公共用地をただで貸してもらえば、これも熱料金を下げることになります。こういうふうにエネルギー事業者にとってのメリットもあります。
お客さんにとっては何かといったら、値段が必ず安い。私もすごく不思議でしたが、ガス料金よりも必ず20%安い。ほとんどの場合はこれを担保している。必ずそのとおりにすると明言しているところが幾つもありました。こうやって価格が安ければお客さんがつく、マーケットにとってもおいしい。こういうプログラムをつくっていくことが低炭素では非常に大事ではないかと思います。規制だけでやってしまうと誰もやりたくない。やったことによって、民間にとっても、マーケットにとってもおいしいと思われるプログラムをつくっていくことが大事です。
(図71)
 接続や施策がどんな関係になっているのかを見ますと、公共施設とか公共建物だけに接続していくところは、お客が限られているので、割合リスクが小さそうだなという感じがします。
公共施設、公共出資型のESCOでは、事業が拡大しないと公共がリスクになります。熱導管を接続すると、ある程度民間の支援も得られますが、ミルトンキンズとかウィーキングと呼ばれるところは、公共のリスクが大きいタイプかと思います。
従って、一番望ましく、そしてイギリスの中で多かったのが、官民連携や民間主導型のタイプです。これは民間が全部事業を実現するので、公共側のリスクは非常に小さい。公共側はただ用地だけを提供し、熱導管接続という政策立案だけすればいいので、あとの事業リスクは全部民間側がとってくれる。民間にとってもお客が増えていくということがあるので、これがイギリスでは結構多いかなと思います。
(図72)
イギリスの中で地域熱供給が進んだ理由は何だったのか。
1つの答えは、枠組みとしてCO2排出量削減の目標値が絶対的にある。これをやっていかないといけないと決められている。トップダウンで排出量削減を求めていく推進体制ができていることが1つの大きな特徴です。
2つ目に、開発事業と連動して、熱導管に接続義務というのが都市計画の政策の中にある、これがやはり大きな理由だと思います。
3つ目、官民マーケットの連携の仕組み、これが熱料金を下げていくことになっていると思います。

5.今後官民連携で考えるべきことは何か?

(図73) 
最後に、まとめとして、今後、官民連携で考えるべきことは何なのか。
(図74)
官民連携で低炭素型都市づくりに求められるものは何なのか。日本で考える場合は、やはりイギリスと同じように、官にとっても、民にとってもそれぞれがメリットのある状況をつくっていくことが私は大事だと思います。
 イギリスのDHC事業は、北欧と違って今進んできています。今いろいろな都市で導入検討がされていて、それが速いスピードで拡大してきています。それはそれぞれ官民のメリットを明確にして、最大化していることによるのではないかと思います。
日本で考えれば官民のリスクは一体どこにあるのか。この辺を考えていく必要性がある。やはり根本的に、排出量の削減が本当に高いプライオリティーにあるのかという原点に戻る。ここが揺らぐと次のものをどう考えていいかがわからないので、やるんだったら、腹をくくらないといけないということだと思います。
  マーケットだけで分散型エネルギーネットワークの拡大をしてくれといってもそれは無理なんです。やるということを行政側がまず決めることが私は大事だと思います。CO2の排出量削減でもいいですし、分散型エネルギーでもいいんですが、やるということが命題であれば、それをやっていかなければいけなくて、それをマーケットだけで主導してくれといっても、これは無理です。ここをどうにかしないといけないと思います。

 

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