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1.英国におけるCO2排出量削減の枠組み

2.広域都市圏にみる排出量削減の方法―大ロンドンの取り組みに着目して─

3.開発事業に求められること─行政が民間に何を求めるか?─

4.分散型エネルギーネットワークのための公共と民間の関係

5.今後官民連携で考えるべきことは何か?

パネルディスカッション

フリーディスカッション



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(図62)
Peel Groupという大きな投資家グループがありまして、ここが非常に大きな開発をしています。メディア・シティというだけありまして、BBCのスタジオなどがみんなここに集結しています。業務、スタジオ、商業、マンション、ホテル、広場の建設等がされています。
(図63)
全部で200ヘクタールを20年ぐらいかけてやっていく開発事業ですが、土地と開発を所有しているのがPeelホールディングスです。公的主体が一応共同事業という形になっていますが、こちら側は一銭もお金は出さない。だけど、冠だけは公共も連動しながら再開発を全部進めますよという形になっています。
Peelは非常に大きな会社です。中にPeel Utilityというところがあって、ここがエネルギーを管理していくことになります。ここがエネルギーセンターをつくるんですが、自分ではオペレーションせず、ここもCofelyが20年間のマネジメントとオペレーションの契約をしています。やはりコジェネなので売電をして熱料金を下げることがやられていて、周辺の建物に全部熱を供給していきます。
この会社は北西部に立地するマンチェスター、リバプールのエリアをすごくたくさん所有しています。会社の方針として排出量の削減は物すごく大きいから、自分たちが積極的に進めていくということを使命としてこの開発を進めているという感じの事例でした。
(図64)
最後に、お手元にないものです。
先週行ってきたものです。エクセターというイギリスの西部のほうの都市ですが、3000戸の新規の住宅開発をするという事例です。3000戸の住宅だけではなくて、商業、業務、学校、隣接地に飛行場があり、そこに対する熱供給の需要性がとてもありました。
そこで事業をするのですが、特徴的なのは、たくさんの団体が関係しながら事業を展開しているということです。公的な補助金も40万ポンドほど入っていますが、多くの投資はエネルギー事業者のE-ONがやっています。すべての熱と温水は地域冷暖房からで、ここの建物、住宅は全部電気と熱供給からの温水もしくは熱しかない。ガスが来ていないというタイプの住宅地になります。
(図65)
モデルハウスを見に行くと、住宅の中の設備はこうなっていますよという説明があります。イギリスだと大きな温水のタンクが家の中に大体ありますので、それがないというのがイギリス人にとってはびっくりすることらしいです。普通のエネルギーの料金に比較して、ここは20%ぐらい安いですという説明がされていました。
こうやって長い熱供給の契約を地域とすることによって、長くここでエネルギー事業者として地域とコミットしながらやっていく。それによって地域とつき合いをしていくことが大きな特徴なのではないかと思います。
(図66)
ここは土地所有者と関係する行政体が非常にたくさんあって、新規で3000戸の住宅開発をしますから、民間の住宅会社が選定されます。これらが全部集まって、East Devon New Community Consortiumというのがつくられます。ここが全体でどんな計画にするかと考える。開発を許可する時には熱導管の接続義務があります。これをやることで行政にとってはもちろんCO2の排出量目標を達成することができます。熱導管に接続されれば、E-ONと80年間の熱供給をするという協定が結ばれています。買った人はみんな死んじゃっていると思います。それによってエネルギーが各地区に提供されることになります。
各事業者はそれぞれ住宅をつくりますが、それぞれの住宅は全部E-ONのエネルギーセンターから熱導管で接続されて、ここを中心に自分のところの温熱等の需要に対応していくことになります。80年間の協定なので長期契約で料金が下がっていきます。
(図67)  
ここは1つの開発にとどまらず、次の開発をしていくためのコンソーシアム等もつくられています。これがまた非常に興味深かったんです。Low Carbon Task Forceというのが2011年からこのエクセターを中心に構成されていまして、いろいろなタイプの人たちが一緒のテーブルに着いて、低炭素型の都市づくりをどうやって進めていって、自分たちにとってどんなメリットがあり、何を協議していかなければいけないのかということを毎月ベースで協議しています。公的な団体だけで5つ入っています。イギリスの気象庁がここに引っ越しをしてきて、これが物すごく大きな団体になっています。
 官民連携組織として、先ほど見せた3000戸の住宅の開発地をどうしていくのかを決めているEast Exeter Growth Point Partnershipが入り、エネルギー事業者としてのE-ON、それからエクセター大学とビクトンカレッジが入っています。あと、病院が入っています。病院は、都心部でこれから先の熱供給の調査をやっていて、大口の需要家になりますから、病院にどんな需要があるのかとか、何を期待しているのかということで病院も入っています。
  NPOが2団体来ていました。Energy Saving Trust、これはロンドンでもたくさん出てきます。それと、国がつくったNPOのNational Energy Action、この2つが来て、毎月ベースで協議をしています。
(図68)
協議の内容は一体どんなことかというと、これからこの地域の中で開発されるスーパーマーケットで出てくる食物残滓をどう使っていけばいいのか、エネルギーの消費量が一体どうなっているのか、エクセター大学のエネルギーの先生が、今どんな感じになっていて、どこに需要が多いとかいう話もしていました。話は割合いろいろでした。電気自動車の需要と充電スポットの話が交通局からされました。行政政策で、各行政の中で今何が議論されていて、次にどんなことが決まりそうか。その中に何を盛り込んでいったら、低炭素型都市づくりを進めていくのに望ましいのかということが、分野を超えていろんなことが言われて、それを各事業者が持って帰って自分の行政体の中で次に議論することがやられています。
 これもおもしろいお話でした。中心市街地で、これから先に熱導管を入れていきたいというネットワークについてFSがやられていました。この効果がどうなのかということがずっと議論されていました。これが終わった後に、私は、ここの3000戸のエネルギー供給をやっているE-ONの人に、「中心部でこういう議論がされていると、また新しいビジネスチャンスになりますね」と申し上げたら、「確かにそうなんだけれども、そこは競争だから自分たちがとれるかもしれないし、ほかの事業者さんがとれるかもしれない。ただ、その時にここ全体としてエネルギーを考える議論する場に自分たちが入っていることがとても大事」とのことでした。最終的には自分たちがとれればいいと思っているとは思いますが、公共、民間関係なくみんなで協議をしながら、自分たちにとって一番いいモデルは何なのかと議論している、これが大事ではないかなと思いました。
 ただ、会議の時間が長くて、3時間半やってまだ終わらないという感じだったので、聞いている私のほうはきつかったです。
(図69)
 今まで、熱供給のいろいろなタイプ、行政主導型、官民連携型、ジョイントベンチャー型、民間主導型をお見せしてきました。
 ここにはやはり特徴があります。エネルギーセンターはみんな無料なんです。土地代がただ。契約期間が長い。20年以上、長いものは40年ですし、先ほどのエクセターは80年の熱供給の協定を結んでいました。こういうことが1つ特徴です。
 さらに、行政主導でやっているところは余りないですが、民間と連携しながら熱供給をやっているところは、新規で開発が起きた時に必ず熱導管への接続義務を都市計画の政策として持っている。民間にとってはお客がそれほど困らずに増えていくことになっています。

 

 



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