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(図1)
「世界における東京の都市力は極めて高い」。日本の経済力は、国民総生産で世界の3番目です。1番目がアメリカで、2番目が中国、3番目が日本。中国の総生産のオペレーションを中国政府がやるよりは、世界3番目のストックの日本政府がオペレーションするほうが世界に対する影響力は極めて大きい。日本は世界3番目の国民総生産を持っていて、その牽引車が東京だということを世界は認識しているはずです。ところが、実際は世界で認識している人たちはほんのわずかで、東京というのは余り知られていないんです。
「たたかう東京」の東京に住んでいる皆様方は誇れる人材です。それから資産があります。例えば、日経新聞社も、数年前に新しくなって、ピカピカで非常に使いやすい。これが資産です。こういうものを生かす。鉄道もそうです。世界から人とモノとカネを呼び込む都市づくりのプロジェクト、これを提案しようと思います。
繰り返し言いますが、こういう提案は、所管業務を持っている法律を守る役人にとっては、大変嫌なことです。知ったこっちゃないんです。ところが、こういうことを言わなければいけない時代になった。
(図2)
起承転結です。
(図3)
①「都市圏人口と域内総生産及び1人当たりGRP」。まず、都市圏人口です。東京はニューヨークの倍あります。3200万人。ロンドンの約2.5倍。上海が、多分3000万人いく。驚くべきことに、韓国は国の人口約5500万の中の4割がソウルの大都市圏に集まっています。すごいことが起きています。でも、そうは言っても、東京は都市圏人口が大きい。1人当たりの分配所得を見てみると、ニューヨークは金融都市ですから格段に高いんです。1人当たり8700ドル。東京は4600ドル。これは2011年のデータです。上海はまだ1000ドル。ソウルも1300ドルですが、すごい勢いで伸びていきます。1人当たりGRPはロンドンと東京が大体同じぐらいで、ニューヨークはその倍ぐらいあります。
(図4)
②「都市ランキング」。これは抽象的ですが、森記念財団の世界都市総合ランキングを2年に1回やっています。東京は大体4位に定着しています。6位がソウルです。ソウルがヒタヒタと上がってきています。上海も上がってきます。3位のパリが1349.6です。東京4位、1324.9。その差25ポイント。これはどうにかならないか。それが、なるんです。
(図5)
なるために何を起こしたらいいか。羽田の滑走路を6本つくる。5本でもいい。5本でも187まで上がります。パリのシャルル・ド・ゴールの滑走路はこれ以上増えませんから。
それから、文化交流。これは歌舞伎や能などの日本的なものもありますが、そのほかにブロードウエー型やオペラ、博物館、こういうものが日本はみんな中途半端で小さいんです。ヨーロッパやアメリカに行くと、ドドーンと大きいものがあります。ニューヨークのメトロポリタン博物館や大英帝国博物館。あれほど大きくなくてもいいですが、とにかく、日本にはこれだと世界に頑張れるような文化的資産がないんです。みんな中途半端。ビッグサイトもそうです。
僕が言いたいことは、東京が戦うためには2つのことをやらなければいけない。1つは世界共通の言葉、例えば音楽や展示場。ロンドンと東京とニューヨークとミラノ、4つの圏域に同じレベルの展示場があって、展示場をやるプロフェッショナルな集団が、そこにどういう展示をしたらいいか議論できるような能力を持たなければいけない。これは世界先進国共通の能力です。これが1つ目です。もう1つは、エキゾティシズムです。日本でないと、ないものです。
この2つをもって戦わなければいけない。交流というのはまさにそういうところです。世界共通のオペラ、歌舞伎はエキゾティシズムです。ソフトとハード両方のものを持つということが極めて重要です。それができればソウルをぐっと引き離すことができます。
「交流」を上げれば、パリを抜きます。ロンドン、ニューヨーク、東京と、3位に上がります。「文化・交流と交通・アクセスが改善できれば、パリを抜ける」。
(図6)
3つのデータがあります。社人研(社会保障・人口問題研究所)という厚生労働省のお墨つきの人口予測の専門機関のデータと、2つ目は東京都の推測のデータ、それから、私たち森記念財団でずっとやってきている推測のデータです。これで何を言いたいか。東京都23区の2010年の人口は、東京都と社人研、森記念財団も900万人だった。ところが、今までの社人研の予測を見ると、実際より下を常に予測しています。専門家はみんな知っています。社会保障・人口問題研究所の厚生省の予測は常に実数値より下に向かっての予測をしている。これでいくと、ずっと下がるんです。2030年になると883万人で、今より17万人下がる。東京都の人口も、それほどではないけれど、同じぐらいです。森記念財団は上がっています。今までの1990年から2010年までの実数値は森記念財団のラインに沿って上がってきたんです。
2010年までは、森記念財団のラインに上がってきた。問題は、2010年から2030年がどうなるかということです。ここは誰もわかりません。No one knows。それぞれの仮定に基づいて算出するしかありません。
森記念財団はこういう立場をとっています。東京は戦わなければいけない。だから、常に東京のメタボリスティックな体質を変えながら、有能な若い人を日本から集める。人口の社会流出入。これは今までと同じぐらいに高目に見ています。「たたかう東京」としてはこの数字を使うということです。2030年、950万人になります。社人研予測とは70万人の違いがあります。
官僚の読みと、「たたかう東京」のアジテーターの読みの差は2030年に70万人。この実数を、僕は2030年に100歳になるんですが、生きていて見てみたいものだと思っています。僕たちはこれを使うということです。
(図7)
ただし問題があります。どういう問題かというと、2010年の老年人口は180万人ですが、2030年に223万人になります。43万人の増加します。2040年は223万人に43万人を足してください。266万人。これから20年かかって東京の年寄りが伸びていく数字は、2030年からその倍のスピード増えていくということです。そうなると、生産年齢人口が年寄りを背負い込む量はとても大きくなります。どう見ても、「たたかう東京」には、2030年から後、国土強靱化のためのカネはない。年寄りの面倒を見るカネしかない。老人でも75歳まで働いてもらわなければだめだ、僕はこの間からそう言っています。老人は75歳まで働く。こういう明白な事実について、わがままは言っていられないと言っています。
2030年というのは、これまでの都市計画で、いろいろな行動を頑張ってとれる最終限度で、2030年から2040年は別なことを考えなければいけない。別なことというのは、大きいカネの公共事業はもしかするとできない。むしろ細やかな公共事業、小さい公共事業を皆さんの合意で、2030年から2040年は数多くやらないといけない。そういうことを言いたい。

(図8)
僕は竹中平蔵さんや八田達夫さんと、ここ1カ月で何回か会っています。竹中平蔵さんは、競争力会議に報告書を出しました。なかなかいいことが書いてあります。八田さんが言った言葉は「特区による大胆な規制緩和と各種制度・施策の総動員」。余りよくわからない。いろいろな特区がこのごろ出ています。特区をつくれば別な扱いが法律でもできるから、特区の中だけは今までの常識と違う法律を運用して規制緩和しろということです。
2番目、「国家戦略として総理主導のスピード感のある実行」。これは竹中平蔵さんも言っています。総理と地方自治体の首長、例えば県知事と、仕事をしたい大会社の社長の3者の会談で仕事の段取りをして進めていくというちょっと無理な話です。「総理」をここに出してこなくたっていいのではないかと思うんです。総理といったって実体は総理ではないですね。役人です。また役人が出てきてはスピードがよくない。
それから、国土強靱化です。

 

 

        
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