1.英国におけるCO2排出量削減の枠組み

2.広域都市圏にみる排出量削減の方法―大ロンドンの取り組みに着目して─

3.開発事業に求められること─行政が民間に何を求めるか?─

4.分散型エネルギーネットワークのための公共と民間の関係

5.今後官民連携で考えるべきことは何か?

パネルディスカッション

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(図31)
500メートルの時にはもっと厳しくて、必ず接続することが求められます。接続しない場合は、何で接続しないのか。例えば再生可能エネルギーを入れたほうが、よりCO2の排出量を減らせるという説明ができない限り、接続をしないと開発の許可がおりない。こういうふうに都市計画で厳しく指導されます。もしくはプラントがすぐにはできないような場合には熱交換機や熱導管が来るであろう敷地のところまで、自分の敷地の中で熱導管を整備していかないといけない。
こんな感じの政策が立案されていて、非常に厳しい政策をつくっていきながら、都市計画の中で熱導管をたくさん敷設し、なるべく多くの建物がこういう開発規制を通じて熱供給のネットワークにつながっていくことを指導していくという特徴があります。
(図32)
これをさらにわかってもらうためにいろいろなツールを用意しています。カムデンでは、例えば、開発事業者が、熱供給のアセスをしないといけないということを知るために、こんな感じで、イエス・ノーを見ていきながら、自分は一体どんなことを考えていかなければいけないのかを知るためのツールも用意されています。
(図33)
また、開発の負担金を取るというものもあります。
熱導管を敷設するための負担金を開発事業から取る。これがカムデン区の中のマスタープランに書かれていて、開発の規模、住戸数300平米ごとの価格となっていて、20階以上の建物の場合は、300平米ごとに2800ポンド取ります。事業者から幾ら取るということが明確に記載されているので、事業者にとっては、ここの行政体で開発をする時には、熱導管の負担金が幾らだと簡単にわかる状況にされています。
(図34)
今みたいなタイプのものは、行政体の中のいろんな場所でその政策を使うことができるんですが、特定の開発地域の中で、行政が求めるような計画を民間事業者につくってもらうようなケースもあります。それが、「プランニング・ブリーフ」というものです。これはキングスクロスの駅で、今再開発がちょうど起きているところです。起きる前に、行政体がここでどんなことを望むのかということをあらかじめ民間側に提供して、この情報をもとに、民間側が開発を考えていくということがやられています。
(図35)
行政側は一体何を指導するのか。広大な空き地の中で、開発の規模や用途、密度、交通の利便性をどうやって図っていくのか、どういう商業施設を入れていけばいいのか、雇用とトレーニングの施設をどうするか、住宅建設をどうしていくか、建物のデザインや環境サステナビリティーなど、いろんな項目が入っています。20ヘクタールを超える大規模敷地ですから、そこの中ではいろいろな開発の可能性があるわけです。低炭素も取り込んで、行政側が望むものを入れていきます。全部網羅すれば、開発協議にかかる行政との折衝もある程度短くて済むということもあって、こういうものを用意しておくほうが便利だろうとみんな思うわけです。
(図36)
低炭素の視点では、行政側は何を要求しているのかというと、排出量を最低限にする、再エネの利活用を実施していく、省エネの建物を最大限に導入していかないといけないということなどです。後でも出てきますが、貧困層対策が求められます。ロンドンの場合は、新規で住宅をつくると、50%ぐらいは中所得者以下のための住宅供給をしないといけないことになっています。そうすると、所得のうちの10%ぐらいがエネルギーの料金に消えてしまう人たちに対応しないといけないということがあって、安いエネルギー供給をしないといけない、これがもう1つの課題となってきます。
(図37)
 こういうことを行政側がつくって、こんな感じに道路の計画をつくってくださいと、ある程度の案を示し、最終的に民間から出てくる開発の計画がこうなったわけです。見ると、動線計画とかも何となく踏襲されていることがわかります。
このように行政側がある程度の枠を提示して、民間がその中で、自分たちがやれる最大限のアイデアを都市づくりの中に生かしていくことがイギリスの中ではやられています。


(図38)
ここまでをまとめますと、イギリスの低炭素型の都市づくりにおいて、基本的には都市計画がやっていることは規制です。Lean、Clean、Greenという低炭素化を進めていくためのステップごとに協議をしながら、開発の中でどれだけ下げられるのかということが検討されます。
その時に何が一番削減割合が大きいのか。これは日本と考え方が違うかもしれませんが、イギリスの場合はコージェネレーションの導入が非常にすごく高く位置づけられている。だから、これを積極的に進めていきたいということで、開発事業を通じたコントロールがされている。手法としては熱導管のあるところでは接続義務を設ける。開発が起きたら熱導管に接続しないと開発は許可しませんよというやり方で、より効果的にCO2の排出量削減ができるシステムがあれば、「それはどうぞおやりになってください。そのかわり情報提供してくださいね」というやり方で開発事業のコントロールをしています。
ここまでいろいろな方法を提示していけば、新規開発では開発協議を通じてCO2の排出量削減が推進されますし、最終的に、特にコジェネの導入がロンドンでは積極的に進んでいくことになるわけです。
しかし、皆さん、ここまでお話を聞いていて、「それって、規制ばっかりだよね」と思われていると思います。これをどうすれば、民間も、やってもいいかなと思うようになるのか。だんだんその辺の話をしていきたいと思います。


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